(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010652
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】荷電粒子の加速器を用いたペンシルビームスキャンによるフラッシュ付与のための治療計画を実行するための治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108848
(22)【出願日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】21184673.8
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラバーブ,ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ホトイウ,ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】クレルボ,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】クリエ,ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC05
4C082AE01
4C082AG02
4C082AN02
4C082AN04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】荷電粒子の加速器を用いたペンシルビームスキャンによるフラッシュ付与のための治療計画を実行するための治療装置を提供する。
【解決手段】フラッシュ体積(Vht)のフラッシュスポット(Si)の広がった細胞に標的線量(Dti)を付与する時間を短縮するために、フラッシュスポットは、k組のn個のフラッシュスポット(Si)に組み合わされる。第iのフラッシュスポット(Si)の広がった細胞に第jのパルス線量(Dij)を付与した後、ビームは、フラッシュスキャンサブシーケンスにしたがって第iのフラッシュスポット(Si)から次の第(i+1)のフラッシュスポットに移動して、フラッシュスキャンサブシーケンスの後続のフラッシュスポットのそれぞれの広がった細胞に第jの線量を付与し、以降同様に、第iのフラッシュスポットに戻って、第(j+1)の線量(Di(j+1))を付与するまでこれを行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子、好ましくは陽子のビーム(100)を用いた治療体積(V)の治療のための治療装置において、前記治療体積(V)が、
・実質的に腫瘍細胞(3t)のみを含む標的体積(Vt)と、
・健康な細胞(3h)、及び好ましくは腫瘍細胞(3t)を含むフラッシュ体積(Vht)と
から構成され、
前記治療装置が、
・ペンシルビームスキャン(PBS)によって、前記治療体積(V)全体に広がる単一のペインティング層にわたって分布したスポット(Si、Ri)ごとに、線量(Dij)が前記フラッシュ体積(Vht)内に内包された前記スポット(Si)に超高線量付与率(HDR)で付与されるように、前記治療体積(V)内に前記線量(Dij)を付与するために荷電粒子のパルスを送達するように構成されたパルス粒子加速器において、HDRが、線量率HDR≧1Gy/sとして定義され、
○前記荷電粒子がパルス(Pij)で放出され、各パルスが最大パルス電荷(CM)以下のパルス電荷(Cij)(すなわち、CM≧Cij)及びパルス時間(tp)の持続時間を有し、前記パルスがインターパルス間隔(Δtp)だけ互いに隔てられ、
○荷電粒子の前記ビームが、第1のフラッシュスポットから第2のフラッシュスポットまで最大スキャン速度(vs=ds/Δts)でスキャンすることができ、dsが、前記第1のフラッシュスポットと前記第2のフラッシュスポットとの間の距離であり、Δtsが、前記第1のフラッシュスポットから前記第2のフラッシュスポットまでスキャンするのに必要なスキャン時間である
パルス粒子加速器と、
・治療計画(TP)を実施するように前記パルス粒子加速器を制御するように構成されたプロセッサにおいて、前記治療計画が、
○照射軸(X)に垂直な投影面(Π)上に、前記ビーム(100)に略平行である前記照射軸(X)に平行に投影された、前記フラッシュ体積(Vht)の射影の範囲を覆うN個のフラッシュスポット(Si)のメッシュの規定と、
○各フラッシュスポット(Si)について、各フラッシュスポット(Si)の広がった前記細胞に標的線量(Dti)を付与するために必要な標的電荷(Cti)の規定と、
○各フラッシュスポット(Si)の広がった前記細胞に前記標的線量(Dti)を付与するために必要なある数(mi)のパルスの理論上のパルス電荷(Cij)を含む、各フラッシュスポット(Si)についての理論上のフラッシュ電荷計画の規定において、前記標的電荷(Cti)が、フラッシュスポットを照射する前記数(mi)の理論上のパルス電荷(Cij)の和に等しい(すなわち、
)、又は前記標的線量(Dti)が、各パルス電荷(Cij)によって前記フラッシュスポットの広がった前記細胞に付与された前記数(mi)のパルス線量(Dij)の和に等しい(すなわち、
)規定と、
○前記対応する数(mi)のパルス線量(Dij)が各フラッシュスポットの広がった前記細胞に付与されるフラッシュスポット(Si)のシーケンスを含む、前記N個のフラッシュスポットのフラッシュスキャンシーケンスの規定と
を含む
プロセッサと
を備え、
前記フラッシュスキャンシーケンスが、
・ある数(k)の組(5)の規定において、各組(5)が数nのフラッシュスポット(Si)を含み、1<n<Nである、規定と、
・n個の組み合わされたフラッシュスポットの各組(5)について、前記組のすべての連続する第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットと((Si、S(i+1))及び(Sn、S1))の間の前記距離(ds)が常に前記スキャン速度(vs)と不感時間(td)との積として定義される最大距離(dM)以下となる(すなわち、d≦dM=vs×td)ように、前記n個の組み合わされたフラッシュスポットのフラッシュスキャンサブシーケンスの規定において、前記不感時間(td)が、パルスの末尾と次のパルスの先頭との間の時間(すなわち、td=Δtp-tp)である、規定と
を含み、且つ
前記プロセッサが、例えば、
(a)第1のフラッシュスポット(S1)(すなわちi=1)に前記ビームを向け、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第1の組の第1のフラッシュスキャンサブシーケンスの第1のフラッシュスポット(S1)の広がった前記細胞に、対応する第1のパルス線量(D11)を付与し、
(b)前記フラッシュスキャンサブシーケンスの第2のフラッシュスポット(S2)(すなわち、i=2)に前記ビームを移動させ、治療セッション中に前記第1のフラッシュスポット(S1)に実際に送達された実際の第1のパルス電荷(C11)を測定するため、及び前記理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて前記第1のフラッシュスポット(S1)で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(C12)を計算するために必要な推定時間の間に、前記第2のフラッシュスポット(S2)の広がった前記細胞に、第1のパルス電荷(C21)を送達して、第1のパルス線量(D21)を付与し、
(c)i<nである場合、前記フラッシュスキャンサブシーケンスの第iのフラッシュスポット(Si)に前記ビームを移動させ、治療セッション中に前のフラッシュスポット(S(i-1))に実際に送達された実際の前のパルス電荷(C(i-1)1)を測定するため、及び前記理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて前記前のフラッシュスポット(S(i-1))で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(C(i-1)2)を計算するために必要な推定時間の間に、前記第iのフラッシュスポット(Si)の広がった前記細胞に、第1のパルス電荷(Ci1)を送達し、
(d)i=nになるまで前の前記ステップを(n-3)回繰り返し、
(e)前記フラッシュスキャンサブシーケンスの前記第1のフラッシュスポット(S1)(すなわち、i=1)に前記ビームを戻し、治療セッション中に前記第nのフラッシュスポット(Sn)に送達された実際の第1のパルス電荷(Cn1)を測定するため、及び前記理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて前記第nのフラッシュスポット(Sn)で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(Cn2)を計算するために必要な推定時間の間に、前記第1のフラッシュスポット(S1)に上記のように計算された前記調整された理論上の第2のパルス電荷(C12)(すなわち、j=2)を付与し、
(f)j=(mi-1)になるまで前記ステップ(b)~(e)を繰り返し、少なくとも、前記標的電荷(Cti)がn個の組み合わされたフラッシュスポットの前記第1の組の各フラッシュスポット(S1、Sn)に送達されるまで、j=miについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返し、
(g)n個の組み合わされたフラッシュスポットの第2の組の第2のフラッシュスキャンサブシーケンスにしたがって第1のフラッシュスポットに前記ビームを移動させ、n個の組み合わされたフラッシュスポットの前記第2の組の前記n個の組み合わされたフラッシュスポットについて前記ステップ(a)~(f)を繰り返し、
(h)前記対応する標的電荷(Cti)が、前記メッシュのすべてのk組(5)の前記n個の組み合わされたフラッシュスポットにHDRで送達されるまで、n個の組み合わされたフラッシュスポットの残りの(k-2)組の前記フラッシュスキャンサブシーケンスに対して最後のステップを繰り返す
ように前記パルス粒子加速器を制御するように構成されることを特徴とする治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の治療装置において、組(5)における組み合わされたフラッシュスポットの前記数(n)が、
・tc/tdが整数の場合、比率tc/td>1(すなわち、
の場合、n=tc/td)であり、
・それ以外の場合、1と前記比率(tc/td)の整数部分との和(すなわち、n=INTEGER(tc/td)+1)であり、
tdは前記不感時間であり、tcは、前記第2のパルス(Pi(j+1))に先行する第1のパルス(Pij)で測定された実際のパルス電荷(Cij)に基づいて計算された前記調整された理論上のパルス電荷(Ci(j+1))にしたがって次のパルス(P(j+1))を規定及び準備するために前記パルス粒子加速器によって必要とされる計算時間であり、前記不感時間よりも長い(tc>td)ことを特徴とする治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の治療装置において、前記計算時間(tc)が、少なくとも以下のステップ、すなわち、
・第iのフラッシュスポット(Si)に付与された第jのパルス(Pij)によって送達された前記パルス電荷(Cij)を測定するステップと、
・累積された理論上のパルス電荷
を、j個のパルスの後に前記第iのフラッシュスポット(Si)において実際に測定された累積されたパルス電荷
と比較することによって、前記電荷計画に適合するために必要な第(j+1)のパルス(Pi(j+1))によって前記第iのフラッシュスポットに付与すべき調整された理論上のパルス電荷(Ci(j+1))を計算するステップと、
・前記理論上のパルス電荷(Ci(j+1))の前記調整された値で前記次のパルス(Pi(j+1))を放出するように前記パルス粒子加速器を準備するステップと
を完了することが必要とされることを特徴とする治療装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の治療装置において、n個の組み合わされたフラッシュスポットの組(5)の前記数(k)が、比(N/n)の整数部分(すなわち、n=INTEGER(N/n))であり、nR個のフラッシュスポットの追加の組が、請求項1に記載のn個の組み合わされたフラッシュスポットの前記組と定義されて取り扱われ、nR(<n)が、前記標的電荷(Cti)が前記メッシュのすべてのN個のフラッシュスポットにHDRで送達されるまで、前記比N/nの残りであることを特徴とする治療装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の治療装置において、前記フラッシュスキャンシーケンスが、
・前記k組(5)のすべてについて組み合わされたフラッシュスポットの前記数(n)が2であり(すなわち、n=2)、
・n=2個のフラッシュスポット(S1、S2)の第1の組の前記フラッシュスキャンサブシーケンスにおける前記第2のフラッシュスポット(S2)が、前記第1のフラッシュスポット(S1)に第1の標的電荷(Ct1)を送達するために必要なパルス(P1~Pm1)の前記数(m1)より多い、第2の標的電荷(Ct2)に到達するためのパルス(P1~Pm2)の数(m2)を受けなければならない(すなわち、m1<m2且つCt1<Ct2)
ことを含み、
前記プロセッサが、例えば、
・前記第1の組(5)の前記第1のフラッシュスポット(S1)及び前記第2のフラッシュスポット(S2)がそれぞれm1個のパルスを受け、前記標的電荷(Ct1)が前記第1のフラッシュスポット(S1)に送達された場合、前記第1のフラッシュスポット(S1)から前記第2のフラッシュスポット(S2)を乖離し、
・第3のフラッシュスポット(S3)と前記第2のフラッシュスポット(S2)を組み合わせてn=2個のフラッシュスポット(S2、S3)の第2の組を形成し、前記第3のフラッシュスポット(S3)が、前記第2のフラッシュスポット(S2)から距離d(≦DM)に位置し、第2のフラッシュスポット(S2)及び第3のフラッシュスポット(S3)の両方がそれぞれ(m2-m1個の)パルスを受け、前記第2のフラッシュスポット(S2)が前記標的電荷(Ct2)を受けるまで、残留電荷(Ct2-Ct1)より大きい第3の標的電荷(Ct3)を受けなければならず、
・前記第2のフラッシュスポット(S2)から前記第3のフラッシュスポット(S3)を解離し、第4のフラッシュスポット(S4)と前記第3のフラッシュスポットを組み合わせてn=2個のフラッシュスポット(S3、S4)の第3の組を形成し、以降同様に、前記メッシュのすべてのN個のフラッシュスポットがHDRでそれぞれの標的電荷(Cti)を受けるまで続けられる
ように前記パルス粒子加速器を制御するように構成されることを特徴とする治療装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の治療装置において、前記治療計画が、
・前記投影面(Π)上に、前記照射軸(X)に平行に投影された、前記標的体積(Vt)(すなわち、Vt=V-Vht)の射影の範囲を覆うM個の通常スポット(Ri)のメッシュの規定と、
・必ずしもHDRではなくmi個のパルスで前記標的電荷(Cti)を付与するための各パルス電荷(Cij)の値を規定する、各通常スポット(Ri)についての通常電荷計画と、
・前記M個の通常スポット(Ri)のそれぞれ1つに前記標的電荷(Cti)を付与するための通常スキャンシーケンスの規定と
を含むことを特徴とする治療装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の治療計画(TP)を実施するための治療計画システム(TPS)において、前記TPSが、
・照射軸(X)に垂直な投影面(Π)上に、前記ビーム(100)に略平行である前記照射軸(X)に平行に投影された、前記フラッシュ体積(Vht)の射影の範囲を覆うN個のフラッシュスポット(Si)のメッシュを規定するように構成されたメッシュユニットと、
・各フラッシュスポット(Si)について、各フラッシュスポット(Si)の広がった前記細胞に標的線量(Dti)を付与するために必要な標的電荷(Cti)を規定するように構成された標的電荷ユニットと、
・各フラッシュスポット(Si)の広がった前記細胞に前記標的線量(Dti)を付与するために必要なある数(mi)のパルスの理論上のパルス電荷(Cij)を規定する、各フラッシュスポット(Si)についての理論上のフラッシュ電荷計画を決定するように構成されたフラッシュ計画ユニットにおいて、前記標的電荷(Cti)が、フラッシュスポットを照射する前記数(mi)の理論上のパルス電荷(Cij)の和に等しい(すなわち、
)、又は前記標的線量(Dti)が、各パルス電荷(Cij)によって前記フラッシュスポットの広がった前記細胞に付与された前記数(mi)のパルス線量(Dij)の和に等しい(すなわち、
)、フラッシュ計画ユニットと、
・前記対応する数(mi)のパルス線量(Dij)が各フラッシュスポットの広がった前記細胞に付与されるフラッシュスポット(Si)のシーケンスを規定する、前記N個のフラッシュスポットのフラッシュスキャンシーケンスを規定するように構成されたフラッシュスキャンシーケンスユニットと
を備え、
前記フラッシュスキャンシーケンスユニットが、以下の動作、すなわち、
・ある数(k)の組(5)を規定する動作において、各組(5)が数nのフラッシュスポット(Si)を含み、1<n<Nである、動作と、
・n個の組み合わされたフラッシュスポットの各組(5)について、前記組のすべての連続する第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットと((Si、S(i+1))及び(Sn、S1))の間の前記距離(ds)が常に前記スキャン速度(vs)と不感時間(td)との積として定義される最大距離(dM)以下となる(すなわち、d≦dM=vs×td)ように、前記n個の組み合わされたフラッシュスポットのフラッシュスキャンサブシーケンスを規定する動作において、前記不感時間(td)が、パルスの末尾と次のパルスの先頭との間の時間(すなわち、td=Δtp-tp)である、動作と
を計画するように構成されることを特徴とする治療計画システム(TPS)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子、好ましくは陽子のビームを用いた健康な細胞、及び好ましくは腫瘍細胞を含むフラッシュ体積(Vht)を含む治療体積(V)の治療のための計画を実行するための治療装置に関する。健康な細胞を温存し、腫瘍細胞を死滅させるためには、フラッシュ体積(Vht)に超高付与率(HDR)で線量を付与しなければならない。ビームは、荷電粒子のパルスを送達するパルス粒子加速器から放出される。フラッシュ体積(Vht)に標的線量を付与するためには、パルスビームのいくつかのパルスが一般に必要とされ、このことは、HDRを可能にするための限界を超えて付与時間を長引かせ得る。本発明による治療計画によって、ペンシルビームスキャン(PBS)によって、フラッシュ体積全体に広がる単一ペインティング層にわたって分布したスポットごとに、フラッシュ体積(Vht)内の所定の位置にHDRで標的線量を付与することが可能になる。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム、陽子ビーム、重イオンビーム、X線、γ線などの粒子又は波動による放射線治療は、腫瘍を患う患者を治療するために不可欠な手段となっている。
【0003】
このような放射線によって体積内に含まれる腫瘍細胞及び健康な細胞の両方が損傷を受けるため、健康な細胞、特に腫瘍細胞に隣接する健康な細胞を可能な限り温存しつつ、腫瘍細胞を効果的に破壊又は死滅させることを確保する治療計画を規定することが癌治療における主要な課題である。治療計画の最初のステップは、CTスキャンによる腫瘍領域の画像の撮影である。これらの画像に基づいて、腫瘍医が、適切な標的を特定し、腫瘍細胞を死滅させるために場所及び付与される線量を決定する。このような計画は、複数の、多くの場合に競合するパラメータを満たさなければならず、そのために極めて複雑である。この理由のために、治療計画システムは一般にコンピュータで生成される。
【0004】
治療計画が満たさなければならない第1の基準は、治療の終了時に、腫瘍細胞を死滅させるのに十分な総標的線量が体積に送達されることを確保することである。同時に、治療計画が満たすべき第2の基準は、腫瘍細胞に隣接する健康な細胞の劣化を最小化することである。腫瘍細胞を含む体積における線量付与がどれだけ正確であっても、腫瘍細胞を含む体積に到達する放射線は、ほぼ必然的に健康な細胞を横断し、その上、その体積に囲まれた又はその体積に含まれる健康な細胞にも線量を送達する。放射線が異なれば、付与されるエネルギーのパターンが異なる。例えば、X線は、表皮付近の深さでそれらのエネルギーの大部分を付与し、付与されるエネルギーは深さと共に減少する。したがって、腫瘍細胞の標的体積の上流に位置する健康な組織は、標的体積の腫瘍細胞よりも高い線量を受ける。これに対して、
図1(a)及び
図1(c)に示すように、荷電粒子ビーム、特に陽子は、それらのビーム経路の終わり付近でそれらのエネルギーの大部分を付与して、いわゆるブラッグピークを形成する。
【0005】
ペンシルビームスキャン(PBS)は、腫瘍細胞を含む標的体積を規定するスポットのメッシュのうちの個々のスポットに向けて荷電粒子のビームをステアリングすることから構成される技法である。これにより、所定の標的線量が、個々のスポットの広がった細胞に付与される。ビームステアリング及び線量付与は、各スポットにおいて付与すべき電荷とスポットのスキャンシーケンスとを規定する治療計画にしたがって進められる。PBSは、腫瘍の幾何学的形状を反映するように治療すべき範囲を形成することによって、周囲の非がん細胞の不要な放射線被曝を低減する。標的の幾何学的形状の他、PBSによって、標的内のスポットの位置に応じてビームの強度を局所的に調整することができる。
【0006】
メッシュは、一般に、いくつかのペインティング層を含み、各ペインティング層は、照射軸(X)に垂直な平面上に配置されたスポットの2次元配列から構成される。いくつかのペインティング層を順次配置することによって、結果として得られたスポットのメッシュにより標的体積の全体が規定される。加速陽子線を用いると、1本のビームが、照射軸(X)に沿って各ペインティング層において深さをずらしていくつかのブラッグピークを重ね合わせることにより、各ペインティング層の対応するスポットにおいて所定の電荷を連続的に付与することができる。この結果、腫瘍細胞の体積の深さ全体に広がる、又はその体積の一部に広がる拡大ブラッグピーク(Spread Out Bragg Peaks、SOBP)が得られる。この技法は、異なるビームエネルギーのいくつかのペインティング層におけるPBSによって、標的体積に標的線量を送達することを可能にする。線量が付与されるペインティング層(又は深さ)は制御され得る、つまり加速粒子のエネルギーによって制御され得る。上記ペインティング層においてスポットの広がった細胞に付与される線量は制御される、つまりビームのフルエンス(=単位面積当たりの電荷の数)によって制御される。ブラッグピークの形状に関連した付与パターンによって、陽子線が横断する、標的体積の上流に位置する健康な細胞は、体積内の細胞よりも低い線量を受ける。しかしながら、治療計画を設計する場合には、所与のペインティング層のスポットの広がった細胞が、所与のペインティング層の下流にあるペインティング層に位置する対応するスポットの広がった細胞に線量が付与されるたびに、以前に付与された線量に足し合わさる線量を受けることに注意しなければならない。本明細書において、「下流」及び「上流」という用語は、ビームの伝播の方向に対して使用される。
【0007】
陽子線に関して上述したSOBPでは、標的体積の上流に位置する健康な細胞は、標的体積内に含まれる細胞より大幅に低い線量を受ける。一方、標的体積内にある又は標的体積に隣接する健康な細胞は、同じ標的体積内の隣接する腫瘍細胞と同程度の線量を受ける。放射線治療の1つの原則として、健康な細胞は、一般に、放射線に対する抵抗力が腫瘍細胞よりも(やや)強いということがある。放射線治療において重要であるのは、「治療可能域を開く(open the therapeutic window)」こと、つまり腫瘍を損傷させ、健康な組織を温存するような線量を見つけることである。しかしながら、この治療可能域はかなり狭い。腫瘍細胞に隣接する健康な細胞の劣化を最小化するため、健康な細胞が受ける総線量は最大許容線量を超えてはならない。健康な細胞が1セッションで(比較的)安全に受けることのできる最大許容線量は、腫瘍細胞を破壊するのに必要な最小標的線量と実質的に同程度であり得るため、一方では腫瘍細胞を死滅させるのに十分な線量を付与すること、及び他方では健康な細胞を温存する線量を付与することという両立しない2つの要件の間で見出すべきトレードオフが存在する。この問題は、解決はしないが、治療をいくつかのセッションに分散させることによって軽減される。
【0008】
総標的線量は、時間を隔てて1又は複数の分割線量(又はセッション)で腫瘍細胞に送達されることが多い。線量の送達を分割することは、治療可能域を更に開く一手法である。各セッションにおいて送達される線量の和は、2つのセッションの間の時間における細胞の治癒を考慮して、腫瘍細胞を死滅させるために必要な総標的線量に到達しなければならない。腫瘍細胞では、1回の分割照射の後に被った損傷から回復するための回復時間が、健康な細胞よりも長いことが確認されている。このことから示唆されるのは、健康な細胞が腫瘍細胞よりも良好に治癒することができるように、セッションの回数を増やすことである。しかしながら、セッションは患者にとってかなり不快であるため、セッションの回数を減らすことは患者のコンフォートの観点から有利であり、よりコスト効率が良い。
【0009】
従来、放射線治療による治療計画は、1Gy/s未満であり、一般に0.03Gy/sのオーダーである従来の線量付与率(CDR)で治療細胞に放射線線量を送達することを含んでいた。1セッション中、1つの細胞に重なるすべてのスポットによる、この1つの細胞における線量付与率は、セッション中にスポットによって上記細胞(i)に付与された線量(Dij)の和の、対応する線量(Dij)を付与するために必要な時間(tj)の和に対する比率(ΣjDij/Σitj)と定義される。まれな例外を除いて、現在の放射線治療施設は、0.1Gy/s未満、好ましくは0.03Gy/sのオーダーの線量率を送達し、ほとんどの臨床プロトコルは、累積されて総標的線量に到達する、セッションごとに2~3Gyの複数の標的線量(Dti)を一定間隔で送達することを含み、総標的線量は、照射野に位置する正常組織の許容限界に近いことが多いため、腫瘍細胞と共に正常組織を損傷させる可能性がある。近年、超高線量付与率(HDR)で同じ線量を付与した場合に、従来の線量付与率(CDR)で同じ総線量を付与した場合に比べて健康な細胞への影響が著しく少ないことが確認されている。しかしながら、このようなCDRとHDRとの間の挙動の差は、腫瘍細胞では観測されなかった。HDRは、通常適用される従来の線量付与率(CDR)よりも1桁以上大きくなり得る。超高線量付与率(HDR)での線量の付与は、FLASH放射線治療法(=FLASH-RT)とも呼ばれる。HDRでの線量付与は、従来のCDRでの同じ線量の付与に比べて健康な組織を著しく温存できると同時に、HDRでの付与に対する腫瘍細胞の反応は、CDRでの付与と同じ又はそれよりも良いことが、動物及び様々な臓器で実験的に確認されている。例えば、FLASH-RTは、マウスにおいて、抗腫瘍奏功率を維持したまま、肺線維症、脳照射後の記憶障害、及び小腸の壊死の発生を劇的に低下させたと報告されている。このような特効的な正常組織の温存は大型動物で確認されており、皮膚リンパ腫を患う患者がFLASH-RTで既に治療されている。よって、10~15Gyのオーダーの標的線量(Dtj)が1回のFLASHセッションで付与され得る。FLASHには、従来の線量付与セッションよりも少ないセッション数又は分割数しか必要とせずに治療可能域を拡大する利点がある。
【0010】
粒子は、光速(c)の1/3の速度まで加速される。荷電粒子の速度が光速に近づくにつれて、相対論的効果が補償されなければならず、電場の周波数又は磁場の何れかが、荷電粒子の速度が速くなったときの荷電粒子の質量の増加を補償するように修正されなければならない。相対論的効果は、vを粒子速度とし、cを光速としたとき、概ねv≒c/3で顕著になる。例えば、シンクロサイクロトロンでは、磁場を一定に保ちながら、荷電粒子がたどる加速経路中、駆動用RF電場の周波数を変える。一方、シンクロトロンでは、駆動用RF電場の周波数を一定に保ちながら、加速過程中に磁場を時間と共に強くする。荷電粒子はまた、レーザ駆動イオン加速器で高速に加速され得る。
【0011】
加速過程中に磁場又は電場のRF周波数を変えることができるようにするためには、荷電粒子は、すべての荷電粒子がその速度に対応する磁場又はRF周波数に曝されるように、連続する荷電粒子群ごとに加速されなければならない。その結果、荷電粒子はパルス(Pij)で放出され、各パルスは、最大パルス電荷に制限されるパルス電荷(Cij)を有する(すなわち、Cij≦CM)一群の荷電粒子に対応する。各パルスはパルス時間(tp)の持続時間を有し、パルスはインターパルス間隔(Δtp)だけ互いに隔てられる。上記のパラメータは、使用される粒子加速器に依存する。最大パルス電荷(CM)、インターパルス間隔(Δtp)、及び所与のサブボリュームに標的線量を付与するのに必要なパルスの数(N)が、HDRに適合すること(すなわち、ビーム電流N×CM/[(N-1)×Δtp]が、組織における線量率が1Gy/s以上となるように十分大きいこと)が確保されなければならない。
【0012】
所与のペインティング層の各スポット(Si)は、電荷(Cij)のビームによって照射されるたびに、以前に付与された線量と足し合わされる線量を受け、電荷(Cij)のビームは、所与のペインティング層の下流にあるペインティング層に位置する様々なスポットにおけるビーム経路に沿って線量(Dij)を付与するため、複数のペインティング層にHDRで線量を付与することはできない。実際、線量付与率である比(ΣjDij/Σijtj)の時間分母は、下流のスポットが標的とされるたびに時間(tj)中に少量の線量(Dj)を繰り返し受ける標的体積において最も上流に位置する細胞では、急速に大きくなりすぎる。単一のペインティング層でのPBSは、陽子線を用いて、断面がスポットによって規定され、且つ照射軸(X)に沿って延びる体積の深さ全体にわたって広がるサブボリューム全体にわたって、単一のビームでSOBPにしたがう線量を付与することによって実現され得る。サブボリュームは、底面がスポットであり、照射軸(X)に沿って延びる円柱であり得る。
【0013】
2次元配列において隣接するスポット間の間隔によっては、所与のスポットを狙うビームは、隣接するスポットの広がった細胞にも何らかの線量を送達する可能性がある。これは、ビーム中の電荷フルエンス(=単位面積当たりの電荷の数)がガウス分布によって定義され得るためである。一般に、スポットが、ビーム断面における電荷のガウス分布の約1.5σの距離だけ隔てられている場合、隣接するスポット上のガウス曲線間の重なりによって、実質的に一様なフルエンスがもたらされると考えられている。スポットのガウス分布プロファイルの重なりは、標的体積のどの部分にも所定の標的線量を受けていない部分がないことと、フルエンスが隣接するスポット間で一様であることとを確保することが望まれる。しかしながら、電荷が重なること、及び線量付与の持続時間が連続的且つ長期になることは、FLASH-RTにとってかなり有害である。なぜなら、このことは、重なりによって隣接するスポットの広がった細胞に線量が付与されるたびに、線量付与率である比のΣjtj分母が大きくなることによって隣接スポットへの線量付与率が低下し、このことは、HDRとは容易に両立しなくなり得るためである。この問題はPBSによる付与では更に大きくなり、それは、HDRで各サブボリュームに付与すべき標的線量が、一般に、いくつかのパルスで付与されなければならないためである。実際、標的線量は、一般に、最大パルス電荷(CM)の単一パルスによって送達され得る量よりも多い。標的線量をいくつかのパルスで付与することにより、付与時間Σjtjは、サブボリュームだけでなく、重なりによって隣接するサブボリュームに対しても長くなる。
【0014】
上記の制約により、PBSによるHDRでの線量付与は極めて複雑になる。本発明は、荷電粒子のPBSによって治療される標的体積が、治療すべき所与のスポットに重なる、又はその上に漏れるすべての電荷のあらゆる重なる線量付与分布を考慮し、必要に応じてHDRで効果的に照射されることを確保するという問題を解決する。以下、これら及び他の利点をより詳細に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第20200183082号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Bortfeld,T.(1997)An analytical approximation of the Bragg curve for therapeutic proton beams.Med.Phys.,24(12),2024-2033
【発明の概要】
【0017】
本発明は、荷電粒子、好ましくは陽子のビームを用いた治療体積(V)の治療のための計画を実行するための治療装置に関し、治療体積(V)は、
・実質的に腫瘍細胞のみを含む標的体積(Vt)と、
・健康な細胞、及び好ましくは腫瘍細胞(3t)を含むフラッシュ体積(Vht)と
から構成される。
【0018】
例えば、標的体積(Vt)は、腫瘍細胞を主に含む肉眼的腫瘍体積(gross tumour volume、GTV)として定義され得る。治療体積は、治療者が必要な線量を送達することを望む範囲として定義される臨床標的体積(CTV)を含み得る。一方で、治療体積がCTVに対応する(すなわち、フラッシュ体積(Vht)がCTVに内包される)場合、CTVは、GTV(又は標的体積(Vt))とフラッシュ体積(Vht)との組み合わせとなり、したがって腫瘍細胞と健康な細胞とを含む。他方で、治療体積(V)が、CTVと、ビーム経路上でCTVの上流に位置する温存すべき臓器とを含む場合、フラッシュ体積(Vht)は、上記臓器を含むことにより、CTVと交差し、CTVを越えて延びる。本発明の目的は、腫瘍細胞を死滅させるために必要な所望の線量をCTV全体に送達し、フラッシュ体積(Vht)に含まれる健康な組織を温存するようにHDRを適用することである。
【0019】
治療装置は、ペンシルビームスキャン(PBS)によって、治療体積(V)全体に広がる単一のペインティング層にわたって分布したスポット(Si、Ri)ごとに、線量がフラッシュ体積(Vht)内に内包されたスポット(Si)に超高線量付与率(HDR)で付与されるように、治療体積(V)内に線量(Dij)を付与する荷電粒子のパルスを送達するように構成されたパルス粒子加速器を備え、HDRが、線量率HDR≧1Gy/sとして定義され、パルス粒子加速器が、以下の特性、すなわち、
・荷電粒子がパルス(Pij)で放出され、各パルスが最大パルス電荷以下のパルス電荷(Cij)(CM≧Cij)及びパルス時間(tp)の持続時間を有し、パルスがインターパルス間隔(Δtp)だけ互いに隔てられ、
・荷電粒子のビームが、第1のフラッシュスポットから第2のフラッシュスポットまで最大スキャン速度(vs=ds/Δts)でスキャンすることができ、dsが、第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットとの間の距離であり、Δtsが、第1のフラッシュスポットから第2のフラッシュスポットまでスキャンするのに必要なスキャン時間である
ことを特徴とする。
【0020】
治療装置は、治療計画(TP)を実施するようにパルス粒子加速器を制御するように構成されたコンピュータ又はプロセッサを備え、治療計画が、
・照射軸(X)に垂直な投影面(Π)上に、ビーム(100)に略平行である照射軸(X)に平行に投影された、フラッシュ体積(Vht)の射影の範囲を覆うN個のフラッシュスポット(Si)のメッシュを規定することと、
・各フラッシュスポット(Si)について、各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞に標的線量(Dti)を付与するために必要な標的電荷(Cti)を規定することと、
・各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞に標的線量(Dti)を付与するために必要なある数(mi)のパルスの理論上のパルス電荷(Cij)を規定する、各フラッシュスポット(Si)についての理論上のフラッシュ電荷計画を決定することにおいて、標的電荷(Cti)が、フラッシュスポットを照射する上記数(mi)の理論上のパルス電荷(Cij)の和に等しい(すなわち、
)、又は標的線量(Dti)が、各パルス電荷(Cij)によってフラッシュスポットの広がった細胞に付与された上記数(mi)のパルス線量(Dij)の和に等しい(すなわち、
)、ことと、
・対応する数(mi)のパルス線量(Dij)が各フラッシュスポットに付与されるフラッシュスポット(Si)のシーケンスを規定する、N個のフラッシュスポットのフラッシュスキャンシーケンスを規定することと
を含む。
【0021】
本発明の要点は、フラッシュスキャンシーケンスに関し、フラッシュスキャンシーケンスは、
・ある数(k)の組(5)を規定することにおいて、各組(5)がある数nのフラッシュスポット(Si)を含み、1<n<Nである、ことと、
・n個の組み合わされたフラッシュスポットの各組(5)について、組の連続するすべての第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットと((Si、S(i+1))及び(Sn、S1))の間の距離(ds)が常にスキャン速度(vs)と不感時間(td)との積として定義される最大距離(dM)以下となる(すなわち、d≦dM=vs×td)ように、n個の組み合わされたフラッシュスポットのフラッシュスキャンサブシーケンスを規定することにおいて、不感時間(td)が、パルスの末尾と次のパルスの先頭との間の時間(すなわち、td=Δtp-tp)である、ことと
を含む。
【0022】
プロセッサは、例えば、
(a)第1のフラッシュスポット(S1)(すなわちi=1)にビームを向け、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第1の組の第1のフラッシュスキャンサブシーケンスの第1のフラッシュスポット(S1)の広がった細胞に、第1のパルス電荷(C11)(すなわちj=1)を送達して、対応する第1のパルス線量(D11)を付与し、
(b)フラッシュスキャンサブシーケンスの第2のフラッシュスポット(S2)(すなわち、i=2)にビームを移動させ、治療セッション中に第1のフラッシュスポット(S1)に実際に送達された実際の第1のパルス電荷(C11)を測定するため、及び理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて第1のフラッシュスポット(S1)で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(C12)を計算するために必要な推定時間の間に、第2のフラッシュスポット(S2)の広がった細胞に、第1のパルス電荷(C21)を送達して、第1のパルス線量(D21)を付与し、
(c)i<nである場合、フラッシュスキャンサブシーケンスの第iのフラッシュスポット(Si)にビームを移動させて、治療セッション中に前のフラッシュスポット(S(i-1))に実際に送達された実際の前のパルス電荷(C(i-1)1)を測定するため、及び理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて前のフラッシュスポット(S(i-1))で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(C(i-1)2)を計算するために必要な推定時間の間に、第iのフラッシュスポット(Si)の広がった細胞に、第1のパルス電荷(Ci1)を送達し、
(d)i=nになるまで前のステップを(n-3)回繰り返し、
(e)フラッシュスキャンサブシーケンスの第1のフラッシュスポット(S1)(すなわち、i=1)にビームを戻し、治療セッション中に第nのフラッシュスポット(Sn)に送達された実際の第1のパルス電荷(Cn1)を測定するため、及び理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて第nのフラッシュスポット(Sn)で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(Cn2)を計算するために必要な推定時間の間に、第1のフラッシュスポット(S1)において上記のように計算された調整された理論上の第2のパルス電荷(C12)(すなわち、j=2)を付与し、
(f)j=(mi-1)になるまでステップ(b)~(e)を繰り返し、少なくとも、標的電荷(Cti)がn個の組み合わされたフラッシュスポットの第1の組の各フラッシュスポット(S1、Sn)に送達されるまで、j=miについてステップ(b)~(d)を繰り返し、
(g)n個の組み合わされたフラッシュスポットの第2の組の第2のフラッシュスキャンサブシーケンスにしたがって第1のフラッシュスポットにビームを移動させ、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第2の組のn個の組み合わされたフラッシュスポットについてステップ(a)~(f)を繰り返し、
(h)対応する標的電荷(Cti)が、メッシュのすべてのk組(5)のn個の組み合わされたフラッシュスポットにHDRで送達されるまで、n個の組み合わされたフラッシュスポットの残りの(k-2)組のフラッシュスキャンサブシーケンスに対して最後のステップを繰り返す
ようにパルス粒子加速器を制御するように構成される。
【0023】
組(5)における組み合わされたフラッシュスポットの数(n)は、
・tc/tdが整数の場合、比率tc/td>1(すなわち、
の場合、n=tc/td)であり、
・それ以外の場合、1と比率(tc/td)の整数部分との和(すなわち、n=INTEGER(tc/td)+1)である
と定義することができ、
tdは不感時間であり、tcは、第2のパルス(Pi(j+1))に先行する第1のパルス(Pij)で測定された実際のパルス電荷(Cij)に基づいて計算された調整された理論上のパルス電荷(Ci(j+1))にしたがって次のパルス(P(j+1))を規定及び準備するためにパルス粒子加速器によって必要とされる計算時間であり、不感時間よりも長い(tc>td)。n個の組み合わされたフラッシュスポットの組(5)の数(k)は、比(N/n)の整数部分(すなわち、n=INTEGER(N/n))と定義でき、nR個のフラッシュスポットの追加の組が、上で定義されたようにn個の組み合わされたフラッシュスポットの組と定義及び取り扱うことができ、nR(<n)は、標的電荷(Cti)がメッシュのすべてのN個のフラッシュスポットにHDRで送達されるまで、比N/nの残りである。
【0024】
好ましい実施形態では、組み合わされたフラッシュスポットの数(n)は2であり(すなわち、n=2)、
・n=2個のフラッシュスポット(S1、S2)の第1の組のフラッシュスキャンサブシーケンスにおける第2のフラッシュスポット(S2)が、第1のフラッシュスポット(S1)に第1の標的電荷(Ct1)を送達するために必要なパルス(P1~Pm1)の数(m1)より多い、第2の標的電荷(Ct2)に到達するためのパルス(P1~Pm2)の数(m2)を受けなければならず(すなわち、m1<m2且つCt1<Ct2)、
・第1の組(5)の第1のフラッシュスポット(S1)及び第2のフラッシュスポット(S2)がそれぞれm1個のパルスを受け、標的電荷(Ct1)が第1のフラッシュスポット(S1)に送達された場合、第2のフラッシュスポット(S2)が第1のフラッシュスポット(S1)から解離し、第3のフラッシュスポット(S3)と組み合わされてn=2個のフラッシュスポット(S2、S3)の第2の組を形成し、第3のフラッシュスポット(S3)が、第2のフラッシュスポット(S2)から距離d(d≦DM)に位置し、第2のフラッシュスポット(S2)及び第3のフラッシュスポット(S3)の両方がそれぞれ(m2-m1個の)パルスを受け、第2のフラッシュスポット(S2)が標的電荷(Ct2)を受けるまで、残留電荷(Ct2-Ct1)より大きい第3の標的電荷(Ct3)を受けなければならず、
・第3のフラッシュスポット(S3)が、第2のフラッシュスポット(S2)から解離し、第4のフラッシュスポット(S4)と組み合わされてn=2個のフラッシュスポット(S3、S4)の第3の組を形成し、以降同様に、メッシュのすべてのN個のフラッシュスポットがHDRでそれぞれの標的電荷(Cti)を受けるまで続けられる。
【0025】
一般に、計算時間(tc)は、少なくとも以下のステップ、すなわち、
・第iのフラッシュスポット(Si)に付与された第jのパルス(Pij)によって送達されたパルス電荷(Cij)を測定するステップと、
・累積された理論上のパルス電荷
を、j個のパルスの後に第iのフラッシュスポット(Si)において実際に測定された累積されたパルス電荷
と比較することによって、電荷計画に合わせて必要な第(j+1)のパルス(Pi(j+1))によって第iのフラッシュスポットに付与すべき調整された理論上のパルス電荷(Ci(j+1))を計算するステップと、
・理論上のパルス電荷(Ci(j+1))の調整された値で次のパルス(Pi(j+1))を放出するようにパルス粒子加速器を準備するステップと
を完了することが必要とされ得る。
【0026】
好ましい実施形態では、治療は、
・投影面(Π)上に、照射軸(X)に平行に投影された、標的体積(Vt)(すなわち、Vt=V-Vht)の射影の範囲を覆うM個の通常スポット(Ri)のメッシュを規定することと、
・必ずしもHDRではなくmi個のパルスで標的電荷(Cti)を付与するための各パルス電荷(Cij)の値を規定する、各通常スポット(Ri)について通常電荷計画を決定することと、
・M個の通常スポット(Ri)のそれぞれ1つに標的電荷(Cti)を付与するための通常スキャンシーケンスを規定することと
を含む。
【0027】
本発明はまた、上で定義された治療計画(TP)を実施するための治療計画システム(TPS)に関し、TPSが、
・照射軸(X)に垂直な投影面(Π)上に、ビーム(100)に略平行である照射軸(X)に平行に投影された、フラッシュ体積(Vht)の射影の範囲を覆うN個のフラッシュスポット(Si)のメッシュを規定するように構成されたメッシュユニットと、
・各フラッシュスポット(Si)について、各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞上に標的線量(Dti)を付与するために必要な標的電荷(Cti)を規定するように構成された標的電荷ユニットと、
・各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞において標的線量(Dti)を付与するために必要なある数(mi)のパルスの理論上のパルス電荷(Cij)を規定する、各フラッシュスポット(Si)についての理論上のフラッシュ電荷計画を決定するように構成されたフラッシュ計画ユニットにおいて、標的電荷(Cti)が、フラッシュスポットを照射する上記数(mi)の理論上のパルス電荷(Cij)の和に等しい(すなわち、
、又は標的線量(Dti)が、各パルス電荷(Cij)によってフラッシュスポットの広がった細胞に付与された上記数(mi)のパルス線量(Dij)の和に等しい(すなわち、
)、フラッシュ計画ユニットと、
・対応する数(mi)のパルス線量(Dij)が各フラッシュスポットの広がった細胞に付与されるフラッシュスポット(Si)のシーケンスを規定する、N個のフラッシュスポットのフラッシュスキャンシーケンスを規定するように構成されたフラッシュスキャンシーケンスユニットと
を備える。
【0028】
フラッシュスキャンシーケンスユニットは、以下の動作、すなわち、
・ある数(k)の組(5)を規定する動作において、各組(5)が数nのフラッシュスポット(Si)を含み、1<n<Nである、動作と、
・n個の組み合わされたフラッシュスポットの各組(5)について、組のすべての連続する第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットと((Si、S(i+1))及び(Sn、S1))の間の距離(ds)が常にスキャン速度(vs)と不感時間(td)との積として定義される最大距離(dM)以下となる(すなわち、d≦dM=vs×td)ように、n個の組み合わされたフラッシュスポットのフラッシュスキャンサブシーケンスを規定する動作において、不感時間(td)が、パルスの末尾と次のパルスの先頭との間の時間(すなわち、td=Δtp-tp)である、動作と
を計画するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1(a)は、拡大ブラッグピーク(SOBP)の一例を示す。
図1(b)は、健康な細胞に囲まれた腫瘍細胞を含む標的体積の照射の一例を示す。
図1(c)は、所与の照射軸(X)に沿って陽子線を用いて得られたSOBPを示す。
【
図2】
図2(a)は、照射軸(X)に沿ってその上流に健康な組織が配置された標的体積を含むシステムの概略斜視図である。照射軸(X)に沿った対応するSOBPと、平面(Π)上に投影された治療体積(V)の射影とが表現されている。
図2(b)は、対応するSOBPと共に、
図2(a)のシステムの(照射軸(X)に垂直な)側面図を示す。
図2(c)は、
図2(a)のシステムの(照射軸(X)に平行な)正面図を示す。
図2(d)は、スポットと共に
図2(c)の細部を示す。
【
図3】
図3は、粒子加速器を用いて電荷(Cij)の連続的なパルスによってスポット(Si)を照射するパルスビームの各パルスの電荷を時間の関数として示し(下のグラフ)、累積された線量(Σ
jDij)を時間の関数として(上のグラフ)示す。
【
図4】
図4(a)は、同じ組の第1のスポット(S1)及び第2のスポット(S2)の広がった細胞への線量の連続的な付与による、本発明の原理を時間の関数として示す。
図4(b)は、第1のスポット(S1)と第2のスポット(S2)との間のスキャンシーケンスを示す、
図4(a)の上面図を示す。
【
図5】
図5(a)は、第1のスポット及び第2のスポットを順次照射する従来の治療計画によって、隣接する第1のスポット及び第2のスポットの広がった細胞に付与された累積された線量を時間の関数として示す。
図5(b)は、n=2である、本発明によるフラッシュスキャンシーケンスの第1の実施形態によって、隣接する第1のスポット及び第2のスポットの広がった細胞に付与された累積された線量を時間の関数として示す。
図5(c)は、n=2である、本発明による方法の第2の実施形態によって、隣接する第1、第2、第3、及び第4のスポットの広がった細胞に付与された累積された線量を時間の関数として示す。
【
図6】
図6(a)は、1組の2個のフラッシュスポットのそれぞれに同じ所定の数のパルスが放出される、n=2個のフラッシュスポットの組のシーケンスを示す。
図6(b)は、1組の2個のフラッシュスポットのそれぞれの広がった細胞に異なる標的線量が付与される、n=2個のスポットの組のシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、荷電粒子、好ましくは陽子のビーム(100)を用いた治療体積(V)の治療のための治療装置に関し、治療体積(V)は、
・実質的に腫瘍細胞(3t)のみを含む標的体積(Vt)と、
・健康な細胞(3h)及び腫瘍細胞(3t)を含むフラッシュ体積(Vht)と
から構成される。
【0031】
治療装置は、パルス粒子加速器とプロセッサとを備える。
【0032】
パルス粒子加速器は、荷電粒子のパルスを送達するように構成される。例えば、パルス粒子加速器は、シンクロサイクロトロン、シンクロトロン、又はレーザ駆動イオン加速器とすることができる。パルス粒子加速器は、以下の特性、すなわち、
・荷電粒子がパルス(Pij)で放出され、各パルスが最大パルス電荷以下のパルス電荷(Cij)(Cij≦CM)及びパルス時間(tp)の持続時間を有し、パルスがインターパルス間隔(Δtp)だけ互いに隔てられ(
図3、
図4(a)、及び
図5(a)~
図5(c)参照)、
・荷電粒子のビームが、第1のフラッシュスポットから第2のフラッシュスポットまで最大スキャン速度(vs=ds/Δts)でスキャンすることができ、dsが、第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットとの間の距離であり、Δtsが、第1のフラッシュスポットから第2のフラッシュスポットまでスキャンするのに必要なスキャン時間である(
図4(b)参照)
ことを特徴とする。
【0033】
ビームは、照射すべき荷電粒子の種類(好ましくは陽子)、パルス(Pij)の最大パルス電荷(CM)、パルスを送達するパルス時間(tp)、及び第1のパルス(Pi1)が放出された後に第2のパルス(Pi2)を放出するために粒子加速器が必要とする時間を規定するインターパルス間隔(Δtp)によって定義され得る。ビームの数及びビーム方向は重要なパラメータである。本明細書では、照射軸(X)に沿って延びる1つのビーム方向についてのみ論じる。当業者には当然のことながら、様々なビーム方向に対して同じ説明を必要な変更を加えて適用することができる。SOBPは、SOBPの形状を規定する同軸ビームレットの重ね合わせによって得ることができる。或いは、単一のビーム(100)を放出し、リッジフィルタを介在させることにより整形することもできる。これらの技法は、当業者には周知であり、本明細書で説明する必要はない。
【0034】
ビームは直径を有する。荷電粒子は、照射軸(X)に垂直なビームの断面においてガウス分布で分布する。ビームの半径は、ガウス分布の2σと定義され得る。
【0035】
パルス粒子加速器は、ペンシルビームスキャン(PBS)によって、治療体積(V)全体に広がる単一ペインティング層にわたって分布したスポット(Si、Ri)ごとに、治療体積(V)内に線量を付与するように構成される。線量は、フラッシュ体積(Vht)内に内包されたスポット(Si)の広がった細胞に超高線量付与率(HDR)で付与されなければならず、HDRは、線量率HDR≧1Gy/sとして定義される。線量は、フラッシュ体積(Vht)の外部に位置する治療体積(V)のすべての通常スポット(Ri)においては任意の比率(CDR又はHDR)付与され得る(
図2(d)参照)。
【0036】
プロセッサは、治療計画(TP)を実施するようにパルス粒子加速器を制御するように構成される。TPは、
・N個のフラッシュスポット(Si)のメッシュの規定と、
・各フラッシュスポット(Si)についての、各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞に標的線量(Dti)を付与するために必要な標的電荷(Cti)の規定と、
・各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞に標的線量(Dti)を付与するために必要なある数(mi)のパルスの理論上のパルス電荷(Cij)を含む、各フラッシュスポット(Si)についての理論上のフラッシュ電荷計画の規定において、標的線量(Dti)が、各パルス電荷(Cij)によってフラッシュスポットの広がった細胞に付与された上記数(mi)のパルス線量(Dij)の和に等しい(すなわち、
)、規定と、
・N個のフラッシュスポットのフラッシュスキャンシーケンスの規定において、スキャンシーケンスが、
○ある数(k)の組(5)の規定において、各組(5)がある数nのフラッシュスポット(Si)を含み、1<n<Nである、規定と、
○n個の組み合わされたフラッシュスポットの各組(5)について、組のすべての連続する第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットと((Si、S(i+1))及び(Sn、S1))の間の距離(ds)が常にスキャン速度(vs)と不感時間(td)との積として定義される最大距離(dM)以下となる(すなわち、d≦dM=vs×td)ような、n個の組み合わされたフラッシュスポットのフラッシュスキャンサブシーケンスの規定において、不感時間(td)が、パルスの末尾と次のパルスの先頭との間の時間(すなわち、td=Δtp-tp)である、規定と
を含む、規定と
を含む。
【0037】
プロセッサはまた、例えば、以下に説明するフラッシュスキャンシーケンスを実施するようにパルス粒子加速器を制御するように構成される。
【0038】
スポットのメッシュ
まず、
図2(a)及び
図2(d)に示すように、照射軸(X)に垂直な投影面(Π)上に、ビーム(100)に略平行である照射軸(X)に平行に投影された、フラッシュ体積(Vht)の射影の範囲を覆うN個のフラッシュスポット(Si)のメッシュが規定される。
【0039】
腫瘍医が、コンピュータ断層撮影(=CTスキャン)によって得られた腫瘍領域の画像に基づいて、腫瘍領域の幾何学的形状(geometry)及び組織分布(topography)の特性を明らかにする。
図2(a)は、腫瘍領域の一例を模式的に示しており、健康な細胞(3h)を含む健康な臓器(Vh)が、患者の皮膚(3s)と主に腫瘍細胞(3t)を含む標的体積(Vt)との間に位置している。標的体積(Vt)に到達するためには、ビーム(100)は、健康な体積(Vh)を横断しなければならないため、健康な体積(Vh)の健康な細胞(3h)と標的体積(Vt)の腫瘍細胞(3t)との両方を照射する。いくつかの実施形態では、(
図2(a)において影付きの)下流に位置する臓器は、健康な細胞及び腫瘍細胞(3h、3t)の両方を含み、健康な細胞に照射することなく腫瘍細胞を標的にすることが不可能となることがある。
【0040】
ペンシルビームスキャン(PBS)では、照射すべき体積全体を特徴付けるスポットのメッシュが定義される。現在入手可能な機器では、多くの用途において、腫瘍領域全体にFLASH-RTを適用することは不可能であるため、またFLASH-RTの利点をとにかく役立てるためには、本発明によるメッシュは、HDRで照射すべきフラッシュスポット(Si)とCDRで照射され得る通常スポット(Ri)とを含む。
図2(d)は、フラッシュ体積(Vht)内に含まれるフラッシュスポット(Si)(=黒点)と、標的体積(Vt)内に含まれる通常スポット(Ri)(白点)との両方を含むメッシュの一例を示している。
図2の実施形態では、フラッシュスポット(Si)は、健康な臓器(Vh)を横断しなければならないビームと整列したスポットである。上述のように、フラッシュ体積(Vht)は、腫瘍細胞(3t)に隣接して健康な細胞(3h)を含み得る。
【0041】
フラッシュ体積全体(Vht)にわたるHDRでの付与を実現するために、本発明の治療計画は単一ペインティング層を含む。この理由のために、フラッシュ体積(Vht)に内包されたフラッシュスポット(Si)は、フラッシュスポットの2次元配列を横断する各ビームの照射ビーム(X)の上に整列されることが好ましい。2次元配列は、照射ビームに垂直な面上に、照射ビーム(100)に平行に投影された射影である。このようにして、フラッシュ体積(Vht)の照射軸(X)に平行に、ある深さにわたって分布したすべてのフラッシュスポット(Si)は、2次元配列のスポットによって規定される底面と照射軸(X)に平行な母線とから構成される円柱内に含まれる。これらの円柱の長さは、円柱がフラッシュ体積(Vht)の境界と交差する位置に依存する。
【0042】
スポットは照射軸(X)に垂直な方向の寸法を有し、これは上述のビーム直径に等しくなり得る。メッシュの密度が高いほど(すなわち、隣接するスポットが互いに近いほど)、隣接するスポットの広がった細胞への線量の重なりの影響が大きくなるため、メッシュ密度を規定する隣接するスポット間の距離は重要なパラメータである。隣接するスポット間の距離が約1.5σのときに、横方向の一様な線量分布が確認されるようなかなりの重なりが観測される。
【0043】
電荷計画
治療計画は、腫瘍領域に存在する腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍細胞に隣接する、又は腫瘍細胞を狙うビームの経路上にある健康な細胞をできる限り温存しなければならない。腫瘍医は、各体積に付与すべき線量を記載した表を定める。所与のフルエンスのビームによって付与される線量は、組織の種類及び組織がビームとどのように相互作用するかに依存する。同じ組織であれば、所与の組織では、ビームによって付与される線量は、ビームのフルエンス(=単位面積当たりの電荷の数(Cij))に主に依存すると言える。腫瘍細胞を死滅させるために、フラッシュスポット(Si)と通常スポット(Ri)との両方の広がった細胞に標的線量(Dti)がセッションで付与される。
【0044】
健康な細胞を温存するために、治療計画は標的線量率を満たさなければならず、標的線量率では、線量がフラッシュ体積(Vht)に局所的に付与されて、腫瘍細胞を死滅させると同時にFLASH効果を役立てて健康な細胞をできるだけ温存する。これらの標的線量率は、一般に、コンピュータ断層撮影(=CTスキャン)で得られた腫瘍領域の画像に基づいて、健康な細胞を含む1つ又は複数のフラッシュ体積(Vht)を識別する腫瘍医によって定められる。1つ又は複数の特定の体積(Vht)においてFLASH効果に到達するためには、1つ又は複数の特定の体積(Vht)は、超高線量付与率(HDR)で照射されなければならず、体積の各ボクセルにおけるHDRは、線量付与率として定義され、HDR(=Σ
i,jDij/Σ
jtj≧1Gy/s)は、そのボクセルへの線量及びすべてのパルス(Pij)を送達するすべてのフラッシュスポット(Si)にわたる、各パルス(Pij)によってフラッシュ体積の指定されたボクセルに付与された線量の和(Σ
i,jDij)の、1つのフラッシュスポット(Si)に線量(Σ
jDij)を付与するのに必要な時間(tj)の和(Σ
jtj)に対する比(
図3参照)である。時間の和は、隣接するフラッシュスポットを狙ったビームからの重なりによって線量が付与される時間を含む。ボクセルとは、いくつかの重なるスポットから線量を受ける組織の部分である。「ボクセル」という用語は、CTスキャンで使用され、典型的には2×2×2mmの大きさを有し得る。したがって、ボクセルは多くの生物学的細胞を含むことができる。腫瘍医は一般にCTスキャンの結果に依拠して細胞に付与すべき線量を規定するため、治療計画に対しても同じ用語及び概念を使用することは妥当である。
【0045】
治療計画に線量率を含めるためには、計画を実行するために利用可能な粒子加速器の性能が考慮され得る。例えば、最高線量率(DRmax)を規定することができ、最高線量率(DRmax)では、所与のパルス線量(Dij)がフラッシュスポット(Si)にビームによってDRmax=Imax.K(E)として送達され得る。Imaxは、陽子加速器のノズルが送達し得る最大ビーム電流であり、K(E)は、陽子ビームの異なる入射エネルギー(E)について陽子フルエンス(1cm2当たりの電荷(=陽子)の数)と陽子ビームによって組織に付与される線量とを関連付ける既知の関数である。例えば、(非特許文献1)の式26において、φ0の右側の因子がK(E)を表している。
【0046】
本発明によれば、各フラッシュスポット(Si)について、各フラッシュスポット(Si)の広がったボクセルの細胞上に標的線量(Dti)を付与するために必要な標的電荷(Cti)がセッションの終わりに規定される。標的電荷(Cti)は、ビームの性質と、標的線量(Dti)が付与され、ビームが相互作用する組織の性質とに依存する。
【0047】
各フラッシュスポット(Si)について標的電荷(Cti)が規定されると、各フラッシュスポット(Si)について、送達すべきパルスの数(mi)及び理論上のパルス電荷(Cij)の両方を割り当てる電荷計画が決定される。電荷計画は、各フラッシュスポット(Si)の広がった細胞に、最終的には各ボクセルに標的線量(Dti)を付与するのに必要なある数(mi)のパルスの理論上のパルス電荷(Cij)を規定することを含む。したがって、
図3に示すように、標的電荷(Cti)は、フラッシュスポットを照射する上記数(mi)の理論上のパルス電荷(Cij)の和に等しい(すなわち、
)。このことはまた、標的線量(Dti)が、各パルス電荷(Cij)によってフラッシュスポットの広がった細胞に付与された上記数(mi)のパルス線量(Dij)の和に等しい(すなわち、
)として、線量の観点から表現することもできる。しかしながら、統計的な不確かさのために、粒子加速器によって各パルスにおいて実際に送達されるパルス電荷は理論上のパルス電荷(Cij)に近似することしかできない。したがって、実際に送達された実際の電荷の値を測定し、これを理論上のパルス電荷の値(Cij)と比較する必要がある。2つの値の間に所定の許容範囲を超える不一致がある場合、次のパルスの理論上のパルス電荷(Ci(j+1))は、調整された理論上のパルス電荷の新しい値に補正されて、(理論上の)電荷計画と一致させることができる。
【0048】
次いで、対応する数(mi)のパルス線量(Dij)が各フラッシュスポットの広がった細胞に付与されるフラッシュスポット(Si)のシーケンスを規定する、N個のフラッシュスポットのフラッシュスキャンシーケンスが確立される。フラッシュスキャンシーケンスは、以下のように定められる。
【0049】
フラッシュスキャンシーケンス
n個のフラッシュスポットの組(5)
組み合わされたフラッシュスポット(Si)のある数(k)の組(5)が規定され、各組(5)が数nのフラッシュスポット(Si)を含み、1<n<Nである。好ましくは、n=2である。n個の組み合わされたフラッシュスポットの各組(5)について、組のすべての連続する第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットと((Si、S(i+1))及び(Sn、S1))の間の距離(ds)が常にスキャン速度(vs)と不感時間(td)との積として定義される最大距離(dM)以下となる(すなわち、d≦dM=vs×td)ように、n個の組み合わされたフラッシュスポットのフラッシュスキャンサブシーケンスが規定され、不感時間(td)は、第1のパルス(Pi1)が放出された後に第2のパルス(Pi2)を放出するために粒子加速器によって必要とされる時間(すなわち、td=Δtp-tp)である。ビームは第1のスポットから第2のスポットまで移動するのに時間(Δts)がかかるため、スキャンサブシーケンスにおけるフラッシュスポットのすべての対は、スキャンサブシーケンスにおいて第1のフラッシュスポットから次のフラッシュスポットまでスキャンするのに、不感時間(td)よりも長くないスキャン時間(Δts)を必要とするように離れていなければならない(すなわち、Δts≦td,∀(Si、S(i+1)))。スキャンサブシーケンスは、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、次のように進む。
【0050】
好ましい実施形態では、組(5)における組み合わされたフラッシュスポットの数(n)は、以下のように、すなわち、
・tc/tdが整数の場合、比率tc/td>1(すなわち、
の場合、n=tc/td)であり、
・それ以外の場合、1と比率(tc/td)の整数部分との和(すなわち、n=INTEGER(tc/td)+1)である
と定められ、
図3、
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)、及び
図5(b)に示すように、tdは不感時間であり、tcは、以下に詳述する計算動作を実行するための、また第2のパルス(Pi(j+1))に先行する第1のパルス(Pij)で測定された実際のパルス電荷(Cij)に基づいて計算された調整された理論上のパルス電荷(Ci(j+1))にしたがって次のパルス(P(j+1))を規定及び準備することを含むパルス粒子加速器によって必要とされる計算時間であり、不感時間よりも長い(tc>td)。例えば、t/Δtpが1.5~2.0、又は1.6~1.8に含まれる場合、1組(5)当たりのフラッシュスポットの数は、n=2に等しくなり得る。
【0051】
n個の組み合わされたフラッシュスポットの組(5)の数(k)は、比(N/n)の整数部分(すなわち、n=INTEGER(N/n))とすることができ、nR個のフラッシュスポットの追加の組が、以下に定義されるようにn個の組み合わされたフラッシュスポットの組と定義及び取り扱うことができ、nR(<n)は、標的電荷(Cti)がフラッシュ体積におけるメッシュのすべてのN個のフラッシュスポットにHDRで送達されるまで、比N/nの残りである。
【0052】
フラッシュスキャンサブシーケンス
パルス電荷(C11)の第1のパルス(P1)が、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第1の組の第1のフラッシュスキャンサブシーケンスの第1のフラッシュスポット(S1)の広がった細胞に、対応する第1のパルス線量(D11)を付与するために送達される。第1のフラッシュスポット(S1)で実際に送達された実際の第1のパルス電荷(C11)は、測定され、理論上の第1のパルス電荷と比較されて、各スポットが計画通りに標的電荷(Cti)を受けることを確保する。第1のパルス電荷(C11)の実際の値と理論上の値との間に不一致がある場合、第1のフラッシュスポット(S1)に次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(C12)が、理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて計算される。測定、比較、及び調整された値の計算は、「計算動作」と総称され、完了するためには計算時間(tc)を必要とする。計算時間(tc)は、一般に、加速器によって放出された荷電粒子の連続する2つのパルスを分離するインターパルス間隔(Δtp)よりも大きい(すなわち、tc>Δtp)。
【0053】
第1のスポットに電荷(C11)の第1のパルスを送達した後、すなわちパルス時間(tp)の後、ビームは、フラッシュスキャンサブシーケンスにしたがって第2のフラッシュスポット(S2)に移動され、第1のパルス電荷(C21)が、第2のフラッシュスポット(S2)の広がった細胞に第1のパルス線量(D21)を付与するために送達される。その間、時間(tc)の間に、第1のフラッシュスポット(S1)に対する第1のパルス電荷(C11)のための計算動作が実行される。ビームは、第2のパルス(P2)が放出可能な状態になったときまでに、すなわち、第1のパルス(P1)と第2のパルス(P2)との間のインターパルス間隔(Δtp)の終了までに第2のスポット(S2)に到達しなければならない。理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて、第2のフラッシュスポット(S2)に送達された実際の第1のパルス電荷(C21)を測定し、理論上の第1のパルス電荷(C21)と比較し、第2のフラッシュスポットに次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(C22)を計算する計算動作が実行される。
【0054】
第2のスポット(S2)に電荷(C21)の第1のパルスを送達した後、ビームは、フラッシュスキャンサブシーケンスの次のフラッシュスポット(Si)に移動され、フラッシュスキャンサブシーケンスの第nのフラッシュスポット(Sn)にビームを移動して、第nのフラッシュスポットの広がった細胞に、第1のパルス電荷(Cn1)を送達して、第1の線量(Dn1)を付与するまで、前のステップを(n-2)回繰り返す。毎回、計算動作は、組(5)のフラッシュスポット(S1~Sn)のそれぞれに送達される第1の線量について繰り返される。
【0055】
治療セッション中に第nのフラッシュスポット(Sn)で送達された実際の第1のパルス電荷(Cn1)を測定し、理論上のフラッシュ電荷計画に合わせて、第nのフラッシュスポット(Sn)で次に送達すべき調整された理論上の第2のパルス電荷(Cn2)を計算するのに必要な推定時間の間、ビームが、フラッシュスキャンサブシーケンスの第1のフラッシュスポット(S1)に戻され、調整された理論上の第2のパルス線量(D12)が、第1のフラッシュスポット(S1)において上記のように計算された第1のフラッシュスポット(S1)の広がった細胞に付与される。同じことをn個のフラッシュスポットで繰り返して、各フラッシュスポットの広がった細胞に調整された理論上の第2のパルス線量(Di2)を付与する。これらの動作は、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第1の組の各フラッシュスポット(S1、Sn)の広がった細胞に標的電荷(Cti)が送達され、対応する標的線量(Dti)が付与されるまで繰り返される。n=2の場合、ビームは、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1のスポットと第2のスポットとの間を往復して(S1-S2-S1-...)、毎回パルスを送達する。
図4(b)では、累積された線量Deqは、平均線量
に対する累積された線量(Σ
jDij)の比率を加えることによって正規化されている(すなわち、
)。
【0056】
次いで、ビームは、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第2の組の第2のフラッシュスキャンサブシーケンスにしたがって第1のフラッシュスポットに移動されて、n個の組み合わされたフラッシュスポットの第2の組のn個の組み合わされたフラッシュスポットについてそれらすべてが受けるまで対応する標的線量を上記のステップを繰り返す。
【0057】
k組のスキャンシーケンス
各組(5)のn個のフラッシュスポット(Si)は、上で説明したように、超高付与率(HDR)で照射され得る。既に照射されたフラッシュスポット(Si)を別の組のスポットに照射する際に、照射時間を過度に延長しないことが重要である。したがって、照射セッションの終了時に、線量(Dij)が実際に超高付与率(HDR)で付与されたことを確保するために、k組のシーケンスも考慮されなければならない。HDRで照射すべきスポットのシーケンスを最適化するための方法は、例えば(特許文献1)に記載されているものなど、当技術分野において既知である。スポットのシーケンスについて説明したこれらの方法の何れかを、k組のシーケンスに適用することが可能である。例えば、スカーフシーケンスのユニットセルが、(特許文献1)に記載されているように定義され得る。
【0058】
インターパルス間隔よりも長い計算時間(tc>Δtp)
インターパルス間隔(Δtp)は、治療計画を実行するために使用される粒子加速器にのみ依存する。いくつかの加速器では、いくつかのパルスが、同時に、互いに分離され、相対論的効果を考慮するために異なる電気磁気条件で加速経路の異なるセクションを通過して加速され得る。他の加速器では、パルスが、第2のパルスが発射されて加速される前に、加速器から離れなければならない。これらの差は、(Δtp)の値にかなりの影響を与え得る。
【0059】
一方、計算時間(tc)は処理装置全体に依存する。例えば、計算時間(tc)は、少なくとも以下のステップ、すなわち、
・第iのフラッシュスポット(Si)に付与された第jのパルス(Pij)によって送達された実際のパルス電荷(Cij)を測定するステップと、
・累積された理論上のパルス電荷を、j個のパルスの後に第iのフラッシュスポット(Si)において実際に測定された累積された実際のパルス電荷
と比較することによって、電荷計画に適合するのに必要な第(j+1)のパルス(Pi(j+1))によって第iのフラッシュスポットに付与すべき調整された理論上のパルス電荷(Ci(j+1))を計算するステップと、
・理論上のパルス電荷(Ci(j+1))の調整された値で次のパルス(Pi(j+1))を放出するようにパルス粒子加速器を準備するステップと
を完了することが必要とされ得る。
【0060】
計算時間は、パルスの持続時間のパルス時間(tp)の後にしか開始できないため、加速器がΔtp当たり1パルスの完全な公称パルスレートでパルスを放出するためには、計算時間は、第2のパルスを放出するために加速器が必要とする不感時間(td=Δtp-tp)より短くなるべきである。これは不可能であり、計算時間(tc)はフリータイム(td)より大きく、一般にインターパルス間隔(Δtp)より大きい、すなわち(td<Δtp<tc)である。したがって、計算時間(tc)は、治療計画を長引かせる要素であり、それは、加速器をその最高の公称パルスレートである1パルス/Δtpで機能させることができず、代わりに1パルス/Δttという低いレートで機能しなければならず、Δtt=(tp+tc)>Δtpである(
図5(a)参照)ためである。
【0061】
本発明によって、計算時間(tc)と同じ値において1パルス/Δtpの公称パルスレートに近い、かなり高いレートで加速器を動作させることができる。
【0062】
組が同じフラッシュスポットから構成される場合
図6(a)に示す1つの実施形態では、一群の組(5)におけるすべてのフラッシュスポットが、HDRで同じ標的線量(Dti)を受けなければならない。これは、例えば、同様の特性を有し、いかなる境界からも離れている、又は1.5σ超の距離で互いに隔てられ、隣接するフラッシュスポット間の重なりがほとんどないフラッシュ体積(Vht)の中間部に当てはまる。これらの何れの場合も、1組のn個のフラッシュスポットはすべて同じ数のパルスを受け得る。これらの条件では、一群の組のうちのすべての組の構成は一定であり、組は治療セッションを通して同じフラッシュスポットから構成される。
【0063】
図6(a)は、平面(Π)上に投影された、フラッシュスポット(Si)(=黒点)及び通常スポット(Ri)(=白点)のメッシュの一例を示している。フラッシュスポット(Si)は、n=2個ずつのフラッシュスポットの組(5)に組み合わされる。同じ組の各フラッシュスポット(Si、S(i+1))の広がった細胞は、同じパルスの数(すなわち、mi=m(i+1))で付与された標的線量(Dti、Dt(i+1))を受ける。しかしながら、異なる2つの組(5)のフラッシュスポットは、必ずしも同じ数(mi)のパルスを受ける必要はない。第1の組(5)は、第1のフラッシュスポット(S1)と第2のフラッシュスポット(S2)とから構成される。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、各パルス(Pij)について、ビーム(100)は、第1の組(5)の第1のフラッシュスポットと第2のフラッシュスポットとの間で数(mi)回往復し、(mi=m(i+1)個の)パルスの後に標的線量(Dti、Dt(i+1))に到達するまで累積される電荷を毎回付与する。この段階で、第1の組(5)のフラッシュスポットの広がった細胞は、セッションで計画された標的線量(Dti)を受けており、ビームは、第3のフラッシュスポット(S3)と第4のフラッシュスポット(S4)から構成される第2の組(5)に移動して、上述のように2つのスポット間での線量付与動作を繰り返すことができる。同様の動作が、第(N-1)のフラッシュスポット(S(N-1))と第Nのフラッシュスポット(SN)とから構成される最後の組(5)まで繰り返されて、フラッシュ体積内に含まれるフラッシュスポットの治療を完了する。フラッシュ体積が奇数(N)のフラッシュスポットを含む場合、n=2個のフラッシュスポットの最後の組(5)は、第(N-2)のフラッシュスポットと第(N-1)のフラッシュスポットとから構成される。第Nのフラッシュスポットは単独でnR=1個のフラッシュスポットの追加の組として扱われ、前のk(=(N-1)/2)組のn=2個の組み合わされたフラッシュスポットのとして扱われる。通常スポット(Ri)(=白点)は、通常通り、且つ当業者に周知のCDRで扱われ得る。
【0064】
本発明の利点は、隣接する第1のフラッシュスポット(Si)及び第2のフラッシュスポット(S(i+1))の広がった細胞に(mi、m(i+1)個の)パルス(Pij、P(i+1)j)によって付与された累積された線量を時間の関数として示す、
図5(a)(従来技術)と
図5(b)(本発明)とを比較することによって示される。第1のスポット(Si)に累積された線量は実線で表され、第2のスポット(S(i+1))に累積された線量は破線で表されている。
図5(a)及び
図5(b)に示す実施形態では、組(5)の第1のスポット及び第2のスポットは、第1のスポット(Si)又は第2のスポット(S(i+1))のうちの一方の広がった細胞に付与された線量の一部が他の隣接するスポット(S(i+1)、Si)に重なるように十分に接近している。重なりによって付与される線量は、(S)と符号付けされた曲線の部分によって示されている。第1のスポット又は第2のスポットを狙うパルス(Pij)によって付与された線量は、(P)と符号付けされた曲線の部分によって示されている。
【0065】
図5(a)は、従来行われているような、隣接する第1のスポット及び第2のスポットの照射治療を示しており、第1のスポット及び第2のスポットは連続的に照射される。第1のスポット(Si)の広がった細胞は、累積された線量(Σ
jDij)を付与する、(mi個の)パルス(Pij)を受ける。第2のスポット(S(i+1))の広がった細胞に付与すべき線量の、第1のスポット(Si)の広がった細胞に付与された線量と重なる部分を考慮して、第1のフラッシュスポット(Si)の広がった細胞に送達されたmi個のパルス(Pij)は、標的線量(Dti)より小さい累積された線量Σ
jDij(<Dti)を付与して、例えば、第2のスポット(S(i+1))から重なる線量を受けた後に標的線量(Dti)に到達するようにする。すべての(mi個の)パルスが第1のフラッシュスポット(Si)に送達されたとき、累積された線量(Σ
jDij<Dti)は第1のスポットに付与されており、重なった線量(Ds(i+1))は隣接する第2のフラッシュスポット(S(i+1))に付与されている。ビームは、第2のスポット(S(i+1))に移動し、標的線量(Dt(i+1))が第2のフラッシュスポットに付与されるまで、(m(i+1)個の)の連続したパルスで連続した線量(D(i+1)j)を付与する。この動作の間、重なった線量(Dsi)が第1のスポット(Si)と重なることによって付与され、よってこれも標的線量(Dti)に到達する。
【0066】
この例では、隣接する第1のスポット及び第2のスポットに標的線量(Dti、Dt(i+1))を付与するのに、それぞれ合計25の時間単位(=t/Δtp)の時間がかかっていることが分かる。25の時間単位のそれぞれは、使用した粒子加速器が1個のパルスを放出し得る時間に相当する。この例では,25の時間単位の期間において、加速器は、その時間中、25個のパルスを放出できたところを12個のパルス(mi=6個のパルスが第1のスポット上、m(i+1)=6個のパルスが第2のスポット上)しか放出しておらず、この結果、加速器の公称レートに対する有効性は50%未満(=12/25)となる。この不一致は、放出された各パルスの実際のパルス電荷(Cij)を測定し、これを理論上の電荷と比較し、調整された理論上のパルス電荷で次のパルス(Pi(j+1))を放出するために加速器を準備するために、インターパルス間隔(Δtp)に対して長い計算時間(tc)を要することに起因する。第1のスポット(Si)及び第2のスポット(S(i+1))の連続的な照射による標的線量(Di、D(i+1))を付与するためのこの長い時間(Δt、tot(Si))は、HDRを実現するのに有害であり、場合によっては、FLASH-RTが不可能となり得る。
【0067】
本発明によって、上術の従来技術の治療計画に比べて総照射時間をかなり短縮することができる。
図5(b)は、上述の
図5(a)に示した従来技術の実施形態と同じ標的線量(Dti、Dt(i+1))及び同じパルス数(mi,m(i+1))を受けなければならないn=2個のフラッシュスポット(Si、S(i+1))の組(5)に対する治療計画を示している。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ビームは、第1のフラッシュスポット(S1)の広がった細胞に第1の線量(D11)を付与し、第2のフラッシュスポット(S2)に移動して第1の線量(D21)を付与し、第2のフラッシュスポット(S2)に第1の線量(C21)が送達されたときの計算時間(tc)の間に決定及び準備された調整された理論上の第2のパルス電荷にしたがって、第1のフラッシュスポット(S1)に戻って第2の線量(D12)を付与する。以降も同様である。2つのフラッシュスポットの広がった細胞から電荷の重なりによって、標的線量(Dti、Dt(i+1))の送達に必要な総時間(Δt、tot(Si))は約13単位時間、すなわち
図5(a)を参照して論じた従来技術の治療計画にしたがって要する時間の約半分である。これにより、従来技術の治療計画で実現した電荷付与率の2倍の電荷付与率が得られ、フラッシュ体積全体をHDRで治療できる可能性が高まった。更に、組(5)のフラッシュスポット(Si、S(i+1))の両方を治療するのに必要な総時間(Δt、tot(Si))も、従来技術の治療計画で要する時間の約半分であった。隣接する2つのスポットの広がった細胞間の線量の重なりの有無にかかわらず、このことにより、患者にとって有益であると同時に、病院や治療センタにとっても有益なことに、治療セッションの持続時間が大幅に短縮され、病院や治療センタは、単位時間当たりにより多くの治療回数を計画することができ、粒子加速器の使用の頻度が最適化される。
【0068】
従来技術の治療計画に比べて、本発明により治療計画の加速度は、計算時間(tc)の不感時間(td=Δtp-tp)に対する比率(tc/td)が1より大きくなると大きくなる。本発明は、比率(tc/(td×n))が1に近づき、好ましくは1未満にならないように(すなわち、tc/(td×n)≧1且つtc/(td×n)→1)、各組においてフラッシュスポットの数を選択することによって治療時間を短縮する。
【0069】
組が異なるフラッシュスポットから構成される場合
場合によっては、所与の組(5)におけるすべてのフラッシュスポットが、それぞれの標的線量(Dti)に到達するために、フラッシュスポットの広がった細胞に同じ数(mi)のパルスを照射できないことがある。このことは、例えば、フラッシュスポットが境界に近い場合、又はメッシュが高密度で隣接するフラッシュスポット間にかなりの重なりがある場合などに起こり得る。したがって、最も少ないパルス数を受けるように設計されたフラッシュスポットの広がった細胞は、同じ組の隣接するフラッシュスポットの広がった細胞よりも先に標的線量(Dti)に到達する。これらのフラッシュスポットはそれ以上照射されてはならないため、照射されないようにしなければならないが、同じ組の他のフラッシュスポットの広がった細胞は、依然としていくらかの線量を受けなければならない。細胞がそれらの標的線量(Dti)又はそれらの計画された数のパルス(Pij)を既に受けているフラッシュスポットに向かう制御できない線量の重なりを防止することを考慮して、線量付与は、その組で、細胞がそれらの標的線量(Dti)又はそれらの計画された数のパルス(Pij)を未だ受けていない(n-1)、(n-2)などのフラッシュスポットで続けることができる。セット内に残っている2つのフラッシュスポット以外のすべてのフラッシュスポットは、対応する標的線量を受け、照射の場から離れるため、残りの2つのフラッシュスポットのうち、最も多数のパルスを受けなければならないフラッシュスポットが、まもなくセット内(又は照射の場)で単独になる。同じことが複数の組で起こり、単独のフラッシュスポットが多く残る場合、フラッシュ体積全体におけるHDRを保証することが難しくなり得る。
【0070】
図6(b)に示す本発明の好ましい実施形態では、組は、数n=2個の組み合わされたフラッシュスポットを含み、組の第2のフラッシュスポット(S(i+1))の広がった細胞は、それぞれの標的線量(Dti、Dt(i+1))に到達するために第1のスポット(Si)の広がった細胞が受けなければならないパルスの数(mi)より多くのパルスの数(m(i+1))を受けなければならない(すなわち、mi<m(i+1))。これは、治療セッションの最初に組がn=2個のフラッシュスポットを含んでいた場合、又は、上で説明したように、それぞれの細胞が対応する標的線量(Dti)に到達するためのパルスを受けるために、2個のフラッシュスポットのみが残っていた場合が当てはまる。この場合、異なる組は透過的であり、新しいフラッシュスポットを受け入れ、細胞が標的線量(Dti)に到達した他のフラッシュスポットを外すことによって、治療の時間と共に発展できる。この状況は、次のように定義され得る。n=2個のフラッシュスポット(S1、S2)の第1の組のフラッシュスキャンサブシーケンスにおける第2のフラッシュスポット(S2)が、第1のフラッシュスポット(S1)の広がった細胞に第1の標的線量(Dt1)を送達するために必要なパルス(P11~P1(m1))の数(m1)より多い、第2の標的線量(Dt2)にその細胞が到達するためのパルス(P21~P2(m2))の数(m2)を受けなければならない(すなわち、m1<m2)。本発明の本実施形態は、
図6(b)に示すように、また次のように進む。
・第1の組(5)の第1のフラッシュスポット(Si)及び第2のフラッシュスポット(S(i+1))(
図5(c)の実線及び破線を参照)がそれぞれ(mi個の)パルスを受け(また実質的な重なりがない場合、標的線量(Dti)が第1のフラッシュスポット(Si)の広がった細胞に付与され)、第2のフラッシュスポット(S(i+1))が第1のフラッシュスポット(Si)から解離し、第3のフラッシュスポット(S(i+2))と組み合わされてn=2個のフラッシュスポット(S(i+1)、S(i+2))の第2の組を形成し、第3のフラッシュスポット(S(i+2))が、第2のフラッシュスポット(S(i+1))から距離d(≦DM)に位置し、第2のフラッシュスポット(S(i+1))及び第3のフラッシュスポット(S(i+2))の両方がそれぞれ(m(i+1)-mi個の)パルスを受け、第2のフラッシュスポット(S(i+1))が標的電荷(Ct(i+1))を受けるまで、残留電荷(Ct(i+1)-Cti)より大きい第3の標的電荷(Ct(i+2))を受けなければならず、
・第3のフラッシュスポット(S(i+2))(
図5(c)の長い破線を参照)が、第2のフラッシュスポット(S(i+1))から解離し、第4のフラッシュスポット(S(i+3))(
図5(c)の混合線を参照)と組み合わされてn=2個のフラッシュスポット(S(i+2)、S(i+3))の第3の組を形成し、以降同様に、メッシュのすべてのN個のフラッシュスポットがHDRでそれぞれの標的電荷(Cti)を受けるまで続けられる。
【0071】
図5(a)に関しても、従来技術の治療計画の時間列と
図5(c)に示す本実施形態の時系列とを比較することによって、同様の解析を行うことができる。はじめに、
図5(b)に関して論じたのと同じフラッシュスキャンシーケンスがここで適用され、ビームは第1のフラッシュスポット(Si)と第2のフラッシュスポットと(S(i+1))との間で移動する。しかしながら、本実施形態では、第1のフラッシュスポット(Si)の広がった細胞は、第2のフラッシュスポット(S(i+1))の広がった細胞よりも前に標的線量(Dti)に到達する。明確にするために、
図5(c)では、隣接するフラッシュスポット間に実質的な重なりがないことが想定されている。第2のフラッシュスポット(S(i+1))は第1のフラッシュスポット(Si)から解離し、第3のフラッシュスポット(S(i+2))と新しい組を形成し、ビームは、第2のフラッシュスポット(S(i+1))が対応するパルスの数(m(i+1))を受けるまで第2のフラッシュスポット(S(i+1))と第3のフラッシュスポット(S(i+2))との間で振動する。第3のフラッシュスポット(S(i+2))は第2のフラッシュスポット(S(i+1))から解離し、第4のフラッシュスポット(S(i+3))と組み合わされてn=2個のフラッシュスポットの第3の組(5)を形成し、以降同様である。
図5(c)から分かるように、治療時間は、第1のスポット及び第2のスポットの広がった細胞に標的線量(Dti、Dt(i+1))を付与するのに必要な
図5(a)の従来技術の治療計画によって必要とされるのと同じ時間で最適化され(HDRには遅すぎるリスクが高い)、標的線量は、3つのフラッシュスポット(Si~S(i+2))、の広がった細胞に付与され、部分的に
図5(c)の本実施形態では第4のフラッシュスポット(S(i+3))の広がった細胞に付与される。
【0072】
図5(b)の実施形態に関連して上述したように、本発明は、比率(tc/(td×n))が1に近づき、1未満にならないように(すなわち、tc/(td×n)≧1且つtc/(td×n)→1)、各組においてフラッシュスポットの数を選択することによって治療時間を短縮する。
【0073】
通常スポット(Ri)
本発明は、フラッシュ体積(Vht)に標的線量(Dti)をHDRで付与することに焦点を合わせる。しかしながら、治療体積(V)はまた、腫瘍細胞(3t)を主に含む標的体積(Vt)を含み、腫瘍細胞(t)は、腫瘍細胞(3t)が健康な細胞(3h)に隣接していないか、又はビームが標的体積(Vt)に到達するのに健康な細胞を横断しないため、CDRで死滅させることができる。標的体積(Vt)は、患者のコンフォートのためにセッションを短くすることを除けば、電荷付与率を気にすることなく、PBSでも治療され得る。標的体積(Vt)に対する治療計画を立てることは、以下のステップ、すなわち、
・投影面(Π)上に、照射軸(X)に平行に投影された、標的体積(Vt)(すなわち、Vt=V-Vht)の射影の範囲を覆うM個の通常スポット(Ri)のメッシュを規定するステップと、
・必ずしもHDRではなくmi個のパルスで標的電荷(Cti)を付与するための各パルス電荷(Cij)の値を規定する、各通常スポット(Ri)について通常電荷計画を決定するステップと、
・M個の通常スポット(Ri)のそれぞれ1つに標的電荷(Cti)を付与するための通常スキャンシーケンスを規定するステップと
を含む。
【0074】
図6(a)及び図(b)は、(上述のように)黒点で表されたフラッシュスポット(Si)のメッシュによって規定されたフラッシュ体積(Vht)と、白点で表された通常スポット(Ri)のメッシュによって規定された標的体積(Vt)とを含む治療体積(V)を示している。本発明の治療計画は、フラッシュスポット及び通常スポットを順次、任意の順序で治療するが、好ましくは
図6(a)及び
図6(b)に示すように、フラッシュスポットを先にし、その後で通常スポットを治療する。
【0075】
結言
本発明は、パルス粒子加速器とパルス粒子加速器を制御するプロセッサとを備え、治療計画にしたがってPBSによってフラッシュ体積(Vht)に荷電粒子をHDRで付与するための治療装置を提供する。連続したパルスによる線量の付与と、粒子加速器によって各パルスにおいて実際に放出された電荷(Cij)に関する統計的な不確かさとのために、所与の標的線量は、フラッシュスポット(Si)の広がった細胞にのみ、総時間Δtt=mix(tp+tc)且つ最大線量付与率ΣjDij/mix(tp+tc)(これはFLASH-RTを得るには遅すぎることが多い)で付与され得る。更に、十分に密なメッシュの場合、隣接するフラッシュスポット上の第1のフラッシュスポット(Si)よって覆われた細胞に付与された線量(Dij)の重なりは、付与時間を更に長くし、線量付与率を更に低下させる。
【0076】
フラッシュスポット(Si)をn個のフラッシュスポットごとの組に組み合わせ、上述のフラッシュスキャンサブシーケンスにしたがってビーム(100)を移動させることにより、フラッシュスポット(Si)の広がった細胞に標的線量(Dti)を付与するための時間が大幅に短縮され、それに応じて線量付与率も向上する。このことは、線量の重なりが、隣接するフラッシュスポット間でかなりある場合は、更に有利である。すべての場合において、セッションの持続時間は、従来の計画ではなく、本明細書に記載される治療計画によって大幅に短縮され、標的線量(Dti)が各スポットの広がった細胞に連続的に付与される((
図5(a)(従来技術)及び
図5(b)及び
図5(c)(本発明)を参照)。
【符号の説明】
【0077】
3h 健康な細胞
3t 腫瘍細胞
3s 患者の皮膚
5 組み合わされたフラッシュスポットの組
100 ビーム
Cij パルス(Pij)の電荷
CDR 従来の線量付与率
CM パルスの最大パルス電荷
Di フラッシュスポットの広がった細胞に付与される線量
Dij 電荷CijのパルスPijによって付与された線量
d 2つのスポット間の距離
dM スキャンサブシーケンスの2つの連続するフラッシュスポット間の最大距離
ds スキャン距離
Dti スポット(Si、Ri)の広がった細胞における標的線量
HDR 超高線量付与率
k 組の数
M 通常スポット(Ri)の数
mi 標的線量(Dti)を付与するのに必要なパルスの数
n 組におけるフラッシュスポットの数
N フラッシュスポット(Si)の数
nR 追加の組におけるフラッシュスポットの数(=比N/nの残り)
Pij 電荷(Cij)のパルス
Ri 通常スポットi
Si フラッシュスポットi
SOBP ブラッグピークの和
tc 計算時間
td 不感時間(=Δtp-tp)
tp パルス時間
V 治療体積
Vht フラッシュ体積
vs スキャン速度
Vt 標的体積
X 照射軸
Δtp インターパルス間隔
Δts スキャン時間
【外国語明細書】