(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106694
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】魚介エキスの製造方法。
(51)【国際特許分類】
A23L 5/20 20160101AFI20230726BHJP
A23L 27/21 20160101ALI20230726BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20230726BHJP
C12N 9/50 20060101ALI20230726BHJP
A23L 17/20 20160101ALI20230726BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20230726BHJP
【FI】
A23L5/20
A23L27/21 B
C12N9/16 D
C12N9/50
A23L17/20
A23L17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007575
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】397077760
【氏名又は名称】株式会社林原
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 久恭
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
4B047
4B050
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LE03
4B035LG42
4B035LG51
4B035LK19
4B035LP41
4B042AC03
4B042AD39
4B042AE08
4B042AG60
4B042AG68
4B042AH01
4B042AK16
4B042AP27
4B047LB06
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF08
4B047LG50
4B047LG57
4B047LG58
4B047LP18
4B050CC08
4B050DD02
4B050LL02
4B050LL05
(57)【要約】
【課題】風味が向上された魚介エキスを、高い収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】魚介原料に、前記魚介原料の乾燥重量100gに対して300ユニット以上のホスホリパーゼを添加する工程を含む、風味が改善された魚介エキスの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介原料に、前記魚介原料の乾燥重量100gに対して300ユニット以上のホスホリパーゼを添加する工程を含む、
風味が改善された魚介エキスの製造方法。
【請求項2】
魚介原料が0.015重量%以上のリン脂質を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
魚介原料に、30~70℃において、1~6時間、ホスホリパーゼを作用させる工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ホスホリパーゼがホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼBおよびホスホリパーゼDからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
さらにプロテアーゼを添加する工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
風味が改善された、魚介原料のホスホリパーゼによる処理物。
【請求項7】
ホスホリパーゼを含む、魚介原料の風味を改善するための酵素組成物。
【請求項8】
プロテアーゼと組み合わせて使用するための、請求項7に記載の酵素組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介エキスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介エキスは、スープやタレ等に魚介の旨味を付与するために用いられる。魚介エキスは、魚介原料を水やエタノール等で抽出して製造されており、収量や風味を向上させるために、魚介原料を酵素処理したり、抽出条件を最適化したりする試みが行われている。
【0003】
特許文献1は、魚由来コラーゲンにより肉や魚のエキスの不快臭を低減させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の魚介エキスは、酵素処理によっても収率が十分ではなかった。また、魚介特有の風味の向上も求められていた。本発明は、風味が向上された魚介エキスを、高い収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、魚介原料を処理する際の酵素の種類に着目し、ホスホリパーゼを用いたときに、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、魚介原料に、前記魚介原料の乾燥重量100gに対して300ユニット以上のホスホリパーゼを添加する工程を含む、風味が改善された魚介エキスの製造方法に関する。
【0008】
魚介原料が0.015重量%以上のリン脂質を含むことが好ましい。
【0009】
魚介原料に、30~70℃において、1~6時間、ホスホリパーゼを作用させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0010】
ホスホリパーゼがホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼBおよびホスホリパーゼDからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0011】
さらにプロテアーゼを添加する工程を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明は、風味が改善された、魚介原料のホスホリパーゼによる処理物に関する。
【0013】
また、本発明は、ホスホリパーゼを含む、魚介原料の風味を改善するための酵素組成物に関する。
【0014】
前記酵素組成物は、プロテアーゼと組み合わせて使用するためのものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、風味が向上された魚介エキスを、高い収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1~5および比較例1で得られたメッシュ上の残渣と、メッシュを通過した魚介エキスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<魚介エキスの製造方法>>
本発明の魚介エキスの製造方法は、魚介原料に、前記魚介原料の乾燥重量100gに対して300ユニット以上のホスホリパーゼを添加する工程を含む、風味が改善された魚介エキスの製造方法であることを特徴とする。
【0018】
<ホスホリパーゼを添加する工程>
本工程では、魚介原料にホスホリパーゼを添加して作用させる。魚介原料としては、食品に用いられる一般的な魚介類であれば特に限定されず、魚類、貝類、イカ、エビ、カニ、タコ、ウニ、ナマコ、ホヤ等が挙げられる。魚類としては、カツオ、イワシ、アジ、サバ、エソ、グチ、タイ、サケ、ハモ、サンマ、マグロ、ブリ、フグ等が挙げられる。貝類としては、カキ、アサリ、ハマグリ、シジミ、ホタテ、アワビ等が挙げられる。イカとしては、スルメイカ、モンゴウイカ、コウイカ、アオリイカ、ヤリイカ、アカイカ等が挙げられる。これらの中でも、リン脂質を含む魚介類が好ましく、貝類、イカがより好ましく、カキ、スルメイカが特に好ましい。
【0019】
本発明では、0.015重量%以上のリン脂質を含む魚介原料からも、ホスホリパーゼを作用させることにより、風味が向上された魚介エキスを高い収率で製造できる。魚介原料に含まれるリン脂質は、0.1重量%以上であってもよく、さらに、0.15重量%以上であってもよい。ここで、リン脂質の量は、魚介原料の、生の状態の普通肉組織に含まれる量のことである。例えば、カキには約0.31重量%、イカには約0.53重量%、ハモには約0.21重量%、ホタテには薬0.26重量%のリン脂質が含まれる。
【0020】
魚介原料は、あらかじめ、骨、皮、貝殻などの不可食部分は除去しておくことが好ましい。また、ホスホリパーゼを効率的に作用させるために、魚介原料は、破砕、殺菌等の事前処理を施したものが好ましい。破砕は、例えばフードミルにより行うことができる。事前処理後の魚介原料はペースト状であることが好ましい。
【0021】
ホスホリパーゼはリン脂質の分解酵素である。ホスホリパーゼとしては、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼD、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼCが挙げられる。この中でも、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼD、ホスホリパーゼA1が好ましく、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼDがより好ましい。
【0022】
ホスホリパーゼは、微生物由来、動物由来、植物由来のものを使用できる。微生物としてはAspergillus fumigatus、Aspergillus oryzae、Fusarium oxysporum、Saccharomyces cerevisiae、Actinomadura sp.、Bacillus subtilis、B.cereus、Escherichia coli、Listeria monocytegenes、Pseudomonas aeruginosa、Serratia sp.MK1、Streptomyces antibioticus、S.cinnamoneus、S.chromofuscus、S.hachijoensis、S.septatus、S.violaceoruber、Thermomyces lanuginosus、Yersinia enterocoliticaが挙げられる。動物としてはブタ、ヘビ、ウサギ、ウシ、ウマ、イノシシ、ヒツジ、ネズミ、ハムスターが挙げられる。植物としてはシロイヌナズナ、ピーナツ、キャベツが挙げられる。これらの中でも、微生物由来であることが好ましく、放線菌(Streptomyces属)由来であることがより好ましく、Streptomyces violaceoruber由来であることがさらに好ましい。また、ホスホリパーゼとしては、起源となる微生物、動物、または植物から抽出したもの、遺伝子組み換え技術を用いて大量生産させたもののいずれを用いてもよい。また、野生型ホスホリパーゼを用いてもよく、変異型ホスホリパーゼを用いてもよい。
【0023】
ホスホリパーゼの、魚介原料の乾燥重量100gに対する添加量は、300ユニット以上が好ましく、1000ユニット以上がより好ましく、3000ユニット以上がさらに好ましい。ここで、ホスホリパーゼA1、A2、Bの活性はL-α-ホスファチジルコリンを基質とし、37℃、pH8.0、10分間の条件下で、1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素量を1ユニットと定義する。ホスホリパーゼDの活性はL-α-ホスファチジルコリンを基質とし、37℃、pH5.5、30分間の条件下で、1分間に1μmolのコリンを遊離する酵素量を1ユニットと定義する。
【0024】
<ホスホリパーゼによる酵素反応>
魚介原料にホスホリパーゼを添加する工程に次いで、魚介原料にホスホリパーゼを作用させることにより、魚介原料中のリン脂質を分解する。ホスホリパーゼを作用させる時の温度は30~70℃が好ましく、40~60℃がより好ましく、50~60℃がさらに好ましい。ホスホリパーゼを作用させる時間は1~6時間が好ましく、2~4時間がより好ましい。ホスホリパーゼによる反応は静置状態で行ってもよく、攪拌しながら行ってもよい。ホスホリパーゼを作用させる際の溶媒は、水が好ましい。
【0025】
ホスホリパーゼを作用させる際の反応液の固形分濃度は5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。5重量%未満では魚介エキスの生産効率が不十分となる。固形分濃度の上限は特に限定されないが、粘度が上昇すると攪拌が困難になり酵素処理が不十分になる可能性があるため、一般的には70重量%以下である。
【0026】
<プロテアーゼの添加および酵素反応>
本発明の製造方法は、魚介原料にホスホリパーゼを添加する工程に加えて、魚介原料にプロテアーゼを添加する工程を含むことが好ましい。プロテアーゼは、タンパク質のペプチド結合を加水分解する活性を有している限り、その種類は特に限定されず、エンドペプチダーゼ、アミノエキソペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼのいずれであってもよい。また、プロテアーゼの至適pHは特に限定されず、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼのいずれであってもよい。
【0027】
プロテアーゼは、微生物由来、動物由来、植物由来のものを使用できるが、微生物由来であることが好ましく、Bacillus属、Aspergillus属、Streptomyces属由来がより好ましい。さらに、Bacillus licheniformis、Bacillus clausill、Aspergillus oryzae由来が特に好ましい。また、プロテアーゼは、起源となる微生物、動物、または植物から抽出したもの、遺伝子組み換え技術を用いて大量生産させたもののいずれを用いてもよい。また、野生型プロテアーゼを用いてもよく、変異型プロテアーゼを用いてもよい。
【0028】
プロテアーゼの具体例としては、ビオプラーゼSP-20FG(ナガセケムテックス株式会社製)、ビオプラーゼOP(ナガセケムテックス株式会社製)、デナチームAP(ナガセケムテックス株式会社製)、オリエンターゼ AY、オリエンターゼ 10NL、オリエンターゼ 90N、オリエンターゼ OP、ヌクレイシン、オリエンターゼ 22BF(以上、エイチビィアイ株式会社製)、マキシプロAFP、マキシプロNPU、マキシプロBAP、マキシプロPSP、マキシプロFPC,マキシプロCPP(以上DSM株式会社製)、ニュートラーゼ 0.8 L、ニュートラーゼ 1.5 MG、アルカラーゼ 2.4 L FG、プロメタックス、フレーバーザイム 1000 L、フレーバーザイム 500 MG(以上、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)アロアーゼAP-10、アロアーゼXA-10、アロアーゼNP-10、パンチダーゼNP-2、パンチダーゼMP、パンチダーゼP、プロテアーゼYP-SS(以上、ヤクルト薬品工業株式会社製)、ADMIL(合同酒精株式会社製)、コクラーゼ・P顆粒、精製パパイン(以上、三菱ケミカルフーズ株式会社製)、スミチームAP、スミチームFP、スミチームLP、スミチームLPL、スミチームMP(以上、新日本化学工業株式会社製)、サモアーゼ PC10F、ニューラーゼ F3G、パパイン W-40、パンクレアチン F、プロチン SD-AY10、プロチン SD-NY10、プロテアーゼ A「アマノ」SD、プロテアーゼ M「アマノ」SD、プロテアーゼ P「アマノ」3SD、ブロメライン F、プロテアックス、ペプチダーゼR(以上、天野エンザイム株式会社製)、エンチロン NBS(洛東化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
プロテアーゼの、魚介原料の乾燥重量100gに対する添加量は、2000ユニット以上が好ましく、8000ユニット以上がより好ましく、20000ユニット以上がさらに好ましい。ここで、プロテアーゼの活性は、ミルクカゼインを基質とし、30℃、pH7.5、10分間で、1分間にL-チロシン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加を与える酵素量を1ユニットと定義する。
【0030】
プロテアーゼを作用させる時の温度は30~70℃が好ましく、40~60℃がより好ましく、50~60℃がさらに好ましい。プロテアーゼを作用させる時間は1~6時間が好ましく、2~4時間がより好ましい。魚介原料にホスホリパーゼとプロテアーゼを作用させる順序は特に限定されないが、作業工程の簡略化のために、ホスホリパーゼとプロテアーゼを同時に作用させることが好ましい。
【0031】
<酵素の失活>
ホスホリパーゼによる酵素反応の後は、酵素を失活させることが好ましい。酵素の失活は、酵素反応後の混合物を90~100℃で10~30分保温することにより行う。失活後のホスホリパーゼは、魚介エキス中に残存していてもよく、残存する場合には食品材料に含まれる他のタンパク質と同様に体内で消化吸収される。
【0032】
<魚介エキスの分離及び回収>
魚介原料にホスホリパーゼを作用させた後、固体成分を分離し、魚介エキスを含む液体成分を回収する。固体成分の分離方法は特に限定されず、ろ過、遠心分離、沈殿等が可能である。ろ過を行う場合、10~150メッシュの篩を用いることが好ましく、20~100メッシュの篩を用いることがより好ましく、40~80メッシュの篩を用いることがさらに好ましい。メッシュは、樹脂製、金属製のものを使用できる。回収された、魚介エキスを含む液体成分には、必要に応じて常法により濃縮、洗浄、乾燥等を行うことができる。
【0033】
<魚介エキス>
魚介エキスは、風味改善されている。具体的には、魚介原料と比較して、魚介エキスでは雑味、酸味、えぐ味、苦味、生臭さが低減し、魚介の味わい、香ばしさが向上していることが好ましい。
【0034】
魚介エキスは、食品に魚介の旨味を付与するために用いることができる。魚介エキスを適用する食品としては、スープ、タレ、スナック菓子、即席めん、カレー、水産加工食品、調味料などが挙げられる。
【0035】
<<酵素組成物>>
本発明の酵素組成物は、ホスホリパーゼを含み、魚介原料の風味を改善するためのものであることを特徴とする。ホスホリパーゼとしては、魚介エキスの製造方法に関して前述したホスホリパーゼを用いることができる。
【0036】
酵素組成物中のホスホリパーゼの含有量は、300ユニット/g以上が好ましく、3000ユニット/g以上がより好ましい。
【0037】
酵素組成物は、ホスホリパーゼ以外に、食品に許容される他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、酵素、増粘多糖類、乳化剤、エキス類、糖質、甘味料、無機塩類、保存料などが挙げられる。これらの含有量は特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
【0038】
賦形剤としては、二糖類、オリゴ糖類、デンプン、加工デンプン類、デキストリンが挙げられる。
【0039】
pH調整剤としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、およびアジピン酸、ならびにこれらの有機酸のナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩ならびに炭酸、リン酸、およびピロリン酸、ならびにこれらの無機酸のNa塩およびK塩が挙げられる。
【0040】
酵素としては、例えば、プロテアーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、グルカン1,4-α-マルトトリオヒドロラーゼ、グルカン1,4-α-マルトテトラオヒドロラーゼ、グルカン1,4-α-マルトヘキサオシダーゼ、へミセルラーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオンデヒドロゲナーゼ、ペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β-グルカナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼなどが挙げられる。
【0041】
なお、プロテアーゼは、ホスホリパーゼとともに酵素組成物に含まれていてもよいが、ホスホリパーゼを含みプロテアーゼを含まない酵素組成物を、プロテアーゼと組み合わせるために使用することも可能である。酵素組成物中がプロテアーゼを含む場合、その含有量は、10000ユニット/g以上が好ましく、60000ユニット/g以上がより好ましい。
【0042】
増粘多糖類としては、例えば、加工澱粉、ガム類、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ペクチン、カラギーナン、カードラン、プルラン、ゼラチン、セルロース誘導体、寒天、タマリンド、サイリウム、グルコマンナンなどが挙げられる。
【0043】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニンなどが挙げられる。
【0044】
エキス類としては、例えば、酵母エキス、モルトエキスなどが挙げられる。
【0045】
糖質としては、例えば、ブドウ糖、果糖などの単糖;砂糖、マルトース、イソマルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、セロビオースなどの二糖;マルトトリオース以上のマルトオリゴ糖、ラフィノース、パノース、スタキオース、グルコオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ラクトスクロースなどの直鎖もしくは分岐オリゴ糖;異性化糖、水あめ、粉あめ、はちみつなどの糖混合物;デンプン、加工デンプン、デキストリン、水酸化ヘミセルロースなどの多糖;還元水あめ、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、パラチニット、エリスリトール、オリゴ糖還元物などの糖アルコールなどが挙げられる。
【0046】
甘味料としては、例えば、ステビア、アスパルテーム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテームなどが挙げられる。
【0047】
無機塩類としては、例えば、食塩、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、重合リン酸塩などが挙げられる。
【0048】
保存料としては、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸塩、亜硫酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩などが挙げられる。
【0049】
酵素組成物は、ホスホリパーゼを含むかぎり、その製造方法は特に限定されず、例えば、ホスホリパーゼ、および賦形剤等の任意成分を混合機にて混合する方法が挙げられる。混合機としては、容器回転型、容器固定型、複合型等が挙げられ、目的の活性値や量、任意成分の種類に応じて適宜選択できる。
【0050】
酵素組成物の形状は特に限定されず、例えば、粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状、固形状が挙げられる。粉末状の場合、ホスホリパーゼを水などの溶媒に溶解した後、必要に応じてデキストリンなどの賦形剤を配合し、乾燥させて粉末状としたものであってもよい。
【0051】
酵素組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、ホスホリパーゼ、および賦型剤を混合機にて混合する方法が挙げられる。混合機としては、容器回転型、容器固定型、複合型等が挙げられ、目的の活性値や量、賦型剤の種類に応じて適宜選択できる。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0053】
(1)使用材料
(1-1)ホスホリパーゼ
・放線菌由来ホスホリパーゼA2
・放線菌由来ホスホリパーゼA1
・放線菌由来ホスホリパーゼB
・放線菌由来ホスホリパーゼD
(1-2)プロテアーゼ
・細菌由来中性プロテアーゼ
・麹菌由来中性プロテアーゼ
・細菌由来アルカリプロテアーゼ
(1-3)魚介原料
・乾燥スルメイカ
・冷凍カキ
【0054】
(2)魚介エキスの製造試験1(実施例1~5、比較例1)
乾燥スルメイカは細かく切断した後、フードミルで破砕したものを使用した。乾燥スルメイカ10gに水を30g添加して膨潤させた後、100℃で60分間殺菌した。その後、ホスホリパーゼとプロテアーゼを表1に記載の量添加し、60℃、pH未調整の条件で2.5時間酵素反応させた。酵素反応物を、ステンレス製の60メッシュを用いて、メッシュ上の残渣と、メッシュを通過した魚介エキスに分離した。エキス量、残渣量、およびBrixを表1に示す。なお、Brixはエキス中の可溶性固形分(重量%)であり、屈折計により測定した。
図1に、実施例1~5および比較例1で得られたメッシュ上の残渣と、メッシュを通過した魚介エキスを示す。
【0055】
また、得られたエキスの香りを、パネラー3名により評価した。評価は、容器に入れた一定量のエキスの臭いをかぎ、下記の基準により3段階の評点を付した。なお、評価時には、鼻腔から香りが消えたことを確認し、次のサンプルを評価した。
3:生臭さが無くなり、香ばしい香りのみ感じられる
2:生臭さが減少し、香ばしい香りが感じられる
1:イカの香りが弱い、生臭い
評点の平均点を計算し、2未満のときに×、2以上3未満のときに△、3以上のときに〇として表1に示した。
【0056】
【0057】
比較例1に対し、実施例1~5ではエキス量が増大し、残渣量が低減した。また、実施例1~5では香りの評価結果も優れていた。
【0058】
(3)魚介エキスの製造試験2(実施例6~7、比較例2)
表2に記載の成分を含む酵素組成物1および2を作製した。
【0059】
【0060】
乾燥スルメイカは細かく切断した後、フードミルで破砕したものを使用した。乾燥スルメイカ600gに水を1800g添加して膨潤させた後、100℃で60分間殺菌した。その後、酵素組成物1または2を表3に記載の量添加し、60℃で2時間20分酵素反応させた。90℃に昇温して30分間で酵素を失活させた後、ステンレス製の60メッシュを用いて、メッシュ上の残渣と、メッシュを通過した魚介エキスに分離した。残渣量を表3に示す。
【0061】
【0062】
比較例2に対し、実施例6~7では残渣量が低減しており、エキス量が増大したことが確認された。
【0063】
(4)魚介エキスの製造試験3(実施例8、比較例3~5)
冷凍カキ(加熱用)を水道水で洗いながら解凍した。解凍後のカキ140gと水140gを混合し、フードミルで破砕してペースト状にした。その後、ホスホリパーゼとプロテアーゼを表4に記載の量添加し、52℃、pH未調整の条件で3時間酵素反応させた。100℃に昇温して10分間で酵素を失活させた後、ステンレス製の60メッシュを用いて、メッシュ上の残渣と、メッシュを通過した魚介エキスに分離した。Brixを表4に示す。
【0064】
また、得られたエキスの香りを、パネラー5名により評価した。評価は、容器に入れた一定量のエキスの臭いをかぎ、下記の基準により3段階の評点を付した。なお、評価時には、鼻腔から香りが消えたことを確認し、次のサンプルを評価した。
1:カキの香りが強く感じられる
2:カキの香りが感じられる
3:カキの香りが弱い
評点の平均点を計算し、表4に示した。
【0065】
また、得られたエキスの味を、パネラー5名により評価した。評価は、一定量のエキスを経口摂取し、カキ風味、酸味、えぐ味、苦味のそれぞれについて下記の基準により3段階の評点を付した。なお、評価時には、口腔から味が消えたことを確認し、次のサンプルを評価した。
【0066】
カキ風味の評価基準:
1:カキの味が強く感じられる
2:カキの味が感じられる
3:カキの味が弱い
【0067】
酸味、えぐ味、苦味の評価基準:
3点:ほとんど感じない
2点:感じる
1点:強く感じる
【0068】
評点の平均点を計算し、表4に示した。
【0069】
【0070】
実施例8では比較例3~5に対し味覚の評価結果が優れており、比較例3~5と同等の香りが維持されていた。