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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106647
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】熱伝導部材
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20230726BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20230726BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F28D15/02 102G
F28D15/02 M
F28D15/02 101H
F28D15/02 102H
F28D15/02 106Z
H01L23/46 B
H05K7/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020103317
(22)【出願日】2020-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503190785
【氏名又は名称】尼得科超▲しゅう▼科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No.184-3,Zhongxing N.St.,Sanchong Dist.,New Taipei City 24158,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花野 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳一
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322DB08
5E322FA01
5F136CC14
5F136FA01
5F136FA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱伝導部材の第1筐体部と第2筐体部間の接合強度を向上する。
【解決手段】熱伝導部材100の筐体101は、板状の第1筐体部1と、板状の第2筐体部2と、接合部3と、を有する。第1筐体部と第2筐体部との間には、作動媒体が封入されるとともにウィック構造体が配置される内部空間1010が配置される。第1筐体部は、金属製の第1板11と、第1金属層12と、を有する。第1金属層は、第1板の第2筐体部側の表面に配置される。第1金属層の融点は、第1板の融点よりも低い。第2筐体部は、金属製の第2板21を有する。接合部は、第1筐体部及び第2筐体部のうちの一方から他方に向かう上下方向から見て内部空間の外縁部に沿って配置され、第1金属層の第2筐体部側の第1面と第2筐体部の第1筐体部側の第2面とを接合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に作動媒体が封入された筐体を備え、前記内部空間内にウィック構造体が配置された熱伝導部材であって、
前記筐体は、板状の第1筐体部と、板状の第2筐体部と、接合部と、を有し、
前記第1筐体部と前記第2筐体部との間には、前記内部空間が配置され、
前記第1筐体部は、金属製の第1板と、第1金属層と、を有し、
前記第1金属層は、前記第1板の前記第2筐体部側の表面に配置され、
前記第1金属層の融点は、前記第1板の融点よりも低く、
前記第2筐体部は、金属製の第2板を有し、
前記接合部は、
前記第1筐体部及び前記第2筐体部のうちの一方から他方に向かう上下方向から見て前記内部空間の外縁部に沿って配置され、
前記第1金属層の前記第2筐体部側の第1面と、前記第2筐体部の前記第1筐体部側の第2面とを接合する、熱伝導部材。
【請求項2】
前記第1金属層は、前記第1板の前記第2筐体部側の表面に配置された金属メッキ層である、請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項3】
前記第1筐体部は、クラッド材である、請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項4】
前記第1金属層の材料は、銅及び銅合金のうちのどちらかである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項5】
前記第1板の材料及び前記第2板の材料はそれぞれ、ステンレス鋼である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項6】
前記接合部は、前記第1金属層の前記第1面のうちの前記第2筐体部の前記第2面と接する領域全体を該第2面に接合する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項7】
前記接合部は、前記上下方向から見て環状に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項8】
前記接合部は、前記第1金属層と前記第2筐体部との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在する結晶粒を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項9】
前記結晶粒は、前記上下方向から見て、前記内部空間の外縁部に沿って環状に配置される、請求項8に記載の熱伝導部材。
【請求項10】
前記接合部は、中間接続体をさらに有し、
前記中間接続体は、前記第1金属層と前記第2筐体部との間に配置され、
前記中間接続体を介して、前記第1金属層の前記第1面は、前記第2筐体部の前記第2面と接続される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項11】
前記接合部は、
前記第1金属層と前記中間接続体との境界の少なくとも一部に跨って存在する第1結晶粒と、
前記第2筐体部と前記中間接続体との境界の少なくとも一部に跨って存在する第2結晶粒と、
をさらに有する、請求項10に記載の熱伝導部材。
【請求項12】
前記第1結晶粒及び前記第2結晶粒のうちの少なくともどちらかは、前記上下方向から見て、前記内部空間の外縁部に沿って環状に配置される、請求項11に記載の熱伝導部材。
【請求項13】
前記接合部は、結晶粒をさらに有し、
前記結晶粒は、前記第1金属層と前記中間接続体との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在するとともに、前記中間接続体に跨って存在し、さらに、前記中間接続体と前記第2筐体部との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在する、請求項10に記載の熱伝導部材。
【請求項14】
前記結晶粒は、前記上下方向から見て、前記内部空間の外縁部に沿って環状に配置される、請求項13に記載の熱伝導部材。
【請求項15】
前記第1金属層の材料は、前記第1板の材料とは異なるとともに、前記第2板の材料と同じである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項16】
前記第2筐体部は、前記第2板の前記第1筐体部側の面に配置される第2金属層をさらに有し、
前記第2面は、前記第2金属層の前記第1筐体部側の面である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【請求項17】
前記筐体は、柱部と、第3金属層と、をさらに有し、
前記柱部は、前記第1板から前記第2筐体部に向かって突出するとともに、前記内部空間内に配置され、
前記第3金属層は、前記柱部の表面に配置され、
前記第3金属層の熱伝導率は、前記柱部の熱伝導率よりも高い、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の熱伝導部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体を冷却するための熱伝導部材として、薄い平板状に形成されるベーパーチャンバーが知られている。たとえば、ベーパーチャンバーは、上側金属シートと下側金属シートとを有する。上側金属シートは、下側金属シート上に設けられる。下側金属シートの下面には、発熱体が取り付けられる。上側金属シートと下側金属シートとの間には、作動液が封入された密閉空間が形成される。密閉空間において、発熱体から熱を受けて蒸発した作動液は、上側金属シートを介して外部によって冷却される。上側金属シート及び下側金属シートは、ステンレスなどの金属材料を用いて形成できる。(たとえば特開2019-158323号公報参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-158323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上側金属シートを下側金属シート上に設けて密閉空間を形成する際、それらの金属材料がステンレス同士のように直接に接合し難い組み合わせであると、両者間に十分な接合強度が得られない虞がある。
【0005】
本発明は、熱伝導部材の第1筐体部と第2筐体部間の接合強度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な熱伝導部材は、内部空間に作動媒体が封入された筐体を備える。前記内部空間内には、ウィック構造体が配置される。前記筐体は、板状の第1筐体部と、板状の第2筐体部と、接合部と、を有する。前記第1筐体部と前記第2筐体部との間には、前記内部空間が配置される。前記第1筐体部は、金属製の第1板と、第1金属層と、を有する。前記第1金属層は、前記第1板の前記第2筐体部側の表面に配置される。前記第1金属層の融点は、前記第1板の融点よりも低い。前記第2筐体部は、金属製の第2板を有する。前記接合部は、前記第1筐体部及び前記第2筐体部のうちの一方から他方に向かう上下方向から見て前記内部空間の外縁部に沿って配置される。前記接合部は、前記第1金属層の前記第2筐体部側の第1面と、前記第2筐体部の前記第1筐体部側の第2面とを接合する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的な熱伝導部材によれば、熱伝導部材の第1筐体部と第2筐体部間の接合強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、熱伝導部材の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る熱伝導部材の構成例を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係る接合部の第1構成例を示す断面図である。
図4A図4Aは、実施形態に係る接合部の第2構成例を示す断面図である。
図4B図4Bは、実施形態に係る接合部の第3構成例を示す断面図である。
図5A図5Aは、接合部の構成例を示す断面図である。
図5B図5Bは、接合部の他の構成例を示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係る熱伝導部材の他の構成例を示す断面図である。
図7A図7Aは、第1変形例に係る接合部の第1構成例を示す断面図である。
図7B図7Bは、第1変形例に係る接合部の第2構成例を示す断面図である。
図8A図8Aは、第2変形例に係る熱伝導部材の構成例を示す断面図である。
図8B図8Bは、第2変形例に係る熱伝導部材の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0010】
なお、本明細書では、熱伝導部材100において、後述する第1筐体部1及び第2筐体部2の対向方向を「上下方向」と呼ぶ。上下方向のうち、第1筐体部1から第2筐体部2への向きを「下方」と呼び、第2筐体部2から第1筐体部1への向きを「上方」と呼ぶ。各々の構成要素において、下方における端部を「下端部」と呼び、上方における端部を「上端部」と呼ぶ。また、各々の構成要素の表面において、下方を向く面を「下面」と呼び、上方を向く面を「上面」と呼ぶ。但し、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称を限定する意図はない。
【0011】
<1.実施形態>
<1-1.熱伝導部材>
図1は、熱伝導部材100の斜視図である。図2は、実施形態に係る熱伝導部材100の構成例を示す断面図である。なお、図2は、図1のA-A線に沿う熱伝導部材100の断面構造を示す。
【0012】
熱伝導部材100は、いわゆるベーパーチャンバーであり、発熱源(図示省略)を冷却するための部材である。なお、発熱源は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの演算処理装置である。熱伝導部材100は、内部空間1010に作動媒体(図示省略)が封入された筐体101を備える。内部空間1010内には、ウィック構造体(図示省略)が配置される。ウィック構造体は、毛細管構造を有する。ウィック構造体の内部には、液化した作動媒体が浸透可能である。本実施形態では、ウィック構造体は、銅などの金属粉末の焼結体のような多孔質体金属焼結体である。但し、ウィック構造体は、これらの例示に限定されない。
【0013】
また、作動媒体は、本実施形態では純水であるが、水以外の媒体であってもよい。たとえば、作動媒体は、メタノール及びエタノールなどのアルコール化合物、ハイドロフルオロカーボンなどの代替フロン、プロパン及びイソブタンなどの炭化水素化合物、ジフルオロメタンなどのフッ化炭化水素化合物、エチレングリコールなどのいずれかであってもよい。作動媒体は、熱伝導部材100の使用環境に応じて採用できる。
【0014】
作動媒体は、筐体101の発熱源が接する部分付近において発熱源から伝達された熱によって気化して、内部空間1010内に蒸発する。ここで、好ましくは、密閉された内部空間1010は減圧され、その内圧は大気圧よりも低い。こうすれば、作動媒体はさらに気化し易くなる。作動媒体は、筐体101の発熱源から離れた部分で冷却されて液化する。液化した作動媒体は、ウィック構造体の内部に浸透して、発熱源が接する部分付近に還流される。上述のような作動媒体が気化及び液化するサイクルにより、熱伝導部材100は、発熱源から伝達された熱を筐体101の発熱源から離れた部分に伝達して放熱できる。
【0015】
<1-2.筐体>
筐体101は、板状の第1筐体部1と、板状の第2筐体部2と、接合部3とを有する。第1筐体部1と第2筐体部2との間には、内部空間1010が配置される。なお、本明細書に記載の「第1筐体部1」及び「第2筐体部2」のうちの一方は本発明の「第1筐体部」に対応し、他方は本発明の「第2筐体部」に対応する。
【0016】
<1-2-1.第1筐体部、第2筐体部>
第1筐体部1は、第2筐体部2の上方に重ねて配置される。第1筐体部1は、凹部10を有する。凹部10は、第1筐体部1の下端部に配置され、上方に凹む。第1筐体部1及び第2筐体部2の外周縁部が互いに接合されることで、筐体101の内部に密閉された内部空間1010が形成される。本実施形態では、凹部10が内部空間1010となる。なお、この例示に限定されず、第2筐体部2は、第2筐体部2の上端部に配置されて下方に凹む凹部を有してもよい。たとえば、該凹部は、上下方向から見て凹部10と重なってよい。つまり、内部空間1010は、第1筐体部1の凹部10と、第2筐体部2の凹部とで構成されてもよい。或いは、第1筐体部1は凹部10を有さず、第2筐体部2の凹部が内部空間1010となってもよい。
【0017】
第1筐体部1は、金属製の第1板11と、第1金属層12と、を有する。第1金属層12は、第1板11の第2筐体部2側の表面(つまり下面)に配置される。第1金属層12の融点は、第1板11の融点よりも低い。こうすれば、第1板11及び第2板21を直接に接合する場合と比べて、第1筐体部1を第2筐体部2に接合し易くなる。
【0018】
第2筐体部2は、金属製の第2板21を有する。第2筐体部2は、第2金属層22をさらに有する。第2金属層22は、第2板21の第1筐体部1側の表面(つまり上面)に配置される。第2金属層22の融点は、第2板21の融点よりも低い。こうすれば、第1筐体部1と第2筐体部2との接合がさらにし易くなる。
【0019】
なお、本明細書に記載の「第1板11」及び「第2板21」のうちの一方は本発明の「第1板」に対応し、他方は本発明の「第2板」に対応する。さらに、本明細書に記載の「第1金属層12」及び「第2金属層22」のうちの一方は本発明の「第1金属層」に対応し、他方は本発明の「第2金属層」に対応する。たとえば、本明細書に記載の「第1筐体部1」が本発明の「第1筐体部」に対応するとともに本明細書に記載の「第2筐体部2」が本発明の「第2筐体部」に対応する場合、本明細書に記載の「第1板11」、「第1金属層12」はそれぞれ本発明の「第1板」、「第1金属層」に対応するとともに、本明細書に記載の「第2板21」、「第2金属層22」はそれぞれ本発明の「第2板」、「第2金属層」に対応する。逆に、本明細書に記載の「第1筐体部1」が本発明の「第2筐体部」に対応するとともに本明細書に記載の「第2筐体部2」が本発明の「第1筐体部」に対応する場合、本明細書に記載の「第1板11」、「第1金属層12」はそれぞれ本発明の「第2板」、「第2金属層」に対応するとともに、本明細書に記載の「第2板21」、「第2金属層22」はそれぞれ本発明の「第1板」、「第1金属層」に対応する。
【0020】
第1筐体部1は、第1筐体部1及び第2筐体部2のうちの一方から他方に向かう上下方向から見て、内部空間1010よりも外側において第2筐体部2と接合される。本実施形態では、第1筐体部1のうちの第2筐体部2に接合された部分における第1筐体部1の厚さT1は、第1筐体部1のうちの上下方向から見て内部空間1010と重なる部分における第1筐体部1の厚さT2よりも薄い。また、第2筐体部2のうちの第1筐体部1に接合された部分における第2筐体部2の厚さT3は、第2筐体部2のうちの上下方向から見て内部空間1010と重なる部分における第2筐体部2の厚さT4よりも薄い。
【0021】
つまり、一方の筐体部のうちの他方の筐体部に接合された部分における一方の筐体部の厚さは、一方の筐体部のうちの上下方向から見て内部空間1010と重なる部分における一方の筐体部の厚さよりも薄い。なお、一方の筐体部は、第1筐体部1及び第2筐体部2のうちの一方である。他方の筐体部は、前記第1筐体部及び前記第2筐体部のうちの他方である。
【0022】
こうすれば、一方の筐体部の接合部分の熱抵抗は、該一方の筐体部の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗よりも大きくなる。言い換えると、一方の筐体部の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗がより小さくなる。たとえば、T1<T2であれば、第1筐体部1の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗は、第1筐体部1の接合部分の熱抵抗よりも小さくなる。また、T3<T4であれば、第2筐体部2の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗は、第2筐体部2の接合部分の熱抵抗よりも小さくなる。従って、筐体101の内部空間1010と重なる部分を経由して熱が伝達され易くなる。よって、より経路長が短い熱伝達経路で熱を伝達できるので、熱伝導部材100の熱伝導性能が向上する。
【0023】
なお、本実施形態では、T1<T2且つT3<T4である。但し、筐体101の内部空間1010と重なる部分の厚さと筐体101の接合部分の厚さとの大小関係は、この例示に限定されない。第1筐体部1及び第2筐体部2のうちの一方において接合部分の厚さは内部空間1010と重なる部分の厚さよりも薄い一方で、第1筐体部1及び第2筐体部2のうちの他方において接合部分の厚さは内部空間1010と重なる部分の厚さよりも薄くなくてもよい。たとえば、T1<T2である一方で、T3≧T4であってもよい。或いは、T3<T4である一方で、T1≧T2であってもよい。
【0024】
次に、第1金属層12のうちの第2筐体部2との接合部分における第1金属層12の厚さtaは、第1金属層12のうちの上下方向から見て内部空間1010と重なる部分における第1金属層12の厚さtbよりも薄い。ta<tbであることにより、第1金属層12の接合部分の熱抵抗は第1金属層12の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗よりも大きくなる。つまり、第1筐体部1の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗がより小さくなる。従って、筐体101の外部と筐体101内の内部空間1010との間において、この部分を経由して熱がさらに伝達され易くなる。よって、より経路長が短い熱伝達経路で熱を伝達できるので、熱伝導部材100の熱伝導性能が向上する。
【0025】
また、第2金属層22のうちの第1筐体部1との接合部分における第2金属層22の厚さtcは、第2金属層22のうちの上下方向から見て内部空間1010と重なる部分における第2金属層22の厚さtdよりも薄い。tc<tdであることにより、第2金属層22の接合部分の熱抵抗は第2金属層22の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗よりも大きくなる。つまり、第2筐体部2の内部空間1010と重なる部分の熱抵抗がより小さくなる。従って、筐体101の外部と筐体101内の内部空間1010との間において、この部分を経由して熱がさらに伝達され易くなる。よって、より経路長が短い熱伝達経路で熱を伝達できるので、熱伝導部材100の熱伝導性能が向上する。
【0026】
次に、第1板11及び第2板21は、上下方向と垂直な方向に広がる。第1板11及び第2板21の材料には、機械的強度の高い材料が採用される。たとえば本実施形態では、第1板11及び第2板21の材料はそれぞれ、ステンレス鋼である。ヤング率の高いステンレス鋼を第1板11及び第2板21の材料に採用することにより、筐体101の機械的強度を向上できる。従って、熱伝導部材100の耐久性を向上することができる。但し、上述の例示に限定されず、第1板11及び第2板21の材料には、たとえば、鉄、アルミニウム、亜鉛、銀、金、マグネシウム、マンガン、及びチタンなどのいずれかの金属、又は、これらの金属を含む合金(真鍮、ジェラルミンなど)を用いることができる。
【0027】
第1金属層12の材料は、第1板11の材料よりも熱伝導率が高い。たとえば、本実施形態では、第1金属層12の材料は、銅及び銅合金のうちのどちらかである。高い熱伝導性を有する銅又は銅合金を第1金属層12に用いることにより、第1筐体部1の熱伝導性を向上できる。従って、熱伝導部材100の熱伝導性能を向上できる。また、第2金属層22の材料は、第2板21の材料よりも熱伝導率が高い。たとえば、本実施形態では、第2金属層22の材料は、第1金属層12と同じく、銅及び銅合金のうちのどちらかである。高い熱伝導性を有する銅又は銅合金を第2金属層22に用いることにより、第2筐体部2の熱伝導性を向上できる。また、第1金属層12及び第2金属層22が同種材料であることにより、両者間の接合がし易くなり、その接合強度を向上できる。なお、上述の例示に限定されず、第1金属層12及び第2金属層22には、銅及び銅合金以外の金属材料が採用されてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、第1金属層12は、第1板11の第2筐体部2側の表面を全て覆う。たとえば、第1板11よりも熱伝導率が高い材料で第1金属層12を形成することにより、第1筐体部1の熱伝導性を高めることができる。従って、熱伝導部材100の熱伝導性能を向上できる。同様に、第2金属層22は、第2板21の第1筐体部1側の表面を全て覆う。たとえば、第2板21よりも熱伝導率が高い材料で第2金属層22を形成することにより、第2筐体部2の熱伝導性を高めることができる。従って、熱伝導部材100の熱伝導性能を向上できる。なお、上述の例示に限定されず、第1金属層12及び第2金属層22のうちの少なくとも一方の金属層は、上述の表面のうちの第1筐体部1及び第2筐体部2が互いに接する部分のみを覆ってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、第1金属層12は、第1板11の第2筐体部2側の表面に配置された金属メッキ層である。同様に、第2金属層22は、第2板21の第1筐体部1側の表面に配置された金属メッキ層である。第1金属層12を金属メッキ層とすることにより、第1板11の厚さに比べて第1金属層12の厚さを薄くすることができる。同様に、第2金属層22を金属メッキ層とすることにより、第2板21の厚さに比べて第2金属層22の厚さを薄くできる。従って、接合部3の厚さをより薄くできる。また、表面に金属メッキ層を形成した金属板を第1筐体部1及び第2筐体部2に用いることができるので、熱伝導部材100の製造工程数を削減できる。従って、熱伝導部材100の生産性を向上できる。
【0030】
なお、第1金属層12及び第2金属層22の形態は、上述の例示に限定されない。たとえば、第1筐体部1はクラッド材であってもよく、たとえば、第1板11の第2筐体部2側の表面に第1金属層12が圧延接合されてもよい。及び/又は、第2筐体部2はクラッド材であってもよく、第2板21の第1筐体部1側の表面に第2金属層22が圧延接合されてもよい。たとえば圧延接合済みのクラッド材を第1筐体部1及び/又は第2筐体部2に用いることができるので、熱伝導部材100の製造工程数を削減できる。従って、熱伝導部材100の生産性を向上できる。
【0031】
<1-2-2.接合部>
次に、図1から図3を参照して、接合部3を説明する。図3は、実施形態に係る接合部3の第1構成例を示す断面図である。なお、図3は、実施形態における接合部3付近の断面構造を拡大した図である。
【0032】
接合部3は、筐体101において、第1筐体部1及び第2筐体部2が互いに接合される部分である。接合部3は、第1筐体部1及び第2筐体部2のうちの一方から他方に向かう上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って配置される(図1参照)。接合部3は、上下方向から見て環状に配置される。たとえば接合部3を内部空間1010の外縁部に沿って途切れなく配置できるので、内部空間1010の密閉性を確保できる。
【0033】
たとえば、図3に示すように、接合部3は、第1面120と第2面20とを接合する。第1面120は、第1金属層12の第2筐体部2側の面である。第2面20は、第2筐体部2の第1筐体部1側の面である。具体的には、接合部3は、第1金属層12の下面を第2金属層22の上面に接合する。両者を接合することにより、第1金属層12、第2金属層22のような金属層を介して第1板11を第2板21に接続できる。前述の如く、第1金属層12の融点は第1板11の融点よりも低く、第2金属層22の融点は第2板21の融点よりも低い。そのため、第1板11及び第2板21を直接に接合する場合と比べて、第1筐体部1を第2筐体部2に接合し易くなる。従って、第1板11及び第2板21の材料が両者間を直接に接合し難い組み合わせであっても、上述の金属層を介した両者間の間接的な固定により、両者の密な接続を容易に行うことができる。たとえば、第1板11の材料及び第2板21の材料が共にステンレス鋼であっても、両者間を強固に接続できる。よって、第1筐体部1と第2筐体部2との間の接合強度を向上することができる。
【0034】
好ましくは、接合部3は、第1筐体部1の下面のうちの第2筐体部2と接する領域全体を第2筐体部2に接合する。たとえば、接合部3は、第1金属層12の第1面120のうちの第2筐体部2の第2面20と接する領域全体を該第2面20に接合する。具体的には、図3に示すように、接合部3は、第1金属層12の下面のうちの第2金属層22の上面と接する領域全体を第2金属層22に接合する。こうすれば、両者の接合面積を広く確保できるので、両者間の接合強度を向上できる。さらに、内部空間1010の密閉性を確保できる。
【0035】
なお、図3において、第2面20は、第2金属層22の第1筐体部1側の表面である。つまり、接合部3は、第1金属層12の第2筐体部2側の第1面120を第2金属層22の上面(つまり第2面20)に接合する。第1筐体部1及び第2筐体部2の両方が接合用の金属層を有することにより、第1筐体部1及び第2筐体部2間の接合強度をさらに向上できる。
【0036】
また、以上の説明では、本実施形態に係る筐体101には、第1金属層12及び第2金属層22の両方が配置される。但し、これらの例示に限定されず、図4A及び図4Bに示すように、第1金属層12及び第2金属層22のうちのどちらかは、筐体101に配置されなくてもよい。図4Aは、実施形態に係る接合部3の第2構成例を示す断面図である。図4Bは、実施形態に係る接合部3の第3構成例を示す断面図である。なお、図4A及び図4Bは、接合部3付近の断面構造を拡大した図である。
【0037】
たとえば図4Aに示すように、第1筐体部1は第1金属層12を有する一方で、第2筐体部2は第2金属層22を有さなくてもよい。この場合、接合部3は、第1金属層12の下面と第2板21の上面とを接合する。両者を接合することにより、第1金属層12を介して第1板11を第2板21に接続できるので、第1筐体部1と第2筐体部2間の接合強度を向上することができる。好ましくは、接合部3は、第1金属層12の下面のうちの第2板21の上面と接する領域全体を第2板21に接合する。こうすれば、両者の接合面積を広く確保できるので、両者間の接合強度を向上できる。さらに、内部空間1010の密閉性を確保できる。
【0038】
或いは、図4Bに示すように、第2筐体部2は第2金属層22を有する一方で、第1筐体部1は第1金属層12を有さなくてもよい。この場合、接合部3は、第2金属層22の上面と第1板11の下面とを接合する。両者を接合することにより、第2金属層22を介して第1板11を第2板21に接続できるので、第1筐体部1と第2筐体部2間の接合強度を向上することができる。好ましくは、接合部3は、第2金属層22の上面のうちの第1板11の下面と接する領域全体を第1板11に接合する。こうすれば、両者の接合面積を広く確保できるので、両者間の接合強度を向上できる。さらに、内部空間1010の密閉性を確保できる。
【0039】
<1-2-2-1.接合方法>
次に、図5及び図5Bを参照して、接合部3における接合方法を説明する。図5Aは、接合部3の構成例を示す断面図である。図5Bは、接合部3の他の構成例を示す断面図である。
【0040】
第1筐体部1及び第2筐体部2は、両者が上下方向に重ねられた状態で加熱されながら上下方向に加圧されることにより接合される。以下では、加熱及び加圧を同時に実施する処理を「加熱加圧処理」と呼ぶ。加熱加圧処理により、第1筐体部1及び第2筐体部2が互いに接する接触部の金属組織が徐々に再構成される。たとえば、第1金属層12の金属原子が第2金属層22の金属組織に拡散するとともに、第2金属層22の金属原子が第1金属層12の金属組織に拡散する。その結果、接合部3が、第1筐体部1及び第2筐体部2の接触部に形成される。
【0041】
本実施形態では、加熱加圧処理の条件を適宜調整することにより、図5Aに示すように、接触部における第1筐体部1及び第2筐体部2の境界を部分的に無くす。その結果、該接触部での金属組織の再構成によって、第1筐体部1及び第2筐体部2の境界の一部において該境界に跨る結晶粒Crが生成する。この場合、第1領域A1と第2領域A2とを有する接合部3が、第1筐体部1及び第2筐体部2の接触部に形成される。
【0042】
第1領域A1では、該接触部での金属組織の再構成によって、結晶粒Crが生成される。たとえば、図5Aでは、結晶粒Crは、第1金属層12と第2筐体部2の第2金属層22との境界の一部において該境界に跨って存在する。なお、各々の第1領域A1に配置される結晶粒Crは、図5Aでは単数であるが、この例示に限定されず複数であってもよい。
【0043】
一方、第2領域A2では、金属組織が再構成されずに、第1筐体部1及び第2筐体部2が互いに接する接触面が残る。たとえば、接合部3は、第1金属層12の第1面120と第2筐体部2の第2面20とが直接に接する界面31をさらに有する。界面31において、第1金属層12は、第2筐体部2と接合される。たとえば、図5Aでは、界面31において、第1金属層12が、第2金属層22と接合される。両者が接合されるため、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が界面31で透過することを十分に抑制できる。従って、内部空間1010の密閉性をさらに向上できる。
【0044】
なお、図5Aの例示に限定されず、第1筐体部1及び第2筐体部2の接触部において、両者の境界を完全に無くして、両者を接合することもできる。この場合、加熱加圧処理によって、第1領域A1のみを有する接合部3が、第1筐体部1及び第2筐体部2の接触部に形成される。言い換えると、接合部3において、該接触部での金属組織の再構成により生成した結晶粒Crが、第1筐体部1と第2筐体部2との境界の全域において該境界に跨って存在する。たとえば、図5Bでは、結晶粒Crが、第1金属層12と第2金属層22との境界の全域において該境界に跨って存在する。なお、結晶粒Crは、図5Bでは単数であるが、この例示に限定されず複数であってもよい。
【0045】
つまり、接合部3は、第1金属層12と第2筐体部2との境界の少なくとも一部に跨って存在する結晶粒Crを有する。接合部3が上記の結晶粒Crを有することにより、他の材料を用いることなく、第1筐体部1と第2筐体部2とを互いに接合することができる。
【0046】
また、図5Aのように上述の境界の一部を無くすことにより、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、より好ましい条件で両者を互いに接合できる。たとえば、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、より低い温度条件且つより短い処理時間で第1筐体部1と第2筐体部2とを互いに接合することができる。或いは、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、温度条件を同じにして、処理時間をさらに短くできる。こうすれば、第1筐体部1及び第2筐体部2を互いに接合するために必要な時間をより短くできる。若しくは、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、処理時間を同じにして、温度条件をさらに低くできる。こうすれば、第1筐体部1及び第2筐体部2を互いに接合する際に必要なエネルギーの消費量を低減することができる。
【0047】
また、図5Bのように上述の境界を完全に無くすことにより、第1筐体部1及び第2筐体部2の境界の全域を強固に接合できる。従って、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が接合部3で透過することを確実に防止できる。従って、内部空間1010の密閉性を大幅に向上できる。
【0048】
なお、前述のごとく、接合部3は、上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って配置される。好ましくは、接合部3において、単数又は複数の結晶粒Crは、上下方向からみて、内部空間1010の外縁部に沿って環状に配置される。たとえば、図5Aの第1領域A1及び第2領域A2が、上下方向からみて、上述のように環状に配置される。或いは、図5Bの第1領域A1が上下方向からみて、上述のように環状に配置される。途切れなく環状に配置される結晶粒Crで内部空間1010を囲むことができるので、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が接合部3で透過することをさらに確実に防止できる。従って、内部空間1010の密閉性をさらに大幅に向上できる。但し、結晶粒Crの配置は、この例示に限定されない。たとえば、結晶粒Crは、内部空間1010の外縁部に沿って、一部途切れつつ環状に延びてもよい。
【0049】
<1-2-3.柱部>
次に、筐体101は、柱部4と、第3金属層5と、をさらに有する(図2参照)。
【0050】
柱部4は、第1板11から第2筐体部2に向かって突出するとともに、内部空間1010内に配置される。より具体的には、柱部4は、凹部10の底面から下方に突出する。本実施形態では、柱部4は、複数であり、第1板11と一体に配置される。つまり、柱部4及び第1板11はそれぞれ、単一部材の異なる一部である。
【0051】
柱部4の先端部は、本実施形態では第2筐体部2の上面に対して第3金属層5を介して間接的に接する。或いは、該先端部は、第2筐体部2の上面に対して直接に接してもよいし、ウィック構造体に対して間接的又は直接に接してもよい。これにより、柱部4は、第1筐体部1及び第2筐体部2間において両者を支持する。従って、第1筐体部1の上面に下方向きの力が作用したり、第2筐体部2の下面に上方向きの力が作用したりしても、筐体101が変形し難くなり、該筐体101の変形によって内部空間1010が狭くなることを抑制できる。なお、本実施形態の例示に限定されず、柱部4の少なくとも一部は、第2筐体部2の上面から突出してもよく、たとえば第2板21の上面から突出してもよい。
【0052】
第3金属層5は、柱部4の表面に配置される(図2参照)。つまり、柱部4の表面は、第3金属層5で覆われる。本実施形態では、第3金属層5及び第1金属層12は、単一部材の異なる一部である。但し、この例示に限定されず、第3金属層5は、第1金属層12とは別体であってもよい。第3金属層5の熱伝導率は、柱部4の熱伝導率よりも高い。柱部4よりも熱伝導率が高い第3金属層5を該柱部4の表面に配置することにより、内部空間1010内の作動媒体に対する柱部4の熱伝導性を向上できる。従って、熱伝導部材100の熱伝導性能を向上できる。但し、これらの例示に限定されず、柱部4の表面は、第3金属層5で覆われなくてもよい。たとえば図6に示すように、柱部4の少なくとも側面は、内部空間1010に露出してもよい。
【0053】
<1-3.第1変形例>
次に、実施形態の第1変形例を説明する。以下では、上述の実施形態と異なる構成について説明する。また、上述の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略することがある。
【0054】
図7A及び図7Bは、第1変形例における接合部3付近の断面構造を拡大した図である。図7Aは、第1変形例に係る接合部3の第1構成例を示す断面図である。図7Bは、第1変形例に係る接合部3の第2構成例を示す断面図である。なお、図7A及び図7Bでは、筐体101には、第1金属層12及び第2金属層22の両方が配置される。但し、これらの例示に限定されず、たとえば図4A図4Bと同様に、第1金属層12及び第2金属層22のうちのどちらかは、筐体101に配置されなくてもよい。
【0055】
第1変形例では、接合部3は、中間接続体32をさらに有する。中間接続体32は、金属製であり、本実施形態では銅又は銅合金の板である。但し、中間接続体32の材料は、この例示に限定されず、他の金属材料であってもよい。
【0056】
中間接続体32は、第1筐体部1と第2筐体部2との間に配置され、第1筐体部1の下面と第2筐体部2の第2面20とを間接的に接続する。たとえば、中間接続体32は、第1金属層12と第2筐体部2との間に配置される。中間接続体32を介して、第1金属層12の第1面120は、第2筐体部2の第2面20と接続される。図7A及び図7Bでは、中間接続体32は第1金属層12と第2金属層22との間に配置される。第1金属層12の第1面120は、中間接続体32を介して、第2金属層22の上面と接続される。こうすれば、第1筐体部1及び第2筐体部2間の接合強度を向上できる。従って、液体状態の作動液媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体の透過を十分に抑制できる。よって、内部空間1010の密閉性をさらに向上できる。
【0057】
中間接続体32の上面は、好ましくは、第1筐体部1の下面のうちの該中間接続体32と接する領域全体と接合される。たとえば図7A及び図7Bでは、中間接続体32の上面は、第1金属層12の下面のうちの該中間接続体32と接する領域全体と接合される。同様に、中間接続体32の下面は、好ましくは、第2筐体部2の第2面20のうちの該中間接続体32と接する領域全体と接合される。たとえば図7A及び図7Bでは、中間接続体32の下面は、第2金属層22の上面のうちの該中間接続体32と接する領域全体と接合される。こうすれば、第1筐体部1及び第2筐体部2と中間接続体32との接合面積を広く確保できるので、両者間の接合強度を向上できる。さらに、内部空間1010の密閉性を確保できる。
【0058】
第1変形例では、第1筐体部1、中間接続体32、及び第2筐体部2は、これらが上方から下方に向かって順に重ねられた状態で、加熱加圧処理することにより接合される。第1変形例では、第1金属層12及び中間接続体32の接触部の金属組織と、第2金属層22及び中間接続体32の接触部の金属組織とが、加熱加圧処理によって徐々に再構成される。
【0059】
たとえば、図7Aに示すように、接合部3の第1領域A1(図5A参照)において、上述の接触部での金属組織の再構成によって、第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2が生成する。つまり、接合部3は、第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2を有する。第1結晶粒Cr1は、第1筐体部1と中間接続体32との境界の一部において該境界に跨って存在し、図7Aでは第1金属層12と中間接続体32との境界に跨る。第2結晶粒Cr2は、第2筐体部2と中間接続体32との境界の一部において該境界に跨って存在し、図7Aでは第2金属層22と中間接続体32との境界に跨る。なお、各々の第1領域A1において、第1結晶粒Cr1、第2結晶粒Cr2はそれぞれ、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0060】
或いは、図7Bに示すように、接合部3の第1領域A1(図5A参照)において、上述の接触部での金属組織の再構成によって、第1筐体部1、中間接続体32、及び第2筐体部2は、上下方向において、単一の結晶粒Craにより接続されてもよい。つまり、接合部3は、結晶粒Craを有する。結晶粒Craは、第1筐体部1と中間接続体32との境界、中間接続体32、及び、中間接続体32と第2筐体部2との境界に跨って存在する。より具体的には、結晶粒Craは、第1筐体部1の第1金属層12と中間接続体32との境界の一部において該境界に跨って存在する。また、結晶粒Craは、中間接続体32を上下方向に跨って存在する。さらに、結晶粒Craは、中間接続体32と第2筐体部2の第2金属層22との境界の一部において該境界に跨って存在する。なお、各々の第1領域A1において、結晶粒Craは、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0061】
若しくは、接合部3は、第1結晶粒Cr1、第2結晶粒Cr2、及び結晶粒Craのうちの少なくとも2つを有しても良い。
【0062】
一方、接合部3の第2領域A2(図5A参照)では、金属組織が再構成されずに、第1金属層12及び中間接続体32が互いに接する接触面と、第2金属層22及び中間接続体32が互いに接する接触面とが残る。つまり、接合部3は、第1界面311と、第2界面312と、をさらに有する。第1界面311では、第1筐体部1の第1金属層12の第1面120と中間接続体32の第1筐体部1側の面とが直接に接する。第2界面312では、第2筐体部2の第2面20と中間接続体32の第2筐体部2側の面とが直接に接し、図7A及び図7Bでは第2金属層22の上面と中間接続体32の下面とが直接に接する。中間接続体32は、第1界面311において第1筐体部1の第1金属層12と接合される。さらに、中間接続体32は、第2界面312において、第2筐体部2と接合され、図7A及び図7Bでは第2金属層22と接合される。第1界面311及び第2界面312における接合により、液体状態の作動液媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が第1界面311及び第2界面312を透過することを十分に抑制できる。従って、内部空間1010の密閉性をさらに向上できる。
【0063】
なお、図7A及び図7Bの例示に限定されず、加熱加圧処理によって、第1領域A1のみを有する接合部3(図5B参照)が、第1筐体部1及び第2筐体部2の接触部に形成されてもよい。言い換えると、接合部3において、該接触部での金属組織の再構成により生成した上述の結晶粒Cr1,Cr2,Craの少なくともいずれかは、第1筐体部1と第2筐体部2との境界の全域において該境界に跨って存在してもよい。
【0064】
たとえば、接合部3が第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2(図7A参照)を有する場合、第1結晶粒Cr1は、第1筐体部1の第1金属層12と中間接続体32の境界の全域において該境界に跨って存在してもよい。及び/又は、第2結晶粒Cr2は、第2筐体部2の第2金属層22と中間接続体32の境界の全域において該境界に跨って存在してもよい。なお、第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2のうちの少なくとも一方は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0065】
つまり、接合部3は、第1結晶粒Cr1と、第2結晶粒Cr2と、をさらに有する。第1結晶粒Cr1は、第1金属層12と中間接続体32との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在する。第2結晶粒Cr2は、第2金属層22と中間接続体32との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在する。こうすれば、接合部3が第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2を有することにより、他の材料を用いることなく、中間接続体32を介して第1筐体部1と第2筐体部2とを互いに接続できる。
【0066】
また、第1筐体部1と中間接続体32との境界の一部、及び/又は、第2筐体部2と中間接続体32との境界の一部を無くすことにより、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、より好ましい条件で両者を互いに接合できる。たとえば、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、より低い温度条件且つより短い処理時間で第1筐体部1と第2筐体部2とを接続できる。或いは、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、温度条件を同じにして、処理時間をさらに短くできる。こうすれば、第1筐体部1及び第2筐体部2を接続するために必要な時間をより短くできる。若しくは、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、処理時間を同じにして、温度条件をさらに低くできる。こうすれば、第1筐体部1及び第2筐体部2を接続する際に必要なエネルギーの消費量を低減できる。
【0067】
或いは、第1筐体部1と中間接続体32との境界、及び/又は、第2筐体部2と中間接続体32との境界を完全に無くすことにより、第1筐体部1及び第2筐体部2の境界の全域を強固に接合できる。従って、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が接合部3で透過することを確実に防止できる。従って、内部空間1010の密閉性を大幅に向上できる。
【0068】
また、接合部3が結晶粒Cra(図7B参照)を有する場合、結晶粒Craは、第1筐体部1の第1金属層12と中間接続体32の境界の全域において該境界に跨って存在してもよい。及び/又は、結晶粒Craは、第2筐体部2の第2金属層22と中間接続体32の境界の全域において該境界に跨って存在してもよい。なお、この際、結晶粒Craは、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0069】
つまり、接合部3は、結晶粒Craを有する。結晶粒Craは、第1筐体部1の第1金属層12と中間接続体32との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在するとともに、中間接続体32に跨って存在し、さらに中間接続体32と第2筐体部2との境界の少なくとも一部において該境界に跨って存在する。こうすれば、第1筐体部1の第1金属層12及び第2筐体部2と中間接続体32との間の接合のみならず、第1筐体部1の第1金属層12と第2筐体部2との間も結晶粒Craによって直接に接続できる。言い換えると、第1金属層12及び第2筐体部2間を結晶粒Craによって接合できる。従って、中間接続体32を介して第1筐体部1及び第2筐体部2間をさらに強固に接続できる。また、第1筐体部1と中間接続体32との境界の一部、及び/又は、第2筐体部2と中間接続体32との境界の一部を無くすことにより、上述の境界を完全に無くす場合と比べて、図7Aのときと同様により好ましい条件で両者を互いに接合できる。或いは、第1筐体部1と中間接続体32との境界、及び/又は、第2筐体部2と中間接続体32との境界を完全に無くすことにより、図7Aのときと同様に、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が接合部3で透過することを確実に防止できる。
【0070】
なお、接合部3は、上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って配置される。好ましくは、接合部3において、単数又は複数の結晶粒Cr1,Cr2,Craは、上下方向からみて、内部空間1010の外縁部に沿って環状に配置される。
【0071】
たとえば、図7Aの第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2のうちの少なくともどちらかは、上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って環状に配置される。図7Aにおいて、第1結晶粒Cr1及び/又は第2結晶粒Cr2を途切れなく環状に配置して内部空間1010を囲むことができるので、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が接合部3で透過することを十分に防止できる。従って、内部空間1010の密閉性を高めることができる。但し、第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2の配置は、この例示に限定されない。たとえば、第1結晶粒Cr1及び第2結晶粒Cr2のうちの少なくともどちらかは、内部空間1010の外縁部に沿って、一部途切れつつ環状に延びてもよい。
【0072】
或いは、図7Bの結晶粒Craは、上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って環状に配置される。図7Bにおいて、途切れなく環状に配置される結晶粒Craで内部空間1010を囲むことができるので、液体状態の作動媒体などの液体、及び気化した作動媒体などの気体が接合部3で透過することを確実に防止できる。従って、内部空間1010の密閉性を高めることができる。但し、結晶粒Craの配置は、この例示に限定されない。たとえば、結晶粒Craは、内部空間1010の外縁部に沿って、一部途切れつつ環状に延びてもよい。
【0073】
若しくは、第1結晶粒Cr1及び結晶粒Craが存在する領域A1が、上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って環状に配置されてもよい。及び/又は、第2結晶粒Cr2及び結晶粒Craが存在する領域A1が、上下方向から見て、内部空間1010の外縁部に沿って環状に配置されてもよい。
【0074】
<1-4.第2変形例>
次に、実施形態の第2変形例を説明する。以下では、上述の実施形態と異なる構成について説明する。また、上述の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略することがある。
【0075】
図8Aは、第2変形例に係る熱伝導部材100の構成例を示す断面図である。図8Bは、第2変形例に係る熱伝導部材100の他の構成例を示す断面図である。
【0076】
第2変形例では、筐体101には、第1金属層12及び第2金属層22のうちの一方が配置される。
【0077】
たとえば、図8Aに示すように、第1金属層12は筐体101に配置されるが、第2金属層22は配置されない。なお、第3金属層5は、図8Aのように柱部4の表面に配置されてもよいし、配置されなくてもよい。さらに、第1金属層12の材料は、第1板11の材料とは異なるとともに、第2板21の材料と同じである。たとえば、図8Aにおいて、第1板11の材料はステンレス鋼であり、第1金属層12の材料及び第2板21の材料は共に銅又は銅合金である。なお、これらの材料は、上述の例示に限定されない。たとえば、第1板11には、第1金属層12よりも機械的強度の高い材料を採用できる。さらに、第1金属層12及び第2板21には、第1板11よりも熱伝導率の高い材料を採用できる。こうすれば、接合部3で同じ材料同士が接合されるため、第1筐体部1の第1金属層12及び第2板21間の接合強度を向上できる。従って、内部空間1010の密閉性をさらに向上できる。
【0078】
或いは、図8Bに示すように、第2金属層22は筐体101に配置されるが、第1金属層12及び第3金属層5は配置されない。さらに、第2金属層22の材料は、第2板21の材料とは異なるとともに、第1板11の材料と同じである。たとえば、図8Bにおいて、第1板11の材料及び第2金属層22の材料は共に銅又は銅合金であり、第2板21の材料はステンレス鋼である。なお、これらの材料は、上述の例示に限定されない。たとえば、第2板21には、第2金属層22よりも機械的強度の高い材料を採用できる。さらに、第1板11及び第2金属層22には、第2板21よりも熱伝導率の高い材料を採用できる。こうすれば、接合部3で同じ材料同士が接合されるため、第1板11及び第2筐体部2の第2金属層22及び間の接合強度を向上できる。従って、内部空間1010の密閉性をさらに向上できる。
【0079】
<2.その他>
以上、本発明の実施形態とその第1及び第2変形例とを説明した。なお、上述の実施形態とその第1及び第2変形例とは例示である。その各構成要素及び各処理の組み合わせに色々な変形が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、たとえば、発熱源を放熱する部材に有用である。
【符号の説明】
【0081】
100・・・熱伝導部材、101・・・筐体、1010・・・内部空間、1・・・第1筐体部、10・・・凹部、11・・・第1板、12・・・第1金属層、120・・・第1面、2・・・第2筐体部、20・・・第2面、21・・・第2板、22・・・第2金属層、3・・・接合部、31・・・界面、311・・・第1界面、312・・・第2界面、32・・・中間接続体、4・・・柱部、5・・・第3金属層、Cr,Cra・・・結晶粒、Cr1・・・第1結晶粒、Cr2・・・第2結晶粒
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B