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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106636
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ヒト抗破傷風毒素抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/12 20060101AFI20230726BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230726BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230726BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230726BHJP
【FI】
C07K16/12
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
A61P31/04
A61P39/02
A61K39/395 R
C12P21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020089756
(22)【出願日】2020-05-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医薬品等規制調和・評価研究事業」「特殊な血液製剤や遺伝子組換え製剤の製造等に関する研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000231729
【氏名又は名称】日本赤十字社
(74)【代理人】
【識別番号】100110456
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 務
(74)【代理人】
【識別番号】100117813
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 憲広
(72)【発明者】
【氏名】安居 輝人
(72)【発明者】
【氏名】南谷 武春
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正博
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA15
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085CC07
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045EA52
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】破傷風菌の感染により生体内で発生する破傷風毒素(TeNT)を中和し、破傷風菌の感染の治療のために使用することができる、組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を1または複数種類含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】過去に破傷風の予防接種を行った個体から破傷風毒素(TeNT)に対する抗体を産生する複数の細胞を見出し、それらから1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有し、破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有する、組換え抗体または組換え抗体誘導体を作製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有し、破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体。
【請求項2】
遺伝子組換えにより製造される、請求項1に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項3】
破傷風毒素(TeNT)由来抗原が、破傷風毒素(TeNT)、またはその変性物、あるいはそれらの構成成分のいずれかから選択される、請求項1または2に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項4】
破傷風毒素(TeNT)由来抗原が、破傷風毒素(TeNT)のLcドメイン、Hnドメイン、Hcドメイン、または破傷風トキソイドのいずれか1または複数の組み合わせである、請求項3に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項5】
抗体誘導体が、ヒト化抗体、キメラ抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項6】
機能的断片が、F(ab')2である、請求項5に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項7】
以下の(i)から(iv)のいずれか:
(i) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 1)、CDR2(SEQ ID No.: 2)、CDR3(SEQ ID No.: 3)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 4)、CDR2(SEQ ID No.: 5)、CDR3(SEQ ID No.: 6)、
(ii) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 7)、CDR2(SEQ ID No.: 8)、CDR3(SEQ ID No.: 9)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 10)、CDR2(SEQ ID No.: 11)、CDR3(SEQ ID No.: 12)、
(iii) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 13)、CDR2(SEQ ID No.: 14)、CDR3(SEQ ID No.: 15)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 16)、CDR2(SEQ ID No.: 17)、CDR3(SEQ ID No.: 18)、
(iv) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 19)、CDR2(SEQ ID No.: 20)、CDR3(SEQ ID No.: 21)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 22)、CDR2(SEQ ID No.: 23)、CDR3(SEQ ID No.: 24)、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項8】
抗体または抗体誘導体が、以下の(a)から(d)のいずれか:
(a)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 25を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 26を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(b)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 27を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 28を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(c)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 29を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 30を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(d)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 31を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 32を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項9】
抗体または抗体誘導体が、
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 33)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 34)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 35)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 36)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 37)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 38)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 39)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 40)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体を含む、破傷風毒素(TeNT)を中和するための医薬組成物。
【請求項11】
抗体または抗体誘導体を複数種類含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破傷風菌の感染により生体内で発生する破傷風毒素(TeNT)を中和するための組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を1または複数種類含む破傷風毒素(TeNT)を中和するための医薬組成物を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の一種である破傷風は、現在でも、アフリカや南アジアなどの発展途上国での発症が多くみられ、年間約30~50万人が死亡していると推計されている。日本においても、現在でも、毎年100例ほどの罹患報告があり、根絶には至っていない(非特許文献1、非特許文献2)。破傷風が根絶されない理由としては、破傷風を引き起こす破傷風菌の生態や産生される毒素などが考えられる。
【0003】
破傷風感染症は、クロストリジウム属に属するグラム陽性の偏性嫌気性菌である破傷風菌(Clostridium tetani)の感染によって発症する感染症である。偏性嫌気性である破傷風菌は、好気的な環境下では生育が不可能であり、乾燥や加熱、消毒に耐性を示す芽胞の形態で土壌中に生息する常在土壌中細菌である。このように、日常的に人間の生活環境と身近なところに存在しており、災害などにより衛生環境が悪化する場合やワクチンの未接種などの条件が重なると感染する可能性が高くなる。このような破傷風菌の生態が、未だに罹患者が耐えない原因の一つであると考えられる。
【0004】
土壌中の芽胞は、主に創傷部位から体内に侵入して発芽、増殖し、破傷風毒素(TeNT)を産生する。TeNTは、神経終末よりシナプス前膜を介して細胞内に取り込まれるが、その結果として、筋収縮を抑制するアセチルコリンなどの神経伝達物質の放出が阻害され、連続的な興奮刺激によって痙性麻痺や後弓反張などの症状が誘発される(非特許文献3)。
【0005】
TeNTは、50 kDaの軽鎖(Lcドメイン)と100 kDaの重鎖が、単一のジスルフィド(S-S)結合によって連結された構造をしている。また、重鎖は2つの異なるドメインタンパク質にわかれており、N末端側のHnドメイン、C末端側のHcドメインからなる。これらの3つのドメインタンパク質は、それぞれ異なった機能を有する。Hcドメインは「細胞内への毒素の取り込み」、Hnドメインは「取り込まれた毒素の内在化」、Lcドメインは「毒性発現」に関与している(非特許文献3)。
【0006】
現状では、破傷風にり患した場合の治療には、抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤(TIG)が使用されている。しかし、血液原料の不足から安定供給の問題が生じており、また血液製剤に伴う安全性の問題が依然として存在している。そのため、破傷風感染に対してより効果的、かつ、副作用も少ない抗体医薬品への転換が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NIID国立感染症研究所 access on Jan 29. 2020(https://www.niid.go.jp/2niid/ja/kansennohanashi/466-tetanis-info.html)
【非特許文献2】横浜市衛生研究所 access on Jan 29. 2020(https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/ha/tetanus1.html)
【非特許文献3】Rossetto O, Scorzeto M, Megighian A, Montecucco C, Tetanus neurotoxin, Toxicon, 2013, 66, 59-63.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、破傷風菌の感染により生体内で発生する破傷風毒素(TeNT)を中和し、破傷風菌の感染の治療のために使用することができる、組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を1または複数種類含む医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、鋭意検討を行った結果、過去に破傷風の予防接種を行った個体から破傷風毒素(TeNT)に対する抗体を産生する複数の細胞を見出し、それらから1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有し、破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有する、組換え抗体または組換え抗体誘導体を作製することで、上記課題を解決することができることを示した。
【0010】
より具体的には、本件出願は、前述した課題を解決するため、以下の態様を提供する:
[1]1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有し、破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体;
[2]遺伝子組換えにより製造される、[1]に記載の抗体または抗体誘導体;
[3]破傷風毒素(TeNT)由来抗原が、破傷風毒素(TeNT)、またはその変性物、あるいはそれらの構成成分のいずれかから選択される、[1]または[2]に記載の抗体または抗体誘導体;
[4]破傷風毒素(TeNT)由来抗原が、破傷風毒素(TeNT)のLcドメイン、Hnドメイン、Hcドメイン、または破傷風トキソイドのいずれか1または複数の組み合わせである、[3]に記載の抗体または抗体誘導体;
[5]抗体誘導体が、ヒト化抗体、キメラ抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片から選択される、[1]~[4]のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体;
[6]機能的断片が、F(ab')2である、[5]に記載の抗体または抗体誘導体;
[7]以下の(i)から(iv)のいずれか:
(i) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 1)、CDR2(SEQ ID No.: 2)、CDR3(SEQ ID No.: 3)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 4)、CDR2(SEQ ID No.: 5)、CDR3(SEQ ID No.: 6)、
(ii) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 7)、CDR2(SEQ ID No.: 8)、CDR3(SEQ ID No.: 9)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 10)、CDR2(SEQ ID No.: 11)、CDR3(SEQ ID No.: 12)、
(iii) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 13)、CDR2(SEQ ID No.: 14)、CDR3(SEQ ID No.: 15)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 16)、CDR2(SEQ ID No.: 17)、CDR3(SEQ ID No.: 18)、
(iv) 重鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 19)、CDR2(SEQ ID No.: 20)、CDR3(SEQ ID No.: 21)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(SEQ ID No.: 22)、CDR2(SEQ ID No.: 23)、CDR3(SEQ ID No.: 24)、
を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体;
[8]抗体または抗体誘導体が、以下の(a)から(d)のいずれか:
(a)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 25を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 26を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(b)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 27を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 28を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(c)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 29を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 30を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(d)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 31を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 32を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
から選択される、[1]~[7]のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体;
[9]抗体または抗体誘導体が、
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 33)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 34)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 35)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 36)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 37)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 38)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 39)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 40)を含む組換え抗体または抗体誘導体;
を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体;
[10][1]~[9]のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体を含む、破傷風毒素(TeNT)を中和するための医薬組成物;
[11]抗体または抗体誘導体を複数種類含む、[10]に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
従来の破傷風菌感染の場合には、ヒトの血液から精製される抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤(TIG)を投与することが一般的であるが、血液製剤特有の種々の問題が指摘されている。本発明の組換え抗体または組換え抗体誘導体を使用することにより、従来の血液製剤に依存する治療方法の問題点をすべて解消することができる。また、これらの抗体は、研究用試薬、診断薬等としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、TeNT反応性クローンのスクリーニングの手順を示す図である。
図2図2は、in vitroにおける機能解析(Hcドメイン-GT1b結合阻害アッセイ)の手順を示す図である。
図3図3は、いくつかの希釈倍率で調製したHc反応性クローンの培養上清を添加したことによる、Hc-GT1b結合率の変化を示す図である。この図において、TeNT反応性クローン8A7と17F7の2クローンが、培養上清の希釈倍率依存的にHcドメインとガングリオシドGT1bとの結合を阻害することを示した。
図4図4は、in vivoにおける機能解析(毒素中和活性試験)の結果を示す図である。
図5-1】図5は、精製リコンビナント抗体の破傷風毒素への反応性を確認した結果を示す図である。
図5-2】図5は、精製リコンビナント抗体の破傷風毒素への反応性を確認した結果を示す図である。
図6図6は、精製抗体のHcドメイン-GT1b結合阻害活性試験の結果を示す図である。
図7図7は、精製抗体を用いた中和活性試験の結果を示す図である。
図8図8は、精製抗体を組み合わせて用いた時の中和活性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一態様において、1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有し、破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体を提供することができる。この発明は、破傷風菌に感染した個体または感染が疑われる個体に対して、破傷風毒素により生じる症状の発現を予防、治療するために使用することができる。
【0014】
<抗体または抗体誘導体>
本発明において使用する抗体または抗体誘導体は、従来破傷風の治療のために使用されてきた破傷風抗血清などの血液製剤に特有の種々の問題(特に、感染性の問題、免疫性の問題)を解決することを目的とするため、血液中に含まれる(血液製剤に混入する危険性がある)B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスなどの病原体を含まず、また血液中に含まれる抗原性タンパク質やヒトタンパク質と結合する抗体といった、投与された個体に免疫異常を生じさせる危険性のある血液由来成分を含まないことを特徴とする。
【0015】
血液由来成分を含まない抗体として、抗体産生細胞に由来する不死化細胞を、血液由来成分を含まない条件下で取得し、その細胞から血液由来成分を含まない培養条件下で調製される抗体や、上記不死化細胞から取得した抗体タンパク質を規定するDNAを使用して組換え的に抗体タンパク質を発現させて調製することができる組換え抗体を使用することができる。
【0016】
すなわち、一態様において、本発明における抗体は、過去に破傷風ワクチンを投与された個体の血液から、破傷風毒素に対する抗体を産生する細胞クローンを取得・不死化することにより抗体産生細胞に由来する不死化細胞を得て、その不死化抗体産生細胞からin vivoにおいて破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有するものを選択することにより得ることができる。
【0017】
また別の一態様において、上述した方法により選択された破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有する不死化抗体産生細胞から、周知の方法に従って、mRNAの取得、cDNAの作成を経て、抗体タンパク質を規定するDNA配列を取得し、ベクターを介して、血液由来成分を含まない哺乳動物発現系において発現させることにより、組換え抗体として調製することもできる。
【0018】
本発明においては、これらの抗体の誘導体を使用することもできる。本発明において使用することができる抗体誘導体としては、例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片を使用することができるが、これらには限定されない。このうち、機能的断片としては、例えば、F(ab')2を使用することができるが、これらには限定されない。
【0019】
これらの抗体の誘導体は、抗体が得られたのち、当該技術分野において周知の方法に従って作製することができる。
【0020】
上述した方法により取得した抗体または抗体誘導体は、1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有するものであるが、本発明においては、このような1または複数の破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合性を有するものの中から、さらに破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有することに基づいてスクリーニングを行い、当該中和作用を有する抗体または抗体誘導体を提供することを特徴とする。
【0021】
後述する実施例においても実際に取得した抗体を複数種類示しているが、これらに限定されるわけではない。
【0022】
<免疫抗原としての破傷風毒素(TeNT)由来抗原>
抗体または抗体誘導体が結合する破傷風毒素(TeNT)由来抗原は、破傷風毒素(TeNT)、破傷風毒素の構成成分であるLcドメイン、Hnドメイン、Hcドメイン、破傷風トキソイド、のいずれか1つであるかまたは複数の組み合わせであってもよい。
【0023】
破傷風毒素(TeNT)は破傷風菌(Clostridium tetani)の増殖とともに菌体内に産生される分子量約150 kDaの単純タンパク質である。菌体内で1315のアミノ酸からなる一本鎖のポリペプチドとして合成された毒素は、菌体外に放出される際にN端側の分子量約50 kDaの軽鎖(Light chain)とC端側の分子量約100 kDaの重鎖(Heavy chain)の二本鎖が単一のジスルフィド(S-S)結合によって架橋された4次構造を形成する。この破傷風毒素をホルマリンで無毒化したものを破傷風トキソイドといい、ワクチンとして使用される。
【0024】
破傷風毒素のうち、重鎖のC端側50 kDaをFragment C(Frg C、本明細書中ではHcドメインとも記載)、N端側50 kDaをFragment B(Frg B、本明細書中ではHnドメインとも記載)、さらに軽鎖をFragment A(Frg A、本明細書中ではLcとも記載)と呼ぶ。これらの3つのドメインタンパク質は、それぞれ異なった機能を有する。それぞれの破傷風毒素ドメインの分子内機能は、以下のようにわかってきている(非特許文献3):
【0025】
Lc(Fragment A):破傷風毒素のLc(Frg A)は、メタロプロテアーゼであり、基質であるvSNAREを限定分解することで、シナプス小胞とシナプス前膜とのドッキングを阻害し、破傷風毒素によるシナプス前抑制を生じさせる。すなわち、「毒性発現」に関与している。
【0026】
Hnドメイン(Fragment B):破傷風毒素の重鎖N端側のHnドメイン(Frg B)は疎水性が極めて高いドメインであり、酵素活性を有しているLc(Frg A)がエンドゾームから細胞質に移行する過程に関与していると考えられている。すなわち、「取り込まれた毒素の内在化」に関与している。
【0027】
Hcドメイン(Fragment C):重鎖C端側のHcドメイン(Frg C)については受容体結合部位であろうと推測されており、Hcドメイン(Frg C)がGT1bやGD1bなどのポリシアロガングリオシドと会合する。すなわち、「細胞内への毒素の取り込み」に関与している。
【0028】
<破傷風毒素(TeNT)の中和作用>
本発明の抗体または抗体誘導体は、上述した破傷風毒素(TeNT)由来抗原のどの抗原に結合するものであっても、結果として破傷風毒素(TeNT)を中和する作用を有するものであれば、本発明の目的の達成のために使用することができる。
【0029】
前述したように、破傷風にり患した場合の治療には、抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤(anti-tetanus immunoglobulin、TIG)が使用されている。本発明の抗体または抗体誘導体は、血液が原料の免疫グロブリン製剤TIGと比較して、力価や品質の安定性に優れているという特徴を有している。また、本発明の抗体または抗体誘導体は、TIGに代わる破傷風治療薬として使用することを目的としていることから、TIGの中和活性と同様の、好ましくは同程度の、より好ましくはそれ以上の破傷風毒素の中和活性を有することが求められる。本発明の抗体または抗体誘導体は、複数のものをカクテルにして使用することができることを特徴としていることから、TIGの中和活性と同様の活性を有していれば破傷風治療薬として使用することができる。
【0030】
破傷風毒素の中和活性は、マウスに破傷風毒素(TeNT)を投与して病態を発生させ、そのマウスに抗体を投与することにより生存期間の延長がみられるかどうかにより、半定量的に特定することができる。
【0031】
<本発明の抗体の例>
本発明においては、生体内で破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対する抗体を生成するため、破傷風トキソイドを成分の一つとして含むワクチンを投与する。このようなワクチンとしては、DPT-IPV(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ混合ワクチン)、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン)、DT(ジフテリア・破傷風混合ワクチン)等があるがこれらには限定されない。
【0032】
過去にこれらの破傷風トキソイドを含むワクチン接種を受けた個体から、破傷風毒素(TeNT)由来抗原に対して結合する抗体を産生する細胞を上述の<抗体または抗体誘導体>の通り採取し、得られた抗体または抗体誘導体に関して上述の<破傷風毒素(TeNT)の中和作用>の通り破傷風毒素(TeNT)に対する中和活性を調べた。その結果、複数の個体から、複数の抗体およびその抗体を産生する細胞が得られた。
【0033】
そのような中で、実施例において検討を行った具体的なものとして、
(i)重鎖の相補性決定領域、CDR1(GFTFSTSN、SEQ ID No.: 1)、CDR2(IWYDGSTQ、SEQ ID No.: 2)、CDR3(ARDKGYINGWYVPFFDY、SEQ ID No.: 3)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QSVSTN、SEQ ID No.: 4)、CDR2(GAS、SEQ ID No.: 5)、CDR3(QQYDNWPPVT、SEQ ID No.: 6);
(ii)重鎖の相補性決定領域、CDR1(GFTFRTYG、SEQ ID No.: 7)、CDR2(IWYHGTTT、SEQ ID No.: 8)、CDR3(ARESGYASSWYFNGDAFDISEQ ID No.: 9)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QSVLYSPNNKNY、SEQ ID No.: 10)、CDR2(WAS、SEQ ID No.: 11)、CDR3(QQYSSTPLT、SEQ ID No.: 12);
(iii)重鎖の相補性決定領域、CDR1(GDSISTSDYF、SEQ ID No.: 13)、CDR2(IYYDGDT、SEQ ID No.: 14)、CDR3(ARLGVKKITLFGEVIPRSSWFAP、SEQ ID No.: 15)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QDITNY、SEQ ID No.: 16)、CDR2(DAS、SEQ ID No.: 17)、CDR3(QQYDTLSIT、SEQ ID No.: 18);
(iv)重鎖の相補性決定領域、CDR1(GYNFASNY、SEQ ID No.: 19)、CDR2(INPDGGSR、SEQ ID No.: 20)、CDR3(ARDRRQQLVFDS、SEQ ID No.: 21)、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QSLLSRSADKNF、SEQ ID No.: 22)、CDR2(WAS、SEQ ID No.: 23)、CDR3(QQYYSLSRGLT、SEQ ID No.: 24)
を含む組換え抗体またはこれらの抗体誘導体を提供することができる。
【0034】
このような抗体または抗体誘導体としては:
(a)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 25を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 26を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(b)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 27を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 28を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(c)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 29を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 30を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
(d)重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 31を含み、軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列がSEQ ID No.: 32を含む、組換え抗体または抗体誘導体;
として表すこともできる。
【0035】
本明細書の以下の実施例において、具体的な抗体として、
・8A7クローン(重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 33)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 34)を含む抗体または抗体誘導体)、
・17F7クローン(重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 35)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 36)を含む抗体または抗体誘導体)、
・8D8クローン(重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 37)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 38)を含む抗体または抗体誘導体)、
・16E8クローン(重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 39)および軽鎖Igk鎖(SEQ ID NO: 40)を含む抗体または抗体誘導体)
を作製した。
【0036】
<医薬組成物>
本発明においては、一態様において、これまでに説明した抗体または抗体誘導体を含む、破傷風毒素(TeNT)を中和するための医薬組成物を提供することもできる。この医薬組成物は、破傷風菌に感染した個体または感染が疑われる個体に対して、破傷風毒素により生じる症状の発現を予防、治療するために使用することができる。
【0037】
この医薬組成物に含まれる本発明の抗体または抗体誘導体は血液原料に由来しないものであることから、この医薬組成物は、血液中に含まれる(血液製剤に混入する危険性がある)B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスなどの病原体を含まず、また血液中に含まれる抗原性タンパク質やヒトタンパク質と結合する抗体といった、投与された個体に免疫異常を生じさせる危険性のある血液由来成分を含まないことを特徴とする。
【0038】
本発明における医薬組成物には、上述した抗体または抗体誘導体を1種類含んでいてもよいし、複数種類含んでいてもよい。
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示す。下記に示す実施例はいかなる方法によっても本発明を限定するものではない。
【実施例0040】
実施例1:改変EBV法を用いた抗体の単離
本実施例においては、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)を用いるEBV法により、破傷風毒素に対する抗体を産生する細胞クローンを取得し、そこから抗体を単離することを目的として実験を行った。
【0041】
EBVは、ガンマヘルペスウイルス亜科に属するdsDNAウイルスであり、様々な癌に関わっている。主にB細胞に感染することが知られており、ヒトB細胞にEBVをin vitroで感染させると、B細胞は持続増殖して不死化ヒトリンパ芽球様細胞(LCL)に形質転換することが知られている。
【0042】
(1-1)PBMCの単離とLCLへの分化
ジフテリアトキソイドワクチン、百日咳不活化ワクチン、破傷風トキソイドワクチンの3種混合ワクチンであるDPTワクチン接種経験のある健常ドナー(n=1)より血液を採取し、Lymphoprep(Abbott Diagnostics Technologies AS)を用いて末梢血単核球(PBMC、リンパ球・単球)を採取した。細胞懸濁液に対してAnti-human IgM 磁気ビーズ(Miltenyi)を加えて除去することでネガティブセレクションし、IgMを細胞表面に発現していない細胞を採取した。
【0043】
ネガティブセレクションした細胞を回収し、EBV(B95-8株)とともに、37℃にて、1時間、インキュベートした。インキュベート後、遠心して細胞を回収し、LCL培養培地に懸濁した。この細胞懸濁液を200μLずつ(104 cells / well)、96穴プレート(U底 delta: NUNC)に播種した後に、2週間培養を行い、不死化ヒトリンパ芽球様細胞(LCL)への分化を行った。
【0044】
本実施例で使用するLCL培養培地として、15%FBS(SIGMA)、L-glutamine(GIBCO)、Penicillin/streptomycin(Nacalai tesque)、Sodium Pyruvate(Nacalai tesque)、2-Mercaptoethanol(GIBCO)、Non-essential amino acids(GIBCO)、K3(GeneDesign)、シクロスポリン(ノバルティス ファーマ)、各種添加物を添加したRPMI培地(Nacalai tesque)を使用した。同様の操作を2回行った。
【0045】
(1-2)TeNT反応性クローンのスクリーニング
破傷風毒素タンパク質(TeNT)の各ドメインタンパク質、Lc、Hnドメイン、Hcドメイン(大阪大学より供与)を各1 μg/mL含むTeNT mix(各ドメインタンパク質Lc、Hnドメイン、Hcドメインの混合物)をELISA用96穴プレートに50μL/wellで添加し(各ドメインタンパク質50 ng/well)固相化し、LCLの培養上清(抗破傷風毒素IgGを含む可能性があるもの)を50μL/well加えて、抗原-抗体の結合反応を行った。この後、2次抗体としてGoat Anti-Human IgG-AP(SouthernBiotech)、発色基質としてPhosphatase substrate(SIGMA)を用い、405 nmおよび650 nmの吸光度を測定した(図1)。
【0046】
この結果、1回目のスクリーニングでは18クローン、2回目のスクリーニングでは35クローンが得られた。
【0047】
実施例2:得られたTeNT反応性クローンの機能解析
本実施例においては、実施例1で得られたTeNT反応性クローンのin vitroにおける機能およびin vivoにおける機能を解析することを目的として実験を行った。
【0048】
(2-1)in vitroにおける機能解析(Hcドメイン-GT1b結合阻害アッセイ)
TeNTは、Hcドメインによる細胞表面ガングリオシドGT1bへの結合をきっかけとして、細胞内へ侵入することが知られている。そのため、HcドメインのガングリオシドGT1bへの結合阻害がTeNTの中和活性に重要であると考えられることから、実施例1で得られたクローンのうち、31クローンのHcドメイン反応性クローンが、Hcドメイン-GT1b結合阻害活性を有するか否かについて、ELISAにより検討した(図2)。
【0049】
実験は、GT1bを固相化したプレートに、Hcドメインフラグメントと被検体の培養上清中の抗HcドメインフラグメントIgG抗体とを結合させたものを添加し、結合反応を行わせた。Hcドメインフラグメント上の抗体結合部分に応じて、HcドメインフラグメントがGT1bを固相化したプレートへ結合する場合と結合しない場合が出てくる。その後、抗Hcドメイン検出用抗体を用いてELISA法に従って検出した。
【0050】
その結果、Hc反応性クローンの培養上清添加によるHc-GT1b結合率の変化を図3に示すように、TeNT反応性クローン8A7と17F7の2クローンが培養上清の希釈倍率(希釈なし、1/24倍希釈、1/12倍希釈、1/6倍希釈)依存的にHcドメインとガングリオシドGT1bとの結合を阻害することが明らかとなった。
【0051】
(2-2)in vivoにおける機能解析(毒素中和活性試験)
(1-1)の2回目の検体から取得した35クローンのTeNT反応性クローンの培養上清を用いて、4週齢のメスのddYマウス(日本SLC)を使用して、TeNT中和活性試験を行った。
【0052】
TeNT、1 LD50(200μL)の5倍の抗体分子数となるようにLCL培養上清を希釈し(200μL)、両者を混合した後、麻酔を投与したマウスの左後足大腿部に全量(400μL)を皮下注射した。投与後は、12時間おきに体重変化や症状を観察した。1回の実験には、1群あたり各4匹のマウスを使用した。
【0053】
LCL培養上清として各35クローンを混合したものを投与した結果、生存時間の延長が認められた(図4A)。
【0054】
また、3つのドメインタンパクは、それぞれ異なる役割を担っていることから、各ドメインタンパク群での比較を行った。その結果、各ドメインタンパク群において生存時間の延長が確認され、特にTeNT mixにのみ反応する群において、強い中和活性が確認された(図4B)。さらに、各ドメインタンパク群と比較して、35クローンすべてを混合することで、より中和効果が増大することが明らかとなった。
【0055】
強い中和活性が認められたTeNT mixとHnドメイン反応性クローン群を混合した後に投与したところ、35クローンの混合物には及ばないものの、各ドメインタンパク群よりも生存時間が延長することが明らかとなった(図4C)。
【0056】
これらの結果から、各ドメインタンパク群での比較を行った結果、各群の中では、特にTeNT mix群において、強い中和活性を呈したが(図4B)、35クローンすべての群(図4A~C)およびTeNT mixとHnドメイン群とを混合した群において(図4C)、各ドメインタンパク群より生存時間の延長に対して高い効果が認められた。
【0057】
実施例3:組換え抗体のin vitro機能性、in vivo中和活性の検討
この実施例においては、実施例2においてHcドメイン-GT1b結合阻害活性を有すると判明した2クローン、およびin vivo試験において、強い中和活性を示したTeNT mix、Hnドメイン反応性クローンのうち1クローンずつに関して、抗体遺伝子のクローニングを行い、組換え抗体を作製することを目的として実験を行った。
【0058】
(3-1)抗体遺伝子の取得
本実施例においては、実施例1で作製したLCLから、ハイブリドーマの作成を行わずに、直接的にRNAを抽出し、これを用いたRT-PCR法により抗体遺伝子のクローニングを行った。
【0059】
実施例2(2-1)のin vitro機能性試験でHcドメイン-GT1b結合阻害活性を有することが判明した2クローン(8A7、17F7)、および(2-2)のin vivo中和活性試験でTeNTに対して強い中和活性を示したTeNT mix(16E8)とHnドメイン(8D8)反応性クローンの抗体遺伝子(重鎖、軽鎖)のクローニングを行い、発現ベクターを構築した。
【0060】
LCLからのtotal RNAの抽出は、実施例2においてELISAによってTeNT mixとの反応性が確認されたLCL(TeNT mix反応性の4クローン)より、miRNeasy Micro kit(QIAGEN)を用い、添付プロトコールに従い行った。
【0061】
抗体遺伝子の重鎖IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4遺伝子、および、軽鎖IgkまたはIgL遺伝子を単離するために、上記の方法より抽出したtotal RNAを鋳型として、5’全長cDNAの増幅が可能なSMART cDNA Library Construction Kit(TAKARA)を用いて、添付プロトコールに従い逆転写反応を行い、cDNAを作製した。
【0062】
上記の方法により合成したcDNAを鋳型として、KOD FX(TOYOBO)を用いて2回のPCR(1st PCR、2nd PCR)を行った。1st PCRは、各LCLから逆転写したcDNA 1μlを鋳型として、プライマーとして以下のフォワードプライマー(Primer 1)およびリバースプライマー(Primer 2)を使用して、94℃・2分間の後、「98℃・10秒、55℃・30秒、68℃・2分]を35サイクル、最後に68℃・3分の反応でPCR反応を行った。
【0063】
【表1】
【0064】
2nd PCRは、1st PCRの伸長生成物0.5μlを鋳型として使用し、プライマーとして以下のフォワードプライマー(Primer 3)およびリバースプライマー(Primer 4)を使用して、94℃・2分間の後、「98℃・10秒、60℃・30秒、68℃・2分]を35サイクル、最後に68℃・3分の反応でPCR反応を行った。
【0065】
【表2】
【0066】
PCRサンプルは、QIAquick Purification Kit(QIAGEN)に供し、未反応プライマーおよび酵素の除去を行い、精製物を得た。
【0067】
精製したPCR精製物を制限酵素処理し、アガロースゲル電気泳動により分離、精製した後、ベクターに組み込んだ。重鎖遺伝子を含むベクター調製のためにはpQEFIP vector(pQCXIP(TAKARA)をバックボーンとしてCMVプロモーターをヒトEF1 alphaプロモーターに置き換えたレトロウイルスベクター)を、軽鎖遺伝子を含むベクター調製のためにはpQEFIN vector(pQCXIN(TAKARA)をバックボーンとしてCMVプロモーターをヒトEF1 alphaプロモーターに置き換えたレトロウイルスベクター)をそれぞれ使用した。Ligation high(TOYOBO)を使用してPCR生成物をベクターに組み込み、コンピテントセル(DH-5alpha:ニッポンジーン)を形質転換させた。
【0068】
アンピシリン含有LB液体培地中で培養した大腸菌から、NucleoSpin Plasmid EasyPure(MACHEREY-NAGEL)を用いて、添付プロトコールに従い、プラスミドの抽出を行った。
【0069】
(3-2)リコンビナント抗体の発現
実施例3(3-1)の方法で得られた重鎖、軽鎖の発現プラスミドベクターを、Expi293 Expression System(Thermo Fisher Scientific)を用いてExpi 293F細胞(Thermo Fisher Scientific)に一過性にコトランスフェクションし、リコンビナント抗体の発現、分泌を行った。
【0070】
ExpiFectamine 293試薬80μLと重鎖と軽鎖のプラスミド(各15μg)を、それぞれ1.5 mLのOpti-MEM I(gibco)と混合し、5分間室温で静置した。静置後、2つの溶液を合わせ室温で20分間静置し、125 mLフラスコ(Corning)で培養した4.5~5.5×106 cells / mL(30 mL)の細胞に加えて旋回培養(37℃、8%CO2)した。18~20時間培養後、Expi Fectamine 293 Transfection Enhancer 1 50μLとExpi Fectamine 293 Transfection Enhancer 2 1.5 mLを加えて5~6日旋回培養した。
【0071】
Expi 293F細胞を用いた発現系により発現させたリコンビナント抗体は、Protein Gアフィニティークロマトグラフィー(GE Hitrap protein GHP(1 mL))を使用して精製した。
【0072】
(3-3)精製リコンビナント抗体の破傷風毒素への反応性の確認
精製リコンビナント抗体の破傷風毒素への反応性の検討のために、前述の(1-2)と同様の方法を用いてELISAを行った。破傷風毒素への反応性の検討は、それぞれ1μg/mLのToxoid、Lc、Hnドメイン、Hcドメイン、TeNT mix、TeNT(生毒素、国立感染症研究所 岩城正昭先生より分与)を96穴プレートに50μL/wellでコートした96穴ELISA用プレートを使用し、1次抗体として精製リコンビナント抗体を0.001、0.01、0.1、1、10μg/mLで添加し、2次抗体としてGoat Anti-Human IgG-APを用いた。
【0073】
結果を図5に示す。A~Fにおいて示されるように、抗体8A7、17F7はTeNT、TeNT mix、Toxoid、およびHcドメインに用量依存的に結合することが確認された。
【0074】
一方で、8D8はToxoid、TeNT mix、Hnドメインに用量依存的に結合することが確認されたが、TeNTに対しては反応性を示さなかった。また、16E8はToxoid、およびTeNT mixに用量依存性が確認されたが、TeNTへの結合は検出されなかった。なお、ポジティブコントロールであるTIGは0.0001、0.001、0.01、0.1、1 IU/mLで添加したが、すべての抗原に高い反応性を示した(各図右列)。
【0075】
【表3】
【0076】
(3-4)精製抗体のHcドメイン-GT1b結合阻害活性試験
実施例2のin vitro機能性試験でHcドメイン-GT1b結合阻害活性が認められた2クローンの精製抗体(8A7、17F7)について、実施例2(2-1)と同様のELISAを行い、Hcドメイン-GT1b結合阻害活性を検討した。それぞれの抗体の抗体量は、0、0.01、0.156、1.25、10μg/mlとして、抗体量によるHcドメイン-GT1b結合率の変化を調べた。その結果、精製抗体においてもHcドメイン-GT1b結合阻害活性が確認された(図6)。
【0077】
(3-5)精製抗体を用いた中和活性試験
実施例2の(2-2)の方法と同様の方法を用いて各抗体を単体で使用した際の抗体量による中和活性の変化を検討した。各抗体量をTeNTと精製抗体混合物が1:37.5(精製抗体3.75 ng)、1:37500(3750 ng)の比率になるように2点設定し、投与した。その結果、いずれの抗体においても生存時間の延長が確認された(図7A;表4)。また、1:37500と高い抗体量では、どの抗体においても高い中和活性を示し、すべてのマウスの生存が認められた(図7B;表4)。
【0078】
【表4】
【0079】
次に、抗体を組み合わせた時の中和活性を検討した。Hc反応性, Hn反応性, TeNT mix反応性の組み合わせを検討するために、8A7+16E8+8D8、及び17F7+16E8+8D8の組み合わせで検討した。使用した抗体量は、TeNTと精製抗体混合物が1:0.75(精製抗体各0.025 ng)、1:3.75(各0.125 ng)、1:37.5(各1.25 ng)、1:37500(各1250 ng)の比率になるように4点設定した。その結果、図8Aおよび図8Bに示すように、どちらの群においても1 : 37.5以上の抗体量で、高い中和活性が認められた。1 :37.5の抗体量では、図7Aでの抗体の単体投与に比べて中和活性が高いことから、これらの抗体は、混合することによって、より高い中和能を示すことが明らかとなった(表4)。
【0080】
実施例4:組換え抗体の配列解析
本実施例は、実施例3までで得られた、8A7、17F7、8D8、16E8の4種類の抗体の配列解析を行うことを目的とした。
【0081】
8A7、17F7、8D8、16E8のそれぞれの抗体を発現するためのベクターのDNA配列を解析し、それに基づいてアミノ酸配列を特定した。それぞれの抗体のアミノ酸配列は以下の通りであった:
8A7クローン:
IgG1鎖(SEQ ID NO: 33)(VH領域に下線を引いた);
MEFGLSWLFLVALLRGVQCQIHLVESGGGVVQTGKSLRLSCAASGFTFSTSNMHWVRQTPGKGLEWVALIWYDGSTQYYADSVKGRFTVSRDNSKNTLYLHMTTLRAEDTAVYYCARDKGYINGWYVPFFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;および
Igk鎖(SEQ ID NO: 34)(VL領域に下線を引いた):
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGETVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSTNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATSIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDSAVYYCQQYDNWPPVTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
17F7クローン:
IgG1鎖(SEQ ID NO: 35)(VH領域に下線を引いた):
MEFGLRWVFLVALLRGVHCQAQLVESGGGVVQPGRSLKLSCAASGFTFRTYGMHWVRQAPGKGLEWVAGIWYHGTTTFYADSVKGRFTISRDNSKNILYLQMNSLRADDTAVYFCARESGYASSWYFNGDAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;および
Igk鎖(SEQ ID NO: 36)(VL領域に下線を引いた);
MVLQTQVFISLLLWISGAYGDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSPNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASNRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTINNLQAEDVALYYCQQYSSTPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
8D8クローン:
IgG1鎖(SEQ ID NO: 37)(VH領域に下線を引いた);
MDLMCKKMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQVHLQESGPGLMKPSETLSLNCTVFGDSISTSDYFWGWIRQPPGKGLEWIGTIYYDGDTYYNPSLKSRVTISVDTPKNQFSLKLNSVTAADTAVYFCARLGVKKITLFGEVIPRSSWFAPWGQGTQVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;および
Igk鎖(SEQ ID NO: 38)(VL領域に下線を引いた):
MDMRVPAQLLGLLLLWLSGARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDITNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASKLETGVPSRFSGSGSGTRFTFTISSLQPEDIATYYCQQYDTLSITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
16E8クローン:
IgG1鎖(SEQ ID NO: 39)(VH領域に下線を引いた):
MDWTWRVFCLLAVAPGAHSQVQLVQSGGQVKKPGASVKISCKASGYNFASNYIHWVRQAPGRGLEWLGIINPDGGSRTYAQRLQDRVTITSDTSTTTAYLELRSLTSEDTAIYYCARDRRQQLVFDSWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;および
Igk鎖(SEQ ID NO: 40)(VL領域に下線を引いた):
MVLQTQVFISLLLWISGAYGDIVLTQTPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLSRSADKNFLAWYQQKAGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSLSRGLTFGPGTKVNIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0082】
これらの配列を解析した結果、それぞれのクローンの重鎖および軽鎖の可変領域は以下の通りであることが確認された:
8A7クローン:
VH鎖(SEQ ID NO: 25)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
QIHLVESGGGVVQTGKSLRLSCAASGFTFSTSNMHWVRQTPGKGLEWVALIWYDGSTQYYADSVKGRFTVSRDNSKNTLYLHMTTLRAEDTAVYYCARDKGYINGWYVPFFDYWGQGTLVTVSS
HL鎖(SEQ ID NO: 26)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
ETVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSTNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATSIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDSAVYYCQQYDNWPPVTFGQGTKLEIK
17F7クローン:
VH鎖(SEQ ID NO: 27)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
QAQLVESGGGVVQPGRSLKLSCAASGFTFRTYGMHWVRQAPGKGLEWVAGIWYHGTTTFYADSVKGRFTISRDNSKNILYLQMNSLRADDTAVYFCARESGYASSWYFNGDAFDIWGQGTMVTVSS
HL鎖(SEQ ID NO: 28)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSPNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASNRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTINNLQAEDVALYYCQQYSSTPLTFGGGTKVEIK
8D8クローン:
VH鎖(SEQ ID NO: 29)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
QVHLQESGPGLMKPSETLSLNCTVFGDSISTSDYFWGWIRQPPGKGLEWIGTIYYDGDTYYNPSLKSRVTISVDTPKNQFSLKLNSVTAADTAVYFCARLGVKKITLFGEVIPRSSWFAPWGQGTQVTVSS
HL鎖(SEQ ID NO: 30)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDITNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASKLETGVPSRFSGSGSGTRFTFTISSLQPEDIATYYCQQYDTLSITFGQGTRLEIK
16E8クローン:
VH鎖(SEQ ID NO: 31)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
QVQLVQSGGQVKKPGASVKISCKASGYNFASNYIHWVRQAPGRGLEWLGIINPDGGSRTYAQRLQDRVTITSDTSTTTAYLELRSLTSEDTAIYYCARDRRQQLVFDSWGQGTLVTVSS
HL鎖(SEQ ID NO: 32)(CDR1、CDR2、CDR3に下線を引いた):
DIVLTQTPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLSRSADKNFLAWYQQKAGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSLSRGLTFGPGTKVNIK
【産業上の利用可能性】
【0083】
従来の破傷風菌感染の場合には、ヒトの血液から精製される抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤(TIG)を投与することが一般的であるが、血液製剤特有の種々の問題が指摘されている。本発明の組換え抗体または組換え抗体誘導体を使用することにより、従来の血液製剤に依存する治療方法の問題点をすべて解消することができる。また、これらの抗体は、研究用試薬、診断薬等としても使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
【配列表】
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