(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106547
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】キメラ及びヒト化抗ヒトCTLA4モノクローナル抗体ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230725BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230725BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/46
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085801
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2022096901の分割
【原出願日】2016-12-14
(31)【優先権主張番号】62/267,735
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/309,169
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/359,036
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521449809
【氏名又は名称】オンコシーフォー、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン, パン
(72)【発明者】
【氏名】デベンポート, マーティン
(57)【要約】
【課題】ヒトCTLA4分子に結合するキメラ及びヒト化抗体の組成物、ならびに癌免疫療法における、及び他の免疫療法剤と比較して自己免疫副作用を軽減するための、それらの使用に関する。
【解決手段】CTLA4リガンドB7.1及びB7.2に対するCTLA4遮断活性の増強、エフェクター機能の増強、または膜結合もしくは固定化CTLA4に対する可溶性CTLA4の結合低下に関する。抗体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変アミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有する軽鎖可変アミノ酸配列と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変アミノ酸配列とを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、(ii)配列番号36、37、または38に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(iii)配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と、
(b)(i)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、(ii)配列番号33、34、または35に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(iii)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と、
を含む、抗CTLA4抗体。
【請求項2】
(1)前記軽鎖可変領域におけるCDR2が配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域におけるCDR2が配列番号33に記載のアミノ酸配列を含むか、
(2)前記軽鎖可変領域におけるCDR2が配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域におけるCDR2が配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むか、又は
(3)前記軽鎖可変領域におけるCDR2が配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域におけるCDR2が配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域が配列番号70、71、又は72に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号62、63、又は64に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域が配列番号71に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項5】
前記軽鎖可変領域が配列番号71に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域が配列番号72に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項7】
ヒトCTLA4に結合することができる、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項8】
前記抗CTLA4抗体は、膜結合CTLA4または固定化CTLA4への結合に比しての可溶性CTLA4への結合の低下によって特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体の抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体または請求項9に記載の抗原結合断片を含む、抗癌剤。
【請求項11】
抗PD-1抗体及び抗4-1BB抗体からなる群から選択される追加の薬剤と組み合わせて投与される、請求項10に記載の抗癌剤。
【請求項12】
前記抗PD-1抗体または抗4-1BB抗体と抗CTLA4抗体とが、二重特異性抗体として単一分子中に組み合わされる、請求項11に記載の抗癌剤。
【請求項13】
腫瘍微小環境においてTregの欠失及び局所的T細胞活性化を誘導する、請求項10に記載の抗癌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCTLA4分子に結合するキメラ及びヒト化抗体、ならびにそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト及び他の動物の免疫系は、感染及び疾患に対して保護を提供する役割を果たす。そのような保護は、液性免疫応答及び細胞媒介性免疫応答の両方によって提供される。液性応答は、外来標的(抗原)を認識して中和することができる抗体及び他の生体分子の産生をもたらす。対照的に、細胞媒介性免疫応答は、T細胞によるマクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及び抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の活性化、ならびに抗原の認識に応じた種々のサイトカインの放出に関与する。
【0003】
抗原に対する免疫応答を最適に媒介するT細胞の能力は、2つの別個のシグナル伝達相互作用を必要とする。第一に、抗原提示細胞(APC)の表面上に並んだ抗原がMHC‐ペプチド複合体の形態で抗原特異性ナイーブT細胞に提示されなければならない(1、2)。そのような提示により、提示された抗原に特異的となる免疫応答を開始するようT細胞に指示するT細胞受容体(TCR)を介してシグナルが送達される。第二に、APCと別個のT細胞表面分子との間の相互作用を通して媒介される一連の共刺激シグナルが、最初にT細胞の活性化及び増殖を誘発し、最終的にはそれらの阻害を誘発する(3~5)。したがって、第1のシグナルは免疫応答に特異性を付与し、第2のシグナルは、自己に対する免疫を制限する一方で、応答の性質、強さ、及び持続期間を決定する役割を果たす。これらの第2のシグナル分子の中でも特に重要なのは、抗原提示細胞のB7.1(CD80)(6)及びB7.2(CD86)(7~9)リガンドと、Tリンパ球のCD28及びCTLA4受容体との間の結合である(10~12)。
【0004】
細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)は、末梢性免疫寛容の維持及び緊急T細胞応答のレパートリー形成において中心的役割を果たす適応免疫応答の重要な制御因子として認識されており、したがって、癌及び炎症の治療のための治療標的である。抗CTLA4抗体を用いた治療は、前臨床モデルにおいて抗腫瘍免疫を増強するための強力なツールであることが示されている(10)。CTLA4に対する抗体を用いた単剤療法は、種々の起源の移植可能な腫瘍の拒絶を促進した。
【0005】
有望な前臨床腫瘍モデル試験に基づいて、CTLA4に対する抗体の臨床的可能性が異なるヒト悪性腫瘍において検討されてきた。抗CTLA4(Yervoyとして市販されているイピリムマブ)は、メラノーマの治療において有効性を示しているが、CTLA4の治療及び標的化は、自己免疫様の毒性と関連している。CTLA4の阻害による特徴的な副作用は、一般に免疫関連有害事象(irAE)と称され、最も一般的なirAEは、発疹、肝炎、大腸炎、及び内分泌疾患、特に下垂体機能低下症である。したがって、関連するirAEを軽減させる一方で有効性を高めることにより、抗CTLA4抗体の治療的可能性を向上させることが所望される。
【0006】
免疫療法及び腫瘍の治療の分野に関するもう1つの焦点は、特に、免疫原性の低い腫瘍に対する抗腫瘍活性を増強するための、異なる免疫チェック阻害剤の組み合わせである。しかしながら、この手法は、自己免疫副作用をさらに増加させるリスクと関連しており、自己免疫を高めることなく癌免疫を選択的に調節する必要性がさらに強調される。
【0007】
CD28受容体のリガンドに関するさらなる研究により、一連の関連するB7分子(「B7スーパーファミリー」)の同定及び特徴付けに至った(32~33)。現在、このファミリーにはいくつかの既知のメンバーが存在する:B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、誘導性共刺激因子リガンド(ICOS-L)、プログラム死-1リガンド(PD-L1;B7-H1)、プログラム死-2リガンド(PD-L2;B7-DC)、B7-H3、B7-H4、及びB7-H6(35-36)。
【0008】
B7-H1は、異なるヒト及びマウス組織において広く発現され、例えば、両方の種の心臓、胎盤、筋肉、胎児の肝臓、脾臓、リンパ節、及び胸腺に、またマウスのみの肝臓、肺、及び腎臓に広く発現される(37)。B7-H1(PD-L1、CD274)は、腫瘍に対する免疫応答の形成に極めて重要に関与しているため、B7スーパーファミリーの特に重要なメンバーである(38;米国特許第6,803,192号、同第7,794,710号、米国特許出願公開第2005/0059051号、同第2009/0055944号、同第2009/0274666号、同第2009/0313687号、国際公開第WO01/39722号、同第WO02/086083号)。
【0009】
プログラム死-1(「PD-1」)は、B7-H1及びB7-DCの受容体である。PD-1は、T細胞制御因子の拡張CD28/CTLA4ファミリーのI型膜タンパク質メンバーである(39;米国特許出願公開第2007/0202100号、同第2008/0311117号、同第2009/00110667号、米国特許第6,808,710号、同第7,101,550号、同第7,488,802号、同第7,635,757号、同第7,722,868号、国際公開第WO01/14557号)。CTLA4と比較して、PD-1は、免疫応答をより広範囲で負に制御する。PD-1は、活性化T細胞、B細胞、及び単球上に発現され(40~41)、ナチュラルキラー(NK)T細胞において低レベルで発現される(42~43)。
【0010】
B7-H1とPD-1との相互作用は、T細胞及びB細胞に対する重要な負の共刺激シグナルを提供し(43)、細胞死誘導因子として機能する(39)ことが分かっている。T細胞活性化及び増殖の阻害におけるB7-H1及びPD-1の役割は、これらの生体分子が炎症及び癌の治療のための治療標的として機能し得ることを示唆している。したがって、感染及び腫瘍を治療するため、ならびに適応免疫応答を上方制御するための抗PD1及び抗B7-H1抗体の使用が提案されており、多数のヒト腫瘍の治療に効果的であることが実証されている。しかしながら、全ての対象が抗PD-1または抗B7-H1治療に応答したかまたは完全寛解したわけではないため、抗腫瘍活性を増強するために抗PD-1または抗B7-H1抗体を他の免疫チェック阻害剤と組み合わせることに強い関心が存在する。
【0011】
4-1BB(CD137及びTNFRSF9としても知られる)は、別の免疫チェックポイント分子である。CD137の最もよく特徴付けられた活性は、活性化T細胞に対するその共刺激活性である。CD137の架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌、生存活性及び細胞溶解活性を増強する。さらに、抗CTLA4と同様に、抗4-1BB抗体は、免疫活性を増強してマウスの腫瘍を排除することができる(27~29)。しかしながら、自己免疫疾患を悪化させる抗CTLA4抗体の傾向とは異なり、癌治療薬抗4-1BB mAbは、ループス発症マウスにおいて自己免疫疾患の発生を抑制することが示されており、それらは、抗dsDNA抗体産生を抑制し、腎臓の病態を軽減した(25、26)。抗腫瘍活性を増強させる一方で抗CTLA4と抗4-1BB抗体の治療を組み合わせることによりマウス大腸癌腫瘍モデルにおいて抗CTLA4治療の自己免疫副作用を軽減することが可能であることが、以前のデータによって実証されている(19)。これは、抗CTLA4腫瘍療法の自己免疫副作用を相殺することが可能であることを示している。
【0012】
抗マウスCTLA4抗体を用いた実験によって実証されたように、in vitroの免疫学的相関因子はほとんど価値がないこともあるため、抗ヒトCTLA4抗体の前臨床スクリーニングは困難を伴う。in vivoで強力な抗腫瘍免疫を誘導する同じ抗マウスCTLA4抗体は、in vitroでT細胞に対して様々な影響を及ぼし得る。抗CTLA4抗体は、同種抗原に応じてT細胞増殖を増強したが、抗CD28による共刺激に応じてT細胞増殖を抑制した(30、31)。また、抗体とのCTLA4結合は、同じ培養においてT細胞の異なるサブセットの増殖を促進または阻害することができる(32)。この複雑性は、げっ歯類モデルにおいてヒトT細胞応答を研究できれば克服することができる。
【0013】
免疫応答を増強するために使用された場合に自己免疫副作用が少ない、抗腫瘍治療に使用するための、抗CTLA4抗体が本明細書に記載される。さらに、これらの抗体は、自己免疫副作用を抑制する一方で抗腫瘍性を増強するために、抗PD-1及び抗4-1BB等の他のチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,803,192号明細書
【特許文献2】米国特許第7,794,710号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0059051号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0055944号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0274666号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0313687号明細書
【特許文献7】国際公開第01/39722号
【特許文献8】国際公開第02/086083号
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0202100号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0311117号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2009/00110667号明細書
【特許文献12】米国特許第6,808,710号明細書
【特許文献13】米国特許第7,101,550号明細書
【特許文献14】米国特許第7,488,802号明細書
【特許文献15】米国特許第7,635,757号明細書
【特許文献16】米国特許第7,722,868号明細書
【特許文献17】国際公開第01/14557号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ヒトCTLA4分子に結合する抗体組成物及びそれらの抗原結合断片、ならびに自己免疫副作用の少ない癌免疫療法のためのそれらの使用に関する。具体的には、本発明は、CTLA4リガンドB7.1及びB7.2に対するCTLA4遮断活性の増強、エフェクター機能の増強、または膜結合もしくは固定化CTLA4に対する可溶性CTLA4の結合低下に関する。
【0016】
抗体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変アミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有する軽鎖可変アミノ酸配列と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変アミノ酸配列とを含み得る。抗体はまた、配列番号27、28、または29に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変アミノ酸配列と、配列番号30、31、または32に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変アミノ酸配列とを含み得る。抗体は、配列番号21、22、及び23に記載のCDR配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号24、25、及び26に記載のCDR配列を有する重鎖可変領域とを含み得る。より具体的には、抗体は、配列番号33、34、または35に記載のCDR2配列を有する重鎖可変領域と、配列番号36、37、または38に記載のCDR配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0017】
抗体の免疫グロブリン重鎖定常領域は、配列番号3または4に記載のアミノ酸配列を含み得る。抗体の免疫グロブリン重鎖定常領域はまた突然変異を含み得る。配列番号3のhIgG1骨格の配列に関連して、突然変異は、M135Y、S137T、T139E、S181A、E216A、もしくはK217A、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、抗体の免疫グロブリン重鎖定常領域は、6つ全ての突然変異を含み得る。抗体は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する重鎖アミノ酸配列と、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖アミノ酸配列とを含み得る。抗体はまた、配列番号9、11、または13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖アミノ酸配列と、配列番号15、17、または19に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖アミノ酸配列とを含み得る。抗体は、ヒトCTLA4に結合することが可能であり得る。抗体はまた、ヒトCTLA4のB7-1またはB7-2への結合を阻害し得る。
【0018】
さらに、本明細書に記載される抗体の抗原結合断片が本明細書に提供される。また、治療有効量の本明細書に記載される抗体を含む薬学的組成物も本明細書に提供される。薬学的組成物は、生理学的に許容される担体または賦形剤を含み得る。
【0019】
別の態様において、対象における1つ以上の免疫機能または免疫応答を増強するための方法が本明細書に提示され、この方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物及び薬学的組成物を投与することを含む。特定の実施形態において、1つ以上の免疫機能または免疫応答を活性化または増強することが望ましい疾患を予防、治療、及び/または管理するための方法が本明細書に提示される。疾患は、癌であり得、それはヒト悪性腫瘍であり得る。具体的には、ヒト悪性腫瘍は、メラノーマ、肺癌、乳癌、肝細胞癌、卵巣癌、前立腺癌、ホジキンリンパ腫もしくは非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、または腎細胞癌であり得る。別の実施形態において、治療される疾患は感染性疾患である。本明細書に記載される方法は、免疫療法に関連する自己免疫性有害作用を最小限に抑えることができる。
【0020】
他の特定の実施形態において、本方法は、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物が1つ以上の免疫機能または免疫応答を活性化または増強し得る別の治療と組み合わせて対象に投与される、併用療法を含む。別の実施形態において、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物は、抗原性組成物と組み合わせてアジュバントとして投与される。具体的に実施形態において、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物は、ワクチン組成物によって誘発される免疫応答を活性化または増強するために、ワクチン組成物と組み合わせて投与される。
【0021】
特定の実施形態において、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物は、異なる免疫調節経路を標的とする1つ以上の他の治療と組み合わせて対象に投与される。好ましい実施形態において、異なる免疫調節経路を標的とする治療の活性は、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物と相補的または相乗的である。ある場合において、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物は、他のチェックポイント阻害剤、またはインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤等の小さい癌免疫学調節因子と組み合わせて投与される。別の場合において、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物は、免疫刺激因子と組み合わせて投与される。特定の実施形態は、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物を、抗PD-1(ペンブロリズマブ(Keytruda)またはニボルマブ(Opdivo))、抗B7-H1(アテゾリズマブ(Tecentriq)またはデュルバルマブ)、抗B7-H3、抗B7-H4、抗LAG3、抗Tim3、抗CD40、抗OX40、抗BTLA、抗CD27、抗ICOS、または抗41BBと組み合わせることを含む。別の実施形態において、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物及び第2の免疫刺激因子は、単一の二重特異性抗体中に組み合わせられる。
【0022】
別の実施形態において、本明細書に記載される抗ヒトCTLA4抗体は、可溶性CTLA4分子に対して細胞表面上で発現されるヒトCTLA-4に優先的に結合することができる。抗ヒトCTLA4抗体は、ヒトCTLA4に結合し、B7.1またはB7.2のin vivoでの発現を優先的に上方制御することができる。抗体は、免疫応答(免疫療法)の調節及び癌の治療に使用するために組成物中に含有されてもよい。
【0023】
本発明はさらに、好ましい活性を有する抗ヒトCTLA4 mAbをスクリーニングする方法に関する。癌免疫及び自己免疫性有害作用に関するin vitro免疫学的相関因子が定義されていないため、抗ヒトCTLA4 mAbの前臨床スクリーニングは困難を伴う。重大な自己免疫性の副作用は、ヒト抗CTLA4(イピリムマブ)を用いた臨床試験において、特に、抗PD-1と組み合わされたときに観察されている。免疫関連毒性の少ない抗CTLA4抗体を同定するために、ヒトCTLA4遺伝子ノックインマウスを用いて、ヒト化マウスにおいて抗腫瘍活性を示す抗体をin vivoで自己免疫性有害作用を低減する能力についてスクリーニングすることができる。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、増強された抗腫瘍効果を有する抗ヒトCTLA4 mAbをスクリーニングする方法に関し、抗体は、腫瘍環境におけるTreg細胞の局所的枯渇の増強を示す。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は、抗原提示細胞(APC)等の免疫細胞上のB7.1及びB7.2の発現レベルをモニタリングすることにより、抗CTLA4抗体のin vivoでの遮断効果をモニタリングする方法に関する。本発明はさらに、抗CTLA4抗体のin vivoでの生物活性を測定し、免疫細胞上のB7.1及びB7.2の発現レベルをex vivoで測定することにより抗CTLA4治療に対する明らかな応答をモニタリングするためのバイオマーカーを企図する。
【0026】
L3D10親抗体ならびにヒト化変異型PP4631及びPP4637のCTLA4結合エピトープをマッピングするために、マウス及びヒトCTLA4タンパク質は、B7-1に交差反応性を示すが、抗CTLA-4抗体に対してはそうではないという事実を利用した。したがって、ヒトCTLA-4タンパク質からのアミノ酸のクラスタをマウスCtla-4タンパク質からのアミノ酸で置換したヒトCTLA-4Fcタンパク質の多数の変異体を設計した。この試験で使用される抗CTLA-4抗体はマウスCtla-4に結合しないため、抗体結合エピトープの重要な残基をマウスアミノ酸で置換した場合、抗ヒトCTLA-4抗体の結合を消失させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】IgG1 Fc領域に突然変異の新規組み合わせを有するキメラ抗体(左)及びヒト化(右)L3D10抗体の略図である。Fc領域内の突然変異の位置はそれらのアミノ酸位置の数字によって特定され、アミノ酸はそれらの一文字コードによって特定される:数字の前の文字は置換されたアミノ酸を表し、数字の後の文字は導入されたアミノ酸を表す。抗体の可変領域は白抜きの楕円で示され、ヒト配列はグレーの長方形で示される。V=可変領域、C=定常領域、L=軽鎖、H=重鎖。
【
図2】ELISAによって決定されるプレート固定化CTLA4へのキメラL3D10及び10D1のCTLA4結合。ELISAプレートを1μg/mlのCTLA4-Hisタンパク質(Sino Biological,China)でコーティングした。所与の濃度のビオチン化結合タンパク質を加え、HRP結合ストレプトアビジンを用いて結合を測定した。10D1-1及び10D1-2は、同じ抗体の2つの独立した材料ロットである。B7.1-Fcは陽性対照であり、Fcは陰性対照である。
【
図3】L3D10競合アッセイ。10D1は、キメラL3D10と比べてCTLA4へのキメラL3D10の結合の遮断において効率的ではない。ELISAプレートに加える前に、ビオチン化キメラL3D10を所与の濃度の未標識CTLA4結合タンパク質またはCTLA4-Fcと混合したことを除いて、実験は
図2のように行われた。10D1よりもはるかに優れた、未標識L3D10による遮断に留意されたく、このことは、これらの抗体結合部位が同一ではないことを示唆している。
【
図4】プレート固定化B7.1へのCTLA4の結合を遮断する。B7.1Fcタンパク質を0.5μg/mlでELISAプレートにコーティングした。洗浄及び遮断後、所与の濃度の競合タンパク質の存在下で、ビオチン化CTLA4-Fcタンパク質を0.25μg/mlで加えた。示されるデータは、405nMで2回測定した光学濃度の平均値である。B7.1-Fc、キメラL3D10、及びCTLA4-Fcは全て、CTLA4:B7.1の相互作用を用量依存様式で遮断したのに対し、10D1抗体の2つの別個のロットは、試験した全ての用量で遮断することができなかった。10D1の両方のロットがビオチン化CTLA4への強力な結合を示すため、CTLA4のビオチン化はCTLA4上の10D1エピトープを破壊しない(データは示さず)。
【
図5】プレート固定化B7.2へのCTLA4の結合を遮断する。B7.2Fcタンパク質を0.5μg/mlでELISAプレートにコーティングした。洗浄及び遮断後、所与の濃度の競合タンパク質の存在下で、ビオチン化CTLA4-Fcタンパク質を0.25μg/mlで加えた。キメラL3D10がCTLA4:B7.2の相互作用を用量依存様式で遮断したのに対し、10D1抗体の2つの別個のロットは、最も高い濃度でもCTLA4:B7.2の相互作用を完全に遮断することはできなかった。
【
図6】可溶性B7-1及びB7-2ならびに固定化CTLA4-Fcを使用すると、10D1及びL3D10の両方がB7-CTLA4相互作用を強力に遮断する。様々な用量の抗ヒトCTLA4 mAbを0.25μg/mlのビオチン化ヒトCTLA4-FcとともにヒトB7-1Fcでコーティングしたプレートに加えた。プレートに結合したCTLA4の量を、HRP結合ストレプトアビジンを用いて測定した。示されるデータは、2回の測定の平均値であり、2つの独立した実験の代表値である。
【
図7】細胞表面に発現させたB7.1へのCTLA4の結合を遮断する。ビオチン化CTLA4-Fcタンパク質を、所与の濃度の競合タンパク質の存在下で、CHO細胞を発現しているB7.1に0.5μg/mlで加えた。マウスまたはヒトB7-1及びB7-2でトランスフェクトしたCHO細胞へのビオチン化融合タンパク質の結合を、フローサイトメトリーにより決定した。結合した受容体の量を、フィコエリスリン結合ストレプトアビジンを用いて測定した。示されるデータは3通りの試料の蛍光強度の平均値である。キメラL3D10は、CTLA4:B7.1の相互作用を用量依存様式で遮断したのに対し、10D1抗体の2つの別個のロットは、試験した全ての用量で遮断することができなかった。
【
図8】細胞表面に発現させたマウスB7.1へのCTLA4の結合を遮断する。mB7-1をCHO細胞上に発現させた場合の10D1によるマウスB7-1-ヒトCTLA4相互作用のわずかではあるが検出可能な遮断。様々な用量の抗ヒトCTLA4 mAbを0.25μg/mlのヒトCTLA4-FcとともにマウスB7-1を発現しているCHO細胞に加えた。示されるデータは平均値及びSEMまたは3通りのデータであり、2つの独立した実験の代表値である。
【
図9】細胞表面に発現させたB7.2へのCTLA4の結合を遮断する。ビオチン化CTLA4-Fcタンパク質を、所与の濃度の競合タンパク質の存在下で、CHO細胞を発現しているB7.2に0.5μg/mlで加えた。キメラL3D10がCTLA4:B7.2の相互作用を用量依存様式で遮断したのに対し、10D1抗体の2つの別個のロットは、最も高い濃度でもCTLA4:B7.2の相互作用を完全に遮断することはできなかった。この図中に示されるデータは、少なくとも5回繰り返された。
【
図10】10D1はL3D10よりも良好にビオチン化ヒトCTLA4-Fcに結合する。様々な用量の抗ヒトCTLA4 mAbまたは対照IgGをプレートにコーティングした。ビオチン化CTLA4-Fcを0.25μg/mlで加えた。プレートに結合したCTLA4の量を、HRP結合ストレプトアビジンを用いて測定した。示されるデータは、2回の測定の平均値であり、2つの独立した実験の代表値である。
【
図11】10D1ではなくL3D10が、ポリヒスチジンタグ付加CTLA4とヒトB7-1を発現しているCHO細胞との間の相互作用を遮断する。ヒトB7-1を発現しているCHO細胞を、所与の用量の抗体とともにポリヒスチジンタグ付加CTLA4とインキュベートし、CTLA4-Fcの量をPE-ストレプトアビジンを用いて検出し、FACSCanto IIにより測定した。示されるデータは3通りの試料の蛍光強度の平均値であり、2つの独立した実験の代表値である。
【
図12】キメラL3D10は同系MC38モデルにおいて確立された腫瘍の完全寛解を誘導する。上パネルは実験デザインを示し、下パネルは、対照IgG(左下のパネル、n=6)またはキメラL3D10(右下のパネル、n=5)のいずれかを投与されたマウスにおけるMC38腫瘍の増殖動態を示す。
【
図13】MC38腫瘍モデルにおけるキメラL3D10及び10D1の治療効果。体重約20グラムのヒトCTLA4-ノックインマウスを試験に使用した。1×10
6のMC38腫瘍細胞をCtla4
h/hマウスに皮下注射し、腫瘍が直径0.5cmのサイズに達したとき、それぞれ5匹または6匹のマウスを含む3つの群に腫瘍担持マウスを無作為化した。次いで、矢印によって示されるように、7日目、10日目、13日目、及び16日目に、100μg/注射の10D1、キメラL3D10、または対照hIgGFcでマウスを(腹腔内)処理した。2回の実験の結果が示され(左及び右パネル)、示されるデータは腫瘍サイズの平均値及び標準偏差である(左パネル:n=6/群、右パネルn=5/群)。L3D10及び10D1は、このモデルにおいて同様の治療効果を有し、両方とも確立された腫瘍の完全寛解を誘導することが可能である。腫瘍の直径(d)は、以下の式を用いて算出した:D=√(ab)、V=ab2/2(aは長径であり、bは短径である)。統計分析は、二元配置反復測定ANOVAによって行った(処理X回)。左パネル:P=10D1対hIgGFc:5.71e-07;L3D10対hIgGFc:P=5.53e-07;10D1対L3D10:P=0.869
【
図14】CTLA4
h/mマウスにおける抗CTLA-4 mAbによるMC38の効果的な拒絶。ヘテロ接合型CTLA4
h/mマウスが使用されることを除いて
図13と同様である。示されるデータは腫瘍直径の平均値及びSEMである(6マウス/群);10D1対hIgGFc:P=0.0011;L3D10対hIgGFc:P=5.55e-05;10D1対L3D10:P=0.0346。
【
図15】B16-F1メラノーマ腫瘍モデルにおけるキメラL3D10及び10D1の治療効果。体重約20グラムのヒトCTLA4-ノックインマウスを試験に使用した。矢印は、処理の時間を示す(50μg/マウス/処理)。示されるデータは腫瘍サイズの平均値及び標準偏差である(n=4/群)。L3D10は、このモデルにおいて同様の治療効果を有し、両方とも、この侵襲性で免疫原性の低い腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖を遅延させることができた。
【
図16】in vivoでのCTLA4遮断を測定するためのアッセイ。樹状細胞上のB7.1またはB7.2結合は、T細胞の表面上のCTLA4に結合し、またそれによって下方制御される。しかしながら、遮断性抗CTLA4抗体の結合は、CTLA4へのB7.1/B7.2の結合を妨げ、したがってB7.1及びB7.2の下方制御を妨げ、その結果としてB7.1/B7.2の発現における純増加をもたらす。しかしながら、ヒトCTLA4及びマウスCTLA4の両方を発現しているキメラT細胞を用いると、ヒトCTLA4に結合する抗体は、マウスCTLA4へのB7.1/B7.2の結合を妨げず、B7.1/B7.2の阻害が回復される。
【
図17】10D1はin vivoでのB7-CTLA4相互作用を遮断しない。
図11に記載されるアッセイを使用して、抗CTLA4抗体で処理したマウスからの細胞を用いてB7.1及びB7.2の発現をアッセイした。
図17Aは、実験デザインの図を示す。端的に述べると、年齢及び性別の一致したマウスに、500μgの抗体またはそれらの対照を腹腔内投与した。注射後24時間に、マウスを屠殺し、それらの脾細胞を抗CD11c、CD11b、抗B7-1、及び抗B7-2 mAbで染色した。
図17Bは、B7の発現について分析したCD11c
hi DCの表現型を示す代表的なデータを示す。
図17Cは、対照IgG1-Fc、L3D10、または10D1を投与されたマウスからのDC上のB7-1のレベルを示す代表的なヒストグラムを示す。上パネルのデータは、ホモ接合型ノックインマウスにおける抗体効果を示し、下パネルのデータは、ヘテロ接合型マウスにおける抗体効果を示す。
図17Dは、B7-2の発現が示されていることを除いて
図17Cと同様である。
図17C及び
図17Dに示されるデータは、3匹マウス/群からのデータの代表値であり、3匹マウス/群で1回繰り返された。
図17Eは、ヒトCTLA4ホモ接合型マウスにおいて、10D1ではなくL3D10がB7-1(左パネル)及びB7-2(右パネル)の発現を誘導したことを示す。示されるデータは、群当たり合計6匹のマウスを含む2つの実験から要約されたものである。各実験において、対照マウスの平均データを100%として実験的に定義し、実験群のデータを対照に対して正規化する。
図17Fは、ヘテロ接合型マウスが使用されることを除いて
図17Eと同様である。L3D10も10D1も、マウスCtla4遺伝子及びヒトCtla4遺伝子の両方を共優性的に発現するマウスにおいてB7-CTLA4相互作用を遮断しない。
【
図18】L3D10はヒトCTLA4に結合するがマウス CTLA4には結合しない。示されるデータは、Ctla4
h/h(上)またはCtla4
m/m(下)マウスからの脾細胞を用いた、ゲートをかけたCd3
+Cd4
+細胞間のCTLA4の細胞内染色のドットプロットである。抗マウスCTLA4 mAb 4F10を対照として用いた。
【
図19】CTLA4
h/mマウスにおけるキメラL3D10及び10D1の治療効果。上パネルは実験デザインを示す。Ctla4
h/hマウスに大腸癌細胞株MC38を投与し、腫瘍が直径約5mmのサイズに達したときに、マウスを対照ヒトIgG-Fc、L3D10、または10D1で4回処理し、6週間の期間にわたり腫瘍サイズを観察した。下パネルは、対照IgG、キメラL3D10、または10D1のいずれかを投与されたマウスにおけるMC38腫瘍の増殖動態を示す(n=6/群)。
図16に示されるようなin vivoでのCTLA4遮断活性における明確な差にもかかわらず、L3D10及び10D1の両方が、キメラCTLA4
m/hマウスにおいてMC38モデルに対する強力な抗腫瘍活性を示す。
【
図20】10D1及びL3D10は、B16メラノーマの増殖に対して同様の治療効果を有する。1×10
5のB16腫瘍細胞をCtla4
h/hマウスに(皮下)注射し(n=4-5)、矢印によって示されるように、11日目、14日目、17日目(
図20A)、または2日目、5日目、及び8日目(
図20B)に、100μg(
図20A)または250μg(
図20B)の10D1、L3D10、または対照IgGFcで(腹腔内)処理した。
図20Aでは、10D1対hIgGFc:P=0.0265;L3D10対hIgGFc:10D1対L3D10:P=0.0487;P=0.302。
図20Bでは、10D1対hIgGFc:P=0.00616;L3D10対hIgGFc:P=0.0269:10D1対L3D10:P=0.370。データは、群当たり4~5匹のマウスの平均値±SEMを表す。統計分析は、二元配置反復測定ANOVAによって行った。
【
図21】腫瘍微小環境内におけるTregの枯渇を評価するために拒絶が完了する前に屠殺したCtla4
h/h(
図21A)及びCtla4
m/h(
図21B)マウスにおけるL3D10と10D1との間の免疫治療効果。示されるデータは、群当たり5匹のマウスを含む2つの独立した実験の腫瘍直径の平均値及びSEMである。
【
図22】B7-CTLA4相互作用の遮断は抗CTLA4 mAbの癌免疫療法の活性に寄与しない。
図22Aは、2つの抗CTLA4 mAbによって大きく異なる遮断活性にもかかわらず同等の免疫治療効果を示す。5×10
5のMC38腫瘍細胞をCtla4
h/hマウスに(皮下)注射し(n=6)、矢印によって示されるように、7日目、10日目、13日目、及び16日目に、100μgの10D1、L3D10、または対照hIgG-Fcで(腹腔内)処理した。データは、群当たり6匹のマウスの平均値±SEMを表す。統計分析は、二元配置反復測定ANOVAによって行った(処理X回)。10D1対hIgG-Fc:P=5.71
e-07;L3D10対hIgG-Fc:P=5.53e
-07;10D1対L3D10:P=0.869。データは、3つの独立した実験の代表値である。
図22B:どちらの抗体もB7-CTLA4相互作用を遮断しないマウスにおいて強力な腫瘍拒絶を誘導する。マウスCTLA4及びヒトCTLA4の両方を発現するヘテロ接合型マウスが使用されたことを除いて
図22Aと同様である。10D1対hIgG-Fc:P=0.0011;L3D10対hIgG-Fc:P=5.55e
-05;10D1対L3D10:P=0.0346。データは、3つの独立した実験の代表値である。
図22C~F:B7-CTLA4相互作用の遮断は腫瘍微小環境におけるTregの選択的な枯渇に寄与しない。
図22C及びD:B7-CTLA4相互作用を遮断する能力にもかかわらず、L3D10及び10D1は脾臓中のTregを欠失していない。示されるデータは、Ctla4
h/h(
図22C)及びCtla4
m/h(
図22D)マウスの脾臓CD4 T細胞間のFoxp3+細胞の%である。n=6。e及びf:L3D10及び10D1の両方が、Ctla4
h/h(
図22E)及びCtla4
m/h(
図22F)マウスマウスにおいて腫瘍浸潤CD4 T細胞間のTregを欠失している。c~fに示されるデータは、矢印で示されるように、腫瘍細胞チャレンジ後17日(実験1)または19日(実験2)、及び4つの抗CTLA4 mAbによる処理開始後10日または12日のTregの%である。
【
図23】一般的に使用される抗マウスCTLA4 mAb 9H10及び9D9の遮断活性の評価。
図23A及び
図23Bは、B7-1(
図23A)及びB7-2(
図23B)をプレートにコーティングした場合、9H10はB7-CTLA4相互作用を遮断しないことを示す。ビオチン化マウスCTLA4-Fc融合タンパク質を、所与の濃度の対照IgGまたは抗マウスCTLA4 mAb 9D9及び9H10の存在下で、B7をコーティングしたプレートとともにインキュベートした。CTLA4の結合は、HRP結合ストレプトアビジンを用いて検出する。示されるデータは、2回の測定の平均値であり、2つの独立した実験の代表値である。
図23C及び
図23Dは、9D9及び9H10が可溶性CTLA4-Fc(
図23C)及びプレートに結合させたCTLA4-Fc(
図23D)に対して差次的結合を示すことを示している。示されるデータは、2回の測定の平均値であり、少なくとも2つの独立した実験の代表値である。
図23E及びFは、500μgの抗体を用いた腹腔内処理の24時間後に、抗マウスCTLA4 mAb 9D9及び9H10が、WT(Ctla4
m/m)脾細胞からのCD11c
hi DC上のB7-1(
図23E)及びB7-2(
図23F)のレベルに与える影響を示す。データは、各群当たり3匹のマウスを含む2つの独立した実験において、群当たり6匹の独立したマウスから要約されたものである。
【
図24】抗マウスCTLA4 mAb 4F10の活性のvivo及びin vivoでの異なる遮断。
図24A及びBは、4F10がCTLA4-FcとB7-1(
図24A)またはB7-2(
図24B)でコーティングしたプレートとの相互作用に与える影響を示す。ビオチン化マウスCTLA4-Fc融合タンパク質を、所与の濃度の対照IgGまたは抗マウスCTLA4 mAb 4F10の存在下で、B7でコーティングしたプレートと共にインキュベートした。CTLA4の結合は、HRP結合ストレプトアビジンを用いて検出する。示されるデータは、2回の測定の平均値であり、2つの独立した実験の代表値である。
図24C及び
図24Dは、4F10がB7-1及びB7-2の発現に与える影響を示す。群当たり6匹のマウスからのB7-1(
図24C)及びB7-2(
図24D)のレベルに関する要約データ。対照IgG処理群におけるB7レベルを100%として実験的に定義する。
【
図25】抗PD-1と組み合わせたキメラL3D10及び10D1の有害作用。上パネルは実験デザインを示す。体重4グラムを超える10週齢のヒトCTLA4-ノックインマウスの雌のみを試験に使用した。示されるタンパク質またはそれらの組み合わせを投与した。矢印は、処理の時間を示す(100μg/マウス/処理)。示されるデータは体重増加%の平均値及び標準偏差である。キメラL3D10及び10D1は、成獣マウスにおいて同等の癌治療効果を有するが(
図13)、10D1を抗PD-1 mAbと組み合わせたときに異なる有害作用が見られた。
【
図26】抗PD-1と組み合わせたキメラL3D10及び10D1の有害作用。グラフは、対照IgG、10D1+抗PD-1、またはキメラL3D10+抗PD-1のいずれかを投与した、
図25に概略を示す実験からのマウスの42日目の最終体重を示す(n=5/群)。抗PD1+10D1の組み合わせでは体重の有意な減少が観察されるが、これは抗PD-1+キメラL3D10の組み合わせでは見られなかった。
【
図27】抗PD-1と組み合わせたキメラL3D10及び10D1の病理学的影響。抗PD-1と組み合わせて投与した場合の10D1と比較したキメラL3D10の相対的毒性をさらに調べるために、上の
図26に記載されるマウスの肉眼的形態に着目した。10D1+PD-1で処理したマウスにおいて、子宮/卵巣/膀胱及び胸腺が著しく小さかったのに対し、L3D10+抗PD-1で処理したマウスの臓器はhIgG対照と同等であった。対照的に、10D1で処理したマウスから摘出した心臓は、サイズがより大きく見え、明らかに白い外観であった。
【
図28】抗PD-1と組み合わせて10D1を用いた処理は異常な赤血球生成をもたらす。
図27に観察される心臓における違いを考慮して、マウスにおける赤血球生成を調べたところ、L3D10+抗PD-1または対照抗体(hIgG)で処理した群(これらは極めて類似している)と比べて、10D1+抗PD-1で処理したマウスに明らかな違いを観察した。10D1+抗PD-1で処理したマウスの骨髄は明らかに白色を帯び(
図28A)、単離された血液はほぼ完全に白色であった(
図28B)。これに応じて、CD119及びCD71マーカーの分布を用いて赤血球の分化を分析したところ、10D1+抗PD-1で処理したマウスにおいて第IV発生段階を経ている細胞数の統計的に有意な減少が観察された。代表的なFACSプロファイルを
図28Cに示し、要約データを
図28Dに提示する。
【
図29】抗赤血球抗体のフローサイトメトリー分析。NOD.SCID.Il2rg-/-(NSG)マウスからの血液試料を、周産期中に抗体処理を受けたマウスからの血漿試料で染色した。NSGマウスからの血清と、血清を含まないものを陰性対照として用いた。全ての血清は1:50希釈で用いた。これらのデータは、いずれのマウスも抗赤血球抗体を産生しなかったことを示している。
【
図30】抗PD-1と組み合わせてキメラL3D10及び10D1で処理したマウスにおける心臓の病理。抗PD-1と組み合わせたL3D10対10D1の毒性をさらに決定するために、
図26に記載されるマウスにおいて心臓の組織学的分析を行った。10D1+抗PD-1で処理したマウスは、L3D10+抗PD-1で処理したマウスまたはヒトIgG対照で処理したマウスには観察されなかった高レベルのT細胞浸潤を示した。
【
図31】抗PD-1と組み合わせてキメラL3D10及び10D1で処理したマウスにおける肺の病理。抗PD-1と組み合わせたL3D10対10D1の毒性をさらに決定するために、
図26に記載されるマウスにおいて肺の組織学的分析を行った。10D1+抗PD-1で処理したマウスは、L3D10+抗PD-1で処理したマウスまたはヒトIgG対照で処理したマウスには観察されなかった高レベルのT細胞浸潤を示した。
【
図32】抗PD-1と組み合わせてキメラL3D10及び10D1で処理したマウスにおける唾液腺の病理。抗PD-1と組み合わせたL3D10対10D1の毒性をさらに決定するために、
図26に記載されるマウスにおいて唾液の組織学的分析を行った。10D1+抗PD-1で処理したマウスは、L3D10+抗PD-1で処理したマウスまたはヒトIgG対照で処理したマウスに観察されたよりもはるかに高いレベルのT細胞浸潤を示した。
【
図33】抗PD-1と組み合わせてキメラL3D10及び10D1で処理したマウスにおける腎臓及び肝臓の病理。抗PD-1と組み合わせたL3D10対10D1の毒性をさらに決定するために、
図26に記載されるマウスにおいて腎臓及び肝臓の組織学的分析を行った。
図33A~
図33Cは、腎臓の切片であり、
図33D~Eは、肝臓から採取した切片である。10D1+抗PD-1で処理したマウスは、L3D10+抗PD-1で処理したマウスまたはヒトIgG対照で処理したマウスに観察されたよりも高レベルのT細胞浸潤を示した。
【
図34】抗PD-1と組み合わせてキメラL3D10及び10D1で処理したマウスの毒性スコア。
図30~33に示されるこの組織データは要約されており、hIgG対照マウス群よりもわずかに高いスコアを有するL3D10+抗PD-1と比較して10D1+抗PD-1で処理したマウスの高い毒性スコアを示している。
【
図35】周産期中に抗体処理を受けたマウスにおける正常な体重増加から明らかなように、10D1+抗PD-1はCtla4
h/mマウスにおいて有意な毒性を有しない。マウスは、10日目、13日目、16日目、19日目、及び22日目に、所与の抗体または組み合わせを用いた腹腔内処理を受けた(100μg/マウス/注射/抗体)。少なくとも3日に1回マウスの体重を測った。
【
図36】L3D10及び10D1は、プレート固定化CTLA4に対して同様の結合パターンを示す。ELISAプレートを1μg/mlのCTLA4-Hisタンパク質(Sino Biological,China)でコーティングした。所与の濃度のビオチン化結合タンパク質を加え、HRP結合ストレプトアビジンを用いて結合を測定した。10D1-1及び-2は、同じ抗体の2つの独立した材料ロットである。hIgG-Fcは、ヒトIg陰性対照である。
【
図37】L3D10は可溶性CTLA4への結合の低下を示す。所与の濃度の抗ヒトCTLA4 mAbを一晩プレートにコーティングし、洗浄及びウシ血清アルブミンで遮断した後、ビオチン化CTLA4-Fcを0.25μg/mlで加えた。インキュベーション及び洗浄後、HRP標識ストレプトアビジンを用いて捕捉されたCTLA4-Fcの量を測定した。
【
図38】ヒト化抗体可変領域と親L3D10抗体配列とのアライメント。ヒト化抗体配列の重鎖可変領域(上)(配列番号:62~64)及び軽鎖可変領域(下)(配列番号:70~72)を、親L3D10抗体(重鎖:配列番号57;軽鎖:配列番号65)及びそれぞれのヒト抗体フレームワーク(重鎖:配列番号:58~61;軽鎖:配列番号:66~69)と整列させる。マウス親配列に対する逆突然変異が黄色で強調されている。親抗体配列またはそれぞれのヒト抗体フレームワークに存在しない新規アミノ酸、すなわちアミノ酸残基が、緑色で強調されている。CDR2配列に導入された突然変異を紫色で示す。CDR配列は、1528427351721_0に基づいて赤色で示されている。
【
図39】10D1と比較したヒト化L3D10抗体の抗腫瘍活性。ヒトCTLA4ノックインマウスのMC38マウス腫瘍モデルを使用して、キメラL3D10抗体及び10D1と比較してヒト化L3D10抗体の抗腫瘍活性を調べた。上パネルはin vivo 実験の処理スケジュールを示す:接種後7日目に開始して3日ごとに合計4用量の抗体をマウスに投与した。全てのヒト化抗体(n=6/群)は、腫瘍を完全に根絶させ、10D1と同等であった(下パネル)。
【
図40】CTLA4
h/mマウスにおけるヒト化L3D10抗体の抗腫瘍活性。上パネルはin vivo 実験の処理スケジュールを示す:Ctla4
h/mマウスに、対照hIgまたは3つの異なる抗ヒトCTLA4 mAbのうちの1つを、30(-30、実線)または10(-10、点線)mg/注射の用量でMC38腫瘍注射後の示される日に投与した。腫瘍サイズを3日に1回測定した。
【
図41】微小疾患B16-F1腫瘍モデルにおける抗CTLA-4 mAbの治療効果。ヒトCTLA4ノックインマウスのB16-F1マウス腫瘍モデルを使用して、ヒト化L3D10抗体の抗腫瘍活性を調べた。1×10
5のB16腫瘍細胞をCtla4
h/hマウスに(皮下)注射した(n=5~6)。2日目、5日目、及び8日目に、マウスを対照Ig、10D1、キメラL3D10、またはPP4637及びPP4638で処理した(250μg/マウス、腹腔内)。腫瘍発生率及びサイズを1日置きに測定した。10D1対hIgGFc:P=0.00616;L3D10対hIgGFc:P=0.0269;10D1対L3D10:P=0.370;PP4637対hIgGFc:P=0.0005;PP4637対10D1:P=0.805;PP4638対hIgGFc:P=0.0016;PP4638対10D1:P=0.856。データは、群当たり5~6匹のマウスの平均値±SEMを表す。腫瘍のサイズは、腫瘍をまったく発症しなかったマウスの場合を0とみなした。
【
図42】抗PD-1 mAbと組み合わせた毒性に関する10D1、PP4631、及びPP4637の雌の間での比較。凡例中に記載されるように、雌CTLA4
h/hマウスを、生後10日目または11日目に抗体(100μg/マウス/注射、3日に1回)または対照Fcの4回注射で処理した。3日に1回マウスの体重を測った。示されるデータは、30日の期間にわたる体重増加%の平均値及びSEMである。全てのマウスは、43日目に組織学的分析のために屠殺した。群当たりに使用したマウスの数をラベルの括弧内に示す。
【
図43】10D1及び抗PD-1を用いた併用療法は貧血を引き起こすのに対し、PP4631+抗PD-1またはPP4637+抗PD-1のいずれかを用いた処理は引き起こさない。示されるデータは、11日目、14日目、17日目、及び20日目に100μg/マウス/抗体の用量で4回の抗体処理を受けた43日齢マウスのヘマトクリットである。
【
図44A】10D1+抗PD-1を用いた併用療法は全身性のT細胞活性化を引き起こすのに対し、PP4631+抗PD-1またはPP4637+抗PD-1のいずれかを用いた併用療法は引き起こさない。示されるデータは、末梢血(
図44A)または脾臓(
図44B)のいずれかにおける、ナイーブT細胞(CD44
loCD62L
hi)、中枢メモリーT細胞(CD44
hiCD62L
hi)、及びエフェクターメモリーT細胞(CD44
hiCD62Llo)の表現型を有するCD4(上パネル)及びCD8 T細胞(下パネル)の%である。11日目、14日目、17日目、及び20日目に100μg/マウス/抗体の用量で4回の抗体処理を受けた43日齢マウスから細胞を採取した。
【
図44B】10D1+抗PD-1を用いた併用療法は全身性のT細胞活性化を引き起こすのに対し、PP4631+抗PD-1またはPP4637+抗PD-1のいずれかを用いた併用療法は引き起こさない。示されるデータは、末梢血(
図44A)または脾臓(
図44B)のいずれかにおける、ナイーブT細胞(CD44
loCD62L
hi)、中枢メモリーT細胞(CD44
hiCD62L
hi)、及びエフェクターメモリーT細胞(CD44
hiCD62Llo)の表現型を有するCD4(上パネル)及びCD8 T細胞(下パネル)の%である。11日目、14日目、17日目、及び20日目に100μg/マウス/抗体の用量で4回の抗体処理を受けた43日齢マウスから細胞を採取した
【
図45】L3D10のヒト化は固定化CTLA4への結合に影響を与えない。ヒト化L3D10抗体が固定化CTLA4に結合する能力を、
図36に記載されるように決定した。X軸は、溶液に加えた抗CTLA-4 mAbの濃度を示す。ヒト化は固定化CTLA4への結合に影響を与えず、3つ全てのヒト化抗体が、親キメラL3D10抗体及び10D1に対して同様の結合を示した。CTLA-4-hisの代わりにCTLA4-Igを用いたときにも同様のパターンが観察された。
【
図46】ヒト化は可溶性CTLA4へのL3D10の結合をさらに低下させる。ヒト化L3D10抗体が可溶性CTLA4に結合する能力を、
図37に記載されるように決定した。X軸は、ELISAプレートにコーティングした抗CTLA-4 mAbの濃度を示す。ヒト化は、可溶性CTLA4への結合を親L3D10キメラ抗体と比べてさらに低下させる。CTLA-4-hisの代わりにCTLA4-Igを用いたときにも同様のパターンが観察された。
【
図47】PP4631、PP4638、及びPP4637は、in vitroでのB7-CTLA-4相互作用を遮断しない。
図47Aは、抗ヒトCTLA-4 mAb 10D1、PP4631、PP4637、及びL3D10によるB7-1-CTLA-4相互作用の遮断を示す。B7-1Fcを0.5μg/mlの濃度で固定化した。所与の用量の抗体とともにビオチン化CTLA4-Fcを0.25μg/mlで加えた。示されるデータは、405nMで2回測定した光学濃度の平均値である。
図47Bは、抗ヒトCTLA-4 mAb 10D1及びL3D10によるB7-2-CTLA-4相互作用の遮断を示す。B7-2-Fcを固定化したことを除いて
図47Aと同様である。
【
図48】PP4631及びPP4637は、樹状細胞上のB7-1及びB7-2の発現に対するそれらの影響の欠如によって証明されるように、in vivoでのB7-CTLA-4相互作用を遮断しない。群当たり3匹のマウスからのB7-1(a)及びB7-2(b)のレベルに関する要約データ。対照IgG処理群におけるB7レベルを実験的に100%として定義した。
【
図49】抗PD-1 mAbと組み合わせると最良の安全性プロファイルを示すPP4637(
図42を参照)は、最も低い治療用量での腫瘍拒絶に基づいて腫瘍拒絶を引き起こす際に最も強力である。Ctla4
h/mマウスに、対照IgFcまたは3つの異なる抗ヒトCTLA4 mabのうちの1つを、30(-30、実線)または10(-10、点線)μg/注射の用量で示される日に投与した。腫瘍サイズを3日に1回測定した。10μg/注射では、PP4637(HL32)が腫瘍拒絶の誘導において最も効率的である。
【
図50】ヒト化抗体の純度の評価。一過性に発現させたヒト化L3D10抗体をプロテインAクロマトグラフィーにより精製し、3つ全ての抗体からの試料を還元及び非還元SDS-PAGEにより分析した。精製したタンパク質は、還元及び非還元条件の両方において、抗体分子のサイズを示すゲルバンドを生成した。「流出」レーンはプロテインAカラムの素通り画分を示し、抗体プロテインAの大半がプロテインAカラムに付着したことが示唆される。
【
図51】一過性に発現させたタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)。ヒト化抗体の各々のタンパク質試料をSE-HPLCとそれに続く1段階プロテインAクロマトグラフィーにより分析した。上パネル:抗体PP4631 中央パネル:抗体PP4637 下パネル:抗体PP4638。
【
図52】一過性に発現させたタンパク質のCE-SDS分析。ヒト化抗体の各々のタンパク質試料をCE-SDSとそれに続く1段階プロテインAクロマトグラフィーにより分析した。左パネルは非還元条件下での結果を示し、右パネルは還元条件下での結果を示す。上パネル:抗体PP4631 中央パネル:抗体PP4637 下パネル:抗体PP4638。
【
図53A】キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって決定されるヒト化L3D10抗体の電荷アイソフォームプロファイル及び脱アミド。2つの異なる期間(5時間及び12.5時間)にわたる高pHストレス処理の前及び後のヒト化L3D10抗体を比較することにより、高pHストレス下でのタンパク質の脱アミドレベルを決定し、cIEF分析により分析した。
図53A~
図53Cは、抗体PP4631、PP4637、及びPP4638のプロファイルをそれぞれ示す。
【
図53B】キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって決定されるヒト化L3D10抗体の電荷アイソフォームプロファイル及び脱アミド。2つの異なる期間(5時間及び12.5時間)にわたる高pHストレス処理の前及び後のヒト化L3D10抗体を比較することにより、高pHストレス下でのタンパク質の脱アミドレベルを決定し、cIEF分析により分析した。
図53A~
図53Cは、抗体PP4631、PP4637、及びPP4638のプロファイルをそれぞれ示す。
【
図53C】キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって決定されるヒト化L3D10抗体の電荷アイソフォームプロファイル及び脱アミド。2つの異なる期間(5時間及び12.5時間)にわたる高pHストレス処理の前及び後のヒト化L3D10抗体を比較することにより、高pHストレス下でのタンパク質の脱アミドレベルを決定し、cIEF分析により分析した。
図53A~
図53Cは、抗体PP4631、PP4637、及びPP4638のプロファイルをそれぞれ示す。
【
図54】ヒト化L3D10抗体の示差走査熱量測定(DSC)熱分析。異なる抗体の熱安定性及び融解温度を決定するために、それらを示差走査熱量測定(DSC)熱分析に供した。
図54A~
図54Cは、抗体PP4631、PP4637、及びPP4638の正規化されたDSC曲線をそれぞれ示す。
【
図55】ヒト、マカク、及びマウスのCTLA-4細胞外ドメインのアライメント。ヒト(Hm、赤色で示される)(配列番号73)、マカク(Mk、黒色で示される)、及びマウス(Ms、緑色で示される)のCTLA-4タンパク質細胞外ドメインのアミノ酸配列を整列させ、(ヒト配列と比べて)保存されたアミノ酸を破線で示す(-)。アライメントに役立つように、マウス配列は、黄色で強調した位置に(ヒト及びサル配列と比べて)欠失及び挿入を有する。既知のB7-1Ig結合部位を太字及び下線で示す。配列は、ヒト及びサルの配列が高度に保存されていることを示しているが、マウス配列は、多数のアミノ酸の違いを有する。この配列アライメントに基づいて、マウス特異的アミノ酸を組み込んだ11個の変異(M1~M11)(配列番号:40~50)ヒトCTLA-4Fcタンパク質を設計した:各変異プロテインに組み込まれたアミノ酸を青色で示されている。
【
図56A】WT及び変異CTLA-4Fcタンパク質のアミノ酸配列組成。マウスCtla-4アミノ酸を組み込んだWT CTLA-4Fcタンパク質(配列番号39)及び11個の変異タンパク質(配列番号:40~50)をコードするDNA構築物を示されるように設計した。アミノ酸配列は、IgG1 Fc部分を含む成熟タンパク質のものであり、シグナルペプチドのものではない。既知のB7-1Ig結合部位を大きな青い文字及び二重下線で示す。変異体において置換されたマウスアミノ酸残基を赤い下付き文字で示す。タンパク質のIgG1 Fc部分を下線で示す。
【
図56B】WT及び変異CTLA-4Fcタンパク質のアミノ酸配列組成。マウスCtla-4アミノ酸を組み込んだWT CTLA-4Fcタンパク質(配列番号39)及び11個の変異タンパク質(配列番号:40~50)をコードするDNA構築物を示されるように設計した。アミノ酸配列は、IgG1 Fc部分を含む成熟タンパク質のものであり、シグナルペプチドのものではない。既知のB7-1Ig結合部位を大きな青い文字及び二重下線で示す。変異体において置換されたマウスアミノ酸残基を赤い下付き文字で示す。タンパク質のIgG1 Fc部分を下線で示す。
【
図57】M11における突然変異(AA103-106、YLGI>fcGm)はヒトCTLA-4への抗体結合を選択的に消失させる。示されるデータは2回の測定の平均値であり、プレートにコーティングしたhCTLA4-Fc(白丸)、mCTLA4-Fc(黒三角)、M11(黒丸)、及びIgG1-Fc(白三角)へのB7-1Fc(a)、L3D10(b)、PP4631(c)、及びPP4637(d)の結合の結合を示している。
【
図58】B7-1-CTLA4複合体の3D構造において、L3D10、PP4631、及びPP4637をB7-1結合部位に隣接するエピトープにマッピングする。B7-1結合モチーフは赤色に着色され、抗体エピトープを紫色に着色されている。B7-1は、CTLA4の上に空間が充填されたリボンで描かれ、CTLA-4のそれは充填されていないリボンとして描かれている。
【
図59】WT(配列番号39)及び変異CTLA-4Fcタンパク質M12~M17(配列番号:51~56)のアミノ酸配列組成。マウスCtla-4アミノ酸を組み込んだ6つの変異CTLA-4Fcタンパク質M12~M17をコードするDNA構築物を示されるように設計した。アミノ酸配列は、IgG1 Fc部分を含む成熟タンパク質のものであり、シグナルペプチドのものではない。既知のB7-1Ig結合部位を大きな青い文字及び二重下線で示す。変異体において置換されたマウスアミノ酸残基を赤い下付き文字で示す。タンパク質のIgG1 Fc部分に下線で示す。
【
図60】突然変異分析により、CTLA-4に対する10D1(
図60A)、PP4631(
図60B)、及びPP4637(
図60C)の個別の結合要件を明らかにする。CTLA-4Fc変異体を4℃で一晩、1μm/mlでコーティングした。BSAで遮断した後、所与の濃度のビオチン化抗CTLA-4 mAbを加え、2時間インキュベートした。未結合抗体を洗い流した後、結合した抗体をHRP標識ストレプトアビジンで検出した。
【
図61】微小疾患(
図61A)及び確立された腫瘍(
図61B)モデルの両方における抗4-1BB及び抗CTLA-4抗体の治療効果。
図61Aは微小疾患の治療を示す。C57BL/6マウスに5×10
5のMC38細胞を皮下接種した。腫瘍細胞注射後2日目、9日目、及び16日目に、対照ハムスター及びラットIgG、抗CTLA-4、及び/または抗4-1BB抗体を注射した。理学的検査により腫瘍サイズを測定した。示されるデータは腫瘍の増殖動態であり、各線は1匹のマウスにおける腫瘍増殖を表している。提示されるサイズは腫瘍の長径及び短径の積である。
図61Bは、確立された腫瘍の治療を示す。腫瘍チャレンジ後14日目に治療を開始したことを除いて
図61Aと同様である。全てのマウスは、mAbを用いた処理を開始する前に9~60mm
2のサイズの範囲の腫瘍を確立していた。確立された腫瘍に対する2つの抗体の併用効果を3回繰り返した。
【
図62】CD8 T細胞は抗体によって誘導される腫瘍拒絶に必要不可欠であるが、CD4またはNK細胞はそうではない。腫瘍細胞接種後9日目、12日目、及び16日目に、CD4、CD8、またはNK1.1のいずれかに特異的な抗体の3回注射により腫瘍担持マウスのCD4、CD8、またはNK細胞を枯渇させた(*)。治療抗体(抗CTLA-4+抗4-1BB)は、9日目、16日目、及び23日目(垂直方向の矢印)に注射した。示されるデータは、腫瘍サイズの平均値及びSEMである(n=3)。他の群の各々と比較して、CD8を枯渇させた群ではP<0.05である(†)。
【
図63】併用療法は、抗CTLA-4抗体に対する宿主応答を低下させた。ハムスター-抗マウスCTLA-4(
図63A)またはラット抗マウス4-1BB(
図63B)抗体をELISAプレートにコーティングした。5匹のマウスの群各々からの異なる希釈率の血清をプレートに加えた。結合した抗体の相対量を第2段階試薬(吸収によりラット及びハムスターIgGに対する反応性を枯渇させたビオチン化ヤギ抗マウス抗体)を用いて決定した。示されるデータは、490nmでの光学濃度の平均値及びSEMである。無腫瘍マウスを同じ抗体で処理したときに、抗CTLA-4及び4-1BBに対する宿主抗体応答に同様の低下が観察された(データは示さず)。
【
図64】ヒトCTLA-4遺伝子ノックインマウスにおける抗4-1BB及びL3D10(抗ヒトCTLA4)抗体を用いた併用療法。
図64Aは治療効果を示す。ヒトCTLA4ノックインマウスに5×10
5のMC38腫瘍細胞を皮下接種した。2日後、7匹のマウスの群を矢印によって示されるように、ラット及びマウスIgG、抗4-1BB及びマウスIgG、L3D10及びラットIgG、またはL3D10及び抗4-1BBで処理した。示されるデータは、平均腫瘍体積及びSEM(n=7)である。全ての処理は腫瘍増殖を有意に低下させ(P<0.001)、2つの抗体で処理した群は、対照(P<0.0001)またはL3D10抗体(P=0.0007)または抗4-1BB抗体による処理(P=0.03)と比較して、腫瘍サイズの有意な減少を示す。対照IgGで処理した群が初期除去基準に達したとき、全ての腫瘍担持マウスを屠殺した。
図64Bは、併用療法を受けたマウスにおける持続性免疫を示す。2つの抗体で処理した群の無腫瘍マウスは、MC38腫瘍に対する持続性免疫を生じた。1回目の腫瘍細胞チャレンジ後110日目に、2つの抗体で処理した無腫瘍マウスまたは対照ナイーブマウスに5×10
5の腫瘍細胞を皮下注射した。理学的検査により腫瘍増殖をモニタリングした。1回目に腫瘍を拒絶した全てのマウスが再チャレンジに対して完全に抵抗性を示したのに対し、全てのナイーブマウスは進行性の腫瘍増殖を示した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、「可変領域」抗原認識部位を有する免疫グロブリン分子を意味することを意図する。「可変領域」という用語は、免疫グロブリンのそのようなドメインを、抗体によって広く共有されるドメイン(抗体Fcドメイン)から識別することを意図する。可変領域は、その残基が抗原結合に関与する「超可変領域」を含む。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、典型的には、軽鎖可変ドメインのおよその残基24-34(L1)、50-56(L2)、及び89-97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインのおよその残基27-35(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3):参考文献44)、及び/または、「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26-32(L1)、50-52(L2)、及び91-96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3):参考文献45)を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。抗体という用語は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、細胞内抗体、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id及び抗抗Id抗体を含む)を含む。特に、そのような抗体は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」という用語は、抗体の相補性決定領域(「CDR」)を含有し、任意選択的に抗体の「可変領域」抗原認識部位を含むフレームワーク残基を含有し、抗原に免疫特異的に結合する能力を示す、抗体の1つ以上の部分を指す。そのような断片は、Fab′、F(ab′).sub.2、Fv、一本鎖(ScFv)、及びそれらの変異体、天然の変異型、ならびに抗体の「可変領域」抗原認識部位及び異種タンパク質(例えば、毒素、異なる抗原に対する抗原認識部位、酵素、受容体、または受容体リガンド等)を含む融合タンパク質を含む。本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、少なくとも200個の連続するアミノ酸残基、または少なくとも250個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0030】
ヒト、キメラ、またはヒト化抗体は、ヒトにおけるin vivoでの使用に特に好ましいが、マウス抗体または他の種の抗体が、多くの用途(例えば、in vitroまたはin situ検出アッセイ、急性のin vivoでの使用等)に有利に利用されてもよい。
【0031】
「キメラ抗体」は、抗体の異なる部分が非ヒト抗体由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体等の異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。非ヒト種からの1つ以上のCDR及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を含むキメラ抗体は、CDRグラフティング(欧州特許第EP239,400号、国際公開第WO91/09967号、ならびに米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び同第5,585,089号)、ベニヤリングまたはリサーフェシング(欧州特許第EP592,106号、欧州特許第EP519,596;46-48号)、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む当該技術で既知の様々な技術を使用して産生することができる。
【0032】
本発明は、特に「ヒト化抗体」に関する。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(通常、マウスまたはラット)免疫グロブリンからの1つ以上のCDRとを含む免疫グロブリンを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と称され、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。定常領域は、存在する必要はないが、存在する場合、それらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一でなければならず、すなわち、少なくとも約85~90%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。故に、恐らくはCDRを除くヒト化免疫グロブリンの全ての部分が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトであるため、例えば、ヒト化抗体は、典型的なキメラ抗体を包含しない。結果として得られるヒト化抗体はCDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合することが予想されるため、ドナー抗体は、「ヒト化」のプロセスによって「ヒト化」されると言える。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域残基は、望ましい特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基によって置換される。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、FcγRIIBポリペプチドに免疫特異的に結合する、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加の導入(すなわち、突然変異)によって変更されたヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む。
【0033】
詳細な説明
ヒトCTLA4タンパク質イピリムマブに対する抗体は、唯一の免疫療法剤として、例えば、限定されないが抗PD-1抗体等の他の治療剤との組み合わせにおいて、癌患者の生存を改善することが示されている(13-15)。しかしながら、治療効果は重大な有害作用と関連している(13-18)。より良好な治療効果及び/またはより少ない自己免疫性有害作用を達成するために、新規抗CTLA4抗体を開発する大きな必要性が存在する。発明者らは、抗CTLA4抗体が、驚くべきことに、癌拒絶を誘導するために使用することができ、またその一方で、免疫療法に関連する自己免疫性有害作用も低減することを発見した。
【0034】
抗体組成物及びその抗原結合断片が本明細書に提供される。本発明はさらに、分子がモノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である、そのような分子の実施形態に関する。
【0035】
具体的には、本発明は、好ましくは、内因性濃度または移入濃度で生細胞の表面上に発現される、CTLA4、具体的にはヒトCTLA4に免疫特異的に結合する抗体の抗原結合断片を含む分子を提供する。本発明は、特に、抗原結合断片がCTLA4に結合し、生細胞がT細胞である、そのような分子の実施形態に関する。
【0036】
本発明は、CTLA4に免疫特異的に結合することが可能な抗体及びそれらの抗原結合断片に関する。いくつかの実施形態において、そのような分子は、B7.1及びB7.2のCTLA4への結合を遮断することが可能である。
【0037】
本発明はさらに、分子がモノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である、そのような分子の実施形態に関する。本発明は、そのような抗体が単一特異性、二重特異性、三重特異性、または、多重特異性である実施形態を含む。
【0038】
本発明はさらに、CTLA4に結合する分子または抗体の実施形態に関し、その抗原結合断片は6つのCDRを含み、CDRは抗CTLA4抗体L3D10のCDRを含む。具体的には、抗体は、抗CTLA4抗体L3D10の3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDRを含む。
【0039】
本発明はさらに、前述の抗体の実施形態に関し、抗体は、検出可能に標識されるか、または共役毒素、薬物、受容体、酵素、受容体リガンドを含む。
【0040】
本発明はさらに、治療有効量の前述の抗体組成物のいずれかと、生理学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。好ましくは、本発明の組成物は、予防有効量または治療有効量の本発明のヒト化抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0041】
特定の実施形態において、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または動物に、より具体的にはヒトに使用するための米国薬局方もしくはその他の一般に認識された薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬がともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全及び不完全)、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、水、及びピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等の、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む油等の滅菌液であり得る。水は、薬学的組成物が静脈内投与される場合に好ましい担体である。また、生理食塩水ならびにデキストロース水溶液及びグリセロール溶液も、特に注射用溶液のための液体担体として用いることができる。好適な薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等を含む。組成物はまた、必要に応じて、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態をとることができる。
【0042】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたは小袋等の密封容器内の乾燥した凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、別々にまたは単位剤形中に一緒に混合されて供給され得る。組成物が点滴によって投与される場合、それは無菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含む点滴ボトルを用いて分注される。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供されてもよい。
【0043】
本発明の組成物は、中性または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するもの等の陰イオンで形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するもの等の陽イオンで形成されるものを含む。
【0044】
本発明はさらに、免疫応答の上方制御のための、本明細書に記載される抗体組成物及びその薬学的組成物の使用に関する。免疫系の上方制御は、癌及び慢性感染症の治療において特に望ましく、よって本発明はそのような疾患の治療において有用性を有する。本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、細胞の異常な制御されない増殖の結果として生じる新生物または腫瘍を指す。本明細書で使用される場合、癌は、白血病及びリンパ腫を明示的に含む。この用語は、遠位部位に転移する可能性を有する細胞を含む疾患を指す。
【0045】
したがって、本発明の方法及び組成物はまた、(限定されないが)以下を含む多種多様な癌または他の異常な増殖性疾患の治療または予防において有用であり得る:膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺及び皮膚を含む癌腫;扁平上皮癌を含む;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含むリンパ系の造血器腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含む骨髄系の造血器腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;メラノーマ、セミノーマ、奇形癌腫、神経芽細胞腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及びシュワン腫を含む中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびにメラノーマ、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、セミノーマ、甲状腺濾胞癌、及び奇形癌腫を含む他の腫瘍。アポトーシスにおける異常によって引き起こされる癌も、本発明の方法及び組成物によって治療されることが企図される。そのような癌は、限定されないが、濾胞性リンパ腫、p53突然変異による癌腫、乳房、前立腺、及び卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに家族性大腸腺腫症及び骨髄異形成症候群等の前癌病変を含み得る。特定の実施形態において、悪性腫瘍もしくは異常増殖性変化(化生及び異形成等)、または過剰増殖性障害が、卵巣、膀胱、乳房、結腸、肺、皮膚、膵臓、または子宮において本発明の方法及び組成物によって治療または予防される。他の特定の実施形態において、肉腫、メラノーマ、または白血病が、本発明の方法及び組成物によって治療または予防される。
【0046】
本発明の別の実施形態において、抗体組成物及びその抗原結合断片は、限定されないが、現在標準である及び実験段階にある化学療法、ホルモン療法、生物療法、免疫療法、放射線療法、または手術を含む他の抗腫瘍療法とともに使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の分子は、治療有効量もしくは予防有効量の1つ以上の薬剤、治療抗体、または癌、自己免疫疾患、感染性疾患、もしくは中毒の治療及び/または予防に関して当業者に既知の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。そのような薬剤は、例えば、上で論じた生物学的応答調節剤、細胞毒、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗生物質、または有糸分裂阻害薬、及び免疫療法のうちのいずれかを含む。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、抗体組成物及びその抗原結合断片は、他の抗腫瘍免疫療法薬とともに使用することができる。そのような実施形態において、本発明の分子は、免疫調節作用を増強するために、代替の免疫調節経路(TIM3、TIM4、OX40、CD40、GITR、4-1-BB、B7-H1、PD-1、B7-H3、B7-H4、LIGHT、BTLA、ICOS、CD27、またはLAG3等)を妨害もしくは増強する、またはサイトカイン(例えば、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、GF-β、IFNg、Flt3、BLys)及びケモカイン(例えば、CCL21)等のエフェクター分子の活性を調節する分子と組み合わせて投与される。特定の実施形態は、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物と、抗PD-1(ペンブロリズマブ(Keytruda)またはニボルマブ(Opdivo))、抗B7-H1(アテゾリズマブ(Tecentriq)またはデュルバルマブ)、抗B7-H3、抗B7-H4、抗LIGHT、抗LAG3、抗TIM3、抗TIM4、抗CD40、抗OX40、抗GITR、抗BTLA、抗CD27、抗ICOS、または抗4-1BBとを含む二重特異性抗体を含む。さらに別の実施形態において、本発明の分子は、より幅広い免疫応答を達成するために、免疫応答の異なる段階または態様を活性化する分子と組み合わせて投与される。より好ましい実施形態において、抗体組成物及びその抗原結合断片は、自己免疫副作用を悪化させることなく、抗PD-1または抗4-1BB抗体と組み合わせて使用される。
【0048】
本発明の別の実施形態は、別の免疫刺激因子に結合する抗体に架橋されたCTLA4に結合する抗体を含む二重特異性抗体を含む。特定の実施形態は、本明細書に記載される抗CTLA4抗体組成物と、抗PD-1、抗B7-H1、抗B7-H3、抗B7-H4、抗LIGHT、抗LAG3、抗TIM3、抗TIM4 抗CD40、抗OX40、抗GITR、抗BTLA、抗CD27、抗ICOS、または抗4-1BBとを含む二重特異性抗体を含む。本発明はさらに、癌を治療するためのそのような抗体の使用に関する。
【0049】
本発明の抗体組成物を投与する方法は、限定されないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば、鼻腔内及び経口経路)を含む。特定の実施形態において、本発明の抗体は、筋肉内、静脈内、または皮下に投与される。組成物は、任意の都合のよい経路によって投与されてもよく、例えば、点滴またはボーラス注射によって、上皮内層または皮膚粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸粘膜等)を通る吸収によって投与されてもよく、また、他の生物学的に活性な物質と一緒に投与されてもよい。投与は、全身性でも局所性であり得る。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態は、抗抗原提示細胞(APC)等の免疫細胞上のB7.1及びB7.2の発現レベルをモニタリングすることにより、抗CTLA4抗体のin vivoでの遮断効果をモニタリングすることに関する。CTLA4は、主としてTreg間に発現され、樹状細胞等のAPC上でB7-1及びB7-2の発現を下方制御することにより自己免疫疾患を抑制する。したがって、B7分子B7.1及びB7.2の上方制御は、B7-CTLA4相互作用のin vivoでの遮断の目安であり得る。特定の実施形態において、末梢または腫瘍内免疫細胞が、抗CTLA4治療の前及び後に対象から除去され、免疫細胞の表面上のB7.1及び/またはB7.2レベルの減少についてex vivoでアッセイされ、遮断性抗CTLA4抗体の存在は内因性CTLA4によるB7.1/B7.2の結合を妨げ、今度はそれがB7.1及びB7.2の下方制御を妨げ、その結果としてB7.1/B7.2の発現における純増加をもたらす。好ましい実施形態において、B7.1及びB7.1のレベルは抗原提示細胞上で測定される。最も好ましい実施形態において、B7.1及びB7.1のレベルは樹状細胞上で測定される。
【0051】
さらなる実施形態において、抗CTLA4治療後の免疫細胞上のB7.1及びB7.2の変化(減少)は、抗CTLA4抗体のin vivoでの生物活性を測定するため、免疫細胞上のB7.1及び/またはB7.2の発現レベルを測定することにより抗CTLA4治療に対する明らかな応答をモニタリングするため、ならびに治療の前と後の発現レベルを比較するためのバイオマーカーとして使用される。好ましい実施形態において、B7.1及び/またはB7.2の発現レベルは、抗CTLA4治療の経過中に経時的にモニタリングされる。
【実施例0052】
実施例1.キメラ抗CTLA4抗体の産生
ヒトCTLA4遺伝子ノックインマウス及びhu-PBL-Scidマウスを用いて、マウス抗ヒトCTLA4抗体が腫瘍増殖を抑制することは以前に示されており、また、試験したmAbのパネルの中でL3D10が最も効果的であると同定されている。しかしながら、得られた抗体のいずれも、比較的高い用量(>10mg/kg)で触知可能な腫瘍の形成前(早ければ2日目)、腫瘍細胞チャレンジ後に使用された場合でも、完全な腫瘍拒絶を達成することはできなかった(19~21)。
【0053】
マウス抗体が強い抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有しないIgG1サブクラスの抗体であるため、またADCCが腫瘍拒絶に関与する可能性があるため、mAbのFcを幾通りかに修飾してより良好な免疫治療効果を得た。第一に、ADCCの弱いマウスIgG1を、キメラ抗体を産生するように強力なADCC活性を有するヒトIgG1で置換した。第二に、文献に見られる既知の技術に基づいて(22)、3つの突然変異(S298A、E333A、及びK334A)をCHに導入してADCC活性を増加させた。第三に、3つの突然変異(M252Y、S254T、及びT256E)を導入し、in vivoでの抗体の半減期を延長した(23)。新キメラ抗体の設計を、
図1の左パネルに示す。
【0054】
抗体を改変するために、当該技術分野で既知の標準的方法を使用して、DNAシーケンシングによりL3D10ハイブリドーマの可変領域を最初に同定した。ヌクレオチド配列を配列番号1及び配列番号2に記載されるアミノ酸に翻訳した。正常なヒトIgG1 Fc配列及び変異Fc配列は、配列番号3及び配列番号4にそれぞれ開示される。重鎖及び軽鎖配列のアミノ酸及びコドン最適化ヌクレオチド配列は、配列番号5~8に開示される。
【0055】
配列番号5及び配列番号7に対応するDNAを合成して発現ベクターに挿入し、設計した配列を用いてベクターをHEK293細胞にトランスフェクトした。端的に述べると、トランスフェクションの1日前にHEK293細胞を振盪フラスコに播種し、無血清の化学的に定義された培地を使用して増殖させた。一過性トランスフェクションの標準的な操作手順を用いて、DNA発現構築物を0.5リットルの懸濁HEK293細胞に一過性にトランスフェクトした。20時間後、生存率及び生存細胞数を得るために細胞試料を採取し、力価を測定した(Octet QKe,ForteBio)。一過性トランスフェクション産生工程を通してさらなる測定を行った。5日目に培養液を回収した。L3D10用の馴化培地を回収し、遠心分離及び濾過により一過性トランスフェクション産生工程から清澄化した。上清をプロテインAカラムに流し、低pH緩衝液で溶出した。アリコートする前に0.2μm膜フィルタを使用して濾過を行った。精製及び濾過後、OD280及び吸光係数からタンパク質濃度を算出した。1回のトランスフェクションから合計43.2mgのIgタンパク質を得た。
【0056】
実施例2.キメラL3D10抗体の結合部位は10D1と部分的にのみ重複する
診療所において、抗CTLA4抗体イピリムマブは、癌患者の生存を改善するが、重大な自己免疫性有害作用を誘発することが示されている。キメラL3D10抗体及び10D1の同等の結合部位を評価するために、CTLA4への結合、及びそれらの抗体がCTLA4への結合について競合する能力を比較した。両方の抗体が同等の効率で固定化CTLA4タンパク質に結合するが(
図2)、10D1は、CTLA4へのキメラL3D10の結合を完全には遮断しない(
図3)。予想された通り、未標識L3D10が標識L3D10の結合を完全に遮断することから、L3D10及び10D1の抗体結合部位は部分的にのみ重複することが示唆される。
【0057】
実施例3.CTLA4:B7.1及びCTLA4:B7.2の相互作用は、10D1ではなくむしろキメラL3D10抗体によってより効率的に遮断される
可溶性B7-1及びB7-2を使用して固定化CTLA4と相互作用させた場合、抗ヒトCTLA4 mAbである10D1はB7-CTLA4相互作用を遮断できると報告されていた(49)。B7-1及びB7-2は細胞表面の共刺激分子として機能するため、固定化B7-1及びB7-2を使用して、抗CTLA4抗体がB7-CTLA4相互作用を遮断する能力を評価した。競合ELISAアッセイフォーマットを用いて、L3D10及び10D1が、プレートに固定化したB7.1及びB7.2ならびに細胞膜に発現させたB7.1及びB7.2の両方へのCTLA4融合タンパク質CTLA4-Igの結合を遮断する能力。これらの実験には、10D1(4nM)と同様の親和性(2.3nM)を有するキメラ抗ヒトCTLA4-mAbを使用した(49)。プレート固定化アッセイのために、B7.1FcまたはB7.2Fcを4
oCで一晩または37℃で2時間、1μg/mlでELISAプレートにコーティングした。ビオチン化CTLA4-Fcを、所与の濃度のB7.1-Fc、10D1、またはキメラL3D10のいずれかと混合した。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを用いて、プレート上でB7.1に結合したCTLA4-Fcの量を決定する。
図4に示すように、キメラL3D10、B7.1Fc、及びCTLA4-Fcは全てCTLA4-Fc:B7.1の相互作用を効率的に遮断したが、10D1の2つの別個の材料ロットは相互作用を遮断することができなかった。L3D10は、0.2μg/mlという低い濃度でプレート固定化B7.1の結合の有意な遮断を示し、3μg/ml程度で50%の阻害(IC
50)を達成する。同様に、L3D10は、0.03μg/mlのIC
50でプレート固定化B7.2へのCTLA4-Fcの結合の結合を遮断したのに対し、2つの異なる材料ロットからの10D1は、約200μg/mlのIC
50で最小限の遮断を示した(
図5)。しかしながら、以前の報告と一致して(49)、抗体10D1は、プレート固定化CTLA4を使用して可溶性B7-1と相互作用させた場合に、逆実験においてB7-1-CTLA4相互作用を強力に阻害した(
図6)。
【0058】
細胞膜タンパク質結合実験では、B7.1をCHO細胞の表面上に発現させた場合、L3D10はCTLA4-Fcの結合を遮断するが、2つの異なる材料ロットからの10D1は、たとえ512μg/mlで使用された場合でも遮断しなかった(
図7)。L3D10よりはるかに弱いが高用量である10D1は、ヒトCTLA4とマウスB7-1との間で約25%の遮断を達成した(
図8)。CHO細胞表面上に発現させたB7.2の場合、L3D10はこの場合も同様に遮断したが、10D1は部分的に遮断したのみであり、たとえ10D1が512μg/mlで使用された場合でも50%未満の阻害が観察された(
図9)。
【0059】
潜在的警告は、ビオチン化が10D1のCTLA4-Fcへの結合に影響を与えた可能性があるということである。この問題に対応するために、遮断試験に使用されるビオチン化CTLA4-FcへのL3D10及び10D1の結合を比較した。
図10に示すように、10D1は、ビオチン化CTLA4-Fcの阻害においてL3D10よりも効果的である。したがって、10D1による遮断の失敗は、ビオチン化CTLA4-Fcへの不十分な結合に起因するものではなかった。ポリヒスチジンタグ付加CTLA4を使用してヒトB7-1でトランスフェクトしたCHO細胞と相互作用させた場合にも、同様のパターンが観察される(
図11)。総合すると、我々のデータは、抗体10D1がB7-CTLA4相互作用を遮断する能力は、用いられるアッセイに依存するところが大きく、B7-1及びB7-2を固定化すると最小から検出不能な遮断活性を示し、抗体L3D10は、B7タンパク質が固定化されているかどうかにかかわらず、B7-CTLA4相互作用の強力な遮断薬であることを示唆している。
【0060】
実施例4.キメラL3D10抗体は未修飾L3D10よりも効率的に腫瘍拒絶を引き起こす
有意な遅延が観察されたものの、マウスL3D10は、MC38腫瘍の完全寛解をもたらすことができなかったと以前に報告された(19、20)。キメラL3D10が同系マウスにおいて完全寛解をもたらすことができるかどうかを決定するために、1×10
6のMC38腫瘍細胞を同系C57BL/6マウスに移植した。1週間後、腫瘍が約直径5mmに達したとき、マウスL3D10を用いた以前の試験で使用された用量のわずか半分の用量の対照IgGまたはキメラL3D10 mAbのいずれかでマウスを処理した。
図12に示すように、ヒトIg配列の考えられる免疫原性にもかかわらず、キメラL3D10が試験した全てのマウスにおいて完全寛解をもたらしたことが分かった。処理は、大きな腫瘍負荷が確立されてから開始されたため、腫瘍が触知できなかったときと比べてはるかに困難であることから(19)、これらの実験は、キメラL3D10が未修飾L3D10よりも効率的であることを示す。
【0061】
実施例5.キメラL3D10抗体は腫瘍拒絶を引き起こす際に10D1と等しい活性を有する
ヒトCTLA4遺伝子ノックインマウスの利用可能性(20)は、臨床的に使用されている抗CTLA-4 mAbである10D1を用いてキメラ抗ヒトCTLA-4抗体の生物活性を試験するという前例のない機会を提供した。このヒト化マウスモデルにおいて、ヒトCTLA-4タンパク質に対して100%の同一性を有する生成物をコードするCTLA4遺伝子を、内因性マウスCtla4遺伝子座の制御下で発現させた。キメラL3D10及び10D1の抗腫瘍活性をヒトCTLA4-ノックインマウスのMC38腫瘍モデルにおいて直接比較した場合、腫瘍拒絶を引き起こす際に両方の抗体が同等であったことは明らかであるが、IgG対照群において腫瘍が進行性に増殖した。
図13は、2回の実験からの抗体処理が腫瘍サイズに与える結果を示している。
【0062】
興味深い問題は、抗CTLA-4 mAbは、免疫治療効果を発揮するために全てのCTLA-4と相互作用する(すなわち、標的飽和を達成する)必要があるのかどうかということである。CTLA4
h/hからのF1マウス及びCTLA4
m/mマウスは両方とも、マウス及びヒトCTLA-4タンパク質を共優性的な様式で発現する。興味深いことに、
図14に示すように、CTLA-4タンパク質(すなわち、タンパク質のマウス版)の約50%が抗ヒトCTLA-4 mAbによって結合されることができないにもかかわらず、両方のキメラL3D10及び10D1が腫瘍拒絶を効果的に誘導した。重要なのは、この設定において、すなわち、遺伝子用量が限定されている場合、L3D10が10D1よりも治療的に有効であるということである(P<0.05)。
【0063】
以前の試験によって、抗マウスCtla-4 mAbは、他の治療様式と組み合わせなければメラノーマ細胞株B16-F1の拒絶を誘導することができないことが示されている。したがって、より難易度の高いヒトCTLA4ノックインマウスのB16腫瘍モデルを用いて、キメラL3D10及び10D1抗体の抗腫瘍効果も試験した。
図15に示すように、L3D10もイピリムマブも確立された腫瘍の拒絶を引き起こすことはできず、その両方が統計的に有意な腫瘍増殖の遅延を引き起こすが、異なる抗体間の差は統計的に有意ではない。
【0064】
実施例6:CTLA4のin vivoでの遮断
CTLA4は、主としてTreg間に発現され、樹状細胞上でB7-1及びB7-2の発現を下方制御することにより自己免疫疾患を抑制する(50)。Ctla4の標的化突然変異(50)及び遮断性抗CTLA4 mAbによる処理(51)が樹状細胞上でB7-1及びB7-2の発現を上方制御したため、Tregに対するCTLA4の生理機能は、DC上でB7を下方制御することであると提案されてきた。したがって、B7の上方制御をB7-CTLA4相互作用のin vivoでの遮断の目安として用いて、ヒトCTLA4遺伝子のホモ接合型ノックインを有するCtla4h/hマウスからのT細胞を使用するアッセイを開発した。
【0065】
図16に概要が示されるように、表面に発現させたB7.1またはB7.2は、T細胞の表面上のCTLA4に結合し、それによってB7.1及びB7.2の発現の下方制御がもたらされる。しかしながら、遮断性抗CTLA4抗体の結合はB7.1/B7.2の結合を妨げ、それがB7.1及びB7.2の下方制御を妨げ、その結果としてB7.1/B7.2の発現における純増加をもたらす。しかしながら、ヒトCTLA4及びマウスCTLA4の両方を発現しているキメラT細胞を用いると、ヒトCTLA4に結合する抗体は、マウスCTLA4へのB7.1/B7.2の結合を妨げず、B7.1/B7.2の阻害が回復される。
【0066】
内因性マウスCtla4遺伝子座の制御下で、ヒトCTLA4タンパク質に対して100%の同一性を有するCTLA4遺伝子を発現するCTLA4ヒト化マウスが記載されている(20)。ホモ接合型ノックインマウス(CTLA4h/h)をC57BL/6バックグラウンドに少なくとも10世代戻し交配した。CTLA4h/hマウスとWT BALB/cマウスを交配することによってヘテロ接合型マウス(CTLA4h/m)を産生した。
【0067】
臨床的に証明された治療薬である抗CTLA4 mAb 10D1を試験するために、非常に高い用量の抗CTLA4 mAb(500μg/マウス、これは約25mg/kgであるか、または診療所で使用される最高用量の8倍である)をCtla4
h/hまたはCtla4
m/hマウスに注射し、注射後24時間に脾臓細胞を採取してCd11c
hiDC上のB7-1及びB7-2のレベルを測定した(
図17A~B)。
図17C~Eに示すように、ヒトIgG1-Fcを投与されたCtla4
h/hマウスと比較して、キメラL3D10で処理したマウスからのDCは、ヒトCTLA4を発現しているT細胞中のB7.1の発現において統計的に有意な増加を示したが、ヒトCTLA4及びマウスCTLA4の両方を発現しているT細胞には増加が見られなかった。
図17C~Eに示すように、B7.2についても同様の結果が見られた。B7-2の上方制御の程度は、ヒトTreg-DC共培養において遮断性抗CTLA4 mAbを使用して得られたものと同等である(66)。
【0068】
in vivoアッセイの特異性をさらに確認するために、マウス及びヒトCTLA4を共優性的に発現するCtla4
m/hマウスにおいて、L3D10がB7を上方制御することができるかどうかを調べた。CTLA4の少なくとも50%が抗ヒトCTLA4抗体に結合しないため、B7-CTLA4相互作用の遮断においてそれらはあまり強力ではないであろうと予想される。実際、どちらの抗体もCtla4
m/hマウスからのDC上でB7-1及びB7-2の上方制御をもたらさなかった(
図17C、D、F)。Ctla4
m/hマウスにおいてL3D10による遮断が全く見られなかったことから、L3D10に結合しない(
図18)、マウス対立遺伝子によってコードされるCTLA4は、B7の発現を下方制御するのに十分であることが示唆される。したがって、我々のデータは、診療所で使用される最高用量より少なくとも8倍高い用量では、B7をプレートに固定化するかまたは細胞膜に固着させた場合、10D1は、in vivo及びin vitroの両方でB7-CTLA4相互作用を遮断しないことを示した。
【0069】
Ctla4
m/hマウスにおいてL3D10による遮断が全く見られなかったことから、L3D10に結合しない(
図18)、マウス対立遺伝子によってコードされるCTLA4は、B7の発現を下方制御するのに十分であることが示唆される。対照的に、10D1は、B7.1またはB7.2の発現を増加させなかった。モデルによれば、このことは、L3D10はin vivoでのCTLA4活性を遮断するが、10D1は遮断しないことを示唆している。
しかしながら、これらの遮断活性における明らかな違いにもかかわらず、L3D10及び10D1の両方が、
図19に示すように、キメラCTLA4
m/hマウスのMC38モデルに対して強い抗腫瘍活性を示す。対照Igで処理したマウスにおいて腫瘍が進行性に増殖したが、いずれの抗CTLA4 mAbによっても完全な拒絶が達成された。複数の実験において、2つの抗体は、腫瘍拒絶を引き起こす上で同等である。別の腫瘍モデルであるB16メラノーマにおいて、両方の抗体が同様の腫瘍増殖の遅延を誘発したが、いずれの抗体によっても完全な拒絶は達成されなかった(
図20)。
【0070】
実施例7:抗腫瘍効果は腫瘍内Tregの枯渇と関連している
in vivoでの免疫制御は、免疫細胞活性化と免疫チェックポイントとのバランスによってもたらされる。具体的に、制御性T細胞(Tregs)は、免疫系を制御し、自己抗原に対する寛容性を維持し、自己免疫疾患を抑制する、T細胞の亜集団である。最近の研究により、抗マウスCTLA4 mAbの治療有効性は、Fcサブクラス及び宿主Fc受容体による影響を受け、今度はそれが腫瘍微小環境内でTregの抗体依存性細胞傷害性に選択的に影響を与えることが示されている(52、53)。in vivoでの差次的CTLA4遮断活性が抗腫瘍活性の差につながるとは考えられず、我々は、抗腫瘍性が生じる作用(複数可)の機序を確立することを試み、腫瘍微小環境内のTregに注目した。これを行うために、拒絶が完了する前にMC38腫瘍担持マウスを屠殺し(
図21)、対照Ig、10D1、またはL3D10を投与されたCtla4
h/hノックインマウスにおいてTregの頻度を分析した。どちらの抗体も脾臓のTregを減少させないが(
図22C)、両方とも腫瘍微小環境のTregを減少させた(
図22E)。興味深いことに、L3D10ではなく10D1が、脾臓のTregを増殖させた。10D1による脾臓のTregの増殖は、イピリムマブが末梢血白血球によるFOXP3の発現を増加させたという臨床所見を再現するものである(54)。遮断性抗体及び非遮断性抗体が腫瘍微小環境におけるTregの枯渇において同等であるため、B7-CTLA4相互作用の阻害はTregの枯渇に寄与しない。10D1はin vivoでのB7-CTLA4相互作用を遮断しないが、Ctla4
h/hマウス及びメラノーマ患者に治療効果を付与するため、この相互作用の遮断はその治療効果のために必要ではない。さらに、劇的に異なる遮断効果を有する2つのmAbが、同等の治療効果及び腫瘍微小環境における選択的なTregの枯渇を示すため、遮断性CTLA4-B7相互作用は抗体の治療効果を増強しない。
【0071】
この観察を裏付けるために、抗ヒトCTLA4 mAbがCTLA4分子の最大50%に結合することができ、かつ、どちらの抗体も樹状細胞上のB7の上方制御を達成するためにB7-CTLA4相互作用を遮断できないCtla4
m/hマウスにおいて、2つの抗CTLA4 mAbの治療効果を調べた(
図16)。この場合も同様に、両方の抗体がMC38腫瘍の急速な拒絶を引き起こすが、L3D10は、若干10D1よりも効果的である(
図22B)。それに対応して、両方の抗体が、腫瘍微小環境においてTregを選択的に枯渇させた(
図22D及び21F)。これらの遺伝的データはさらに、腫瘍拒絶におけるCTLA4の遮断と局所的なTreg枯渇との間に関連性がないことを示しており、故に、抗CTLA4 mAbがB7-CTLA4相互作用の遮断によって癌免疫を誘導するという一般的な仮説に異議を唱えるものである(10)。
【0072】
実施例8.一般的に使用される抗マウスCTLA4 mAb 9H10及び9D9の遮断活性の評価
CTLA4がT細胞制御のための細胞固有の負の制御因子であるという概念は、インタクト及びFabの両方の2つの抗マウスCTLA4 mAb(30、31)、4F10及び9H10の刺激作用に基づいて提唱されたが、これらの抗体がB7-CTLA4相互作用を遮断することを証明するデータは提示されていない。より最近になって、第3の抗マウスCTLA4 mAbである9D9が、腫瘍担持マウスにおいて治療効果を示し、腫瘍微小環境においてTregの局所的枯渇を引き起こすと報告された(52)。したがって、我々は、腫瘍拒絶を誘導することが示されている3つ全ての市販の抗マウスCTLA4 mAbが、生理学的に適切な構成下でB7-CTLA4相互作用を遮断する能力を試験することを試みた。最初の試験として、増加する量の抗CTLA4 mAb(CTLA4-Fcを超過する最大2,000倍のモル濃度)を使用してビオチン化CTLA4-Fcのプレート固定化B7-1及びB7-2への結合を遮断した。
図23Aに示すように、抗マウスCTLA4 mAb 9H10は、試験した最高濃度でもB7-1-CTLA4相互作用を遮断しなかったが、9D9を非常に高い濃度で使用したときには中程度の遮断が観察された。mAb 9D9は、B7-2-CTLA4相互作用を効果的に遮断したが、9H10はそれができなかった(
図23B)。興味深いことに、9D9は、可溶性CTLA4-Fcへの強い結合を示すが、9H10は、固定化マウスCTLA4-Fcへの結合において9D9よりも強力であるにもかかわらず(
図23D)、不十分な結合を示した(
図23c)。このアッセイにおいて9H10によるいずれの遮断活性も見られなかったことは、可溶性CTLA4-Fcへの不十分な結合を単純に反映している可能性があるため、我々は、再びWTマウス(CTLA4
m/m)における樹状細胞上のB7-1及びB7-2の上方制御を用いてB7-CTLA4相互作用のin vivoでの遮断を測定した。
図23E及びFに示すように、9H10はDC上のB7-1の発現を上方制御しなかったが、9D9はB7-1レベルを15%増加させた(P<0.05)。興味深いことに、9D9がDC上のB7-2を明らかに上方制御したのに対し、9H10はそれができなかった。したがって、最初の、最も広く研究されている腫瘍免疫療法薬抗CTLA4 mAbである9H10は、B7-CTLA4相互作用を遮断しない。そのため、B7-CTLA4相互作用の遮断は、抗マウスCTLA4 mAbによる抗腫瘍免疫の誘導には寄与しない。両方のmAbが同等の免疫治療効果及び腫瘍微小環境におけるTregの同等の欠失(52)を示すため、B7-CTLA4相互作用の遮断よりもむしろTregの局所的欠失が、抗マウスCTLA4 mAbの治療効果に統一された説明を提供する。興味深いことに、4F10は、in vitroでのB7-CTLA4相互作用を遮断したが、in vivoでDC上のB7の上方制御を誘導することはできなかった(
図24)。
【0073】
総合すると、我々は、臨床的に証明された治療薬である抗ヒトCTLA4 mAb(10D1)及び2つの抗マウスCTLA4 mAb(9H10及び4F10)が、生理学的に適切な条件下でB7-CTLA4相互作用を遮断することなく、免疫治療効果を付与することを実証した。さらに、B7-CTLA4相互作用を強力に遮断することができるmAb(L3D10)の場合でも、そのような遮断は腫瘍拒絶に必要ではなかった。B7-CTLA4相互作用の遮断において1000倍の違いを有する抗体の場合も、治療効果は実質的に同じであり、そのような遮断は抗CTLA4 mAbの癌治療効果に寄与しない。これらのデータは、抗CTLA4 mAbがチェックポイント遮断によって免疫治療効果を付与するという仮説に異議を唱えるものである(55)。一般的な仮説に異議を唱えることにより、我々のデータは、抗CTLA4 mAbの遮断活性を改善することによって抗CTLA4 mAbの治療効果を最適化できないことを示唆している。それに関連して、特に興味深いのは、B7-CTLA4相互作用の遮断において優れているトレメリムマブ(56)が、第III相臨床試験において臨床エンドポイントに達しなかった(57)ということである。その一方で、腫瘍拒絶と局所的なTregの枯渇との強い相関関係を示すことによって、また腫瘍免疫におけるB7-CTLA4相互作用の遮断の関与に異議を唱えることによって、我々の研究は、腫瘍環境内のTregの局所的欠失が治療薬抗CTLA4 mAbの主要な機序であるという仮説を支持し、よって、癌免疫療法のための次世代の抗CTLA4 mAbを開発する新しい手法を提案する。
【0074】
最後に、蓄積するマウスの遺伝的データは、CTLA4がT細胞活性化を負に制御し、そのような制御はSHP-2を通して達成される(58、59)という従前の概念(30、31)が再考される必要があり得る(60)ことを示唆している。したがって、Ctla4-/-マウスにおける重度の自己免疫疾患は、CTLA4がT細胞活性化のための細胞固有の負の制御因子であるという考えを支持するために用いられてきたが(61、62)、この見解と一致しない少なくとも3つの系統の遺伝的データがその後明らかになっている。第一に、エフェクターT細胞中ではなくTreg中のCtla4遺伝子の系統特異的な欠失は、Ctla4遺伝子の生殖系列を欠失したマウスに観察される自己免疫表現型を再現するのに十分である(50)。これらのデータは、Ctla4-/-マウスの自己免疫が、エフェクターT細胞に細胞固有の負の制御因子CTLA4が欠けていたことに起因するものではなかったことを示唆している。第二に、WT及びCtla4-/-両方のT細胞からなるキメラマウスにおいて、野生型T細胞の共存によって自己免疫表現型が妨げられた(63)。これらのデータも同様に、自己免疫疾患は細胞固有の負の制御因子の欠如によって引き起こされたのではないと強く主張するものである。細胞固有の負の制御因子の効果の欠如は、キメラマウスにおいて、ウイルス感染中にCtla4-/-T細胞の非優先的な増殖が観察されたという事実によっても実証されている(64)。第三に、CTLA4の負の制御を媒介すると提案されていたT細胞特異的なShp2の欠失(58、59)は、T細胞活性化を増強するよりもむしろ低下させることが分かった(65)。CTLA4がT細胞活性化のための負の制御因子であると提案されて以来報告されたこれらの遺伝的データに照らして、本明細書に報告される我々のデータは、癌免疫療法におけるCTLA4チェックポイント遮断の再評価を求めるものである。
【0075】
実施例9.キメラL3D10は、他の免疫治療抗体と組み合わせて使用された場合に免疫有害事象の軽減を示す
最近の臨床試験によって、抗PD-1と抗CTLA4 mAbとの併用療法が末期メラノーマ患者の生存率をさらに高めることが明らかになった。しかしながら、併用療法を受けた患者の55%が、グレード3及び4の免疫関連有害事象(irAE)を発症した。したがって、より毒性の低い抗体を開発することが非常に重要である。我々は、診療所で観察された抗CTLA-4及び抗PD-1 mAbの併用療法に関連するirAEを再現するin vivoモデルを開発した。このモデルにおいて、周産期中にヒトCTLA4遺伝子ノックインマウス(CTLA4
h/h)を高用量の抗PD-1及び抗CTLA-4 mAbで処理した。幼若マウスは、個々のmAbの処理には耐容性を示すが、抗PD-1及び10D1の併用療法は、多臓器炎症、貧血、及び
図25に示されるように、重度の発育不全を含む、重度のirAEを引き起こすことが分かった。対照的に、抗PD-1と組み合わされた場合、キメラL3D10は、正常な体重増加によって示されるように軽度のirAEのみを呈する。
【0076】
抗PD-1と組み合わせて投与した場合の10D1と比較したキメラL3D10の相対的毒性をさらに調べるために、我々は、投与後42日のCTLA4
h/hノックインマウスにおける病理学的効果に着目した。
図26に示すように、L3D10+抗PD-1で処理したマウスの最終体重(42日目)は、hIgG陰性対照抗体で処理したマウスと類似していた。しかしながら、比較してみると、10D1+抗PD-1で処理したマウスの体重のほうがはるかに少なかった。それを踏まえてこれらのマウスの肉眼的形態を調べると、10D1+PD-1で処理したマウスにおいて、子宮/卵巣/膀胱及び胸腺が著しく小さかった(
図27)。この場合も同様に、L3D10+抗PD-1で処理したマウスの臓器はhIgG対照と同等であった。対照的に、10D1で処理したマウスから摘出した心臓は、サイズが若干より大きく見え、明らかに白い外観であった。そのため、マウスにおける赤血球生成を調べたところ、L3D10+抗PD-1または対照抗体で処理した群(これらは極めて類似している)と比べて、10D1+抗PD-1で処理したマウスに明らかな違いを観察した。
図27Aに示すように、10D1+抗PD-1で処理したマウスの骨髄は明らかに白色を帯び、単離された血液はほぼ完全に白色であった(
図28b)。これに応じて、CD71及びCD119マーカーを使用して、異なる段階の造血を行っている細胞をより詳細に調べた。代表的なFACSプロファイルを
図28Cに示し、要約データを
図28Dに提示する。これらのデータから、10D1+抗PD-1で処理したマウスにおいて第IV発生段階を経ている細胞数の統計的に有意な減少が明らかになった(
図28D)。
【0077】
10D1で処理したマウスにおける貧血の潜在的な機序を探索するために、10D1+PD-1処理が抗赤血球抗体を誘導するかどうかを調べた。
図29に示すように、抗赤血球抗体は検出されなかった。したがって、赤血球特異的自己抗体の発生は、抗PD-1+10D1で処理したマウスにおける貧血に関与しない。
【0078】
抗PD-1と組み合わせたL3D10対10D1の毒性をさらに決定するために、少なくとも24時間10%ホルマリンで固定化した後、心臓(
図30)、肺(
図31)、唾液腺(
図32)、ならびに腎臓及び肝臓(
図33)の組織学的分析を行った。試験した組織の各々において、10D1+抗PD-1で処理したマウスは高レベルのT細胞浸潤を示した。炎症の重症度に基づいて毒性スコアが
図34に要約されており、hIgG対照マウス群よりもわずかに高いスコアを有するL3D10+抗PD-1と比較して10D1+抗PD-1で処理したマウスの高い毒性スコアを示している。
【0079】
実施例10:L3D10は可溶性CTLA4への結合の低下を示す
L3D10及び10D1は、プレート固定化CTLA4に対して同様の結合パターンを示す(
図36)。10D1と比較して低いL3D10の毒性、特に10D1に関連したT細胞浸潤/活性の増加の考えられる理由として、可溶性CTLA4への結合を調べることにした。我々がこれを調べることを選択したのは、CTLA4の多型と複数の自己免疫疾患との関連性は可溶性CTLA4の産生不全と関連しており(Nature 2003,423:506-511)、sCTLA4アイソフォームの遺伝子サイレンシングがマウスにおいてI型糖尿病の発症を増加させた(Diabetes 2011,60:1955-1963)ためである。さらに、可溶性CTLA4(アバタセプト及びベラタセプト)は、免疫抑制のために広く使用されている薬物である。このデータに従って、可溶性CTLA4への相対的な結合を調べたとき、L3D10の結合において顕著な低下を観察した(
図37)。
【0080】
我々は、抗CTLA-4 mAbが、CTLA-4分子の50%のみが抗ヒトCTLA-4 mAbに結合できるヘテロ接合型Ctla4
h/mマウスにおいて強力な腫瘍拒絶を誘導することを実証した。CTLA-4の50%の結合がirAEを誘導するのに十分かどうかを決定するために、Ctla4
h/mマウスを抗PD-1+10D1で処理した。
図35に示すように、抗PD-1+10D1は、Ctla4
h/mマウスにおいて体重減少を誘導することができなかった。したがって、irAEと癌免疫とは遺伝子学的に切り離すことができる。
【0081】
In vivo活性は、L3D10抗体がその抗腫瘍活性を保持するが、10D1等の他の免疫治療抗体で観察された自己免疫性有害作用の軽減を示すことを実証しており、自己免疫性有害事象を悪化させることなく抗腫瘍活性を増強することが可能であることが示唆される。したがって、自己免疫副作用は癌免疫のために必要な対価ではなく、これらの活性を切り離すことが可能である。L3D10の特徴付けにより、CTLA4とB7.1及びB7.2との相互作用を遮断するその能力は、10D1によるものよりも効果的であり、それは抗体間のCTLA4結合部位における違いと関連していることが示された。さらに、抗体の治療効果を増強する強力なADCC活性を付与する突然変異を有する修飾ヒトIgG1 FcドメインにL3D10を融合した。さらなる特徴付けにより、L3D10及び10D1が同様の結合プロファイルで固定化CTLA4に結合することが示される。しかしながら、L3D10は、可溶性CTLA4に対して10D1よりもはるかに低い結合親和性を示す。総合すると、我々のデータは、抗体L3D10は、有害事象があまり重症ではなく、癌患者の治療における臨床的使用に大きな可能性を有することを実証している。
【0082】
実施例11.L3D10のヒト化
ヒト化プロセスは、相同性モデル抗体の3D構造を作製し、構造モデリングに基づいて親抗体のプロファイルを作成することによって始まる。利用するアクセプターフレームワークは、フレームワークにわたる全体的な配列同一性、合致する界面位置、同様に分類されるCDRの正準位置、及び除去される必要があるN-グリコシル化部位の存在に基づいて同定された。1つの軽鎖(LC)及び1つの重鎖(HC)のフレームワークをヒト化設計のために選択した。
【0083】
ヒト化抗体は、親抗体配列の選択された部分とヒトフレームワーク配列とを融合する複数のハイブリッド配列を作製すること(CDR配列をアクセプターフレームワークに移植することを含む)によって設計した。親抗体L3D10の予測されるCDR配列は、下の表1Aに示すように、配列番号21~26として提供される。
【表1A】
【0084】
3Dモデルを使用して、これらのヒト化配列を目視及びコンピュータモデリングによって系統的に分析し、抗原の結合を保持する可能性が最も高いであろう配列を単離した。目的は、最終ヒト化抗体におけるヒト配列の量を最大化しながら、元の抗体特性を保持することであった。
【0085】
選択されたアクセプターフレームワークに基づいて、3つのヒト化軽鎖(LC1、LC2、及びLC3)及び3つのヒト化重鎖(HC1、HC2、及びHC3)を設計した。3つのHCまたは3つのLC配列の各々は、同じ生殖系列に由来し、
図38に示すように、マウス親配列に異なる逆突然変異を有していた。ヒト化可変領域のアミノ酸配列及びそれらの最適化されたコードヌクレオチド配列は、配列番号9~20に記載される。ヒト化重鎖及び軽鎖の両方のCDR2配列は、親L3D10抗体配列に対するアミノ酸変化を含有し、下の表1Bに示すように配列番号33~38に記載される。
【表1B】
【0086】
軽鎖及び重鎖ヒト化鎖は、次に変異型完全ヒト化抗体を作製するために組み合わせることができる。ヒト化軽鎖及び重鎖の全ての可能な組み合わせをそれらの発現レベル及び抗原親和性について試験して、親抗体と同様の性能を持つ抗体を同定した。
【0087】
モノクローナル抗体のヒトらしさスコアを算出するための新しいツール(24)を使用した。このスコアは、抗体の可変領域配列がどれくらいヒト様に見えるかを表すものであり、抗体をヒト化する際の重要な要素である。親抗体及びヒト化抗体のヒトらしさスコアを下の表2及び表3に示す。我々の方法によれば、重鎖の場合、79以上のスコアがヒト様に見えることを示し、軽鎖の場合、86以上のスコアがヒト様に見えることを示す。
【表2】
【表3】
【0088】
可変領域配列を最初に合成することにより全長抗体遺伝子を構築した。配列を哺乳動物細胞における発現のために最適化した。次いで、これらの可変領域配列を、既にヒトFcドメインを含有する発現ベクターにクローニングする;重鎖の場合、hIgG1(M252Y、S254T、T256E、S298A、E333A、K334A)骨格を用いた。さらに、比較のために、同じ骨格のFc配列を用いて、キメラ親重鎖及び軽鎖の可変領域を全長キメラ鎖として構築した。
【0089】
9個すべてのヒト化抗体は、0.01リットルの小規模製造を行った。キメラ親抗体も直接比較のためにスケールアップした。血清の非存在下で化学的に定義された培地を使用して、示される重鎖及び軽鎖のプラスミドを懸濁HEK293細胞にトランスフェクトして抗体を作製した。MabSelect SuRe プロテインA培地(GE Healthcare)を使用して馴化培地中の全抗体を精製した。試験した10個の抗体を下の表4に示す。
【表4】
【0090】
9個のヒト化抗体の組み合わせ、及び抗原に対するキメラ親抗体(huCTLA4)の親和性を、Octetによって評価した。複数濃度の動態実験をOctet Red96システム(ForteBio)上で行った。抗hIgG Fcバイオセンサ(ForteBio、番号18-5064)を試料希釈液(PBS中0.1%BSA及び0.02%Tween 20)中で水和させ、pH1.7グリシン中でプレコンディショニングした。試料希釈液を用いて600nMから出発し、7段階の2倍段階希釈を使用して抗原を希釈した。全ての抗体は、試料希釈液を用いて10μg/mLまで希釈し、次いで、抗hIgG Fcバイオセンサに120秒間固定化した。試料希釈液中で60秒間ベースラインを確立した後、一連の濃度の抗原を含むウェルにバイオセンサを移して会合を測定した。試料希釈液中の対象となる各タンパク質に会合が120秒間観察され、解離が180秒間観察された。結合親和性は、動態センサグラムを一価結合モデル(1:1結合)に適合させることによって特徴付けた。完全動態測定値を下の表5に要約する。
【表5】
【0091】
実施例12.ヒト化抗CTLA4抗体の抗腫瘍活性
相対的結合親和性及びヒトらしさスコアに基づいて、さらに評価するための3つの抗体を選択した。
PP4631-高親和性及び良好な発現
PP4637-高親和性及び良好な発現
PP4638-親和性はやや低いが、最も高いヒト化スコア
これらの抗体の各々ための材料は、0.1リットルスケールでHEK293細胞に一過性産生させた後、プロテインAによる精製によって生成した。下の表6に示すように、精製された抗体の結合親和性をOctet分析により確認した。
【表6】
【0092】
前述の実施例5に記載したヒトCTLA4-ノックインマウスの同系MC38マウス腫瘍モデルを使用して、これら3つのヒト化抗体の抗腫瘍活性を10D1及びキメラL3D10抗体と比較して評価した。
図39Aは、in vivo実験の処理スケジュールを示す:接種後7日目に開始して3日ごとに合計4用量の抗体をマウスに投与した。
図39Bに示すように、全てのヒト化抗体は、腫瘍を完全に根絶させ、10D1と同等であった。
【0093】
別の実験において、実施例5に記載したヘテロ接合型Ctla4
h/mマウスの同系MC38マウス腫瘍モデルを使用して、2つの異なる用量で、ヒト化抗体PP4631及びPP4637の抗腫瘍活性を10D1及びキメラL3D10抗体と比較して評価した(
図14)。
図40に示すように、30mcg/マウス/注射(1.5mg/kg)で使用した場合は全てのmAbが識別不能であったが、PP4637は10mcg/マウス/注射(0.5mg/kg)ではより効果的であり、PP4631及び10D1は同等の活性を示した。
【0094】
図41に示されるようなヒトCTLA4-ノックインマウスの同系B16-F1メラノーママウス腫瘍モデルを使用して、10D1及びキメラL3D10抗体と比較したヒト化抗体の抗腫瘍活性も決定した。接種後2日目に開始して3日ごとに合計3用量の抗体をマウスに投与した。
図41に示すように、L3D10及びヒト化抗体は、腫瘍増殖を遅延させ、10D1と同等であった。
【0095】
実施例13.L3D10のヒト化クローンは、10D1よりも優れた安全性プロファイルを維持する
L3D10の優れた安全性プロファイルがヒト化後に維持され得るかどうかを試験するために、PP4631及びPP4637と10D1とを、抗PD-1と組み合わせて使用した場合のそれらの有害作用について比較した。
図42に示すように、抗PD-1と組み合わせて使用した場合、PP4631及びPP4637は両方とも10D1より毒性が低かった。
【0096】
図28に記載される赤血球生成不全と一致して、完全血球数(CBC)によれば、10D1+抗PD-1で処理したマウスは貧血であるのに対し、抗PD-1+PP4631及び抗PD-1+PP4637を投与されたマウスは、
図43に示すようにほぼ正常なCBCプロファイルを有する。さらに、PBLにおけるT細胞プロファイルの分析により、10D1+抗PD-1を投与されたマウスにおいてCD4及びCD8T細胞の両方の強力な全身活性化が明らかになったが、抗PD-1+PP4631または抗PD-1+PP4637を投与されたマウスにはそれが見られなかったことから(
図44)、L3D10に基づく抗CTLA-4 mAbは全身性のT細胞活性化を引き起こさないという概念がさらに支持される。
【0097】
実施例14.ヒト化抗CTLA4抗体の結合特性
ヒト化抗体がCTLA4結合特性を保持したことを確認するために、固定化CTLA4及びプレートに結合させたCTLA4への結合を調べた。
図45に示すように、ヒト化は固定化CTLA4への結合に影響を与えず、3つ全てのヒト化抗体が、親キメラL3D10抗体と同様の結合を示した。しかしながら、
図46に示すように、ヒト化は可溶性CTLA4へのL3D10の結合をさらに低下させる。可溶性CTLA4への結合の低下に基づいて、3つのヒト化抗体は、自己免疫副作用がL3D10よりもさらに少ない、等しい腫瘍拒絶を誘導することが予想される。
【0098】
我々は、キメラL3D10が10D1よりも1000倍高い遮断活性を有することを実証した。これは、B7-CTLA-4相互作用を遮断することがirAEの欠如を説明し得るという興味深い可能性を提起する。
図47及び
図48に示すように、PP4631もPP4637も、in vitro及びin vivoでのB7-CTL-A4相互作用を遮断しない。PP4631及びPP4637がirAEの減少を示すという事実は、B7-CTLA-4相互作用を遮断することがL3D10の安全性向上には寄与しないという概念をさらに支持するものであった。
【0099】
自己免疫疾患からの保護において提案されるCTLA-4の役割を考慮して、我々は、安全性プロファイルの改善の基礎となる機序として、可溶性CTLA-4への結合低下を提案した。この仮説を試験するために、周産期中に抗PD-1+抗CTLA-4 mAbを投与された雌マウス間の成長(体重増加)をirAEの基本指標として用いた。
図42に示すように、10D1及び抗PD-1の両方を投与されたマウスには体重増加における大幅な減少が観察されたのに対し、PP4637+抗PD-1を投与されたマウスではirAEが最も少なく、その後にPP4631、次いでL3D10が続いた。sCTLA-4への結合低下との厳密な相互関係は、主要仮説と一致している。
【0100】
実施例15.ヒト化抗CTLA4抗体の加工性評価
3つの異なるヒト化抗体の開発及び製造の可能性を評価するために、多数の分析方法を行って異なる抗体を特徴付けた。
【表A】
【0101】
初期評価として、3つの主要候補抗体の予測される分子量及び等電点をアミノ酸配列に基づいて算出した。表7に示すように、全ての抗体はかなり類似していたが、抗体はやや低めのPIを有していた。
【表7】
【0102】
製品収量の評価
異なる抗体の生産性を評価するために、異なる抗体の重鎖及び軽鎖を発現しているベクターでHEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。次いで、無血清培地を使用してこれらの細胞を6日間振盪フラスコ内で培養した。6日後、上清を回収し、抗体を1段階プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。下の表8に見られるように、抗体PP4631及びPP4637は同様のタンパク質収率を示したが、抗体PP4638は、はるかに低い相対収率で産生された。
【表8】
【0103】
一過性に発現させた抗体の純度を評価するために、試料を還元及び非還元SDS-PAGEにより分析した。
図50に示すように、3つ全ての抗体からの試料は抗体分子を示すゲルバンドを生成し、プロテインAによる精製後、試料は比較的純粋であった。
【0104】
サイズ排除クロマトグラフィー
一過性発現後の異なる抗体の純度及び凝集をさらに調べるために、精製したタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィーを行った。端的に述べると、50μgの濾過した(0.22μmフィルタを使用)試料を、TOSOH G3000 SWxl 5μmカラムを使用したSE-HPLC分離に用いた。PBS(pH7.4)を移動相として用いた。下の表9に示すように、プロテインAによる精製後、全てのヒト化抗体が>90%の純度を示した。抗体PP4631及びPP4637は、同様に低いレベルのより高い分子量(MW)の凝集体、及びタンパク質のほとんどがメインピーク内にある抗体試料を呈する分解を示した。対照的に、抗体PP4638は、より高いレベルの凝集及びある程度の分解を示した。SE-HPLCクロマトグラムを
図51に示す。
【表9】
【0105】
キャピラリー電気泳動(CE)
キャピラリー電気泳動を用いて、還元及び非還元の両方の条件下でピークバンド内のタンパク質の量、及び非グリコシル化重鎖タンパク質の量を定量化した。端的に述べると、100μgの試料を、2μLの10kDa標準タンパク質と、ヨードアセトアミド(非還元条件)またはβ-メルカプトエタノール(還元条件)とともにCE-SDS試料緩衝液に希釈した。次いで、試料を10分間70℃で処理した。分離には、PA-800、50μm I.D.裸溶融シリカキャピラリーを用いた:泳動長20.2cm、分離電圧15kV、OD
220で検出。下の表10に示すように、SDS-PAGEと一致して、3つ全てのタンパク質が高レベルの純度を示し、全てが高度にグリコシル化されていた。CE-SDSクロマトグラムを
図52に示す。
【表10】
【0106】
脱アミド:キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)及び液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)
2つの異なる期間(5時間及び12.5時間)にわたって高pHストレス処理を用いて及び用いずに抗体を比較し、続いてcIEF及びLC-MS分析を行うことにより、高pHストレス下でのタンパク質の脱アミドレベルを決定した。
【0107】
異なる抗体の電荷アイソフォームプロファイル及び等電点をキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって決定した。端的に述べると、20mM Tris(pH8.0)に試料の緩衝液交換を行い、次いで、100μgの試料タンパク質を、PI 7.05及びPI 9.77マーカーとともに、両性電解質、メチルセルロースと混合した。分析にはiCE3(商標)を使用した:100μm I.D.キャピラリー、1.5kV+3kV、OD
280で検出。脱アミドによるストレス処理のために、試料を500mM NaHCO
3で5時間または12.5時間処理し、次いでcIEF及びLC-MSで調べた。分析の結果を下の表11に示し、LC-MSグラフを
図53に示す。3つ全ての抗体が、ストレス条件で脱アミド種の量に予測された増加を示し、メインピークにおいて対応する下降を示す。アミノ酸配列から予測されるように、抗体PP4637のpIは、PP4631及びPP4638の場合よりもやや低く(表7)、予測されたpIと比較してより高いpIが観察されたことは、おそらくグリコシル化を示唆するものである。
【表11】
【0108】
示差走査熱量測定(DSC)熱分析
異なる抗体の熱安定性及び融解温度を決定するために、それらを示差走査熱量測定(DSC)熱分析に供した。端的に述べると、PBS(pH7.4)中2mg/mLの試料を、1℃/分の割合で15℃から105℃まで勾配する温度に供した。試料及び緩衝液(バックグラウンドとして)の両方について温度に伴うCp変化をモニタリングした。バックグラウンドを差し引いたCp対温度曲線を得たところ、ピークは分析物のTmを示していた。下の表12に示すように、3つ全ての抗体が、同様に高い融解温度を示した。3つの抗体のDSC曲線を
図54に示す。
【表12】
【0109】
酸化:ペプチドマッピング
ヒト化抗体の酸化修飾を、酸化ストレスを用いてまたは用いずに、LC-MSを使用してペプチドマッピングにより評価した。6M GnCl及び5mM β-MEの存在下で、試料を65℃で変性させ、次いでヨードアセトアミドでアセチル化した。プロセスした試料を、次いで55℃のトリプシンで消化し(Promega、シーケンシンググレード)、消化された混合物をC18逆相LCカラム(ACQUITY UPLC BEH130 C18、2.1×100mm、1.7μm)上で分離し、Masslynx及びBiophatmlynxの分析ツールを使用して質量分析法(Waters XEVO-G2S QTOF)により分析した。酸化ストレス分析のために、試料を0.05%または0.1%のH
2O
2で1時間処理し、次いでLC-MSにより調べた。その結果を下の13~16に示す。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0110】
結合特異性
CTLA4を発現しない2つの異なる細胞株(CHO及びHEK293)に対する非特異的結合を検出する能力を、10D1と比較して2つの異なる濃度で評価することにより、異なる抗体の結合特異性を決定した。端的に述べると、PBS中の100μg/mLまたは20μg/mLの試料(または参照mAb)を3×10e
6細胞/ml(CHOまたはHEK293)でインキュベートした。FITC標識ウサギ抗ヒト-IgG抗体(Boster,Wuhuan、China)を検出に使用し、標的mAbの細胞への結合をFACSにより測定した。下の表17に示すように、抗体PP4631及びPP4637は、非常に低い結合及び良好な特異性を示したのに対し、抗体PP4638は、対照細胞株に対して非特異的結合活性を示した。
【表17】
【0111】
実施例16.L3D10抗体及びヒト化抗体のエピトープマッピング
L3D10親抗体ならびにヒト化変異型PP4631及びPP4637のCTLA-4結合エピトープをマッピングするために、マウス及びヒトCTLA4タンパク質は、B7-1に交差反応性を示すが、抗CTLA-4抗体に対してはそうではないという事実を利用した。そのために、ヒトCTLA-4タンパク質からのアミノ酸のクラスタをマウスCtla-4タンパク質からのアミノ酸と置き換えたヒトCTLA-4Fcタンパク質の多数の変異体を設計した。この試験で使用される抗CTLA-4抗体はマウスCtla-4に結合しないため、抗体結合エピトープの重要な残基をマウスアミノ酸で置き換えた場合、抗ヒトCTLA-4抗体の結合は消失されるはずである。
野生型ヒトCTLA-4Fc配列に基づいて、11個のCTLA-4Fc変異タンパク質(M1~M11)(配列番号:40~50)をコードするDNAベクターを構築し、0.01mLスケールでHEK293に一過性トランスフェクションすることによりタンパク質を産生した後、プロテインAによる一段階クロマトグラフィーにより精製した。
抗CTLA4抗体のCTLA4Fcタンパク質への結合は、ELISAによって行われた。プレートを1μg/mLのCTLA-4Fcタンパク質でコーティングし、次いで、ビオチン化抗体またはB7-1Fc融合タンパク質を結合アッセイにおいて可溶性相に使用し、結合したタンパク質の量を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジンを用いて測定した。抗ヒトCTLA-4抗体はマウスCtla-4と交差反応せず、これは恐らく、細胞外ドメインにおけるヒトCTLA-4とマウスCTLA-4との間のアミノ酸配列の違いを反映していると思われる。
図55は、ヒト、マカク、及びマウスのCTLA-4細胞外ドメインのアライメントを示しており、ヒトとマカクとの間の配列保存を強調する一方で、マウスと霊長類の配列間の多くの違いを示している。MYPPPY結合モチーフの保存により、マウス及びヒトCTLA4タンパク質はB7-1に相互反応性を示す(72)。
抗ヒトCTLA-4抗体の結合エピトープをマッピングするために、マウス特異的アミノ酸のクラスターをヒトCTLA-4配列に組み込んだ多数の非重複CTLA-4Fc変異タンパク質を作製した。11個の変異体の各々に組み込まれたアミノ酸を
図55示し、WT及び変異体CTLA-4Fcタンパク質のアミノ酸配列を
図56に示す。HEK293細胞に一過性トランスフェクションすることによりこれらのタンパク質を産生し、その収率を表18に提供する。WTヒトCTLA-4Fcタンパク質と比較した収率によって示されるように、突然変異の多くがタンパク質の発現に影響を与えると考えられる。
【表18】
【0112】
次いで、キメラL3D10抗体ならびにヒト化抗体PP4631及びPP4637が固定化CTLA-4Fc変異体構築物に結合する能力をELISAによって決定した:CTLA-4変異体構築物でプレートをコーティングし、ビオチン化抗CTLA-4抗体またはB7-1 Ig対照タンパク質を加え、HRP結合ストレプトアビジンを用いて結合を測定した。結合アッセイの結果を表19~22に示す。予想された通り、4つ全ての結合タンパク質が、WT CTLA-4Fcタンパク質に対して良好な用量依存性結合を示した。しかしながら、M9及びM10タンパク質に導入された突然変異は、全体的な構造を変化させると考えられ、これらの変異体はB7-1Fcに結合することができなかった。M2及びM4に導入された突然変異も、WTタンパク質と比較して低下した結合によって示唆されるように、CTLA-4の立体構造を部分的に変化させた。この見解と一致して、これらの変異体(M2、M4、M9、及びM10)の4つ全てがはるかに低い収量で発現した(表18)。対照的に、WT CTLA-4Fcタンパク質への結合及びB7-1Fcタンパク質の結合を参照として用いると、M11が十分に発現するタンパク質として明らかに傑出しており、B7-1Fcには効率的に結合するが、2つのヒト化抗CTLA-4抗体に結合することはできなかった。また、元のL3D10への結合も約100倍低下される(表20)。予想された通り、全体的な立体構造に影響を与える突然変異も、抗CTLA-4抗体への結合に影響を及ぼした。
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【0113】
L3D10がM11への有意な結合を保持したため、その結合が特異的であるかどうかを調べた。ヒトCTLA4-Fc(hCTLA4Fc)、マウスCTLA4-Fc(mCTLA4-Fc)、対照IgG1-Fc、または全ての変異hCTLA4-Fcでプレートをコーティングし、L3D10、PP4631、及びPP4637とともにB7-1Fcへのそれらの結合を測定した。全体的なデータを表23に提示する。
図57に示すように、ビオチン化B7-1は、hCTLA-4、mCTLA-4、及びM11に等しく良好に結合する。アッセイの特異性は、IgG1-Fcへの結合の欠如によって示される。興味深いことに、M11へのL3D10の結合は、IgG1-Fc及びmCTLA4-Fcへの結合よりも強力である一方で、IgG1-Fcへの有意な結合は、M11へのキメラ抗体の結合が非特異的であり得ることを示唆している。対照的に、ヒト化抗体のいずれもM11、mCTLA-4、及びIgG1-Fc対照に結合しない。これらのデータは、M11に導入された突然変異が、CTLA-4へのL3D10、PP4631、及びPP4637の結合を選択的に切断したことを示している。
【0114】
既知の複合体構造133を用いて、3D構造でCTLA-4エピトープをマッピングした。
図58に示すように、これらのmAbによって認識されるエピトープは、B7-1によって覆われた領域に局在していた。そのため、CTLA-4へのL3D10、PP4631、及びPP4637の結合は、B7-1の結合に対して相互に排他的であろう。PP4631及びPP4637の遮断不良は、特有の結合ドメインよりもむしろより低いアビディティによるものである。
【0115】
マウス及びヒトCTLA4タンパク質はB7-1に交差反応性を示すが、抗ヒトCTLA-4抗体はマウスCtla-4タンパク質とは交差反応しないという事実を利用して、ELISAによりL3D10由来抗体の結合エピトープをマッピングすることができた。ヒトCTLA-4タンパク質のアミノ酸のクラスタをマウスCtla-4タンパク質のアミノ酸で置換したヒトCTLA-4Fcタンパク質の多数の変異体を用いて、我々は、CTLA-4の既知のB7-1結合ドメインの直後にある4つのアミノ酸を置換した場合、抗体の用量依存性結合の大部分が消失することを明確に実証している。結合エピトープがB7-1結合ドメインに隣接して直接位置するという事実は、L3D10抗体がin vitro及びin vivoの両方でB7-CTLA-4相互作用を遮断するという実証された能力と十分に相関している。可溶性CTLA4は、細胞外IgVドメインのC末端アミノ酸の細胞内ドメインへの融合によって生成されるため、多型C末端ドメイン残基(C末端からの18個のアミノ酸のみ)に結合する抗体は、大きな細胞内ドメインが細胞外ドメインのC末端に融合した可溶性CTLA-4に対する反応性を喪失する可能性が高いと推測したくなる。
【0116】
抗CTLA4抗体の結合ドメインをさらに調べるために、M12~M17と称される6つのさらなる変異CTLA4-Fc融合タンパク質(配列番号:51~56)を設計し(
図59)、抗CTLA4抗体10D1(
図60A)、PP4631(
図60B)、及びPP4637への結合を比較するために使用した(
図60C)。
図60に示すように、位置Y
103L
104I
106にあるM11内の突然変異が10D1、PP4631、及びPP4637への結合を抑制したことから、10D1、PP4631、及びPP4637の結合部位は残基Y
103L
104I
106を含むことが示唆される。重要なのは、A29>Y内のさらなる突然変異が、Y
103L
104I
106内の突然変異によりPP4631及びPP4637へのCTLA-4の結合を回復したということである。これらのデータは、CTLA4内の位置A
29が、抗体PP4631及びPP4637の結合にとって重要であるが、10D1にとってはそうではないことを示している。
【0117】
実施例17.抗CTLA-4 mAbは腫瘍拒絶の誘導において抗4-1BBと相乗作用する
動物モデルにおける試験は、抗CTLA-4モノクローナル抗体(mAb)によって誘発される抗腫瘍応答が、少なくとも部分的に、正常な「自己」分化抗原に対する抗原特異的T細胞応答によるものであることを示唆した(73、74)。抗CTLA-4抗体が自己免疫疾患を悪化させる傾向は、マウスにおいて十分に立証されている(75~78)。この見解は、さらに裏付けられ、より最近のヒト臨床試験において患者が治療の中止を必要とする重度の自己免疫症状を発症し、重大な限界であると証明された(79)。その一方で、癌治療薬抗4-1BB mAbは、ループス易発性マウスにおいて自己免疫疾患の発生を抑制することが示されている(24、25)。
【0118】
抗4-1BB mAbは、抗腫瘍応答を刺激すること及び自己免疫症状を軽減することの両方が可能であるという事実は、この抗体を抗CTLA-4 mAbと組み合わせることで、自己免疫を引き起こすことなく癌拒絶をもたらし得るという興味深い可能性を提起する。この試験において、抗CTLA-4 及び抗4-1BBは、大きな確立された腫瘍の拒絶を誘導するために組み合わされた。
【0119】
CD8 T細胞媒介性腫瘍拒絶の誘導における抗マウス-CTLA-4及び抗マウス-4-1BB抗体の併用効果
1匹は微小疾患を有し、1匹は大きな確立された腫瘍を有する2匹のモデルを使用して、抗マウス-4-1BB及び抗マウス-CTLA-4 mAbによる処理を組み合わせた抗腫瘍効果を調べた。C57BL/6マウスをMC38大腸癌細胞の皮下接種によりチャレンジし、腫瘍細胞接種後の異なる時点に、腫瘍チャレンジしたマウスに抗体を注射し、理学的検査により腫瘍サイズ及び発生率をモニタリングした。
【0120】
微小疾患モデルにおいて、腫瘍細胞の接種後48時間から開始して、ハムスターIgG+ラットIgG、抗4-1BB+ハムスターIgG(抗4-1BB単独群)、抗CTLA-4+ラットIgG(抗CTLA-4単独群)、または抗CTLA-4と組み合わせた抗4-1BBでマウスを処理した。抗体を、2日目、9日目、及び16日目に腹腔内投与(i.p.)した。抗4-1BBまたは抗CTLA-4 mAbのいずれかを単独で用いた処理は、腫瘍を拒絶した各群の5匹のマウスのうち1匹に腫瘍増殖の遅延をもたらし、抗CTLA-4及び抗4-1BB mAbの両方で処理した5匹のマウスのうち4匹には、実験終了時に腫瘍は見られなかった。
図61Aは、各マウスの腫瘍増殖測定値を示す。群間の増殖率を比較するために、線形ランダム効果モデルをデータに適合させた。併用療法は、抗CTLA-4単独と比べて腫瘍サイズの1日の増加を4.6mm
2/日有意に減少させた(p=0.0094)。さらに、併用療法は、抗4-1BB単独と比べて増殖を8.4mm
2/日有意に減少させた(p=0.0006)。増殖率に加えて、最初の腫瘍チャレンジ後6週目に処理群間で実際の腫瘍サイズを比較した。6週目の平均腫瘍サイズは、抗CTLA-4(137.8mm
2、p=0.0251)または抗4-1BB(287.6、p=0.0006)のいずれかを別々に投与されたマウスと比較して、併用療法を行ったマウスでは有意に小さかった(27.5mm
2)。このように、最少腫瘍負荷の設定において、抗4-1BB及び抗CTLA-4 mAbの組み合わせは、別々に投与された抗4-1BBまたは抗CTLA-4よりも優れた腫瘍増殖における有意な遅延をもたらす。
【0121】
小さい腫瘍負荷に対する併用mAb処理の抗腫瘍効果が、より大きな腫瘍負荷に対する治療用途まで拡張され得るかどうかを決定するために、確立された腫瘍を有するマウスを抗体で処理した。野生型C57BL/6マウスをMC38大腸癌細胞の皮下接種によりチャレンジした。腫瘍を14日間増殖させ、その時点で確立された腫瘍を有するマウス(通常、直径>7mm)を選択し、4つの処理群に無作為に分割した:ハムスターIgG+ラットIgG、抗4-1BB+ハムスターIgG、抗CTLA-4+ラットIgG、及び抗CTLA-4 mAbと組み合わせた抗4-1BB mAb。腫瘍チャレンジ後14日目、21日目、及び28日目に抗体を腹腔内投与した。
図61Bに示すように、抗CTLA-4 mAbを用いた処理は、対照IgG処理と比較して腫瘍増殖を妨害しなかったが、群内の8匹のマウスのうち1匹に拒絶が見られた。抗4-1BB mAbを用いた処理は、腫瘍増殖を若干遅らせたが、8匹のマウスのうち1匹のみが腫瘍を拒絶した。対照的に、抗CTLA-4及び抗4-1BB mAbの両方を用いた併用療法は、8匹のマウスのうち7匹において腫瘍の根絶をもたらし、残りのマウスにおいてさらなる腫瘍増殖を予防した。上記のように、線形ランダム効果モデルをデータに適合させることによって群間の増殖率を比較した。併用療法は、抗CTLA-4単独と比べて腫瘍サイズの1日の増加を10.6mm
2/日有意に減少させた(p<0.0001)。さらに、併用療法は、抗4-1BB単独と比べて増殖を6.2mm
2/日有意に減少させた(p=0.0002)。増殖率に加えて、最初の腫瘍チャレンジ後の8週目に処理群間で実際の腫瘍サイズを比較した。8週目の推定平均腫瘍サイズは、抗CTLA-4(404.9mm
2、95%CI:285.4、524.4mm
2;p<0.0001)または抗4-1BB(228.4mm
2、95%CI:200.4、689.9mm
2
;p=0.0004)のいずれかを別々に投与されたマウスと比較して、併用療法を行ったマウスでは有意に小さかった(-1.7mm
2、95%CI:-10.8、7.5mm
2)。したがって、併用mAbは、より大きな腫瘍負荷においても、抗CTLA-4または抗4-1BB別々と比べて腫瘍増殖を有意に遅延させると考えられる。
【0122】
MC38は、肝転移を形成することが知られている
80。肝転移に対する治療抗体の効果を評価するために、実験に組み入れた全てのマウスを組織学的検査により肝転移について分析した。表24に示すように、対照Igで処理したマウスの約60%が肝臓に微小転移を有していた。抗CTLA-4単独または抗4-1BB抗体単独のいずれかによる処理は、転移の速度を若干低下させたが、その低下は統計的有意性には達しなかった。注目すべきは、両方の抗体で処理した群のわずか1/22匹のマウスのみが肝転移を有していたということである。ロジスティック回帰モデルを使用して、抗4-1BB単独を投与されたマウスの肝転移の確率は、抗4-1BB及び抗CTLA-4の両方を投与されたマウスの確率よりも約4.7倍高いことを発見した(95%CI:1.6、13.7;p=0.0050)。同様に、抗CTLA-4のみを投与されたマウスでは、両方の処理を与えられたマウスと比較して肝転移の確率が3.6倍高かった(95%CI:1.3、10.2;p=0.0174)。したがって、併用療法は、いずれかの抗体単独を用いた処理と比較してMC38による肝転移を有意に減少させる。
【表24】
【0123】
免疫細胞のどのサブセットが併用mAb処理によって誘発される抗腫瘍効果に寄与していたのかを判定するために、リンパ球の主要なサブセットをモノクローナル抗体で枯渇させた。MC38腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍が触知可能になってから、腫瘍担持マウスを4つの群に分けた。各群に一連の腹腔内抗体注射を行い、免疫細胞の分化するサブセットを枯渇させた(正常なラットIgGによる非枯渇、抗CD 4 mAb(GK1.5)によるCD4 T細胞の枯渇、抗CD8 mAb(2.4.3)によるCD8 T細胞の枯渇、及び抗NK1.1 mAb(PK136)によるNK細胞の枯渇を含む)。さらに、全ての群の全てのマウスを抗CTLA-4+抗4-1BB mAbで1週間に1回、3週間処理した。実験が完了する直前にマウスから採取した末梢血のフローサイトメトリーにより免疫細胞の十分な枯渇を評価した(データは示さず)。予想された通り、免疫細胞を枯渇させなかったマウスは、抗4-1BB mAbと組み合わせて抗CTLA-4を用いた処理に応答した(
図62)。同様に、NK細胞及びCD4 T細胞の枯渇は、抗CTLA-4+抗4-1BB mAb併用療法の抗腫瘍活性に影響を与えなかった。しかしながら、CD8 T細胞の枯渇は、併用抗体療法の抗腫瘍活性を抑制した。28日目に、CD8 T細胞を枯渇させたマウスの推定平均腫瘍サイズ(92.3mm
2、95%CI:64.5、120.1mm
2)は、免疫細胞を枯渇させなかったマウスの平均腫瘍サイズ(28.7mm
2、95%CI:-17.1、74.4mm
2)、CD4 T細胞を枯渇させたマウス(16.7mm
2、95%CI:1.0、32.4mm
2)、及びNK細胞を枯渇させたマウス(9.3mm
2、95%CI:-8.3、26.9mm
2)よりも有意に高かった。これらのデータは、抗CTLA-4及び抗4-1BB mAb処理の腫瘍根絶効果がCD8 T細胞依存性であることを示している。
【0124】
抗4-1BB抗体は、異種抗CTLA-4抗体に対する抗体応答を低下させた。
反復抗体療法の障害の1つは、治療抗体に対する宿主抗体応答の増強である
81。4-1BBは、タンパク質に対する抗体応答を低下させることが知られているため、我々は、抗4-1BB抗体が抗CTLA-4抗体に対する宿主応答に与える影響を評価した。
図63に示すように、対照IgGまたは抗4-1BBのいずれかで処理したマウスにおいて、あるにしても極めてわずかな抗抗体応答が検出された。抗CTLA-4 mAbがCD4 T細胞応答を促進する能力と一致して
82、抗CTLA-4+ラットIgGで処理したマウスは、投与された4F10抗体及びラットIgGに対する強い宿主抗体応答を示した(
図63A~B)。この応答は、抗4-1BBが抗CTLA-4 mAbと同時投与されたときに30倍超低下した。これらのデータは、抗4-1BB抗体が、治療薬に対する宿主応答を低下させることにより、他の同時投与された治療タンパク質の持続期間を潜在的に増加させることができることを示唆している。
【0125】
ヒトCTLA-4ノックインマウスにおいて、抗マウス4-1BB及び抗ヒトCTLA-4抗体の組み合わせが腫瘍拒絶及び持続性癌免疫を低下させた。
【0126】
抗4-1BBは抗CTLA-4抗体に対する抗体の産生を低下させるため、抗4-1BBによる腫瘍拒絶の増強が単に抗体応答の抑制におけるその効果に起因するのかどうかということは興味深い問題である。このヒトCTLA4遺伝子ノックインマウスにより、抗ヒトCTLA4抗体の抗腫瘍効果が抗4-1BB抗体によって増強され得るかどうかを試験することができた。
図64Aに示すように、抗ヒトCTLA-4(L3D10)及び抗4-1BB抗体(2A)は、両方とも単独で腫瘍増殖の遅延を引き起こしたが、2つの抗体の組み合わせは最も有意な腫瘍拒絶をもたらした。それぞれ、抗CTLA-4、4-1BB、または2つの抗体で処理した群において、1/7匹、2/7匹、5/7匹のマウスはまったく腫瘍を発症しなかったが、未処理群の全てのマウスが腫瘍を発症した。抗ヒトCTLA-4抗体はマウス起源であるため、4-1BB抗体の影響は、治療薬抗CTLA-4抗体に対する抗体の抑制に起因するものではあり得ない。さらに、我々のデータは、併用療法の優れた効果は、抗ヒトCTLA-4抗体に基づく免疫療法に適用可能である可能性が高いことも示した。
【0127】
2つの抗体で処理したマウスがさらなる腫瘍細胞チャレンジに対して免疫があるかどうかを試験するために、最初の腫瘍細胞チャレンジの110日後に腫瘍細胞でマウスをチャレンジした。
図64Bに示すように、1回目に腫瘍細胞を拒絶した2つの抗体で処理した5匹全部のマウスが無腫瘍のままであったのに対し、対照ナイーブマウスは進行性の腫瘍増殖を示した。したがって、併用療法もまた、癌細胞に対する持続性免疫を誘導した。
【0128】
タンパク質に基づく免疫療法の障害の1つは、治療タンパク質に対する宿主免疫である。抗体の場合、宿主は、異種型、アロタイプ、及びイディオタイプのエピトープに対する抗体を増加させることができる81。異種型応答は完全ヒト化によって排除することができるが、他の抗抗体応答は特別な配慮を必要とする。抗CTLA-4抗体の場合、それ自体がアジュバントであるため、その障害はより明白である。Mittlerらによる以前の研究は、T細胞依存性液性免疫応答の有意な抑制を実証した83。我々のデータは、抗4-1BB抗体の同時投与が抗CTLA-4抗体に対する宿主応答を低下させることを示しており、これは抗CTLA-4及び抗4-1BB抗体を用いた併用療法の別の利点を示唆するものである。
総合すると、我々のデータは、抗CTLA-4及び抗4-1BB抗体を用いた併用療法が、3つの主な利点、すなわち、癌免疫における効果の増大、自己免疫副作用の相互抑制、及び抗抗体応答の改善を提供することを示している。
【0129】
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物または特許出願が参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本発明をその特定の実施形態と関連付けて記載してきたが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従う本発明の任意の変形例、使用、または適用を包含することが意図され、本発明が関連する技術分野で既知であるかまたは慣例的に実施され、本明細書中上記に記載の本質的な特性に適用され得るような、本開示からの逸脱を含むことを理解されたい。
【0130】
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80.アイゼンセル,A.(Eisenthal,A.)ら「真核細胞において発現される組換えインターロイキン-6の抗腫瘍効果」“Antitumor effects of recombinant interleukin-6 expressed in eukaryotic cells”Cancer Immunol.Immunother.36,101-107(1993)
81.シュロフ,R.W.(Schroff,R.W.)、フーン,K.A.(Foon,K.A.)、ビーティ,S.M.(Beatty,S.M.)、オールダム,R.K.(Oldham,R.K.)、及びモーガン,A.C.ジュニア(Morgan,A.C.Jr.)「モノクローナル抗体療法を受けている患者におけるヒト抗マウス免疫グロブリン応答」“Human anti-murine immunoglobulin responses in patients receiving monoclonal antibody therapy”Cancer Res.45,879-885(1985)
82.カーニー,E.R.(Kearney,E.R.)ら「抗原特異的CD4+T細胞の微小集団のin vivoでの抗原依存性クローン増殖は、CD28共刺激に依存し、CTLA-4によって阻害される」“Antigen-dependent clonal expansion of a trace population of antigen- specific CD4+ T cells in vivo is dependent on CD28 costimulation and inhibited by CTLA-4”J.Immunol.155,1032-1036(1995)
83.ミットラー,R.S.(Mittler,R.S.)、ベイリー,T.S.(Bailey,T.S.)、クラスマン,K.(Klussman,K.)、トレイルスミス,M.D.(Trailsmith,M.D.)、及びホフマン,M.K.(Hoffmann,M.K.)「抗4-1BBモノクローナル抗体は、ヘルパーT細胞のアネルギーを誘導することによりT細胞依存性液性免疫応答をin vivoで抑制する」“Anti-4-1BB monoclonal antibodies abrogate T cell-dependent humoral immune responses in vivo through the induction of helper T cell anergy”J.Exp.Med.190,1535-1540(1999)
【0131】
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
(a)(i)配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、(ii)配列番号36、37、または38に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(iii)配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と、
(b)(i)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、(ii)配列番号33、34、または35に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(iii)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と、
を含む、抗CTLA4抗体。
<2>
(1)前記軽鎖可変領域におけるCDR2が配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域におけるCDR2が配列番号33に記載のアミノ酸配列を含むか、
(2)前記軽鎖可変領域におけるCDR2が配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域におけるCDR2が配列番号35に記載のアミノ酸配列を含むか、又は
(3)前記軽鎖可変領域におけるCDR2が配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域におけるCDR2が配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗CTLA4抗体。
<3>
前記軽鎖可変領域が配列番号70、71、又は72に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号62、63、又は64に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗CTLA4抗体。
<4>
前記軽鎖可変領域が配列番号71に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載の抗CTLA4抗体。
<5>
前記軽鎖可変領域が配列番号71に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載の抗CTLA4抗体。
<6>
前記軽鎖可変領域が配列番号72に記載のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載の抗CTLA4抗体。
<7>
ヒトCTLA4に結合することができる、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体。
<8>
前記抗CTLA4抗体は、膜結合CTLA4または固定化CTLA4への結合に比しての可溶性CTLA4への結合の低下によって特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体。
<9>
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体の抗原結合断片。
<10>
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CTLA4抗体または請求項9に記載の抗原結合断片を含む、抗癌剤。
<11>
抗PD-1抗体及び抗4-1BB抗体からなる群から選択される追加の薬剤と組み合わせて投与される、請求項10に記載の抗癌剤。
<12>
前記抗PD-1抗体または抗4-1BB抗体と抗CTLA4抗体とが、二重特異性抗体として単一分子中に組み合わされる、請求項11に記載の抗癌剤。
<13>
腫瘍微小環境においてTregの欠失及び局所的T細胞活性化を誘導する、請求項10に記載の抗癌剤。