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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106621
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20230725BHJP
   H10K 50/88 20230101ALI20230725BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K50/88
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092181
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2022026388の分割
【原出願日】2014-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸二
(72)【発明者】
【氏名】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄司
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 真滋
(57)【要約】
【課題】発光素子を被覆膜で覆った場合において、この被覆膜の端部から被覆膜の内側に向けてクラックが進行しても、このクラックによる発光素子の劣下を抑制する。
【解決手段】発光装置10は、基板100、絶縁層160、発光素子102、被覆膜140、及び構造物150を備えている。絶縁層160は基板100の一面に形成されており、開口162を有している。発光素子102は開口162に形成されている。被覆膜140は基板100の上記した一面に形成されており、発光素子102、絶縁層160、及び基板100の上記した一面の一部を被覆している。基板100の他の一部例えば端部の一部:以下、第1部分と記載は被覆膜140で被覆されていない。構造物150は、基板100の第1部分と絶縁層160の間に位置している。被覆膜140は、絶縁層160も被覆している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機膜を有する基板と、
前記基板に位置し、開口を有する絶縁層と、
前記開口に位置する発光素子と、
前記基板に位置し、前記発光素子、前記絶縁層、及び前記基板の一部を被覆する被覆膜と、
前記発光素子と電気的に接続する複数の配線と、
を備え、
前記基板のうち前記絶縁層で覆われていない領域の一部である第1部分は前記被覆膜で覆われておらず、
さらに、前記第1部分と前記絶縁層の間に位置する構造物を備え、
前記被覆膜は、前記構造物及び前記複数の配線を被覆し、前記複数の配線の間において、前記無機膜に接しており、
少なくとも前記基板の第1の辺に沿って位置し、前記配線と電気的に接続する端子をさらに備え、
前記基板を前記発光素子が位置する面側から見たとき、
前記複数の配線は、前記基板の辺のうち前記第1の辺とは異なる第2の辺と、前記発光素子と、の間において、前記基板の前記第2の辺から前記発光素子が位置する方向に並んでおり、
前記基板の前記第2の辺から前記発光素子が位置する前記方向において、前記被覆膜の端部は、前記基板の前記第2の辺と前記発光素子との間における前記複数の配線のうち最も前記発光素子から遠い配線に対して前記第2の辺側に位置しており、かつ前記基板の前記第2の辺から離れて位置している発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、有機EL素子を光源として利用した発光装置の開発が進んでいる。有機EL素子は、発光層として有機層を用いているため、封止構造が必要である。一般的には、有機EL素子は、ガラスや金属などで形成された封止部材を用いて封止されている。そして、有機EL素子に接続する端子は、この封止部材の外部に配置されている。
【0003】
一方、特許文献1には、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて封止膜を形成することにより、有機EL素子を封止することが記載されている。特許文献1には、隔壁などの逆テーパ形状を有する部分では応力が集中しやすいため、封止膜にクラックが入りやすい、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-097917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL素子などの発光素子を膜で被覆することによって封止する場合、膜の端部から膜の内側に向けてクラックが進行することがある。このクラックが発光素子を囲む絶縁層まで到達すると、封止特性が低下する可能性が出てくる。封止特性が低下すると、クラックから発光素子を劣化させるガス(例えば酸素)や水分が侵入し、絶縁層を介して発光素子に達してしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、発光素子を被覆膜で覆った場合において、この被覆膜の端部から被覆膜の内側に向けてクラックが進行しても、このクラックによる発光素子の劣下を抑制することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板と、
前記基板に形成され、開口を有する絶縁層と、
前記開口に形成された発光素子と、
前記基板に形成され、前記発光素子、前記絶縁層、及び前記基板の一部を被覆する被覆膜と、
を備え、
前記基板のうち前記絶縁層で覆われていない領域の一部である第1部分は前記被覆膜で覆われておらず、
さらに、前記第1部分と前記絶縁層の間に位置する構造物を備え、
前記被覆膜は、前記構造物を被覆している発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0009】
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図2図1に示した発光装置の平面図である。
図3図2のB-B断面図である。
図4】基板に、被覆膜で覆われていない領域を形成する方法を説明するための断面図である。
図5】実施例1に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図6】実施例1に係る発光装置の製造方法を説明するための平面図である。
図7】実施例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図8】実施例3に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図9】実施例4に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図10図9から第2電極及び隔壁を取り除いた図である。
図11図9のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。図2図1に示した発光装置10の平面図である。図1図2のA-A断面図である。図3は、図2のB-B断面図である。
【0012】
実施形態に係る発光装置10は、例えば照明装置やディスプレイであり、基板100、絶縁層160、発光素子102、被覆膜140、及び構造物150を備えている。絶縁層160は基板100の一面に形成されており、開口162を有している。発光素子102は開口162に形成されている。被覆膜140は基板100の上記した一面に形成されており、発光素子102、絶縁層160、及び基板100の上記した一面の一部を被覆している。基板100の他の一部(例えば端部の一部:以下、第1部分と記載)は被覆膜140で被覆されていない。構造物150は、基板100の第1部分と絶縁層160の間に位置している。被覆膜140は、絶縁層160も被覆している。発光素子102は、例えば有機EL素子である。以下、詳細に説明する。
【0013】
基板100は、たとえばガラス基板や樹脂基板などの透明基板である。基板100は、可撓性を有していてもよい。この場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。この場合においても、基板100は無機材料及び有機材料のいずれで形成されていてもよい。基板100は、例えば矩形などの多角形である。なお、基板100が樹脂基板である場合、基板100のうち発光素子102が形成される面には、酸化シリコン膜などの無機材料膜が形成されている。これにより、基板100を水分等が透過して発光素子102に到達することを抑制できる。
【0014】
基板100の上には、絶縁層160が形成されている。絶縁層160は、開口162を有している。開口162の中には発光素子102が形成されている。言い換えると、発光素子102が形成されるべき領域を区画している。絶縁層160は、ポリイミドや酸化珪素、窒化珪素などの材料で形成されている。
【0015】
発光素子102は、第1電極110と第2電極130の間に有機層120を挟んだ構成を有している。第1電極110及び第2電極130のうち少なくとも一方は透光性の電極になっている。また、残りの電極は、例えばAl、Mg、Au、Ag、Pt、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層によって形成されている。透光性の電極の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の無機材料、またはポリチオフェン誘導体などの導電性高分子、又は銀もしくは炭素からなるナノワイヤを利用した網目状電極である。例えば、ボトムエミッション型の発光素子102であって、基板100の上に第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層した構成を有している場合、第1電極110は透光性の電極になっており、第2電極130は、Alなど光を反射する電極になっている。また、トップエミッション型の発光素子102であって、基板100の上に第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層した構成を有している場合、第1電極110はAlなど光を反射する電極になっており、第2電極130は透光性の電極になっている。また、両方の電極(第1電極110、第2電極130)を透光性の電極として、透光型の発光装置としても良い(デュアルエミッション型)。
【0016】
有機層120は、例えば、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に積層させた構成を有している。正孔輸送層と第1電極110の間に正孔注入層が形成されていてもよい。また、電子輸送層と第2電極130の間に電子注入層が形成されていてもよい。有機層120の層は、塗布法によって形成されても蒸着法によって形成されてもよく、一部を塗布法、残りを蒸着法で形成しても良い。なお、有機層120は蒸着材料を用いて蒸着法で形成してもよく、また、有機層120は、塗布材料を用いて、インクジェット法、印刷法、スプレー法で形成されてもよい。
【0017】
基板100のうち発光素子102が形成されている面には、端子112,132が形成されている。端子112は第1電極110と電気的に接続しており、端子132は第2電極130と電気的に接続している。詳細には、第1電極110の一部の上には、有機層120が形成されておらず、かつ、絶縁層160の外側に位置している。そして、この部分が端子112となっている。また端子132は、第1電極110と同一の層を有している。本図に示す例では、端子112は配線116を介して第1電極110に接続しており、端子132は配線136を介して第2電極130に接続している。配線116,136は、いずれも第1電極110と同一の層を有している。
【0018】
本図に示す例において、端子112は、第1電極110の上に第2層114を積層した構成を有している。また端子132は、第1電極110と同一の層の上に第2層134を積層した構成を有している。第2層114,134は、第1電極110を形成している材料よりも低抵抗な材料、例えば金属によって形成されている。第2層114,134は、例えばMo、Al、及びMoをこの順に積層した構成を有している。なお、MoやAlには、他の金属が添加されていても良い。なお、配線116,136の少なくとも一部の上にも、第2層114,134が形成されていても良い。ただし、端子112,132の上には、第2層114,134が形成されていなくても良い。
【0019】
被覆膜140は、成膜法、例えばALD法又はCVD法を用いて形成されている。ALD法で形成されている場合、被覆膜140は、例えば酸化アルミニウムなどの酸化金属膜によって形成されており、その膜厚は、例えば10nm以上200nm以下、好ましくは、50nm以上100nm以下である。CVD法で形成されている場合、被覆膜140は、酸化シリコン膜などの無機絶縁膜によって形成されており、その膜厚は、例えば0.1μm以上10μm以下である。被覆膜140が設けられることにより、発光素子102は水分等から保護される。被覆膜140は、スパッタリング法で形成されても良い。この場合、被覆膜140は、SiO又はSiNなど絶縁膜によって形成される。その場合、膜厚は10nm以上1000nm以下である。
【0020】
上記した端子112,132は、基板100の縁の近くに形成されている。そして、被覆膜140は、基板100の縁のうち、端子112,132の近くに位置する部分には形成されていない。このため、端子112,132は、被覆膜140に覆われていない。そして、基板100のうち被覆膜140に被覆されていない部分と、絶縁層160の間には、構造物150が形成されている。本図に示す例では、構造物150は、端子112と絶縁層160の間、及び端子132と絶縁層160の間のそれぞれに形成されている。
【0021】
構造物150は樹脂や無機材料などの絶縁物によって形成されている。構造物150が感光性を有する材料で形成されている場合、構造物150は、この材料を基板100の上に塗布して層を形成した後、この層を露光及び現像することにより、形成される。また構造物150が無機材料で形成されている場合、構造物150は、構造物150となる層をCVD法又はスパッタリング法で形成した後、この層を選択的に除去することにより、形成される。
【0022】
構造物150は、第1の方向(図2におけるY方向)に延在している。そして第1の方向において、構造物150は、絶縁層160よりも長い。本図に示す例では、構造物150は、配線116又は配線136を横切るように形成されている。このため、構造物150の下面には、基板100に接している部分と、配線116又は配線136に接している部分とがある。
【0023】
そして図3に示すように、構造物150の下面が基板100に接している部分の近傍では、被覆膜140は、基板100のうち構造物150と端子112の間に位置する部分(第2部分)と、構造物150と絶縁層160の間に位置する部分(第3部分)とで、基板100に接している。被覆膜140が無機材料で形成されている場合、基板100と被覆膜140との接合は、無機材料同士の接合になるため、被覆膜140と絶縁層160の接合と比較して、強い。
【0024】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100上に第1電極110及び端子112,132を形成する。第1電極110及び端子112,132は、例えば蒸着法又はスパッタリング法を用いて形成される。次いで、第1電極110の周囲を覆うように絶縁層160を形成する(図2参照)。次いで、第1電極110上に有機層120を形成する。また、構造物150を形成する。
【0025】
次いで、第2電極130を形成し、さらに被覆膜140を形成する。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成され、被覆膜140は、例えばALD法又はCVD法を用いて形成される。
【0026】
図4は、基板100に、被覆膜140で覆われていない領域を形成する方法を説明するための断面図である。上記したように被覆膜140は、端子112,132を覆っていない。このようにするためには、例えば、被覆膜140を形成する前に、基板100のうち端子112,132が形成されている領域を、リフトオフ層200で覆う。リフトオフ層200は、例えば有機材料で形成されている。リフトオフ層200のガラス転移温度又は相転移温度(例えば融点)は、被覆膜140のガラス転移温度又は相転移温度(例えば融点)よりも低い。なお、リフトオフ層200を構成する材料の線膨張係数は、被覆膜140を構成する材料の線膨張係数よりも大きいのが好ましい。
【0027】
そして、被覆膜140を形成したのち、基板100を加熱及び冷却する。この際、被覆膜140のうちリフトオフ層200の上方に位置する部分にはクラックが発生する。そして、端子112,端子132の近傍を、リフトオフ層200を溶解する溶液で洗浄すると、被覆膜140に生じたクラックを介してこの溶液がリフトオフ層200に接触し、リフトオフ層200が除去される。この際、リフトオフ層200のうちリフトオフ層200の上方に位置していた部分が除去される。
【0028】
被覆膜140の端部には、クラックが発生することがある。このクラックは、例えば上記したリフトオフ層200を除去する工程や、端子112,132に異方性導電膜、リード端子やボンディングワイヤなどの導通部材を接続するときに発生する。被覆膜140の端部にクラックが発生すると、このクラックは発光素子102に向けて進行する。これに対して本実施形態では、基板100のうち被覆膜140が形成されていない領域と絶縁層160の間には、構造物150が形成されている。構造物150が第1の方向(図2のy方向)に延在することにより、第1の方向に交わる第2の方向(図2のx方向)に進行するクラックを第1の方向に変更する。このため、被覆膜140に発生したクラックが発光素子102まで進行することを抑制できる。これにより、発光素子を劣化させるガス(例えば酸素)や水分が発光素子に達することを抑制できる。
【0029】
特に、絶縁層160の外側の側面(すなわち開口162とは逆側の側面)が、絶縁層160の下面が広がる方向に傾斜していた場合、被覆膜140のクラックが絶縁層160の縁に到達すると、絶縁層160を介して水分やガスなどが発光素子102まですぐに進行してしまう。このような場合でも、本実施形態では構造物150を設けているため、被覆膜140に発生したクラックに起因して発光素子102が劣化することを抑制できる。言い換えると、発光装置10の封止性能を維持できる。
【0030】
また、構造物150まで到達したクラックは、構造物150が延在する方向に進行することがある。この場合においても、本図に示す例では、第1の方向(図2におけるY方向)において、構造物150の長さは絶縁層160の幅よりも大きい。第2の方向(図2のx方向)に進路変更されたクラックが構造物150の長さ方向にわたって進行したとしても、構造物150の長さが絶縁層160の幅より大きいため、被覆膜140に発生したクラックが絶縁層160まで進行することをさらに抑制できる。
【0031】
また、被覆膜140は、基板100のうち構造物150と端子112の間に位置する部分(第2領域)と、構造物150と絶縁層160の間に位置する部分(第3領域)とで、基板100に接している。このため、第2領域及び第3領域では、被覆膜140のクラックは進行しにくい。従って、被覆膜140に発生したクラックが絶縁層160まで達し、このクラックから侵入するガスや水分によって発光素子102が劣化することをさらに抑制できる。
【実施例0032】
(実施例1)
図5は、実施例1に係る発光装置10の構成を示す平面図であり、実施形態における図2に対応している。本実施例に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0033】
まず、被覆膜140の縁は、全周にわたって基板100の縁よりも基板100の内側に位置している。そして構造物150は、絶縁層160の全周を囲んでいる。
【0034】
図6は、本実施例に係る発光装置10の製造方法を説明するための平面図である。本実施例において、複数の発光装置10は、基板100が互いに繋がった状態で同時に形成される。そして、被覆膜140が形成された後に、ダイシングブレード等を用いて、複数の発光装置10を互いに切り離す。一例として、スクライブライン12に被覆膜140が形成されていると、発光装置10を互いに切り離す際に、被覆膜140に大きなクラックが生じる可能性がある。このため、被覆膜140は、全周にわたってスクライブライン12から離れて形成されているのが好ましい。具体的には、被覆膜140を形成する前に、リフトオフ層200を、スクライブライン12及びその近くに塗布する。
【0035】
ここで、構造物150が絶縁層160の全周を囲むように形成されている。このため、被覆膜140の縁のいずれかの部分にクラックが入った場合でも、このクラックによって発光素子102が劣化することを抑制できる。
【0036】
(実施例2)
図7は、実施例2に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図3に対応している。本実施例に係る発光装置10は、構造物150の断面形状を除いて、実施形態又は実施例1に係る発光装置10と同様の構成である。
【0037】
本実施例において、構造物150の幅方向(第2の方向)の断面において、構造物150の上面は、構造物150の下面よりも幅が広くなっている。具体的には、構造物150の断面は、上底が下底よりも長い台形となっている。このような構造は、構造物150を形成するときの条件(例えば構造物150が感光性の材料によって形成されている場合には露光条件)を制御することにより、実現できる。
【0038】
本実施例によっても、被覆膜140の縁で発生したクラックが発光素子102まで到達することを抑制できる。また、構造物150の側面は、上に行くにつれて構造物150の幅が広くなる方向に傾斜しているため、第1方向(図2のy方向)から第2の方向(図2のx方向)へとクラックを進路変更しやすくなる。したがって、被覆膜140の縁で発生したクラックによる発光素子102の劣化を抑制できる。
【0039】
(実施例3)
図8は、実施例3に係る発光装置10の構成を示す平面図である。本実施例に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様の構成である。なお、図8では、説明のため、第2電極130及び端子132の図示を省略している。
【0040】
本実施例において、発光装置10は複数の発光素子102を有している。隣り合う発光素子102の間には、絶縁層160が形成されている。そして、複数の発光素子102のそれぞれと電気的に接続する端子112が形成されている。複数の端子112は、互いに並んで、基板100の縁に配置されている。いずれの端子112も、被覆膜140から露出している。そして構造物150は、複数の発光素子102が形成されている領域の全周を囲んでいる。構造物150の断面形状は、実施例2と同様の形状であっても良い。
【0041】
なお、端子132も、端子112と同様に配置されている。
【0042】
本実施例によっても、被覆膜140の縁で発生したクラックが発光素子102まで到達することを抑制できる。
【0043】
(実施例4)
図9は、実施例4に係る発光装置10の構成を示す平面図である。図10は、図9から第2電極130及び隔壁135を取り除いた図である。図10においては、説明のため、第2電極130を点線で示している。図11は、図10のC-C断面図である。図10は、実施例3における図8に対応している。本実施例に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施例3に係る発光装置10と同様の構成である。
【0044】
本実施例において、発光装置10はディスプレイであり、マトリクス状に配置された複数の発光素子102を有している。そして、構造物150は、複数の発光素子102をまとめて囲んでいる。構造物150の断面形状は、実施例2と同様の形状であっても良い。
【0045】
詳細には、複数の第1電極110が互いに平行に延在しており、かつ、複数の第2電極130が、互いに平行かつ第1電極110と交わる方向(例えば直交する方向)に延在している。そして、第1電極110と第2電極130の交点のそれぞれに、発光素子102が形成されている。具体的には、絶縁層160は、複数の第1電極110の上に跨って形成されている。絶縁層160のうち、第1電極110と第2電極130の交点に位置する部分には開口が形成されている。そして、この開口内に有機層120が設けられる。すなわち、発光素子102が絶縁層の開口に形成されることになる。
【0046】
端子112は複数の第1電極110のそれぞれと電気的に接続されており、また、端子132は複数の第2電極130のそれぞれと電気的に接続されている。複数の端子112,132は、いずれも基板100の縁に沿って配置されている。本図に示す例では、複数の端子112,132は、いずれも基板100の同一の辺に沿って配置されている。ただし、端子112と端子132は、基板100のうち互いに異なる辺に沿って配置されていてもよい。
【0047】
また、絶縁層160の上には、隔壁135が形成されている。隔壁135は、複数の第2電極130の間に位置している。隔壁135の断面は、上底が下底よりも長い台形となっている。隔壁135の上面には、第2電極130と同様の材料からなる導電層が形成されている。隔壁135は、第2電極130を蒸着法又はスパッタリング法で形成する際に、隣り合う第2電極130を互いに分離するために設けられている。このため、隔壁135は、絶縁層160が形成された後、隔壁135が形成される前(好ましくは有機層120が形成される前)に形成される。
【0048】
そして、本実施例では、構造物150は隔壁135と同一工程で形成されている。このため、構造物150は隔壁135と同一の材料によって形成されており、また、構造物150の断面も、上底が下底よりも長い台形となっている。構造物150及び隔壁135は、例えば感光性の材料によって形成されており、露光条件を制御することにより、上記した断面形状になっている。
【0049】
本実施例によっても、被覆膜140の縁で発生したクラックが発光素子102まで到達することを抑制できる。また、構造物150を隔壁135と同一工程で形成しているため、発光装置10の製造工程数を少なくすることができる。その結果、発光装置10の製造コストを下げることができる。構造物150の断面形状が台形であることにより、クラックの進行方向を変更(第1の方向から第2の方向へ変更)しやすくなる。
【0050】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
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