(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106523
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】埋線療法用ロープ及びこれを含む埋線療法用ニードル装置
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20230725BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20230725BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61L31/06
A61L31/02
A61L31/14 500
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084222
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2021513324の分割
【原出願日】2019-09-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0110982
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0114080
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520507416
【氏名又は名称】ラボエヌピープル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サン ヨン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の生分解性ポリマー埋線に比べてその寿命を延長することができ、埋線自体の薬物担持能を向上して薬物伝達体として有用であり、簡易な方法を通じて薬物を伝達することができる埋線療法用ロープ、及びこれを含む埋線療法用ニードル装置を提供する。
【解決手段】生分解性ポリマーを含む線状コア10aと、前記線状コアの外周面に螺旋状に巻かれた金属ワイヤー20aとを含み、前記金属ワイヤーはマグネシウムまたは亜鉛単独またはこれらの混合物、及びマグネシウムまたは亜鉛を主成分とするこれらの合金の中で選択された少なくとも1種の生分解性金属を含むものであることを特徴とする埋線療法用ロープ100aである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーを含む線状コアと、
前記線状コアの外周面に螺旋状に巻かれた金属ワイヤーとを含み、
前記金属ワイヤーはマグネシウムまたは亜鉛単独またはこれらの混合物、及びマグネシウムまたは亜鉛を主成分とするこれらの合金の中で選択された少なくとも1種の生分解性金属を含むものであることを特徴とする埋線療法用ロープ。
【請求項2】
生分解性金属は以下の化学式1で表示されることを特徴とする請求項1に記載の埋線療法用ロープ。
[化学式1]
MgaZnbXc
化学式1で、a、b及びcは各成分の重量%で、a+b+c=100重量%であり、0≦a≦100、0≦b≦100、0≦c≦30の範囲でaまたはbが最も大きく、Xはマグネシウムまたは亜鉛以外の金属。
【請求項3】
前記金属ワイヤーは少なくとも一面に不規則または規則的に配列された複数の突起を含む突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項4】
前記金属ワイヤーは一面にその断面が三角形の突起が連続的に配列された突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項5】
前記埋線療法用ロープは刺付き埋線の形態を有することを特徴とする請求項4に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項6】
前記金属ワイヤーは、前記化学式1で、a、b及びcは各成分の重量%で、a+b+c=100重量%であり、i)90≦a≦100、0≦b≦10、0≦c≦10またはii)0≦a≦10、90≦b≦100、0≦c≦10であり、XはCa、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPで組成された群で選択される1種以上の生分解性金属を含むことを特徴とする請求項2に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項7】
前記金属ワイヤーは純度が95%以上のMgであることを特徴とする請求項1に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項8】
前記金属ワイヤーは純度が95%以上のZnであることを特徴とする請求項1に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項9】
前記線状コアはポリダイオクサノン、ポリ乳酸、ポリ-L-乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン及びこれらの共重合体の中で選択された少なくとも1種の生分解性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の埋線療法用ロープ。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項の埋線療法用ロープを含むことを特徴とする埋線療法用ニードル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋線療法用ロープ及びこれを含むニードル装置に関し、より詳しくは、生分解性金属を利用した埋線療法用ロープ及びこれを含むニードル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
埋線療法(THREAD EMBEDDING THERAPY)とは、穴位埋蔵療法の中の一つで、穴位内に異物を埋め立てることにより穴位に持続的な刺激を与えて疾病を治療する療法である。埋蔵物の物理化学的刺激だけでなく、穴位に対する刺激時間を延長して治療効果を増大させることにその目的がある。埋蔵物の種類は非常に多様で、過去には豚、羊、ニワトリ、兎などの副腎、脳下垂体、脂肪及び犬の脾臓のような動物組職や薬物、鋼圏、磁塊などが用いられ、現在は金属工具と腸線(catgut)などが用いられている。韓国ではクロム(chromic)からなる外科手術用糸を主に用い、組職反応が少なく、加水分解されて解き、安全性が立証されたポリダイオクサノン(polydioxanone、PDO)を主成分にする縫合糸が広く用いられている。
【0003】
埋線療法を留鍼と薬糸の二つの側面から見れば、まず、留鍼は「黄帝内経」の九鍼以後の刺激の強度や疾病の種類によって多くの道具が開発されたもので、特に頑固な慢性病に持続的な刺激を与えるために留鍼の方法が作られたが、「黄帝内経霊枢・終始」で留鍼の理論的基礎を提供した。
【0004】
薬糸を用いた治療は宋代太平恵民和剤局で982年頃に編纂した「太平恵民和剤局方」によれば、埋線療法または埋植療法と言って糸に薬物をつけて穴位に施術したという記録がある。漢方医学教育に用いられる鍼灸医学教科書では針法を刺激部位による針刺法、刺激方法による針刺法、特定理論による針刺法に分けるが、埋線療法はその中で刺激方法による磁針法に属する新鍼灸針刺法に該当する。
【0005】
埋線療法の適応症としては、慢性病及び気虚の境界線を越えて急性病過失症などの各種疾病を治療するレベルで、治療可能な疾病の種類は約200種類に達し、その内容は内科、外科、婦人科、小児科、皮膚科、眼耳鼻咽喉科、筋骨格系疾患など多様な分野で用いる。
【0006】
現代医学で埋線療法は肌の老化やしわ改善などのための方法で、リフティングワイヤーのような挿入物を挿入する方式で広く適用されている。しわ、弾力の喪失などの肌老化の具体的な原因は、長期間の研究にも明らかになっていないが、リフティングワイヤーを皮下に挿入するなど皮下に挿入物を挿入することにより、手術的方法に準ずる目立つ直接的な効果を得ることができる。リフティングワイヤーは皮下で肌を引き上げる機械的効果だけでなく、挿入されたリフティングワイヤーの周辺の細胞組職が治癒、再生されながら真皮層のコラーゲン生成を促進して肌弾力を復活させてしわが伸びるなどの効果を得ることができる。
【0007】
最近には生分解性材質の縫合糸を用いて、真皮層に挿入された縫合糸が役割を果たした後には生体内で分解されるようにする方法が適用される。
【0008】
縫合糸の材質はポリダイオクサノン(PDO)が商業的に最も多く用いられており、最近には体内でもっと長期間分解されない特性及び人体親和的特性の側面でポリ-L-乳酸(PLLA)材質の使用も増えている。一方、その他にも分解速度及び機械的強度及び軟性を考慮してポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、グリコール酸/L-乳酸共重合体(PGLA)及びこれらの共重合体(copolymer)などが生分解性素材として埋線療法用縫合糸に適用可能な素材である。しかしながら、このような生分解性高分子素材は、基本的に強度が弱くて、手術過程で好ましくない切れなどが発生する虞が大きく、また、公認された一部金属材料に比べて相対的に生体適合性が落ちて痛症、炎症誘発などの生体拒絶反応が起きる場合も発生する。
【0009】
このような問題点の中の一部に対して解法を提示するための技術として、大韓民国特許登録第10-1641299号公報は、生分解性刺付き埋線の表面に金属イオンまたは金属粒子を蒸着することにより金属コーティング薄膜が形成されるようにして体液と刺付き埋線が直接接触することを防止する内容を開示しているが、蒸着される金属成分で生体適合性が高いと知られている金、銀、チタンのみを限定していて該当金属成分の体内での分解に対する明確な解法を提示していないだけでなく、薄膜形態で高分子縫合糸に蒸着される構造であるため、従来の主な問題点である高分子素材の強度低下に対する解法は提示していなかった。また、生体適合性刺付き埋線の表面を金属イオンまたは金属粒子で蒸着した場合、その刺付き埋線は実質的に薬糸の機能を果たすことができなくなる。
【0010】
一方、本発明者は生分解性Mg-Ca-Zn系合金骨移植材の生体適合性及び強度保持について研究したことがある(Cho SY, Chae S-W, Choi KW, Seok HK, Kim YC, Jung JY, Yang SJ, Kwon GJ, Kim JT, Assad M. 2012. Biocompatibility and strength retention of biodegradable Mg-Ca-Zn alloy bone implants. J Biomed Mater Res Part B 2012:00B:000-000)。具体的には、Mg-Ca-Zn合金骨スクリューについて生体適合性及び強度保持力を評価したが、その結果、兎移植モデルを使用した組職病理学的分析においてMg-Ca-Zn合金がインプラント周りの組職で炎症細胞が全く見えないかほとんど見えない結果を見せた。また、血液学と血清生化学的検査において移植前後の許容基準範囲で立証され、インプラントから金属元素の放出は正常組職水準に何らの有意的な影響を及ぼさないことを立証したことがある。このような側面でMg-Ca-Zn系合金は整形外科用生分解性高分子の優秀な代案であることを確認した。
【0011】
本発明者はこのようなMg-Ca-Zn系合金の優秀な生体適合性を確認し、これに対して多様な分野への取り入れを試みて来た。その一例として、これをマイクロキャリアに活用しようとしたことがある。これに関して、本発明者はMgまたはZn単独、またはMg-Zn-Ca系合金などのMgまたはZn系金属を含むマイクロキャリアに対して既出願したことがある(大韓民国公開特許第2017-0115449号公報)。このようなマイクロキャリアに対してP&Kスキン臨床研究センター(株)に依頼して人体適用試験を行い、具体的には目もとしわ、肌弾力、真皮緻密度及び肌厚さの測定は勿論で、その安定性を評価してその効能効果を確認したことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は本発明者の研究からその生体適合性が確認されたことのあるMgまたはZn金属またはこれらの合金を含む生分解性金属を利用して、埋線療法で人体に適用する時、生体組職に対する副作用がなく、組職に対する牽引力を強化することができ、従来の生分解性ポリマー埋線に比べてその寿命を延長することができ、埋線自体の薬物担持能を向上して薬物伝達体として有用であり、簡易な方法を通じて薬物を伝達することができる埋線療法用ロープを提供することを目的とする。
【0013】
本発明はまたこのような埋線療法用ロープを含む埋線療法用ニードル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は生分解性ポリマーを含む線状コアと、前記線状コアの外周面に螺旋状に巻かれた金属ワイヤーとを含み、前記金属ワイヤーはマグネシウムまたは亜鉛単独またはこれらの混合物、及びマグネシウムまたは亜鉛を主成分とするこれらの合金の中で選択された少なくとも1種の生分解性金属を含む埋線療法用ロープを提供する。
【0015】
より具体的には、本発明において、生分解性金属は以下の化学式1で表示されるものであってもよい。
【0016】
[化学式1]
MgaZnbXc
【0017】
化学式1で、a、b及びcは各成分の重量%で、a+b+c=100重量%であり、0≦a≦100、0≦b≦100、0≦c≦30の範囲で、aまたはbが最も大きく、Xはマグネシウムまたは亜鉛以外の金属。
【0018】
好ましい一具現例による埋線療法用ロープにおいて、前記金属ワイヤーは少なくとも一面に不規則または規則的に配列された複数の突起を含む突起部を有するものであってもい。
【0019】
好ましい一具現例による埋線療法用ロープにおいて、前記金属ワイヤーは一面にその断面が三角形の突起が連続的に配列された突起部を有するものであってもよい。
【0020】
好ましい一具現例による埋線療法用ロープは刺付き埋線の形態を有するものであってもよい。
【0021】
好ましい一具現例による埋線療法用ロープにおいて、前記金属ワイヤーは前記化学式1で、a、b及びcは各成分の重量%で、a+b+c=100重量%であり、i)90≦a≦100、0≦b≦10、0≦c≦10またはii)0≦a≦10、90≦b≦100、0≦c≦10であり、XはCa、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPで組成された群で選択される1種以上の生分解性金属を含むものであってもよい。
【0022】
好ましい一具現例において、前記金属ワイヤーは純度が95%以上のMgであってもよい。
【0023】
徐放性と支持体としての持続力の面で、前記金属ワイヤーは純度が95%以上のZnであってもよい。
【0024】
好ましい一具現例において、前記線状コアはポリダイオクサノン(PDO)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)及びこれらの共重合体(copolymer)の中で選択された少なくとも1種の生分解性ポリマーを含むものであってもよい。
【0025】
本発明の他の一具現例では、前記一具現例による埋線療法用ロープを含む埋線療法用ニードル装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の埋線療法用ロープは生分解性ポリマーを含む線状コアを生分解性金属または合金を含む金属ワイヤーが螺旋状に巻く形態を有することにより、生分解性金属または合金を埋線療法に適用するにおいて、金属が有する剛性(Stiffness)を効果的に低減して柔軟な機械的特性を有するようにし、それにより金属の異物感を最小化し、ロープの組職に対する牽引力を向上させることができ、特定の生分解性金属または合金が有する体内でのメカニズムによってポリマーからなる線状コアと組職間の接触面積を減少させて加水分解の量を減少させることによりロープの寿命を延長させることができ、線状コアだけでなく、金属ワイヤーのワインディングを通じて形成されたその間の空間に薬物が効率的に担持されることによって薬物伝達体で有用であり、埋線療法という簡易な方法で薬物を伝達することができる投与方法を提供することができる。さらに生分解性金属または合金の体内でのメカニズムによって膨潤効果、一名フィラー効果を発現することができる付加的効果を得ることができる。一方、生分解性ポリマーは物理的加工によって断面積の減少及び応力集中で強度が低下するという問題が発生するが、本発明では生分解性ポリマーを含む線状コア自体に物理的加工をしないので機械的特性が低下しないという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の埋線療法用ロープの一具現例を示したもので、線状コアの外周面をその表面が滑らかな形態の金属ワイヤーが螺旋状に巻いた構造の一例である。
【
図2】本発明の埋線療法用ロープの一具現例を示したもので、線状コアの外周面をその一面に突起部を有する金属ワイヤーが螺旋状に巻いた構造の一例である。
【
図4】本発明の埋線療法用ロープが内挿されたニードル装置の一例を示した。
【
図5】本発明の埋線療法用ロープを構成する金属ワイヤーに含まれる生分解性金属において、生分解性金属の組成元素別試料による分解速度を測定した結果グラフである。
【
図6】本発明の埋線療法用ロープをラットの経皮に挿入して移植する過程を示した写真である。
【
図7】ラットの経皮に本発明の埋線療法用ロープを挿入し、Micro-CTで観察したイメージであり、
図7は挿入直後である。
【
図8】ラットの経皮に本発明の埋線療法用ロープを挿入し、Micro-CTで観察したイメージであり、
図8は挿入1週後のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について図面を参照してより詳しく説明する。
【0029】
本発明者は、上述したように、マグネシウムまたは亜鉛金属単独やこれを含む合金に関してその生体適合性及び適用用途別効能効果について研究してその結果物を論文や特許出願の形態で既に提示したことがある。
【0030】
本発明はこのような研究に基づいて持続的に研究した結果得られたもので、該生分解性金属を埋線療法による薬物伝達体として適用するための多角的努力の結果で本発明を案出したのである。
【0031】
本発明による生分解性金属の埋線療法への取入れは、生分解性ポリマーを含む線状コアと、前記線状コアの外周面に螺旋状に巻かれた金属ワイヤーとを含み、前記金属ワイヤーはマグネシウムまたは亜鉛単独またはこれらの混合物、及びマグネシウムまたは亜鉛を主成分とするこれらの合金の中で選択された少なくとも1種の生分解性金属を含むものである埋線療法用ロープを提供する。
【0032】
本発明による埋線療法用ロープにおいて、金属ワイヤーは、生分解性金属、その中でもマグネシウムまたは亜鉛を含む生分解性金属全般に有効なもので、特に限定されないが、一例として以下の化学式1で表示される生分解性金属を含むことができる。
【0033】
[化学式1]
MgaZnbXc
【0034】
化学式1で、a、b及びcは各成分の重量%で、a+b+c=100重量%であり、0≦a≦100、0≦b≦100、0≦c≦30の範囲でaまたはbが最も大きく、Xはマグネシウムまたは亜鉛以外の金属であってもよい。ここで、Xは合金の生分解性を阻害しないことと知られた金属であってもよく、たとえ生分解性が稀薄であるか有しなくても体外への排出が容易であるか、人体に残留する時に毒性を誘発しない金属であってもよい。
【0035】
生分解性金属はマグネシウムまたは亜鉛を最も多く含むことが好ましい。従って、前記化学式1で、a、b及びcは各成分の重量%で、a+b+c=100重量%であり、i)90≦a≦100、0≦b≦10及び0≦c≦10またはii)0≦a≦10、90≦b≦100及び0≦c≦10であり、XはCa、Fe、Mn、Si、Na、Zr、Ce、Ag及びPで組成された群で選択される1種以上のものが好ましい。
【0036】
本発明による生分解性金属は、埋線療法で適用する時、組職内で吸収及び分解されて金属イオン及び分解産物を体内に放出する特性を有する金属で、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)などはアルカリ土金属系列の生分解性金属で、以下の反応式1~3で表したように、水と反応して水素ガスを放出するメカニズムを有する。
【0037】
[反応式1]
Mg+2H2O→Mg(OH)2+H2(ガス)
【0038】
[反応式2]
Ca+2H2O→Ca(OH)2+H2(ガス)
【0039】
[反応式3]
Zn+2H2O→Zn(OH)2+H2(ガス)
【0040】
本発明において、前記生分解性金属は、マグネシウム(Mg)または亜鉛(Zn)を単独素材として製造されることが好ましい。生体適合性に優れ、正常細胞や組職で毒性を現わさない側面で、好ましくはマグネシウム単独素材の生分解性金属であってもよいが、長期的な支持体としての機能や持続的で長期的な薬物放出を考慮する場合であれば、分解速度がマグネシウムより遅い亜鉛であることが好ましいことがある。ここで、マグネシウムとは純度が95% 以上のマグネシウムと理解することができ、亜鉛も純度が95%以上の亜鉛と理解することができる。
【0041】
埋線療法用ロープにおいて、生分解性金属材料は長期的な支持体として単独で用いるにはその分解速度がやや早い。このような問題点は生分解性ポリマーをコアワイヤーにして相互間の寿命を延長させることにより解決されることができる。
【0042】
一方、前記化学式1で表示される生分解性金属はポテンシャルが異なる金属間化合物を含ませることにより、その分解速度を制御することができ、一例として2以上の金属相(phase)がガルバニック回路を生成して分解速度が加速化されることができる。
【0043】
具体的には、生分解性金属はMg2Ca相、MgZn相またはCa2Mg6Zn3相を含む生分解性金属を含むものであってもよい。
【0044】
分解速度を制御することができる他の方案としては、前記化学式1で表示される生分解性金属表面にPEO(Plasma electrolytic oxidation)コーティング、ポリマーコーティングまたは他の種類の第2の金属がコーティングされてもよい。この時、第2の金属はナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、ニッケル、亜鉛、ガリウム、セレニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ニオビウム、タンタル、チタン、ケイ素、銀、金、マンガン、カルシウムなどを例示することができるが、これに限定されるのではない。この時、前記鉄(Fe)を含む場合、特にステンレス機能をするクロム(Cr)、ニッケル(Ni)が質量基準で1%未満に制御されてこそ腐食速度と生体適合性を保持することができる。
【0045】
このような本発明の生分解性金属はそのものがにきび原因菌に対する抗菌活性を有する。本発明者はマグネシウムまたは亜鉛を単独素材とした生分解性金属と前記金属にカルシウムなどの他の種類の金属を混合した生分解性金属を薄板形態に製造し、これらのにきび原因菌に対する抗菌活性を評価した。その結果、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛を単独素材として製造された生分解性金属または前記金属に他の種類の金属が特定範囲で混合された合金はそのものが抗菌活性を有することを確認した。そこでこれを含むにきび緩和及び予防用化粧品構成物に対して既に出願したことがある(大韓民国特許出願第10-2018-0078402号公報)。
【0046】
このような事実によれば、本発明の埋線療法用ロープの場合、埋線療法による施術時に、にきび原因菌であるプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)などに対する抗菌活性も発現してにきびを予防したり誘発されたにきびに対する緩和効果を得ることができることを期待することができる。
【0047】
一方、本発明の埋線療法用ロープの線状コアは生分解性ポリマーを含むもので、このような生分解性ポリマーは、従来の埋線療法や縫合糸などに適用されるか適用されることができることと知られた多様な生分解性ポリマーを用いることができることは勿論である。具体的な一例として、ポリダイオクサノン(PDO)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)及びこれらの共重合体(copolymer)などを挙げることができるが、これに限定されるのではない。
【0048】
本発明の埋線療法用ロープの一例を
図1に示した。埋線療法用ロープ100は生分解性ポリマーを含む線状コア10の外周面を前記生分解性金属または合金を含む金属ワイヤー20が螺旋状に巻いた形態で配置される。
【0049】
このように、金属ワイヤー20を線状コア10を中心として螺旋状に巻くように配置させた理由の一つは、生分解性金属または合金が有する剛性(Stiffness)を低めるための一目的を有することができ、生分解性金属または合金自体のみをワイヤー形態で埋線療法用ロープに適用すれば、生体安全性を確保することができるが、異物感が大きくなることがある。しかしながら、本発明のように、生分解性ポリマー線状コアを中心として金属ワイヤーを螺旋状に巻いた形態で配置させる場合、金属がより柔軟な(flexible)機械的特性を有することができて異物感を最小化させることができる。
【0050】
また他の理由は、薬物担持の側面で、生分解性ポリマーを含む線状コアが有する従来の薬糸としての機能、即ち薬物担持体としての機能に加えて、生分解性金属が線状コアを螺旋状に巻きながら自然に発生される微細な空間を通じて空間的に薬物担持効率を向上させることができることを期待することができる。
【0051】
一例として、ヒアルロン酸のような薬物はポリマーを含む線状コアに担持させるためには液状の形態で適用されるべきであるが、ヒアルロン酸の場合、水溶解度が極めて低くてこのような線状コアに担持させる薬物の量が極めて制限的であるしかない。これに対して、本発明の埋線療法用ロープの場合、微細な空間を通じて薬物を担持することができ、それによって、ヒアルロン酸水溶液を用いても実質的な担持量を増加させることができることは勿論であり、ヒアルロン酸のような水溶解度の低い薬物に対しては水溶液状態ではなく粉末(powder)や粒子(granule)自体でも担持可能である。それにより、実質的に必要な量だけの薬物担持量を増加させるという効果を得ることができることは勿論である。
【0052】
また、埋線療法用ロープの組職に対する牽引力を向上させる側面でも螺旋状に巻いた金属ワイヤーがロープ表面に凹凸を提供することができて好ましい。
【0053】
本発明の好ましい一具現例では、薬物担持効率を向上させるための微細な空間をより安定的に確保することができる側面、そして組職に対する牽引力をより確固に向上させることができる側面で好ましく、金属ワイヤーが少なくとも一面に不規則または規則的に配列された複数の突起を含む突起部を有するものであってもよい。
【0054】
前記及び以下の記載で「不規則または規則的に配列された複数の突起」という用語は、突起の大きさが互いに同一または異なる場合、突起が連続または不連続に配列された場合、突起の形状が互いに同一または異なる場合、及びこれらの組合を全部含む用語に理解されるべきである。
【0055】
好ましい一具現例による埋線療法用ロープの一例を
図2及び3に示した。これを参照すれば、金属ワイヤー20aは一面にその断面が三角形の突起が連続的に配列された突起部2を有するものであってもよい。
【0056】
このような形態を有する金属ワイヤー20aが線状コア10aに螺旋状に巻かれた場合、埋線療法用ロープ100aはその縦断面が刺付き埋線の形態を有し(
図3に示す)、それによって自然に形成される微細な空間Sの大きさや形状が安定的に薬物を担持することができる形態を有するようになり、また刺形態で組職に対する牽引力を強固にすることができる。
【0057】
図1~
図3に示した本発明による埋線療法用ロープは本発明の技術的思想を参考的に説明したもので、本発明がこれに限定されるのではないことは勿論である。
【0058】
本発明による埋線療法用ロープは、生分解性金属または合金を含む金属ワイヤーが生分解性ポリマー線状コアを螺旋状に巻いた形態を有することにより、生分解性ポリマー線状コアと組職間の接触面積を減少させることができる。さらに、生分解性金属または合金が有する前記反応式1~反応式3で大別した反応メカニズムを勘案する時、水素ガスの発生やその他の酸化物の生成などによっても生分解性ポリマー線状コアと組職間の接触面積を減少させることにより窮極的にはロープの組職内残存寿命を増加させることができる。
【0059】
それによって、本発明のロープは長期間の薬物投与を要する多様な疾病で有用な薬物伝達体として機能することができるだけでなく、組職内で支持体としての機能を果たす埋線療法の効果の面で有利である。
【0060】
埋線療法によれば、本発明のロープの周りに体の中の自生物質が集まるように誘導して弱くなった筋肉を厚くして強化することができ、また、我々の生体内でロープが異物に認識されて施術が行われた部位に対する持続的な生物化学的刺激及び組職回復作用を促進し、長く持続されるこのような物理、化学的刺激は人体構造と機能の変化を可能にして固執的で慢性的な疾患治療に効果的である。このような埋線療法は腰椎椎間板ヘルニア、首椎間板ヘルニア、顔面麻痺後遺症、顔の美容整形、膝関節炎、五十肩、顔面非対称または部分肥満などに適用して筋肉と靭帯の支具の役割を果たし、気血循環を改善して痛症疾患及び美容整形に効果を発現することができる。
【0061】
さらに、本発明のロープの場合、このような多様な埋線療法に利用する時、薬物担持効率を最大化させ、ロープの寿命を延長させることにより、晩成疾患の治療に効果的な薬物伝達体として機能することができて、一度の投与でその薬効を持続することができるようにすることにより、慢性疾患者の頻繁で長期的な薬物投与による副作用を減少することができ、また局所的な薬物投与を簡易な方法で可能にすることができる面で好ましい。
【0062】
また、組職内での牽引力を極大化させることができることにより、筋肉と靭帯の支具の役割を充実に果たすことができ、顔が垂れたりしわが多い場合、これを効果的に改善することができるリフティングワイヤーとして有用に用いることができる。
【0063】
一方、前記反応式1~反応式3で大別した生分解性金属または合金の反応メカニズムを勘案する時、組職内で水素ガスを発生させて膨潤効果を付与することができる。これは本発明によるロープが埋線療法を通じて固体的フィラーとして有用であることを期待することができる。フィラーに関して、最近には、ヒアルロン酸のような液状フィラーがよく使われているが、多量注入されたヒアルロン酸に対する拒絶反応事例が多数確認され、生体拒絶反応などの原因で注入フィラーをとり除かなければならない場合、ヒアルロニダーゼのような分解酵素を用いて除去手術を行うが、完璧な除去が難しいという問題点がある。そして、除去の容易性の要求に応じて容易に取り除くことができる固体フィラーを望む外科医が増えているが、このような場合、フィラーの注入、挿入手術の容易性、製品成形容易性、生体適合性などが主要特性として要求され、それに加えて組職内で細胞活性化のための有利な効果などを得ることができる固体フィラーの必要性がさらに高くなっている。本発明によるロープはこのような要求に応じることができる固体フィラーとして有用に用いることができる。
【0064】
一方、本発明による埋線療法用ロープにおいて、線状コアの太さなどは通常の埋線療法用の生分解性ポリマーフィラメントの大きさとして容認された程度であればその制限がなく、本発明によって導入された生分解性金属を含む金属ワイヤーの場合も組職内の異物感と螺旋状のワインディング容易性などを考慮して生分解性ポリマーフィラメントと対等なフィラメント太さを有することが好ましい。通用の範囲で見る時、線状コアと金属ワイヤーは18ゲージ~30ゲージであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0065】
前記のような多様な効果を有する本発明のロープを埋線療法で適用する場合、通常の埋線療法による多様なニードル装置の形態で提供されることができる。埋線療法は多様に考案されたニードルに前記ロープを入れて治療すべき部位に挿入し、ロープのみを体内に残して持続的に疾病を治療する療法で、多様な形態のニードルをロープと接木することができることは勿論である。
【0066】
図4に本発明のロープ100aを内挿したニードル装置200の一例を示したが、これに限定されるのではない。
【0067】
図4でロープ100aを内挿する場合、組職内に挿入する時の抵抗やスクラッチを防止するために金属ワイヤーを含んだ部分まではニードル内部に含ませ、線状コア10a部分のみ露出させた状態に内挿することが好ましい。ただ図面では本発明のロープ100aがニードル内に内挿されたことを見せるために一部を露出させて見せたことと理解すべきである。
【0068】
発明の実施形態
以下、本発明を実施例によって詳しく説明したが、本発明がこれら実施例によって限定されるのではないことは勿論である。
【0069】
<参考例>
本発明のロープを構成する金属ワイヤーに含まれる生分解性金属に対する肌の安定性評価などは前記背景技術に記載されたような本発明者による研究論文や既特許出願件から既に糾明された。
【0070】
それにより、本発明の生分解性金属ワイヤーは正常細胞や組職で毒性を現わさないながら肌を刺激することなく侵襲することができることは勿論である。
【0071】
次の一例では、本発明のロープを構成する金属ワイヤーに含まれる生分解性金属に対する金属元素組成による分解特性に対する一例を示す。これは既生分解性ポリマーとして知られた線状コアにこのような生分解性金属をワインディングする場合、生体内での分解速度を多様に制御することができることを見せるための一例である。
【0072】
以下の表1の組成(重量%)で金属シート(高周波溶解炉で鋳造した後、0.1mm/sの速度で押出して左右幅60mm、1.5mm)を製造した。
【0073】
【0074】
*製造時に発生される不可避的不純物を含んだ純粋金属
【0075】
試料2~7で製造された金属シートを表2の組成を有する生体模写液を含むユージオメーター(Eudiometer)に浸漬させた後、浸漬時間による水素発生量で分解速度を評価し、その結果を
図5に示した。
【0076】
【0077】
図7に示したように、Mg
2Ca相が生成されない試料2~5(Example2~5)の金属シートは安定的な分解による水素ガス発生量を見せたが、Mg
2Ca相が生成される試料6及び7の金属シートの水素ガス発生量が他の実施例とは確実に高い数値を見せて分解速度が上昇されたことを確認することができた。これを通じて、前記生分解性金属の組成を制御することによりその分解速度を調節することができることを確認することができた。
【実施例0078】
以下の表3に示した規格で
図4に示したような埋線療法用ニードル装置を製作した。
【0079】
【0080】
前記表3で示した規格によれば、ニードルの長さを考慮して線状コアの全体長さで金属ワイヤーに巻かれた部分の長さが調節されることが分かる。即ち金属ワイヤーに巻かれた部分の長さがニードルの長さを超えなくてニードルの内部に金属ワイヤーに巻かれた部分が完全に含まれるようにすることを確認することができる。これは本発明による埋線療法用ロープを組職内に挿入する時、抵抗やスクラッチを防止するための面で、金属ワイヤーを含んだ部分まではニードル内部に含ませて線状コア部分のみ露出させた状態で内挿することが好ましいからである。
【0081】
前記規格において、金属ワイヤーに関してはその形態について記載したが、金属ワイヤーは線状コアを螺旋状に巻く形態で適用され、実質的に金属ワイヤーの幅、厚さ及び長さは縫合糸の規格とニードルのゲージ及び長さを考慮して多様に調節されることができることは勿論である。
【0082】
<実験例>
本発明の埋線療法用ロープが組職内で水素ガスを発生させるということ、そしてこのような水素ガスの発生に起因してポリマーからなる線状コアと組職間の接触面積を減少させてロープの寿命を延長させることができることに対して確認するために、ラットを対象として埋線療法用ロープを経皮層に挿入してこれをMicro-CTを通じて観察する実験を行った。
【0083】
具体的には、線状コアとしてポリダイオクサノンを用い、このような線状コアを純度95%のマグネシウムからなる金属ワイヤー(厚さ0.07mm、幅0.7mm)が
図1のような形態で巻いた埋線療法用ロープ(全体長さ70mmの中で金属ワイヤーに巻かれた部位の長さ50mm)を準備して、
図4に示したような埋線療法用ニードル装置に製作した。
【0084】
これを
図6に示した順でラットの経皮層に挿入して手術をした。
【0085】
このような手術を完了したラットに対してMicro-CT(解像度80um、FOV40mm)で観察した結果、挿入直後からエアポケット(air pocket)が不規則的に生成されることを
図7~8の結果から確認することができる。
【0086】
ここで、
図7は埋線療法用ロープを挿入した直後のMicro-CTイメージであり、
図8は挿入した後1週間経過した時点でのMicro-CTイメージである。
【0087】
図7~
図8の矢印表記部分が線状コアが金属ワイヤーに巻かれた部分で、Micro-CT上では線状コアのみが確認できない。
【0088】
図7~
図8の矢印表記部分においてロープの周辺に黒い斑点が存在するが、これがマグネシウム分解産物で、水素ガス発生によるエアポケット当たる。
【0089】
このような結果は、生分解性金属または合金の体内でのメカニズムによって膨潤効果、一名フィラー効果を発現することができる付加的効果を得ることができることに対しても見せる。
本発明による埋線療法用ロープ及びこのような埋線療法用ロープを含む埋線療法用ニードル装置は埋線療法で人体に適用する時生体組職に対する副作用がなく、組職に対する牽引力を強化することができ、従来の生分解性ポリマー埋線に比べてその寿命を延ばすことができ、埋線自体の薬物担持能を向上させて薬物伝達体として有用であり、簡易な方法を通じて薬物を伝達することができる器具として有用に用いられることができる。