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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106721
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】衛生マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
A41D13/11 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007613
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】505425878
【氏名又は名称】中村 正一
(71)【出願人】
【識別番号】592248835
【氏名又は名称】日本エー・シー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 正一
(57)【要約】
【課題】人体に害を与えない安全な衛生用剤を含有し、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を有効的に防止するための衛生マスクを提供する。
【解決手段】昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物(以下、「海藻生成物」という)を薬効作用の主成分とし、インフルエンザウイルスを含む複数のウイルスに対する不活性化作用及び口腔又は呼吸器官疾患を発症させる複数の細菌に対する殺菌作用を有する衛生用剤が付着又はコーティングされている、ことを特徴とする。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を防止するための衛生マスクであって、
昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物(以下、「海藻生成物」という)を薬効作用の主成分とし、インフルエンザウイルスを含む複数のウイルスに対する不活性化作用及び口腔又は呼吸器官疾患を発症させる複数の細菌に対する殺菌作用を有する衛生用剤が付着又はコーティングされている、ことを特徴とする衛生マスク。
【請求項2】
前記ウイルスには、SARS-CoV-2が含まれることを特徴とする請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項3】
前記細菌には、歯周病の原因菌の一つであるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が含まれることを特徴とする請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項4】
通気性を有するマスク主体部と、
前記マスク主体部を保持するマスクフレームと、
前記マスクフレームに取り付けられた耳掛け手段と、から構成され、
前記マスク主体部は、
水分又は湿気を吸収することにより繊維が伸びて繊維間の間隙が拡大する潜在捲縮性繊維から成る吸湿伸延性布材により形成され、
前記吸湿伸延性布部材には、前記海藻生成物を主成分とする衛生用剤が付着され又はコーティングされている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の衛生マスク。
【請求項5】
前記海藻生成物を主成分とする衛生用剤は、前記海藻生成物を食塩水又は生理食塩水に溶かして生成される請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項6】
前記海藻生成物は、粘性多糖類であるフコイダン、アルギン酸 、ラミナラン、マンヌロン酸、グルロン酸、またはヨウ素の何れか一つ又は複数を含む、請求項1乃至5の何れかの項に記載の衛生マスク。
【請求項7】
前記吸湿伸延性布材は、水分又は液状の薬剤又は香料が含浸されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかの項に記載の衛生マスク。
【請求項8】
前記マスクフレームは、前記マスク主体部が挿入された状態で保持するポケットを備えることを特徴とする請求項7に記載の衛生マスク。
【請求項9】
前記海藻生成物は、前記海藻類の乾燥パウダーを食塩水又は生理食塩水に溶かして生成された請求項1乃至8の何れかの項に記載の衛生マスク。
【請求項10】
前記海藻類の乾燥パウダーの粒径は、概ね5μmである請求項9に記載の衛生マスク。
【請求項11】
前記食塩水又は生理食塩水における前記海藻類の乾燥パウダーの重量比率は、概ね2%である請求項9又は10に記載の衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生マスクに関し、特に口腔に進入するウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を有効的に防止するための衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の口(口腔)は、生命を維持するために飲食物を摂取する際に、最初に体内に取り入れる身体器官であり、それゆえに、外界から黴菌やウイルス等の異物に最初に侵食され易い部位である。
【0003】
また、咽喉は、人間が呼吸により空気(酸素)を体内(肺)に取り入れる最初の身体器官であり、口腔と一体的に形成され、さらには呼吸器官である気道(気管)と肺(肺胞)に繋がっている。それゆえに、口腔と同様に、外界から黴菌やウイルス等の異物に最初に侵食され易い部位である。
【0004】
人間がインフルエンザウイルス等による肺炎を含む呼吸器疾患に感染するのは、呼吸によって鼻、喉又は気管等の咽喉の粘膜等にウイルスが付着することにより発生する。従って、インフルエンザウイルス等に感染しないためには、衛生マスクの着用が極めて重要であることは言うまでもない。
【0005】
インフルエンザウイルスのみならず、口腔内や呼吸器官の疾患を引き起こす細菌は、すべからく、最初は、口腔(唇、口の中、歯、舌、食道)を経由して体内に入り込むからである。
【0006】
流行性インフルエンザ、パラインフルエンザ、ノロウイルス等による食中毒、中東呼吸器症候群(MERS)、ウイルス性急性気管支炎及び肺炎、麻疹、さらに、最近では2020年に全世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルス疾患(COVID-19)等の多くのウイルス性疾患は、ウイルスに感染した人が咳やくしゃみすることによって主に気管から排出される飛沫、空気中に漂うウイルスが存在している微粒子、把手や身近な物品等に付着したウイルスが、人から人へ、または動物から人へ伝播することによって感染する。
【0007】
また、新型コロナウイルス疾患(COVID-19)は、感染者の唾液中にも多く存在していることか確認されている。
【0008】
唾液には抗ウイルス作用や殺菌作用があることが認められているものの、一日当たりの唾液分泌量は年齢を重ねる毎に減少していくことから、高齢者ほどウイルスや菌に感染し易くなると共に、感染した場合は重症化し易い。
【0009】
また、ウイルスは、寒冷期の環境(低温及び低湿度)下において物品や人体表面に付着した場合死滅せずに比較的長時間生き続け、寒冷期における人間の咽喉部の低温化により、そして上気道内壁の繊毛の乾燥化と繊毛活動(上気道バリア機能)の低下とにより、温暖期の環境(高温及び高多湿)と比較して人から人への感染が拡大してしまうことになる。
【0010】
そこで、ウイルス感染の予防の観点から、咳やくしゃみによるウイルスの空気中への飛沫の発散範囲を極力減少させ、そして外部大気中への飛沫量を減少させるためのマスク着用が極めて効果的であることは世界中の使用事例や各種実験で立証されている。
【0011】
しかし、マスクの着用の効果は、他人にウイルスを拡散することを可能な限り防止することにあり、マスクを着用することで外からのウイルスの侵入を防止することはできない。
【0012】
よって、マスクを着用してもウイルスの侵入を防止できないのであれば、侵入したウイルスが口腔に入る前にマスクを通過する過程で不活性化させることが有効である。それには、ウイルスの消毒薬や殺菌剤をマスクに付着若しくは含有させればよいが、一般的に、これらの消毒薬や殺菌剤は皮膚や粘膜等の組織障害作用を持ち、その使用にあたっては一定の制限がある。特に皮膚や口腔の粘膜表面への直接接触の使用においては、ウイルス消毒薬毎に明確な使用制限がある。特に、乳幼児は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム水に触れることにより皮膚のかぶれや炎症を生じさせ易く、特にアレルギー患者に対してはアトピー性皮膚炎等を悪化させることもある。
【0013】
従来からプロテオグリカン、ムコ多糖(例えば、グリコサミノグリカン等)、及びプロテオグリカンの糖鎖-ペプチド間分離物からなる群より選択される少なくとも1種がウイルス不活化効果を有し、さらに、アメフラシ及びナマコから、特にナマコから得られたプロテオグリカン含有抽出物、及び該抽出物中のプロテオグリカンの糖鎖-ペプチド間分離物が、高いウイルス不活化効果を有することを示した文献が開示されている(特許文献1を参照)。
【0014】
また、昔から、メントールや香草(ハーブ)の一部に抗ウイルス作用があることが報告されており、そのような香草の例として、ビタミンCを豊富に含むローズヒップ、タイム、エキナセア等が知られている。
【0015】
さらには、口腔内常在菌に対する抗菌作用を有する口腔内抗菌用機能性食品組成物や医薬組成物が提案されている(例えば、特許文献2と特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2019-019085号公報
【特許文献2】特開2020-062006号公報
【特許文献3】特開2008-182931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、特許文献1に開示されているウイルス不活化効果が認められたナメコやアメフラシ及びこれらからの抽出物は高価であり、これらの物質に高いウイルス不活化効果が認められたとしても、使い捨てのマスクに使用するにはコストが上がりすぎるという難点がある。
【0018】
また、ビタミンCや香草の一部に抗ウイルス作用を奏するものがあるとの伝聞については、科学的な治験によっては明確に確認されてはおらず、若しくはそれらの生理的作用効果を否定する研究報告も多い。
【0019】
また、特許文献2に記載されている口腔内常在菌に対する抗菌作用を有する口腔内抗菌用組成物は、マスティック成分をその機能性関与主成分とし、チュウーイングガム等に含有して使用されている樹脂であり、多価アルコール樹脂酸エステルに溶解されて用いられる芳香作用を奏する物質であり、それ自体は体内に摂取する適する物質ではない。
【0020】
さらに、特許文献3に開示された物質は、ビフィドバクテリウム族に属する微生物は、口内細菌に対して耐性菌を生じさせ得る抗生物質でると共に、特許文献2に記載されている物質を含めて多くの人が日常的に継続的に摂取するのは困難であるばかりでなく、長期的に摂取した場合のその安全性や殺菌力の持続性に問題がある。
【0021】
従って、本発明は、安全性が確認された用剤であって、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を有効的に防止する衛生用剤を含む衛生マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
このため、本発明は、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を防止するための衛生マスクであって、昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物(以下、「海藻生成物」という)を薬効作用の主成分とし、インフルエンザウイルスを含む複数のウイルスに対する不活性化作用及び口腔又は呼吸器官疾患を発症させる複数の細菌に対する殺菌作用を有する衛生用剤を含有(付着、コーティング、又は浸透等)されている、ことを特徴とする。
【0023】
ここで、前記ウイルスには、SARS-CoV-2が含まれる。また、前記細菌には、歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)を含む。
【0024】
また、本発明に係る衛生マスクの構成であって、通気性を有するマスク主体部と、前記マスク主体部を保持するマスクフレームと、前記マスクフレームに取り付けられた耳掛け手段と、から構成され、前記マスク主体部は、水分又は湿気を吸収することにより繊維が伸びて繊維間の間隙が拡大する潜在捲縮性繊維から成る吸湿伸延性布材により形成され、前記吸湿伸延性布部材には、前記海藻生成物を主成分とする衛生用剤が付着又はコーティングされている、ことを特徴とする。
【0025】
さらに、前記海藻生成物は、粘性多糖類であるフコイダン、アルギン酸 、ラミナラン、マンヌロン酸、グルロン酸、またはヨウ素の何れか一つ又は複数を含有させるようにしてもよい。
【0026】
また、前記吸湿伸延性布材は、水分又は液状の薬剤又は香料を含浸するようにしてもよい。
【0027】
前記マスクフレームは、前記マスク主体部が挿入された状態で保持するポケットを備えることを特徴とする。
【0028】
前記海藻生成物は、前記海藻類の乾燥パウダーを食塩水又は生理食塩水に溶かして生成され、その乾燥パウダーの粒径は、概ね5μmであって、その重量比率は、概ね2%である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、安全性が確認された用剤であって、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を有効的に防止する衛生用剤を含む衛生マスクの提供を可能としたのである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本衛生用マスクの第1の実施形態の構成を示す。
図2】本衛生用マスクの第2の実施形態の構成を示す。
図3】本衛生用マスクの第3の実施形態の構成を示す。
図4】本衛生用マスクの第4の実施形態の構成を示す。
図5】本衛生用マスクの第5の実施形態の構成を示す。
図6】本衛生用マスクに使用する吸湿伸延性布材の例を示す。
図7】本衛生用マスクに使用する吸湿伸延性布材に使用する繊維の状態を示し、(a)部は乾燥時の状態、(b)部は吸湿時の状態を示す。
図8】本衛生用マスクに使用する吸湿伸延性布材の状態を示し、(a)部は乾燥時の状態、(b)部は吸湿時の状態を示す。
図9】本衛生用マスクに使用する吸湿伸延性布材に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤の粒子が付着している状態とその作用を説明する図を示す。
図10】本衛生用マスクのマスク主体部の構成例を示す。
図11】本衛生用マスクの第6の実施形態の構成を示す。
図12】本衛生用マスクの製造方法における工程フローチャートの例を示す。
図13】本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤による、SARS-CoV-2の形態に近似のコロナウイルスであるPEDウイルスに対する効果の試験結果(1)を示す。
図14】本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤である海藻類の昆布について、また、海藻類の主要な構成成分であるアルギン酸、フコイダン、ヨウ素の夫々について、さらには、アルギン酸+フコイダン+ヨウ素の混合成分について、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対する効果の試験結果(2)を示す。
図15】本発明のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤にアルコールを添加したPEDウイルスに対する効果の試験結果(3)を示す。
図16】本発明のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤である海藻類の昆布とワカメについて、さらには、海藻類の構成成分であるヨウ素、アルギニン、フコイダンのそれぞれについて、さらには、ヨウ素+アルギニン+フコイダンの混合成分について、PEDウイルスに対する効果の試験結果(4)を示す。
図17】本発明のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤による大腸菌に対する殺菌効果の試験結果(5)を示す。
図18】本発明のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤による黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の試験結果(5)を示す。
図19】本発明のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤を構成する要素又は添加物である、L-グルタミン酸、βカロテン(βカロテン)、アオサ、赤ワイン(アルコール14%とポリフェノールを含有する)、ラミナラン及びフコイダンのそれぞれについて、PEDウイルスに対する効果の試験結果(6)を示す。
図20】本発明のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤による、インフルエンザウイルスに対する作用効果の試験結果(7)を示す。
図21】本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用のマスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤による、新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2に対する効果の試験結果(8)を示す。
図22】本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤を構成する海藻類の昆布パウダー、その主成分であるフコイダンパウダー、玉露茶葉パウダー、及びこれらの混合物による、歯周病を発症させるポルフィルモナス・ジンジバリス菌に対する効果の試験結果(9)を示す。
図23】発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤を構成する海藻類の昆布パウダー、その主成分であるフコイダンパウダー、玉露茶葉パウダー(玉露パウダー)、及びこれらの混合物による、歯周病を発症させるポルフィルモナス・ジンジバリス菌に対する効果の試験結果(10)を示す。
図24】本発明に係る衛生マスクを収納するマスクケースの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る衛生マスクは、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を防止するためのものであって、昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物(以下、「海藻生成物」という)を薬効作用の主成分とし、インフルエンザウイルスを含む複数のウイルスに対する不活性化作用及び口腔又は呼吸器官疾患を発症させる複数の細菌に対する殺菌作用を有する衛生用剤が付着又はコーティングされている、ことを特徴とする。以下、本発明の実施形態の詳細を図面を参照しつつ説明する。
【0032】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る衛生マスクの構造を示す外観図である。図1において、本実施形態に係る衛生用マスクは、使用者の口腔や鼻腔を覆うマスク主体部1と、マスク主体部1の左端及び右端に係合されてマスク主体部1で口腔を覆った状態を保持するための耳掛け手段3とを備える一般的な衛生用のマスクである。
【0033】
図1で示す衛生マスクのマスク前面は、ユーザの口蓋が接する面とは反対方向(即ち、外部)に面している。
【0034】
マスク主体部1に使用する材料としては、一般的な全ての布材(伸縮性開孔布材を含む)または織布が使用されるが、その他、レイヨン等の再生繊維、綿・羊毛等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維や、ポリイミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエチレン系繊維等の合成繊維を使用して構成されている。
【0035】
本発明に係る衛生マスクは、マスク主体部1を構成する上記の材料の表面や内部に、昆布又はワカメ等の海藻類若しくは海藻類のパウダーから抽出された生成物(以下、「海藻生成物」という)を由来とするウイルス不活性化剤をマスク主体部に付着若しくは含有させてなる。
【0036】
かかるウイルス不活性化剤をマスク主体部1に付着若しくは含有させるには、ウイルス不活性化剤をマスク主体部1に塗して付着させたり、或いはウイルス不活性化剤の溶液中に浸して含有させたりするなどの方法がある。
【0037】
このようなマスク主体部1に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤を付着若しくは含有させた衛生マスクを着用すれば、外からマスク主体部1越しに侵入するウイルスはマスク主体部1を通過する過程で不活性化されるため、口腔や鼻腔に到達しても当該ウイルスへの感染に至ることが抑制される。
【0038】
次に、以下に述べる各実施形態は、ウイルスの不活性化作用に加えて、呼吸時の通気性に優れた衛生マスクを提供するものである。
【0039】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係るマスクの構成を示す構成図である。
【0040】
この実施形態に係る本衛生マスクは、マスク主体部1と、前記マスク主体部1を保持するマスクフレーム2と、前記マスクフレーム2に取り付けられた耳掛け手段3と、から構成される。
【0041】
ここで、マスク主体部1は、水分又は湿気を吸収することにより繊維が伸びて繊維間の間隙が拡大する吸湿伸延性布材4とこれを収納する収納袋9により形成され、吸湿伸延性布部材4の表面及び/又は内部に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤が略均一に付着している。
【0042】
マスクフレーム2は、柔軟性を有する平板状の材料で構成されている。この材料としては、例えば、合成樹脂、金属、皮革、布、紙、ガラス繊維等を使用することができる。
【0043】
吸湿伸延性布材4を収納する収納袋9は、通気性の良い布や、穿孔されている薄いビニールシートで構成されるが、これを用いることなく、吸湿伸延性布材4をマスクフレーム2のポケット内に挿入するようにしても良い。また、耳掛け手段3は、通常、弾性のあるゴム紐を使用するが、紐を結ぶようにしても良い。
【0044】
吸湿伸延性布部材4を用いることで、マスク主体部1の通気性が向上し、着用しても呼吸が楽な衛生マスクが提供される。吸湿伸延性布部材4の作用については、後に詳細に説明する。
【0045】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態に係るマスクの構成を示す構成図である。第2の実施形態と同様に、この実施形態に係る本衛生マスクは、マスク主体部1と、前記マスク主体部1を保持するマスクフレーム2と、前記マスクフレーム2に取り付けられた耳掛け手段3と、から構成される。ここで、図3に示すように、第3の実施形態に係る本衛生マスクの構成は、マスク主体部1がマスクフレーム2内にアッタッチ又は挿入されるようになっている。
【0046】
アタッチの方法は、例えば、スリット状のマジックテープ(登録商標)5aをマスク主体部1の両サイドに取付け、マスクフレーム2側においても、これを受ける位置にマジックテープ(登録商標)5bを取り付けることにより、マスクフレーム2に対してマスク主体部1を着脱自在にアタッチできるようにしている。尚、マスク主体部1のマスクフレーム2に対するアタッチ方法は、ホック、チャック等の着脱手段によっても良いことは言うまでもない。
【0047】
ところで、マスク主体部1は、水分又は湿気を吸収することにより繊維が伸びて繊維間の間隙が拡大する吸湿伸延性布材4とこれを収納する収納袋9とにより形成され、吸湿伸延性布部材4の表面及び/又は内部に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤が略均一に付着している。
【0048】
第3の実施形態に係る本衛生マスクにおいても、第2の実施形態と同様に、マスクフレーム2は、柔軟性を有する平板状の材料で構成されている。この材料としては、例えば、合成樹脂、金属、皮革、布、紙、ガラス繊維等を使用することができる。
【0049】
また、吸湿伸延性布材4を収納する収納袋9は、通気性の良い布や、穿孔されている薄いビニールシートで構成されるが、これを用いることなく、吸湿伸延性布材4をマスクフレーム2のポケット内に挿入するようにしても良い。
【0050】
さらに、耳掛け手段3は、通常、弾性のあるゴム紐を使用するが、紐を結ぶようにしても良い。
【0051】
[第4の実施形態]
図4は、本発明の第4の実施形態に係る衛生マスクの構成を示す構成図である。第3の実施形態と同様に、第4の実施形態に係る立体形状の本衛生マスクは、マスク主体部を構成する吸湿伸延性布材4と、前記マスク主体部1を保持するマスクフレーム2と、前記マスクフレーム2に取り付けられた耳掛け手段3と、から構成される。ここで、図4に示すように、本実施形態に係る本衛生マスクの構成は、吸湿伸延性布材4がマスクフレームの内側にアタッチされるようになっている。
【0052】
アタッチの方法は、例えば、スリット状のマジックテープ(登録商標)5aを、マスク主体部を構成する吸湿伸延性布材4の上下端に取付け、マスクフレーム2側においても、これを受ける位置にマジックテープ(登録商標)5bを取り付けることにより、マスクフレーム2に対してマスク主体部を構成する吸湿伸延性布材4を着脱自在にアタッチできるようにしている。マスク主体部を構成する吸湿伸延性布材4のマスクフレーム2に対するアタッチ方法は、ホック、チャック等の着脱手段によっても良いことは言うまでもない。
【0053】
第4の実施形態に係る本衛生マスクにおいても、第2又は第3の実施形態と同様に、マスクフレーム1は、柔軟性を有する平板状の材料で構成されている。この材料としては、例えば、合成樹脂、金属、皮革、布、紙、ガラス繊維等を使用することができる。また、耳掛け手段3は、通常、弾性のあるゴム材を使用するが、紐を結ぶようにしても良い。
【0054】
第4の実施形態に係る衛生マスクは、鼻腔/口と本衛生マスクの内側間に所定の空間が形成される立体構造であるので呼吸が容易になると共に装着性が向上する。
【0055】
[第5の実施形態]
図5は、本発明の第5の実施形態に係る衛生マスクの構成を示す構成図である。この実施形態では、(a)部で示すように、マスクフレーム2を開口部11を残して周囲が平板で形成する。そして、(b)部で示す利用者の口蓋を覆うための吸湿伸延性布部材4から成るマスク主体部1をその裏側に貼り付けられたホック(凸部)9により(c)部で示すマスクフレーム2の四隅の表側に貼り付けられたホック(凹部)10に着脱自在に取り付ける構成である。尚、マスクフレーム11には、装着時に耳に掛けるための紐が係合されているが図示は省略する。
【0056】
この実施形態においては、マスク主体部1である吸湿伸延性布部材4は、マスクを実際に使用するに先立って、海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤の溶解液を浸透させて含有させるものとする。マスク主体部1の吸湿伸延性布部材4は、この溶解液の含侵により、繊維が伸びて繊維間の間隙が拡大し、これにより、通気性が向上する。
【0057】
ところで、上記の各実施形態における吸湿伸延性布材4としては、例えば、特開2002-105825に開示されている布材や、ミズノ株式会社と三菱レイヨン株式会社から市販されている繊維「ダイナミックエアリー」(登録商標)等の水分や湿度を吸うことにより繊維質が伸びて繊維間の隙間が大きくなる吸湿伸延性繊維を使用する。
【0058】
このマスク主体部1を構成する吸湿伸延性布材4は、吸湿状態になっても、その通気性が悪化することはないので、楽な呼吸動作を継続することを可能にしている。さらに、吸湿伸延性布材4に浸透した湿気は、ウイルス等のミクロな異物を吸着し除菌する効果がある。
【0059】
吸湿伸延性布材4には、例えば柑橘系の香料等を付加することによって爽やかな気分にさせることも可能である。これらの香料は、鼻腔を拡大して呼吸を楽にする効果も期待できるのである。
【0060】
このような吸湿伸延性布材4には、例えば、水分を吸収すると繊維が水分量に応じて伸びて、開孔部に隙間が生じ、これにより通気性が約30%向上するような繊維も開発され、既に商品化されている。
【0061】
図6は、このような吸湿伸延性布材4の第1の例を示すものであり、図6(a)はその側面図、図6(b)はその正面図である。
【0062】
図6に示す織布は、横方向の繊維に張力の弱い線材11を使用し、縦方向の繊維に張力の強い線材13を使用して、この縦、横の線材を織り込んでいる。符合13はナックルと呼ばれる突起部である。この織布に使用する繊維は、繊度1~6dtex、繊維長20~70mmで、さらに、繊度1.5~2.5dtex、繊維長38~60mmのものがより好ましいとしている。また、ウェブの繊維配合中には潜在捲縮性繊維が主体であることと、この潜在捲縮性繊維の重量が80重量%以上であることが好ましく、全量が潜在捲縮性繊維であればなお好適である。
【0063】
なお、この潜在捲縮性繊維は、温度特性の異なる複数の樹脂成分から成る芯鞘型若しくはサイドバイサイド型といった復号構造を有する繊維で、樹脂成分中の1成分と他の樹脂成分との間で熱収縮率が異なる組合せとなっており、1つの樹脂成分が軟化して収縮し、他の樹脂成分と相対的に収縮差が起こる温度で熱処理を施すことによって、個々の繊維がコイル状(またはスパイラル状)の捲縮を示す繊維としている。例えば、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの樹脂の組合せが可能であることを開示している。
【0064】
図7は、吸湿伸延性布材4の第2の例として、ミズノ株式会社と三菱レイヨン株式会社から市販されている繊維「ダイナミックエアリー」(登録商標)の乾燥時と吸湿時における繊維質の状態を示すものである。
【0065】
(a)部は、この吸湿伸延性繊維が乾燥していて縮んでいる状態を示し、(b)部は、この吸湿伸延性繊維が吸湿時に伸延している状態を示すものである。
【0066】
このように、本衛生マスクに使用する吸湿伸延性布材4は、呼吸等により湿気を帯びたり若しくは水や液状薬剤を含浸させたとしても、それに応じて繊維が伸びるので呼吸が容易である。
【0067】
図8は、図7に示した吸湿伸延性繊維を織って本衛生マスクのマスク主体部1の吸湿伸延性部材4を形成した場合の、乾燥時(図7の(a)部に示す)と吸湿時(図7の(b)部に示す)における繊維の状態を示したものである。例えば、通常のマスクのガーゼに用いられる綿等の繊維の場合、水分を吸うとそれに応じて繊維は膨張してしまって通気性が悪くなり呼吸することが困難になるが、本衛生マスクにおいては、図8(b)に示すように、吸湿時に繊維が伸延するので、繊維間の隙間がおおきくなって通気性はかえって良好になり、水分や湿気の含有を低下させる必要がないのである。
【0068】
これによって、本衛生マスクにおいては、積極的にマスク主体部1に、水や液状の薬剤を含ませることにより、湿度成分によるインフルエンザ菌等の不活効果を高めることを可能にしているのである。
【0069】
本衛生マスクにおいては、このような吸湿伸延性布材4の表面及び/又は内部に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤が略均一に付着又は含有させることにより、ウイルスや細菌類を不活性化させることができる。
【0070】
図9は、吸湿伸延性布材4の繊維内部に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤が付着している状態を示すものである。ここで、図9の上方がマスクを装着した際の屋外側を示し、図9の下方が鼻腔及び口腔側を示す。図9に示すように、空気の通り道(隙間)に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤が高密度に且つ均一に付着しているので、ウイルス等の細菌は、ウイルス不活性化剤の粒子6に接触して、分解又は死滅することとなる。
【0071】
図10は、マスク主体部1の他の構成例を示すものであって、吸湿性伸延布材4に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤を付着することなく、通気性に優れたシート上にウイルス不活性化剤を均一に高密度に付着したシート7と、薬剤及び/又は香料を含浸した通気性ある香料含浸シート8を3層重ねてマスク主体部1と構成し、当該マスク主体部1をマスクフレーム2のポケットに挿入して使用するようにした構成例を示すものである。
【0072】
[第6の実施形態]
図11は、本発明の第6の実施形態に係る衛生マスクの構造を示す外観図である。図11において、本実施例に係る衛生用マスクは、使用者の口腔や鼻腔を覆う布から成るマスク主体部1(布パッド)と、マスク主体部1の左端及び右端に係合されてマスク主体部1で口腔を覆った状態を保持するための耳掛け手段3と、マスク主体部1を貼り付けた排気部21と、を備える。マスク主体部1の表面及び/又は内部に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤が略均一に付着している。
【0073】
排気部21は、呼吸における空気吸入の際は、排気弁211が開くことにより空気の排出を容易にする機能を有するので、これにより、使用者の呼吸が楽になる効果がある。尚、排気部21は排気弁211を有さずとも、例えば、呼吸をしたときにマスク主体部1が口や鼻への吸着を防ぐための通気口が形成されたガード部材であってもよい。
【0074】
図12は、本発明に係る衛生マスクの製造工程の例を示すものである。
【0075】
図12に示すように、本発明に係る衛生マスクは、吸湿伸延性布材4に海藻生成物を由来とするウイルス不活性化剤を含有する液体に浸す含浸ステップ(S1)と、前記吸湿伸延性布材4を乾燥させる乾燥ステップ(S2)と、前記乾燥させた吸湿伸延性布材4をマスクフレーム2に取り付ける取付ステップ(S3)と、の各ステップを有するものである。ここで、前記含浸ステップ(S1)には、香料を含浸させるステップ(S11)を含ませるようにしても好い。
【0076】
図24は、本発明に係る衛生マスクを収納するマスクケース13の一例を示す。マスクケース13は、その上辺のみ、または図4(a)に示すように上辺と一方の側面が閉じられずに開くようになっている。
【0077】
図24(a)は、本発明に係る衛生マスクをマスクケース13内に収納する手順を示す。最初に、マスクケース13を開く(1)。次に、マスクケース13の内側を開けた状態で装着しているマスク主体部1にあてて掴むようにして外す(2)。そして、マスク主体部1の中央を折りたたむようにしてマスクケース13内に保管し(3)、一時的な保管をし、または、マスクケース13毎、ダストボックスに廃棄する(4)。
【0078】
図24(b)は、マスクケース13の表面にマスクが入っていることを表示する例を示す。尚、マスクケース13の素材は、不織布であっても、和紙のように緻密な素材であっても良い。
【0079】
本発明に係るウイルス不活性化作用を有する衛生マスク本体に付着若しくは含有されるウイルス不活性化剤は、褐藻類に属する昆布又は海藻生成物から抽出された生成物に由来する。
【0080】
従って、発明を実施するための形態について詳しく説明する前に、昆布及びその成分について簡単に記載する。
【0081】
昆布は、海藻類に属し、海藻は海に生える藻類の総称である。藻類は、海草とは異なり、花は咲かず、胞子によって子孫を増やす。海藻の多くは食用とされる。
【0082】
海藻は、色により藍藻類・珪藻類・緑藻類・褐藻類・紅藻類などの種類に分別され、昆布は褐藻類に属する。ただし、昆布の色の違いは、海藻の生える場所の水深、つまり太陽の光が届く量に左右され、浅瀬は緑色、深い場所は褐色、もっとも光の届きにくい場所では紅色となる。昆布の属す褐藻類には、わかめ、ひじき、もずく、メカブ等、その多くは食材となる。アオノリは緑藻類、フノリやアマノリは紅藻類に属する。
【0083】
海藻の褐藻類の昆布は、日本では14属45種類が確認されている。このうち、寒流系の褐藻類である昆布は、日本では宮城県以北の太平洋岸と北海道全域の海に分布し、とくに北海道が主産地である。昆布の国内生産量は、そのほとんどが北海道から採取されている。
【0084】
昆布には,アルギン酸(Alginic acid)とフコイダン(Fucoidan)と呼ばれる海藻にしか存在しない特有の粘質多糖類が含まれている。ここで、アルギン酸は血圧降下作用,フコイダンは血栓やがんの予防効果などの効能が知られている。
【0085】
フコイダン(fucoidan)は、硫酸化多糖の一種。コンブやワカメ(一部位であるメカブを含む)、モズクなど褐藻類の粘質物に多く含まれる食物繊維である。なお、類似の物質は、上述した特許文献1に記載された抗ウイルス作用を有するナマコなどの動物からも見つかっている。
【0086】
昆布に含まれるアルギン酸(Alginic acid)とフコイダン(Fucoidan)は、主にL-フコース(多糖体)がA1-2、A1-4結合で数十から数十万個も繋がった化合物で、平均分子量は約20万である。フコイダン(Fucoidan)は、グルクロン酸を含むU-フコイダン、硫酸化フコースだけからなるF-フコイダン、ガラクトースを含むG-フコイダンなどに分類される。
【0087】
ここで、L-フコースは、キノコ類(アガリクスなど)や他の多糖体(糖鎖)成分と違い、フコースに硫酸基が結合している。そして、このL-フコースは、褐藻類(モズク、メカブ、コンブ、アカモク、ウミトラノオ等ホンダワラ類等)に多く含まれ、海藻のネバネバ成分と表現されることが多い。
【0088】
これに対して、アルギン酸は、酸性の多糖類でマンヌロン酸(M)、グルロン酸(G)と呼ばれる2種類のウロン酸によって構成されている。アルギン酸は、この(M)と(G)が結合する比率によって固さや弾力性が大きく変化するので、プリンやゼリー、アイスクリーム、ジャムなどの材料として、またヨーグルトやチーズなどの乳化目的、その他、人工イクラなど、様々な用途に使われており、昆布の中ではカルシウムやマグネシウムなどと結合して、ゼリー状態で存在している。
【0089】
本発明に係る昆布海藻などに含まれる滑り成分の「フコイダン」は、多数の生物活性を持つと言われている。例えば、抗凝血作用、細胞接着阻害作用、抗炎症作用、ウイルス感染からの細胞保護、抗腫瘍作用である。
【0090】
本発明に係る昆布又は海藻生成物から抽出された生成物を含有する抗ウイルス剤又はウイルス不活性化剤は、このようなフコイダンの働きの一環である可能性が有る。
【0091】
すなわち、昆布に含まれるフコンダインやその成分が、腸内における粘膜免疫機能を刺激することで、全身の免疫細胞の防御力が高まることに寄与している可能性がある。例えば、人体に存在しているM細胞により抱え込まれたフコイダンを。リンパ球(NK細胞、T細胞、B細胞)が攻撃することにより、免疫に関わるリンパ球の1つNK細胞の活性化が行われ、また、活性化されたリンパ球が血液の流れに乗ると抗体の分泌が進み、ます。それにより、免疫力が高まるのである。
【0092】
上記観点から、本願の発明者は、昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物を薬効作用の主成分とし、インフルエンザウイルスを含む複数のウイルスに対する不活性化作用及び口腔又は呼吸器官疾患を発症させる複数の細菌に対する殺菌作用を有する衛生用剤の生理的作用効果確認した。
【0093】
I.[確認試験(1)]
上記観点から、本願の出願人は、外部の試験機関を使って、最初に、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤を構成する海藻類による、SARS-CoV-2の形態に最も近いコロナウイルスであるPEDウイルスに対する不活性化効果の試験(1)行ったのである。
【0094】
尚、以下、本願において順次記載するI.[確認試験(1)]からVIII.[確認試験(8)]については、本願出願人が、外部の権威ある試験機関に委託して行ったものであり、本願において、その試験結果に何らかの操作を加えまたは評価することなく、当該試験機関からの第1次乃至第8次の試験結果の報告書を掲載している。但し、確認試験結果を示す試験資材のウイルス減少数は、10の対数表示で記載されていることから、その数値を理解し易くするために、当該対数表示値を10進法に数値化した表を加えた。
【0095】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材I:海藻類及び海藻抽出物を生理食塩水に溶かし2%溶液とした。
試験資材II:海藻類及び海藻抽出物を沸騰水(100°C)の生理食塩水に2%になるように溶かし、冷却後使用した。ここで、対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0096】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)のP-5V株を使用した。
【0097】
このPEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)は、通称、豚感染症ウイルスと呼ばれ、病原体であるPEDウイルスは、コロナウイルス科のアルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属し、エンベロープの表面に放射状(王冠状すなわちコロナ状)に突き出たスパイクをもち、そのゲノムはプラス一本鎖RNAである。2020年にパンデミック感染した新型コロナウイルス(COVID-19)に最も近似している類型のコロナウイルスである。
【0098】
そして、コロナウイルス科のアルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属するウイルスは、このエンベロープの表面に放射状に突き出たコロナ状のスパイクの先端部が、人体を構成する細胞膜の表面に取り付いてウイルスが人体内に浸透しその結果、当該ウイルスへの感染に至ることが科学的に判明しているのである。
【0099】
従って、上述した本願の確認試験において、コロナウイルス科アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属するPEDウイルスに対する不活性化作用が、本願のウイルス不活性化確認試験において確認されたということは、新型コロナウイルス(COVID-19)に対してもその不活性化作用を発揮し得る可能性が極めて高いことが推測され期待されるのである。
【0100】
PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)の培養細胞としては、ベロ細胞(Vero Cell)を用いた。このベロ細胞は、アフリカミドリザルの腎臓上皮細胞に由来し、細胞培養に使われる細胞株である。ヘラ細胞(Hela Cell)と並んでもっともよく使われている細胞株の一つである。
【0101】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材(海藻類及び海藻抽出物を生理食塩水に溶かした2%溶液)1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後1分とした。
対照区としては、上記した試験資材を添加せずに、単にリン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0分及び1分とした。
【0102】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0103】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。その結果、細胞毒性について試験資材100倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を100倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。この為、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0104】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
ウイルス液添加後、混合液として室温(25°C)にて所定の時間静置した。
【0105】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
上記試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
判定は、37°C、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0106】
(F)結果
図13は、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分による、SARS-CoV-2の形態に近似のコロナウイルスであるPEDウイルスに対する効果の試験結果(1)を示す、表1は、この試験結果を纏めたものである。
【0107】
尚、図13の縦軸は(後続する図14以降の図も同様)、その縦軸を10の指数表示としており、一枠が下がる毎に十分の一になることを意味する。
【0108】
対照区(試験資材をしない比較対象試験区)では、試験開始後から試験開始後1分までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.1TCID50/mL)。
【0109】
【表1】
【0110】
一方、試験区では開始後1分で<103.5TCID50/mL(検出限界未満:99.7%以上減少)となった。この、「検出限界未満:99.7%以上減少」という結果は、驚嘆すべき極めて高いウイルス不活性化作用を示す値である。
【0111】
(G)考察
今回、試験資材の通常豚感染コロナウイルスと呼ばれているPEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、PEDウイルスに対しては、接触後1分の反応で99.7%以上の驚異的なウイルス不活性化効果があることが判明したのである。
【0112】
上述したように、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)のゲノムはプラス一本鎖RNAであり、新型コロナウイルス(COVID-19)に最も近似している類型のコロナウイルスであることから、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対する不活性化効果も大きいと推測された。
【0113】
II.[確認試験(2)]
そこで、本願の出願人は、本発明の衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤に係る海藻類の顕著な抗ウイルス効果及びウイルス不活性化効果を確認したことから、次に、新型コロナウイ「SARS-CoV-2」に対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0114】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%アルギニンパウダー生理食塩水溶液
試験資材4:2%フコイダンパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材5:2%ヨウ素パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:2%(アルギニン+フコイダン+ヨウ素)パウダー生理食塩水溶液
尚、対照資材として、滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0115】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、SARS-CoV-02(新型コロナウイルス)を使用した。尚、このSARS-CoV-02は、人由来分離株であって、唾液よりvero細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株である。
尚、培養細胞であるvero細胞は、アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞である。
【0116】
(C)区の設定
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0117】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0118】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0119】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0120】
【表2A】
【0121】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0122】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0123】
(F)結果
図14は、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類の昆布について、また、海藻類の主要な構成成分であるアルギン酸、フコイダン、ヨウ素の夫々について、さらには、アルギン酸+フコイダン+ヨウ素の混合成分について、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対する効果の試験結果を示すものである。また、表2A、表2B及び表2Cにおいて、図14に示した試験結果の詳細を纏めた。尚、表2Cは、表2Bを理解しやすくしたものである。
【0124】
対照区においては、試験開始後から試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.5TCID50/mL)。
【0125】
一方、試験区1では開始後15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区3では15秒で59.3%、60秒で93.7%、試験区4では15秒で97.5%、60秒で99.7%、試験区5では15秒で90.0%、60秒で99.0%、試験区6では15秒で98.4%、60秒で99.8%ウイルス感染価の減少となった。
【0126】
上記したSARS-CoV-02に対するウイルス感染嫁価は、概ね、検出限界値に近い数値であり、本試験によって驚嘆すべき極めて高いウイルス不活性化作用が確認されたのである。
【0127】
しかも、海藻類及び海藻抽出物の何れも2%溶液であり、昆布パウダーの場合、その粒子径が5μmであることから、本発明は、洗口液、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の何れの洗浄剤を含む衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤に適用しても、違和感なく使用できることが判明したのである。
【0128】
【表2B】
【0129】
【表2C】
【0130】
(G)考察
今回、試験資材のSARS-CoV-2に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、93.7~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0131】
III.[確認試験(3)]
さらに、本願の出願人は、本発明の衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分にアルコールを添加したPEDウイルスに対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0132】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:1%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材4:0.5%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材5:アルコール分25度麦焼酎を精製水で 3倍希釈液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:アルコール分25度5%昆布焼酎を精製水で3倍希釈液(沸騰水溶解作成)
対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0133】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)のP-5V株を使用した。
尚、培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0134】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0135】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0136】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0137】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0138】
【表3A】
【0139】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0140】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0141】
(F)結果
PEDウイルスに対する試験結果を、図15、表3A、表3B及び表3Cに示す。尚、表3Cは、表3Bの表示を理解し易くしたものである。
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.7TCID50/mL)。
【0142】
一方、試験区1では開始後15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区3では60秒で99.8%、試験区4では60秒で97.4%、試験区5では60秒で93.6%、試験区6では開始後60秒で97.4%ウイルス感染価の減少となった。
【0143】
【表3B】
【0144】
【表3C】
【0145】
(G)考察
今回、試験資材のPEDウイルス(豚感染コロナウイルス)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、93.6~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0146】
IV.[確認試験(4)]
さらに、本願の出願人は、本発明の衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類の昆布とワカメについて、さらには、海藻類の主要な構成成分であるヨウ素、アルギニン、フコイダンのそれぞれについて、さらには、ヨウ素+アルギニン+フコイダンの混合成分について、PEDウイルスに対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0147】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%昆布パウダー水溶液
試験資材4:2%ワカメパウダー生理食塩水溶液
試験資材5:2%ヨウ素パウダー生理食塩水溶液
試験資材6:2%アルギニンパウダー生理食塩水溶液
試験資材7:2%フコイダンパウダー生理食塩水溶液
試験資材8:2%(ヨウ素+フコイダン+アルギニンパウダー)生理食塩水溶液
尚、対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0148】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)(豚感染性のコロナウイルス)のP-5V株を使用した。
尚、培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0149】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、15秒、30秒、60秒とした。
【0150】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0151】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0152】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなった。最大で試験資材100倍液においても細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を100倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0153】
【表4A】
【0154】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0155】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0156】
(F)結果
PEDウイルスに対する試験結果を図16、表4A、表4B及び表4Cに示す。尚、表4Cは、表4Bを理解し易くした表である。
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.5TCID50/mL)。
【0157】
一方、試験区1では開始後30秒で99.8%、試験区2では開始後30秒で99.9%以上、試験区3では試験開始後60秒で99.7%、試験区4では開始後60秒で98.4%、試験区5では試験開始後60秒で98.4%、試験区6では開始後60秒で59.3%、試験区7では試験開始後60秒で99.0%、試験区8では開始後60秒で99.5%のウイルス感染価の減少となった。
【0158】
【表4B】
【0159】
【表4C】
【0160】
(G)考察
今回、試験資材のPEDウイルス(豚感染コロナウイルス)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、59.3~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0161】
V.[確認試験(5)]
さらに、本願出願人は、本発明の衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分による、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の確認試験行った。以下、その詳細を記載する。
【0162】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
対照資材として滅菌生理食塩水を使用した。
【0163】
(B)供試微生物
供試微生物については、大腸菌(Escherichia coli ATCC117775)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC6538)を使用した。
上記微生物をニュートリエント培地にて前培養し、滅菌精製水にて約10CFU/mLの濃度に調製したものを試験菌液とした。
【0164】
(C)区の設定
試験区としては、対照資材10mLに、0.1mLの試験菌液を添加し、感作時間として、試験開始後30秒、60秒とした。
対照区としては、試験資材10mLに、0.1mLの試験菌液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、30秒、60秒とした。
【0165】
(D)試験方法
「JIS Z 2801(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・殺菌効果)」及び石炭酸係数法を参考として実施した。
【0166】
(E)試験手順
(E-1)微生物検査方法(試験液の細菌数測定)
試験液を、滅菌生理食塩水で適時希釈し、ニュートリエント寒天培地及び各選択培地(大腸菌:デソキシコレート寒天培地及び黄色ブドウ球菌:卵黄加マンニット食塩培地)で培養した。培養は、好気条件で35度24~48時間行い、培養後に発育した集落を計数して当該菌数とした。
【0167】
(E-2)試験方法
試験資材及び対照資材を滅菌試験管に入れ、資材10mLに対し試験菌液を0.1mL添加してよく混合した。
試験設定に従い、混合直後及び室温で一定時間反応させた後、残存する生菌数を微生物検査方法に従い測定した。
【0168】
(F)結果
[大腸菌]
試験結果を、図17及び表5Aに示した。
対照区については試験開始時から終了時まで同数となり、640000CFU/mLであった。試験開始60秒後では、試験区1で360000CFU/mL(43.7%減少)、試験区2で320000 CFU/mL(50.0%減少)となった。
【0169】
【表5A】
【0170】
[黄色ブドウ球菌]
試験結果を、図18及び表5Bに示した。
対照区については試験開始時から終了時までほぼ同数となり、2300000CFU/mLであった。試験開始60秒後では、試験区1で1100000CFU/mL(52.1%減少)、試験区2で1600000CFU/mL(30.4%減少)となった。
【0171】
【表5B】
【0172】
(G)考察
試験の結果、大腸菌に対し、試験資材1では接触後60秒で43.7%、試験資材2では50.0%の減少が確認された。また、黄色ブドウ球菌に対し、試験資材1では接触後60秒で52.1%、試験資材2では30.4%の菌数減少が確認された。
【0173】
VI.[確認試験(6)]
さらに、本願出願人は、本発明の衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分に添加される添加物である、L-グルタミン酸、βカロテン、赤ワイン(アルコール14%とポリフェノールを含有する)、ラミナラン及びフコイダンのそれぞれについて、PEDウイルスに対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0174】
(A)試験資材:海藻類、海藻抽出物及び添加物
試験資材1:2%L-グルタミン酸パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材2:2%βカロテンパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%アオサ微粒子パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材4:アルコール分14%赤ワイン液
試験資材5:1%昆布5μmパウダールコール分14%赤ワイン液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:1%ラミナランパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材7:フコイダン水溶液
尚、対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0175】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)(豚感染性のコロナウイルス)のP-5V株を使用した。
尚、培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0176】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0177】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0178】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0179】
その結果、細胞毒性について、表6Aの通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0180】
【表6A】
【0181】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0182】
(E-3)本試験・細胞接種
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0183】
(F)結果
上記試験結果を、図19、表6A、表6B及び表6Cに示した。尚、表6Cは、表6Bを理解し易くした表である。
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.5TCID50/mL)。
【0184】
試験区1では開始後15秒で37.5%、60秒で90.0%、試験区2では15秒で75.3%、60秒で90.0%、試験区3では15秒で59.3%、60秒で93.7%、試験区4では15秒で37.5%、60秒で99.7%、試験区5では15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区6では15秒で95.9%、60秒で99.3%、試験区7では15秒で98.4%、60秒で99.8%ウイルス感染価の減少となった。
【0185】
【表6B】
【0186】
【表6C】
【0187】
(G)考察
今回、試験資材のPEDウイルス(豚感染コロナウイルス)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、90.0~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0188】
VII.[確認試験(7)]
さらに、本願出願人は、本発明の衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分による、下記のインフルエンザウイルスに対する作用効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0189】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0190】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、インフルエンザウイルス(swine influenza virus H1N1 IOWA 株)を使用した。
尚、培養細胞は、MDCK細胞(イヌ腎臓由来株化細胞)である。
【0191】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0192】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0193】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0194】
その結果、細胞毒性について、いずれの試験資材の10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0195】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0196】
(E-3)本試験・細胞接種
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、各ウェル内の培養上清を回収し、赤血球凝集反応によりウイルスの増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0197】
(F)結果
試験結果を、図20、表7A及び表7Bに示す。
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.9TCID50/mL)。
試験区1では開始後15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.3%、60秒で99.9%ウイルス感染価の減少となった。
【0198】
【表7A】
【0199】
【表7B】
【0200】
(G)考察
今回、試験資材のインフルエンザウイルスに対する不活性化効果試験を実施した。その結果15秒~60秒の接触で、99.3~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0201】
VIII.[確認試験(8)]
上記した[確認試験(1)]乃至[確認試験(7)]の結果を受けて、本願出願人は、さらに、昆布及びその抽出物から成るSARS-CoV-2を含むウイルスに対する不活性化作用を、さらに詳細に確認するために、確認試験(8)を行った。
【0202】
図21は、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分による、新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2に対する効果の試験結果(8)を示す。
【0203】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材3:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材4:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材5:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材6:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材7:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材8:2%ラミナランパウダー生理食塩水溶液
試験資材9:2%フロログルシノールパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材10:2%ツルアラメパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
尚、対照資材として、滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0204】
ところで、上記した「試験資材1」と「試験資材2」、そして「試験資材3」-「試験資材7」は同じであるが、これは、同じ試験状態における効果のバラツキを確認し、この試験結果の信頼性を知るために行っている。
【0205】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、SARS-CoV-02(新型コロナウイルス)を使用した。尚、このSARS-CoV-02は、人由来分離株であって、唾液よりvero細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株である。尚、ここで使用した培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0206】
(C)区の設定
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0207】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0208】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0209】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0210】
【表8A】
【0211】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0212】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0213】
(F)結果
上記のSARS-CoV-02に対する試験結果を、図21、表8A、表8B、表8C及び表8Dに示す。尚、表8C及び表8Dは、表8Bを理解しやすくしたものである。
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.3TCID50/mL)。
【0214】
一方、試験区1では開始後15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.6%、60秒で99.9%、試験区3では15秒で99.7%、60秒で99.7%、試験区4では15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区5では15秒で99.6%、60秒で99.9%、試験区6では15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区7では15秒で99.6%、60秒で99.9%、試験区8では15秒で90.0%、60秒で96.0%、試験区9では15秒で96.0%、60秒で98.4%、試験区10では15秒で99.0%、60秒で99.6%、ウイルス感染価の減少となった。
【0215】
【表8B】
【0216】
【表8C】
【0217】
【表8D】
【0218】
以下、上述したI.[確認試験(1)]からVIII.[確認試験(8)]の詳細な結果を表9乃至表12Dに纏めた。
表9は、海藻成分別のウイルス不活性化効果を纏めたものである。
表9に示すように、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類を構成する主要な成分は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と、この「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の減少)を奏することが確認されたのである。このことから、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」の変異種に対しても同等の顕著な不活性化作用を奏することが予想される。
【0219】
【表9】
【0220】
表10は、SARS-CoV-2、PEDV(PEDウイルス)、インフルエンザウイルス別のウイルス不活性化効果(ウイルス減少率)を纏めた表であり、また、2%昆布パウダー粒子径が5μmの生理食塩水と同2%昆布パウダー粒子径5μmの沸騰水溶液の生理食塩水について試験数を増やし、不活性化の効果のバラツキを確認した。
【0221】
表10に示すように、上記した表10と同様に、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類を構成する主要な成分は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」、「インフルエンザウイルス」、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。このことから、香港型やソ連型等の種々のタイプの「インフルエンザウイルス」、「SARS-CoV-2」の種々の変異種に対しても同等の顕著な不活性化作用を奏することが容易に予想される。
【0222】
【表10】
【0223】
表11は、海藻の複数の種類(昆布、ワカメ、アオサ、ツルアラメ)の2%パウダー微粒子を含む生理食塩水のPEDウイルスに対する不活性化効果を纏めた表である。
【0224】
表11に示すように、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0225】
【表11】
【0226】
表12Aは、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダーの、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果を纏めた表である。
【0227】
表12Aに示すように、上記した表10と同様、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダーは、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0228】
【表12A】
【0229】
表12Bは、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類を構成する主要な成分及び各種添加物の、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」及び「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果を纏めた表である。
【0230】
表12Bに示すように、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類を構成する主要な成分及び各種添加物は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」及び「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0231】
【表12B】
【0232】
表12Cは、アルコールと昆布成分を含む酒による、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果を纏めた表である。
【0233】
表12Cに示すとおり、従来から知られているように、アルコールと昆布成分を含むワインは、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0234】
【表12C】
【0235】
表12Dは、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダーの、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対対する殺菌効果結果を纏めた表である。
【0236】
表12Dに示すように、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダーは、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して顕著な殺菌効果を奏することが確認されたのである。このことから、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダーは、食中毒を引き起こす他の細菌に対する殺菌効果を奏することが理解できる。
【0237】
【表12D】
【0238】
表13は、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類を構成する主要な成分及び各添加物の、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果(ウイルス数の激減)を纏めた表である。
【0239】
表13に示すように、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類を構成する主要な成分及び各添加物は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0240】
また、表13は、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダー及びその成分の、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」、「ノロウイルス」等のウイルスに対する不活性化効果、及び「大腸菌」と「黄色ブドウ球菌」に対する殺菌効果を纏めた表である。
【0241】
表13に示すように、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤の主成分である海藻類のパウダーとその成分は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」、「ノロウイルス」等のウイルスに対する顕著な不活性化作用のみならず、「大腸菌」や「黄色ブドウ球菌」に対する殺菌効果を奏することが確認されたのである。
【0242】
【表13】
【0243】
(G)考察
今回、試験資材のSARS-CoV-2に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、96.0~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0244】
IX.[確認試験(9)]
上記した[確認試験(1)]乃至[確認試験(8)]の詳細な試験結果を受けて、本願出願人は、本発明が解決しようとする課題である「歯周病又はう蝕病を発症させる原因菌の増殖を抑制・殺菌する確認試験」(9)を行ったのである。
【0245】
図22は、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤を構成する海藻類の昆布パウダー、その主成分であるフコイダンパウダー、玉露茶葉パウダー(玉露パウダー)、及びこれらの混合物による、歯周病を発症させるポルフィルモナス・ジンジバリス菌に対する効果の試験結果(9)を示す。
【0246】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材2:フコイダン水(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%フコイダンパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材4:2%玉露パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材5:2%玉露パウダー+昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材6:2%玉露パウダー+2%フコイダンパウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
尚、対照資材として、滅菌生理食塩水を使用した。
【0247】
(B)供試微生物(細菌)
供与微生物(細菌)として、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis ATCC33277)を用い、この供試微生物(細菌)を血液培地にて前培養し、滅菌精製水にて約10cfu/mLの濃度に調整したものを試験菌液とした。
【0248】
(C)区の設定
対照区としては、対照資材10mLに試験菌液0.1mLを添加処理し、感作時間として、試験開始後0、30、60秒とした。
試験区1-6は、試験資材10mLに試験菌液0.1mLを添加処理し、感作時間として、試験開始後30、60秒とした。
【0249】
感作時間を30秒及び60秒に設定したのは、本発明に係る衛生用マスクを構成する吸湿伸延性布剤に含ませる衛生用剤である歯磨剤等が、口腔内に留まる時間を想定した。
【0250】
(D)試験方法
「JIS Z 2801(抗菌加工製品・抗菌性試験方法・殺菌効果)」及び石炭酸係数法を参考として実施した。
【0251】
(E)試験手順
(E-1)微生物検査方法(試験液の細菌数測定)
試験液を、滅菌生理食塩水で適時希釈し、血液寒天培地で培養した。培養は、嫌気条件で35度C、10日間行い、培養後に発育した集落を計数して当該菌数とした。
(E-2)試験方法
試験資材及び対照資材を滅菌試験管に入れ、資材10mLに対し試験菌液を0.1mL添加して充分に混合した。
試験設定に従い、混合直後及び室温で一定時間反応させた後、残存する生菌数を微生物検査方法に従って測定した。
【0252】
(F)結果
上記の確認試験(9)の試験結果を、 図22、表14、表15A及び表15Bに示す。尚、表15Aと表15Bは、表14を理解しやすくした表である。
試験結果 表9Aに示すとおり、対照区については、試験開始時から終了時までほぼ同数の、1.2×10CFU/mLであった。
一方、試験区1-6は、試験開始60秒後に、夫々以下のとおりであった。
試験区1:5.3×10CFU/mL(55.8%減少)
試験区2:6.8×10CFU/mL(43.3%減少)
試験区3:7.8×10CFU/mL(35.0%減少)
試験区4:1.0×10CFU/mL(16.6%減少)
試験区5:8.8×10CFU/mL(26.6%減少)
試験区6:1.1×10CFU/mL(8.3%減少)
尚、上記数値は3試行の平均値である。
【0253】
【表14】
【0254】
(G)考察
上記試験の結果、試験資材のポルフィロモナス・ジンジバリス菌に対し、菌数を減少させる効果が確認され、各試験資材への接触後60秒間で、8.3乃至55.8%減少の効果が得られたものと判定された。
【0255】
【表15A】
【0256】
【表15B】
【0257】
X.[確認試験(10)]
上記した[確認試験(9)]の試験結果を受けた上で、本願出願人は、さらに、本発明に係る衛生マスクによる「歯周病又はう蝕病を発症させる原因菌の増殖を抑制・殺菌する確認試験」(10)を行ったのである。
【0258】
図23は、本発明に係る口腔用衛生用品を構成する海藻類の昆布パウダー、その主成分であるフコイダンパウダー、玉露茶葉パウダー(玉露パウダー)、及びこれらの混合物による、歯周病を発症させるポルフィルモナス・ジンジバリス菌に対する効果の試験結果(10)を示す。
【0259】
(A)試験資材:海藻類、海藻抽出物及び添加物
試験資材1:5%昆布パウダー粒子径 5μm 生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成) 試験資材2:0.5%イソプロビルメチルフェノール生理食塩水溶液
試験資材3:2%ヨウ素パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材4:2%ヨウ素パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材5:4%フコイダンパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:2%ラミナランパウダー生理食塩水溶液
試験資材7:2%フロログルシノール(ポリフェノール)パウダー生理食塩水溶液(沸騰水用217488N3液作成)
試験資材8:2%アルギン酸ナトリウムパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材9:2%エリスリトールパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材10:2%マンニトールパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
尚、対照資材として、滅菌生理食塩水を使用した。
【0260】
(B)供試微生物(細菌)
供与微生物(細菌)として、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis ATCC33277)を用い、この供試微生物(細菌)を血液培地にて前培養し、滅菌精製水にて約10cfu/mLの濃度に調整したものを試験菌液とした。
【0261】
(C)区の設定
対照区としては、対照資材10mLに試験菌液0.1mLを添加処理し、感作時間として、試験開始後0、30、60秒とした。
試験区1-10は、試験資材10mLに試験菌液0.1mLを添加処理し、感作時間として、試験開始後30、60秒とした。
感作時間を30秒及び60秒に設定したのは、本発明に係る口腔用衛生用品である歯磨剤等が、口腔内に留まる時間を想定したからである。
【0262】
(D)試験方法
「JIS Z 2801(抗菌加工製品・抗菌性試験方法・殺菌効果)」及び石炭酸係数法を参考として実施した。
【0263】
(E)試験手順
(E-1)微生物検査方法(試験液の細菌数測定)
試験液を、滅菌生理食塩水で適時希釈し、血液寒天培地で培養した。培養は、嫌気条件で35度C、10日間行い、培養後に発育した集落を計数して当該菌数とした。
(E-2)試験方法
試験資材及び対照資材を滅菌試験管に入れ、資材10mLに対し試験菌液を0.1mL添加して充分に混合した。
試験設定に従い、混合直後及び室温で一定時間反応させた後、残存する生菌数を微生物検査方法に従って測定した。
【0264】
(F)結果
上記の確認試験(9)の試験結果を、図23及び表16に示す。
試験結果 表16に示すとおり、対照区については、試験開始時から終了時までほぼ同数の、1.2×10CFU/mLであった。
【0265】
一方、試験区1-6は、試験開始60秒後に、夫々以下のとおりであった。
試験区1:5.2×10CFU/mL(56.6%減少)
試験区2:5.2×10CFU/mL(56.6%減少)
試験区3:1.6×10CFU/mL(86.6%減少)
試験区4:1.8×10CFU/mL(85.0%減少)
試験区5:6.2×10CFU/mL(48.3%減少)
試験区6:2.5×10CFU/mL(79.1%減少)
試験区7:1.8×10CFU/mL(85.0%減少)
試験区8:1.1×10CFU/mL( 8.3%減少)
試験区9:1.1×10CFU/mL( 8.3%減少)
試験区10:1.0×10CFU/mL(16.6%減少)
尚、上記数値は3試行の平均値である。
【0266】
【表16】
【0267】
表17は、示す。尚、表15A、表15B及び表16を纏めて理解しやすくした表である。
【0268】
【表17】
【0269】
(G)考察
上記試験の結果、試験資材のポルフィロモナス・ジンジバリス菌に対し、菌数を減少させる効果が確認され、各試験資材への接触後60秒間で、8.3乃至55.8%減少の効果が得られたものと判定された。
【0270】
ところで、歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)等の歯周病菌については、その感染源が必ずしも明確にはなっておらず、口腔、鼻腔、咽喉・気道を含む呼吸器官を介しての飛沫感染や空気感染の可能性も指摘されている。
【0271】
このことから、本発明に係る衛生マスクは、上記した[確認試験(9)]及び[確認試験(10)]の結果から、歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の感染源が経口感染であった場合、歯周病の予防にも役立つことになるのである。
【0272】
以上詳しく説明したように、本発明は、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を防止するための衛生マスクであって、昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物(以下、「海藻生成物」という)を薬効作用の主成分とし、インフルエンザウイルスを含む複数のウイルスに対する不活性化作用及び口腔又は呼吸器官疾患を発症させる複数の細菌に対する殺菌作用を有する衛生用剤を含有する、ことにより、安全性が確認された用剤であって、ウイルス及び/又は細菌の体内への侵入を有効的に防止する衛生用剤を含む衛生マスクの提供を可能としたのである。
【符号の説明】
【0273】
1 マスク主体部
2 マスクフレーム
3 耳掛け手段
4 吸湿伸延性布部材
7 ウイルス不活性化剤を付着したシート
8 香料含浸シート
9 留め具の一方のホック
10 留め具の他方のホック
11 開口部
13 マスク収納ケース(マスクケース)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図20
図21
図22
図23
図24