(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106508
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
C08J11/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082824
(22)【出願日】2023-05-19
(62)【分割の表示】P 2021157968の分割
【原出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックを効率よく分解する処理装置等を提供する。
【解決手段】処理装置10において、処理炉100は、処理対象物を受け入れるための供給口101と、残渣を排出するための排出口102と、を有する。温度制御領域110は、供給口101と排出口102の間の中間部の温度を制御する。スクリュ120は、供給口101から供給された処理対象物を排出口102に向かって搬送可能に回転する。第1分解領域130は、中間部における所定の領域において処理対象物を分解して得た第1流体を処理炉100から回収するための第1回収口132を含む。第2分解領域140は、第1分解領域130より下流側において処理対象物を分解して得た第2流体を処理炉から回収するための第2回収口を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を段階的に熱分解する処理装置であって、
上流側において処理対象物を受け入れるための供給口と、下流側において残渣を排出するための排出口と、を有する筒状の処理炉と、
加熱装置または冷却装置を含み、前記供給口と前記排出口の間において前記処理対象物を段階的に熱分解する中間部における所定の位置の前記処理炉の温度を制御する温度制御領域と、
前記処理炉の上流側から下流側に亘り延伸することにより、前記供給口から供給された前記処理対象物を前記排出口に向かって搬送可能に回転するスクリュと、
前記中間部における所定の領域において前記処理対象物から分離した第1流体を前記処理炉の外へ取り出すための第1回収口を含む第1分解領域と、
前記第1分解領域より下流側において前記第1流体と異なる流体であって前記第1分解領域において減容化した前記処理対象物からさらに分離した第2流体を前記処理炉の外へ取り出すための第2回収口を含む第2分解領域と、
前記第2分解領域を通過した後の前記処理対象物を第1残渣と第2残渣とに分別する分離装置と、
前記処理炉の内部圧力を制御しつつ前記第2残渣を強制的に外部へ排出するポンプと、を備える
処理装置。
【請求項2】
前記分離装置は、金属粉を含む前記第1残渣と油脂を含む前記第2残渣とに前記処理対象物をフィルタリングし、前記第1残渣を前記処理装置から排出し、前記第2残渣を前記ポンプに供給する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記ポンプは、ギヤポンプである、
請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
処理対象物を段階的に熱分解する処理装置が、
上流側において処理対象物を受け入れるための供給口と下流側において残渣を排出するための排出口とを有する筒状の処理炉に前記供給口から前記処理対象物を受け入れ、
前記処理炉の上流側から下流側に亘り延伸するとともに前記処理対象物を搬送するための送りねじ部のピッチが送り方向で変化する構造を有するスクリュにより前記処理対象物を前記排出口に向かって搬送し、
前記処理炉における前記供給口と前記排出口との間において前記処理対象物を段階的に熱分解する中間部における所定の位置の温度を制御し、
前記中間部に設けられた第1分解領域において前記処理対象物から分離した第1流体を前記処理炉から回収し、
前記第1分解領域の下流側に位置する第2分解領域において前記第1流体と異なる流体であって前記第1分解領域において減容化した前記処理対象物からさらに分離した第2流体を前記処理炉から回収し、
前記第2分解領域を通過した前記処理対象物を第1残渣と第2残渣とに分別し、
前記処理炉の内部圧力を制御しつつ前記第2残渣をギヤポンプにより強制的に外部へ排出する、
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会に向けてリサイクル技術の開発が活発化している。例えば、廃プラスチックを分解して有価物を取り出す技術として、ケミカルリサイクルと呼ばれる手法が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の処理装置は、廃プラスチックを加熱して、塩素系ポリマ-を熱分解させて塩素化合物を発生させ、溶融廃プラスチックと塩素化合物とに分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、廃プラスチックを分解する工程は複数存在する。またその工程毎に個別の装置が存在する。しかしながら、上述の装置はその一部を担うのみである。そのため、廃プラスチックの分解を行うシステムは複数の装置を用いる必要が生じ、煩雑になる場合がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、廃プラスチックを効率よく分解する処理装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる処理装置は、処理炉、温度制御領域、スクリュ、第1分解領域および第2分解領域を有している。処理炉は、上流側において処理対象物を受け入れるための供給口と、下流側において残渣を排出するための排出口と、を有する筒状の炉である。温度制御領域は、加熱装置または冷却装置を含み、供給口と排出口の間の中間部における所定の位置の処理炉の温度を制御する。スクリュは、処理炉の上流側から下流側に亘り延伸することにより、供給口から供給された処理対象物を排出口に向かって搬送可能に回転する。第1分解領域は、中間部における所定の領域において処理対象物から分離した第1流体を処理炉の外へ取り出すための第1回収口を含む領域である。第2分解領域は、第1分解領域より下流側において第1流体と異なる流体であって処理対象物から分離した第2流体を処理炉の外へ取り出すための第2回収口を含む領域である。
【0008】
本開示にかかる処理方法は、処理装置が以下の方法を実行する。処理装置は、上流側において処理対象物を受け入れるための供給口と下流側において残渣を排出するための排出口とを有する筒状の処理炉に供給口から処理対象物を受け入れる。処理装置は、処理炉の上流側から下流側に亘り延伸するスクリュにより処理対象物を排出口に向かって搬送する。処理装置は、処理炉における供給口と排出口との間の中間部における所定の位置の温度を制御する。処理装置は、中間部に設けられた第1分解領域において処理対象物から分離した第1流体を処理炉から取り出す。処理装置は、第1分解領域の下流側に位置する第2分解領域において第1流体と異なる流体であって処理対象物から分離した第2流体を処理炉から取り出す。処理装置は、第2分解領域を通過した残渣を排出口から排出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、廃プラスチックを効率よく分解する処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる処理装置の側面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる処理装置のブロック図である。
【
図3】実施の形態1にかかる処理装置が実行する処理のフローチャートである。
【
図7】スクリュの第3変形例にかかる応力部の断面図である。
【
図8】実施の形態2にかかる処理装置の側面図である。
【
図9】実施の形態2にかかる処理装置が実行する処理のフローチャートである。
【
図10】実施の形態3にかかる処理システムの構成図である。
【
図11】実施の形態4にかかる処理システムの構成図である。
【
図12】実施の形態5にかかる処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態1>
図1を参照しながら、実施の形態1にかかる処理装置の主な構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる処理装置10の側面図である。図に示す処理装置10は理解容易のために一部を切り取った状態で示している。
【0013】
処理装置10は、例えば廃プラスチックを分子レベルに分解して様々な物質を有価物として回収するための装置である。有価物とは樹脂に限られず、メタノール、アンモニアまたは炭化水素などを含み得る。処理装置10により回収されたこれらの物質はガス、油または化学原料として再利用される。すなわち処理装置10はいわゆるケミカルリサイクルを行うための装置ということができる。本実施の形態にかかる処理装置10は主な構成として、処理炉100、温度制御領域110、スクリュ120、第1分解領域130および第2分解領域140を有している。
【0014】
処理炉100は、上流側において処理対象物を受け入れるための供給口101と、下流側において残渣を排出するための排出口102と、を有する筒状の炉である。
図1に示す処理炉100は、左側が上流側であって、右側が下流側となる。処理炉100は、供給口101と排出口102との間に中間部を有する。処理炉100は、炉内において処理対象物を処理する際に生じる温度変化、炉内に供給される物質または炉内で生じる反応ないし分解により生じる物質との接触を許容可能な材質により形成される。例えば処理炉100は、ニッケルやクロムを主成分とした合金やアルミナを含むセラミックスにより形成され得る。
【0015】
図1に示す処理装置10は、水平方向に横臥しており、左上端部に供給口101を有し、右下端部に排出口102を有する。
図1に示す処理炉100は、供給口101から処理対象物W10を受け入れる。処理装置10は、処理炉100の内部に設けられたスクリュ120を回転させることにより、処理炉100が受け入れた処理対象物W10を排出口102に向かって推進させる。すなわち処理炉100に供給された処理対象物W10は、中間部を通過して排出口102が設けられている下流側に向かう。処理装置10は、処理炉100の中間部に処理対象物W10を通過させることにより処理対象物W10を分解して所定の分解物を得る。そして処理炉100は、所定の分解物が取り除かれた残渣W11を排出口102から排出する。
【0016】
温度制御領域110は、温度制御装置、すなわち加熱装置または冷却装置を含み、供給口101と排出口102の間の中間部における所定の位置の処理炉100の温度を制御する。
図1に示す温度制御領域110は、処理炉100の中間部において筒状の処理炉100の周囲を囲むように加熱装置を有している。加熱装置は例えばシースヒータ、コイルヒータまたはセラミックヒータなどの温度制御可能な任意のヒータを含む。加熱装置は例えば常温から900度程度の範囲の加熱を行う。また温度制御領域110は、処理炉100の中間部の領域ごとに、後述するスクリュ120の軸方向に沿って、異なる温度を設定できる。例えば温度制御領域110は後述する第1分解領域130や第2分解領域140において処理対象物W10に与える温度変化を制御し得る。
【0017】
また温度制御領域110は、加熱装置または冷却装置を制御するための制御装置を含みうる。例えば温度制御領域110は、処理炉100の所定の位置に温度を監視するための温度計を有していてもよい。また処理炉100は、例えば加熱装置が電流を流すことにより加熱する原理を有する場合には、電流値を監視することにより温度制御を行ってもよい。
【0018】
なお、温度制御領域110は、例えば水やオイルを循環させることにより加熱または冷却を行う構成を有していてもよい。また温度制御領域110は例えばペルチェ素子などを用いて冷却を行う構成を有していてもよい。上述の構成により、温度制御領域110は、処理炉100においてスクリュ120の軸方向に沿って種々の温度分布を設定できる。
【0019】
スクリュ120は、処理炉100の上流側から下流側に亘り延伸することにより、供給口101から供給された処理対象物W10を排出口102に向かって搬送可能に回転する。スクリュ120は例えば、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、銅、アルミニウム、チタン、タングステン、ニオブ、タンタル、モリブデンの少なくとも一つを成分として含む合金や、アルミナやジルコニアなどの金属酸化物、窒化ケイ素などの窒化物、炭化チタンなどの炭化物、クロム硼化物などの硼化物を含むセラミックスにより形成されるか、前記合金と前記セラミックスを組み合わせた複合材、被覆材、接合材により形成され得る。
図1に示すスクリュ120は、
図1の左右方向に延伸する軸の周囲に螺旋状の送りねじ部121が形成されている。この送りねじ部121が処理対象物W10と接触しながら回転することにより、スクリュ120は処理対象物W10を上流側から下流側へ向かって搬送する。
【0020】
なお、
図1に示す送りねじ部121の形状は一例であって、送りねじ部121の形状はこれに限られない。送りねじ部121は、処理炉100の領域ごとに異なる形状を有していてもよい。より具体的には、例えば送りねじ部121は螺旋のピッチが変化してもよい。また送りねじ部121の螺旋形状は、1条ではなく、2条であってもよい。また送りねじ部121は螺旋形状ではない部分を有していてもよい。スクリュ120は軸部の太さや形状が変化してもよい。これにより処理装置10は、処理炉100の内部に存在する物体の移動する速さや移動する際の挙動などを領域ごとに設定できる。より具体的には、例えば処理装置10は、処理炉100における物体を搬送、攪拌、混合、混練または粉砕し得る。
【0021】
スクリュ120は、処理炉100の両端部においてそれぞれ軸支されている。また
図1に示すスクリュ120は、供給口101の側において駆動装置150に接続している。駆動装置150は、モータなどの所定の回転機構を有し、スクリュ120を回転させる。駆動装置150は、スクリュ120の回転数を変速可能に設定されたものであってもよい。この場合、駆動装置150は、回転数が変動可能なモータであってもよいし、回転数が一定のモータと、減速比が変更可能な減速機とを組み合わせたものであってもよい。
【0022】
第1分解領域130は、中間部における所定の領域において処理対象物W10から分離させた第1流体を処理炉100から回収するための第1回収口132を含む領域である。第1分解領域130は処理炉100において、供給口101と第2分解領域140との間に設けられている。第1回収口132は、第1分解領域130における第1流体F11を処理炉100の外へ取り出す、すなわち第1流体F11を回収するための孔である。第1回収口132は第1流体回収管133に接続している。
【0023】
第1流体回収管133は第1冷却装置134に接続している。第1冷却装置134は第1流体回収管133から送られてきた第1流体F11を冷却して、第1冷却流体F12に変える。第1冷却装置134は例えば第1流体F11がガスとして送られてきた場合に、これを冷却することにより液化し、液体である第1冷却流体F12として回収させることができる。このように、処理炉100は、第1分解領域130で分解して得た第1流体F11を再利用可能に回収する。すなわち処理炉100のユーザは、第1冷却流体F12を回収して再利用することができる。なお、第1流体F11は気体であってもよいし液体であってもよい。
【0024】
第2分解領域140は、第1分解領域130第1分解領域より下流側において第1流体F11と異なる流体であって処理対象物W10から分離した第2流体F21を処理炉100から回収するための第2回収口142を含む領域である。すなわち第2分解領域140は、第1分解領域130とは異なる領域において、第1分解領域130と同等の構成を有し得る。
【0025】
第2分解領域140は処理炉100の中間部において、第1分解領域130と排出口102との間に設けられている。第2回収口142は、第2分解領域140における第2流体F21を処理炉100の外へ取り出す、すなわち第2流体F21を回収するための孔である。第2回収口142は第2流体回収管143に接続している。
【0026】
第2流体回収管143は第2冷却装置144に接続している。第2冷却装置144は第2流体回収管143から送られてきた第2流体F21を冷却して、第2冷却流体F22に変える。第2冷却装置144は例えば第2流体F21がガスとして送られてきた場合に、これを冷却することにより液化し、液体である第2冷却流体F22として回収させることができる。このように、処理炉100は、第2分解領域140で分解して得た第2流体F21を再利用可能に回収する。すなわち処理炉100のユーザは、第2冷却流体F22を回収して再利用することができる。なお、第2流体F21は気体であってもよいし液体であってもよい。
【0027】
上述の構成により、処理装置10は、第2分解領域140において第1分解領域130を通過した後の処理対象物W10をさらに分解して第2流体F21を得ることができる。さらに、第2流体F21が第2回収口142より回収された後に残った処理対象物W10を排出口102に搬送し、残渣W11として排出する。なお、
図1において、第1回収口132および第2回収口142は、処理炉100の上部に配置されているが、第1回収口132および第2回収口142の配置は処理炉100の側部であってもいし、下部であってもよい。また第1回収口132と第2回収口142とは処理炉100の周方向において異なる位置に配置されていてもよい。
【0028】
以上、処理装置10の構成について説明したが、実施の形態1にかかる処理装置10は、上述の構成に限られない。例えば、スクリュ120は1以上であれば、2以上であってもよい。すなわち、処理装置10は、平行に配置された複数のスクリュ120を有してもよい。
【0029】
処理炉100のスクリュ120の軸と直交する平面における断面形状はルーローの定幅図形で定義される組合せを持つものであってもよい。この場合、スクリュ120の送りねじ部121の断面形状は、ルーローの定副図形に対応した複数の円弧を組み合わせた形状を有する。例えば処理炉100の内部の断面形状が円形の場合には、スクリュ120の断面形状は、3つの円弧で構成されたルーロー定幅図形を有する。
【0030】
処理炉100は水平方向に平行に横臥するものに限らず、水平面に対して所定の角度を有し、処理炉100は斜面を有するものであってもよい。処理装置10は、中間部において第1分解領域130と第2分解領域140とを有しているが、さらに別の流体を回収するための構成を有していてもよい。すなわち処理装置10は、3以上の分解領域を有していてもよい。なお、上述の処理装置10は、後述する制御装置により制御されている。
【0031】
次に、
図2を参照して、処理装置10の機能について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる処理装置10のブロック図である。処理装置10は
図1において示した構成に加えて、制御装置200、温度制御装置210、第1流体回収装置230、第2流体回収装置240および情報入出力装置250を有している。
【0032】
制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Controller Unit)等の演算装置を含む回路基板である。制御装置200は、温度制御装置210、第1流体回収装置230、第2流体回収装置240および情報入出力装置250のそれぞれと通信可能に接続し、これの構成をそれぞれ制御する。制御装置200は回路基板に実装されたハードウェアおよびソフトウェアによりその機能を実現する。
【0033】
制御装置200は主な機能構成として、全体制御部201、温度制御部202、スクリュ回転制御部203、第1回収制御部204、第2回収制御部205、IF制御部206および記憶部207を有している。制御装置200が有するこれらの機能構成は、一体となったものであってもよいし、ディスクリートであってもよい。また制御装置200が有するこれらの機能構成は、別個の複数の装置が連動することにより実現されてもよい。
【0034】
全体制御部201は、制御装置200が有する各機能構成に接続し、これらの機能の全体の動作を制御する。例えば全体制御部201は、温度制御部202から供給される温度の状態に応じてスクリュ回転制御部203に動作の指示を出す、といった動作を行い得る。
【0035】
温度制御部202は、温度制御装置210に接続し、温度制御領域110における処理炉100の温度を制御する。温度制御部202は、加熱装置および冷却装置のうち少なくともいずれか一方を有している。また温度制御部202は、温度を制御するための1以上の温度計を有し得る。
【0036】
スクリュ回転制御部203は、駆動装置150に接続し、駆動装置150の動作を制御する。スクリュ回転制御部203は例えば駆動装置150が有するモータを駆動するためのモータ駆動回路を有し得る。またスクリュ回転制御部203は、モータの回転数を監視するための回転センサを有し得る。
【0037】
第1回収制御部204は、第1分解領域130における第1流体F11の流れを制御する。より具体的には、第1回収制御部204は第1流体回収装置230に接続し、第1流体回収装置230の動作を制御する。第1流体回収装置230は第1流体F11を取り出すためのバルブ、ポンプおよび流量計等を含み得る。第2回収制御部205は、第2分解領域140における第2流体F21の流れを制御する。より具体的には、第2回収制御部205は第2流体回収装置240に接続し、第2流体回収装置240の動作を制御する。第2流体回収装置240は第2流体F21を取り出すためのバルブ、ポンプおよび流量計等を含み得る。
【0038】
IF制御部206(IF=Interface)は、情報入出力装置250に接続し、情報入出力装置250を介してユーザとの情報交換を行うためのインタフェースである。すなわちIF制御部206は、情報入出力装置250を介してユーザからの操作を受け付け、受け付けた操作にかかる情報を、制御装置200の各構成に適宜供給する。またIF制御部206は、情報入出力装置250が有する表示部の状態を制御する。
【0039】
記憶部207は、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む記憶装置である。記憶部207は処理装置10が本開示における機能を実現するためのプログラムを格納している。また記憶部207は揮発性メモリを含み、制御装置200が動作する際に所定の情報を一時的に格納する。情報入出力装置250は、例えばユーザからの操作を受け付けるためのボタン、スイッチまたはタッチパネル等を有する。また情報入出力装置250は、ユーザに情報を提示するためのディスプレイ装置等を含む。
【0040】
以上、処理装置10の機能ブロックについて説明した。処理装置10は上述の構成により、受け入れた処理対象物W10をスクリュ120により搬送し、処理炉100の温度を制御し、第1分解領域130および第2分解領域140における雰囲気を制御する。
【0041】
次に、
図3を参照して、処理装置10が実行する処理対象物W10の処理方法について説明する。
図3は、処理装置10が実行する処理のフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、例えば処理装置10に対して処理対象物W10の供給を開始することにより開始する。
【0042】
まず、処理装置10の制御装置200は、温度制御部202を介して、処理炉100の温度制御領域110の加熱装置または冷却装置を駆動することにより温度を制御する(ステップS11)。
【0043】
次に、処理装置10は、処理炉100の供給口101から所定の処理対象物W10を受け入れる(ステップS12)。
【0044】
次に、処理装置10の制御装置200は、スクリュ回転制御部203を介して駆動装置150を駆動する。これにより駆動装置150はスクリュ120を回転させる。そしてスクリュ120は、受け入れた処理対象物W10を排出口102に向かって搬送する(ステップS13)。
【0045】
次に、処理装置10は、中間部に設けられた第1分解領域130において処理対象物W10から分離した第1流体F11を処理炉100から回収する(ステップS14)。
【0046】
次に、処理装置10は、第1分解領域130の下流側に位置する第2分解領域140において第1流体F11と異なる流体であって処理対象物W10から分離した第2流体F21を処理炉100から回収する(ステップS15)。
【0047】
次に、処理装置10は、第2分解領域140を通過した残渣W11を排出口102から排出する(ステップS16)。
【0048】
以上、処理装置10が実行する処理方法について説明した。上述の方法は、処理装置10が処理対象物W10から第1流体F11および第2流体F21を回収し、第1流体F11および第2流体F21が回収された後に処理炉100に残った残渣W11を排出するまでの流れに沿って示している。処理装置10は、一端上述の処理が開始されると、順次新たな処理対象物W10が供給され、それぞれのステップが並行して同時に実行され得る。すなわち、処理対象物W10は処理装置10によって連続的に処理され得る。
【0049】
処理装置10は、廃プラスチックを熱分解する熱分解法におけるケミカルリサイクルに含まれる工程のうち、上述のように、熱分解、有価蒸気である第1流体F11および第2流体F21の回収、および残渣(例えばタール)の回収を行う。
【0050】
なお、温度制御領域110は、第1分解領域130の温度と第2分解領域140の温度が異なるように処理炉100の温度を制御し得る。好ましくは、温度制御領域110は、第1分解領域130の温度より第2分解領域140の温度が高くなるように、処理炉100の温度を制御する。
【0051】
例えば温度制御領域110は、第1分解領域130が摂氏500度程度となるように処理炉100の温度を制御する。これにより処理対象物W10は、第1分解領域130において熱分解し、所定のガスである第1流体F11を生じる。次に温度制御領域110は、第2分解領域140が摂氏850度程度となるように処理炉100の温度を制御する。これにより第1流体F11を放出した後の処理対象物W10は、第1分解領域130より高温に制御された第2分解領域140においてさらに熱分解し、所定のガスとして第1流体F11と異なる第2流体F21を生じる。
【0052】
また温度制御領域110は第2流体F21が回収された後に残った残渣を冷却する工程を有していてもよい。より具体的には例えば温度制御領域110は摂氏850度程度に加熱した残渣を摂氏40度程度に冷却してもよい。これにより処理炉100は冷却された残渣W11を排出口102から安全に排出できる。
【0053】
次に、
図4を参照してスクリュ120の構成のバリエーションについて説明する。
図4は、スクリュの第1変形例を示す側面図である。
図4は処理装置11が示されている。処理装置11は、スクリュ120の構成が処理装置10と異なる。スクリュ120は、処理対象物W10を搬送するための送りねじ部121のピッチが送り方向で変化する構造を有する。
【0054】
図4に示すスクリュ120は、第1分解領域130における送りねじ部121のピッチ(すなわちスクリュピッチ)が距離P1である。またスクリュ120は、第2分解領域140における送りねじ部121のスクリュピッチが距離P1より短い距離P2である。すなわちスクリュ120は、第2分解領域140に対応するスクリュピッチが、第1分解領域130に対応するスクリュピッチより小さい。
【0055】
上述のように、スクリュ120は、所定の第1搬送領域における送りねじ部の第1ピッチが、第1搬送領域より下流側の第2搬送領域における送りねじ部の第2ピッチより広く設定され得る。処理対象物W10は、処理炉100において熱分解され、第1流体F11および第2流体F21が回収される。すなわち処理対象物W10は処理炉100を上流から下流に向かって移動しながらその体積が減少していく。つまり処理対象物W10は減容化しながら搬送される。そのため、処理装置11は搬送方向に沿って送りねじ部121のピッチを変化させる。これにより処理装置10は減容化による搬送効率の低下を抑制できる。なお、送りねじ部121のピッチは複数の段階に徐々に変化するものであってもよい。
【0056】
また上述のように送りねじ部121のピッチを変化させることにより、処理装置11は、所望の領域における搬送速度を変化させることができる。これにより処理装置11は効率よく処理を行うことができる。
【0057】
次に、
図5を参照してスクリュ120のさらなるバリエーションについて説明する。
図5は、スクリュの第2変形例を示す側面図である。
図5は処理装置12が示されている。処理装置12は、スクリュ120の構成が処理装置10と異なる。スクリュ120は、軸部の直径が送り方向で変化する構造を有する。
【0058】
図5に示すスクリュ120は、供給口101から第1分解領域130に亘り軸部120Aを有している。軸部120Aの直径は一定した値である直径D1である。
図5に示すスクリュ120は、は軸部120Aの下流側に軸部120Bを有している。軸部120Bは上流から下流に沿って直径D1から徐々に大きくなっており、下流の端部で直径D1より大きい直径D2を有している。
【0059】
上述のように、処理装置12のスクリュ120は、所定の第3搬送領域における軸部の第1直径が、第3搬送領域より下流側の第4搬送領域における軸部の第2直径より小さく設定されている。これにより処理装置12は減容化による搬送効率の低下を抑制できる。なお、スクリュ120の軸の形状は、中間部における軸部の直径が、送り方向に沿って変化するものであれば、上述のものに限られない。
【0060】
次に、
図6を参照してスクリュ120のさらなるバリエーションについて説明する。
図6は、スクリュの第3変形例を示す側面図である。
図6は、理解容易のために処理炉100およびスクリュ120の一部を切り取って示している。スクリュ120は、滞留部122および応力部123を有している点が、上述のスクリュ120と異なる。
【0061】
滞留部122はスクリュ120の軸の延伸方向に直交する面に平行に形成された板状の部材である。滞留部122が送りねじ部121の下流側に設置されることにより、処理対象物W10は搬送が妨げられて滞留する。処理対象物W10は滞留部122の上流側で滞留し、所定量の処理対象物W10が蓄積することにより上流側に蓄積した処理対象物W10に押し出されて下流に移動する。
【0062】
滞留部122は、滞留部122よりも上流側の雰囲気も滞留させる。換言すると、滞留部122は、滞留部122よりも上流側のガスの流れを制限させることができる。これにより滞留部122は上流側の雰囲気と下流側の雰囲気とが混ざり合うことを抑制できる。また滞留部122は、このように雰囲気の流れを抑制することにより、熱分解の効率の低下を抑制できる。
【0063】
応力部123は、処理対象物W10を滞留、攪拌、混合、混練または粉砕する目的で送り方向に対して0度以上180度以下の範囲の角度を成す面または配列を有する凸部をもつ。応力部123上記目的を実現するために、様々な形態を採用することができる。
図6に示す応力部123は、送り方向に対して90度の角度を成す面を有する短冊状の9つの板が送り方向に沿って螺旋状の配置となるように連なっている。これにより応力部123は処理対象物W10を搬送しながら例えば、混合し、または粉砕する。
【0064】
図7を参照して応力部123のさらなる例について説明する。
図7は、スクリュの第3変形例にかかる応力部の断面図である。
図7に示す断面図は、スクリュ120の軸に直交する方向から応力部123を観察した状態を示している。
【0065】
図7には処理炉100の内部に配置されたスクリュ120の応力部123の断面が示されている。
図7に示す応力部123は、スクリュ120の軸の中心Cから放射状に複数の凸部および凹部が交互に形成されている。応力部123は中心Cを回転軸として時計周りに回転する。これにより応力部123は、応力部123の周辺に存在する処理対象物W10を攪拌する。
【0066】
以上、スクリュ120のバリエーションについて説明した。上述のスクリュ120のバリエーションは、スクリュ120が有し得るいくつかの例を挙げたものである。上述の処理装置にかかるスクリュ120の形態は、上述のものに限られない。
【0067】
以上、実施の形態1について説明した。実施の形態1にかかる処理装置は、上述の構成に限られない。例えば処理装置10は、第1分解領域130において第1流体回収管133に強制輸送機構を有していてもよい。強制輸送機構は第1回収口132を介して第1流体回収管133を流れる第1流体F11の流量を上昇させるための機構である。強制輸送機構は、例えばモータを含むポンプである。この場合、強制輸送機構のポンプは、モータを駆動して流体を吸引することにより、第1流体F11の流量を上昇させる。同様に、処理装置10は、第2分解領域140において、第2回収口142に強制輸送機構を有していてもよい。なお、強制輸送機構は、第1回収口132または第2回収口142における流体を強制的に排出できる機構であれば、上述の構成に限定されない。
【0068】
上述の処理装置10において、処理装置10は2つの分解領域(第1分解領域130および第2分解領域140)を有しているが、処理装置10は3つ以上の分解領域を有しても良い。また処理装置10は、スクリュ120の軸方向に沿って複数の温度制御領域110を有していても良い。処理装置10は、中間部において、スクリュ120の軸方向に沿って、処理炉100の温度制御を行い、熱分解を行う。さらに処理装置10は、処理炉100の内部の物体を搬送し、攪拌や混練などの物理的な刺激を与えることができる。処理装置10は上述の雰囲気制御、温度制御および物理制御を、同時に、且つ、精度よく行うことができる。すなわち、処理装置10は、ケミカルリサイクル処理のシステムにおける複数の処理工程や装置群の一部を集約して担うことができる。よって実施の形態1によれば、廃プラスチックを効率よく分解する処理装置等を提供することができる。
【0069】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、上述した構成に加えて、所定の流体を中間部に供給する点が、実施の形態1と異なる。
図8は、実施の形態2にかかる処理装置20の側面図である。処理装置20において、処理炉100は、中間部において第1流体または第2流体と異なる第3流体を処理炉の中に供給するための流体供給口136および流体供給口146をさらに有する。また実施の形態2にかかる処理装置20は、スクリュ120の構成が実施の形態1にかかる処理装置と異なる。
【0070】
図8に示す処理装置20は、第1分解領域130に流体供給口136を有する。流体供給口136は、第3流体供給管135から第3流体F30の供給を受けて処理炉100に第3流体F30を送出する送出孔である。処理装置20において、第1回収口132は第1分解領域130の上流側に設けられている。また流体供給口136は第1分解領域130の下流側に設けられている。
【0071】
なお、流体供給口136および第1回収口132の数およびこれらの配置は上述の構成に制限されるものではない。第1回収口132および流体供給口136は、それぞれ1ずつあってもよいし、どちらか一方もしくは両方が2以上あってもよい。第1回収口132と流体供給口136とは、処理炉100の周方向において所定の位置に配置され得る。例えば、処理炉100の径方向の断面において真上の位置を0時としたとき、流体供給口136および第1回収口132は、それぞれ0時の位置に配置されてもよいし、0時から12時までのいずれかの位置に配置されてもよい。また、第1回収口132が第1分解領域130の下流側に設けられ、流体供給口136が第1分解領域130の上流側に設けられてもよい。また例えば第1回収口132と流体供給口136とは、スクリュ120の軸方向に沿って、交互に配置されてもよい。
【0072】
第3流体F30は流動性を有するものであれば、その形態や成分は特に制限されるものではない。すなわち、第3流体F30は固体であってもよいし、液体であってもよいし、気体であってもよいし、超臨界流体であってもよいが、好ましくは気体がよい。第3流体F30は例えば窒素などの不活性ガスであってもよいし、一酸化炭素などの還元性ガスでもよいし、水などの抽出機能をもつガスでもよいし、それらが混合された混合ガスでもよい。第3流体F30は第1流体F11や第2流体F21と異なる成分であってもよい。第3流体F30は第1流体F11や第2流体F21と同じ成分を含むものであってもよい。処理装置20は流体供給口136から第3流体F30を受け入れることにより、処理炉100に生じた第1流体F11が第1回収口132に流れて行くことを促す。あるいは、処理装置20は流体供給口136から第3流体F30を受け入れることにより、第1分解領域130において発生した複数のガスのうち特定の成分を選択的に回収することを促す。
【0073】
また処理装置20は、第2分解領域140に流体供給口146を有する。流体供給口146は、第3流体供給管145から第3流体F30の供給を受けて処理炉100に第3流体F30を送出する送出孔である。処理装置20において、第2回収口142は第2分解領域140の下流側に設けられている。また流体供給口146は第2分解領域140の上流側に設けられている。
【0074】
流体供給口146および第2回収口142の数およびこれらの配置は上述の構成に制限されるものではない。第2回収口142および流体供給口146は、それぞれ1ずつあってもよいし、どちらか一方もしくは両方が2以上あってもよい。第2回収口142と流体供給口146とは、処理炉100の周方向において所定の位置に配置され得る。例えば、処理炉100の径方向の断面において真上の位置を0時としたとき、流体供給口146および第2回収口142は、それぞれ0時の位置に配置されてもよいし、0時から12時までのいずれかの位置に配置されてもよい。また、第2回収口142が第2分解領域140の下流側に設けられ、流体供給口146が第2分解領域140の上流側に設けられてもよい。また例えば第2回収口142と流体供給口146とは、スクリュ120の軸方向に沿って、交互に配置されてもよい。
【0075】
処理装置20は、流体供給口146から第3流体F30を受け入れることにより、処理炉100に生じた第2流体F21が第2回収口142に流れて行くことを促す。あるいは、処理装置20は流体供給口146から第3流体F30を受け入れることにより、第2分解領域140において発生した複数のガスのうち特定の成分を選択的に回収することを促す。
【0076】
上述のように、処理炉100は、第1回収口132と第2回収口142との間に流体供給口136および流体供給口146を有する。すなわち処理装置20は、第1分解領域130と第2分解領域140との境界領域に第3流体F30を受け入れる。これにより、処理装置20は第1分解領域130において生じた第1流体F11と第2分解領域140において生じた第2流体F21が混ざり合うことを抑制する。また、流体供給口136、流体供給口146、第1回収口132および第2回収口142は、処理対象物W10と第3流体F30を分離するための例えばフィルタや滞留空間などの分離部をそれぞれ有していてもよい。
【0077】
図8に示す処理装置20において、スクリュ120は、第1分解領域130と第2分解領域140とで異なる構成を有している。すなわちスクリュ120は、第1分解領域130において軸部120A、送りねじ部121Aおよび応力部123Aを有している。またスクリュ120は、第2分解領域140において軸部120B、送りねじ部121Bおよび応力部123Bを有している。さらに、スクリュ120は、第1分解領域130と第2分解領域140との境界部において滞留部122を有している。
【0078】
第1分解領域130における軸部120Aは、太さが一定である。一方、第2分解領域140における軸部120Bは、下流側に向かって直径が大きくなっている。第1分解領域130における送りねじ部121Aは、第2分解領域140における送りねじ121Bよりピッチが広く設定されている。このような構成により、処理装置20は、処理炉100において減容化する処理対象物W10の搬送効率が低下することを抑制している。
【0079】
また処理装置20において、スクリュ120は、流体供給口136より上流側であって、且つ、送りねじ部121Aとの間に、応力部123Aを有している。すなわちスクリュ120は、処理対象物W10を滞留、攪拌、混合、混練または粉砕する目的で送り方向に対して0度以上180度以下の範囲の角度を成す面または配列を有する凸部を流体供給口136より上流側に有する。これにより処理装置20は、第1分解領域130において所望の温度に加熱された後に所定の応力を加えることができる。これにより処理装置20は、応力部123Aにおいて生じた第1流体F11を好適に第1回収口132に誘導する。
【0080】
また処理装置20において、スクリュ120は、第2回収口142より上流側であって、且つ、送りねじ部121Bとの間に、応力部123Bを有している。すなわちスクリュ120は、処理対象物W10を滞留、攪拌、混合、混練または粉砕する目的で送り方向に対して0度以上180度以下の範囲の角度を成す面または配列を有する凸部を流体供給口146と第2回収口142との間に有する。これにより処理装置20は、第2分解領域140において所望の温度に加熱された後に所定の応力を加えることができる。よって、処理装置20は、応力部123Bにおいて生じた第2流体F21を好適に第2回収口142に誘導する。
【0081】
さらに、スクリュ120は、滞留部122を第1分解領域130と第2分解領域140との間に有することにより、第1分解領域130における雰囲気と、第2分解領域140における雰囲気と、の分離性を向上させている。なお、温度制御領域110は、第1分解領域130の温度より第2分解領域140の温度が高くなるように、処理炉100の温度を制御している。このような構成により、処理装置20は、第1回収口132から第1流体F11を好適に取り出し、第2回収口142から好適に第2流体F21を取り出し得る。なお、第1流体F11と第2流体F21とはそれぞれ第3流体F30を含み得る。しかし、第3流体F30は、後の工程において容易に分離できるものが選択される。なお、分離の手段は例えば、第1流体F11、第2流体F21、第3流体F30の成分に応じ、第1流体F11、第2流体F21、あるいは第3流体F30のいずれかを選択的に吸着するフィルタであってもよい。あるいは分離の手段は、第1冷却装置134もしくは第2冷却装置144を介して第1流体F11、第2流体F21、あるいは第3流体F30のいずれかを選択的に液化させる手段であってもよい。ただし、分離の手段は、上述の手段に限られない。
【0082】
なお、上述の構成において、流体供給口136から供給する流体の成分と、流体供給口146から供給する流体の成分とは、異なるものであってもよい。また流体供給口136および流体供給口146の構成は上述のものに限られない。
【0083】
図9を参照して、本実施の形態にかかる処理方法について説明する。
図9は、実施の形態2にかかる処理装置20が実施する処理方法のフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、ステップS12より前の工程が、実施の形態1にかかるフローチャートと異なる。
【0084】
まず、処理装置20は、第1分解領域130の温度より第2分解領域140の温度が高くなるように、処理炉100の温度を制御する(ステップS21)。例えば処理装置20は、第1分解領域130の温度を500度程度に設定し、第2分解領域140の温度を850度程度に設定する。
【0085】
次に、処理装置20の処理炉100は、第1分解領域130に設けられた第1回収口132と第2分解領域140に設けられた第2回収口142との間にさらに設けられた流体供給口136および流体供給口146から第3流体F30を受け入れる(ステップS22)。
【0086】
以降のステップは、実施の形態1にかかる方法と同様である。このような処理を実行することにより、処理装置20は、廃プラスチックを効率よく分解する処理工程を提供できる。
【0087】
以上、実施の形態2について説明した。なお、実施の形態2にかかる処理装置20において、スクリュ120は上述の機能を実現するための様々な構成を採用できる。また処理装置20は温度制御領域110の温度設定を様々な所望の温度に設定できる。以上、実施の形態2によれば、廃プラスチックを効率よく分解する処理装置等を提供することができる。
【0088】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3について説明する。
図10は、実施の形態3にかかる処理システムの構成図である。
図10に示す処理システム1は、2つの処理装置20すなわち第1処理装置20Aおよび第2処理装置20Bが直列に連結されたシステムである。
図10には、第1処理装置20Aと第2処理装置20Bとが連結した状態が模式的に示されている。
【0089】
図10に示す第1処理装置20Aは、第1分解領域130Aと、第2分解領域140Aと、を有している。第1処理装置20Aは、供給口101Aから処理対象物を受け入れて、第1分解領域130Aにおいて分解処理Aを行う。第1処理装置20Aは第2分解領域140Aにおいて分解処理Bを行う。第1処理装置20Aは、分解Bを行った後の中間物体を排出口102Aから排出する。
【0090】
第2処理装置20Bは、供給口101Bからこの中間物体を受け入れる。第2処理装置20Bは、第3分解領域130Bと、第4分解領域140Bと、を有している。第2処理装置20Bは第3分解領域130Bにおいて分解処理Cを行う。第2処理装置20Bは第4分解領域140Bにおいて分解処理Dを行う。そして第2処理装置20Bは、排出口102Bから残渣を排出する。
【0091】
以上、実施の形態3について説明した。なお、上述の処理装置20の一方または両方は、もちろん処理装置10であってもよい。また実施の形態3にかかる処理システムは、3つ以上の処理装置10が連結するものであってもよい。このような構成により、実施の形態3にかかる処理システム1は、複数の分解処理を連続して実行できる。またこのような構成により、実施の形態3にかかる処理システム1は、システム自体の柔軟な配置および柔軟なシステム構成を可能とする。すなわち、実施の形態3によれば、複数の工程を要する所望のリサイクル処理を効率よく実行できる。
【0092】
<実施の形態4>
次に、
図11を参照して実施の形態4について説明する。
図11は、実施の形態4にかかる処理システムの構成図である。
図11は実施の形態4にかかる処理システム2の構成が示されている。処理システム2は、押出機300、処理装置20および分離装置310を有している。
【0093】
押出機300は、廃プラスチックW1を受け入れると、これを加熱しながら押し出し、処理対象物W10を生成する。処理装置20は、押出機300が生成した処理対象物W10を受け入れて、所定の分解処理を行う。処理装置20は分解処理を行うことにより、第1流体F11および第2流体F21を回収し、残渣W11を排出する。
【0094】
分離装置310は、処理装置20から排出された残渣W11を受け入れると、フィルタを通してこれを濾過し、金属粉等の第1残渣W21と、タールなどの第2残渣W22と、に分別する。
【0095】
以上、実施の形態4について説明した。以上、実施の形態4によれば、廃プラスチックを効率よく分解する処理システムを提供することができる。
【0096】
<実施の形態5>
次に、
図12を参照して実施の形態5について説明する。
図12は、実施の形態5にかかる処理システムの構成図である。実施の形態5は、処理装置が、分離装置およびポンプをさらに有している点が、実施の形態4にかかる処理システムと異なる。
図12は処理システム3が示されている。処理システム3は、押出機300および処理装置30を有している。
【0097】
処理装置30は、処理装置20の後段に、分離装置310およびポンプ320を有している。これにより処理装置30は、第2分解領域140において分解処理を行った後の処理対象物を分離装置310に供給する。分離装置310は、処理対象物をフィルタリングすることにより、これを、金属粉等を含む第1残渣W21と、油脂類を含む第2残渣W22とに分別する。そして分離装置310は、第1残渣W21を処理装置30から排出するとともに、第2残渣W22をポンプ320に供給する。
【0098】
ポンプ320は、例えばギヤポンプであって、受け入れた第2残渣W22を強制的に処理装置30の外部へ排出する。このとき、ポンプ320は、処理炉100の内部の圧力を制御しつつ強制的に残渣を排出する。これにより処理装置30は、処理炉100における処理を好適に実行できる。
【0099】
以上、実施の形態6によれば、廃プラスチックを効率よく分解する処理システムを提供することができる。
【0100】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1、2、3 処理システム
10、11、12、20、30 処理装置
100 処理炉
101 供給口
102 排出口
110 温度制御領域
120 スクリュ
120A 軸部
120B 軸部
121 送りねじ部
122 滞留部
123 応力部
130 第1分解領域
132 第1回収口
133 第1流体回収管
134 第1冷却装置
135 第3流体供給管
136 流体供給口
140 第2分解領域
141 第2流体入口
142 第2回収口
143 第2流体回収管
144 第2冷却装置
145 第3流体供給管
146 流体供給口
150 駆動装置
200 制御装置
201 全体制御部
202 温度制御部
203 スクリュ回転制御部
204 第1回収制御部
205 第2回収制御部
206 IF制御部
207 記憶部
210 温度制御装置
230 第1流体回収装置
240 第2流体回収装置
250 情報入出力装置
300 押出機
310 分離装置
320 ポンプ
F11 第1流体
F21 第2流体
F30 第3流体
W10 処理対象物
W11 残渣