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▶ ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプリゼンテッド・バイ・ザ・セクレタリー・デパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービシーズの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106591
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】既存の微生物免疫を利用した癌処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/245 20060101AFI20230725BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230725BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20230725BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20230725BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20230725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
A61K39/245
A61K35/76 ZNA
A61K48/00
A61P35/00
A61K9/08
A61P37/02
C12N15/38
C12N15/86 Z
C12N7/01
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090523
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2020524774の分割
【原出願日】2018-11-06
(31)【優先権主張番号】62/582,097
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515037612
【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプリゼンテッド・バイ・ザ・セクレタリー・デパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ティ・スキラー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・クブル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・アール・ローウィ
(57)【要約】
【課題】個体において癌を軽減または安定化するための、該個体において既存の免疫応答を動員するための方法、組成物およびキットを提供する。
【解決手段】個体において固形腫瘍を処置するための、サイトメガロウイルス(CMV)タンパク質由来の少なくとも1つのMHC II制限ペプチド及び免疫応答を増強する薬剤を含む医薬組成物であって、ここで、前記CMVタンパク質は、pp65、gB、IE-1、gH、及びgLからなる群から選択され、前記ペプチドは天然の既存の免疫応答を腫瘍部位に動員し、それにより腫瘍を処置するものであり、かつ前記医薬組成物は固形腫瘍への注射用である、前記医薬組成物。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において固形腫瘍を処置するためのサイトメガロウイルス(CMV)タンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む抗原を含む医薬組成物であって、ここで、該抗原が配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCMV pp65抗原を含み、該抗原が天然の既存の免疫応答を腫瘍部位に動員し、それにより腫瘍を処置するものであり、かつ該抗原が処置の開始前に腫瘍細胞によって発現されておらず、また該抗原が既存の免疫応答の1以上の構成要素により認識され、かつ該CMVタンパク質に対する既存の免疫応答が以前のCMV感染によるものであり、該個体が以前にCMV抗原を用いてワクチン接種されておらず、かつ該組成物が固形腫瘍への注射用であって、ポリ(I:C)と共投与される、医薬組成物。
【請求項2】
個体に組成物を投与する前に、該個体が抗原に対して既存の免疫応答を有することが確認されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
既存の免疫応答の存在が、個体由来のサンプルにおいて抗原に対するT細胞応答を同定することにより確認されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
抗原が、組成物中の核酸分子にコードされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
核酸分子がDNAである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
核酸分子がRNAである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
RNAが、分解に対してより耐性になるように修飾される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
核酸分子が、ウイルスベクターに含まれている、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
ウイルスベクターが、シュウドビリオンに含まれている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
シュウドビリオンがパピローマウイルスシュウドビリオンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
1以上の構成要素がT細胞である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
既存の免疫応答の動員が、B細胞機能、インターロイキン、TNFスーパーファミリー、抗原プロセシング、MHC、適応免疫、トランスポーター機能、接着、NK細胞機能、T細胞機能、CD分子、白血球機能、補体経路、ミクログリア機能、液性免疫、TLR、炎症、樹状細胞機能、インターフェロン、自然免疫、マクロファージ機能、ケモカインおよび受容体、老化、アポトーシス、サイトカインおよび受容体、癌の進行、基本的な細胞機能、細胞周期、および病原体の反応から選択される癌の微小環境を変化させる、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年11月6日出願の米国仮特許出願第62/582,097号の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、患者の既存の免疫応答を癌に指向させるための方法、組成物およびキットを含む、免疫学および癌治療に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
持続性の無症候性ウイルス感染は、通常、健康な個体では細胞性免疫および/または体液性免疫によって制御されるが、免疫力が低下した個体では再活性化され得る。一部の慢性ウイルス感染に対する細胞性免疫は年齢とともに増加し、多くの完全に機能するウイルス特異的T細胞の誘導につながる。サイトメガロウイルス(CMV)は、世界的に蔓延し(ヒト集団の50~90%が感染しており)、かつ健康な個体ではほとんど無症状である、β-ヘルペスウイルスである。CMVは、生涯にわたる持続的な感染を確立し、発症を阻止するためには永続的な細胞性免疫を必要とする。それゆえに、CMVの再活性化は、免疫抑制において、例えば造血幹細胞移植において、脅威である。免疫適格性の個体では、CMVに対するCD4およびCD8 T細胞応答は、複数のCMV抗原に対して幅広い反応性および高い強度を示し、一般的なヒト集団で高い有病率を示し、年齢とともに増加する(M. Bajwa et al., J Infect Dis 215、1212-20(2017))。記憶T細胞のインフレーション(inflation)は、持続的なCMV感染の特徴であり、ヒトで広く研究されている。CMV特異的CD8+ T細胞応答は、時間とともに拡大する(inflationary)か、一次感染の解消時に静止する(non-inflationary)かによって、2つのタイプに分けられる(G. A. O'Hara, Trends Immunol 33:84-90 (2012))。持続的なCMV感染中の抗原の性質および抗原発現のパターンは、メモリー表現型(非インフレ)またはエフェクター表現型を有するCD8+ T細胞をもたらす。マウスCMV感染はまた、ヒトのCMVに対するものを模倣する免疫応答の誘導により、生涯持続的な感染を確立する(Id)。
【0004】
抗腫瘍T細胞応答の誘導は、癌に対する効果的な免疫療法の開発において最も重要である。現在の免疫療法に反応するのは、一部の癌患者のみである。癌抗原に対するT細胞免疫の産生には、高度に個別化されたアプローチが必要であるか、または既存の抗癌T細胞に依存することが多い。また、癌患者、特に高齢者において強力な新規のT細胞免疫を産生することも困難である。個別化されたアプローチは、腫瘍関連抗原、新規抗原(neoantigen)(すなわち、変異した自己抗原)またはウイルス性癌タンパク質に対するワクチンに依存している。他のアプローチは、キメラ抗原受容体形質導入T細胞の養子移入またはモノクローナル抗体の注入に基づいており、これは腫瘍特異的抗原の困難な同定を必要とし、癌のタイプまたはサブタイプの一部にのみ適用可能である。そして、エクスビボで増殖された腫瘍特異的リンパ球の養子移入は、天然の抗腫瘍応答の利点を採用することを目的とした方法である。これらのアプローチはすべて高度に個別化されており、腫瘍エピトープの同定および/またはエクスビボでの患者の自家細胞の増殖を必要とする。
【0005】
これと並行して、サイトカインまたはTLRリガンドに基づくインサイチュウ腫瘍免疫療法が用いられてきたが、その多くは自然免疫認識機構を標的にして腫瘍の免疫微小環境を変化させ、免疫原性の癌細胞死を誘導し、エピトープ拡散を促進する。
【0006】
従って、簡単で、広く適用可能な、抗原にとらわれない、免疫療法の方法論が、直接的な細胞死およびエピトープの拡散促進を通じて、それぞれ初期および長期の癌制御における免疫系の効果を利用するために依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明者らは、高齢者の慢性ウイルス感染を強力に制御するために長年にわたって展開する複雑な適応性細胞介在免疫が、腫瘍増殖の制御に有効なタイプの細胞介在免疫であることを認識していた。このタイプの抗ウイルス免疫を癌処置に利用するために、本発明者らは、腫瘍指向性パピローマウイルスシュウドビリオンを用いて高機能な既存の抗ウイルスT細胞を腫瘍環境に直接標的化するか、または最小限のウイルスCD8およびCD4 T細胞サイトメガロウイルス(CMV)エピトープのインサイチュウ注入によって、インサイチュウ免疫療法への新しいアプローチを開発した。腫瘍環境におけるウイルスエピトープの提示は、インサイチュウでのウイルス抗原特異的T細胞の動員および活性化をもたらし、結果として、ウイルス陰性の腫瘍細胞を異なる方法で死滅させ、腫瘍微小環境を変化させる。このアプローチは、早期および長期的な癌細胞の死滅およびエピトープの拡散の両方を促進し、確立することにより、免疫療法を成功させるためのすべての基準を満たすため、満たされていないニーズに対応している。
【0008】
従って、本明細書は、癌の部位に既存の免疫応答を動員し、それによって癌を処置することにより、個体の癌を処置する方法を提供する。既存の免疫応答は、癌と診断される前に個体に存在する免疫記憶応答であってもよい。既存の、免疫応答は、天然の既存の免疫応答であり得る。
【0009】
これらの方法では、癌細胞に既存の免疫応答を動員することは、処置の開始前に癌細胞によって発現されていない抗原を癌に導入することを含んでもよく、ここで、該抗原は既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識される。
【0010】
これらの方法は、腫瘍に抗原を導入する前に、個体が抗原に対する既存の免疫応答を有することを確認することを含み得る。これらの方法はまた、抗原に対する個体の既存の免疫応答を評価することを含み得る。これらの方法において、既存の免疫応答の存在を確認することは、個体由来のサンプル中の抗原に対するT細胞の応答を同定することを含み得る。
【0011】
これらの方法では、抗原を導入することは、抗原を癌に注入することを含み得る。さらにまたはあるいは、抗原の導入は、抗原をコードする核酸分子を癌に導入することによって達成され得る。これらの方法では、核酸分子はDNAまたはRNAであり得る。RNAを用いる場合、RNAを分解に対してより耐性であるように改変されてよい。核酸分子は、注射によって癌細胞に導入されてよい。さらにまたはあるいは、核酸分子は、ウイルスベクターまたはパピローマウイルスシュウドビリオンなどのシュウドビリオンを用いて癌に導入されてもよい。
【0012】
これらの方法では、抗原はウイルス抗原であり得る。例えば、抗原は、サイトメガロウイルス(CMV)タンパク質からの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドであってもよく、このペプチドは、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識される。これらの方法において、CMVタンパク質は、pp50、pp65、pp150、IE-1、IE-2、gB、US2、US6、UL16およびUL18からなる群より選択され得る。ポリペプチドは、9-15マーのMHC I制限ペプチドであってもよい。あるいはまたはさらに、ポリペプチドは、少なくとも15マーのMHC II制限ペプチドであってもよい。あるいはまたはさらに、抗原は、配列番号1-67の配列から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む。これらの方法では、免疫応答の1以上の構成要素はT細胞であってもよい。
【0013】
これらの方法では、既存の免疫応答の動員により、癌の微小環境が変化する可能性がある。
【0014】
これらの方法では、抗原は、免疫応答を増強する薬剤と組み合わせて投与することができる。例示的な薬剤としては、TLRアゴニスト;IL-1R8サイトカインアンタゴニスト;静脈内免疫グロブリン(IVIG);グラム陽性菌から単離されたペプチドグリカン;グラム陽性菌から単離されたリポテイコ酸;グラム陽性菌から単離されたリポタンパク質;マイコバクテリアから単離されたリポアラビノマンナン;酵母細胞壁から単離されたザイモサン;ポリアデニル-ポリウリジル酸;ポリ(IC);リポ多糖;モノホスホリルリピドA;フラジェリン;ガーディキモド(Gardiquimod);イミキモド;R848;CpGモチーフ、CD40アゴニストおよび23SリボソームRNAを含むオリゴヌクレオシドから選択される薬剤が挙げられる。例示的な方法において、抗原は、ポリICと組み合わせて投与されてよい。
【0015】
別の側面は、患者を試験し、患者の癌部位に対する既存の免疫応答を動員するためのキットを提供する。これらのキットは、患者における癌の少なくとも1つの症状を軽減するために、少なくとも1つのCMVペプチド抗原または該ペプチドをコードする核酸、薬学的に許容される担体、容器、およびCMVペプチドの投与を示す添付文書またはラベルを含み得る。
【0016】
この概要は、本発明の全範囲および範囲を代表することを意図したものではなく、またそのように解釈されるべきではない。さらに、本明細書で“本開示”またはその側面への言及は、本発明の特定の態様を意味するものと理解されるべきであり、必ずしもすべての態様を特定の記載に限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、添付の図面および態様の説明と同様に、本要約において様々なレベルで詳細に記載されており、本要約における要素、構成要素等の包含または非包含によって、本開示の範囲に関するいかなる制限も意図されていない。本発明のさらなる側面は、詳細な説明から、特に図面と共にとらえると容易に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1-1】図1Aは、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)感染が、mCMVペプチドプールに対して大規模なサイトカイン応答を誘導することを示す。図1Bは、示されたMHC-IおよびMHC-II制限mCMVペプチドでのペプチド再刺激後の脾臓CD4+およびCD8+T細胞によるIFN-γ産生を示す。
図1-2】図1Aは、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)感染が、mCMVペプチドプールに対して大規模なサイトカイン応答を誘導することを示す。図1Bは、示されたMHC-IおよびMHC-II制限mCMVペプチドでのペプチド再刺激後の脾臓CD4+およびCD8+T細胞によるIFN-γ産生を示す。
図2図2Aは、mCMV抗原を発現するHPV Psvを用いた固形腫瘍の腫瘍内導入のための注入プロトコルを示す。図2Bおよび2Cは、それぞれ、m122およびm45を発現するHPV16 Psv、または赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するHPV Psvの腫瘍内注入後の腫瘍体積を示す。
図3-1】図3Aは、ポリ(I:C)(PIC)と組み合わせたmCMV抗原を発現するHPV Psvを有する固体腫瘍の腫瘍内導入のための注入プロトコルを示す。図3B-3Eは、この腫瘍内導入プロトコルが腫瘍増殖を遅らせることを示す。図3Fおよび3Gは、MHC-I四量体染色およびFACSによって分析された、E7-、m45-およびm122-特異的CD8+T細胞による腫瘍の浸潤を示す。
図3-2】図3Aは、ポリ(I:C)(PIC)と組み合わせたmCMV抗原を発現するHPV Psvを有する固体腫瘍の腫瘍内導入のための注入プロトコルを示す。図3B-3Eは、この腫瘍内導入プロトコルが腫瘍増殖を遅らせることを示す。図3Fおよび3Gは、MHC-I四量体染色およびFACSによって分析された、E7-、m45-およびm122-特異的CD8+T細胞による腫瘍の浸潤を示す。
図4図4Aは、生存に対する効果を示し、図4Bは、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)に感染したC57Bl/6マウスにおけるMCMV MHC-I制限ペプチドの腫瘍内注射後の腫瘍増殖に対する効果を示す。
図5図5は、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)に感染したC57Bl/6マウスにおける腫瘍増殖に対するmCMV MHC-I制限ペプチドの異なる用量の腫瘍内注射の効果を示す。
図6-1】図6Aおよび6Bは、mCMVに感染したC57Bl/6マウスにおける腫瘍増殖に対するmCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの組み合わせの腫瘍内注射の効果を示す。図6Cは、各ペプチドに対するMHC-I四量体を用いたFACSによって分析された血中のE7-、m45-、m122-特異的CD8+T細胞応答を示し、mCMV CD4エピトープおよびその後CD8エピトープでの逐次的な腫瘍内接種が優先的に抗腫瘍免疫を誘導することを示している。
図6-2】図6Aおよび6Bは、mCMVに感染したC57Bl/6マウスにおける腫瘍増殖に対するmCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの組み合わせの腫瘍内注射の効果を示す。図6Cは、各ペプチドに対するMHC-I四量体を用いたFACSによって分析された血中のE7-、m45-、m122-特異的CD8+T細胞応答を示し、mCMV CD4エピトープおよびその後CD8エピトープでの逐次的な腫瘍内接種が優先的に抗腫瘍免疫を誘導することを示している。
図6-3】図6Aおよび6Bは、mCMVに感染したC57Bl/6マウスにおける腫瘍増殖に対するmCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの組み合わせの腫瘍内注射の効果を示す。図6Cは、各ペプチドに対するMHC-I四量体を用いたFACSによって分析された血中のE7-、m45-、m122-特異的CD8+T細胞応答を示し、mCMV CD4エピトープおよびその後CD8エピトープでの逐次的な腫瘍内接種が優先的に抗腫瘍免疫を誘導することを示している。
図7図7は、二次腫瘍暴露に対する長期的な保護に対する一次腫瘍の完全なクリアランスの効果を示す。
図8図8は、mCMV感染が、C57BL/6マウスにおいてインフレーション性CD8+T細胞応答を誘導することを示す。
【0018】
図9-1】図9Aは、インフレーション性および非インフレーション性CD8+ T細胞によるIFN-γの産生、およびCD4+ T細胞によるIFN-γの産生を示す。図9Bは、MHC-I制限ペプチドプールに対するmCMV CD8+ T細胞によるサイトカイン産生を示す。
図9-2】図9Aは、インフレーション性および非インフレーション性CD8+ T細胞によるIFN-γの産生、およびCD4+ T細胞によるIFN-γの産生を示す。図9Bは、MHC-I制限ペプチドプールに対するmCMV CD8+ T細胞によるサイトカイン産生を示す。
図10-1】図10Aは、mCMVペプチドの腫瘍内投与のためのマウスTC1腫瘍モデルの実験プロトコルタイミングを示す。図10Bおよび10Cは、腫瘍担持マウスにおけるmCMV特異的CD8+T細胞の分布を示す。インフレーション性(IE3;図10B)および非インフレーション性(m45;図10C)特異的CD8+ T細胞は、MHC-I四量体染色を用いたFACSにより検出した。
図10-2】図10Aは、mCMVペプチドの腫瘍内投与のためのマウスTC1腫瘍モデルの実験プロトコルタイミングを示す。図10Bおよび10Cは、腫瘍担持マウスにおけるmCMV特異的CD8+T細胞の分布を示す。インフレーション性(IE3;図10B)および非インフレーション性(m45;図10C)特異的CD8+ T細胞は、MHC-I四量体染色を用いたFACSにより検出した。
図10-3】図10Aは、mCMVペプチドの腫瘍内投与のためのマウスTC1腫瘍モデルの実験プロトコルタイミングを示す。図10Bおよび10Cは、腫瘍担持マウスにおけるmCMV特異的CD8+T細胞の分布を示す。インフレーション性(IE3;図10B)および非インフレーション性(m45;図10C)特異的CD8+ T細胞は、MHC-I四量体染色を用いたFACSにより検出した。
図11-1】図11Aは、腫瘍微小環境の遺伝子発現解析に用いたマウスTC1腫瘍モデルの実験プロトコルタイミングを示す。図11B-11Fは、腫瘍内投与後のCD45+細胞(図11B)、Th1細胞(図11C)、細胞傷害性CD8 T細胞(図11D)、NK細胞(図11E)または樹状細胞(図11F)による腫瘍浸潤を示す。
図11-2】図11Aは、腫瘍微小環境の遺伝子発現解析に用いたマウスTC1腫瘍モデルの実験プロトコルタイミングを示す。図11B-11Fは、腫瘍内投与後のCD45+細胞(図11B)、Th1細胞(図11C)、細胞傷害性CD8 T細胞(図11D)、NK細胞(図11E)または樹状細胞(図11F)による腫瘍浸潤を示す。
図11-3】図11Aは、腫瘍微小環境の遺伝子発現解析に用いたマウスTC1腫瘍モデルの実験プロトコルタイミングを示す。図11B-11Fは、腫瘍内投与後のCD45+細胞(図11B)、Th1細胞(図11C)、細胞傷害性CD8 T細胞(図11D)、NK細胞(図11E)または樹状細胞(図11F)による腫瘍浸潤を示す。
図12図12Aおよび12Bは、mCMV CD8エピトープの腫瘍内投与が、腫瘍増殖を遅らせ、ポリ(I:C)共注入が、腫瘍制御を改善することを示す。図12Aは、MHC-I制限mCMVペプチド単独+/-ポリ(I:C)の腫瘍内注射の効果を示す。図12Bは、MHC-I制限mCMVペプチドの滴定の腫瘍内注射の効果を示す。
図13図13Aおよび13Bは、ポリ(I:C)を有するmCMV MHC-Iおよび/またはMHC-IIペプチドの腫瘍内注射によるTC1腫瘍暴露からの保護を示す。CD4、次いでCD8 MCMVエピトープでの逐次的な腫瘍内接種は、腫瘍増殖を抑制し(図13A)、長期生存を促進する(図13B)。
図14図14は、ポリ(I:C)(30ug)の有無にかかわらず、MHC-I制限された選択されたm38、m45およびm122ペプチドで、および/またはMHC-II制限されたm139選択されたペプチドで、ならびに対照として生理食塩水またはポリ(I:C)単独で、6回処置した後の血中のE7四量体陽性CD8+T細胞応答を示す。
図15図15は、一次腫瘍の完全なクリアランスが、二次腫瘍暴露に対する長期的な保護をもたらすことを示す。
図16図16は、ポリ(I:C)を有するmCMV MHC-IおよびMHC-IIペプチドの腫瘍内注射によるMC38腫瘍暴露からの保護を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、癌を処置する新規な方法に関する。具体的には、本発明は、癌細胞を攻撃するために個体自身の免疫系を利用する、該個体における癌を処置する方法に関する。本発明の方法は、癌に応答して誘導されたのではなく、環境中の微生物によって誘導された既存の免疫応答を個体が有しているという事実を利用したものである。癌細胞は、通常、既存の免疫応答を誘導した微生物抗原を発現しないため、そのような免疫応答が癌を攻撃することは期待できない。しかしながら、本発明者らは、そのような既存の免疫応答が、癌を攻撃するために動員され得ることを発見した。これを達成することができる1つの方法は、既存の免疫応答によって認識された1以上の抗原を癌に導入することによって、免疫応答の細胞が抗原を提示する癌細胞を攻撃する結果となる。したがって、これらの方法は、癌患者の処置に先立って抗原を発現する癌細胞に向けられていない。例えば、多くの膠芽腫癌細胞は、CMV抗原を発現することが判明しており、本開示の方法は、CMVに対する個人の既存の免疫を用いて、そのような神経膠芽腫を処置するためには用いられない。さらに、癌細胞の破壊は、既存の免疫応答の構成要素が癌細胞抗原に暴露される結果となり得る。これは、癌細胞抗原に対する免疫応答の誘導をもたらし得る。したがって、本発明の一般的な方法は、既存の免疫応答が癌を攻撃するように、個体における既存の免疫応答を癌部位に動員することによって実施され得る。動員は、例えば、個体の既存の免疫応答の構成要素(例えば、T細胞)によって認識される少なくとも1つの抗原を癌に導入することによって達成され得る。
【0020】
本発明は、本明細書に記載された特定の態様に限定されるものではなく、そのような態様は様々であり得る。本明細書で用いる用語は、特定の態様のみを説明する目的のためのものであり、限定することを意図していない。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いるように、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数形の参照語を含む。例えば、核酸分子は、1以上の核酸分子を意味する。このように、用語“a”、“an”、“1以上”および“少なくとも1つ”は互換的に用いられ得る。同様に、用語“含む(complising)”、“含む(including)”および“有する(having)”は互換的に用いられ得る。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように記載されてもよいことがさらに留意される。このように、本明細書は、請求項の要素の暗唱、または“否定的な”制限の使用に関して、“唯一(solely)”、“のみ”などの排他的な用語を用いるための先行詞としての役割を果たすことを意図している。
【0022】
別の態様の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の態様において組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔には、単一の態様の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の好適な部分的組合せで提供されてもよい。すべての態様の組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、それぞれの組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように、本明細書に記載されている。さらに、すべての部分的組合せもまた、本発明によって具体的に包含され、そのような部分的組合せの各々が個別に明示的に開示されているかのように、本明細書に記載されている。
【0023】
本明細書に記載の文献は、本出願の出願日以前の開示のみを目的として提供される。本明細書のいかなる記載も、本発明が、先行発明を理由にそのような文献に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、それは別個に確認する必要があるかもしれない。本明細書に記載のすべての文献は、その文献が引用されていることに関連した方法および/または材料を開示し、記載するために、引用により本明細書に包含される。
【0024】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料がここに記載されている。
【0025】
一側面は、個体の癌を処置する方法であって、癌に既存の免疫応答を動員し、それによって癌を処置することを含む方法である。
【0026】
本明細書で用いるように、癌は、細胞分裂および/または細胞の老化を適切に制御することなく異常な細胞が分裂する疾患を意味する。用語、癌は、固形腫瘍だけでなく、血液にかかる癌(blood borne cancer)も包含することを意味する。一般的に、腫瘍は、通常、嚢胞または体液領域を含まない異常な組織の塊である。固形腫瘍には、良性(生命を脅かさない)、または悪性(生命を脅かす)がある。固形腫瘍の異なるタイプは、それを形成する細胞のタイプに応じて命名されている。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌およびリンパ腫が挙げられる。血液腫瘍(血液の癌とも呼ばれる)は、骨髄などの血液形成組織、または免疫系の細胞で発生する癌である。血液の癌の例としては、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫が挙げられる。
【0027】
一部の癌では、元の癌細胞が発生した組織以外の組織に細胞が侵入することがある。癌の中には、癌細胞が血液およびリンパ系を介して体の他の部位に転移するものもある。このように、癌は、通常、がん細胞が発生した臓器または細胞の種類に応じて名前が付けられている。例えば、大腸に由来する癌は大腸癌と呼ばれ、皮膚のメラノサイトに由来する癌はメラノーマと呼ばれるなどである。本明細書で用いる、癌は、癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、固形腫瘍およびリンパ系の癌を含む白血病、胃癌、腎臓癌、乳癌、肺癌(非小細胞肺癌および小細胞肺癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、脳腫瘍、頭頚部癌、皮膚癌、子宮癌、精巣癌、食道癌、肝臓癌(肝細胞癌を含む)、非ホジキンリンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫、小細胞リンパ腫および大細胞リンパ腫)およびホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、ならびに多発性骨髄腫を意味し得る。例示的な態様では、癌は肺癌または腺癌である。
【0028】
本明細書で用いる用語、個体、対象、患者などは、癌を発症する可能性のある任意の哺乳動物を包含することを意味し、好ましい哺乳動物はヒトである。個体、対象および患者という用語は、それ自体で特定の年齢、性別、人種などを表すものではない。したがって、男性であろうと女性であろうと、任意の年齢の個体が、本開示の対象となることが意図される。同様に、本発明の方法は、例えば、コーカシアン(白人)、アフリカ系アメリカ人(黒人)、ネイティブアメリカン、ネイティブハワイアン、ヒスパニック、ラティーノ、アジア人およびヨーロッパ人を含む、任意の人種のヒトに適用することができる。このような特性は重要であり得る。そのような場合、有意な特徴(例えば、年齢、性別、人種など)が示され得る。これらの用語はまた、ヒトおよび非ヒト動物の両方を包含する。癌の検査または処置に適した非ヒト動物としては、コンパニオンアニマル(すなわちペット)、食用動物、作業動物または動物園の動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で用いる、免疫応答または免疫学的応答とは、1以上の抗原に対する体液性応答および/または細胞性応答が個体内に存在することを意味する。本開示の目的のために、“体液性応答”とは、B細胞および分泌性(IgA)分子またはIgG分子を含む抗体分子によって媒介される免疫応答を意味し、一方、“細胞性応答”とは、Tリンパ球および/または他の白血球が介在する応答を意味する。細胞性免疫の重要な側面の一つは、細胞溶解性T細胞(CTL)による抗原特異的応答を含む。CTLは、細胞表面の主要組織適合性複合体(MHC)によってコードされるタンパク質と関連して提示されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導し、促進するのに役立つ。細胞性免疫の別の側面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的な応答を伴う。ヘルパーT細胞は、その表面にMHC分子と関連してペプチド抗原を提示している細胞に対して、非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、活性を集中させるのを助けるように作用する。細胞性免疫応答はまた、活性化されたT細胞および/または他の白血球(CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む)によって産生されるサイトカイン、ケモカインおよび他のそのような分子の産生を意味する。
【0030】
したがって、免疫学的応答は、CTLを刺激するもの、および/またはヘルパーT細胞の産生もしくは活性化であってもよい。ケモカインおよび/またはサイトカインの産生もまた刺激され得る。免疫応答はまた、抗体介在免疫応答を含み得る。したがって、免疫応答は、以下の効果のうちの1以上を含み得る:B細胞による抗体(例えば、IgAまたはIgG)の産生;および/または、サプレッサー、細胞傷害性T細胞またはヘルパーT細胞の活性化、および/または抗原に対して特異的に指示されたT細胞の活性化。そのような応答は、当技術分野で知られている標準的な免疫アッセイおよび中和アッセイを用いて決定することができる。
【0031】
本明細書で用いられる、既存の免疫応答とは、癌処置の開始前に個体に存在する免疫応答である。したがって、既存の免疫応答を有する個体は、癌を処置するために抗原を用いた処置の開始に先立って、抗原に対する免疫応答を有する。既存の免疫応答は、天然免疫応答であってもよいし、または誘導される免疫応答であってもよい。本明細書で用いられる、天然の既存の免疫応答とは、個体が意図せずに接触した細菌抗原またはウイルス抗原などの抗原に応答して誘導された個体の免疫応答である。つまり、既存の免疫応答を有する個体は、抗原に対する免疫応答を発生させる意図を持って抗原に曝露されたわけではない。誘導された既存の免疫応答とは、ワクチンを受けたときなど、抗原に意図的に曝露した結果生じる免疫応答のことである。既存の免疫応答は、天然の免疫応答であってもよいし、または誘導された免疫応答であってもよい。
【0032】
本明細書で用いられる、語句“免疫応答を動員する”とは、既存の免疫応答の構成要素が体内を通って抗原が投与された場所に移動し、その結果、抗原を提示する細胞に対する免疫系の構成要素による攻撃をもたらすように、抗原が個体に投与されるプロセスを意味する。本明細書で用いられる、“免疫応答の構成要素”とは、抗原に結合し、抗原に対する免疫応答を開始させることができる細胞を意味する。本発明の実施に有用な抗原は、既存の免疫系の細胞、特にT細胞によって認識され得る任意の分子である。そのような化合物の一例は、細菌またはウイルスタンパク質などのタンパク質である。
【0033】
本明細書で用いられる、語句“癌を処置する”とは、癌に関する様々な結果を意味する。癌を処置することは、処置された個体における癌細胞の数の増加率を減少させることを含む。増加率のそのような減少は、癌細胞の複製速度の低下に起因し得る。あるいは、癌細胞の複製率は影響を受けず、癌細胞の数の増加は、既存の免疫応答によって殺されてもよい。特定の側面において、癌を処置することは、癌細胞の数の増加が停止するが、一定のレベルに留まる状況を意味する。そのような状況は、既存の免疫応答の動員による癌細胞の複製の阻害のために生じるか、または動員された既存の免疫応答による癌細胞の殺傷の速度と、新しい癌細胞の産生速度のバランスがとれているために生じるかのいずれかである。癌を処置することは、癌の増殖が減少もしくは停止するように癌を安定化させること、または処置された個体における癌細胞の数が減少するようにすること、および/または個体が癌にならない(すなわち、検出可能な癌細胞がない)ようにすることを意味する。
【0034】
態様では、既存の免疫応答を動員する工程は、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識される抗原を癌に導入することを含む。好ましい態様において、抗原は、処置前に癌には存在しない。このように、一態様は、個体における癌を処置する方法であって、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識される抗原を癌に導入することによって既存の免疫応答を該癌に動員することを含み、ここで、抗原は、癌を処置する前に癌に存在していない。したがって、上記のように、既存の免疫応答は、天然の免疫応答であってもよいし、または誘導された免疫応答であってもよい。癌への抗原の導入は、当技術分野で知られている方法を用いて達成することができ、処置される癌のタイプに応じて変化し得る。例えば、癌の1タイプは、固形腫瘍である。そのような癌では、癌細胞は複製して親癌細胞に隣接したままであり、その結果、隣接する癌細胞から形成される組織の塊が形成される。そのような癌は細胞の塊であるため、抗原は、その塊に直接、またはその中に送達され得る。一態様では、個体における癌を処置する方法であって、ここで、癌が固形腫瘍である場合には、既存の免疫応答を固形腫瘍に動員することを含み、この方法は、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識される抗原を固形腫瘍に導入することによって固形腫瘍に既存の免疫応答をリクルートすることを含み、この場合、この抗原は、処置の前に固形腫瘍に存在しない。一態様では、既存の免疫応答は、天然の免疫応答である。一態様では、既存の免疫応答は、誘導された免疫応答である。一態様では、抗原は、癌(例えば、固形腫瘍)への抗原の注入により、該癌(例えば、固形腫瘍)に送達される。そのような態様では、抗原は、該抗原がそのような分子に直接結合することによって、または抗原の癌細胞による取り込みおよび処理によって、細胞のMHC I分子上に表示されることを可能にするように、癌に直接送達される。これらの方法において、抗原は、免疫系への抗原の取り込みおよび/または提示を増強する他の分子または化合物と組み合わせることができる。
【0035】
上記のように、これらの方法において、抗原はタンパク質であってもよい。これらのタンパク質抗原は、上述したように、癌(例えば、腫瘍)に直接注入されてもよい。したがって、一態様は、個体における癌を処置する方法であって、該癌が固形腫瘍である場合、固形腫瘍に抗原性タンパク質を注入することにより、固形腫瘍に既存の免疫応答を動員することを含み、ここで、抗原性タンパク質は、既存の免疫応答の1以上の構成要素により認識され、ここで、抗原性タンパク質は、処置前に固形腫瘍に存在しない。あるいは、タンパク質抗原は、タンパク質をコードする核酸分子を癌に導入することにより、癌に導入することができる。したがって、一態様では、個体における癌を処置する方法であって、癌が固形腫瘍である場合に、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を固形腫瘍に導入することにより、固形腫瘍に既存の免疫応答を動員することを含み、ここで、抗原性タンパク質は、既存の免疫応答の1以上の構成要素により認識され、ここで、抗原性タンパク質は、処置前に固形腫瘍に存在しない。抗原をコードする核酸分子の癌への導入は、当該技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて行うことができる。一態様では、個体における癌を処置する方法であって、癌が固形腫瘍である場合、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を固形腫瘍に注入することにより、固形腫瘍に既存の免疫応答を動員することを含み、ここで、抗原性タンパク質は、既存の免疫応答の1以上の構成要素により認識され、ここで、抗原性タンパク質は、処置前に固形腫瘍に存在しない。これらの方法において、抗原をコードする核酸分子は、裸の(naked)核酸分子(すなわち、核酸分子の安定性の送達を増強することを意図した他の分子と複合化していない核酸分子)として注入されてもよく、または注入された抗原をコードする核酸分子は、核酸分子の送達、安定性または寿命を増強することを意図した1以上の化合物と複合化されてもよい。そのような化合物の例としては、脂質、タンパク質、炭水化物および合成ポリマーを含むポリマーが挙げられる。
【0036】
2以上の抗原をコードする核酸分子は、組換えウイルスまたはシュウドウイルス(シュウドビリオン)などの送達ビヒクルを用いて癌に導入することもできる。本発明の方法を実施するのに有用なウイルスの例としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびパピローマウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。核酸分子を送達するためのこのようなウイルスの使用は、当業者に知られており、米国特許第8,394,411号にも開示されており、これは引用により本明細書に包含される。本発明の方法を実施するのに有用なシュウドウイルスの例としては、肝炎シュウドウイルス、インフルエンザシュウドウイルス、およびパピローマシュウドウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いられるシュウドウイルスとは、癌細胞に結合して侵入することができるウイルス様粒子(VLP)に組み立てられたウイルスキャプシドタンパク質からなる粒子を意味する。そのようなシュウドビリオン粒子は、サブゲノム量のウイルス核酸分子をパッケージ化することができるが、好ましくはパッケージ化しない。シュウドビリオンを製造し、使用する方法は、当技術分野で知られており、また、米国特許第6,599,739号;同第7,205,126号;および同第6,416,945号にも記載されており、これらの全てが引用によりその内容全体を本明細書に包含させる。従って、本開示は、個体における癌を処置する方法を提供し、ここで、癌が固形腫瘍である場合、抗原性タンパク質をコードする核酸分子からなる組換えウイルスまたはシュウドウイルスを腫瘍に導入することにより、固形腫瘍に既存の免疫応答を動員することからなり、抗原性タンパク質は、既存の免疫応答の1以上の構成要素により認識され、抗原性タンパク質は、処置前に固形腫瘍に存在していない。本開示の核酸分子を担持したシュウドウイルスを細胞に侵入させると、細胞によるコード化された抗原性タンパク質の発現、およびその後の免疫系への抗原の提示が生じる。これらの方法において、シュウドウイルスは、乳頭腫シュウドウイルスである。
【0037】
抗原をコードする核酸分子を含むウイルスまたはシュウドウイルスの癌への導入は、当該技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて達成することができる。例えば、抗原をコードする核酸分子を含む組換えウイルスまたはシュウドウイルスを、癌の近くに、または癌に直接注入することができる。あるいは、抗原をコードする核酸分子を含む組換えウイルスまたはシュウドウイルスを、該組換えウイルスまたはシュウドウイルスが癌に送達される結果となる経路で個体に投与することができる。そのような経路の例としては、静脈内(IV)注射、筋肉内(IM)注射、腹腔内(IP)注射、皮下(SC)注射および経口送達が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、一態様は、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を含む組換えウイルスまたはシュウドウイルスを個体に投与することを含む、該個体における癌を処置する方法であって、ここで、該癌が固形腫瘍であり、抗原性タンパク質が既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識され、抗原性タンパク質が処置前に該固形腫瘍に存在しない、方法である。これらの方法において、組換えウイルスまたはシュウドウイルスは、固形腫瘍に直接注入してもよく、または該組換えウイルスもしくはシュウドウイルスは、IV注射、IM注射、IP注射、SC注射および経口送達から選択される方法を用いて送達してもよい。
【0038】
本開示の方法は、血液にかかる癌を処置するために用いられ得る。血液にかかる癌、血液の癌、血液腫瘍などは、骨髄などの血液形成組織、または免疫系の細胞で始まる。血液の癌の例としては、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などが挙げられる。このような癌は、血液形成組織の細胞、または免疫系の細胞が、細胞複製の制御を失い、制御されていない方法で複製を開始するときに始まる。いったん形成されると、血液の癌細胞は血液またはリンパ系内に入り込み、血液および/またはリンパ系における癌細胞の数の著しい増加を引き起こす。例えば、白血病は、血液および骨髄に見いだされる癌である。白血病は、白血球の制御されていない複製によって生じ、その結果、血液およびリンパ組織中の異常白血球の数が大幅に増加する。これらの異常白血球は、正常に機能せず、したがって、白血病を有する個体は、感染症と戦うことができない。したがって、本開示は、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識される抗原を血液腫瘍の癌細胞に導入することによって、該既存の免疫応答を個体における血液腫瘍の癌細胞に動員することを含む、該個体における血液腫瘍を処置する方法であって、ここで、該抗原は、処置前に血液腫瘍の癌細胞内に存在しないか、または該細胞上に存在しない、方法を提供する。これらの方法では、既存の免疫応答は、天然の免疫応答であってもよいし、または誘導された免疫応答であってもよい。血液癌細胞への抗原の導入は、任意の好適な方法を用いて行うことができる。これらの方法において、抗原は、該抗原の血液腫瘍の癌細胞への送達をもたらす形で、該抗原を個体に投与することにより、血液腫瘍の癌細胞に導入することができる。例えば、抗原は、IV注射、IM注射、IP注射、SC注射および経口投与から選択される方法を用いて、個体に投与することができる。これらの方法において、抗原は、例えば、該抗原を血液腫瘍の癌細胞上の分子を結合するタンパク質に結合させることにより、該血液腫瘍の癌細胞に標的化することができる。
【0039】
抗原はまた、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を個体の血液腫瘍の癌細胞に導入することにより、該血液腫瘍の癌細胞に導入することもできる。したがって、本開示は、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を個体に投与することによって、既存の免疫応答を該血液腫瘍の癌細胞に動員することを含む、該個体における血液腫瘍を処置する方法であって、ここで、該抗原性タンパク質は、既存の免疫応答の1以上の構成成分によって認識され、該抗原性タンパク質は、処置前に血液腫瘍の癌細胞内に、または該細胞上に存在しない、方法を提供する。抗原をコードする核酸分子の個体への投与は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて行うことができる。例えば、抗原をコードする核酸分子は、裸の核酸分子として注入することができる。あるいはまたはさらに、抗原をコードする核酸分子は、該核酸分子の送達、安定性または寿命を向上させることを意図した1以上の化合物と複合体化されてもよい。そのような化合物の例としては、脂質、タンパク質、炭水化物および合成ポリマーを含むポリマーが挙げられる。
【0040】
2以上の抗原をコードする核酸分子は、組換えウイルスまたはシュウドウイルスなどの送達ビヒクルを用いて、血液癌細胞に導入することもできる。そのような送達ビヒクルの例は、本明細書に上記した通りである。本発明の方法を実施するのに有用なウイルスの例としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびパピローマウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法を実施するのに有用なシュウドウイルスの例としては、肝炎シュウドウイルス、インフルエンザシュウドウイルスおよびパピローマシュウドウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本開示は、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を含む組換えウイルスまたはシュウドウイルスを腫瘍に導入することにより、固形腫瘍に既存の免疫応答を動員することを含む、個体における血液癌を処置する方法であって、ここで、抗原性タンパク質が、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識され、抗原性タンパク質が、処置前に血液癌細胞内に、または血液癌細胞上に存在していない、方法を提供する。
【0041】
抗原をコードする核酸分子を含むウイルスまたはシュウドウイルスの癌への導入は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて達成することができる。例えば、抗原をコードする核酸分子を含む組換えウイルスまたはシュウドウイルスは、該組換えウイルスまたはシュウドウイルスが癌に送達される結果となる経路により、個体に投与され得る。そのような経路の例としては、静脈内(IV)注射、筋肉内(IM)注射、腹腔内(IP)注射、皮下(SC)注射および経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本開示は、抗原性タンパク質をコードする核酸分子を含む組換えウイルスまたはシュウドウイルスを個体に投与することを含む、個体における血液癌を処置する方法であって、ここで、該抗原性タンパク質は、既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識され、該抗原性タンパク質は、処置前に血液癌細胞に存在しないか、または血液癌細胞上に存在しない、方法を提供する。組換えウイルスまたはシュウドウイルスは、IV注射、IM注射、IP注射、SC注射および経口投与からなる群より選択される方法を用いて送達され得る。
【0042】
本明細書に記載の方法は、1以上の抗原を用いて、既存の免疫応答を癌に動員する。抗原が既存の免疫応答の1以上の構成要素によって認識され、かつ抗原が処置前に癌細胞内または癌細胞上に存在しない限り、全ての抗原を用いることができる。有用な抗原の例としては、ウイルス抗原および細菌抗原が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法を実施するのに有用なウイルス抗原の一例は、サイトメガロウイルスタンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む抗原である。本明細書で用いるエピトープは、免疫系によって認識され、それによって免疫応答を誘導するアミノ酸残基のクラスターである。そのようなエピトープは、連続するアミノ酸残基(すなわち、タンパク質中で互いに隣接するアミノ酸残基)から構成されていてもよく、または、非連続なアミノ酸残基(すなわち、タンパク質中で互いに隣接しないアミノ酸残基)から構成されていてもよいが、最終的に折り畳まれたタンパク質中で密接に特別に近接しているアミノ酸残基から構成されていてもよい。エピトープが免疫系によって認識されるためには、少なくとも6個のアミノ酸残基が必要であることは、当技術分野の当業者には一般に理解されている。したがって、本発明の方法は、サイトメガロウイルスタンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む抗原の使用を含み得る。抗原が癌に対する既存の免疫応答を動員する限り、本発明の方法を実施するのに有用な抗原を産生するために、何らかの適切なCMVタンパク質が用いられ得る。本明細書に記載の方法での使用に適したCMVタンパク質の例としては、CMV pp50、CMV pp65、CMV pp150、CMV IE-1、CMV IE-2、CMV gB、CMV US2、CMV UL16およびCMV UL18が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなタンパク質およびその有用なフラグメントの例は、米国特許公開第2005/0019344号および同第2010/0183647号に開示されており、これらの両方は引用によりその内容全体が本明細書に包含される。有用なフラグメントはまた、配列番号1-67のアミノ酸配列を含むペプチドのいずれか1つまたはその組み合わせを含み得る。
【0043】
開示の方法はまた、1以上の抗原を用いて実施することができ、これらの抗原の各々は、独立して、CMVタンパク質からの少なくとも8個の連続するアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列を含む。本明細書で用いる変異体とは、対照配列と類似しているが同一ではない配列を有するタンパク質または核酸分子を意味し、変異体タンパク質(または変異体核酸分子によってコードされるタンパク質)の活性(例えば、免疫原性)が有意に変化しないものである。これらの配列の変異は、天然の変異であってもよく、または当業者に知られている遺伝子工学的技術を用いて改変されてもよい。そのような技術の例は、Sambrook J, Fritsch E F, Maniatis T et al., in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, pp. 9.31-9.57、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見いだされる。
【0044】
変異体に関しては、結果として生じる変異体タンパク質が免疫応答を誘導する能力を保持している限り、アミノ酸配列のあらゆるタイプの変更が許容される。このような変異体の例としては、欠失、挿入、置換およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、タンパク質では、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個)のアミノ酸が、そのタンパク質の活性に著しい影響を与えることなく、しばしばタンパク質のアミノ末端および/またはカルボキシ末端から除去され得ることは、当業者にはよく理解されている。同様に、1以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個)アミノ酸は、しばしば、そのタンパク質の活性に著しい影響を与えることなく、タンパク質中に挿入され得る。
【0045】
記載のように、変異体タンパク質は、対照タンパク質(例えば、野生型タンパク質)との相対的なアミノ酸置換を含み得る。タンパク質の活性が著しく影響を受けない限り、任意のアミノ酸置換が許容される。この点で、アミノ酸は、それらの物理的性質に基づいて分類され得ることが当技術分野では理解される。そのような群の例としては、荷電アミノ酸、無荷電アミノ酸、極性無荷電アミノ酸および疎水性アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。置換を含む好ましい変異体は、アミノ酸が同じ群からのアミノ酸で置換されているものである。このような置換は、保存的置換と呼ばれる。
【0046】
天然残基は、共通の側鎖特性に基づいてクラス分けされ得る。1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;3)酸性:Asp、Glu;4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および、6)芳香族性:Trp、Tyr、Phe。
【0047】
例えば、非保守的な置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを含み得る。
【0048】
アミノ酸変異を行う際、アミノ酸の疎水性指数を考慮することができる。各アミノ酸には、その疎水性特性および電荷特性に基づいて親水性指数が割り当てられている。親水性指数としては、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);および、アルギニン(-4.5)が挙げられる。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、当技術分野で一般に理解されている(Kyte et al., 1982, J. Mol. Biol. 157:105-31)。特定のアミノ酸が、類似の疎水性指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換されても、依然として類似の生物学的活性を保持していてもよいことが知られている。親水性指数に基づいて変更を加える場合には、親水性指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内であるアミノ酸がさらに好ましい。
【0049】
同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行うことができることが、特に、それによって作製された生物学的機能性において等価なタンパク質またはペプチドが、本発明の場合のように免疫学的発明での使用を意図している場合には、当技術分野で理解されている。隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大の局所平均親水性は、その免疫原性および抗原性と相関し、すなわち、タンパク質の生物学的性質と相関する。以下の親水性値は、これらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);および、トリプトファン(-3.4)。類似の親水性値に基づいて変更を加える場合、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸がさらに好ましい。また、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定してもよい。
【0050】
所望のアミノ酸置換(保存的であるか非保存的であるかにかかわらず)は、そのような置換が望まれる時点で、当業者であれば決定することができる。例えば、アミノ酸置換は、タンパク質の重要な残基を同定するために、またはタンパク質の免疫原性、溶解性または安定性を増加または減少させるために用いることができる。例示的なアミノ酸置換は、以下の表に示されている。
【0051】

【表1】
【0052】
本明細書で用いる語句“有意にタンパク質の活性に影響を与える”は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%のタンパク質の活性の低下を意味する。本発明に関して、そのような活性は、例えば、中和抗体を誘導する、またはT細胞応答を誘導するタンパク質の能力として測定され得る。そのような活性を決定する方法は、当業者に知られている。
【0053】
本開示の方法は、CMVタンパク質から、それぞれ独立して、少なくとも6個の連続アミノ酸、少なくとも10個の連続アミノ酸、少なくとも20個の連続アミノ酸、少なくとも30個の連続アミノ酸、少なくとも50個の連続アミノ酸、少なくとも75個の連続アミノ酸、少なくとも75個の連続アミノ酸、または少なくとも100個の連続アミノ酸からなる、1以上の抗原を用いてよい。本開示の方法は、それぞれが独立して、CMVタンパク質から、少なくとも10個の連続アミノ酸、少なくとも20個の連続アミノ酸、少なくとも30個の連続アミノ酸、少なくとも50個の連続アミノ酸、少なくとも75個の連続アミノ酸、または少なくとも100個の連続アミノ酸に対して、少なくとも85%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する1以上の抗原を用いてもよい。本開示の方法は、それぞれが独立して、CMVタンパク質から、少なくとも6個の連続アミノ酸、少なくとも10個の連続アミノ酸、少なくとも20個の連続アミノ酸、少なくとも30個の連続アミノ酸、少なくとも50個の連続アミノ酸、少なくとも75個の連続アミノ酸、または少なくとも100個の連続アミノ酸を含む、1つまたは複数の抗原を用いてもよい。本開示の方法は、抗原がMHC I制限抗原であるCMVタンパク質からの9から15個の連続アミノ酸残基に対して、それぞれが独立して、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む1以上の抗原を用いてもよい。本開示の方法は、抗原がMHC I-制限抗原であるCMVタンパク質からの9から15個の連続するアミノ酸残基をそれぞれ独立して含む1以上の抗原を用いてもよい。本開示の方法は、抗原がMHC II制限抗原であるCMVタンパク質からの少なくとも15個の連続するアミノ酸残基に対して、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む1以上の抗原を用いることができる。本開示の方法は、抗原がMHC II制限抗原であるCMVタンパク質からの少なくとも15個の連続するアミノ酸残基を含む1以上の抗原を用いてもよい。本開示の方法は、配列番号1-67のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択される配列、またはそれらの任意の組み合わせからなるペプチドと、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む1以上の抗原を用い得る。本開示の方法は、配列番号1-67のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群から選択される配列、またはそれらの任意の組み合わせからなる配列に対して、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列からなる1種以上の抗原を用いてもよい。本開示の方法は、配列番号1-67のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群より選択される配列、またはそれらの任意の組み合わせからなる1以上の抗原を用いることができる。
【0054】

【表2】

【表3】
【0055】
本発明の方法は、がんに対する既存の免疫応答を動員することによって、個体のがんを処置することを含む。これらの方法において、個体は、癌処置を開始する前に、抗原に対する既存の免疫応答を有することが知られていてもよい。個体は、癌処置を開始する前に、既存の免疫応答の存在を確認するために検査されてもよい。したがって、これらの方法は、個体が抗原に対する既存の免疫応答を有していることを確認することにより、該個体の癌を処置することを含み、ここで、該抗原は、癌に存在しないか、または癌上に存在しない。次いで、抗原が癌に導入されるように、既存の免疫を有することが確認された個体に該抗原が投与され、それにより癌を処置する。
【0056】
そのような方法は、何らかの固形腫瘍および/または血液の癌を含む、本明細書に既に記載の癌のいずれかを処置するために用いることができる。
【0057】
処置されるべき個体が抗原に対する既存の免疫応答を有することを確認する何らかの方法を、本開示の方法を実施するために用いることができる。そのような方法の例としては、個体からのサンプル中で、特定の抗原を認識するB細胞、特定の抗原を認識する抗体、特定の抗原を認識するT細胞、または特定の抗原に応答して開始されるT細胞活性を識別することが挙げられる。個体からのいずれか好適なサンプルは、既存の免疫応答を同定するために用いられ得る。好適なサンプルの例としては、全血、血清、血漿および組織サンプルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いる、B細胞、T細胞または抗体による特異的抗原の認識とは、そのようなB細胞、T細胞または抗体が、抗原を特異的に結合する能力を意味する。B細胞、T細胞または抗体による抗原の特異的結合とは、B細胞、T細胞または抗体が、同じB細胞、T細胞または抗体の抗原とは無関係の分子に対する結合親和性よりも高い親和性で特異的な抗原に結合することを意味する。例えば、CMV pp50タンパク質の抗原を認識する、またはそれに対して特異的であるB細胞、T細胞または抗体は、CMV pp50タンパク質と無関係なタンパク質、例えばヒトアルブミンに対する同じB細胞、T細胞または抗体の結合親和性よりも有意に大きい親和性でCMV pp50抗原を結合する。2つの物体間の特異的結合は、それらの解離定数によって科学的に表すことができ、約10-6未満、約10-7未満、または約10-8M未満であることが多い。分子間の、細胞間と分子間の特異的結合の概念、およびそのような結合を測定する方法は、酵素イムノアッセイ(例えば、ELISA)、免疫沈降法、イムノブロットアッセイおよび例えば上記のSambrookらの文献およびHarlow et al., Antibodies, a Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Labs Press, 1988)に記載の他のイムノアッセイを含むが、これらに限定されない、当業者にはよく知られている方法である。そのような方法はまた、引用により本明細書に包含させる米国特許第7,172,873号にも記載されている。個体からのサンプル中のT細胞活性化を測定する方法もまた、当業者には知られている。そのような方法の例は、米国特許公開第2003/003485号および米国特許第5,750,356号に開示されており、これらは両方とも、引用により本明細書に包含される。
【0058】
そのような方法は、一般に、個体からのT細胞含有サンプルを抗原と接触させ、T細胞の活性化のためにサンプルを測定することを含む。T細胞活性化を測定する方法もまた、当技術分野で周知であり、Walker, S., et al., Transplant Infectious Disease, 2007:9:165-70;および、Kotton, C.N. et al. (2013) Transplantation 96, 333に開示されている。
【0059】
市販のCMV検査(QuantiFERON(商標)-CMV、QIAGEN Sciences Inc. Germantown、MD)を、ヘパリン添加全血中の細胞を刺激するためにヒトサイトメガロウイルスタンパク質(CMV)を刺激するペプチドカクテルを用いたインビトロ診断テストとして利用できる。疾患/感染に曝された患者は、血液中に特異的なT細胞リンパ球を有しており、該疾患/感染を誘導する(priming)抗原(免疫学的に反応性の分子)に対する免疫学的記憶を維持している。誘導された個体から採血された血液への抗原の添加は、抗原特異的エフェクターT細胞の迅速な再刺激をもたらし、その結果、サイトカイン(例えば、IFN-γ)の放出をもたらす。エフェクターT細胞は、プライミング抗原に曝露されたときに迅速に応答し得る。従って、抗原曝露に応答するIFN-γの産生は、その抗原に対する細胞免疫応答の特異的マーカーである。このIFN-γ応答は、免疫応答を定量化するために用いることができる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるインターフェロン-γ(IFN-γ)の検出は、CMV感染に関連するペプチド抗原に対するインビトロ応答を同定するために用いられる。QuantiFERON(商標)-CMVの使用目的は、ヒトの抗CMV免疫のレベルを観測することである。
【0060】
従って、個体の癌を治療するための本開示の方法のいずれかにおいて、個体は、まず、癌中にまたは癌上に存在しない抗原に対する既存の免疫応答を有することが確認され得る。この既存の免疫応答は、個体からのサンプル中で識別することによって確認され得る。
i)特定の抗原を認識するB細胞;
ii)特定の抗原を認識する抗体;
iii)特定の抗原を認識するT細胞;および
iv)特定の抗原に反応して開始されるT細胞活性。
その後、抗原が癌に導入されるように、既存の免疫応答を有することが確認された個体に特異的抗原を投与し、それによって癌を処置することができる。
【0061】
本開示で提供される方法のいずれかにおいて、本発明の実施態様の範囲内で、免疫調節または動員を増強するために、CMV抗原と組み合わせて他の薬剤を用いてもよい(すなわち、投与してもよい)。そのような他の薬剤としては、TLRアゴニスト;静脈内免疫グロブリン(IVIG);グラム陽性細菌から単離されたペプチドグリカン;グラム陽性細菌から単離されたリポテコール酸;グラム陽性細菌から単離されたリポタンパク質;マイコバクテリアから単離されたリポアラビノマンナン;酵母細胞壁から単離されたザイモサン;ポリアデニル-ポリウリジル酸;ポリ(IC);リポ多糖類;モノホスホリル脂質A;フラジェリン;ガルディキモド;イミキモド;R848;CpGモチーフを含むオリゴヌクレオシド、CD40アゴニスト、および23SリボソームRNAが挙げられる。これらの方法の好ましい面では、TLRアゴニストはポリ-ICである。
【0062】
本開示の別の面は、個体を検査し、該個体において癌に対する既存の免疫応答を動員するためのキットである。このキットは、少なくとも1つのCMVペプチド抗原またはそのペプチドをコードする核酸、薬学的に許容される担体、容器、ならびに患者における癌の少なくとも1つの症状を軽減するためのCMVペプチドの投与を示す添付文書またはラベルを含んでよい。これらのキットは、CMV抗原に対する患者の抗原性応答を検査するための手段をさらに含んでもよい。例えば、キットは、全血サンプルを入手し試験するための滅菌されたプラスチックウェア、およびCMVペプチド抗原に対する応答のインビトロ試験、および/またはこれらのペプチド抗原に対するインビトロ応答を同定するための酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によるインターフェロン-γ(IFN-γ)の検出を含んでもよい。
【実施例0063】
実施例
例えばヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のような、通常は宿主によって十分に制御されている慢性ウイルス感染症は、しばしば、加齢に伴い、完全に機能するウイルス特異的T細胞の数がますます多くなる誘導をもたらす。hCMVに対するヒト免疫応答の重要な面を模倣したマウスmCMVモデルを用いて、本発明者らは、これらの抗ウイルスT細胞を腫瘍に誘引し、それに続いて腫瘍細胞の死滅および腫瘍ネオ抗原への強力なエピトープの拡散を誘導して、腫瘍増殖の長期的な制御および同種腫瘍細胞との再暴露からの保護を与える適応免疫応答をもたらす方法および試薬を開発した。
【0064】
実施例1
マウスサイトメガロウイルス感染は、mCMVペプチドプールに対するサイトカイン応答を誘導する
C57Bl/6マウスに1x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染後12日目に血液サンプルを採血した。白血球を、m38、m45、m57、m122、m139、m141およびm164 mCMVタンパク質から選択された免疫原性ペプチド集団で再刺激した。CD8+ T細胞によるIFN-γ、TNF-αおよびIL-2サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色によって評価し、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって分析した(図1A)。血液サンプルを、感染から2ヶ月後に採血した。インフレーション性(inflationary)(m122)および非インフレーション性(non-inflationary)(m45)特異的CD8+ T細胞を、MHC-I四量体染色を用いたFACSにより検出した。メモリーCD8+ T細胞応答をmCMVに対してマッピングした。脾臓を感染から6ヶ月後に採取した。m38、m45、m122 MHC-I制限およびm139560-574 MHC-II制限mCMVペプチドでのインビトロ刺激後のCD8+およびCD4+ T細胞によるIFN-γ産生を、細胞内サイトカイン染色によって評価した(図1B)。
【0065】
実施例2
mCMV抗原を発現するHPV Psvを用いた固形腫瘍の腫瘍内導入
C57Bl/6マウスに1x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染から6ヶ月後、マウスに、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10TC-1腫瘍細胞を皮下注射(s.c.)した(注射プロトコール、図2A)。腫瘍増殖を電子ノギスを用いて測定した。腫瘍注入後13日目および15日目に、m122およびm45を発現するHPV16 Psv(図2B)、または赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するHPV Psv(図2C)を腫瘍内に注射した(Psv当たり10感染単位)。
【0066】
実施例3
ポリ(I:C)と組合せてmCMV抗原を用いた固形腫瘍の腫瘍内導入
C57Bl/6マウスに、1x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染から4ヶ月後、マウスに、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10TC-1腫瘍細胞(図3A)を皮下注射した。腫瘍に、ポリ(I:C)(30μg)(PIC)の有無下で、11日目および13日目にm122、m38およびm45を発現するHPV16、16日目および18日目にm122、m38およびm45を発現するHPV45、ならびに21日目および23日目にm122、m38およびm45を発現するHPV58を、または対照RFPを(PsV当たり10感染単位)、腫瘍内注射した。腫瘍増殖を、電子ノギスを用いて測定した(図3B-3E)。これらの腫瘍体積/増殖データは、mCMV抗原を発現するHPV Psvによる固形腫瘍の腫瘍内導入が腫瘍増殖を遅延させ、ポリ(I:C)との共投与がさらに腫瘍増殖を遅延させることを実証している(図3Bおよび3Dを比較;および、図3Cおよび3Eを比較)。E7-(図3F)、m45-、およびm122-(図3G)特異的CD8+ T細胞による腫瘍への浸潤を、MHC-I四量体染色およびFACSによって分析した。これらのデータは、これらのCMV抗原をポリ(IC)と組み合わせて投与したとき、CD8+ T細胞の腫瘍浸潤が有意に増強されたことを証明する。
【0067】
実施例4
mCMV MHC-I制限ペプチドの腫瘍内注射は生存率の向上をもたらす
C57Bl/6マウスに、1x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染から4ヶ月後、マウスを、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10TC-1腫瘍細胞を皮下注射した(図3A)。腫瘍に、11日目、13日目、16日目、18日目、21日目および23日目に、ポリ(I:C)(30ug)の有無下、選択されたm38、m45およびm122ペプチド(各1μg)を、および対照として生理食塩水またはポリ(I:C)単独を、腫瘍内注射した。動物の死亡を記録し(図4A)、腫瘍増殖を電子ノギスを用いて測定した(図4B)。これらのデータは、mCMV MHC-I制限ペプチドの腫瘍内注射が腫瘍増殖を遅延させ、生存率の増加をもたらすことを証明している。
【0068】
実施例5
mCMV MHC-I制限ペプチドの腫瘍内注射は腫瘍増殖を遅延させる
C57Bl/6マウスに、1x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染から4ヶ月後に、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10のTC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍に、11日目、13日目、16日目、18日目、21日目および23日目に、ポリ(I:C)(30μg)の有無下、選択されたm38、m45およびm122ペプチドの漸減用量(1μg、0.1μgおよび0.01μg)を、および対照として生理食塩水またはポリ(I:C)単独を、腫瘍内注射した。腫瘍増殖を、電子ノギスを用いて測定した(図5)。これらのデータは、mCMV MHC-I制限ペプチドの腫瘍内注射が腫瘍増殖を遅延させることを示している。
【0069】
実施例6
mCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの組合せは腫瘍増殖を遅延させる
C57Bl/6マウスに、2.5x10mCMVを感染させた。感染から4ヶ月後、マウスにE6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10のTC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍に、12日目から28日目まで、MHC-I制限された選択されたm38、m45およびm122ペプチド、および/またはMHC-II制限されたm139選択されたペプチドまたは生理食塩水を、6回、腫瘍内注射した。すべてのペプチドを、ポリ(I:C)(30μg)と共に注射した。群は、MHC-Iペプチドを6回、またはMHC-IIペプチドを6回、またはMHCIおよびMHCIIペプチドを共に6回、またはMHC-Iペプチドを3回、次いでMHC-IIペプチドを3回、またはMHC-IIペプチドを3回、次いでMHC-Iペプチドを3回を順次注射した。腫瘍増殖を、電子ノギスを用いて測定した(図6Aおよび6B)。これらのデータは、mCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの組合せの腫瘍内注射が腫瘍増殖を遅延させることを実証している。血中のE7-、m45-、m122-特異的CD8+ T細胞応答もまた、各ペプチドのMHC-I四量体を用いたFACSによって分析した(図6C)。これらのデータは、mCMV CD4エピトープ、次いでCD8エピトープでの逐次的な腫瘍内接種が優先的に抗腫瘍免疫を誘導することを示している。
【0070】
実施例7
原発腫瘍の完全クリアランスは長期的な腫瘍保護(tumor protection)をもたらす
実施例6に記載の原発腫瘍暴露から生き残った保護C57Bl/6マウスに、第一暴露の反対側の脇腹に、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10TC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍採取の対照として、若齢(12週齢)マウスおよび年齢を合わせた(10月齢の)マウスに、TC-1腫瘍細胞を暴露した。腫瘍増殖を、電子ノギスを用いて測定した(図7)。これらのデータは、原発腫瘍の完全クリアランスが二次腫瘍暴露に対する長期的な保護をもたらすことを示している。
【0071】
実施例8
MCMVの腫瘍内注射は腫瘍免疫微小環境を変化させる
腫瘍免疫微小環境に対する、ポリICの有無下、mCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの腫瘍内注射の効果を、最後の腫瘍内処置の終了の2日後に、Nanostring Cancer immunology遺伝子セット(nCounter)を用いて、RNAサンプルにおいて免疫遺伝子発現について分析した。結果を、解析した各遺伝子セットのスコア変化としてまとめた。遺伝子セットによる発現の差のグローバルスコアは、生理食塩水処理群(群ごとにn=4)に対する相対的なスコアとした。評価された微小環境特性には以下のものが含まれた。B細胞機能、インターロイキン、TNFスーパーファミリー、抗原プロセシング、MHC、適応免疫、トランスポーター機能、接着性、NK細胞機能、T細胞機能、CD分子、白血球機能、補体経路、ミクログリア機能、液性免疫、TLR、炎症、樹状細胞機能、インターフェロン、自然免疫、マクロファージ機能、ケモカインおよび受容体、老化、アポトーシス、サイトカインおよび受容体、癌の進行、基礎細胞機能、細胞周期ならびに病原体応答。
【0072】
実施例9
mCMV感染は、インフレーション性(Inflationary)C57BL/6マウスのCD8+ T細胞応答を誘導する
C57Bl/6マウスに、5x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。血液サンプルを、感染の1ヶ月後または5ヶ月後に採血した。インフレーション性(IE3)および非インフレーション性(m45)特異的CD8+ T細胞を、MHC-I四量体染色を用いたFACSにより検出した。図8に示すように、mCMV感染は、異なるエフェクターおよびメモリーCD8+ T細胞応答を誘導した。
【0073】
実施例10
mCMV感染は、C57BL/6マウスにおいて強力なCD8+およびCD4+ T細胞応答を誘導する
C57Bl/6マウスに、5x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染後12日目に血液サンプルを採血した。脾臓細胞を、示されたペプチドおよびm38、m45、m57、m122、m139、m141およびm164 mCMVタンパク質から選択された免疫原性ペプチドの集団を含む血液細胞で再刺激した。CD4+およびCD8+ T細胞によるIFN-γ、TNF-αおよびIL-2サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色により評価し、FACSにより分析した(図9A、9B)。これらの結果は、マウスサイトメガロウイルス感染が大規模なサイトカイン応答を誘導することを示す。
【0074】
実施例11
mCMV特異的CD8+ T細胞の組織分布
腫瘍保有マウスにおけるmCMV特異的CD8+ T細胞の分布を調べた。C57Bl/6マウスに、5x10mCMVを感染させた。実験スケジュールを図10Aに示す。感染から4ヶ月後に、マウスに、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10TC-1腫瘍細胞を皮下注射した。リンパ節、脾臓、唾液腺および腫瘍組織を採取し、インフレーション性(IE3;図10B)および非インフレーション性(m45;図10C)特異的CD8+ T細胞を、MHC-I四量体染色を用いたFACSにより検出した。常在性記憶T細胞マーカーの発現を、CD69およびCD103抗体を用いて評価した。これらの結果は、TC1腫瘍がmCMV特異的CD8+ T細胞によって浸潤されていることを示した。
【0075】
実施例12
腫瘍微小環境の遺伝子発現解析
マウスモデルの腫瘍細胞における遺伝子の発現を、生理食塩水;ポリI:C(PIC)(50μg);mCMV m139ペプチド(MHC-II制限/CD4)(CD4)(3μg);mCMV m38、m122、m45ペプチド(MHC-I制限/CD8)(CD8)(各1μg);mCMV m139+ポリI:C(PIC CD4)(各3μg);mCMV m38、m122、m45ペプチド(MHC-I制限/CD8)+ポリI:C(PIC CD8)(各1μg)による腫瘍内処置(各群4匹)後に調べた。腫瘍を、TC1腫瘍細胞を皮下に配置後、11週、13週および16週に3回処置した。実験プロトコルのタイムラインを、図11Aに示す。処置および腫瘍採取に続いて、QIACubeを用いて腫瘍RNAを抽出した。腫瘍細胞遺伝子発現を、tumor PanCancer Immune Profiling Panelの770個の遺伝子を形成する遺伝子転写物を測定するNanostring Cancer immunology遺伝子セット(NS_MM_CANCERIMM_C3400)を用いて分析した。簡潔には、正規化されたデータは、特定の生物学的プロセス(適応免疫、抗原プロセシング、T細胞機能、樹状細胞機能、NK細胞機能、インターフェロン、TNFスーパーファミリー遺伝子)内の遺伝子セット発現のヒートマップとして表される。生理食塩水処置に対する遺伝子発現変化のボルケーノプロットを構築する(プロットは、対照処置(生理食塩水)に対する処置群の変化(倍数増加または倍数減少で表される)を統計的有意性をもって表す)。細胞浸潤定量化アルゴリズムを適用する(CD45、細胞傷害性CD8、CD4 Th1、NK細胞、樹状細胞)。結果は、MHC-I制限/CD8およびMHC-I制限/CD8+ ポリ(I:C)処置動物において、グローバルな有意差スコアの最大変化を示した。
【0076】
腫瘍内処置後の腫瘍RNA全体の免疫遺伝子のプロファイリングでは、以下の3つの群で免疫遺伝子の有意な上方制御が示された。
1)mCMV m139ペプチド:MHC-II制限/CD4 - 3mg(230個の遺伝子が上方制御され、4個の遺伝子が下方制御された)。
2)mCMV m38、IE3、m45ペプチド:MHC-I制限/CD8 - 1mg(359個の遺伝子が上方制御され、43個の遺伝子が下方制御された)。
3)mCMV m38、IE3、m45ペプチド:MHC-I制限/CD8+ ポリ(I:C)(309個の遺伝子が上方制御され、49個の遺伝子が下方制御された)。
【0077】
白血球による腫瘍の浸潤もまた、腫瘍内処置後に分析した。図11Bから11Fは、異なる白血球による腫瘍浸潤を示す。これらのデータは、CD8 mCMVエピトープ(ポリ(I:C)の有無下)の腫瘍内注射が、腫瘍内のT細胞および非T細胞(NK細胞)の動員を誘導することを示し;そして、ポリ(I:C)と共にCD4 mCMVエピトープの腫瘍内注射が、腫瘍内のT細胞および非T細胞(NK細胞)の動員を誘導することを示し;そして、CD8またはCD4エピトープと共にポリ(I:C)の腫瘍内注射が、腫瘍内の樹状細胞の動員を誘導することを示している。
【0078】
実施例13
mCMV CD8エピトープの腫瘍増殖を遅延せるmCMVの腫瘍内注射
C57Bl/6マウスに、5x10 pfuのマウスサイトメガロウイルス(mCMV)を感染させた。感染から4ヶ月後に、E6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10のTC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍増殖を電子ノギスを用いて測定した。腫瘍を、11、13、16、18、21および23日目に、ポリ(I:C)(30μg)の有無下、選択されたMHC-I制限m38、m45およびm122ペプチド(各0.01μg、0.1μgまたは1μg)を、および対照として生理食塩水またはポリ(I:C)単独を、腫瘍内注射した。図12Aおよび12Bは、mCMV MHC-I制限ペプチドの腫瘍内注射が腫瘍増殖を遅延させ、ポリ(I:C)共注射が腫瘍制御を改善することを示す。
【0079】
実施例14
ポリ(I:C)を用いたmCMV MHC-Iおよび/またはMHC-IIペプチドの腫瘍内注射によるTC1およびMC38 腫瘍暴露からの保護
C57Bl/6マウスに、5x10 mCMVを感染させた。感染から4ヶ月後、マウスにE6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10のTC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍増殖および生存をモニタリングした。腫瘍を、12日目から28日目まで、ポリ(I:C)(30μg)の有無下、MHC-I制限された選択されたm38、m45およびm122ペプチド、および/またはMHC-II制限された選択されたm139ペプチド、ならびに対照として生理食塩水またはポリ(I:C)単独を、6回、腫瘍内注射した。群は、MHC-Iペプチドで6回、またはMHC-IIペプチドで6回、またはMHC-IおよびMHC-IIペプチドを共に6回、またはMHC-Iペプチドで3回、次いでMHC-IIペプチドで3回、またはMHC-IIペプチドで3回、次いでMHC-Iペプチドで3回、を順次注射した。図13Aは、mCMV MHC-IおよびMHC-II制限ペプチドの組合せの腫瘍内注射が腫瘍増殖を遅延させることを示し、図13Bは、CD4(MHC-II)mCMVエピトープ、次いでCD8(MHC-I)mCMVエピトープでの逐次的な腫瘍内接種が長期生存を促進することを示している。
【0080】
実施例15
処置後の、血中E7四量体陽性CD8 T細胞応答
C57Bl/6マウスに、5x10 mCMVを感染させた。感染から4ヶ月後、マウスにE6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10のTC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍の大きさを電子ノギスを用いて測定した。腫瘍を、12日目から28日目まで、ポリ(I:C)(30ug)の有無下、MHC-I制限された選択されたm38、m45およびm122ペプチド、および/またはMHC-II制限された選択されたm139ペプチド、ならびに対照として生理食塩水またはポリ(I:C)単独を、6回、腫瘍内注射した。すべてのペプチドをポリ(I:C)(30ug)と共に注射した。群は、MHC-Iペプチドで6回、またはMHC-IIペプチドで6回、またはMHC-IおよびMHC-IIペプチドを共に6回、またはMHC-Iペプチドで3回、次いでMHC-IIペプチドで3回、またはMHC-IIペプチドで3回、次いでMHC-Iペプチドで3回を順次注射した。血中のE7-、m45-、m122-特異的CD8+ T細胞応答を、各ペプチドのMHC-I四量対を用いてFACSにより分析した。図14は、mCMV CD4エピトープ、次いでCD8エピトープでの逐次的な腫瘍内接種が、優先的に抗腫瘍免疫を誘導することを示す。
【0081】
実施例16
二次腫瘍暴露に対する長期的な保護
上記のよう一次腫瘍暴露を生き延びた保護されたC57Bl/6マウスを、一次暴露の反対側の脇腹にE6およびE7腫瘍性タンパク質を発現する2x10TC-1腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍増殖を電子ノギスを用いて測定した。腫瘍摂取の対照として、若齢(12週齢)のおよび年齢を合わせた(10ヶ月齢)マウスをTC-1腫瘍細胞で暴露した。図15は、一次腫瘍の完全クリアランスが二次腫瘍暴露に対する長期的な保護をもたらすことを示す。
【0082】
実施例17
ポリ(I:C)と共にmCMV MHC-IペプチドおよびMHC-IIペプチドの腫瘍内注射によるMC38腫瘍暴露からの保護
C57Bl/6マウスを5x10 mCMVに感染させた。感染の4ヶ月後に、マウスに、ハイパーミュテーションおよびマイクロサテライト不安定性を示すマウス結腸腺癌由来の5x10 MCM38腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍増殖をモニタリングした。腫瘍を、12日目から28日目まで、ポリ(I:C)(30μg)の有無下、MHC-I制限された選択されたm38、m45およびm122ペプチド、またはMHC-II制限された選択されたm139ペプチドのみ、ならびに対照として生理食塩水のみを、6回、腫瘍内注射した。図16は、一次腫瘍の完全なクリアランスが、二次腫瘍暴露に対する長期的な保護をもたらすことを示す。図16は、mCMV MHC-IおよびMHC-III制限ペプチドの組合せの腫瘍内注射が、腫瘍増殖を遅延させ、腫瘍クリアランスをもたらすことを示す。
【0083】
実施例1から17に記載の試験は、非インフレーション性およびインフレーション性のmCMV特異的T細胞の両方が、潜在的なmCMV感染の間に腫瘍に浸潤し、確立された抗ウイルスT細胞を固形腫瘍に再指向させることが、腫瘍免疫微小環境の深い変化に、腫瘍の退行を導くことを証明する。データはまた、確立された抗ウイルスCD4+ T細胞を固形腫瘍に再指向させることが、腫瘍関連抗原へのエピトープの拡散および腫瘍の完全なクリアランスを促進することを示している。したがって、これらの方法は、既存の抗ウイルスT細胞に基づく、広く適用可能な“抗原アゴニスト性”腫瘍処置を提供する。
【0084】
HPV L1およびL2粒子は、多数の腫瘍細胞に対して強い指向性(トロピズム)を示すが、無傷の上皮に結合または感染しない。したがって、HPV PsVまたはVLPは、抗腫瘍剤を遺伝的にまたは直接、腫瘍細胞への担体として用いることができる。
【0085】
本発明を特定の態様を参照して説明したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ、等価物が代用され得ることは、当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成物、プロセス、プロセス工程(複数可)を、本発明の目的、精神および範囲に適合させるために、多くの改変がなされてもよい。そのような修正はすべて、特許請求の範囲の範囲内であることが意図されている。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2023106591000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において固形腫瘍を処置するための、サイトメガロウイルス(CMV)タンパク質由来の少なくとも1つのMHC II制限ペプチド及び免疫応答を増強する薬剤を含む医薬組成物であって、ここで、前記CMVタンパク質は、pp65、gB、IE-1、gH、及びgLからなる群から選択され、前記ペプチドは天然の既存の免疫応答を腫瘍部位に動員し、それにより腫瘍を処置するものであり、かつ前記医薬組成物は固形腫瘍への注射用である、前記医薬組成物。
【請求項2】
それぞれのMHC II制限ペプチドは独立して配列番号1~33のうちの1つの配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
配列番号1~33を含むMHC II制限ペプチドを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
免疫応答を増強する前記薬剤が、TLRアゴニスト、IL-1R8サイトカインアンタゴニスト、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、グラム陽性菌から単離されたペプチドグリカン、グラム陽性菌から単離されたリポテイコ酸、グラム陽性菌から単離されたリポタンパク質、マイコバクテリアから単離されたリポアラビノマンナン、酵母細胞壁から単離されたザイモサン、ポリアデニル-ポリウリジル酸、ポリ(I:C)、リポ多糖、モノホスホリルリピドA、フラジェリン、ガーディキモド(Gardiquimod)、イミキモド、R848、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオシド、CD40アゴニスト、および23SリボソームRNAからなる群から選択される、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
免疫応答を増強する前記薬剤が、ポリ(I:C)である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ペプチドは処置の開始前に腫瘍細胞によって発現されておらず、また前記ペプチドは既存の免疫応答の1以上の構成要素により認識される、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
CMVに対する前記既存の免疫応答が以前のCMV感染によるものである、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記個体は、前記個体に前記医薬組成物を投与する前に、抗原に対する既存の免疫応答を有することが確認されている、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記既存の免疫応答の存在が、前記個体由来のサンプルにおいて前記抗原に対するT細胞応答を同定することにより確認されている、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記1以上の構成要素がT細胞である、請求項6~9のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記既存の免疫応答の動員が、B細胞機能、インターロイキン、TNFスーパーファミリー、抗原プロセシング、MHC、適応免疫、トランスポーター機能、接着、NK細胞機能、T細胞機能、CD分子、白血球機能、補体経路、ミクログリア機能、液性免疫、TLR、炎症、樹状細胞機能、インターフェロン、自然免疫、マクロファージ機能、ケモカインおよび受容体、老化、アポトーシス、サイトカインおよび受容体、癌の進行、基本的な細胞機能、細胞周期、および病原体の反応から選択される癌の微小環境を変化させる、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
CMVタンパク質由来の少なくとも1つのMHC I制限ペプチドをさらに含み、前記CMVタンパク質はpp50、pp65、pp150、gB、IE-1、IE-2、US2、US6、UL16およびUL18からなる群より選択される、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
それぞれのMHC I制限CMVペプチドは独立して配列番号34~67のうちの1つの配列を含む、請求項12に記載の医薬組成物。