(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010667
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】組織接触及び電流送達を向上させるためのバイアス電極
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109593
(22)【出願日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】17/371,008
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョージ・リヒター
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK18
4C160KK39
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】医療用プローブを提供すること。
【解決手段】医療用プローブは、近位端及び遠位端を有する可撓性挿入チューブと、可撓性挿入チューブの遠位端にあるバスケットアセンブリとを含む。本発明の実施形態では、バスケットアセンブリは、複数のスパインと、複数の電極であって、複数の電極の各々が、内部を通して所与のスパインを取り付けるに管腔を有する、複数の電極と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
近位端及び遠位端を有する可撓性挿入チューブと、
前記可撓性挿入チューブの前記遠位端にあるバスケットアセンブリであって、前記バスケットアセンブリは、複数のスパインを含む、バスケットアセンブリと、
複数の電極であって、前記複数の電極の各々が、内部を通して所与のスパインを取り付ける管腔を有する、複数の電極と、
を備える、医療用プローブ。
【請求項2】
前記スパインは、それぞれの外側及び内側を有し、各所与の電極は、そのそれぞれのスパインの前記外側に向かって付勢された導電性材料を含む、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
前記スパインは、それぞれの外側及び内側を有し、各所与の電極は、前記管腔とそのそれぞれのスパインの前記内側との間にノッチを有する、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
各所与のスパインは、前記所与のスパインの前記内側に固定されたワイヤを含み、前記ノッチは、前記各所与の電極と前記ワイヤとの間に電気的接続を形成するはんだ材料を含む、請求項3に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
各所与の電極の内面に適用された接着材料を更に備え、前記内面は、前記各所与の電極の前記管腔によって画定されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記電極の各々は、1つ以上の平滑化されたエッジを有する、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
灌注流体を前記電極に送達するように構成された1組のスプレーポートを更に備える、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項8】
灌注流体を前記スパインの間に送達するように構成された1組のスプレーポートを更に備える、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項9】
複数のスパインを有する医療用プローブを提供することと、
導電性材料の押出チューブを提供することと、
電極体を形成するために、前記押出チューブに対する切断作業を実行することと、
前記形成された電極体を所与のスパインの周りに取り付けることと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記複数のスパインは、前記医療用プローブの遠位端にバスケットアセンブリを形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記切断作業は、前記電極体に鋭いエッジを形成し、前記方法は、前記鋭いエッジを平滑化することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記押出チューブは管腔を画定し、前記チューブは、前記管腔を中心にして径方向に対称ではない、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記所与のスパインは外側及び内側を有し、前記形成された電極体を前記所与のスパインに取り付けることは、前記電極体を前記所与のスパインの前記外側に向かって付勢することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記所与のスパインは外側及び内側を有し、前記切断作業は、前記管腔と前記所与のスパインの前記内側との間にノッチを切断することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記所与のスパインは、前記所与のスパインの前記内側に固定されたワイヤを含み、前記方法は、前記ワイヤと前記電極体との間に電気的接続を形成するように、前記ノッチをはんだで充填することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記形成された電極体を前記所与のスパインの周りに取り付けることは、前記電極体と前記所与のスパインとの間に接着結合を形成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
灌注流体を前記電極に送達するように構成された1組のスプレーポートを提供することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
灌注流体を前記スパインの間に送達するように構成された1組のスプレーポートを提供することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/076,614号の利益を主張するものであり、上記仮特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、医療用プローブに関し、特にバスケットカテーテル用のバイアス電極の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
不整脈とは、典型的には、不規則な心拍を引き起こす心臓組織の小さな領域によって引き起こされる異常な心拍リズムである。心臓アブレーションは、不規則な心拍を引き起こす心臓組織の領域を破壊することによって不整脈を治療するために実施できる医療処置である。いくつかの医療用システムは、不可逆エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)を使用して心臓組織を切除する。IREは、組織に送達される高電圧の短パルスによって引き起こされる細胞膜の回復不能な透過化に基づく非熱アブレーション法である。
【0004】
Mathurらの米国特許出願第2013/0282084号は、ステント内再狭窄を治療するための装置を記載している。この装置は、径方向に拡張可能な構造を有する細長い可撓性カテーテル本体を含み、上記構造は、構造が拡張するときに組織に係合するための複数の電極又は他の電気外科的エネルギー送達表面を含む。電極は、バスケットを形成する支柱の一部として製造することができる。いくつかの実施形態では、電極は支柱よりも広くすることができる。
【0005】
Heの米国特許第6,569,162号は、受動的自己冷却アブレーション電極の設計を記載している。この電極は、電極が熱を血液プールへより効果的に放散し、熱質量を増大させることを可能にするより大きな表面積を含み、それにより、組織のより制御された加熱及びアブレーションのために、電極と組織との間の熱伝達を向上させる。この電極は、熱質量及び熱伝導率の増大をもたらす厚い壁を有する実質的に中実の電極体を含む。一実施形態では、電極は、先端電極を使用するために、電極体の遠位端に実質的に湾曲した外面を有してもよく、又はリング電極を使用するために、電極体を通って延びる中央管腔を有してもよい。別の実施形態では、電極の外面内に一体的に形成された複数の突出部が、複数の軸方向フィンを形成するように、電極の軸線に対して実質的に平行に延びている。
【0006】
Krishnanらの米国特許第6,582,429号は、被覆電極を有するアブレーションカテーテルの設計を記載している。このカテーテルは、内面及び外面を有する湾曲した遠位端領域を有するシャフトと、シャフトの遠位端に配置された複数の帯状電極とを含む。電極のこの構成は、カテーテルシースの遠位セグメントに沿って実質的に線形のアレイに配列された12個の帯状電極を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極は、先端電極を含んでもよい。
【0007】
Govariらの米国特許第8,475,450号は、灌注機能を有する二重目的のラッソーカテーテルを記載している。このラッソーカテーテルは、心臓組織と接触する表面積を増大させ、したがって、電極がアブレーションに使用されるときの電気抵抗を減少させるために、電極の外面の上に突出する電極を含む。
【0008】
上記の説明は、当該分野における関連技術の一般的な概要として記載したものであり、そこに含まれる情報うちのいずれもが本特許出願に対する先行技術を構成することを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、近位端及び遠位端を有する可撓性挿入チューブと、可撓性挿入チューブの遠位端にあるバスケットアセンブリであって、バスケットアセンブリは、複数のスパインを含む、バスケットアセンブリと、複数の電極であって、複数の電極の各々が、内部を通して所与のスパインを取り付ける管腔を有する、複数の電極と、を含む外科用撮像システムが提供される。
【0010】
一実施形態では、スパインは、それぞれの外側及び内側を有し、各所与の電極は、そのそれぞれのスパインの外側に向かって付勢された導電性材料を含む。
【0011】
別の実施形態では、スパインは、それぞれの外側及び内側を有し、各所与の電極はまた、管腔とそのそれぞれのスパインの内側との間にノッチを有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、各所与のスパインは、所与のスパインの内側に固定されたワイヤを含み、ノッチは、各所与の電極とワイヤとの間に電気的接続を形成するはんだ材料を含む。
【0013】
追加の実施形態では、外科用撮像システムはまた、各所与の電極の内面に適用された接着材料を備え、この内面は、各所与の電極の管腔によって画定されている。
【0014】
更なる実施形態では、電極の各々は、1つ以上の平滑化されたエッジを有する。
【0015】
補足の実施形態では、医療用プローブはまた、灌注流体を電極に送達するように構成された1組のスプレーポートを備える。
【0016】
別の実施形態では、医療用プローブはまた、灌注流体をスパインの間に送達するように構成された1組のスプレーポートを備える。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、複数のスパインを有する医療用プローブを提供することと、導電性材料の押出チューブを提供することと、電極体を形成するために、押出チューブに対する切断作業を実行することと、形成された電極体を所与のスパインの周りに取り付けることと、を含む方法も提供される。
【0018】
一実施形態では、複数のスパインは、医療用プローブの遠位端にバスケットアセンブリを形成する。
【0019】
別の実施形態では、切断作業は、電極体に鋭いエッジを形成し、上記方法はまた、鋭いエッジを平滑化することを含む。
【0020】
追加の実施形態では、押出チューブは管腔を画定し、チューブは、管腔を中心にして径方向に対称ではない。
【0021】
更なる実施形態では、所与のスパインは外側及び内側を有し、形成された電極体を所与のスパインに取り付けることは、電極体を所与のスパインの外側に向かって付勢することを含む。
【0022】
補足の実施形態では、所与のスパインは外側及び内側を有し、切断作業は、管腔と所与のスパインの内側との間にノッチを切断することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、所与のスパインは、所与のスパインの内側に固定されたワイヤを含み、上記方法はまた、ワイヤと電極体との間に電気的接続を形成するように、ノッチをはんだで充填することを含む。
【0024】
追加の実施形態では、形成された電極体を所与のスパインの周りに取り付けることは、電極体と所与のスパインとの間に接着結合を形成することを含む。
【0025】
更なる実施形態では、上記方法はまた、灌注流体を電極に送達するように構成された1組のスプレーポートを提供することを含む。
【0026】
別の実施形態では、上記方法はまた、灌注流体をスパインの間に送達するように構成された1組のスプレーポートを提供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本明細書では、本開示をあくまで例として添付の図面を参照して説明する。
【
図1】本発明の一実施形態による、バイアス電極を有するバスケットアセンブリをその遠位端が含む医療用プローブを含む医療用システム20の概略描画図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、所与のバイアス電極の斜視図を示す概略描画図である。
【
図3A】本明細書で集合的に
図3とも呼ばれ、本発明の一実施形態による医療用プローブの遠位端の概略描画図である。
【
図3B】本明細書で集合的に
図3とも呼ばれ、本発明の一実施形態による医療用プローブの遠位端の概略描画図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、バイアス電極を製造し、バイアス電極をバスケットアセンブリのスパインに取り付ける方法を概略的に示す流れ図である。
【
図5A】本明細書で集合的に
図5とも呼ばれ、本発明の一実施形態による、導電性材料の押出チューブから所与のバイアス電極を製造することを示す概略描画図である。
【
図5B】本明細書で集合的に
図5とも呼ばれ、本発明の一実施形態による、導電性材料の押出チューブから所与のバイアス電極を製造することを示す概略描画図である。
【
図5C】本明細書で集合的に
図5とも呼ばれ、本発明の一実施形態による、導電性材料の押出チューブから所与のバイアス電極を製造することを示す概略描画図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、所与の電極体が所与のスパインの外側に向かって付勢されるように、所与の電極体の管腔を所与のスパインに取り付けることを示す縦断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、所与の電極体が所与のスパインの外側に向かって付勢されるように、所与の電極体の管腔を所与のスパインに取り付けることを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
概要
IRE(不可逆エレクトロポレーション)処置でパルスフィールドアブレーション(deliver pulsed field ablation、PFA)を送達するためには、電極は、切除されている組織に可能な限り大きな表面積で接触しなければならない。本発明の実施形態は、非組織接触側の不要な材料を最小限に抑えながら、組織接触側により多くの材料が存在するように、断面において付勢される電極を含むバスケットアセンブリを有する医療用プローブを提供する。以下に説明するように、医療用プローブは、近位端及び遠位端を有する可撓性挿入チューブと、可撓性挿入チューブの遠位端にあるバスケットアセンブリとを含む。バスケットアセンブリは、複数のスパイン及び複数の電極を含み、各所与の電極は、内部を通して所与のスパイン取り付ける管腔を有する。
【0029】
組織接触側により多くの材料が存在するように電極を付勢することにより、本発明の実施形態を実装する医療用プローブのバスケットアセンブリを折りたたんで小さなシースに入れることが可能になる。この電極設計の別の態様は、バイアス(即ち、突起)が非外傷性であることを保証する。いくつかの実施形態では、非外傷性は、電極の鋭いエッジを平滑化することによって実装される。鋭いエッジを平滑化することは、組織又はシースへのいかなる損傷も防止し、アーク放電を引き起こす可能性のある高電流密度を防止するのに役立つ。
【0030】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、医療用プローブ22及び制御コンソール24を含む医療用システム20の概略描画図である。医療用システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(31 Technology Drive,Suite 200,Irvine,CA 92618 USA)によって製造されたCARTO(登録商標)システムに基づいてもよい。以下に説明する実施形態では、医療用プローブ22は、患者28の心臓26においてアブレーション処置を実行するためなど、診断的処置又は治療的処置のために使用することができる。あるいは、医療用プローブ22は、必要な変更を加えて、心臓又は他の身体器官における他の治療目的及び/又は診断目的に使用することができる。
【0031】
プローブ22は、可撓性挿入チューブ30と、挿入チューブの近位端に連結されたハンドル32とを含む。医療処置の間、医療専門家34は、医療用プローブの遠位端36が心臓26の室などの体腔に入るように、患者28の血管系を通してプローブ22を挿入することができる。遠位端36が心臓26の室に入ると、医療専門家34は、遠位端36に固定されたバスケットアセンブリ38を展開することができる。バスケットアセンブリ38は、以下の
図3、
図6、及び
図7を参照する説明に記載されるように、複数のスパインに固定された1組の電極40(本明細書では電極体40とも呼ばれる)を含む。
【0032】
不可逆エレクトロポレーション(IRE)アブレーションなどの医療処置の実行を開始するために、医療専門家34は、電極40が所望の位置(単数又は複数)で心臓組織に係合するように、ハンドル32を操作して遠位端36を位置決めすることができる。
【0033】
図1に示される構成では、制御コンソール24は、ケーブル42によって体表面電極に接続され、体表面電極は典型的には、患者28に貼り付けられた接着性皮膚パッチ44を含む。制御コンソール24は、電流追跡モジュール48と共に、接着性皮膚パッチ44とバスケットアセンブリ38に固定された電極40との間で測定されたインピーダンス及び/又は電流に基づいて、心臓26内における遠位端36の位置座標を決定するプロセッサ46を含む。医療処置中に位置センサとして使用されることに加えて、電極40は、心臓内の組織を切除するなど、他のタスクを実行することができる。
【0034】
上述したように、電流追跡モジュール48と共に、プロセッサ46は、接着性皮膚パッチ44と電極40との間で測定されたインピーダンス及び/又は電流に基づいて、心臓26内における遠位端36の位置座標を決定することができる。このような決定は、典型的には、インピーダンス又は電流を遠位端の既知の位置に関連付ける較正プロセスが実行された後に行われる。本明細書に提示された実施形態は、心臓26内の組織にIREアブレーションエネルギーを送達するように(も)構成された電極40を説明するが、任意の体腔内の組織に任意の他のタイプのアブレーションエネルギーを送達するように電極40を構成することは、本発明の趣旨及び範囲内であると見なされる。
【0035】
プロセッサ46は、典型的にはフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)として構成されたリアルタイムノイズ低減回路50と、それに続くアナログ-デジタル(analog-to-digital、A/D)信号変換集積回路52とを含んでもよい。プロセッサは、本明細書に開示された1つ以上のアルゴリズムを実行するようにプログラムすることができ、1つ以上のアルゴリズムの各々は、以下に説明するステップを含む。プロセッサは、1つ以上のアルゴリズムを実行するために、回路50及び回路52、並びに以下でより詳細に説明するモジュールの特徴を使用する。
【0036】
図1に示される医療用システムは、インピーダンス又は電流ベースの感知を使用して遠位端36の位置を測定するが、他の位置追跡技術(例えば、磁気ベースのセンサを使用する技術)を使用してもよい。インピーダンス及び電流ベースの位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号及び同第5,944,022号に記載されている。上述した位置感知の方法は、上述のCARTO(登録商標)システムにおいて実装され、上記で引用した特許に詳細に記載されている。
【0037】
制御コンソール24はまた、制御コンソール24が電極40及び接着性皮膚パッチ44から信号を転送し、及び/又はそれらに信号を転送することを可能にする入力/出力(I/O)通信インターフェース54を含む。
図1に示される構成では、制御コンソール24は、IREアブレーションモジュール56及びスイッチングモジュール58を更に含む。
【0038】
IREアブレーションモジュール56は、数十キロワットの範囲のピーク電力を含むIREパルスを生成するように構成される。以下に説明するように、医療用システム20は、IREパルスを電極40の対に送達することによってIREアブレーションを実行する。いくつかの実施形態では、電極の所与の対は、2組の電極40を含み、各組は、少なくとも1つの電極40を有する。スイッチングモジュール58を使用して、IREアブレーションモジュール56は、1つ以上のIREパルスを電極対の各対に独立して送達することができる。
【0039】
熱を放散し、アブレーションプロセスの効率を向上させるために、システム20は、挿入チューブ30内のチャネル(図示せず)を介して遠位端36に灌注流体(例えば、生理食塩水)を供給する。制御コンソール24は、灌注流体の圧力及び温度などの灌注パラメータを監視及び制御するための灌注モジュール60を含む。
【0040】
電極40及び/又は接着性皮膚パッチ44から受信した信号に基づいて、プロセッサ46は、患者の体内における遠位端36の位置を示す電気解剖学的マップ62を生成することができる。処置の間、プロセッサ46は、ディスプレイ64上でマップ62を医療専門家34に提示し、電気解剖学的マップを表すデータをメモリ66に記憶することができる。メモリ66は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなど、任意の適切な揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、医療専門家34は、1つ以上の入力デバイス68を使用して、マップ62を操作することができる。代替実施形態では、ディスプレイ64は、マップ62を提示することに加えて、医療専門家34からの入力を受け入れるように構成することができるタッチスクリーンを含んでもよい。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態による、所与の電極40の斜視図を示す概略描画図である。各電極40は、生体適合性の導電性材料から製造され、それを貫通する電極管腔70を有し、また、電極の外面74から管腔まで延びるノッチ72を有する。外面74に加えて、各所与の電極40は、そのそれぞれの管腔70によって画定される内面76を有する。
【0043】
図3A及び
図3Bは、本明細書で集合的に
図3とも呼ばれ、本発明の一実施形態による、バスケットアセンブリ38を含む遠位端36の概略描画図である。
図3Aは、例えば、遠位端36にある挿入チューブ管腔80から前進することなどによって、拘束されていないときに拡張構成にあるバスケットアセンブリ38を示し、
図3Bは、挿入チューブ30内で折りたたみ構成にあるバスケットアセンブリを示す。
図3Bに示されるように、電極40の外向きのバイアスは、バスケットアセンブリ38が挿入チューブ30内で折りたたまれているときに、スパイン82がシャフト84と同一平面上にあることを可能にする。
【0044】
例として、
図3Aに示されるように、バスケットアセンブリ38は、管状シャフト84の端部に形成されている複数の可撓性スパイン82を含み、複数の可撓性スパイン82は、それらの近位端及び遠位端で接続されている。医療処置の間、医療専門家34は、挿入チューブ30から管状シャフト84を延ばすことによってバスケットアセンブリ38を展開することができる。スパイン82は、楕円形(例えば、円形)又は長方形(例えば、平坦に見える場合がある)断面を有してもよく、典型的には、可撓性で弾力のある材料(例えば、ニチノールとしても知られているニッケルチタンなどの形状記憶合金)を含む。その拡張構成では、バスケットアセンブリ38は、スパイン82が径方向外向きに曲がる拡張配置(
図3A)と、スパインが挿入チューブ30の長手方向軸線86に概ね沿って配列される折りたたみ配置(
図3B)とを有する。
【0045】
図3に示される構成では、電極をスパインに取り付けるように、1つ以上の電極40は、各所与のスパイン82にねじ込まれる。所与の電極40を所与のスパイン82に取り付けることについては、以下の
図6及び
図7を参照する説明に記載する。
【0046】
本明細書に説明する実施形態では、電極40は、心臓26内の組織にアブレーションエネルギーを送達するように構成することができる。電極40を使用してアブレーションエネルギーを送達することに加えて、電極を使用して、バスケットアセンブリ38の位置を判定すること、及び/又は心臓26内の組織上のそれぞれの位置での局所表面電位などの生理学的特性を測定することができる。
【0047】
各スパイン82は、外側88及び内側90を有する。本発明の実施形態では、所与のスパイン82に取り付けられた所与の電極40について、所与のスパインは所与の電極において平面状であり、平面は、(平面の)内側よりも外側に多くの導電性材料が存在するように、所与の電極を非対称に分割する。これらの実施形態では、電極40(即ち、スパイン82に取り付けられたとき)は、内側の所与の電極の表面積と比較して外側の所与の電極の表面積がより大きいので、スパイン82の外側に向かって付勢される。
【0048】
電極40を形成するのに理想的に適した材料の例としては、金、白金、及びパラジウム(及びそれらのそれぞれの合金)が挙げられる。これらの材料はまた、非常に高い熱伝導率を有し、これにより、組織上で発生した(即ち、組織に送達されたアブレーションエネルギーによる)最小限の熱が、電極を通って電極の裏側(即ち、スパインの内側にある電極の部分)に伝導され、次に心臓26内の血液プールに伝導される。
【0049】
プローブ22はまた、IREアブレーションモジュール56を電極40に連結する1組のワイヤ92を含む。いくつかの実施形態では、各スパイン82は、その内側90に固定された所与のワイヤ92を含む。ワイヤ92を電極40に接続することについては、以下の
図7を参照する説明に記載する。
【0050】
バスケットアセンブリ38は、遠位端94を有し、またシャフト84の遠位端から遠位端94に向かって長手方向に延びるステム96を含む。上述したように、制御コンソール24は、灌注流体を遠位端36に送達する灌注モジュール60を含む。ステム96は、複数のスプレーポート98を含み、各所与のスプレーポート98は、所与の電極40又は心臓26内の組織のいずれかに灌注流体を送達するように(即ち、2つの隣接するスパイン82の間への送達を目指すことによって)角度が付けられている。
【0051】
電極40を外側88に付勢することにより、電極は、スパインの外側の電極の部分からより多くのアブレーションエネルギーを送達する(即ち、スパインの内側にある電極の部分から送達されるアブレーションエネルギーよりも有意に多い)。電極40は、灌注流体を送達するスプレーポートを含まないので、上述の構成により、熱を組織からスパインの内側にある電極の部分に(即ち、アブレーション処置中に)伝達することが可能になり、また、スプレーポート98を介してスパインの内側にある電極の部分に灌注流体を向けることによって、電極を冷却することができる。
【0052】
図4は、電極40を製造し、電極をスパイン82に取り付ける方法を概略的に示す流れ図であり、
図5A~
図5Cは、本明細書で集合的に
図5とも呼ばれ、本発明の一実施形態による、導電性材料の押出チューブ130から所与の電極40を製造することを示す概略描画図である。
図5Aは、押出チューブ130の縦断面図を示し、
図5Bは、チューブ管腔132を画定するチューブ130の横断面図を示し、
図5Cは、所与の押出電極体40の縦断面図を示す。
【0053】
押出工程100において、製造業者(図示せず)は、
図5Bのチューブの横断面図に示されるように、導電性材料の径方向に対称でないチューブ130を押し出す。例えば、チューブ130は、0.04インチ(±0.003インチ)の高さ及び0.048インチ(±0.003インチ)の幅を有してもよく、管腔は、0.017インチ(±0.001インチ)の高さ及び0.032インチ(±0.002インチ)の幅を有してもよく、管腔の下の導電性材料の厚さは0.003インチ(±0.001インチ)であってもよく、管腔の上の導電性材料の厚さは約0.02インチであってもよい。
【0054】
製造工程102において、製造業者は、切断用工具を使用して、チューブ130から複数の電極体40(
図5C)を切断する。いくつかの実施形態では、各電極は、約0.08インチの長さを有してもよい。
【0055】
図5Aに示される例では、製造業者は、放電加工(electrical discharging machining、EDM)ワイヤ134などの切断用工具を使用して、チューブ130から電極体を製造することができる。いくつかの実施形態では、製造業者は、切断経路136によって示されるように、EDMワイヤ134を使用して、1回の切断作業で電極体(ノッチ72を含む)の各々を製造することができる。
【0056】
製造工程102は、電極体40上に鋭いエッジ138(
図5C)を形成することができる。医療用システム20が、IREアブレーションなどの高エネルギーアブレーション処置を実行するために使用される場合、高アブレーションエネルギーを電極40に印加すると、エッジ138からアーク放電が生じる可能性がある。
【0057】
平滑化工程104において、製造業者は、製造された電極体のエッジ138を平滑化する。製造業者が使用できる平滑化プロセスの例としては、転がし塗り及びバレル研磨が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
適用工程106において、製造業者は、電極体40の内面76に接着剤140を適用する。
【0059】
第1の選択工程108において、製造業者は、所与の製造された電極体40を選択し、第2の選択工程110において、製造業者は、選択された電極体に対して所与のスパイン82を選択する。
【0060】
取り付け工程112において、製造業者は、選択された電極体が選択されたスパインの外側に向かって付勢されるように、選択された電極体の管腔を選択されたスパインに取り付ける。
【0061】
図6及び
図7は、本発明の一実施形態による、所与の電極体が所与のスパインの外側88に向かって付勢されるように、所与の電極体40の管腔70を所与のスパイン82に(
図6の矢印150によって示されるように)取り付ける、ことを示す縦断面図である。
【0062】
位置決め工程114において、製造業者は、選択された電極体を、選択されたスパイン上の特定の長手方向位置160に位置決めする。いくつかの実施形態では、選択された電極体を所望の位置に位置決めすることにより、接着剤140を硬化させて、それにより、選択された電極体と選択されたスパインとの間に接着結合を形成することが可能になる。電極40のこの構成の1つの利点は、所与の電極40と所与のスパイン82との間の接着結合が破断した場合、所与のスパインの管腔は依然として所与の電極を含んでおり、それにより、所与の電極がバスケットアセンブリ38を「破壊」するのを防止することである。
【0063】
引っ張り工程116において、製造業者は、選択された電極体の内側から選択された電極体のノッチ内へとワイヤを引っ張り(例えば、「釣り針」)、接続工程118において、製造業者は、ノッチ(即ち、引っ張られたワイヤを含んでいる)をはんだ材料162(例えば、金スズ合金)で充填し、それによって、ワイヤと選択された電極体との間に電気的接続を形成する(そして、それによって、選択された電極体とアブレーションモジュール56との間に電気的接続を形成する)。
【0064】
最後に、決定工程120において、バスケットアセンブリ38用に選択されていない電極体40が依然として存在する場合には(即ち、工程108において)、この方法は、工程108に進み、製造業者は、以前に選択されていない電極体40を選択することができる。この方法は、バスケットアセンブリ38用に選択されていない電極体40がなくなると終了する。例えば、
図2に示されるバスケットアセンブリは、12個の電極40を含む(即ち、6つのスパイン82、スパインの各々に2つの電極体が取り付けられている)。したがって、この方法は、各スパイン82に2つの電極を固定することを完了すると終了する。
【0065】
上述の実施形態は例として引用したものであり、本発明は、上記で特に示され、説明されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含む。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
近位端及び遠位端を有する可撓性挿入チューブと、
前記可撓性挿入チューブの前記遠位端にあるバスケットアセンブリであって、前記バスケットアセンブリは、複数のスパインを含む、バスケットアセンブリと、
複数の電極であって、前記複数の電極の各々が、内部を通して所与のスパインを取り付ける管腔を有する、複数の電極と、
を備える、医療用プローブ。
(2) 前記スパインは、それぞれの外側及び内側を有し、各所与の電極は、そのそれぞれのスパインの前記外側に向かって付勢された導電性材料を含む、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 前記スパインは、それぞれの外側及び内側を有し、各所与の電極は、前記管腔とそのそれぞれのスパインの前記内側との間にノッチを有する、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(4) 各所与のスパインは、前記所与のスパインの前記内側に固定されたワイヤを含み、前記ノッチは、前記各所与の電極と前記ワイヤとの間に電気的接続を形成するはんだ材料を含む、実施態様3に記載の医療用プローブ。
(5) 各所与の電極の内面に適用された接着材料を更に備え、前記内面は、前記各所与の電極の前記管腔によって画定されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
【0067】
(6) 前記電極の各々は、1つ以上の平滑化されたエッジを有する、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(7) 灌注流体を前記電極に送達するように構成された1組のスプレーポートを更に備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(8) 灌注流体を前記スパインの間に送達するように構成された1組のスプレーポートを更に備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(9) 複数のスパインを有する医療用プローブを提供することと、
導電性材料の押出チューブを提供することと、
電極体を形成するために、前記押出チューブに対する切断作業を実行することと、
前記形成された電極体を所与のスパインの周りに取り付けることと、
を含む、方法。
(10) 前記複数のスパインは、前記医療用プローブの遠位端にバスケットアセンブリを形成する、実施態様9に記載の方法。
【0068】
(11) 前記切断作業は、前記電極体に鋭いエッジを形成し、前記方法は、前記鋭いエッジを平滑化することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記押出チューブは管腔を画定し、前記チューブは、前記管腔を中心にして径方向に対称ではない、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記所与のスパインは外側及び内側を有し、前記形成された電極体を前記所与のスパインに取り付けることは、前記電極体を前記所与のスパインの前記外側に向かって付勢することを含む、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記所与のスパインは外側及び内側を有し、前記切断作業は、前記管腔と前記所与のスパインの前記内側との間にノッチを切断することを含む、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記所与のスパインは、前記所与のスパインの前記内側に固定されたワイヤを含み、前記方法は、前記ワイヤと前記電極体との間に電気的接続を形成するように、前記ノッチをはんだで充填することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0069】
(16) 前記形成された電極体を前記所与のスパインの周りに取り付けることは、前記電極体と前記所与のスパインとの間に接着結合を形成することを含む、実施態様9に記載の方法。
(17) 灌注流体を前記電極に送達するように構成された1組のスプレーポートを提供することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(18) 灌注流体を前記スパインの間に送達するように構成された1組のスプレーポートを提供することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
【外国語明細書】