(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106731
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】試料処理装置、試料分析装置、および試料処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20230726BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20230726BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20230726BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230726BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G01N1/04 M
B01D29/04 510A
B01D29/04 520Z
B01D29/04 530Z
B01D29/38 580Z
B01J20/30
B01J20/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007637
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】391028188
【氏名又は名称】株式会社アナテック・ヤナコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 光明
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 翔伍
【テーマコード(参考)】
2G052
4D116
4G066
【Fターム(参考)】
2G052AA23
2G052AA36
2G052AD09
2G052AD29
2G052CA02
2G052CA12
2G052EA04
2G052FC05
2G052FC11
2G052GA11
4D116AA09
4D116BB01
4D116BC06
4D116DD01
4D116DD02
4D116FF04B
4D116FF12B
4D116GG21
4D116KK06
4D116QA04C
4D116QA04E
4D116QA04F
4D116QA05C
4D116QA05D
4D116QA05F
4D116QA31A
4D116QA31G
4D116QA32A
4D116QA32G
4D116QB41
4D116QC25D
4D116QC29D
4D116RR01
4D116RR03
4D116RR14
4D116RR17
4D116VV09
4D116VV30
4G066AC02B
4G066BA03
4G066BA16
4G066CA20
4G066CA45
4G066CA56
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】試料に含まれる微小な検出対象物質を短時間で捕集できる試料処理装置、試料分析装置、および試料処理方法を提供する。
【解決手段】試料処理装置は、処理槽1と、検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散されたセルロース分散液を処理槽1に供給するセルロース分散液供給部2と、検出対象物質を含む試料を処理槽1に供給する試料供給部3と、処理槽1の内部に設けられ、セルロース分散液と試料とを混合して得られた混合液からセルロース繊維を濾別する1インチ間10~800メッシュのフィルタ4とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽と、
検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散されたセルロース分散液を前記処理槽に供給するセルロース分散液供給部と、
前記検出対象物質を含む試料を前記処理槽に供給する試料供給部と、
前記処理槽の内部に設けられ、前記セルロース分散液と前記試料とを混合して得られた混合液から前記セルロース繊維を濾別する1インチ間10~800メッシュのフィルタとを備えている
ことを特徴とする試料処理装置。
【請求項2】
前記処理槽は、前記セルロース分散液および前記試料が供給される上流室と、前記フィルタを通過した濾液が流れる下流室とを有し、
前記下流室に接続され、前記処理槽の内部に負圧を発生させるポンプをさらに備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項3】
前記処理槽は、前記上流室が前記下流室の下方に設けられるように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の試料処理装置。
【請求項4】
前記処理槽および前記フィルタを洗浄するための洗浄液を前記処理槽に供給する洗浄液供給部をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の試料処理装置。
【請求項5】
前記セルロース繊維は、濾紙、脱脂綿、もしくはパルプが前記フィルタを通過しない程度に粉砕されたもの、または、酸化パルプである
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の試料処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の試料処理装置と、
前記検出対象物質を検出するための検出液を前記処理槽に供給する検出液供給部とを備えている
ことを特徴とする試料分析装置。
【請求項7】
試料に含まれる検出対象物質を捕集するための試料処理方法であって、
前記検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散されたセルロース分散液と前記試料とを混合して混合液を生成し、1インチ間10~800メッシュのフィルタを用いて前記混合液から前記セルロース繊維を濾別する
ことを特徴とする試料処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる検出対象物質を捕集する試料処理装置、試料分析装置、および試料処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検出対象物質としての微生物を計測する水質自動測定装置が記載されている。この装置は、濾過膜を用いて微生物を濾別する濾過部を備えている。濾過膜としては、オーシストの粒径が4~6μmのクリプトスポリジウムを捕集するために、孔径2あるいは3μmのトラックエッチフィルタが用いられる。
【0003】
また、特許文献2には、被処理水から検出対象物質である重金属類を除去する除去装置が記載されている。この装置は、セルロースナノファイバーまたはその溶液を被処理水に添加する処理手段と、重金属類が付着したセルロースナノファイバーを被処理水から除去する固液分離手段とを備えている。固液分離手段としては、濾過装置等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-236861号公報
【特許文献2】特許第6824867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の装置では、検出対象物質を濾別するために、透過膜(フィルタ)のメッシュ数を1インチ間約6000メッシュ相当にする必要があった。また、特許文献2に記載の装置でも、セルロースナノファイバーを濾別して検出対象物質を捕集する場合には、濾過装置が備える濾材(フィルタ)のメッシュ数を1インチ間約2000メッシュ相当にする必要があった。したがって、特許文献1,2の構成では微小な検出対象物質(例えば微生物よりも小さなウイルスや細菌)を捕集する場合には、フィルタの目詰まりが生じ易く、濾別に要する時間が長くなるため、検出対象物質を短時間で捕集できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、試料に含まれる微小な検出対象物質を短時間で捕集できる試料処理装置、試料分析装置、および試料処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の試料処理装置は、処理槽と、検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散されたセルロース分散液を前記処理槽に供給するセルロース分散液供給部と、前記検出対象物質を含む試料を前記処理槽に供給する試料供給部と、前記処理槽の内部に設けられ、前記セルロース分散液と前記試料とを混合して得られた混合液から前記セルロース繊維を濾別する1インチ間10~800メッシュのフィルタとを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の試料処理装置において、前記処理槽は、前記セルロース分散液および前記試料が供給される上流室と、前記フィルタを通過した濾液が流れる下流室とを有し、前記下流室に接続され、前記処理槽の内部に負圧を発生させるポンプをさらに備えていることが好ましい。
【0009】
また、上記の試料処理装置において、前記処理槽は、前記上流室が前記下流室の下方に設けられるように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記の試料処理装置において、前記処理槽および前記フィルタを洗浄するための洗浄液を前記処理槽に供給する洗浄液供給部をさらに備えていることが好ましい。
【0011】
また、上記の試料処理装置において、前記セルロース繊維は、濾紙、脱脂綿、もしくはパルプが前記フィルタを通過しない程度に粉砕されたもの、または、酸化パルプであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の試料分析装置は、上記の試料処理装置と、前記検出対象物質を検出するための検出液を前記処理槽に供給する検出液供給部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の試料処理方法は、試料に含まれる検出対象物質を捕集するための試料処理方法であって、前記検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散されたセルロース分散液と前記試料とを混合して混合液を生成し、1インチ間10~800メッシュのフィルタを用いて前記混合液から前記セルロース繊維を濾別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試料に含まれる微小な検出対象物質を短時間で捕集できる試料処理装置、試料分析装置、および試料処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料分析装置の概略構成図である。
【
図2】同実施形態に係る試料分析装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】(A)~(E)は、同実施形態に係る試料分析装置の動作を表す概要図である。
【
図4】変形例に係る試料分析装置の概略構成図である。
【
図5】(A)~(E)は、同変形例に係る試料分析装置の動作を表す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る試料分析装置Dの全体構成を示している。
図1に示すように、試料分析装置Dは、処理槽1と、セルロース分散液供給部2と、試料供給部3と、フィルタ4と、検出液供給部5と、蛍光強度測定部6と、排出物回収部7と、洗浄液供給部8と、ポンプ9~11と、バルブ12~20と、制御部21とを備えている。
【0017】
処理槽1は、検出対象物質を捕集するための容器であり、かつ、捕集された検出対象物質を検出するための容器である。処理槽1は、後述するセルロース分散液および試料が供給される上流室1Aと、フィルタ4を通過した濾液が流れる下流室1Bとを有している。本実施形態では、処理槽1は、上流室1Aが下流室1Bの下方に設けられるように構成されている。処理槽1は、鉛直方向に延びる透明な筒部材1aと、筒部材1aの両端部に設けられた蓋部材1b,1cとにより構成されている。蓋部材1bは、上流室1Aを閉じるように設けられ、蓋部材1cは、下流室1Bを閉じるように設けられている。
【0018】
セルロース分散液供給部2は、セルロース分散液を処理槽1に供給する。セルロース分散液供給部2は、セルロース分散液を貯留するセルロース分散液貯留部2aと、セルロース分散液が流れるセルロース分散液流路2bとにより構成されている。セルロース分散液流路2bは、セルロース分散液貯留部2aと処理槽1の蓋部材1bとを接続している。セルロース分散液は、検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散された懸濁液または溶液である。すなわち、セルロース繊維は、セルロース分散液中で不均一に分散されていても均一に分散されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、セルロース繊維は、濾紙がフィルタ4を通過しない程度に粉砕されたものである。なお、セルロース繊維は、濾紙が粉砕されたものに限定されず、例えば、脱脂綿またはパルプがフィルタ4を通過しない程度に粉砕されたものでもよい。また、セルロース繊維として、パルプを化学的に解繊した酸化パルプを用いてもよい。酸化パルプは、イオン交換可能なカルボキシ基を有する観点から、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)を触媒に用いてパルプを酸化反応させて得られたTEMPO酸化パルプであることが好ましい。
【0020】
濾紙を用いたセルロース分散液の作製方法の一例を説明する。まず、水に濾紙を入れ、ホモジナイザー(分散機)[IKA社製、T25 easy clean]により20,000rpmで5分かけて濾紙を粉砕する。そして、粉砕した濾紙(セルロース繊維)を、1インチ間100メッシュのフィルタで濾別し、質量対容量比濃度が0.5(w/v)%となるように純水に分散させることで、セルロース分散液を作製する。なお、セルロース分散液の流動性を高めるために濃度を低くしてもよく、例えば、粉砕した濾紙の質量対容量比濃度が0.001(w/v)%となるようにセルロース分散液を作製してもよい。
【0021】
試料供給部3は、検出対象物質を含む試料を処理槽1に供給する。試料供給部3は、試料が流れる試料流路3aにより構成されている。試料流路3aは、試料分析装置Dの外部に設けられた試料貯留部Tと処理槽1の蓋部材1bとを接続している。試料は、例えば生活排水であって、試料に含まれる検出対象物質としては、例えば、ウイルス、病原菌、抗原、または、これらの組み合わせである。
【0022】
フィルタ4は、上流室1Aと下流室1Bを区切るように処理槽1の内部に設けられており、セルロース分散液と試料とを混合して得られた混合液からセルロース繊維を濾別する。本実施形態では、上流室1Aが下流室1Bの下方に設けられているため、フィルタ4の下面でセルロース繊維が捕集される。フィルタ4は、メッシュ数(糸の本数)が1インチ間10~800メッシュとなるようにフィルタ4は形成されている。濾別の精度向上と時間短縮の両立を図るために、フィルタ4のメッシュ数は、1インチ間20~400メッシュであることが好ましく、1インチ間50~100メッシュであることがさらに好ましい。
【0023】
検出液供給部5は、検出対象物質を検出するための検出液を処理槽1に供給する。検出液供給部5は、検出液を貯留する検出液貯留部5aと、検出液が流れる検出液流路5bとにより構成されている。検出液流路5bは、検出液貯留部5aと処理槽1の蓋部材1bとを接続している。本実施形態では、検出液は、蛍光物質を標識した抗体を含んでいる蛍光標識剤である。なお、検出液は、蛍光標識剤に限定されず、蛍光染色剤であってもよい。
【0024】
蛍光強度測定部6は、処理槽1内の蛍光の強度を測定する。蛍光強度測定部6は、蛍光の強度に基づいて、検出対象物質を検出する。具体的には、蛍光強度測定部6は、測定した蛍光の強度が所定値以上であるとき、処理槽1内の検出対象物質を検出する。また、蛍光強度測定部6は、検出対象物質の検出結果を出力する。
【0025】
排出物回収部7は、処理槽1内のセルロース繊維等を回収する。排出物回収部7は、セルロース繊維等の排出物が流れる排出物流路7aと、排出物を貯留する排出物貯留部7bとにより構成されている。排出物流路7aは、処理槽1の蓋部材1bと排出物貯留部7bとを接続している。排出物貯留部7bに貯まった排出物は、試料分析装置Dの保守作業者によって適宜廃棄される。
【0026】
洗浄液供給部8は、処理槽1およびフィルタ4を洗浄するための洗浄液を処理槽1に供給する。洗浄液供給部8は、洗浄液を貯留する洗浄液貯留部8aと、洗浄液が流れる洗浄液流路8bとにより構成されている。洗浄液流路8bは、洗浄液貯留部8aと処理槽1の蓋部材1bとを接続している。
【0027】
ポンプ9~11は、それぞれ、流路を形成するチューブをしごくペリスタルティックポンプ(ドーシングポンプ)により構成されている。ポンプ9~11は、チューブをしごくために回転駆動するローターを備えており、ポンプ9~11による流体の移送量は、ローターの回転量に比例する。
【0028】
ポンプ9は、セルロース分散液貯留部2aから処理槽1にセルロース分散液を移送するための電動ポンプであり、試料貯留部Tから処理槽1に試料を移送するための電動ポンプでもある。すなわち、ポンプ9は、セルロース分散液の移送および試料の移送に共用される。ポンプ9は、蓋部材1cを介して処理槽1の下流室1Bに接続されており、処理槽1の内部(下流室1B)に負圧を発生させる。処理槽1の内部に負圧が発生することで、セルロース分散液および試料が処理槽1の内部(上流室1A)に吸い込まれる。また、ポンプ9は、当該ポンプ9の吸引作用によりフィルタ4を通過した濾液を、廃液として試料分析装置Dの外部に排出する。なお、濾液が多量でなければ、後述する排出物貯留部7bに濾液が排出されるように構成してもよい。
【0029】
ポンプ10は、検出液貯留部5aから処理槽1に検出液を移送するための電動ポンプである。ポンプ10は、検出液流路5bのうちバルブ15,16間に設けられており、バルブ15および蓋部材1bを介して、上流室1Aに接続されている。ポンプ10は、所定量の検出液を処理槽1の内部(上流室1A)まで送り出す。また、ポンプ10は、バルブ16が流路の切り替え動作を行うことで、検出液の移送後に、検出液に代えて空気を処理槽1まで送り出すこともできる。
【0030】
ポンプ11は、洗浄液貯留部8aから処理槽1に洗浄液を移送するための電動ポンプである。ポンプ11は、洗浄液流路8bのうちバルブ19,20間に設けられており、バルブ19および蓋部材1bを介して、上流室1Aに接続されている。ポンプ11は、所定量の洗浄液を処理槽1の内部(上流室1A)まで送り出す。また、ポンプ11は、バルブ20が流路の切り替え動作を行うことで、空気を処理槽1まで送り出すこともできる。
【0031】
バルブ12は、セルロース分散液流路2bに設けられた二方向電磁弁であって、セルロース分散液流路2bを形成するチューブを挟んで締め付けるピンチバルブにより構成されている。バルブ12は、制御部21に制御されることで、セルロース分散液が処理槽1に供給されるセルロース分散液供給時に、セルロース分散液貯留部2aと処理槽1とが連通するようにセルロース分散液流路2bを開放し、セルロース分散液供給時以外はセルロース分散液流路2bを閉じる。
【0032】
バルブ13は、セルロース分散液流路2bに接続された二方向電磁弁である。バルブ13は、制御部21によって制御されていない平常時は、セルロース分散液流路2bを閉じており、制御部21によって制御された時に、セルロース分散液流路2bを大気開放するか純水を貯留する純水貯留部(図示略)に接続するように構成されている。
【0033】
バルブ14は、試料流路3aに設けられた二方向電磁弁であって、試料流路3aを形成するチューブを挟んで締め付けるピンチバルブにより構成されている。バルブ14は、制御部21に制御されることで、試料が処理槽1に供給される試料供給時に、試料貯留部Tと処理槽1とが連通するように試料流路3aを開放し、試料供給時以外は試料流路3aを閉じる。
【0034】
バルブ15は、検出液流路5bのうち処理槽1とポンプ10との間に設けられた二方向電磁弁である。バルブ15は、制御部21によって制御されていない平常時は、検出液流路5bを閉じている。
【0035】
バルブ16は、検出液流路5bのうち検出液貯留部5aとポンプ10との間に設けられた三方向電磁弁である。バルブ16は、制御部21によって制御されていない平常時は、検出液貯留部5aとポンプ10とを連通させている。また、バルブ16は、制御部21によって制御された時に、検出液貯留部5aとポンプ10とを非連通状態にし、検出液流路5bを大気開放するように構成されている。
【0036】
バルブ17は、排出物流路7aに設けられた二方向電磁弁であって、排出物流路7aを形成するチューブを挟んで締め付けるピンチバルブにより構成されている。バルブ17は、制御部21に制御されることで、処理槽1内のセルロース繊維等が回収される排出物回収時に、処理槽1と排出物貯留部7bとが連通するように排出物流路7aを開放し、排出物回収時以外は排出物流路7aを閉じる。
【0037】
バルブ18は、処理槽1内を大気開放するために蓋部材1cに設けられた二方向電磁弁である。バルブ18は、制御部21によって制御されていない平常時は、処理槽1内を大気開放しないように閉じている。
【0038】
バルブ19は、洗浄液流路8bのうち処理槽1とポンプ11との間に設けられた二方向電磁弁である。バルブ19は、制御部21によって制御されていない平常時は、洗浄液流路8bを閉じている。
【0039】
バルブ20は、洗浄液流路8bのうち洗浄液貯留部8aとポンプ11との間に設けられた三方向電磁弁である。バルブ20は、制御部21によって制御されていない平常時は、洗浄液貯留部8aとポンプ11とを連通させている。また、バルブ20は、制御部21によって制御された時に、洗浄液貯留部8aとポンプ11とを非連通状態にし、洗浄液流路8bを大気開放するように構成されている。
【0040】
制御部21は、蛍光強度測定部6、ポンプ9~11、およびバルブ12~20を制御する。制御部21の動作については、後述する試料分析装置Dの動作とともに、あとで詳しく説明する。
【0041】
以上の構成を備えた試料分析装置Dは、処理槽1、セルロース分散液供給部2、試料供給部3、フィルタ4、洗浄液供給部8、ポンプ9,11、バルブ12~14,19,20、および制御部21を備えた試料処理装置と、検出液供給部5、蛍光強度測定部6、ポンプ10、バルブ15,16、および制御部21を備えた検出装置とで構成されているともいえる。
【0042】
図2および
図3を参照して、試料分析装置Dの動作の一例を説明する。
図2は、試料分析装置Dの動作の流れを表しており、
図3(A)~(E)は、流体の流れを太線の矢印で示した概要図である。なお、
図3(B)中の破線の矢印は、濾液の流れを示している。
【0043】
まず、試料分析装置Dは、セルロース分散液を処理槽1に移送する(ステップS1)。具体的には、制御部21が、セルロース分散液貯留部2aと処理槽1とが連通するようにバルブ12を制御するとともに、セルロース分散液貯留部2aから上流室1Aにセルロース分散液が吸引されるようにポンプ9を制御する。こうして、ステップS1では、
図3(A)に示すように、セルロース分散液供給部2が、セルロース分散液貯留部2aから処理槽1にセルロース分散液を供給する。また、制御部21は、処理槽1にセルロース分散液が所定量だけ移送された後にセルロース分散液流路2bにセルロース分散液を残さないために、ポンプ9の駆動開始から所定時間後に、セルロース分散液流路2bに空気または純水が入り込むようにバルブ13を制御する。
【0044】
次いで、試料分析装置Dは、試料を処理槽1に移送する(ステップS2)。具体的には、制御部21が、試料貯留部Tと処理槽1とが連通するようにバルブ14を制御するとともに、試料貯留部Tから上流室1Aに試料が吸引されるようにポンプ9を制御する。こうして、ステップS2では、
図3(B)に示すように、試料供給部3が、試料貯留部Tから処理槽1に試料を供給し、処理槽1の上流室1Aで、セルロース分散液と試料とを混合した混合液が生成され、フィルタ4が、セルロース分散液と試料との混合液からセルロース繊維を濾別する。処理槽1に試料が供給され続けることで、検出対象物質の捕集が進行し、上流室1Aでは検出対象物質が濃縮される。
【0045】
次いで、試料分析装置Dは、検出液を処理槽1に移送する(ステップS3)。具体的には、制御部21が、検出液貯留部5aと処理槽1とが連通するようにバルブ15を制御するとともに、検出液貯留部5aから上流室1Aに検出液を送り出すようにポンプ10を制御する。こうして、ステップS3では、
図3(C)に示すように、検出液供給部5が、検出液貯留部5aから処理槽1に検出液を所定量だけ供給する。また、制御部21は、処理槽1に検出液が所定量だけ移送された後に検出液流路5bに検出液を残さないために、ポンプ10の駆動開始から所定時間後に、検出液流路5bに空気が入り込むようにバルブ16を制御する。
【0046】
次いで、試料分析装置Dは、処理槽1内の蛍光強度を測定する(ステップS4)。具体的には、蛍光強度測定部6が、フィルタ4で濾別されたセルロール繊維の蛍光強度を測定し、その測定結果に基づいて検出対象物質を検出する。こうして、ステップS4では、蛍光強度測定部6が、試料中の検出対象物質を検出する。
【0047】
次いで、試料分析装置Dは、セルロース繊維を処理槽1から排出する(ステップS5)。具体的には、制御部21が、処理槽1と排出物貯留部7bとが連通するようにバルブ17を制御するとともに、処理槽1内が大気開放されるようにバルブ18を制御する。処理槽1内が大気開放されることで、上流室1A内の混合液、フィルタ4で濾別されたセルロース繊維、および下流室1B内の濾液が、排出物貯留部7bに落下する。こうして、ステップS5では、
図3(D)に示すように、排出物回収部7が、処理槽1内のセルロース繊維等を回収する。
【0048】
そして、試料分析装置Dは、処理槽1およびフィルタ4を洗浄する(ステップS6)。具体的には、制御部21が、洗浄液貯留部8aと処理槽1とが連通するようにバルブ19を制御するとともに、洗浄液貯留部8aから処理槽1の内部に洗浄液を送り出すようにポンプ11を制御する。こうして、ステップS6では、
図3(E)で示すように、洗浄液供給部8が、洗浄液貯留部8aから処理槽1に洗浄液を供給する。また、制御部21は、洗浄効果を高める気泡を処理槽1で発生させるために、洗浄液流路8bに空気が入り込むようにバルブ20を制御する。
【0049】
処理槽1に供給された洗浄液は、制御部21がステップS5と同様にバルブ17,18を制御することで、処理槽1から排出される。なお、処理槽1への洗浄液の供給と処理槽1からの洗浄液の排出を繰り返して、処理槽1およびフィルタ4を洗浄してもよい。
【0050】
上記実施形態においては以下の効果が得られる。
(1)試料処理装置は、処理槽1と、セルロース分散液供給部2と、試料供給部3と、セルロース分散液と試料とを混合して得られた混合液からセルロース繊維を濾別する1インチ間10~800メッシュのフィルタ4とを備えている。この構成によれば、セルロース繊維で微小な検出対象物質を捕集でき、かつ、検出対象物質を捕集したセルロース繊維を特許文献1,2に記載のフィルタよりも目が大きいフィルタ4で濾別できるため、目詰まりが生じ難く、微小な検出対象物質を短時間で捕集することができる。
【0051】
(2)試料処理装置は、下流室1Bに接続され、処理槽1の内部に負圧を発生させるポンプ9を備えている。この構成によれば、ポンプ9を駆動することで、セルロース分散液および試料を処理槽1までの移送とセルロース繊維の濾別にポンプ9を共用できる。
【0052】
(3)処理槽1は、上流室1Aが下流室1Bの下方に設けられるように構成されている。この構成によれば、フィルタ4の下面でセルロース繊維を捕集でき、セルロース繊維、混合液、および濾液を落下させることで、これらを処理槽1から容易に排出できる。
【0053】
(4)試料処理装置は、洗浄液供給部8を備えている。この構成によれば、洗浄液で処理槽1およびフィルタ4を洗浄することができるため、処理槽1およびフィルタ4を繰り返し用いる場合にも、フィルタ4の目詰まりを解消できるとともに、検出対象物質の検出精度を維持できる。
【0054】
(5)試料分析装置Dは、検出液供給部5を備えている。この構成によれば、捕集した検出対象物質と検出液との反応結果を確認することで、その場で検出対象物質の有無を判別できる。
【0055】
(6)上記実施形態では、検出対象物質を捕集するセルロース繊維が分散されたセルロース分散液と試料とを混合して混合液を生成し、1インチ間10~800メッシュのフィルタ4を用いて混合液からセルロース繊維を濾別している。この試料処理方法によれば、上記(1)に記載したように、微小な検出対象物質を短時間で捕集することができる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0057】
(変形例1)
実施形態に係る処理槽1を鉛直方向において反転させてもよい。以下に、変形例1に係る試料分析装置Dを詳しく説明する。なお、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0058】
図4は、変形例1に係る試料分析装置Dの全体構成を示している。
図4に示すように、変形例1に係る試料分析装置Dは、上記実施形態で記載した構成に加えて、ポンプ22と、バルブ23とを備えている。
【0059】
変形例1では、上流室1Aが下流室1Bの上方に設けられており、フィルタ4の上面でセルロース繊維が捕集される。また、排出物流路7aは、フィルタ4上で濾別されたセルロース繊維を処理槽1外に排出するために、蓋部材1bからフィルタ4の上面の近傍まで延びている。また、バルブ18は、処理槽1内を大気開放するために蓋部材1bに設けられている。
【0060】
ポンプ22は、ポンプ9~11と同様に、ペリスタルティックポンプにより構成されている。ポンプ22は、処理槽1から排出物貯留部7bに排出物を移送するための電動ポンプである。ポンプ22は、蓋部材1bを介して処理槽1の上流室1Aに接続されており、処理槽1内のセルロース繊維および混合液を吸引し、これらを排出物として排出物貯留部7bまで送り出す。
【0061】
バルブ23は、処理槽1内の濾液を排出するために蓋部材1cに設けられた二方向電磁弁であって、バルブ17と同様に、ピンチバルブにより構成されている。バルブ23は、制御部21に制御されることで、処理槽1が洗浄される処理槽洗浄時に、処理槽1の下流室1Bを開放し、処理槽洗浄時以外は下流室1Bを閉じる。
【0062】
図3および
図5を参照して、変形例1に係る試料分析装置Dの動作の一例を説明する。
図5(A)~(E)は、流体の流れを太線の矢印で示した概要図である。なお、
図5(B)および(D)中の破線の矢印は、濾液の流れを示している。
【0063】
ステップS1~S4では、上記実施形態で説明したように、
図5(A)~(C)に示すように、セルロース分散液供給部2が、セルロース分散液貯留部2aから処理槽1にセルロース分散液を供給し、試料供給部3が、試料貯留部Tから処理槽1に試料を供給し、検出液供給部5が、検出液貯留部5aから処理槽1に検出液を所定量だけ供給し、蛍光強度測定部6が、試料中の検出対象物質を検出する。
【0064】
次いで、ステップS5で、制御部21が、処理槽1と排出物貯留部7bとが連通するようにバルブ17を制御するとともに、処理槽1内が大気開放されるようにバルブ18を制御し、上流室1Aから排出物貯留部7bにセルロース繊維および混合液を送り出すようにポンプ22を制御する。さらに、制御部21が、処理槽1外に濾液が排出されるようにバルブ23を制御する。こうして、ステップS5では、
図5(D)に示すように、排出物回収部7が、処理槽1内のセルロース繊維等を回収するとともに、濾液が、試料分析装置Dの外部に排出される。なお、濾液が多量でなければ、排出物貯留部7bに濾液が排出されるように構成してもよい。
【0065】
そして、ステップS6では、上記実施形態で説明したように、
図5(E)に示すように、洗浄液供給部8が、洗浄液貯留部8aから処理槽1に洗浄液を供給する。処理槽1に供給された洗浄液は、制御部21がステップS5と同様にバルブ17,18,23およびポンプ22を制御することで、処理槽1から排出される。
【0066】
(変形例2)
試料分析装置Dは、蛍光強度測定部6を備えていなくてもよい。すなわち、検出対象物質の検出方法は、蛍光の強度を測定する方法に限定されず、例えば、上流室1Aに含まれるセルロース繊維または混合液を比色分析または電気分析することで、検出対象物質を検出してもよい。
【0067】
(変形例3)
試料分析装置Dは、検出液供給部5を備えていなくてもよい。すなわち、濾別したセルロース繊維の分析を試料分析装置Dの外部で行ってもよい。この場合、処理槽1が試料分析装置Dから取り外して運べるように構成されていることが好ましい。
【0068】
(変形例4)
検出対象物質は、ウイルス、病原菌、または抗原に限定されず、試料処理装置は、これらを検出するために利用される装置に限定されない。また、検出液は、検出対象物質を検出するためのものであれば上記実施形態に記載したものに限定されない。例えば、溶存イオンまたは重金属を検出対象物質とし、クラウンエーテル試薬またはキレート試薬等を検出液とし、試料処理装置を、溶存イオンまたは重金属を検出および捕集するために利用することもできる。
【0069】
(変形例5)
セルロース分散液と試料は処理槽1の上流室1Aで混合されていたが、試料処理装置は、処理槽1の上流室1Aに接続された前処理槽(図示略)でセルロース分散液と試料を混合した混合液が生成され、その混合液が処理槽1の上流室1Aに移送されるように構成されていてもよい。また、試料処理装置は、セルロース分散液および試料が同時に移送されるように構成されていてもよい。
【0070】
また、セルロース分散液に含まれるセルロース繊維は、検出対象物質を捕集できるものであれば上記実施形態に記載したものに限定されない。また、フィルタ4は、セルロース繊維を濾別できるのであれば上記実施形態に記載したものに限定されない。
【符号の説明】
【0071】
D 試料分析装置
1 処理槽
2 セルロース分散液供給部
3 試料供給部
4 フィルタ
5 検出液供給部
6 蛍光強度測定部
7 排出物回収部
8 洗浄液供給部
9~11,22 ポンプ
12~20,23 バルブ
21 制御部