(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106511
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20230725BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230725BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230725BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230725BHJP
H02S 10/20 20140101ALI20230725BHJP
【FI】
H02J7/34 C
H02J7/00 302C
H02J7/35 C
H02J1/00 304G
H02J1/00 304H
H02S10/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083164
(22)【出願日】2023-05-19
(62)【分割の表示】P 2018065031の分割
【原出願日】2018-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 稔
(57)【要約】
【課題】更に小型軽量化された、発電装置の発生電力の電力制御システムを提供するを提供すること。
【解決手段】発電装置と、バス機器と、少なくとも1つのバッテリシステムと、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して制御を行う統合制御装置とを備え、前記バス機器と前記少なくとも1つのバッテリシステムは、前記発電装置に並列に直接接続され、前記少なくとも1つのバッテリシステムの各々は、双方向電力変換装置とバッテリを含み、前記双方向電力変換装置の各々は、前記発電装置の出力電圧を変換して前記バッテリ側へ出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記バス機器側へ出力することによって、前記バッテリの充放電を行い、前記統合制御装置が、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して所定の充放電制御を指示し、前記少なくとも1つのバッテリシステムが、前記バス機器のバス電圧の制御を行う電力制御システム
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、
バス機器と、
少なくとも1つのバッテリシステムと、
前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して制御を行う統合制御装置と、
を備え、
前記バス機器と前記少なくとも1つのバッテリシステムは、前記発電装置に並列に直接接続され、
前記少なくとも1つのバッテリシステムの各々は、双方向電力変換装置とバッテリを含み、
前記双方向電力変換装置の各々は、前記発電装置の出力電圧を変換して前記バッテリ側へ出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記バス機器側へ出力することによって、前記バッテリの充放電を行い、
前記統合制御装置が、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して所定の充放電制御を指示し、前記少なくとも1つのバッテリシステムが、前記バス機器のバス電圧の制御を行う電力制御システム。
【請求項2】
前記発電装置は太陽電池であり、
太陽電池回転機構を更に含み、
前記統合制御装置は、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対する充放電制御及び前記太陽電池回転機構に対する回転制御を行うことにより、前記太陽電池の出力電力の制御及び前記バス機器のバス電圧の制御を行う請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記バス機器のバス電圧の制御は、前記バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにする制御である請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記統合制御装置は、日照モード時に、前記所定の充放電制御として、前記少なくとも1つのバッテリシステムのうちの第1のバッテリシステムに対してMPPT(最大電力追尾)モードを指示する請求項3に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのバッテリシステムの数が1つであり、
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第1の電圧値となったか、又はバス電圧の値が前記所定の値に対して前記所定の範囲外となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを充電する制御モードであるバス電圧一定充電モードを指示する請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第3の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、前記バス電圧一定充電モードを指示しつつ、前記太陽電池回転機構に指示し、前記太陽電池を回転させ、前記太陽電池に対する太陽光の入射角を調整することによって、前記太陽電池の出力電力を減少させる請求項5に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第5の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バッテリを定電圧充電する制御モードである定電圧充電モードを指示する請求項6に記載の電力制御システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバッテリシステムの数が複数であり、
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第1の電圧値となったか、前記少なくとも1つのバッテリシステムのうちの第2のバッテリシステムの第2のバッテリの電圧値が第2の電圧値となったか、又はバス電圧の値が前記所定の値に対して前記所定の範囲外となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステム又は前記第2のバッテリシステムに対して、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを充電する制御モードであるバス電圧一定充電モードを指示する請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項9】
前記第1のバッテリの電圧値が第3の電圧値となったか、又は前記第2のバッテリの電圧値が第4の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステム又は前記第2のバッテリシステムに対して、前記バス電圧一定充電モードを指示しつつ、前記太陽電池回転機構に指示し、前記太陽電池を回転させ、前記太陽電池に対する太陽光の入射角を調整することによって、前記太陽電池の出力電力を減少させる請求項8に記載の電力制御システム。
【請求項10】
前記第1のバッテリの電圧値が第5の電圧値となったか、又は前記第2のバッテリの電圧値が第6の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バッテリを定電圧充電する制御モードである定電圧充電モードを指示する請求項9に記載の電力制御システム。
【請求項11】
前記統合制御装置は、日陰モード時に、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを充電する制御モードであるバス電圧一定放電モードを指示する請求項3~10のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項12】
予備バッテリを更に備え、
前記予備バッテリは、前記第1のバッテリに直列又は並列に接続された請求項1~11のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項13】
前記双方向電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータである請求項1~12のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項14】
発電装置と、
バス機器と、
少なくとも1つのバッテリシステムと、
前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して制御を行う統合制御装置と、
を備え、
前記バス機器と前記少なくとも1つのバッテリシステムは、前記発電装置に並列に直接接続され、
前記少なくとも1つのバッテリシステムの各々は、双方向電力変換装置とバッテリを含み、
前記双方向電力変換装置の各々は、前記発電装置の出力電圧を変換して前記バッテリ側へ出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記バス機器側へ出力することによって、前記バッテリの充放電を行う、
電力制御システムにおける電力制御方法であって、
前記統合制御装置が、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して所定の充放電制御を指示し、前記少なくとも1つのバッテリシステムが、前記バス機器のバス電圧の制御を行う電力制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電力制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムに関するものであり、より詳細には、バッテリ、コンバータ等を備えるバッテリシステムと、発電装置を備える電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星の電力制御は従来から余剰電力制御(シャント制御)が基本であり、人工衛星の電力制御システムは、「シャント回路+バッテリ充電器(+バッテリ放電器)」という基本構成が一般的である。系統電源がない宇宙環境においては、太陽電池の発生電力を効率良くバス機器に供給することが最優先であり、太陽電池の出力電力をコンバータ等の電力変換装置を介することなくバス機器に供給できるシャント制御は宇宙機にとって最適な電力制御手法であると認識されている。
【0003】
一方で、打上能力に制限のある宇宙機においては機器の小型軽量化が必要であり、上述のような「シャント回路+バッテリ充電器(+バッテリ放電器)」という基本構成をベースに高性能な電力変換デバイスの適用等により小型軽量化が進められている(下記非特許文献1等参照)。また、シャント回路の小型化のため、不要時に太陽電池の発生電力を減少させる技術も考案されている(下記特許文献1~3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-144399号公報
【特許文献2】特開平7-101400号公報
【特許文献3】特開平8-258800号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Iwasa, H. Kusawake, S. Shimada, A. Ishii, Y. Kikuchi, K. Aoki, J. Shimizu and T. Ito, LIGHTWEIGHT POWER CONTROL UNITS AND POWER DISTRIBUTION CONTROL UNIT FOR SATELLITES, the journal of space technology and science, vol.28, no.1, pp.30-36, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工衛星の必要電力は増加の傾向にあり、特に静止衛星の代表格である通信・放送衛星では数十kWという大電力が求められており、電力制御システムの更なる小型軽量化が求められている。しかしながら、従来の「シャント回路+バッテリ充電器(+バッテリ放電器)」という基本構成では、小型軽量化に限界がある。また、太陽電池の発生電力を減少させる手法においてもシャント回路を無くすことは困難、又はできたとしてもシャント回路よりも大規模な装置が必要となり現実的ではない。
【0007】
このような状況は地上においても同様であり、また、電力制御システムにおいて、発電装置が太陽電池の場合についてのみならず、例えば、発電装置が風力発電装置や燃料電池等の発電装置の場合においても同様である。
【0008】
そこで、本発明は、更に小型軽量化された、発電装置の発生電力の電力制御システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、発電装置と、バス機器と、少なくとも1つのバッテリシステムと、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して制御を行う統合制御装置とを備え、前記バス機器と前記少なくとも1つのバッテリシステムは、前記発電装置に並列に直接接続され、前記少なくとも1つのバッテリシステムの各々は、双方向電力変換装置とバッテリを含み、前記双方向電力変換装置の各々は、前記発電装置の出力電圧を変換して前記バッテリ側へ出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記バス機器側へ出力することによって、前記バッテリの充放電を行い、前記統合制御装置が、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して所定の充放電制御を指示し、前記少なくとも1つのバッテリシステムが、前記バス機器のバス電圧の制御を行う電力制御システムを提供するものである。
【0010】
前記発電装置は太陽電池であり、前記電力制御しては太陽電池回転機構を更に含み、前記統合制御装置は、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対する充放電制御及び前記太陽電池回転機構に対する回転制御を行うことにより、前記太陽電池の出力電力の制御及び前記バス機器のバス電圧の制御を行うものとすることができる。
【0011】
前記バス機器のバス電圧の制御は、前記バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにする制御であるものとすることができる。
【0012】
前記統合制御装置は、日照モード時に、前記所定の充放電制御として、前記少なくとも1つのバッテリシステムのうちの第1のバッテリシステムに対してMPPT(最大電力追尾)モードを指示するものとすることができる。
【0013】
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第1の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを充電する制御モードであるバス電圧一定充電モードを指示するものとすることができる。
【0014】
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第3の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、前記バス電圧一定充電モードを指示しつつ、前記太陽電池回転機構に指示し、前記太陽電池を回転させ、前記太陽電池に対する太陽光の入射角を調整することによって、前記太陽電池の出力電力を減少させるものとすることができる。
【0015】
前記第1のバッテリシステムの第1のバッテリの電圧値が第5の電圧値となった場合、統合制御装置は、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バッテリを定電圧充電する制御モードである定電圧充電モードを指示するものとすることができる。
【0016】
前記統合制御装置は、日陰モード時に、前記充放電制御として、前記第1のバッテリシステムに対して、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを放電する制御モードであるバス電圧一定放電モードを指示するものとすることができる。
【0017】
前記電力制御システムは予備バッテリを更に備え、前記予備バッテリは、前記第1のバッテリに直列又は並列に接続されたものとすることができる。
【0018】
前記双方向電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであるものとすることができる。
【0019】
本発明の1つの態様は、発電装置と、バス機器と、少なくとも1つのバッテリシステムと、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して制御を行う統合制御装置とを備え、前記バス機器と前記少なくとも1つのバッテリシステムは、前記発電装置に並列に直接接続され、前記少なくとも1つのバッテリシステムの各々は、双方向電力変換装置とバッテリを含み、前記双方向電力変換装置の各々は、前記発電装置の出力電圧を変換して前記バッテリ側へ出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記バス機器側へ出力することによって、前記バッテリの充放電を行う電力制御システムにおける電力制御方法であって、前記統合制御装置が、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して所定の充放電制御を指示し、前記少なくとも1つのバッテリシステムが、前記バス機器のバス電圧の制御を行う電力制御方法を提供するものである。
【0020】
本発明の1つの態様は、前記電力制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
【0021】
本発明の1つの態様は、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
上記構成を有する本発明によれば、電力変換装置を介することなくバス機器に電力を供給し、更に小型軽量化された、発電装置の発生電力の電力制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る電力制御システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る電力制御システムの統合制御装置50のハードウエア構成の例を示す図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る電力制御システムの日照モード時の電力制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る電力制御システム1の全体構成を示す図である。電力制御システム1は、太陽電池10、太陽電池回転機構11、第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30、バス機器40、統合制御装置50を備える。
【0026】
第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30、バス機器40は、太陽電池10に並列に直接接続されている。
【0027】
太陽電池回転機構11は、太陽電池10を回転させて、太陽電池10に対する太陽光の入射角を変化させることによって、太陽電池の出力電力を変化させることができる。
【0028】
第1のバッテリシステム20は、第1の電力変換装置である第1の双方向DC/DCコンバータ210、第1のバッテリ230を備える。同様に、第2のバッテリシステム30は、第2の双方向DC/DCコンバータ310、第2のバッテリ330を備える。
【0029】
第1の双方向DC/DCコンバータ210は、第1の制御部211、第1の記憶部213を備える。同様に、第2の双方向DC/DCコンバータ310は、第2の制御部311、第2の記憶部313を備える。第1の双方向DC/DCコンバータ210、第2の双方向DC/DCコンバータ310は、それぞれPWM(パルス幅変調)によって太陽電池10の出力電圧を変換してバッテリ側へ出力し、第1のバッテリ230、第2のバッテリ330の出力電圧を変換してバス機器側へ出力することによって、第1のバッテリ230、第2のバッテリ330の充放電を行う。第1の制御部211、第2の制御部311は、それぞれの双方向DC/DCコンバータのPWMのデューティー比を制御する。また、各双方向DC/DCコンバータにおいては、図示しない各電圧計、電流計により、太陽電池10の動作電圧、出力電流、双方向DC/DCコンバータの入力側電圧値(バス電圧値)、出力側電圧値(バッテリ電圧値)、入力側電流値、出力側電流値等が測定されて、各制御部に入力される。
【0030】
統合制御装置50は、太陽電池10、バス機器40、各バッテリシステムの双方向DC/DCコンバータ、バッテリの電圧や電流、バッテリのSOC(State of Charge:充電率)等のシステム全体の状態を監視し、その監視結果に基づいて、また日照モード、日陰モードのいずれのモードかに基づいて、どの双方向DC/DCコンバータに対してどの制御モードを指示するかを判定し、各双方向DC/DCコンバータに対して、判定された制御モードを指示し、また、必要に応じて太陽電池回転機構11に対して回転角を指示する。
本実施形態においては、制御モードは、MPPT(最大電力追尾)モード、定電流充電モード、定電流放電モード、定電圧充電モード、バス電圧一定充電モード、バス電圧一定放電モードの6つである。MPPTモードは太陽電池出力を最大化する制御を行う。定電流充電モードは、バッテリを定電流充電する制御を行う。定電流放電モードは、バッテリを定電流放電する制御を行う。定電圧充電モードは、バッテリを定電圧充電する制御を行う。バス電圧一定充電モードは、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを充電する制御を行う。バス電圧一定放電モードは、バス電圧の値が所定の値に対して所定の範囲内に収まるようにバッテリを放電する制御を行う。
【0031】
ここで、各双方向DC/DCコンバータにおけるPWMのデューティー比の制御は、各双方向DC/DCコンバータの制御部が、統合制御装置50から送信された制御モード信号に基づいて行う。
【0032】
図2は、本実施形態に係る電力制御システム1の統合制御装置50のハードウエア構成の例を示す図である。統合制御装置50は、CPU50a、RAM50b、ROM50c、外部メモリ50d、入力部50e、出力部50f、通信部50gを含む。RAM50b、ROM50c、外部メモリ50d、入力部50e、出力部50f、通信部50gは、システムバス50hを介して、CPU50aに接続されている。各双方向DC/DCコンバータの制御部のハードウエア構成も同様である。
図1に示される統合制御装置50の制御部の各部は、ROM50cや外部メモリ50dに記憶された各種プログラムが、CPU50a、RAM50b、ROM50c、外部メモリ50d、入力部50e、出力部50f、通信部50g等を資源として使用することで実現される。各双方向DC/DCコンバータの制御部についても同様である。
【0033】
以上のシステム構成を前提に、本発明の1つの実施形態に係る電力制御システムの電力制御処理の例を以下に説明する。
【0034】
(1)日照モード時の制御
まず、日照モード時の電力制御処理の例について説明する。
図3は、本実施形態に係る電力制御システムの日照モード時の電力制御処理のフローチャートである。
【0035】
統合制御装置50は、第1のバッテリシステム20に対してMTTPモードを指示し、第2のバッテリシステム30に対して定電流充電モード又は定電流放電モードを指示し、第1の制御部211、第2の制御部311は、太陽電池10の出力を最大化すると共に、バス電圧の値が、所定の値であるバス基準電圧に対して所定の範囲内に収まるように制御する(S301)。該所定の値は、バス基準電圧に限定されるものではなく、他の任意の適切な値とすることができる。
【0036】
第2のバッテリ330に対する充電が進み、統合制御装置50が、第1のバッテリ230の電圧値が第1の電圧値となったか、第2のバッテリ330の電圧値が第2の電圧値となったか、又はバス電圧の値がバス基準電圧に対して所定の範囲外となったことを検知すると(S303)、統合制御装置50は、第1のバッテリシステム20又は第2のバッテリシステム30に対してバス電圧一定充電モードを指示し、第1の制御部211又は第2の制御部311は、バス電圧がバス基準電圧に対して所定の範囲内に収まるように第1のバッテリ230又は第2のバッテリ330の充電量を増減させる。すなわち、バス電圧がバス基準電圧よりも低いときは、第1のバッテリ230又は第2のバッテリ330の充電量を減らし、バス電圧がバス基準電圧よりも高いときは、第1のバッテリ230又は第2のバッテリ330の充電量を増やして、バス電圧がバス基準電圧に対して所定の範囲内に収まるように制御する(S305)。バッテリ充電量の制御は、統合制御装置50が、第1のバッテリ230の電圧値が第1の電圧値となったか、又は第2のバッテリ330の電圧値が第2の電圧値となったことを検知した場合に換えて又は加えて、第1のバッテリ230のSOC値が第1のSOC値となったか、又は第2のバッテリ330のSOC値が第2のSOC値となったことを検知した場合に行ってもよい。
【0037】
第2のバッテリ330に対する充電が更に進み、統合制御装置50が、第1のバッテリ230の電圧値が第3の電圧値となったか、又は第2のバッテリ330の電圧値が第4の電圧値となったことを検知すると(S307)、統合制御装置50は、太陽電池回転機構11に指示し、太陽電池10を回転させ、太陽電池10に対する太陽光の入射角を調整することによって、太陽電池の出力電力を減少させる(S309)。このとき、S305で開始されたバス電圧一定充電モードの制御は継続して行われる。太陽電池の回転制御は、統合制御装置50が、第1のバッテリ230の電圧値が第3の電圧値となったか、又は第2のバッテリ330の電圧値が第4の電圧値となったことを検知した場合に換えて又は加えて、第1のバッテリ230のSOC値が第3のSOC値となったか、又は第2のバッテリ330のSOC値が第4のSOC値となったことを検知した場合に行ってもよい。
【0038】
ここで、電力制御システム1が宇宙機等の移動体に搭載される場合、太陽電池10の回転制御は姿勢制御に関わるため、制御タイミングの時間間隔が小さいと姿勢が不安定になる。そこで、そのような場合は、太陽電池10の回転制御タイミングの時間間隔が大きくなるようにするとよい。例えば、回転制御タイミングの時間間隔そのものを大きくしてもよいし、バス基準電圧に対して複数の閾値レベル(例えば、バス基準電圧50Vに対して、+1V、+2V、+3V、・・・)を設定し、各閾値レベルに達した場合に回転制御を行うようにしてもよい。
【0039】
太陽電池10に対する回転制御によって太陽電池10の出力電圧を減少させても、統合制御装置50が、第1のバッテリ230の電圧値が第5の電圧値となったか、又は第2のバッテリ330の電圧値が第6の電圧値となったことを検知すると(S311)、統合制御装置50は、第1のバッテリシステム20又は第2のバッテリシステム30に対して定電圧充電モードを指示し、第1のバッテリ230及び/又は第2のバッテリ330を保護する(S313)。
【0040】
(2)日陰モード時の制御
次に、日陰モード時の電力制御処理の例について説明する。統合制御装置50は、第1のバッテリシステム20に対してバス電圧一定放電モードを指示し、第2のバッテリシステム30に対して定電流放電モード又はバス電圧一定放電モードを指示し、第1のバッテリシステム20、第2のバッテリシステム30は、バス機器40に対して電力を供給すると共に、バス電圧の値がバス基準電圧に対して所定の範囲内に収まるように制御する。
【0041】
本実施形態によれば、双方向DC/DCコンバータは、従来の電力制御システムの基本構成のバッテリ充電器の一部改良で構築できることから、従来の電力制御システムの基本構成のシャント回路及びバッテリ放電器を不要とすることができ、機器の大幅な削減が可能となる。そして、シャント制御の利点である太陽電池をバス機器に直結する構成は維持しつつ、小型軽量化を実現することができる。
【0042】
上記実施形態においては、太陽電池10に対して、複数の双方向DC/DCコンバータが並列に接続されているため、双方向DC/DCコンバータ間の制御干渉が生じうる。よって、この制御干渉を低減するための装置を設けてもよい。複数の双方向DC/DCコンバータ間の制御干渉低減技術は、例えば、岩佐稔、内藤均、艸分宏昌,“分散協調制御を適用した宇宙機電源システムの研究”,電子情報通信学会技術研究報告 EE 電子通信エネルギー技術,一般社団法人電子情報通信学会,2016年1月21日,第115巻,第429号,pp.115-120等に開示されている技術を用いることができ、その詳細な説明は省略する。
【0043】
上記実施形態においては、バッテリシステムの数は2つであったが、バッテリシステムの数は、1つ以上の任意の適切な数とすることができる。ここで、バッテリシステムの数が1つの場合の制御モードは、日照時の制御のステップ301においては、MPPTモードとする。ただし、バス電圧の値がバス基準電圧を上回ることが検知された場合は、バス電圧一定充電モードとし、下回ることが検知された場合は、バス電圧一定放電モードとし、バス電圧の値が所定の値となることが検知されると、再びMPPTモードとする。また、日陰時の制御においては、バス電圧一定放電モードとする。
【0044】
上記実施形態において、各バッテリに予備バッテリが直列又は並列に接続される構成ともよい。そのような構成によれば、従来、シャントにより捨てていた余剰電力を予備バッテリに蓄えることにより、異常等の抗たん性が向上する。
【0045】
上記実施形態においては、統合制御装置50と各双方向DC/DCコンバータの制御部は別個なものとして構成されていたが、統合制御装置50の一部又は全部は、各双方向DC/DCコンバータの制御部の1つ又は複数に含まれる構成としてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、すべてのバッテリシステムの双方向電力変換装置を、双方向DC/DCコンバータとしたが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の電力変換装置を用いることができる。
【0047】
上記実施形態においては、発電装置を太陽電池としたが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の発電装置とすることができる。
【0048】
以上、本発明について、例示のためにいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細について、様々な変形及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0049】
1 電力制御システム
10 太陽電池
11 太陽電池回転機構
20 第1のバッテリシステム
30 第2のバッテリシステム
40 バス機器
50 統合制御装置
210 第1の双方向DC/DCコンバータ
310 第2の双方向DC/DCコンバータ
211 第1の制御部
311 第2の制御部
213 第1の記憶部
313 第2の記憶部
230 第1のバッテリ
330 第2のバッテリ
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、
バス機器と、
少なくとも1つのバッテリシステムと、
前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して制御を行う統合制御装置と、
を備え、
前記バス機器と前記少なくとも1つのバッテリシステムは、前記発電装置に並列に直接接続され、
前記少なくとも1つのバッテリシステムの各々は、双方向電力変換装置とバッテリを含み、
前記双方向電力変換装置の各々は、前記発電装置の出力電圧を変換して前記バッテリ側へ出力し、前記バッテリの出力電圧を変換して前記バス機器側へ出力することによって、前記バッテリの充放電を行い、
前記統合制御装置が、前記少なくとも1つのバッテリシステムに対して所定の充放電制御を指示し、前記少なくとも1つのバッテリシステムが、前記バス機器のバス電圧の制御を行う電力制御システム。