(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106718
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電気コネクタ用コンタクト部材
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20230726BHJP
H01R 12/91 20110101ALN20230726BHJP
【FI】
H01R13/46 301M
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007610
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000105338
【氏名又は名称】ケル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 優貴
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE04
5E087EE11
5E087FF02
5E087GG06
5E087JJ05
5E087MM02
5E087PP01
5E087RR18
5E223AB26
5E223AB54
5E223AB62
5E223AB64
5E223AC12
5E223BA01
5E223BA07
5E223CB31
5E223CB36
5E223CB38
5E223EA12
5E223EA33
(57)【要約】
【課題】 電気コネクタに用いたときに、隣接するコンタクト同士の電気ショートの発生を防止できるようなコンタクト部材を得る。
【解決手段】 導電材料製の長尺状の板材から作られ、その板材面が、コネクタハウジング(10,30)の下面に平行に延びるようにして設けられるリード部(51,61)と、コネクタハウジングに形成された嵌合凹部(35a,35b,35c)の内部に位置して設けられるコンタクト部(56,66)と、リード部とコンタクト部とを繋ぐ中間部とを有してコンタクト部材(50,60)が構成される。そして、中間部が、リード部に繋がり上下且つ左右方向に延びる板材面を有した第1折曲面部(54a,64a)と、第1折曲面部から横方向に折れ曲がって上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部(54b,64b)とから構成され、第2折曲面部に繋がって上下且つ前後方向に延びてコンタクト部が形成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料製のコネクタハウジングに設けられて電気コネクタを構成するコンタクト部材であって、導電材料製の長尺状の板材から作られ、
その板材面が、前記コネクタハウジングの下面に平行に延びるようにして設けられるリード部と、
相手コネクタの嵌合突部を受容するように上方に開口して前記コネクタハウジングに形成された嵌合凹部の内部に位置して設けられるコンタクト部と、
前記リード部と前記コンタクト部とを繋ぐ中間部とを有して構成され、
前記中間部が、前記リード部に繋がり上下且つ左右方向に延びる板材面を有した第1折曲面部と、前記第1折曲面部から横方向に折れ曲がって上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部とから構成され、前記第2折曲面部に繋がって上下且つ前後方向に延びて前記コンタクト部が形成されることを特徴とする電気コネクタ用コンタクト部材。
【請求項2】
前記リード部が、その板材面が前記コネクタハウジングの下面に平行に且つ前後に延びて設けられ、
前記リード部の前後の端部から上方に折り曲げられて上下且つ左右に延びる板材面を有する前記第1折曲面部が形成され、
前記第1折曲面部の側端部から横方向に折れ曲げられて上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部が形成され、
前記第2折曲面部と繋がって同一面上を上方に延びて前記コンタクト部が形成され、
前記コンタクト部を前記嵌合凹部内における前記左右方向の一方の内面に沿って設けることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ用コンタクト部材。
【請求項3】
前記中間部に弾性変形可能な弾性部が設けられており、前記弾性部の弾性変形により前記リード部に対して前記コンタクト部が可動であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電気コネクタ用コンタクト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量の電気信号や電源電力の伝達用に適した電気コネクタに用いるコンタクト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタは電気信号や電力伝達のために用いられる。電気信号の伝達用コネクタは伝達する信号電力が小さなものが多いため、多数のコンタクトを小ピッチで配置して小型化を図るという傾向がある。一方、大容量の電気信号、例えば電源電力を伝達するために用いられるコネクタはその伝達信号もしくは電力の大きさに応じた比較的大きなコンタクトを用いる必要がある。例えば、特許文献1には、多数の小ピッチで配置された信号用コンタクトと、比較的幅が広い一対の電源用コンタクトを備え、信号および電源電力の伝達接続が可能な基板接続用コネクタが開示されている。
【0003】
コネクタにおいて、電源電力を伝達するために用いられる電源用コンタクトは大きな電源電力を伝達する必要があるため、一般的な電気信号を伝達するために用いられる信号用コンタクトに比べて大きなサイズとする必要がある。また、電力供給ためには少なくとも一対の電力伝達ラインが必要であり、電源用コンタクトも一対のコンタクトを単位として設けるようになっている。例えば、特許文献1に開示の電気コネクタでは、コネクタハウジングの前後側壁にそれぞれ一対の電源用コンタクト22aiを隣り合って設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号用コンタクトも電源用コンタクトも隣接するコンタクト同士がショートするという問題は避ける必要がある。特に電源用コンタクトのショートは電源ライン全体に大電流が流れるなど大きな問題に繋がりやすく、雌雄コネクタの嵌合時に異物を噛み込んで隣接するコンタクト間でショートが生じることが無いように慎重な設計が必要である。異物の噛み込み等によるショートの防止を図るためには、隣接するコンタクト間に絶縁壁を設けるという対策が考えられるが、この場合にはコンタクトの配列方向(ピッチ方向)の寸法を大きくする必要があり、コネクタが大型化しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電源用コネクタのように大容量電力ラインの接続に用いる電気コネクタにおいて、隣接するコンタクト同士の電気ショートの発生を防止できるような構成とすることができるコンタクト部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気コネクタ用コンタクト部材は、絶縁材料製のコネクタハウジングに設けられて電気コネクタを構成するコンタクト部材であって、導電材料製の長尺状の板材から作られ、その板材面が、前記コネクタハウジングの下面に平行に延びるようにして設けられるリード部と、相手コネクタの嵌合突部を受容するように上方に開口して前記コネクタハウジングに形成された嵌合凹部の内部に位置して設けられるコンタクト部と、前記リード部と前記コンタクト部とを繋ぐ中間部とを有して構成される。そして、前記中間部が、前記リード部に繋がり上下且つ左右方向に延びる板材面を有
した第1折曲面部と、前記第1折曲面部から横方向に折れ曲がって上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部とから構成され、前記第2折曲面部に繋がって上下且つ前後方向に延びて前記コンタクト部が形成される。
【0008】
上記電気コネクタにおいて、好ましくは、前記リード部が、その板材面が前記コネクタハウジングの下面に平行に且つ前後に延びて設けられ、前記リード部の前後の端部から上方に折り曲げられて上下且つ左右に延びる板材面を有する前記第1折曲面部が形成され、前記第1折曲面部の側端部から横方向に折れ曲げられて上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部が形成され、前記第2折曲面部と繋がって同一面上を上方に延びて前記コンタクト部が形成され、前記コンタクト部を前記嵌合凹部内における前記左右方向の一方の内面に沿って設けることが可能である。
【0009】
上記電気コネクタにおいて、好ましくは、前記中間部に弾性変形可能な弾性部が設けられており、前記弾性部の弾性変形により前記リード部に対して前記コンタクト部が可動である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気コネクタによれば、前記リード部と前記コンタクト部とを繋ぐ前記中間部が、前記リード部に繋がり上下且つ左右方向に延びる板材面を有した第1折曲面部と、前記第1折曲面部から横方向に折れ曲がって上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部とから構成され、前記第2折曲面部に繋がって上下且つ前後方向に延びて前記コンタクト部が形成されるので、長尺状の金属板材を折り曲げ成形して、リードが延びる方向(前後方向)に対して、コンタクト部の板材面が延びる方向を前後方向とするコンタクト部材を容易に作成することができる。従来における長尺状板材を折り曲げ成形して作られているコンタクト部材では、リードが前後方向に延びるときには、これを折り曲げ成形してコンタクト部を作ると板材面が左右方向に延びるので、複数のコンタクト部材を左右に並んで配置すると、コンタクト部が左右に延びつつ左右に並んで配置されることとなる。このため、隣接するコンタクト部の間隔を大きくするのが難しく、異物噛み込みにより隣接するコンタクト部間でショートが生じやすいという問題がある。これに対して本発明のコンタクト部材では、第1折曲面部に対して第2折曲面部が横方向に折れ曲がっているので、コンタクト部の板材面が前後方向に延びるので、複数のコンタクト部材を左右に並んで配置したときに、隣接するコンタクト部間の間隔を確保するのが容易であり、ショートの発生を確実に抑えることができる。
【0011】
上記電気コネクタにおいて、前記リード部が、その板材面が前記コネクタハウジングの下面に平行に且つ前後に延びて設けられ、前記リード部の前後の端部から上方に折り曲げられて上下且つ左右に延びる板材面を有する前記第1折曲面部が形成され、前記第1折曲面部の側端部から横方向に折れ曲げられて上下且つ前後方向に延びる第2折曲面部が形成され、前記第2折曲面部と繋がって同一面上を上方に延びて前記コンタクト部が形成され、前記コンタクト部を前記嵌合凹部内における前記左右方向の一方の内面に沿って設けることが可能であるように構成するのが好ましい。このように構成すれば、板材面が前記コネクタハウジングの下面に平行に且つ前後に延びて設けられる前記リード部に対し、前記コンタクト部をコネクタハウジングの嵌合凹部内において左右方向の一方の内面に沿って設けることができる。例えば、一対のコンタクト部材をコネクタハウジングに設ける構成とし、これらコンタクト部材のコンタクト部を嵌合凹部の左右の内面に配置し、嵌合凹部空間内において互いに対向して配置することができる。このようにすれば、嵌合凹部内に配置される一対のコンタクト部を、嵌合凹部空間を介して離間させることができ、異物噛み込み等によるショートが発生する問題を確実に防止できる。
【0012】
上記電気コネクタにおいて、前記中間部に弾性変形可能な弾性部が設けられており、前
記弾性部の弾性変形により前記リード部に対して前記コンタクト部が可動な構成としても良い。このようにすれば、本発明のコンタクト部材を用いて、フローティング構成のコネクタを簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンタクト部材を有したレセプタクルコネクタ(電気コネクタ)を相手プラグコネクタと嵌合接続した状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】上記レセプタクルコネクタを相手プラグコネクタと嵌合接続した状態を斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】
図3(A)は上記レセプタクルコネクタを斜め上方から見た斜視図であり、
図3(B)は上記レセプタクルコネクタを斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4(A)は上記レセプタクルコネクタの平面図、
図4(B)は上記レセプタクルコネクタの正面図、
図4(C)は上記レセプタクルコネクタの側面図である。
【
図5】上記レセプタクルコネクタの拡大平面図である。
【
図6】
図6(A)は上記レセプタクルコネクタの側面断面図であり、
図6(B)は上記レセプタクルコネクタを構成する前後一対のコンタクト部材(本発明に係るコンタクト部材)を示す側面図である。
【
図7】
図7(A)は上記レセプタクルコネクタに用いられる全コンタクト部材を示す斜視図であり、
図7(B)は一つの前側コンタクト部材のみを示す斜視図であり、
図7(C)は一つの後側コンタクト部材のみを示す斜視図である。
【
図8】
図8(A)は上記プラグコネクタを斜め上方から見た斜視図であり、
図8(B)は上記プラグコネクタを斜め下方から見た斜視図である。
【
図9】
図9(A)は上記プラグコネクタの平面図、
図9(B)は上記プラグコネクタの正面図、
図9(C)は上記プラグコネクタの底面図、
図9(D)は上記プラグコネクタの右側面図、
図9(E)は上記プラグコネクタの左側面図である。
【
図11】
図11(A)は上記プラグコネクタに用いられる全てのプラグコンタクト部材を示す斜視図であり、
図11(B)は一つのプラグコンタクト部材のみを示す斜視図である。
【
図12】上記レセプタクルコネクタを相手プラグコネクタと嵌合接続する直前の状態を示す斜視図である。
【
図13】上記レセプタクルコネクタを相手プラグコネクタと嵌合接続する直前の状態を示す断面図である。
【
図14】上記レセプタクルコネクタを相手プラグコネクタと嵌合接続した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本発明に係るコンタクト部材を有した電気コネクタとしてのレセプタクルコネクタ1と、相手コネクタとしてのプラグコネクタ7の全体構成について概略説明する。
図1及び
図2には、レセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ7を嵌合接続した状態を示す。なお、以下の説明では、説明の便宜上、前後、左右及び上下の方向を
図1、
図2などにおいて矢印で示すように、前後、左右及び上下方向を、前(F)、後(B)、右(R)、左(L)、上(U)、下(D)として説明する。また、特許請求の範囲においても、これら方向を用いて構成を規定している。但し、本発明の対象である電気コネクタおよびコンタクト部材はその使用形態などに方向性が無く、これらの方向は説明の都合上で規定するだけのものである。
【0015】
本実施形態に係るレセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ7は電源ライン(電力
供給ライン)の接続のために用いるものである。一対のラインにより一つの電源ラインを構成しており、このコネクタでは3対の電源ラインを接続できるように、3対のコンタクト部材が設けられている。なお、この3対のコンタクト部材が本発明に係る電気コネクタ用コンタクト部材に対応する。このコネクタは電源ライン接続に限られず、信号ライン接続に用いても良いが、その構成上、電源ライン接続や、伝達容量の大きな信号ラインの接続に適している。
【0016】
レセプタクルコネクタ1は、
図3にも示すように、固定ハウジング10と、可動ハウジング30と、これら両ハウジングに跨がって設けられた3対のコンタクト部材50、60(前コンタクト部材50および後コンタクト部材60を対として3対)と、固定ハウジング10に取り付けられた左右一対の固定金具20とを有する。プラグコネクタ7は、
図8にも示すように、プラグコネクタハウジング70と、ここに取り付けられた3対のプラグコンタクト部材80と、左右一対の固定金具90とを有する。
【0017】
レセプタクルコネクタ1の詳しい構成について、
図3~
図7を参照して以下に説明する。固定ハウジング10は絶縁性の樹脂から作られ、左右において起立して前後に延びる壁からなる左右側壁11、11と、左右側壁11、11の下部を繋いで下面側を左右に延びる平板状の底壁12とを有する。底壁12の下面には、
図3(B)に示すように、位置決め突起13、13が形成されている。左右側壁11の前後外面および上面には取付溝11aが形成されており、この取付溝11aに前後脚部21、21が圧入されて側面視逆U字状の固定金具20が固定ハウジング10に取り付けられる。左右側壁11の前後方向中央部にはそれぞれ上方が開放した矩形状の保持凹部11bが形成されており、固定金具20が左右側壁11に取り付けられた状態で固定金具20の中間部22が保持凹部11bを上方から覆い、矩形状の保持空間15が形成されてるようになっている。前後脚部21の下端にはそれぞれマウント部23が下面に露出しており、マウント部23を基板の取付用パターンにハンダ付けして、コネクタを基板に固定できるようになっている。
【0018】
可動ハウジング30も絶縁性の樹脂から作られ、
図6(A)に示すように、前側に位置して下方が開放して左右に延びる前内部空間31aを有する前壁部31と、後側に位置して下方が開放して左右に延びる後内部空間32aを有する後壁部32と、これら前壁部31および後壁部32を左右端側において繋ぐ左右側壁33、33とを有する。さらに、前壁部31、後壁部32および左右側壁33、33に囲まれた上下に延びる矩形状空間35を左右に分割して三つの第1~第3嵌合空間35a、35b、35cを形成する二つの仕切り壁36、36と、矩形状空間35の底部に左右に延びて設けられた保持部37とを有する。三つの第1~第3嵌合空間35a、35b、35cは基本的には同一形状であるが、第1嵌合空間35aには誤挿入防止用空間35dが設けられている。また、左右側壁33、33の左右方向の外面には、それぞれ左右方向外方向に突出する矩形柱状の移動規制突部37、37が設けられている。
【0019】
固定ハウジング10の上に可動ハウジング30を位置させるようにして、両ハウジング10、30に跨がって、
図7(A)に示す3対、合計6本のコンタクト部材50、60が取り付けられる。前側に位置する前コンタクト部材50とこれと前後に対向して後側に位置する後コンタクト部材60とが対となっており、合計3対の前および後コンタクト部材50、60が取り付けられる。各対となる前および後コンタクト部材50、60を取り出して
図6(B)と
図7(B)および(C)に示している。これら前および後コンタクト部材50、60は同一形状であり、前後に逆向きに対称形となるように配置している。これら前および後コンタクト部材50、60は、基板(図示せず)にサーフェスマウントされるリード部51、61と、リード部51、61の内端から折れ曲がって上方に延びる固定側圧入部52、62と、固定側圧入部52、62に繋がって上方に延びるとともに逆U字状に曲がって下方に延びる弾性部53、63と、弾性部53、63の下端に繋がるととも
に直角に折れ曲がった形状の折曲部54、64と、折曲部54、64に繋がって上方に延びる可動側圧入部55、65と、可動側圧入部55、65に繋がって同一面上を上方に延びるコンタクト部56、66とから構成される。弾性部53、63は、図示されるように、長手方向に延びる開口溝53a、63aにより二分割された形状であり、弾性変形しやすくなっている。折曲部54、64は、弾性部53、63の下端に繋がるとともに上下且つ左右方向に延びる板材面を有した第1折曲面部54a、64aと、第1折曲面部54a、64aから横方向に折れ曲がって上下且つ前後方向に延びる板材面を有した第2折曲面部54b、64bとから構成され、第2折曲面部54b、64bが可動側圧入部55、65と繋がる。
【0020】
これら前および後コンタクト部材50、60は、まず、可動ハウジング30の下面側から可動側圧入部55、65を保持部37に設けられている保持溝37a内に圧入して、可動ハウジング30に取り付けられる。この状態では、
図6(A)に示すように、前コンタクト部材50の弾性部53が前壁部31の前内部空間31a内に位置し、後コンタクト部材60の弾性部63が後壁部32の後内部空間32a内に位置する。また、三対の前および後コンタクト部材50、60のコンタクト部56、66が、
図5に示すように、第1~第3嵌合空間35a、35b、35c内に突出する。この結果、三対の前および後コンタクト部材50、60が
図7(A)に示す配列状態で、可動ハウジング30内に取り付けられる。このとき、
図5に示すように、第1~第3嵌合空間35a、35b、35cのそれぞれにおいて、前コンタクト部材50のコンタクト部56が左側内壁面に沿うとともに前側に位置し、後コンタクト部材60のコンタクト部66が右側内壁面に沿うとともに後側に位置する。このように、第1~第3嵌合空間35a、35b、35cのそれぞれにおいて前および後コンタクト部56、66が前後にずれて斜めに対向し、空間を隔てて離間して位置する。
【0021】
次に、このようにして前および後コンタクト部材50、60を取り付けた可動ハウジング30を、上方から固定ハウジング10に取り付ける。このとき、固定側圧入部52、62が固定ハウジング10の底壁12の前および後側の保持溝(図には表れていない)内に圧入される。すなわち、前および後コンタクト部材50、60の可動側圧入部55、65が保持部37に圧入されて可動ハウジング30に取り付けられ、固定側圧入部52、62が底壁12に圧入されて固定ハウジング10に取り付けられる。この結果、固定ハウジング10に対して可動ハウジング30が前および後コンタクト部材50、60を介して繋がる。このとき、可動ハウジング30の左右側壁33、33から左右外側に突出する移動規制突部37、37が、固定ハウジング10の保持凹部11b内に入り込む。この状態で、固定金具20が左右側壁11に取り付けられ、中間部22が保持凹部11bを上側から覆い、移動規制突部37を保持空間15内に保持する。
【0022】
このようにして構成されるレセプタクルコネクタ1においては、固定ハウジング10に対して可動ハウジング30が前および後コンタクト部材50、60を介して連結され、弾性部53、63の弾性変形により、可動ハウジング30が固定ハウジング10に対して前後、左右、上下に移動可能となる。すなわち、固定ハウジング10に対して可動ハウジング30がフローティング状態となる。フローティング移動は、上下および前後方向移動に関しては移動規制突部37が保持空間15内で移動可能な量に制限され、過度にフローティング移動して弾性部53、63が弾性変形許容量を超えて変形することを防止している。左右方向のフローティング移動は、可動ハウジング30の左右側壁33、33が固定ハウジング10の左右側壁11、11に挟まれて規制される。
【0023】
以上の構成のレセプタクルコネクタ1は、図示しない基板に以下のようにサーフェスマウントされる。まず、位置決め突起13、13が基板の位置決め孔に挿入されて取付位置決めがなされる。そして、固定金具20のマウント部23が基板の取付用パターンに半田
接合され、前および後コンタクト部材50、60のリード部51、61が基板の配線パターンにハンダ接合されて、基板上にレセプタクルコネクタ1が表面実装(サーフェスマウント)される。
【0024】
次に、プラグコネクタ7を、
図8~
図11を参照して説明する。プラグコネクタ7は、絶縁材料製のプラグハウジング70と、プラグハウジング70内に
図11(A)に示す配列で取り付けられた3対のプラグコンタクト部材80と、プラグハウジング70内に取り付けられた左右一対の固定金具90、90とから構成される。プラグハウジング70は、矩形状の基部71と、基部71の下面に設けられた一対の位置決め突起72、72と、左右に並んで基部71の上に上方に突出した3つの第1~第3嵌合突部73、74、75とを有する。これら3つの第1~第3嵌合突部73、74、75は、レセプタクルコネクタ1の可動ハウジング30に形成された三つの第1~第3嵌合空間35a、35b、35cに対応するもので、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ7を嵌合接続するときに、嵌合突部73、74、75を第1~第3嵌合空間35a、35b、35cに嵌入させるようになっている。このとき、挿入方向を間違えないように、第1嵌合突部73に誤挿入防止用突部73aが形成されている。誤挿入防止用突部73aは第1嵌合空間35aに形成された誤挿入防止用空間35dと嵌合して第1嵌合突部73が第1嵌合空間35aと正しく嵌合するようにしている。
【0025】
プラグハウジング70内に
図11(A)に示す配列で取り付けられる3対のプラグコンタクト部材80は、それぞれ
図11(B)に示すように構成されている。各プラグコンタクト部材80は1枚の金属板材から図示のように形成され、プラグハウジング70の下面側に露出するリード部81と、リード部81に繋がる脚部82と、脚部82に繋がる圧入部83と、圧入部83に繋がって延びる弾性部84と、弾性部84の先端に形成されたコンタクト部85とを有する。各プラグコンタクト80がプラグハウジング70内に形成された挿入孔内に下面側から挿入され、圧入部83が保持孔内に圧入されて固定保持される。このようにして固定保持された状態で、各リード部81はプラグハウジング70の下面に露出して並び、コンタクト部85は、第1~第3嵌合突部73、74、75の左右の側面に露出する。
【0026】
このとき、各リード部81は、
図8、
図9に示すように、プラグハウジング70の下面の前側に3つ、後側に3つ、それぞれ前後方向に延びて位置する。コンタクト部85に関しては、
図10の拡大図に示すように、第1~第3嵌合突部73、74、75のそれぞれの側面に互いに前後にずれて位置する。これにより、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ7を嵌合接続したときに、各コンタクト部85がレセプタクルコネクタ1のコンタクト部56、66と当接して電気接続されるようになっている。固定金具90はプラグハウジング70に固定されており、その下面に位置するマウント部91が下面に露出している。
【0027】
以上の構成のプラグコネクタ7は、図示しない基板に以下のようにサーフェスマウントされる。まず、位置決め突起72、72が基板の位置決め孔に挿入されて取付位置決めがなされる。そして、固定金具90のマウント部91が基板の取付用パターンに半田接合され、プラグコンタクト部材80のリード部81が基板の配線パターンにハンダ接合されて、基板上にプラグコネクタ7が表面実装(サーフェスマウント)される。
【0028】
以上説明した構成のレセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ7を嵌合接続させることについて
図12~
図14を参照して以下に説明する。
図12および
図13に示すように、プラグコネクタ7の第1~第3嵌合突部73、74、75をレセプタクルコネクタ1の第1~第3嵌合空間35a、35b、35cに対向させる。そして、
図14に示すように、第1~第3嵌合突部73、74、75をそれぞれ第1~第3嵌合空間35a、35b、3
5c内に挿入させることにより、両コネクタ1、7を嵌合接続させることができる。この結果、レセプタクルコネクタ1の各コンタクト部56、66が、プラグコネクタ7の対応するコンタクト部85と当接して電気接続される。
【0029】
このとき、第1~第3嵌合空間35a、35b、35cのそれぞれにおいて前および後コンタクト部56、66が前後にずれて斜めに対向して空間を隔てて離間しているので、第1~第3嵌合突部73、74、75を第1~第3嵌合空間35a、35b、35cのそれぞれに嵌入させるときに、ごみ、異物を噛み込んだとしても、これにより前および後コンタクト部56、66の間でショートが発生するおそれがない。またこのとき、レセプタクルコネクタ1において、固定ハウジング10に対して可動ハウジング30が前および後コンタクト部材50、60の弾性部53、63によりフローティング支持されているため、両コネクタ1、7を嵌合接続させるときの位置ずれを吸収することができる。
【0030】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の権利範囲に含むものとして、種々の改良したものを適用可能である。例えば、上記実施形態においては、レセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ7を介して接続するラインを3対とし、レセプタクルコネクタ1が3対の前および後コンタクト部材50、60を有し、プラグコネクタ7もこれに対応した3対のプラグコンタクト部材80を設ける構成であるが、これら前および後コンタクト部材50、60およびプラグコンタクト部材80を1対のみ設ける構成でもよく、さらに、2対もしくは4対以上設ける構成でも良い。また、レセプタクルコネクタ1を、弾性部53、63を有するコンタクト部材を用いてフローティング構成としているが、一つのハウジングに弾性部を有していないコンタクト部材を設けたフローティング機能を備えないコネクタとしても良い。具体的には、固定ハウジング10および可動ハウジング30を一体とした一つのハウジング構成とし、ここに弾性部を備えていないコンタクト部材を設ける構成であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 レセプタクルコネクタ 7 プラグコネクタ
10 固定ハウジング 11 左もしくは右側壁
15 保持空間 30 可動ハウジング
31 前壁部 31a 前内部空間
32 後壁部 32a 後内部空間
35a、35b、35c 第1~第3嵌合空間
37 規制突部 50 前コンタクト部材
60 後コンタクト部材 51、61 リード部
53、63 弾性部 54、64 折曲部
56、66 コンタクト部 70 プラグハウジング
73、74、75 第1~第3嵌合突部 80 プラグコンタクト