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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010655
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】鉄道車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20230113BHJP
   B61D 17/08 20060101ALI20230113BHJP
   B61D 17/12 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B61D17/00 C
B61D17/08
B61D17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109114
(22)【出願日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021114208
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】眞野 優太
(57)【要約】
【課題】枕木方向における屋根構体の接合位置の調整が容易な鉄道車両の製造方法を提供すること。
【解決手段】台枠21の枕木方向両端部に側構体22A,22Bを立設させ、長さを調整可能な拘束梁6を、側構体22Aの上端部221Aと、側構体22Bの上端部221Bとに横架させ、拘束梁6の長さを調整することで、上端部221Aと上端部221Bの間隔D11を所定の間隔に調整し、屋根構体23を、上端部221Aと上端部221Bに設置し、接合すること、屋根外板26は、垂木25よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に突出する突出部261を備えていること、上端部221A,221Bには、突出部261と平行な面で形成されたフランジ部286が設けられていること、側構体22A,22Bは、フランジ部286が突出部261を下方から支持することで、屋根構体23を支持すること。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、前記台枠の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体と、前記台枠の軌道方向の両端部に接合される一対の妻構体と、前記一対の側構体および前記一対の妻構体の上端に接合される屋根構体と、を備える鉄道車両を製造するための鉄道車両の製造方法において、
前記台枠の枕木方向両端部の内の一端に前記一対の側構体の内の一方の第1側構体を立設させ、他端に前記一対の側構体の内の他方の第2側構体を立設させ、
長さを調整可能な拘束梁を、前記第1側構体の前記台枠とは反対側の端部である第1上端部と、前記第2側構体の前記台枠とは反対側の端部である第2上端部との間で、枕木方向に横架させ、
前記拘束梁の長さを調整することで、前記第1上端部と前記第2上端部の間隔を所定の間隔に調整し、
前記屋根構体を、前記第1上端部と前記第2上端部に設置し、接合すること、
前記拘束梁は、軌道方向に、複数本設けられ、別個に長さ調整可能であること、
前記屋根構体は、枕木方向に延在して前記一対の側構体を横架する垂木と、前記垂木に鉄道車両の内側から支持されて鉄道車両の屋根面を形成する屋根外板と、からなること、
前記屋根外板は、前記垂木よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に又は前記垂木の延長線上に、突出する突出部を備えていること、
前記第1上端部および前記第2上端部には、それぞれ、前記突出部と平行な面で形成された受け部が設けられていること、
前記第1側構体および前記第2側構体は、前記受け部が前記突出部を下方から支持することで、前記屋根構体を支持すること、
を特徴とする鉄道車両の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両の製造方法において、
前記第1側構体および前記第2側構体は、前記台枠に立設されて鉄道車両の上下方向に延在する縦骨と、前記縦骨に鉄道車両の内側から支持されて鉄道車両の側面を形成する側外板と、からなること、
前記側外板は、前記縦骨の前記台枠の側とは反対側の先端部よりも上方へ突出する第3上端部を有し、前記第3上端部で前記側外板が湾曲されて前記屋根構体側に向かって立ち下がる立下り面が形成され、前記立下り面の下端部で前記側外板が前記屋根構体側に向かって湾曲されて前記突出部と平行で、かつ、前記先端部により下方から支持される前記受け部がフランジ状に形成され、前記第3上端部と、前記受け部との段差により雨樋が形成されていること、
前記側構体と前記屋根構体との接合は、前記突出部と前記受け部とが、鉄道車両の軌道方向に沿って連続溶接されることで行われること、
を特徴とする鉄道車両の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両の製造方法において、
前記縦骨は、前記垂木を下方から支持する垂木受を備えること、
を特徴とする鉄道車両の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の鉄道車両の製造方法において、
前記屋根構体は、前記垂木の枕木方向の両端部に軌道方向に延在し、前記突出部を補強する桁材を備えること、
前記受け部は、前記桁材を介して、前記突出部を支持すること、
を特徴とする鉄道車両の製造方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つに記載の鉄道車両の製造方法において、
前記縦骨の前記先端部は、鉄道車両の軌道方向に沿って延在する横骨を介して、前記受け部を下方から支持すること、
を特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台枠と、台枠の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体と、台枠の軌道方向の両端部に接合される一対の妻構体と、前記一対の側構体および前記一対の妻構体の上端に接合される屋根構体と、を備える鉄道車両を製造するための鉄道車両の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、台車と、台車に支持される車両構体を有しており、車両構体は、鉄道車両の床部をなす台枠と、台枠の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両の連結部を形成する一対の妻構体(例えば切妻構体)と、台枠の枕木方向の両端部に立設されることで、鉄道車両の側面を形成する一対の側構体と、一対の妻構体の上端部および一対の側構体の上端部に接合されることで鉄道車両の屋根面を形成する屋根構体と、により6面体をなすように構成されることが一般的である。
【0003】
ここで、側構体と屋根構体は、例えば、図16に示すような構成を有する。図16は、従来技術に係る側構体51と屋根構体56の構成の概略を説明する図である。図16は、鉄道車両の枕木方向の両端部のうちの一方の端部を図示したものであるが、他方の端部の同様の構成である。
【0004】
側構体51は、例えば、台枠(不図示)に立設されて鉄道車両の上下方向に延在する縦骨52と、縦骨52に横骨55を介して支持されることで、鉄道車両の側面53aを形成する側外板53と、からなる。また、縦骨52の先端部には、屋根構体56に向かって延在するガセット54が接合されている。
【0005】
屋根構体56は、例えば、枕木方向に沿って延在して一対の側構体51を横架する垂木57と、垂木57に支持されて鉄道車両の屋根面58aを形成する屋根外板58と、からなる。さらに、屋根構体56は、垂木57の枕木方向の端部から側構体51まで延伸し、側構体51と接合する軒桁59および長桁60を備えている。なお、軒桁59の段差部59aは、雨樋として利用される。
【0006】
軒桁59と長桁60は、側構体51側の端部59b,60bが、側外板53により形成される側面53aの上端に覆いかぶさるように位置される。そして、軒桁59と長桁60と側外板53とが、重ねられた部分において、軌道方向に所定の間隔を持ってスポット溶接を行い、軒桁59と長桁60と側外板53とが接合される。さらに、ガセット54の先端部が長桁60に接合される。このように、軒桁59と長桁60と側外板53との接合と、ガセット54と長桁60の接合とにより、側構体51と屋根構体56との接合が行われる。
【0007】
そして、軒桁59および長桁60の端部59b,60bと、側外板53との間で生じる段差には、シール材61が塗布されており、軒桁59と長桁60と側外板53との隙間から雨水等が鉄道車両の内部へ侵入しないよう、側構体51と屋根構体56の接合部におけるシール性が確保されている。
【0008】
以上のような従来技術によって、側構体51と屋根構体56とを接合した場合、シール材61は、経年劣化による補修を要するため、メンテナンスに多大な費用がかかるという問題がある。また、シール材61や、スポット溶接の圧痕は、鉄道車両の側面53aに位置するため、例えば駅のホームにいる鉄道の利用客が、鉄道車両の側方斜め下側から(図16中の左下側から)視認することが可能であり、美観に問題がある。
【0009】
これらの問題を解決するため、特許文献1に開示される側構体1および屋根構体3の構造を用いることが提案されている。なお、特許文献1に関する説明においては、符号は特許文献1に記載の符号を用いて説明する。
【0010】
特許文献1に開示される側構体1の外板2は、上部の屋根構体3側に湾曲した湾曲部4と、湾曲部4からそれより低い屋根構体3の垂木6の下面位置までに立ち下がる立下り壁7と、この立下り壁7の下端から屋根構体3の垂木6を下方より受ける接続フランジ8と、を備えている。これに対し、屋根構体3は、垂木6の下面に接続フランジ8が接続されるとともに、屋根構体3の外板9が備える立下り壁7に沿う上向きの接続フランジ10が、立下り壁7に接続されることで、側構体1に接合されている。そして、側構体1の外板2の立下り壁7と屋根構体3の外板9とがなす段差により、雨どい5が形成されている。接続フランジ10と立下り壁7との接合には、接続フランジ10の上端部と立下り壁7外面との間を連続に溶接して行うこと好適である旨が開示されており、これにより、側構体1と屋根構体3の接合部におけるシール性が確保されている。
【0011】
特許文献1に開示されるように側構体1と屋根構体3とを接合した場合、シール材を用いずに、溶接によりシール性を確保しているため、上記したシール材の修繕に多大な経費がかかるという問題が解消される。また、屋根構体3の外板9は、側構体1の外板2の立下り壁7に接合されるため、この接合部は、鉄道車両の側方斜め下側からからは隠れた位置となり、例えば駅のホームにいる鉄道の利用客に視認されることがない。よって、上記した美観の問題が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009-143447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
屋根構体を側構体に接合する際、側構体の枕木方向の位置は製造公差によるばらつきがあるため、屋根構体の接合位置を枕木方向に調整する必要がある。しかし、特許文献1に開示される屋根構体3は、立下り壁7によって枕木方向の両側から挟まれたような状態で支持されているため、屋根構体3の接合位置を、枕木方向に調整することが困難であるという問題がある。また、屋根構体3の接合位置の調整が困難であるが故に、屋根構体3の接合位置が不適切な状態(例えば、屋根構体3の外板9の接続フランジ10と、側構体1の外板2の立下り壁7との間に微小な隙間が生じた状態)で、屋根構体3と側構体1とが溶接により接合される場合がある。このような接合は、溶接品質の低下を招き、側構体1と屋根構体3の接合部におけるシール性が低下するおそれがある。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、枕木方向における屋根構体の接合位置の調整が容易な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両の製造方法は、次のような構成を有している。
(1)台枠と、前記台枠の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体と、前記台枠の軌道方向の両端部に接合される一対の妻構体と、前記一対の側構体および前記一対の妻構体の上端に接合される屋根構体と、を備える鉄道車両を製造するための鉄道車両の製造方法において、前記台枠の枕木方向両端部の内の一端に前記一対の側構体の内の一方の第1側構体を立設させ、他端に前記一対の側構体の内の他方の第2側構体を立設させ、長さを調整可能な拘束梁を、前記第1側構体の前記台枠とは反対側の端部である第1上端部と、前記第2側構体の前記台枠とは反対側の端部である第2上端部との間で、枕木方向に横架させ、前記拘束梁の長さを調整することで、前記第1上端部と前記第2上端部の間隔を所定の間隔に調整し、前記屋根構体を、前記第1上端部と前記第2上端部に設置し、接合すること、前記拘束梁は、軌道方向に、複数本設けられ、別個に長さ調整可能であること、前記屋根構体は、枕木方向に延在して前記一対の側構体を横架する垂木と、前記垂木に鉄道車両の内側から支持されて鉄道車両の屋根面を形成する屋根外板と、からなること、前記屋根外板は、前記垂木よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に又は前記垂木の延長線上に、突出する突出部を備えていること、前記第1上端部および前記第2上端部には、それぞれ、前記突出部と平行な面で形成された受け部が設けられていること、前記第1側構体および前記第2側構体は、前記受け部が前記突出部を下方から支持することで、前記屋根構体を支持すること、を特徴とする。
【0016】
従来、鉄道車両の製造にあたり、台枠に対して、単に第1側構体と第2側構体を立設させたのでは、製造公差により、鉄道車両の車幅寸法が、車両限界を超える等、設計通りにならないおそれがあった。この点、(1)に記載の鉄道車両の製造方法は、台枠の枕木方向両端部の内の一端に第1側構体を立設させ、他端に第2側構体を立設させ、長さを調整可能な拘束梁を、第1側構体の第1上端部と、第2側構体の第2上端部との間で、枕木方向に横架させ、拘束梁の長さを調整することで、第1上端部と第2上端部の間隔を所定の間隔に調整し、屋根構体を、第1上端部と第2上端部に設置し、接合すること、拘束梁は、軌道方向に、複数本設けられ、別個に長さ調整可能であることを特徴とするので、拘束梁の長さ調整により、鉄道車両の車幅寸法を設計通りにすることができる。なお、所定の間隔とは、車両限界を考慮して定められた鉄道車両の車幅寸法を得るために必要な第1上端部と第2上端部の間隔である。
【0017】
ここで、屋根構体が、特許文献1に開示される屋根構体3のように枕木方向の両側から挟まれて支持されるものである場合、屋根構体3の接続フランジ10を、軌道方向において曲げ角度を一律にすることは困難であるため、接続フランジ10と側構体1の立下り壁7とを、軌道方向において、全面で接触させるためには、接続フランジ10と立下り壁7との間に隙間が出来ている箇所の近傍において、拘束梁により側構体を無理に変形させなければならない等、接合位置の調整が困難である。この点、(1)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、屋根外板は、垂木よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に又は垂木の延長線上に、突出する突出部を備えている。また、第1側構体の第1上端部および第2側構体の第2上端部には、それぞれ、突出部と平行な面で形成された受け部が設けられている。そして、第1側構体および第2側構体は、受け部が突出部を下方から支持することで、屋根構体を支持する。つまり、第1側構体および第2側構体は、受け部の上に突出部が載せられることで、屋根構体を支持することとなるが、突出部は、水平に又は垂木の延長線上に突出するものであり、これを支持する受け部は、突出部と平行であるため、屋根構体の枕木方向における接合位置の調整代を大きくすることができる。よって、拘束梁により側構体を無理に変形させる必要も無く、枕木方向における接合位置の調整が容易となる。
【0018】
(2)(1)に記載の鉄道車両の製造方法において、第1側構体および第2側構体は、台枠に立設されて鉄道車両の上下方向に延在する縦骨と、前記縦骨に鉄道車両の内側から支持されて鉄道車両の側面を形成する側外板と、からなること、前記側外板は、前記縦骨の前記台枠の側とは反対側の先端部よりも上方へ突出する第3上端部を有し、前記第3上端部で前記側外板が湾曲されて前記屋根構体側に向かって立ち下がる立下り面が形成され、前記立下り面の下端部で前記側外板が前記屋根構体側に向かって湾曲されて前記突出部と平行で、かつ、前記先端部により下方から支持される前記受け部がフランジ状に形成され、前記第3上端部と、前記受け部との段差により雨樋が形成されていること、前記側構体と前記屋根構体との接合は、前記突出部と前記受け部とが、鉄道車両の軌道方向に沿って連続溶接されることで行われること、を特徴とする。
【0019】
(2)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、突出部を支持する受け部は、縦骨の先端部により下方から支持されるため、屋根構体の質量を十分に支えることが可能である。また、側構体と屋根構体との接合は、突出部と受け部とが、鉄道車両の軌道方向に沿って連続溶接されることで行われる。連続溶接により側構体と屋根構体との接合が行われることで、図16に示す従来技術に係る鉄道車両のようにシール材を用いることなく、側構体と屋根構体の接合部におけるシール性を確保することが可能である。シール材を用いないことで、シール材の経年劣化による補修は必要なく、修繕費用を抑えることが可能である。また、上記の通り屋根構体の枕木方向における接合位置の調整が容易であるため、屋根構体の接合位置の調整が不十分な状態で屋根構体と側構体とが接合されて溶接品質が低下することを防止することが出来る。側構体と屋根構体の接合部におけるシール性は、溶接により確保するものであるため、溶接品質の低下を防止することが出来れば、側構体と屋根構体の接合部におけるシール性の低下を防ぐことも可能である。
【0020】
さらにまた、側外板には、第3上端部が湾曲されることで、屋根構体側に向かう立下り面が形成され、立下り面の下端部が湾曲されることで、さらに屋根構体側に向かう、フランジ部が形成されている。つまり、フランジ部は、側外板の第3上端部よりも下方で、かつ屋根構体側に位置するものである。このようなフランジ部が屋根外板と接合されるため、この接合部は、鉄道車両の側方斜め下側からは隠れた位置となり、例えば駅のホームにいる鉄道の利用客に視認されることがない。よって、美観の確保が可能である。
【0021】
(3)(2)に記載の鉄道車両の製造方法において、前記縦骨は、前記垂木を下方から支持する垂木受を備えること、を特徴とする。
【0022】
(3)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、側構体の縦骨は、垂木を下方から支持する垂木受を備えるため、側構体は、受け部のみでなく、垂木受によっても、屋根構体を支持することが可能である。屋根構体を、側構体の上端に載せた状態で、枕木方向の接合位置の調整を行う場合、受け部のみでなく、垂木受によっても支持することで、屋根構体の質量が分散され、接合位置の調整が容易となる。また、垂木受と垂木を、溶接等により接合することとすれば、側構体と屋根構体の接合がより強固となる。
【0023】
(4)(2)に記載の鉄道車両の製造方法において、前記屋根構体は、前記垂木の枕木方向の両端部に軌道方向に延在し、前記突出部を補強する桁材を備えること、前記受け部は、前記桁材を介して、前記突出部を支持すること、を特徴とする。
【0024】
(4)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、桁材により突出部が補強されるため、突出部の撓みが抑えられ、突出部と受け部との接合を確実に行うことが可能である。これより、側構体と屋根構体の接合部におけるシール性をより確実に確保可能となる。
【0025】
(5)(2)乃至(4)のいずれか1つに記載の鉄道車両の製造方法において、前記縦骨の前記先端部は、鉄道車両の軌道方向に沿って延在する横骨を介して、前記受け部を下方から支持すること、を特徴とする。
【0026】
(5)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、側構体と屋根構体の接合部におけるシール性をより確実に確保可能となる。詳しく説明すると、縦骨は、所定の間隔(例えば1mの間隔)を持って、軌道方向に複数並べられることが一般的である。そこで、縦骨の先端部が、鉄道車両の軌道方向に沿って延在する横骨を介して、側構体の受け部を下方から支持することで、軌道方向に並ぶ縦骨と縦骨の間においても、横骨が受け部を下方から支持することとなる。これにより、縦骨と縦骨の間において、受け部が下方に撓んでしまうことを防止することが出来る。したがって、縦骨と縦骨の間においても、受け部は、屋根外板の突出部を下方から確実に支持することが可能であり、受け部と突出部との、軌道方向に沿った連続溶接を確実に行うことが可能である。連続溶接を確実に行うことが可能であれば、側構体と屋根構体の接合部におけるシール性を確保可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の鉄道車両の製造方法によれば、枕木方向における屋根構体の接合位置の調整が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】鉄道車両の側面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図2の部分Xの部分拡大図である。
図4】鉄道車両を製造する工程について説明する模式図である。
図5】鉄道車両を製造する工程について説明する模式図である。
図6】鉄道車両を製造する工程について説明する模式図である。
図7】鉄道車両を製造する工程について説明する模式図である。
図8】鉄道車両を製造する工程について説明する模式図である。
図9図6に示される状態を斜視図で表した図である
図10図7における、側構体の上端部近傍の拡大図である。
図11】第2の実施形態に係る鉄道車両を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
図12】第3の実施形態に係る鉄道車両を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
図13】第4の実施形態に係る鉄道車両102を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
図14】第5の実施形態に係る鉄道車両103を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
図15】第6の実施形態に係る鉄道車両104を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
図16】従来技術に係る側構体と屋根構体の構成の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る鉄道車両の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
[鉄道車両の構成について]
まず、本実施形態に係る鉄道車両の製造方法により製造される鉄道車両1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、一部を部分断面図として、鉄道車両1の内部(例えば客室)側から見た側構体22の構造の一部を図示している。
【0031】
鉄道車両1は、軌道43上を走行する、例えば通勤車両であり、図1に示すように、車両構体2と、枕ばね35を介して車両構体2を支持する台車34と、により構成される。なお、鉄道車両1としては、通勤車両に限定されるものではなく、特急車両等でも良い。
【0032】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の連結部を形成する一対の切妻構体24(妻構体の一例)と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の側面2aを形成する一対の側構体22A,22Bと、切妻構体24および側構体22の上端部に接合されることで、鉄道車両1の屋根面2bを形成する屋根構体23と、により6面体をなすように構成される。なお、図1においては、一対の側構体22A,22Bの内、側構体22Bのみが見えている状態であり、部分断面図において、客室内部側から見た側構体22Aを示す。
【0033】
また、車両構体2には、側面2aの上端部が屋根面2bに向かって緩やかに湾曲されることで、側屋根2c(図2参照)が形成されている。さらにまた、車両構体2には、内部の客室に通じる乗客乗降口41および窓42が設けられている。なお、本実施形態における鉄道車両1は、軌道方向の両端部に連結部が形成される中間車両であるが、これに限定されるものではなく、先頭車両であっても良い。先頭車両である場合には、台枠21の軌道方向の両端部の内の一方に、鉄道車両1の先頭部を形成する先頭妻構体が立設され、他方の端部に、鉄道車両1の連結部を形成する切妻構体24が立設される。
【0034】
次に 屋根構体23および側構体22A,22Bの構造について、図2および図3を用いて説明する。図2は、図1のA-A断面図である。図3は、図2の部分Xの部分拡大図である。なお、図2および図3は、鉄道車両1の枕木方向の両端部のうち、一方の端部(側構体22A側の端部)を図示したものであるが、他方の端部(側構体22B側の端部)においても同様の構成である。
【0035】
屋根構体23は、垂木25と、屋根外板26と、桁材30と、からなる。垂木25は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属により、枕木方向の中央部が上方に膨出したアーチ状に形成されており、鉄道車両1の枕木方向に沿って延在することで、一対の側構体22A,22Bを横架している。この垂木25は、鉄道車両1の軌道方向に所定の間隔(例えば1mの間隔)を持って、複数本設けられている。
【0036】
屋根外板26は、ステンレス鋼などによる、板厚が0.6~2.5mm程度の板材を用いて、鉄道車両1の軌道方向に沿って長尺に形成されたものであり、鉄道車両1の外側の表面である屋根面2bを形成している。この屋根外板26は、枕木方向に切断した断面が、垂木25の形状に沿ったアーチ状に形成されており、垂木25に鉄道車両1の内側から支持されている。また、屋根外板26は、枕木方向の端部に、垂木25よりも、枕木方向の外方に向かって水平に突出する突出部261を備えている。この突出部261は、屋根外板26の軌道方向の全長に渡って形成されている。また、突出部261の下面は水平面となっており、後述する縦骨27に支持される面である。
【0037】
桁材30は、ステンレス鋼などにより、鉄道車両1の軌道方向に沿って長尺に形成された部材である。桁材30は、垂木25に接合される第1接続片301と、屋根外板26に接合される第2接続片302と、を有しており、この第1接続片301と第2接続片302とが段差を有するように形成されることで、桁材30の枕木方向に切断した断面は略Z字状となっている。
【0038】
第1接続片301が、垂木25の鉄道車両1内方の面(内面251)に、例えばスポット溶接により接合されるとともに、第2接続片302が、屋根外板26の突出部261の鉄道車両1内側の面に、例えばスポット溶接により接合される。これにより、桁材30は、屋根外板26の突出部261を補強している。
【0039】
側構体22Aは、縦骨27と、側外板28と、横骨29A,29B,29Cと、からなる。縦骨27は、台枠21(図1参照)の枕木方向の端部に立設されて鉄道車両1の上下方向に沿って延在するとともに、軌道方向に所定の間隔(例えば1mの間隔)を持って、複数本設けられることで、側外板28を鉄道車両1の内側から支持している。
【0040】
縦骨27は、第1骨部材271と、第2骨部材272と、繋ぎ金273と、からなる。第1骨部材271は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材を、断面ハット状に形成したものである。図2中下方の下端(不図示)が台枠21(図1参照)に接合されており、側外板28が形成する側面2aを鉄道車両1の内側から支えるために、側面2aに沿うようにして、台枠21に対して略直角に立設されている。
【0041】
第2骨部材272は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材を、断面ハット状に形成したものである。この第2骨部材272は、側外板28が形成する側屋根2cを鉄道車両1の内側から支えるために、側屋根2cに沿うようにして、第1骨部材271に対して角度を持った状態で配置される。
【0042】
第2骨部材272の上端部には、平板275が接合されることで、後述する側外板28のフランジ部286(受け部の一例)と平行な支持部272a(先端部の一例)が設けられている。この支持部272aは、フランジ部286を下方から支持するとともに、例えばスポット溶接によりフランジ部286と接合されている。
【0043】
第2骨部材272は、鉄道車両1の内側に面する内面272bが、屋根構体23に向かって延伸されることで、一体的に垂木受274が設けられている。垂木受274は、垂木25の枕木方向の端部を、桁材30を介して、下方から支持している。さらに、垂木受274には、垂木25側の面とその反対側の面とを貫通する丸穴274aが設けられており、この丸穴274aを利用して、栓溶接またはリング溶接により、垂木受274と桁材30とを接合する。なお、垂木25の鉄道車両1の軌道方向における位置は、縦骨27の鉄道車両1の軌道方向における位置と、一致していても良いし、一致していなくても良い。一致していない場合でも、桁材30は軌道方向に長尺に形成されているため、垂木受274は、桁材30に接合されることで、桁材30を介して垂木25を支持することが可能である。
【0044】
繋ぎ金273は、第1骨部材271と第2骨部材272とを連結するための部材である。この繋ぎ金273は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材から断面コの字状に形成されており、第1骨部材271の上端部および第2骨部材272を、それぞれ軌道方向の両側から挟むように位置された上、スポット溶接、あるいはアーク溶接等により、第1骨部材271および第2骨部材272のそれぞれに接合されている。このように、繋ぎ金273によって、第1骨部材271と第2骨部材272とが連結されることで、第1骨部材271または第2骨部材272のいずれか一方に荷重が負荷された場合も、縦骨27全体でその荷重を受けることが可能となる。なお、縦骨としては、繋ぎ金273を用いずに、第1骨部材271と第2骨部材272とが一体として形成されたものを用いることとしても良い。
【0045】
側外板28は、ステンレス鋼等からなる、板厚1.0~2.5mmの板材であり、鉄道車両1の外側の表面である鉄道車両1の側面2aおよび側屋根2cを形成している。
【0046】
側外板28には、縦骨27の第1骨部材271と平行で、鉄道車両1の側面2aを形成する垂直部281が形成されている。この垂直部281は、横骨29Aを介して、縦骨27(第1骨部材271)に、鉄道車両1の内側から支持されている。
【0047】
さらに、側外板28には、垂直部281の上端が第1湾曲部282によって鉄道車両1の内側に向かって湾曲されることで、第2骨部材272と平行で、かつ
縦骨27(第2骨部材272)の支持部272aよりも上方に突出する位置まで延伸する傾斜部283が形成されている。この傾斜部283は、横骨29B,29Cを介して、縦骨27(第2骨部材272)に、鉄道車両1の内側から支持されており、鉄道車両1の側屋根2cを形成している。
【0048】
さらに、側外板28には、傾斜部283の支持部272aよりも上方に突出した上端が、第2湾曲部284(第3上端部の一例)によって湾曲されることで、屋根構体23側に向かって立ち下がる立下り面285が形成されている。
【0049】
さらに、側外板28には、立下り面285の下端部が湾曲されることで、さらに屋根構体23側に向かう、屋根構体23の突出部261と平行なフランジ部286が形成されている。このフランジ部286は、突出部261を下方から支持している。そして、溶接部32(図3参照)として示すように、突出部261の先端部が、アーク溶接や、TIG溶接、MIG溶接などにより、フランジ部286に接合される。この溶接は、鉄道車両1の軌道方向に沿って行われる連続溶接であり、突出部261は、突出部261の軌道方向の全長において、フランジ部286と接合される。なお、突出部261を支持するフランジ部286は、縦骨27の支持部272aにより下方から支持されていることに加え、既に述べたように縦骨27の垂木受274が屋根構体23の垂木25を下方から支持しているため、屋根構体23の質量は、主に縦骨27によって支持される。
【0050】
また、側外板28は、第2湾曲部284とフランジ部286との段差により形成される雨樋31を備えており、立下り面285によって、屋根構体23に降った雨を受けることが可能となっている。上記した通り、突出部261は、突出部261の軌道方向の全長において、連続溶接によってフランジ部286に接合されているため、突出部261とフランジ部286との間のシール性が確保されている。よって、雨樋31に溜まった雨水が突出部261とフランジ部286との間から、車両構体2の内部に侵入することがない。
【0051】
横骨29A,29B,29Cは、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材により、断面ハット状にかつ、鉄道車両1の軌道方向に沿って長尺に形成されている。この横骨29A,29B,29Cは、側外板28の鉄道車両1の内側の面に接合されており、側外板28は、横骨29A,29B,29Cを介して、縦骨27に接合および支持されている。具体的には、側外板28の垂直部281は、横骨29Aを介して、縦骨27の第1骨部材271に接合および支持され、側外板28の傾斜部283は、横骨29B,29Cを介して、縦骨27の第2骨部材272に接合および支持されている。
【0052】
[鉄道車両の製造方法について]
以上のような構成の鉄道車両1を製造する工程について、図4図10を用いて説明する。図4図8は、鉄道車両1を製造する工程について説明する模式図である。なお、図4図8においては、左右方向が枕木方向であり、奥行方向が軌道方向である。図9は、図6に示される状態を斜視図で表した図である。なお、図9においては、拘束梁6が軌道方向に並ぶ様子を図示するために、台枠21の一部および側構体22Bを省略して図示している。図10は、図7における、側構体22Aの上端部221A近傍の拡大図である。なお、図10では、側構体22Aの上端部221近傍のみを図示しているが、側構体22Bの上端部221B近傍も同様である。
【0053】
まず、図4に示すように、鉄道車両1を製造するための工場等の床4に設置された支持台5の上に、台枠21を設置する。次に、台枠21の枕木方向両端部に側構体22A,22Bを立設させる。具体的には、図5に示すように、台枠21の枕木方向両端部の内の、一端(図5中の左端)に側構体22A(第1側構体の一例)を立設させ、他端(図5中の右端)に側構体22B(第2側構体の一例)を立設させる。この時点で、側構体22A,22Bは、台枠21に完全に固定された状態ではなく、チェーンブロック等により仮固定された状態である。
【0054】
次に、側構体22Aの台枠21とは反対側の端部(上端部221A)と、側構体22Bの台枠21とは反対側の端部(上端部221B)との間で、拘束梁6を、枕木方向に横架させる。この拘束梁6は、図9に示すように、軌道方向に複数本設けられる。拘束梁6同士のピッチは例えば約2mであるが、これに限定されない。
【0055】
拘束梁6は、図6に示すように、枕木方向の両端部のそれぞれに、把持部6a,6bを備えている。この把持部6a,6bは、上端部221A,221Bにおいて側構体22A,22Bを構成する骨部材を把持する。これにより、側構体22A,22Bの上端部221A,221Bは拘束されている。
【0056】
また、拘束梁6は、枕木方向の長さ調整可能となっている。したがって、立設した一対の側構体22A,22Bの上端部221A,221Bに合わせて仮調整した拘束梁6を横架させた後、拘束梁6の長さ調整をすることで、側構体22A,22Bの、台枠21に接触する下端部が支点となり、上端部221Aと上端部221Bとの間隔D11を拡大または縮小することができる。台枠21に対して、単に側構体22A,22Bを立設させたのでは、製造公差により、鉄道車両1の車幅寸法(枕木方向の寸法)が、車両限界を超える等、設計通りにならないおそれがある。しかし、拘束梁6の長さ調整をし、間隔D11を所定の間隔に調整すれば、鉄道車両1の車幅寸法を設計通りにすることができる。なお、所定の間隔とは、車両限界を考慮して定められた鉄道車両1の車幅寸法を得るための上端部221A,221B同士の間隔である。
【0057】
さらに、軌道方向に複数設けられた拘束梁6のそれぞれが長さ調整可能であるので、拘束梁6を設けたそれぞれの箇所で、側構体22Aの上端部221Aと側構体22Bの上端部221Bとの間隔D11を調整することが可能である。よって、側構体22A,22Bにうねりが生じていたとしても、例えば、うねりの強い部分における拘束梁6による調整代を、他の部分の拘束梁6による調整代よりも大きくするなどすれば、鉄道車両1の車幅寸法を、軌道方向全体に渡って設計通りにすることができる。
【0058】
次に、図7に示すように、例えばクレーン等により吊り下げられた屋根構体23を、側構体22A,22Bに対して、上方から近接させていく。このとき、図10に示すように、屋根構体23(屋根外板26)の突出部261を、フランジ部286の上方に位置させるとともに、屋根構体23の垂木25の枕木方向の端部を、側構体22(第2骨部材272)の垂木受274の上方に位置させる。
【0059】
そして、突出部261がフランジ部286に接し、かつ、垂木25が垂木受274に接する位置まで、屋根構体23を側構体22A,22Bに向けて降ろしていき、図8に示すように、側構体22A,22B上に屋根構体23を載置する。そして、屋根構体23の、側構体22A,22B上に載せた位置が、屋根構体23の、側構体22A,22Bに対する接合位置となる。
【0060】
ただし、側構体22A,22Bの枕木方向の位置は製造公差によるばらつきがあるため、屋根構体23を側構体22A,22Bに向けて降ろしていく過程で、屋根構体23の枕木方向の位置調整を行うことで、接合位置の調整を行う必要がある。例えば、図10に示すように、クレーン等により、屋根構体23を、突出部261がフランジ部286に接する直前の位置で保持する。そして、当該位置において、屋根構体23を、枕木方向に位置調整を行ってから、突出部261がフランジ部286に接する位置まで降ろす。突出部261と、これを支持するフランジ部286が水平であるため、位置調整を行った後に、そのまま屋根構体23を降ろしていけば、位置調整で定めた位置のまま、屋根構体23を側構体22A,22B上に載せることが出来る。
【0061】
または、クレーン等により、屋根構体23を、枕木方向に位置調整が可能な程度に突出部261がフランジ部286に接するように吊り上げた状態で、接合位置の調整を行っても良い。突出部261と、これを支持するフランジ部286が水平であるため、突出部261とフランジ部286が接した状態でも、枕木方向の位置調整を容易に行うことが出来る。
【0062】
接合位置の調整可能な範囲は、側構体22A,22Bの枕木方向の位置の製造公差や屋根構体23の枕木方向の長さの製造公差から、突出部261とフランジ部286のオーバーラップ量等を調整することで任意に定められるが、本実施形態においては、理想の接合位置を中心に、枕木方向に約±10mmの範囲で調整可能となっている。
【0063】
屋根構体が、特許文献1に開示される屋根構体3のように枕木方向の両側から挟まれて支持されるものである場合、屋根構体3の接続フランジ10を、軌道方向において曲げ角度を一律にすることは困難であるため、接続フランジ10と側構体1の立下り壁7とを、軌道方向において、全面で接触させるためには、接続フランジ10と立下り壁7との間に隙間が出来ている箇所の近傍において、上記したような拘束梁により側構体1を無理に変形させなければならない等、接合位置の調整が困難である。一方、本実施形態の鉄道車両1によれば、突出部261は、水平に突出するものであり、これを支持するフランジ部286は、突出部261と平行であるため、屋根構体23の枕木方向における接合位置の調整代を大きくすることができる。よって、拘束梁6により側構体を無理に変形させることなく、枕木方向における接合位置の調整が可能である。なお、屋根構体23の接合位置は、上記した枕木方向だけでなく、軌道方向においても調整が行われることとは言うまでもない。
【0064】
屋根構体23を側構体22A,22B上に載せた後、屋根構体23と側構体22A,22Bとの接合を行う。まず、突出部261とフランジ部286との接合を行う。この接合は、図3において、溶接部32として示すように、突出部261の先端部をフランジ部286に溶接することで行う。この溶接は、鉄道車両1の軌道方向に沿って行われる連続溶接であり、突出部261は、突出部261の軌道方向の全長において、フランジ部286と接合される。
【0065】
次に、垂木受274と桁材30の第1接続片301との接合を行う。この接合は、垂木受274に設けられた丸穴274aを利用して、栓溶接またはリング溶接により行う。突出部261とフランジ部286との接合および垂木受274と第1接続片301との接合を行うことで、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合が完了する。
【0066】
なお、上記においては、屋根構体23と切妻構体24との接合について説明していないが、図7に示すように屋根構体23を側構体22A,22Bに近接させる前には、一対の切妻構体24が台枠21の軌道方向両端部に対して立設された状態とされる。そして、屋根構体23を側構体22A,22B上に載せた後、屋根構体23と側構体22A,22Bとを接合する際に、合わせて屋根構体23と切妻構体24とが接合される。そして、台枠21と一対の側構体22、同じく一対の切妻構体24と屋根構体23を所定の寸法に保持した状態で溶接する。溶接後に拘束梁6やチェーンブロック等による仮固定を取り外して構体が完成する。
【0067】
[鉄道車両の第2の実施形態]
本実施形態に係る鉄道車両の製造方法により製造される鉄道車両としては、上に説明した鉄道車両1の構成は一例である。以下に、鉄道車両のその他の実施形態について説明する。まず、鉄道車両の第2の実施形態に係る鉄道車両100について、図11を用い、鉄道車両1と異なる点について説明する。図11は、第2の実施形態に係る鉄道車両を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
【0068】
鉄道車両1においては、縦骨27を構成する第2骨部材272に対して、一体的に垂木受274が設けられていたが(図2および図3参照)、図11に示す鉄道車両100のように、垂木受277を別部材により設けることとしても良い。
【0069】
鉄道車両100における屋根構体23は、鉄道車両1における屋根構体23と同一の構成を有する。また、鉄道車両100における側構体22Aを構成する側外板28は、鉄道車両1における側外板28と同一の構成を有する。
【0070】
鉄道車両100における側構体22Aを構成する縦骨27は、第1骨部材271と、第2骨部材276と、繋ぎ金273と、垂木受277と、からなっている。第1骨部材271は、鉄道車両1における第1骨部材271と同一の部材である。第2骨部材276は、鉄道車両1における第2骨部材272と、垂木受277が別体となっている点を除いて同一の部材である。繋ぎ金273は、第1の実施形態における繋ぎ金273と同一の部材である。
【0071】
垂木受277は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材を、断面が両斜辺と上底とからなる台形状に形成したものである。両斜辺とは、接続片2771、支持片2772であり、接続片2771は垂木受277を繋ぎ金273に接続するために用いられ、支持片2772は垂木25を支持するために用いられる。
【0072】
垂木受277の接続片2771は、繋ぎ金273の鉄道車両100内側の内面273aにスポット溶接あるいはアーク溶接されることで、繋ぎ金273に接続されている。これにより、垂木受277が縦骨27の一部を構成している。なお、本実施形態では垂木受277の接続片2771を繋ぎ金273に接合したが、第2骨部材276に接合してもよい。この場合、垂木受の断面は台形状では無く、く字状になる。
【0073】
垂木受277の支持片2772は、垂木25側の面とその反対側の面とを貫通する丸穴277aが設けられており、この丸穴277aを利用して、栓溶接またはリング溶接により、支持片2772が、屋根構体23の桁材30と接合される。これにより、垂木受277(支持片2772)は、桁材30を介して、垂木25を下方から支持する。
【0074】
以上のような構成の鉄道車両100は、鉄道車両1と同様に、図4図9に示す工程により、製造することが可能である。
【0075】
[鉄道車両の第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る鉄道車両101について、図12を用い、鉄道車両1と異なる点について説明する。図12は、第3の実施形態に係る鉄道車両を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
【0076】
鉄道車両1においては、屋根構体23の突出部261が、垂木25よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に突出するものとされていたが(図2および図3参照)、図12に示す第3の実施形態に係る屋根外板26の突出部261のように、枕木方向の外方に向かって、垂木25の延長線上に突出するものとしても良い。
【0077】
鉄道車両101における屋根構体23を構成する垂木25は、鉄道車両1における垂木25と同一の構成を有する。また、鉄道車両101における屋根構体23を構成する桁材30は、第2接続片302が、垂木25の延長線上(本実施形態では、垂木25端部の接線方向)に突出する突出部261と平行に設けられている点を除き、鉄道車両1における桁材30と同一の構成を有する。
【0078】
鉄道車両101における側構体22Aを構成する側外板28は、フランジ部286が、垂木25の延長線上に突出する突出部261に対して平行に設けられている。この点を除き、鉄道車両1における側外板28と同一の構成を有する。
【0079】
鉄道車両101における側構体22Aを構成する縦骨27は、第2骨部材272の支持部272aが、側外板28のフランジ部286に対して平行に設けられている。つまり、支持部272aは、垂木25の延長線上に突出する突出部261に対して平行に設けられている。この点を除き、鉄道車両1における縦骨27と同一の構成を有する。
【0080】
以上のような構成の鉄道車両101は、鉄道車両1と同様に、図4図9に示す工程により、製造することが可能である。
【0081】
[鉄道車両の第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る鉄道車両102について、図13を用い、鉄道車両1と異なる点について説明する。図13は、第4の実施形態に係る鉄道車両102を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
【0082】
鉄道車両102における、屋根構体23は、鉄道車両101の屋根構体と同一の構成を備えており、その突出部261は、枕木方向の外方に向かって、垂木25の延長線上に突出するものとされている。
【0083】
鉄道車両102における側構体22Aは、側外板45と、側外板45を内面側から支持する縦骨48を備える。縦骨48は、第1骨部材481と、第2骨部材482と、からなる。第1骨部材481は、図13中下方の下端(不図示)が台枠21(図1参照)に接合されており、台枠21に対して略直角に立設されている。
【0084】
第2骨部材482は、第1骨部材481の上端部に接合されている。また、第2骨部材482の上端部には、後述する側外板45のフランジ部473(受け部の一例)と平行な支持部482a(先端部の一例)が設けられている。この支持部482aは、フランジ部473を下方から支持するとともに、例えばスポット溶接によりフランジ部473と接合されている。
【0085】
第2骨部材482は、鉄道車両1の内側に面する内面482bが、屋根構体23に向かって延伸されることで、一体的に垂木受482cが設けられている。垂木受482cは、垂木25の枕木方向の端部を、桁材30を介して、下方から支持している。さらに、垂木受482cには、垂木25側の面とその反対側の面とを貫通する丸穴482dが設けられており、この丸穴482dを利用して、栓溶接またはリング溶接により、垂木受482cと桁材30とを接合する。
【0086】
鉄道車両102における側外板45は、2つの部材により構成されている点が、鉄道車両1および鉄道車両101と異なっている。すなわち、側外板45は、第1板材46と第2板材47とにより形成されている。第1板材46は、鉄道車両102の側面2aを形成する垂直部461を備えている。また、第1板材46には、垂直部461の上端が第1湾曲部462によって鉄道車両1の内側に向かって湾曲されることで、縦骨48(第2骨部材482)の支持部482aよりも上方に突出する位置まで延伸する傾斜部463が形成されている。さらに、第1板材46は、傾斜部463の先が第2湾曲部464(第3上端部の一例)によって湾曲されており、これにより、屋根構体23側に向かう立下がり部465が形成されている。そして、この立下がり部465の曲げ内側の面に、第2板材47が軌道方向の全長において、連続溶接により接合されている。
【0087】
第2板材47は、立下り面471を形成する片部472と、フランジ部473(受け部の一例)とにより断面略L字状に形成されている。立下り面471は、第1板材46の立ち下がり部465の延長線上に形成されている。また、フランジ部473は、突出部261に対して平行に形成され、突出部261を下方から支持している。
【0088】
また、側外板45は、第2湾曲部464とフランジ部473との段差により形成される雨樋49を備えており、立下り面471によって、屋根構体23に降った雨を受けることが可能となっている。突出部261は、突出部261の軌道方向の全長において、連続溶接によってフランジ部473に接合されているため、突出部261とフランジ部473との間のシール性が確保されている。よって、雨樋49に溜まった雨水が突出部261とフランジ部286との間から、車両構体2の内部に侵入することがない。
【0089】
以上のような構成の鉄道車両102は、鉄道車両1と同様に、図4図9に示す工程により、製造することが可能である。なお、鉄道車両102においては、突出部261が、垂木25の延長線上に突出するように形成されているが、鉄道車両1と同様に、水平に形成することとしても良い。この場合には、第2板材47のフランジ部473も、水平に形成される。
【0090】
[鉄道車両の第5の実施形態]
次に、第5の実施形態に係る鉄道車両103について、図14を用い、鉄道車両1と異なる点について説明する。図14は、第5の実施形態に係る鉄道車両103を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
【0091】
上記鉄道車両102においては、側外板45を構成する第2板材47が、第1板材46の立下がり部465の曲げ内側の面に接合されているが、図14に示す鉄道車両103のように、第2板材47を、第1板材46の立下がり部465の曲げ外側の面に接合しても良い。鉄道車両103のその他の構成は、鉄道車両102と同一である。このような鉄道車両103も、鉄道車両1と同様に、図4図9に示す工程により、製造することが可能である。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両の製造方法によれば、
(1)台枠21と、台枠21の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体22A,22Bと、台枠21の軌道方向の両端部に接合される一対の妻構体(切妻構体24,24)と、一対の側構体22A,22Bおよび一対の妻構体(切妻構体24,24)の上端に接合される屋根構体23と、を備える鉄道車両1,100,101,102,103を製造するための鉄道車両の製造方法において、台枠21の枕木方向両端部の内の一端に一対の側構体22A,22Bの内の一方の第1側構体(側構体22A)を立設させ、他端に一対の側構体22A,22Bの内の他方の第2側構体(側構体22B)を立設させ、長さを調整可能な拘束梁6を、第1側構体(側構体22A)の台枠21とは反対側の端部である第1上端部(上端部221A)と、第2側構体(側構体22B)の台枠21とは反対側の端部である第2上端部(上端部221B)との間で、枕木方向に横架させ、拘束梁6の長さを調整することで、第1上端部(上端部221A)と第2上端部(上端部221B)の間隔D11を所定の間隔に調整し、屋根構体23を、第1上端部(上端部221A)と第2上端部(上端部221B)に設置し、接合すること、拘束梁6は、軌道方向に、複数本設けられ、別個に長さ調整可能であること、屋根構体23は、枕木方向に延在して一対の側構体22A,22Bを横架する垂木25と、垂木25に鉄道車両1,100,101,102,103の内側から支持されて鉄道車両1,100,101,102,103の屋根面2bを形成する屋根外板26と、からなること、屋根外板26は、垂木25よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に又は垂木25の延長線上に、突出する突出部261を備えていること、第1上端部(上端部221A)および第2上端部(上端部221B)には、それぞれ、突出部261と平行な面で形成された受け部(フランジ部286,473)が設けられていること、第1側構体(側構体22A)および第2側構体(側構体22B)は、受け部(フランジ部286,473)が突出部261を下方から支持することで、屋根構体23を支持すること、を特徴とする。
【0093】
従来、鉄道車両1,100,101,102,103の製造にあたり、台枠21に対して、単に側構体22Aと側構体22Bを立設させたのでは、製造公差により、鉄道車両1,100,101,102,103の車幅寸法が、車両限界を超える等、設計通りにならないおそれがある。この点、(1)に記載の鉄道車両の製造方法は、台枠21の枕木方向両端部の内の一端に側構体22Aを立設させ、他端に側構体22Bを立設させ、長さを調整可能な拘束梁6を、側構体22Aの上端部221Aと、側構体22Bの上端部221Bとの間で、枕木方向に横架させ、拘束梁6の長さを調整することで、上端部221Aと上端部221Bの間隔D11を所定の間隔に調整し、屋根構体23を、上端部221Aと上端部221Bに設置し、接合すること、拘束梁6は、軌道方向に、複数本設けられ、別個に長さ調整可能であることを特徴とするので、拘束梁6の長さ調整により、鉄道車両1,100,101,102,103の車幅寸法を設計通りにすることができる。なお、所定の間隔とは、車両限界を考慮して定められた鉄道車両1,100,101,102,103の車幅寸法を得るために必要な上端部221Aと上端部221Aの間隔である。
【0094】
ここで、屋根構体23が、特許文献1に開示される屋根構体3のように枕木方向の両側から挟まれて支持されるものである場合、屋根構体3の接続フランジ10を、軌道方向において曲げ角度を一律にすることは困難であるため、接続フランジ10と側構体1の立下り壁7とを、軌道方向において、全面で接触させるためには、接続フランジ10と立下り壁7との間に隙間が出来ている箇所の近傍において、拘束梁により側構体を無理に変形させなければならない等、接合位置の調整が困難である。この点、(1)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、屋根外板26は、垂木25よりも、枕木方向の外方に向かって、水平に又は垂木25の延長線上に、突出する突出部261を備えている。また、側構体22Aの上端部221Aおよび側構体22Bの上端部221Bには、それぞれ、突出部261と平行な面で形成された受け部が設けられている。そして、第1側構体および第2側構体は、フランジ部286,473が突出部261を下方から支持することで、屋根構体23を支持する。つまり、側構体22Aおよび側構体22Bは、フランジ部286,473の上に突出部261が載せられることで、屋根構体23を支持することとなるが、突出部261は、水平に又は垂木25の延長線上に突出するものであり、これを支持するフランジ部286,473は、突出部261と平行であるため、屋根構体23の枕木方向における接合位置の調整代を大きくすることができる。よって、拘束梁6により側構体22A,22Bを無理に変形させる必要も無く、枕木方向における接合位置の調整が容易となる。
【0095】
(2)(1)に記載の鉄道車両1,100,101,102,103の製造方法において、第1側構体(側構体22A)および第2側構体(側構体22B)は、台枠21に立設されて鉄道車両1,100,101,102,103の上下方向に延在する縦骨27,48と、縦骨27,48に鉄道車両1,100,101,102,103の内側から支持されて鉄道車両1,100,101,102,103の側面2aを形成する側外板28,45と、からなること、側外板28,45は、縦骨27,48の台枠21の側とは反対側の先端部(支持部272a,482a)よりも上方へ突出する第3上端部(第2湾曲部284,464)を有し、第3上端部(第2湾曲部284,464)で側外板28,45が湾曲されて屋根構体23側に向かって立ち下がる立下り面285,471が形成され、立下り面285,471の下端部で側外板28,45が屋根構体23側に向かって湾曲されて突出部261と平行で、かつ、先端部(支持部272a,482a)により下方から支持される受け部(フランジ部286,473)がフランジ状に形成され、第3上端部(第2湾曲部284,464)と、受け部(フランジ部286,473)との段差により雨樋31,49が形成されていること、側構体22A,22Bと屋根構体23との接合は、突出部261と受け部(フランジ部286,473)とが、鉄道車両1,100,101,102,103の軌道方向に沿って連続溶接されることで行われること、を特徴とする。
【0096】
(2)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、突出部261を支持するフランジ部286,473は、縦骨27,48の支持部272a,482aにより下方から支持されるため、屋根構体23の質量を十分に支えることが可能である。また、側構体22A,22Bと屋根構体23との接合は、突出部261とフランジ部286,473とが、鉄道車両1,100,101,102,103の軌道方向に沿って連続溶接されることで行われる。連続溶接により側構体22A,22Bと屋根構体23との接合が行われることで、図16に示す従来技術に係る鉄道車両のようにシール材61を用いることなく、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合部におけるシール性を確保することが可能である。シール材61を用いないことで、シール材61の経年劣化による補修は必要なく、修繕費用を抑えることが可能である。また、上記の通り屋根構体23の枕木方向における接合位置の調整が容易であるため、屋根構体23の接合位置の調整が不十分な状態で屋根構体23と側構体22A,22Bとが接合されて溶接品質が低下することを防止することが出来る。側構体22A,22Bと屋根構体23の接合部(溶接部32)におけるシール性は、溶接により確保するものであるため、溶接品質の低下を防止することが出来れば、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合部におけるシール性の低下を防ぐことも可能である。
【0097】
さらにまた、側外板28,45には、第3上端部(第2湾曲部284,464)が湾曲されることで、屋根構体23側に向かう立下り面285,471が形成され、立下り面285,471の下端部が湾曲されることで、さらに屋根構体23側に向かう、フランジ部286,473が形成されている。つまり、フランジ部286,473は、側外板28,45の第3上端部(第2湾曲部284,464)よりも下方で、かつ屋根構体23側に位置するものである。このようなフランジ部286,473が屋根外板26と接合されるため、この接合部(溶接部32)は、鉄道車両1,100,101,102,103の側方斜め下側からは隠れた位置となり、例えば駅のホームにいる鉄道の利用客に視認されることがない。よって、美観の確保が可能である。
【0098】
(3)(2)に記載の鉄道車両の製造方法において、縦骨27,48は、垂木25を下方から支持する垂木受274,277,482cを備えること、を特徴とする。
【0099】
(3)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、側構体22A,22Bの縦骨27,48は、垂木25を下方から支持する垂木受274,277,482cを備えるため、側構体22A,22Bは、フランジ部286,473のみでなく、垂木受274,277,482cによっても、屋根構体23を支持することが可能である。屋根構体23を、側構体22A,22Bの上端に載せた状態で、枕木方向の接合位置の調整を行う場合、フランジ部286,473のみでなく、垂木受274,277,482cによっても支持することで、屋根構体23の質量が分散され、接合位置の調整が容易となる。また、垂木受274,277,482cと垂木25を、溶接等により接合することとすれば、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合がより強固となる。
【0100】
(4)(2)に記載の鉄道車両の製造方法において、屋根構体23は、垂木25の枕木方向の両端部に軌道方向に延在し、突出部261を補強する桁材30を備えること、受け部(フランジ部286,473)は、桁材30を介して、突出部261を支持すること、を特徴とする。
【0101】
(4)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、桁材30により突出部261が補強されるため、突出部261の撓みが抑えられ、突出部261とフランジ部286,473との接合を確実に行うことが可能である。これより、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合部におけるシール性をより確実に確保可能となる。
【0102】
[鉄道車両の第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る鉄道車両104について、図15を用い、鉄道車両1と異なる点について説明する。図15は、第6の実施形態に係る鉄道車両104を説明する図であり、図2に対応する断面図である。
【0103】
鉄道車両1においては、縦骨27が、第2骨部材272に設けられた支持部272aによって、直接、側外板28のフランジ部286を支持していたが(図2および図3参照)、図15に示す鉄道車両104のように、縦骨27が、鉄道車両の軌道方向に沿って延在する横骨33を介して、側外板28のフランジ部286を支持することとしても良い。
【0104】
鉄道車両104における屋根構体23は、鉄道車両1における屋根構体23と同一の構成を有する。
【0105】
鉄道車両104における側構体22Aを構成する側外板28は、横骨33を配置するスペースを確保するため、フランジ部286の上下方向の位置が、鉄道車両1における位置よりも高い位置にあり、第2湾曲部284とフランジ部286の段差が鉄道車両1における段差よりも浅くされている。また、フランジ部286の下面には、横骨33が接合されている。横骨33は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材により、断面ハット状にかつ、鉄道車両104の軌道方向に沿って長尺に形成されている。鉄道車両104における側構体22Aを構成する側外板28は、上に説明した点を除いて、鉄道車両1における側外板28と同一の構成を有する。
【0106】
鉄道車両104における側構体22Aを構成する縦骨27は、第2骨部材272に設けられている支持部272aの上下方向の位置が、横骨33を配置するスペースを確保するため、鉄道車両1における支持部272aの位置よりも低くされている。この点を除いて、鉄道車両1における縦骨27と同一の構成を有する。
【0107】
縦骨27の支持部272aは、横骨33を介して、側外板28のフランジ部286を下方から支持する。横骨33は軌道方向に延在する長尺状の部材であるため、軌道方向に所定の間隔を持って複数設けられる縦骨27の全てが、1本の横骨33を介してフランジ部286を支持する。
【0108】
以上のような構成の鉄道車両104は、鉄道車両1と同様に、図4図9に示す工程により、製造することが可能である。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両の製造方法によれば、
(5)(2)乃至(4)のいずれか1つに記載の鉄道車両の製造方法において、縦骨27の先端部(支持部272a)は、鉄道車両の軌道方向に沿って延在する横骨33を介して、受け部(フランジ部286)を下方から支持すること、を特徴とする。
【0110】
(5)に記載の鉄道車両の製造方法によれば、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合部におけるシール性をより確実に確保可能となる。詳しく説明すると、縦骨27は、所定の間隔(例えば1mの間隔)を持って、軌道方向に複数並べられることが一般的である。そこで、縦骨27の先端部(支持部272a)が、鉄道車両104の軌道方向に沿って延在する横骨33を介して、側構体22A,22Bの受け部(フランジ部286)を下方から支持することで、軌道方向に並ぶ縦骨27と縦骨27の間においても、横骨33が受け部(フランジ部286)を下方から支持することとなる。これにより、縦骨27と縦骨27の間において、受け部(フランジ部286)が下方に撓んでしまうことを防止することが出来る。したがって、縦骨27と縦骨27の間においても、受け部(フランジ部286)は、屋根外板26の突出部261を下方から確実に支持することが可能であり、受け部(フランジ部286)と突出部261との、軌道方向に沿った連続溶接を確実に行うことが可能である。連続溶接を確実に行うことが可能であれば、側構体22A,22Bと屋根構体23の接合部におけるシール性を確保可能となる。
【0111】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、第3の実施形態および第4の実施形態においても、第2の実施形態に示すように、垂木受を別部材により設けることとしても良い。また、垂木受に設ける貫通孔は、丸穴に限らず楕円形の穴や長穴であっても良い。
【符号の説明】
【0112】
1 鉄道車両
2a 側面
2b 屋根面
21 台枠
22 側構体
23 屋根構体
25 垂木
26 屋根外板
27 縦骨
28 側外板
31 雨樋
261 突出部
272a 支持部(先端部の一例)
284 第2湾曲部(第3上端部の一例)
285 立下り面
286 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16