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特開2023-106712組立回路基板、立体組立回路基板、および回路基板連接体
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  • 特開-組立回路基板、立体組立回路基板、および回路基板連接体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106712
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】組立回路基板、立体組立回路基板、および回路基板連接体
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
H05K1/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007603
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 毅
(72)【発明者】
【氏名】土橋 大亮
【テーマコード(参考)】
5E344
【Fターム(参考)】
5E344AA08
5E344BB02
5E344BB03
5E344BB06
5E344BB10
5E344CC09
5E344CD14
5E344CD15
5E344DD03
5E344DD08
5E344EE06
5E344EE11
5E344EE21
(57)【要約】
【課題】必ずしも高い精度を必要としないで容易に組立てることができ、回路基板を相互に安定して電気的および機械的に接続可能であって、製造コストを抑えることが可能な組立回路基板の提供。
【解決手段】組立回路基板110は、実装面10Aに立てた状態で支持基板10に組み付け可能に構成され、少なくとも一方にアンテナのパターンが形成される立設基板20,30と、立設基板20,30のそれぞれの板厚方向を実装面10Aに立てた法線Nの周りで異ならせる向きに立設基板20,30を接合可能に構成されている接合部50と、立設基板20,30にそれぞれ与えられ、立設基板20,30を支持基板10に接合可能に構成されている第1金属部品40とを備える。第1金属部品40は、立設基板20,30に接合される第1端子部41と、第1端子部41に連なり、支持基板10に接合可能に構成されている第2端子部42とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の実装面にいずれも立てた状態で前記支持基板に組み付け可能に構成され、少なくとも一方にアンテナのパターンが形成される2つの立設基板と、
前記2つの立設基板のそれぞれの板厚方向を前記実装面に立てた法線の周りで異ならせる向きに前記2つの立設基板を接合可能に構成されている1つ以上の接合部と、
前記2つの立設基板にそれぞれ1つ以上が与えられ、前記立設基板を前記支持基板に接合可能に構成されている第1金属部品と、を備え、
前記第1金属部品は、
前記立設基板の前記実装面側の端部またはその近傍に接合される第1端子部と、
前記第1端子部に連なり、前記支持基板に接合可能に構成されている第2端子部と、を備える、組立回路基板。
【請求項2】
前記第1端子部は、前記立設基板に形成されているスルーホールまたは凹部に挿入された状態で、はんだにより前記立設基板に接合される、
請求項1に記載の組立回路基板。
【請求項3】
前記第1端子部は、前記立設基板の一面側から他面側へ前記スルーホールを貫通し、前記他面側で曲げられている、
請求項2に記載の組立回路基板。
【請求項4】
前記第1金属部品は、2つの前記第1端子部を備え、
前記2つの第1端子部は、一の前記スルーホールと、他の前記スルーホールとに個別に挿入される、
請求項2または3に記載の組立回路基板。
【請求項5】
前記第1金属部品は、前記2つの第1端子部を連結するとともに前記第2端子部を支持する連結支持部を備え、
前記第1端子部が前記スルーホールまたは前記凹部に挿入されると、前記連結支持部の端面は、前記立設基板に平行に接触する、
請求項4に記載の組立回路基板。
【請求項6】
前記連結支持部は、前記第2端子部が延びている向きとは逆側に錘部を備える、
請求項5に記載の組立回路基板。
【請求項7】
前記第1端子部は、前記スルーホールまたは凹部に圧入されることで前記立設基板に接合される、
請求項2に記載の組立回路基板。
【請求項8】
前記第1端子部は、前記立設基板にはんだにより表面実装される、
請求項2に記載の組立回路基板。
【請求項9】
前記第1端子部は、前記立設基板の前記端部を前記板厚方向に挟んで弾性力により保持する、
請求項2に記載の組立回路基板。
【請求項10】
前記接合部は、前記立設基板とは別体の第2金属部品に相当し、
前記第2金属部品は、
前記2つの立設基板の一方に接合される第1端子部と、
前記2つの立設基板の他方に接合される第2端子部と、を備える、
請求項1から9のいずれか一項に記載の組立回路基板。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組立回路基板と、
前記実装面を含む前記支持基板と、を備え、
前記2つの立設基板は、それぞれの前記板厚方向を異ならせて前記実装面にいずれも立てた状態で配置されるとともに、前記第1金属部品の前記第2端子部が前記支持基板に接合されることで、前記支持基板に組み付けられる、立体組立回路基板。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組立回路基板の複数が平坦な状態に連接されてなる回路基板連接体であって、
いずれも外形が一部を残して成形される前記立設基板と、
前記立設基板における残部に連なる支持フレームと、を備え、
前記2つの立設基板は、それぞれに前記第1金属部品が接合されている、回路基板連接体。
【請求項13】
前記2つの立設基板は、それぞれに前記第1金属部品が接合されているとともに、前記接合部としての第2金属部品により互いに接合されている、
請求項12に記載の回路基板連接体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的に組み立てられる回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
車載のアンテナユニットに備わる回路基板組立体として、アンテナパターンを含む複数のアンテナ回路基板が、メイン回路基板の実装面から立ち上がるようにメイン回路基板に組み付けられてなる構造が知られている(特許文献1)。これら立体的に組み付けられるアンテナ回路基板とメイン回路基板とは、相互に支持されるので、振動、衝撃等の外力に対する十分な強度を備えている。
【0003】
アンテナ回路基板には、メイン回路基板の実装面に当接する一端面から突出する端子としての突起が形成されている。その突起の表面および側面には、めっきが施される。突起は、メイン回路基板に形成されているスルーホールに挿入され、はんだで接合される。
また、アンテナ回路基板は、2枚で対をなし、これら一対のアンテナ回路基板のそれぞれの板厚方向が、メイン回路基板に立てた法線の周りに異なる方向を向いた状態に組み付けられる。対をなすアンテナ回路基板は、一方のアンテナ回路基板の端面から突出して形成されている端子としての突起と、他方のアンテナ回路基板に形成されているスルーホールとをはんだで接合することにより固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6947657号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナは一般的に、そのアンテナによって送受信される電波の周波数によって、必要な大きさがある程度決定される。必要な大きさより小さいアンテナを使用しようとすると特性が劣化する傾向があるため、一定の通信性能を確保しようとすればアンテナは一定の大きさが必要となる。また、メイン基板に直接アンテナを実装する場合、アンテナはその一定の大きさのなかで、メイン基板の制御回路パターンやグラウンドパターンから離れた部分が多い方が良好な特性を得ることができる。これはアンテナ自身を回路基板によって実現する場合も同様である。
アンテナ用の回路基板の構造として、単一の回路基板が平面的に配置される、あるいは複数の回路基板が平面的に並べられる場合は、制御回路パターンとアンテナパターンとを周波数に応じた所定の距離だけ離すために、構造全体の寸法が平面方向に長くならざるを得ない。
それに対し、制御回路パターンが形成されているメイン回路基板の実装面に複数のアンテナ回路基板が立てた状態で配置されるのならば、アンテナパターンと制御回路パターンやグラウンドパターンとを離してアンテナの性能を十分に確保しつつ、平面的な寸法をメイン回路基板の実装面の寸法相当に抑えて回路基板の構造全体を筐体内部の空間に収めることができる。
こうした立体的な回路基板組立構造によれば、アンテナに限らず、設置に必要な空間の平面寸法に対して、性能の確保等に必要な基板のパターン形成領域を広く確保することができるので、設計自由度が高い。
【0006】
その一方で、メイン回路基板の実装面に立てて配置される複数の回路基板を精度良く組み付けた状態でメイン回路基板に組み付ける必要があるので、高い組立精度が要求される。
特許文献1に記載の構造によれば、回路基板相互の機械的および電気的な接続は、回路基板から形成される突起と、突起が挿入されるスルーホールとのはんだ付けによってなされる。そのため、回路基板への突起の加工がコスト増加の要因となり、突起の加工精度が組立精度に影響するともに、突起の側面に安定した膜厚でめっきを施すことが難しいので、めっきが施された突起とスルーホールとを安定してはんだで接合することも難しい。
【0007】
そこで、本発明は、回路基板を相互に安定して電気的および機械的に接続可能であって、しかも製造コストを抑えることが可能な組立回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の組立回路基板は、支持基板の実装面にいずれも立てた状態で支持基板に組み付け可能に構成され、少なくとも一方にアンテナのパターンが形成される2つの立設基板と、2つの立設基板のそれぞれの板厚方向を実装面に立てた法線の周りで異ならせる向きに2つの立設基板を接合可能に構成されている1つ以上の接合部と、2つの立設基板にそれぞれ1つ以上が与えられ、立設基板を支持基板に接合可能に構成されている第1金属部品と、を備える。
第1金属部品は、立設基板の実装面側の端部またはその近傍に接合される第1端子部と、第1端子部に連なり、支持基板に接合可能に構成されている第2端子部と、を備える。
【0009】
本発明の組立回路基板において、第1端子部は、立設基板に形成されているスルーホールまたは凹部に挿入された状態で、はんだにより立設基板に接合されることが好ましい。
【0010】
本発明の組立回路基板において、第1端子部は、立設基板の一面側から他面側へスルーホールを貫通し、他面側で曲げられていることが好ましい。
【0011】
本発明の組立回路基板において、第1金属部品は、2つの第1端子部を備え、2つの第1端子部は、一のスルーホールと、他のスルーホールとに個別に挿入されることが好ましい。
【0012】
本発明の組立回路基板において、第1金属部品は、2つの第1端子部を連結するとともに第2端子部を支持する連結支持部を備え、第1端子部がスルーホールまたは凹部に挿入されると、連結支持部の端面は、立設基板に平行に接触することが好ましい。
【0013】
本発明の組立回路基板において、連結支持部は、第2端子部が延びている向きとは逆側に錘部を備えることが好ましい。
【0014】
本発明の組立回路基板において、第1端子部は、スルーホールまたは凹部に圧入されることで立設基板に接合されることが好ましい。
【0015】
本発明の組立回路基板において、第1端子部は、立設基板にはんだにより表面実装されることが好ましい。
【0016】
本発明の組立回路基板において、第1端子部は、立設基板の端部を板厚方向に挟んで弾性力により保持することが好ましい。
【0017】
本発明の組立回路基板において、接合部は、立設基板とは別体の第2金属部品に相当し、第2金属部品は、2つの立設基板の一方に接合される第1端子部と、2つの立設基板の他方に接合される第2端子部と、を備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明の立体組立回路基板は、上述の組立回路基板と、実装面を含む支持基板と、を備え、2つの立設基板は、それぞれの板厚方向を異ならせて実装面にいずれも立てた状態で配置されるとともに、第1金属部品の第2端子部が支持基板に接合されることで、支持基板に組み付けられる。
【0019】
さらに、本発明は、上述の組立回路基板の複数が平坦な状態に連接されてなる回路基板連接体であって、いずれも外形が一部を残して成形される立設基板と、立設基板における残部に連なる支持フレームと、を備え、2つの立設基板は、それぞれに第1金属部品が接合されている。
【0020】
本発明の回路基板連接体において、2つの立設基板は、それぞれに第1金属部品が接合されているとともに、第2金属部品により互いに接合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
複数の立設基板を備える本発明の組立回路基板および立体組立回路基板は、複数の立設基板および支持基板を相互に電気的かつ機械的に接続するために基板から形成される突起に代えて、基板とは別体の第1金属部品を備えている。ここで、基板に形成される突起は、基板の外形加工に先立ち、ルーター加工等により形成されるので、プレス加工等により製造される金属部品と比べてコスト増加の要因となり、加工精度にも劣る。第1金属部品は、プレス加工等により安価に精度良く製造することができ、量産にも対応できる。本発明によれば、ルーター加工を行わないで組立回路基板を製造することが可能となる。
また、第1金属部品の表面には、典型的には、基板の突起に形成されるめっき層とは異なり、表面の全域に亘り安定した品質のめっき層が形成されている。めっき層の品質が安定していると、はんだ付けの品質も安定する。
その上、基板に形成される突起とは異なり、第1金属部品は基板相互の組付けに必要な限度で弾性変形可能であり、可撓性または柔軟性を持たせることもできる。
【0022】
本発明によれば、第1金属部品を介して複数の立設基板および支持基板を接合することで、製造コストを抑えつつ、電気的および機械的に安定して接続されている組立回路基板および立体組立回路基板を提供することができる。第1金属部品が可撓性または柔軟性を備えていれば、厳密な組立精度が要求されることなく基板を容易に組立て可能である。
本発明によれば、支持基板の実装面に立設基板が立てた状態で配置される立体的な構造から、設置に必要な平面的寸法に対して、基板の回路の性能確保に必要な基板上のパターン形成領域を広く確保しつつ、許容される設置用空間に収めることができるので、設計自由度が高い。
【0023】
さらに、アンテナの開発において試作が繰り返されることに鑑みると、本発明によれば、アンテナパターンを備える立設基板の試作の都度、ルーター加工等により立設基板に突起を加工する必要がなく、予め多数が入手されている第1金属部品を当該試作に使用することができる。アンテナの特性は周辺部品や外装ケース等の影響を受けるため、アンテナの開発は通常、アンテナの試作、使用機器に搭載した状態での特性の確認、アンテナパターンの調整、および再試作、といった手順を繰り返す必要がある。この場合では、立設基板の外形形状はそのままでパターンを修正したものを再試作していくことになる。しかし立設基板の修正・再試作の時、第1金属部品は変更する必要がない。そのため、第1金属部品はあらかじめたくさん作っておけばよく、しかも金属部品の打ち抜き加工は安価に高速で行えるため量産が可能である。その点からもコスト削減が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、実施形態に係る立体組立回路基板の斜視図である。(b)は、(a)に示す2つの立設基板を支持基板から分離して示す斜視図である。
図2】2つの立設基板の分解斜視図である。
図3】(a)は、実施形態の第1金属部品を示す斜視図である。(b)は、基板から形成される比較例の突起を示す斜視図である。
図4】(a)は、繰り返し配列される立設基板と、立設基板を支持するフレームとを備える回路基板連接体を示す斜視図である。(b)は、フレームから2つの立設基板が切り離された状態を示す斜視図である。
図5】立設基板および支持基板からなる立体組立回路基板を製造する手順を示すフローチャートである。
図6】(a)~(c)は、第1金属部品を立設基板に接合する手順を示す斜視図である。(d)は、立設基板を支持基板に接合した状態を示す斜視図である。
図7】(a)~(c)は、第1形態の第1金属部品を立設基板に接合する手順を示す斜視図である。
図8】(a)~(c)は、第1形態の変形例に係る第1金属部品を立設基板に接合する手順を示す斜視図である。
図9】(a)は、第2形態の第1金属部品を示す斜視図である。(b)および(c)は、第3形態の第1金属部品を示す斜視図である。
図10】(a)および(b)は、第4形態の第1金属部品を立設基板に接合する手順を示す斜視図である。
図11】(a)は、第5形態に係る第1金属部品を備えた立体組立回路基板の斜視図である。(b)および(c)は、第5形態の第1金属部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔全体構成〕
図1(a)、(b)に示す立体組立回路基板100は、複数の回路基板10,20,30が立体的に組み立てられてなる組立体に相当する。立体組立回路基板100は、例えば車両に搭載される電子機器のケース5に収容される。
【0026】
かかる電子機器は、例えばアンテナユニットである。本実施形態の立体組立回路基板100は、図示しないコネクタや送受信回路のIC(Integrated Circuit)チップ等が実装面10Aに実装されるとともに、図示しない制御回路パターンが形成される支持基板10と、同一の実装面10Aに立てた状態で支持基板10に組み付けられる2つの立設基板20,30とを備えている。
2つの立設基板20,30は、互いに電気的および機械的に接合されるとともに、支持基板10に対しても電気的および機械的に接合される。立設基板20,30のそれぞれに形成されているアンテナパターン21,31は、支持基板10の制御回路パターンおよびICチップと電気的に接続され、アンテナの機能を担う。
【0027】
支持基板10および立設基板20,30のいずれも、例えば、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板に相当し、矩形状に形成されている。各基板10,20,30には、基板間の接合に用いられるスルーホールHが形成されている。
支持基板10は、ケース5に形成されている図示しないボス等にねじで固定する等の適宜な方法で固定される。
なお、支持基板10の実装面10Aには、立設基板20,30の他にも、図示しない回路基板が立てた状態で配置されていてもよい。
【0028】
立設基板20と立設基板30とを接合すると、2つの回路基板を備える組立体(組立回路基板)をなす。この組立体のことを部分組立回路基板110と称するものとする。部分組立回路基板110が支持基板10に接合されることで、立体組立回路基板100が製造される。
【0029】
立設基板20は、矩形状の実装面10Aにおける一の辺101に沿って実装面10Aに配置される。立設基板30は、辺101と隣り合う辺102に沿って実装面10Aに配置される。実装面10Aの領域内に立設基板20,30が立てて配置されるため、実装面10Aには、図示しないコネクタや、ICチップ、回路素子等を実装するための領域が広く残されている。
【0030】
立設基板20,30は、それぞれの板厚方向を実装面10Aに立てた法線Nの周りで90°異ならせた向きに配置されている。なお、立設基板20と立設基板30とがなす角度は、90°である必要はなく、90°よりも小さくても大きくてもよい。また、立設基板20,30は、実装面10Aのいずれかの辺の近傍に配置されている必要はなく、辺に対して平行に配置されている必要もない。
【0031】
本実施形態においては、便宜的に、立体組立回路基板100にx,y,zの直交座標系を与える。実装面10Aの辺101の方向がx方向、辺102の方向がy方向であるものとする。支持基板10は、x方向およびy方向に延在しており、実装面10Aはxy面に相当する。実装面10Aの法線Nの方向は、z方向に相当する。
【0032】
立設基板20,30は、互いに近接する部位において接合される。本実施形態においては、辺101と辺102とがなす角隅の近傍で、立設基板20のx方向の一端20xと、立設基板30のy方向の一端30yとが近接して配置されている。そのため、立設基板20の一端20xと立設基板30の一端30yとが後述する接合部(50)により接合される。
【0033】
立設基板20は辺101と同等の長さでx方向に延在し、x方向の長さよりもz方向の幅が小さく形成されている。立設基板30は辺102よりも短い長さでy方向に延在し、y方向の長さよりも短いz方向の幅は、立設基板20の幅と同一である。
立設基板20,30のそれぞれの板厚方向の向き、長さおよび幅の寸法等は、本実施形態には限らず、適宜に設定することができる。立設基板20,30は、正方形であってもよい。
【0034】
以上より、支持基板10と立設基板20,30とは、それぞれ異なる向きに延在し、実装面10Aの領域内において法線Nの周りにそれぞれの板厚方向を異ならせる向きに立てた状態に組み立てられる。そうすると、支持基板10に形成される制御回路パターンと、アンテナパターン21,31とを搬送周波数に応じた所定の距離だけz方向に離しつつ、全体として長いアンテナパターン21,31を実装面10Aの領域内に収めながら、相互に支持される基板10,20,30の構造全体として、異なる向きの外力に対する十分な強度を備えることができる。
【0035】
〔基板間の接合に係る構成〕
次に、立体組立回路基板100における基板間の接合に係る構成を説明する。
図1(b)、および分解斜視図である図2に示すように、部分組立回路基板110は、立設基板20,30と、立設基板20,30にそれぞれ1つ以上が与えられ、立設基板20,30を支持基板10に接合する第1金属部品40と、立設基板20,30を互いに接合する1つ以上の第2金属部品50とを備えている。
【0036】
第1金属部品40は、アンテナパターン21または31と、支持基板10の制御回路パターンとを電気的に接続する端子と、立設基板20または30を支持基板10に機械的に結合する部材として機能する。第2金属部品50は、アンテナパターン21とアンテナパターン31とを電気的に接続する端子と、立設基板20と立設基板30とを機械的に結合する部材として機能する。
第1金属部品40および第2金属部品50のいずれにも、良好な導電性と、基板を結合した状態に維持するに足りる強度とが要求される。
加えて、本実施形態の第1金属部品40および第2金属部品50のいずれも、はんだSを用いて基板を接合するため、用いられるはんだSに適した材料のめっき層Pがそれぞれの表面全域に亘り施されることが好ましい。
【0037】
第1金属部品40および第2金属部品50は、例えば、黄銅、リン青銅等の金属材料からなる条材をプレス加工することにより形成されているとともに、めっき層Pとして、バレルめっき等の方法により表面の全域に亘り例えば錫めっきが施されている。
【0038】
本実施形態は、基板とは別体の接続用部材としての第1金属部品40および第2金属部品50を備えていることを一つの特徴としている。こうした金属部品40,50が電気的および機械的な基板間の接続に用いられることによれば、図3(b)に示すように、基板から形成される突起90を用いて基板間を電気的および機械的に接続する場合と比べ、後述するように、立体組立回路基板100の製造工程(図5)が簡略となる。突起90は、ルーター加工により外形が加工された後、表面に銅めっき層Cが施される。
【0039】
支持基板10と立設基板20とを接合する突起90は、立設基板20の端面20Fから実装面10Aよりも外側へ、端面20Fに対して直交する向きに突出している。支持基板10と立設基板30とを接合する突起90も同様である。この突起90は、支持基板10に形成されているスルーホールHに挿入されてはんだSで接合される。
同様に、立設基板20,30同士を接合する突起90は、一方の立設基板20(または30)の他の端面から突出し、他方の立設基板30(または20)に形成されているスルーホールHに挿入されてはんだSで接合される。
【0040】
〔第2金属部品〕
第2金属部品50は、立設基板20に接合される第1端子部51と、立設基板30に接合される第2端子部52と、第1端子部51および第2端子部52を連結する連結部53とを備えている。第2金属部品50は、展開すると全体として矩形の板状の部材からなり、その両端に、展開されている連結部53に対して同じ向きに折り曲げられた一対の第1端子部51および第2端子部52を備えている。
立設基板20には、第1端子部51に対応するスルーホールHが板厚方向に貫通して形成されている。立設基板30には、第2端子部52に対応するスルーホールHが板厚方向に貫通して形成されている。
本実施形態の立設基板20,30は、z方向に並ぶ2つの第2金属部品50により接合される。立設基板20,30の接合に用いられる第2金属部品50の数は、その限りではない。
【0041】
本実施形態の立設基板20,30が実装面10Aに臨む側を立設基板20,30の内側、その反対側を立設基板20,30の外側と称すると、連結部53は、立設基板20,30の外側に配置される。第1端子部51および第2端子部52がそれぞれ、対応する立設基板20,30の外側からスルーホールHに挿入されると、第1端子部51および第2端子部52のそれぞれの先端が、立設基板20,30の内面から突出する。その状態ではんだSにより第1端子部51および第2端子部52がスルーホールHに接合される。
【0042】
例えば90°をなして配置される立設基板20,30のそれぞれの一端20x,30yが第2金属部品50により接合されるとき、連結部53は、立設基板20の外面20Aと、立設基板30の外面30Aとがなす形状に倣い、立設基板20,30の外側へ凸となる向きに屈曲している。
【0043】
立設基板20,30が、それぞれの板厚方向を異ならせる向きに配置された状態で第2金属部品50により接合される場合は、第2金属部品50は、図2に示すように、接合時の屈曲状態と同様に屈曲している状態に成形されるとよい。
【0044】
本実施形態においては、図4(a)に示すように、立設基板20,30が平面方向に配列されてなる連接体200の支持フレーム220から立設基板20,30が切り離されていない状態で、立設基板20,30が第2金属部品50により接合される。その場合、立設基板20,30の接合時には、図4(b)に示すように、立設基板20,30はそれぞれの板厚方向を同一方向に向けて隣接して配置されているから、連結部53は一方向に延在する平坦な状態である。立設基板20,30の接合後、支持フレーム220から切り離された立設基板20と立設基板30とを連結部53を中心に内面側に曲げると、それぞれの板厚方向の向きの変化に伴い、連結部53が曲げられることとなる。
【0045】
連結部53が長さ方向の中間部位53Aで曲がり易いように、中間部位53Aの剛性を他の部位の剛性よりも低めることができる。その場合は、例えば、中間部位53Aのz方向の寸法を狭くする、あるいは、中間部位53Aの屈曲の内側に凹部を形成することで、中間部位53Aの板厚を薄くするとよい。
連結部53の板厚に対して連結部53のz方向の寸法は長い。そのため、連結部53が曲がるときに、立設基板20のx回転方向への変位や、立設基板30のy回転方向への変位を抑えることができる。また、こうした変位を抑えるために、z方向における複数の位置で第2金属部品50により立設基板20,30が連結されることが好ましい。
【0046】
〔第1金属部品〕
第1金属部品40の構成を説明する。ここでは、第1金属部品40の基本的な構成を説明する。
以下、立設基板20の実装面10A側の端部20Eに設けられる第1金属部品40により立設基板20と支持基板10とを電気的および機械的に接続する場合を例に取り説明する。立設基板30の実装面10A側の端部30Eに設けられる第1金属部品40により立設基板30と支持基板10とを接続する場合も同様である。
図1図2、および図3(a)に示すように、第1金属部品40は、立設基板20に接合される第1端子部41と、第1端子部41に連なり、支持基板10に接合される第2端子部42と、第1端子部41および第2端子部42の間に介在する屈曲した中間部43とを備えている。
【0047】
第1端子部41は、立設基板20の実装面10A側の端部20Eまたはその近傍に接合される。端部20Eは、実装面10Aから立ち上がる立設基板20の基端部に相当する。第1端子部41が、端部20Eまたはその近傍に形成されているスルーホールHに外面20A側から挿入されると、第1端子部41の先端が立設基板20の内面から突出する。その状態ではんだSにより第1端子部41がスルーホールHに接合される。
なお、第1端子部41は、立設基板20の内面側からスルーホールHに挿入されてはんだSにより接合されていてもよい。
【0048】
第2端子部42は、第1端子部41に対して直交する向きに延在し、立設基板20の実装面10A側の端面20Fの位置を超えて突出している。中間部43から第2端子部42の先端までの長さは、中間部43から第1端子部41の先端までの長さよりも長い。第2端子部42は、可撓性または柔軟性を備えていることが好ましい。なお、立設基板30の実装面10A側の端面30Fは、図4(b)に示されている。
第2端子部42が、支持基板10に形成されているスルーホールHに挿入されると、第2端子部42の先端が立設基板20の実装面10Aとは反対側の面から突出する。その状態ではんだSにより第2端子部42がスルーホールHに接合される。
【0049】
第1金属部品40は、プレス加工等により屈曲した形状に成形されていてもよいし、第1端子部41から第2端子部42まで直線状に成形された状態から、中間部43において曲げることで屈曲した形状が与えられたものであってもよい。後者の場合は、はんだSによる接合に影響が及ばないように、はんだSによる接合の前に曲げるとよい。例えば、スルーホールHに第1端子部51を通した後、第1端子部51の先端を治具により保持した状態で、第2端子部52を第1端子部51に対して曲げることができる。
【0050】
〔実施形態の製造工程〕
図5を参照し、立体組立回路基板100の製造工程の一例について説明する。
まず、立設基板20,30、第1金属部品40、および第2金属部品50を備えた部分組立回路基板110を製造する。
ここで、部分組立回路基板110は、図4(a)に示すように、平面的に隣り合う立設基板20と立設基板30とを1つのペアとして、多数のペアが二次元配列をなす状態で連接されてなる連接体200として製造される。
【0051】
連接体200を構成する多数の立設基板20,30の領域を含む連接基板210が用意されたならば、立設基板20および立設基板30のそれぞれの領域における所定の位置にドリルで孔加工を行い、スルーホールHを形成するための貫通孔を形成する(ステップS01)。
次いで、連接基板210のアンテナパターン21,31を形成する面の全域に亘り銅めっきを施す(ステップS02)。例えば、無電解めっきにより形成されためっき層の上に、電解めっきによるめっき層を重ねて形成することができる。
銅めっきの後、エッチングプロセスによりパターニングすることで、連接基板210上の立設基板20,30のそれぞれの領域に導体(銅)のアンテナパターン21,31およびスルーホールHを形成する(ステップS03)。
【0052】
さらに、連接基板210の表面の所定の領域にレジストを塗布したならば(ステップS04)、アンテナパターン21,31を酸化やはんだSの付着等から保護するために連接基板210の表面の所定の領域に保護層を形成したり、はんだ付けを行う領域にフラックスを含む層を形成したりといった表面処理を行う(ステップS05)。
【0053】
そして、連接基板210を例えば金型により打ち抜くことによって、図4(a)に示すように、立設基板20,30の外形を加工する(ステップS06)。そうして得られる連接体200は、いずれも外形が一部を残して成形される立設基板20,30と、立設基板20,30における残部20R,30Rに連なる支持フレーム220とを備えている。
【0054】
この連接体200における立設基板20,30の全てのペアに対し、第1金属部品40を接合するとともに、第2金属部品50により立設基板20,30を接合すると(ステップS07)、平坦に並べられた立設基板20,30からなる連接体200としての部分組立回路基板110が完成する。なお、立設基板20への第1金属部品40の接合、立設基板30への第1金属部品40の接合、および第2金属部品50による立設基板20,30の連結を行う順序に特に制約はない。
【0055】
ステップS07においては、例えば、第1金属部品50を立設基板20に接合する手順の一例を図6(a)~(c)に示しているように、第1金属部品40を図示しない治具により保持しながら((a))、立設基板20のスルーホールHに第1端子部41を挿入させてはんだSで接合する((b)および(c))。
ステップS07において、立設基板20の姿勢、つまり連接基板210の姿勢には特に制約がなく、連接基板210が水平に配置された状態でも、鉛直方向に起立した状態でも、第1金属部品40および第2金属部品50を立設基板20に接合することができる。
【0056】
はんだ付けは、溶融状態のはんだの噴流を接合箇所に当てるフローはんだ、常温でペースト状のはんだを接合箇所に塗布した後、熱源によりはんだを溶融させるリフローはんだ等の公知の適宜な方法で行うことができる。はんだをスルーホールHおよび第1金属部品40,50に供給する向きは、立設基板20,30のそれぞれの外面20A,30A側、あるいは内面側のいずれであってもよい。連接体200に並ぶスルーホールHに挿入される全ての金属部品40,50について、同一方向から一度にはんだ付けを行うことができる。
【0057】
部分組立回路基板110から立体組立回路基板100を製造する際には、図4(b)に示すように、連接体200から立設基板20,30のペアを切り離し、立設基板20,30をそれぞれの内面を向き合わせる向きに屈曲させる(ステップS08)。
上述のステップS07において、支持フレーム220に連なった状態で所定位置に配列されている立設基板20と立設基板30とが第2金属部品50により連結されるので、支持フレーム220から完全に分離されている状態の立設基板20,30を第2金属部品50により連結した場合と比べて、立設基板20,30の相対位置精度を高く担保することができる。
【0058】
立設基板20,30が屈曲した位置関係に配置されている状態で、立設基板20,30にそれぞれ接合されている第1金属部品40の第2端子部42を支持基板10の対応するスルーホールHに挿入し、図6(d)に示すようにはんだSにより接合する(ステップS09)。このときのはんだ付けは、ステップS07におけるはんだ付けと同様にして行うことができる。
【0059】
ステップS09において、基板の寸法・形状、第1金属部品40および第2金属部品50のそれぞれの寸法・形状の累積的な位置誤差により、立設基板20,30に接合されている第1金属部品40の第2端子部42のそれぞれの位置と、支持基板10の対応するスルーホールHの位置とがずれている可能性がある。その場合でも、第1金属部品40が可撓性または柔軟性を備えていれば、第2端子部42をそれぞれスルーホールHに挿入させることができる。そのため、立設基板20,30を支持基板10に容易に組み付けることができる。
【0060】
より容易に組み付けるために、第2端子部42の先端部に、先細りの誘い込み形状を与えたり、中間部43と第2端子部42の先端部との間に、他の部位と比べて曲がり易いように、肉薄であったり幅が狭かったりする区間を設定するとよい。
立設基板20,30と支持基板10との組付けを終えると、立体組立回路基板100の製造が完了する。
【0061】
ステップS9において第1金属部品50に伝わる熱により、ステップS07で既にはんだ付けされている第1端子部41の接合状態に影響が及ぶのを抑えるため、ステップS09で使用するはんだの溶融温度がステップS07で使用するはんだの溶融温度よりも低いことが好ましい。但し、第1端子部41はスルーホールHに挿入されているので、それらを接合するはんだが溶融したとしても、はんだが凝固するまで第1端子部41はスルーホールHに留まり、ステップS10の後でも第1端子部41はスルーホールHに接合されている。
【0062】
〔比較例の製造工程〕
図3(b)に示すように基板から形成される突起90を用いて基板10,20,30間が接合される場合の製造工程を説明する。
比較例においては、突起90にはんだを付着させて十分な接合強度ではんだ付けを行うために、突起90の側面91を含めてめっきを施す必要がある。そのため、立設基板20,30の全域(連接基板210の全域)に銅めっきを施すステップS02に先立ち、また、立設基板20,30の全体的な外形加工(ステップS06)にも先立ち、ルーター加工により突起90の外形を加工しておく。その後に行われるステップS02において、突起90の表面92だけでなく側面91にも銅めっき層Cが形成される。
【0063】
ところで、ルーター加工は、プレスによる打ち抜き加工とは異なり、回転切削工具が外形に沿って移動する長さに相応の時間を要する上、打ち抜き加工された金属部品と比べて加工の精度に劣る。そのため、突起90の側面91に存在する、打ち抜きの切断面における凹凸と比べて大きな凹凸に起因して、安定した膜厚のめっき層を形成することが難しい。そうすると安定してはんだ付けすることも難しい。
【0064】
また、比較例では、突起90を用いて立設基板20,30が接合されるので、完全に分離している状態の立設基板20,30の一方に形成されている突起90を他方のスルーホールHに挿入して組み付けることになる。このとき、x,y,z方向およびx,y,zのそれぞれの回転方向において立設基板20,30の相対位置の精度を十分に高く担保しておく必要がある。仮に、立設基板20,30の組立精度が十分に高く担保されているとしても、ルーター加工による突起90の寸法・位置精度等に起因して、立設基板20,30のそれぞれの突起90の位置と、支持基板10の対応するスルーホールHの位置とがずれているとすれば、リジッド基板からなる突起90は、スルーホールHへ挿入して組み付けることが難しい。
【0065】
以上より、比較例によれば、基板から突起90を形成するためにルーター加工が必要となるので、本実施形態よりも製造コストが高い上、はんだ付けにより基板10,20,30を相互に安定して電気的および機械的に接続することが難しい。しかも、高い組立精度が要求される。
【0066】
〔本実施形態による効果〕
本実施形態の部分組立回路基板110および立体組立回路基板100によれば、コスト増加の要因となり、加工精度にも劣るルーター加工による突起90に代えて、第1金属部品40および第2金属部品50が用いられるので、ルーター加工を行う工程が不要となる。
第1金属部品40および第2金属部品50は、プレス加工により安価に製造することができ、量産にも対応できる。第1、第2金属部品40,50の寸法形状の精度は安定しており、第1、第2金属部品40,50が挿入されるスルーホールHも、数値制御の旋盤等により精度よく加工されている。
【0067】
また、第1、第2金属部品40,50の表面のめっき層Pは、突起90のめっき層Cと比べて安定した膜厚に形成されている。突起90の基端部93にはめっき層が形成されないのに対し、第1、第2金属部品40,50には、スルーホールHと同様、めっきの有る部分と無い部分との境目がないので、表面全域に亘り、安定した品質のめっき層Pが形成されている。その上、第1、第2金属部品40,50は、立体組立回路基板100の強度を確保し、かつ基板同士の組付けに必要な限度で弾性変形可能であり、可撓性または柔軟性を持たせることもできる。
【0068】
したがって、第1、第2金属部品40,50を介して基板10,20,30を接合する本実施形態によれば、必ずしも厳密な組立精度が要求されることなく基板10,20,30を容易に組立て可能であって、製造コストを抑えつつ、電気的および機械的に安定して接続されている部分組立回路基板110および立体組立回路基板100を提供することができる。
【0069】
そうした部分組立回路基板110および立体組立回路基板100によれば、支持基板10の実装面10Aに立設基板20,30が立てた状態で配置される立体的な構造から、設置に必要な平面的寸法に対して、アンテナ等の性能確保に必要な基板上のパターン形成領域を広く確保しつつ、ケース5に収めることができるので、設計自由度が高い。
【0070】
〔立設基板同士を接合する接合部の変形例〕
上述したように、立設基板20,30と支持基板10とを接合する第1金属部品40は、その第2端子部42と、支持基板10のスルーホールHとの位置誤差に応じて、第2端子部42が可撓性または柔軟性を備えている場合は変位可能である。そのため、立設基板20,30同士を接合する第2金属部品50から突起90への置き換えは許容される。
【0071】
第2金属部品50は、立設基板20,30の内面側に連結部53が配置される向きに配置され、スルーホールHに接合されていてもよい。
立設基板20と立設基板30とが互いに接合される箇所は、それぞれの一端20x,30yには限られない。例えば、立設基板30の一端30yが、x方向における立設基板20の中央部で立設基板20の内面に近接させて配置される場合は、それら立設基板20,30の接合に適した構成の第2金属部品を必要な数だけ用いるとよい。
【0072】
〔第1金属部品のバリエーション〕
以下、図7図10を参照し、立設基板20,30と支持基板10とを接合する第1金属部品の種々の形態を説明する。以下、第1金属部品を立設基板20に接合する例を示すが、立設基板30に接合する場合も同様である。
【0073】
(第1形態)
図7(a)に示すように、第1金属部品60は、2つの第1端子部61と、1つの第2端子部42と、2つの第1端子部61を連結するとともに第2端子部42を支持する連結支持部63とを備えていてもよい。連結支持部63は、第2端子部42が延びている方向から見ると、U字状に形成されている。
【0074】
2つの第1端子部61は、図7(b)、(c)に示すように、立設基板20の端部20Eの縁の方向に並んで形成されている2つのスルーホールHに個別に挿入されてはんだSにより接合される。2つの第1端子部61は、連結支持部63の端面63Aが立設基板20の外面20Aに接触するまで、スルーホールHに挿入される。端面63Aは、第1端子部61の両側に形成されている。
2つの第1端子部61がそれぞれスルーホールHに挿入されることで、立設基板20の面内方向において第1金属部品60が位置決めされ、第1金属部品60が回転しないので、立設基板20へのはんだ付けの工程を安定して行うことができる。
【0075】
また、第1金属部品60は、水平に配置されている立設基板20のスルーホールHに第1端子部61が挿入され、連結支持部63の端面63Aが立設基板20の外面20Aに平行に接触した状態で、治具により保持されることなく安定した姿勢を保つことができる。この点でも、立設基板20へのはんだ付けの工程が安定して行われる。
ここで、第1金属部品60の重心が連結支持部63に位置しているように連結支持部63の寸法が適切に設定されていると、連結支持部63から延びている第2端子部42側に第1金属部品60が傾いて倒れないので好ましい。または、同じ目的から、連結支持部63には、第2端子部42が延びている向きとは逆側に錘部64が備えられていることが好ましい。
【0076】
(第1形態の変形例)
図8(a)~(c)に示す第1金属部品65は、2つの第1端子部66の長さが上述の第1端子部61の長さよりも長い点を除いて、上述の第1金属部品60と同様に構成されている。
図8(a)および(b)に示すように立設基板20の外面20A側から2つの第1端子部66がスルーホールHに挿入されると、それぞれの第1端子部66が、内面20B側でスルーホールHから突出する。各第1端子部66のスルーホールHから突出している区間66Aを例えば図8(c)に示すように内面20Bに対して平行に折り曲げると、第1金属部品65がスルーホールHから抜けることを規制することができる。そうすると、立設基板20の面内方向に加えて、スルーホールHの孔軸方向においても第1金属部品60が位置決めされるので、立設基板20へのはんだ付けを安定して行うことができる。
【0077】
区間66Aを折り曲げる向きに制約はなく、例えば、2つの第1端子部66のそれぞれの区間66Aは、互いから離れる向きに折り曲げられていてもよい。但し、図8(c)に示すように2つの第1端子部66のそれぞれの区間66Aを互いに近接する向きに折り曲げると、はんだSによる接合領域が一つにまとまるので好ましい。
【0078】
なお、スルーホールHから突出している区間66Aの折り曲げは、単一の第1端子部41のみを備える第1金属部品40(図6)にも適用することができる。
【0079】
(第2形態)
図9(a)に示す第1金属部品70は、スルーホールHに圧入されることで立設基板20に接合される1つの第1端子部71を備えている。第1端子部71は、圧入部71Aが設けられていることを除いては、上述の第1金属部品40(図6)と同様に構成されている。圧入部71Aは、例えば、所謂プレスフィットの形状に形成されている。第1金属部品70は、圧入部71Aが設けられている単一の第1端子部71を備えていることにより、スルーホールHから抜けず、かつ立設基板20の面内方向において位置決めされる。つまり、第1金属部品70は、立設基板20の面内方向およびスルーホールHの孔軸方向において位置決めされるので、立設基板20へのはんだ付けを安定して行うことができる。
【0080】
(第3形態)
図9(b)および(c)に示す第1金属部品75は、表面実装方式により立設基板20に接合される。そのため、第1金属部品75は、立設基板20に接合される平坦な第1端子部76を備えている。
第1端子部76は、図9(c)に示すように、立設基板20に形成されている端子パターン20PにはんだSで接合される。
【0081】
(第4形態)
図10(a)および(b)に示す第1金属部品80は、立設基板20の端部20Eを板厚方向に挟んで弾性力により保持する第1端子部81と、第2端子部42とを備えている。第1端子部81は、一対のばね部81Aと、一対のばね部81Aを連結する連結部81Bとを含んでいる。一対のばね部81Aの間に受け入れた立設基板20の端部20Eが、一対のばね部81Aの弾性力により立設基板20の両面側から加圧される。そうすると、立設基板20に形成されている端子パターン20Pにばね部81Aが接触した状態で、立設基板20からの第1端子部81の離脱が規制される。そのため、第1端子部81の端子パターン20Pへのはんだ付けを安定して行うことができる。
【0082】
(第5形態)
図11(a)~(c)に示す第1金属部品85は、立設基板20または30に接合可能に構成されている第1端子部41と、支持基板10の実装面10Aに表面実装により接合可能に構成されている平坦な第2端子部86とを備えている。第1端子部41と第2端子部86との間には、第2端子部86に対して上方へ、つまり第1端子部41に向けて屈曲する中間部87が介在している。
図11(b)および(c)に示すように、第1端子部41を例えば立設基板20のスルーホールHに挿入してはんだSで接合した後、第2端子部86を実装面10Aに平行に配置し、図11(c)に示すように、はんだSで実装面10A上のパターンに接合するとよい。
第1金属部品85は、必ずしも、図11(a)に示すように立設基板20,30の外面20A,30A側に配置されている必要はなく、それらの内面側に配置されていてもよい。
なお、立設基板20,30と支持基板10との接合に用いられる複数の第1金属部品のうち、一部のみが第5形態の第1金属部品85であってもよい。
また、第2端子部86は、上述の第1金属部品60,65,70,75,80(図7図10)のそれぞれの第2端子部として採用することが可能である。例えば、図9(b)および(c)の第1金属部品75に第2端子部86が採用される場合は、第1金属部品75は、立設基板20および支持基板10のいずれに対しても表面実装方式により接合されることとなる。
【0083】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、立設基板20,30には、スルーホールHに代えて、有底の穴である凹部が形成されていてもよい。こうした凹部に第1端子部41等を挿入し、はんだSで接合することができる。圧入部71Aを有した第1端子部71は、はんだSを用いることなく、凹部に圧入して接合することができる。
【0084】
部分組立回路基板110は、それぞれにアンテナパターンまたはその他の導体パターンが形成され、支持基板10の実装面10Aにいずれも立てた状態で配置される3つ以上の立設基板を備えていてもよい。その場合は、3つ以上の立設基板を例えば第2金属部品50により相互に接合することができ、また、3つ以上の立設基板をそれぞれ例えば第1金属部品40により支持基板に接合することができる。
【符号の説明】
【0085】
5 ケース
10 支持基板
10A 実装面
20,30 立設基板
20A,30A 外面
20E 端部
20F 端面
20P 端子パターン
20R,30R 残部
20x,30y 一端
21,31 アンテナパターン
40 第1金属部品
41 第1端子部
42 第2端子部
43 中間部
50 第2金属部品(接合部)
51 第1端子部
52 第2端子部
53 連結部
53A 中間部位
60 第1金属部品
61 第1端子部
63 連結支持部
63A 端面
64 錘部
65 第1金属部品
66 第1端子部
66A 区間
70 第1金属部品
71 第1端子部
71A 圧入部
75 第1金属部品
76 第1端子部
80 第1金属部品
81 第1端子部
81A ばね部
81B 連結部
85 第1金属部品
86 第2端子部
87 中間部
90 突起
91 側面
92 表面
93 基端部
100 立体組立回路基板
101,102 辺
110 部分組立回路基板(組立回路基板)
200 連接体(回路基板連接体)
210 連接基板
220 支持フレーム
C 銅めっき層
H スルーホール
N 法線
P めっき層
S01~S09 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11