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  • 特開-活性エネルギー線硬化型樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106728
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007630
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】向井 剛
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127BA041
4J127BB031
4J127BB051
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC051
4J127BC131
4J127BD221
4J127BF181
4J127BF18X
4J127BF221
4J127BF22X
4J127BG141
4J127BG14X
4J127CB161
4J127CB342
4J127CB372
4J127CC112
4J127CC251
4J127DA17
4J127DA20
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】抗菌性、防曇性、帯電防止性の全てに優れた硬化物を得ることが可能な、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)~(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(A):構成ポリグリセリンの平均重合度が2~3であり、主構成脂肪酸の炭素数が10~18であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B):ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種又は2種以上
(C):1分子中に4個以上のエチレングリコール及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー
(D):光重合開始剤
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(A):構成ポリグリセリンの平均重合度が2~3であり、主構成脂肪酸の炭素数が10~18であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B):ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種又は2種以上
(C):1分子中に4個以上のエチレングリコール及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー
(D):光重合開始剤
【請求項2】
さらに下記(E)を含有することを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(E):請求項1に記載の(B)、(C)以外の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー及び/又はオリゴマー
【請求項3】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線によって硬化する樹脂組成物並びに抗菌性、防曇性及び帯電防止性を有する樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高分子材料やガラス等の基材に抗菌性、防曇性又は帯電防止性を付与する目的で、基材表面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布等の方法でコーティングし、活性エネルギー線を照射して硬化物(硬化皮膜:コーティング層)を設けて対応している。
【0003】
抗菌性を付与する技術としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート及び有機窒素硫黄系抗菌剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(特許文献1)等が開示されている。防曇性を付与する技術としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を必須の反応原料とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂と水性不飽和基含有化合物とを含有する活性エネルギー線硬化型防曇性組成物(特許文献2)等が開示されている。帯電防止性を付与する技術としては、アルカリ金属塩と特定のアクリルアミド誘導体と分子内に2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物とを含むコーティング剤組成物(特許文献3)等が開示されている。
【0004】
これらの従来技術では抗菌性、防曇性、帯電防止性のうちいずれかを付与できるものの、3つの性能を同時に付与することは困難である。従って、抗菌性、防曇性、帯電防止性の全てを付与できる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-139158号公報
【特許文献2】特開2021-46483号公報
【特許文献3】特開2006-152130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抗菌性、防曇性、帯電防止性の全てに優れた硬化物を得ることが可能な、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル及び特定の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーを配合することにより上記課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき更に研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなっている。
[1]下記(A)~(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(A):構成ポリグリセリンの平均重合度が2~3であり、主構成脂肪酸の炭素数が10~18であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B):ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種又は2種以上
(C):1分子中に4個以上のエチレングリコール及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー
(D):光重合開始剤
[2]さらに下記(E)を含有することを特徴とする上記[1]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(E):上記[1]に記載の(B)、(C)以外の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー及び/又はオリゴマー
[3]上記[1]又は[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線によって硬化し、得られた硬化物は抗菌性、防曇性、帯電防止性の全てに優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】防曇性を評価する為の上面に傾斜がついた円柱状の底なしビーカー。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」ともいう。)は、通常液状あるいはペースト状であり、活性エネルギー線によって硬化するものである。
【0011】
本発明に用いられる(A):構成ポリグリセリンの平均重合度が2~3であり、主構成脂肪酸の炭素数が10~18であるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、「A成分」ともいう。)の平均重合度は2~3であり、好ましくは2である。該平均重合度は、ポリグリセリン脂肪酸エステルのメーカーによる公称値がある場合はその値を用いることとする。そのような公称値がない場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの組成(即ち、ポリオール組成)を分析することにより平均重合度を求める。その方法を、下記工程(1)~(3)に示す。
【0012】
(1)試料の調製
先ず、被検試料を、けん化分解処理して脂肪酸とポリオールとに分解する。具体的には、被検試料2.0gをけん化用フラスコに量り取り、これに0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール標準液30mLを加え、該フラスコに冷却器を付け、時々振り混ぜながら、還流するエタノールが冷却器の上端に達しないように約70~80℃の範囲内で温度を調節して穏やかに約1時間加熱した後、温水40~50mL、水40~50mL、ヘキサン100mLで順次フラスコを洗いながら分液漏斗に移す。この分液漏斗に10%塩酸約5mLを加えて分液漏斗を振り混ぜ、これにヘキサン50mLを加えて更に振り混ぜ、その後静置する。分離した下層をビーカーに採り、0.5mol/L水酸化カリウム溶液でpHを調製して中和し、60℃の通風乾燥機内にビーカーを静置し、脱水する。完全に脱水したらメタノール5~10mLを2~3回に分け入れて内容物をかき混ぜ、自然濾過する。得られた濾液をフラスコに移し、エバポレータにてメタノールを除去する。
【0013】
(2)測定方法
次に、得られた濃縮物を50mg計量し、これにピリジン(試薬特級;富士フイルム和光純薬社製)1~2mg入れて混合し溶解する。これに1,1,1,3,3,3,-ヘキサメチルジシラザン(東京化成工業社製)を0.5mL加えて混合し、更にトリフルオロ酢酸(和光特級;富士フイルム和光純薬社製)0.1mLを加えて混合する。これを約1分間放置した後、GC(ガスクロマトグラフィー)を用いて下記条件でポリオール組成分析を行う。
≪GC分析条件≫
装置:ガスクロマトグラム(型式:GC-2010Plus;島津製作所社製)
データ処理ソフトウェア(型式:GCsolution バージョン2.4;島津製作所社製)
カラム(型式:Ultra ALLOY-TRG;P/N:UATRG-30M-0.1F;フロンティア・ラボ社製)
カラムオーブン条件:初期温度 100℃(1分間);昇温速度 15℃/分;最終温度 365℃(11分間)
サンプル注入量:1.0μL
キャリアガス:窒素
【0014】
(3)定量
分析後、データ処理ソフトウェアによりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてポリオール組成を求め、各成分の重合度の重量平均値を算出し、平均重合度とする。
【0015】
A成分における「主構成脂肪酸」とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸100質量%中、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を占める脂肪酸をいう。従って、例えば、主構成脂肪酸が炭素数10~18の脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、該ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸100質量%中、炭素数10~18の脂肪酸が50質量%以上を占めるものを意味する。
【0016】
炭素数10~18の脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、好ましくは炭素数12~16の脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等)である。これら脂肪酸は、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸100質量%中の炭素数10~18の脂肪酸、その他の脂肪酸の含有量は、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造原料である脂肪酸100質量%中の含有量を指すが、この含有量は、製造されたポリグリセリン脂肪酸エステルについて下記工程(1)~(3)を実施して測定しても良い。
【0018】
(1)試料の調製
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.1.2-1996 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)]に準じて試料を調製する。
【0019】
(2)測定方法
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.2.2-1996脂肪酸組成(FID 昇温ガスクロマトグラフ法)]に準じて測定する。
【0020】
(3)定量
データ処理装置により記録されたピーク面積の総和に対する各ピーク面積の百分率をもって構成脂肪酸の含有量とする。
【0021】
本発明で用いられる(B):ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種又は2種以上(以下、「B成分」ともいう。)のうち、ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
B成分のうち、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミドとしては、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
B成分のうち、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとしては、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
B成分のうち、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
B成分のうち、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明で用いられる(C):1分子中に4個以上のエチレングリコール及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(以下、「C成分」ともいう。)としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら1分子中に4個以上のエチレングリコール及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーとしては、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
C成分の1分子中のエチレングリコールの数は、4個以上であれば特に制限はないが、本発明の樹脂組成物の防曇性の持続性の観点から、好ましくは90個以下、より好ましくは35個以下である。
【0028】
本発明で用いられる(D)光重合開始剤(以下、「D成分」ともいう。)は、紫外線等の活性エネルギー線でラジカルを発生する重合性の開始剤であり、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これら光重合開始剤は、少なくとも1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物には、B成分及びC成分以外の、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー及び/又はオリゴマー(以下、「E成分」ともいう。)を配合することができる。E成分は、本発明の樹脂組成物を硬化した硬化物の物性をコントロールあるいは補足する物質である。E成分は、硬化物に要望される性質、形状、用途等によって適宜選択することができる。
【0030】
E成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物中のA成分の配合量は特に制限はないが、B成分及びC成分、あるいはB成分、C成分及びE成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは1.0~3.5質量部である。
【0032】
本発明の樹脂組成物中のB成分の配合量に特に制限はないが、B成分及びC成分、あるいはB成分、C成分及びE成分の合計100質量部中、好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部である。
【0033】
本発明の樹脂組成物中のC成分の配合量に特に制限はないが、B成分及びC成分、あるいはB成分、C成分及びE成分の合計100質量部中、好ましくは5~70質量部、より好ましくは20~40質量部である。
【0034】
本発明の樹脂組成物中のD成分の配合量に特に制限はないが、B成分及びC成分、あるいはB成分、C成分及びE成分の合計100質量部に対して、好ましくは1.0~8.0質量部、より好ましくは3.0~6.0質量部である。
【0035】
本発明の樹脂組成物には上記したE成分を配合しても良く、E成分の配合量としては、該樹脂組成物の硬化物の性質、形状、用途等によって適宜調整することができる。E成分の配合量としては、B成分、C成分及びE成分の合計100質量部中、好ましくは10~90質量部、より好ましくは20~70質量部である。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で他の物質を配合することができる。他の物質としては、例えば、有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン及びキシレン等が挙げられる。これらの有機溶剤はA成分、B成分、C成分及びD成分、あるいはA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分を希釈するものである。これら有機溶剤を配合した場合は、後述する活性エネルギー線により本発明の樹脂組成物を硬化する前に、乾燥等の方法によって有機溶剤を除去する必要がある。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、A成分、B成分、C成分及びD成分あるいはA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分を均一に混合することにより得られる。前記混合としては公知の混合方法、公知の混合装置によって混合することができる。
【0038】
上記均一に混合する温度に特に制限はないが、各成分に影響しない範囲の温度に加温することが好ましく、例えば、80℃以下、好ましくは常温(25℃)~60℃を例示することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物を活性エネルギー線の照射によって硬化してなる樹脂硬化物(以下、「本発明の樹脂硬化物」ともいう。)も本発明の形態の1つである。
【0040】
上記活性エネルギー線としては、本発明の樹脂組成物が硬化する光線であれば特に制限はなく、例えば、紫外線、電子線、X線等が挙げられ、重合性、取扱い易さ等を考慮した場合、好ましくは紫外線である。紫外線の光源としては特に制限はなく、例えば、無電極ランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
【0041】
活性エネルギー線の照射量は、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分の種類及び配合量、あるいは照射する機器によって異なるため適宜調整する必要があるが、例えば、積算光量300~3000mJ/cmを例示することができる。
【0042】
本発明の樹脂硬化物は、高分子材料やガラス等の基材表面に本発明の樹脂組成物を塗布して活性エネルギー線を照射することで得ることができる。
【0043】
上記高分子材料としては、例えば、熱可塑性プラスチックや熱硬化性プラスチック及びその他の樹脂材料等が挙げられる。これら高分子材料の形態に特に制限はないが、例えば、シート、フィルム及び成形物等の形態が挙げられる。
【0044】
上記塗布する方法に特に制限はなく、例えば、バーコート、ロールコート、ダイコート、スプレーコート及びディップコート等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂硬化物の用途としては特に制限はなく、電材分野では例えば、ディスプレイ、タッチパネル、モバイル機器や家電のハウジング等が挙げられ、建材分野では例えば、建具、壁材、家具、浴槽の鏡、ドアノブ、スイッチ、手すり、窓ガラス、ショーウィンドー、カーブミラー等が挙げられ、自動車分野では例えば、ヘッドランプレンズ、ダッシュボード等のインパネ、ナビゲーションパネル、メーターパネル等が挙げられ、衛生分野では例えば、フェイスシールド、マウスシールド、パーテーション、眼鏡、ゴーグル、ヘルメットシールド等が挙げられる。
【0046】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例0047】
≪活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の作製≫
(1)原材料
[A成分]
A-1(商品名:ポエムDL-100;ポリグリセリンの平均重合度:2;主構成脂肪酸:ラウリン酸;理研ビタミン社製)
A-2(商品名:ポエムDM-100;ポリグリセリンの平均重合度:2;主構成脂肪酸:ミリスチン酸;理研ビタミン社製)
[B成分]
B-1(商品名:DMAA;N,N-ジメチルアクリルアミド;KJケミカルズ社製)
B-2(商品名:DEAA;N,N-ジエチルアクリルアミド;KJケミカルズ社製)
B-3(商品名:DMAPAA;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド;KJケミカルズ社製)
[C成分]
C-1(商品名:NKエステルA-600;13EOジアクリレート;新中村化学工業社製)
C-2(商品名:NKエステルAT-20E;トリメチロールプロパン-20EO-トリアクリレート;新中村化学工業社製)
C-3(商品名:NKエステルA-DPH-12E;ジペンタエリスリトール-12EO-ヘキサアクリレート;新中村化学工業社製)
[D成分]
D-1(商品名:Omnirad184;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;IGM社製)
[E成分]
E-1(商品名:アロニックスM-305;ペンタエリスリトールトリアクリレート;東亜合成社製)
E-2(商品名:アロニックスM-400;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;東亜合成社製)
E-3(商品名:紫光UV-1700B;10官能ウレタンアクリレート;三菱ケミカル社製)
[有機溶剤]
プロピレングリコールモノメチルエーテル(富士フイルム和光純薬社製)
【0048】
(2)配合
上記原材料を用いて作製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の配合組成を表1及び2に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
(3)活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の作製方法
表1及び2に記載の等倍量の原材料を用いて、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(実施例品1~7、比較例品1~3)を下記方法で作製した。
各成分を遮光容器に量りとり、撹拌機を用いて60℃・30分間撹拌混合し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(実施例品1~7、比較例品1~3)を得た。
【0052】
≪コーティング層を有する樹脂シートの作製≫
(1)原材料
樹脂シート(ポリエチレンテレフタレート系樹脂シート;膜厚100μ;東洋紡社製)
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(実施例品1~7、比較例品1~3)
(2)コーティング層を有する樹脂シートの作製方法
(2-1)樹脂シート(試作品1)の作製方法
樹脂シートに、バーコーターを用いて実施例品1を膜厚10μmになるよう塗布し、紫外線ランプ(無電極ランプ;Hバルブ;照度1400mW/cm;FusionUV社製)を用いて積算光量500mJ/cmとなるように紫外線を照射して光重合を行いコーティング層を有する樹脂シート(試作品1)を得た。
(2-2)樹脂シート(試作品2~10)の作製方法
樹脂シートに、バーコーターを用いて実施例品2~7及び比較例品1~3のいずれかを膜厚10μm/固形分になるよう塗布し、乾燥機(型式:DO-450V;アズワン社製)を用いて90℃で3分間乾燥したのち、紫外線ランプ(無電極ランプ;Hバルブ;照度1400mW/cm;FusionUV社製)を用いて積算光量500mJ/cmとなるように紫外線を照射して光重合を行いコーティング層を有する樹脂シート(試作品2~10)を得た。
【0053】
≪コーティング層を有する樹脂シートの抗菌性、防曇性、帯電防止性の評価≫
(1)抗菌性の評価
得られた樹脂シート(試作品1~10)について、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 13276)及び大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)に対する抗菌活性を、JIS Z2801「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に記載の試験方法に基づいて測定した。結果は、以下の評価基準に従って記号化した。結果を表3に示す。
◎:抗菌活性値が、4.0以上(強い抗菌効果あり)
〇:抗菌活性値が、2.0以上4.0未満(抗菌効果あり)
×:抗菌活性値が、2.0未満(抗菌効果弱い)
【0054】
(2)防曇性の評価
上面に傾斜がついた円柱状の底なしビーカー(図1)の上面に、傾斜に沿って樹脂シート(試作品1~10)をコーティング層が内側になるように貼付け、50℃の水を張った恒温水槽中に、該ビーカーを下面から3cmまで水に浸るように設置し、設置から1分間経過後の樹脂シートの水滴の付着の有無を目視し、下記評価基準にて評価した。結果を表3に示す。
◎:水滴の付着が、樹脂シートの面積の1%未満(強い防曇効果あり)
〇:水滴の付着が、樹脂シートの面積の1%以上20%未満(防曇効果あり)
×:水滴の付着が、樹脂シートの面積の20%以上(防曇効果弱い)
【0055】
(3)帯電防止性の評価
得られた樹脂シート(試作品1~10)を20℃、湿度65%RHで24時間エージングし、同条件で極超絶縁計(型式:SM-8000Series;HIOKI社製)を用いて表面抵抗率(Ω/□)を測定した。結果を表3に示す。
◎:表面抵抗率(Ω/□)が、10の10乗台以下(強い帯電防止効果あり)
〇:表面抵抗率(Ω/□)が、10の10乗台超10の12乗台以下(帯電防止効果あり)
×:表面抵抗率(Ω/□)が、10の12乗台超(帯電防止効果弱い)
【0056】
【表3】
【0057】
結果より、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として実施例品1~7を用いた樹脂シート(試作品1~7)は、抗菌性、防曇性、帯電防止性のいずれも「◎」の結果であった。
一方、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として比較例品1~3を用いた樹脂シート(試作品8~10)は、抗菌性、防曇性、帯電防止性のいずれも、あるいは、いずれかが「×」であり、全てにおいて「〇」以上になることはなかった。
図1