(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106773
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】診断装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/08 20060101AFI20230726BHJP
F23N 5/26 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F23N5/08 G
F23N5/26 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007700
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加代
(72)【発明者】
【氏名】山縣 謙一
【テーマコード(参考)】
3K005
3K068
【Fターム(参考)】
3K005QA03
3K005QB03
3K005QC08
3K068NA03
3K068NA07
3K068PA03
(57)【要約】
【課題】バーナの火炎の状態から、燃焼装置の状態を把握する。
【解決手段】放電数測定部103は、単位時間あたりの火炎センサ101の放電数を測定(計測)する。発光情報生成部104は、放電数測定部103が測定した単位時間毎の放電数の合計(累積)を総測定時間で除する式で示される1次関数を発光情報として生成する。判定部105は、上述したように発光情報生成部104が生成した発光情報をもとに、燃焼装置の設定されている点火トライアルの期間の状態を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置による火炎から生じる紫外線を検出する火炎センサと、
前記火炎センサの電極に駆動電圧を周期的に印加する印加電圧生成部と、
単位時間あたりの前記火炎センサの放電数を測定する放電数測定部と、
前記放電数測定部が測定した単位時間毎の放電数の合計を総測定時間で除する式で示される1次関数を発光情報として生成する発光情報生成部と、
前記発光情報をもとに前記燃焼装置の設定されている点火トライアルの期間の状態を判定する判定部と
を備える診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の診断装置において、
前記判定部は、正常時に、前記発光情報生成部が生成する前記発光情報を基準とし、判定時に、前記発光情報生成部が生成する前記発光情報を判定情報とし、前記基準と前記判定情報とを比較することで前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の診断装置において、
前記燃焼装置は、点火トランス、パイロットバーナ、およびメインバーナを備え、前記点火トライアルの期間に前記点火トランスを動作させて前記パイロットバーナの点火を実施し、前記パイロットバーナを点火した後、点火した前記パイロットバーナのパイロット炎により前記メインバーナを点火し、
前記判定部は、前記点火トライアルとして設定されている第1期間における前記基準と前記判定情報との比較により得られる第1比較結果、および前記第1期間の後の第2期間における前記基準と前記判定情報との比較により得られる第2比較結果に基づいて、前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の診断装置において、
前記判定部は、
前記第1比較結果が、前記基準における1次関数の傾きよりも前記判定情報の1次関数の傾きの方が大きく、かつ、前記第2比較結果が、前記基準における1次関数の傾きと前記判定情報の1次関数の傾きとが同じである場合に、前記火炎センサが前記点火トランスから生じるスパークを検知する不具合が生じていると前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の診断装置において、
前記判定部は、前記第2期間における前記判定情報の1次関数の傾きが0の場合に不着火状態であると前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項6】
請求項5記載の診断装置において、
前記判定部は、前記点火トランスが正常時の前記第2期間における前記判定情報の1次関数の値より、判定時の前記第2期間における前記判定情報の1次関数の値が小さい場合に、前記点火トランスが劣化していると前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項7】
請求項6記載の診断装置において、
前記判定部は、前記第1期間における前記判定情報の1次関数の値が0の状態は、前記点火トランスが動作していないと前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項8】
請求項4または5記載の診断装置において、
前記判定部は、
前記第2比較結果が、前記基準における1次関数の傾きと前記判定情報の1次関数の傾きとが同じであり、前記基準における1次関数の値より前記判定情報の1次関数の値の方が小さい場合、着火遅れが発生していると前記燃焼装置の状態を判定する
ことを特徴とする診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置の状態を判定する診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼炉、乾燥炉、およびボイラなどの燃焼装置は、燃焼室内の燃焼を制御するために、火炎の有無を検出する火炎センサが用いられている。火炎センサは、一般に、紫外線検出管などが用いられている。紫外線検出管は、ガラスから構成された管内に設けられた一対の電極間に高電圧を印加した状態で、火炎から放射される紫外線が入射すると、電極間で放電が発生する放電管である。火炎による紫外線が検出されると、紫外線検出管から放電電流が得られる。この放電電流を積分して電圧出力に変換したフレーム電圧が、バーナの点火制御などに用いられている(特許文献1)。
【0003】
ところで、商用の電源電圧から火炎センサ(紫外線検出管)に印加する電圧を生成するため、電源電圧のレベルの大小で放電電流も増減し、常に同じフレーム電圧にならない可能性がある。この電源電圧の変動の影響を除くために、火炎センサに対する駆動電圧の印加回数と、この駆動電圧の印加中に検出された火炎センサからの放電の回数とに基づいて算出される放電確率を用いる技術が提案されている(特許文献2参照)。この技術では、放電確率に基づいて、紫外線強度レベルを確定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-138018号公報
【特許文献2】特開2020-165830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、バーナの火炎の状態から、燃焼装置にどのような異常が発生しているかなどの燃焼装置の状態を把握することが容易ではないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、バーナの火炎の状態から、燃焼装置の状態を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る診断装置は、燃焼装置による火炎から生じる紫外線を検出する火炎センサと、火炎センサの電極に駆動電圧を周期的に印加する印加電圧生成部と、単位時間あたりの火炎センサの放電数を測定する放電数測定部と、放電数測定部が測定した単位時間毎の放電数の合計を総測定時間で除する式で示される1次関数を発光情報として生成する発光情報生成部と、発光情報をもとに燃焼装置の設定されている点火トライアルの期間の状態を判定する判定部とを備える。
【0008】
上記診断装置の一構成例において、判定部は、正常時に、発光情報生成部が生成する発光情報を基準とし、判定時に、発光情報生成部が生成する発光情報を判定情報とし、基準と判定情報とを比較することで燃焼装置の状態を判定する。
【0009】
上記診断装置の一構成例において、燃焼装置は、点火トランス、パイロットバーナ、およびメインバーナを備え、点火トライアルの期間に点火トランスを動作させてパイロットバーナの点火を実施し、パイロットバーナを点火した後、点火したパイロットバーナのパイロット炎によりメインバーナを点火し、判定部は、点火トライアルとして設定されている第1期間における基準と判定情報との比較により得られる第1比較結果、および第1期間の後の第2期間における基準と判定情報との比較により得られる第2比較結果に基づいて、燃焼装置の状態を判定する。
【0010】
上記診断装置の一構成例において、判定部は、第1比較結果が、基準における1次関数の傾きよりも判定情報の1次関数の傾きの方が大きく、かつ、第2比較結果が、基準における1次関数の傾きと判定情報の1次関数の傾きとが同じである場合に、火炎センサが点火トランスから生じるスパークを検知する不具合が生じていると燃焼装置の状態を判定する。
【0011】
上記診断装置の一構成例において、判定部は、第2期間における判定情報の1次関数の傾きが0の場合に不着火状態であると燃焼装置の状態を判定する。
【0012】
上記診断装置の一構成例において、判定部は、点火トランスが正常時の第2期間における判定情報の1次関数の値より、判定時の第2期間における判定情報の1次関数の値が小さい場合に、点火トランスが劣化していると燃焼装置の状態を判定する。
【0013】
上記診断装置の一構成例において、判定部は、第1期間における判定情報の1次関数の値が0の状態は、点火トランスが動作していないと燃焼装置の状態を判定する。
【0014】
上記診断装置の一構成例において、判定部は、第2比較結果が、基準における1次関数の傾きと判定情報の1次関数の傾きとが同じであり、基準における1次関数の値より判定情報の1次関数の値の方が小さい場合、着火遅れが発生していると燃焼装置の状態を判定する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、単位時間毎の放電数の合計を総測定時間で除する式で示される1次関数を発光情報とし、この発光情報をもとに診断対象の燃焼装置の設定されている点かトライアルの期間の状態を判定するので、バーナの火炎の状態から、点火トライアル期間に燃焼装置に発生している異常が特定できるなど、燃焼装置の状態を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る診断装置の構成を示す構成図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態に係る診断装置による診断例を説明するための説明図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態に係る診断装置による診断例を説明するための説明図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態に係る診断装置による診断例を説明するための説明図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の実施の形態に係る診断装置による診断例を説明するための説明図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の実施の形態に係る診断装置による診断例を説明するための説明図である。
【
図3A】
図3Aは、燃焼ガスと空気との混ざり具合(当量比)と、発光強度(発光情報)との関係を示す特性図である。
【
図3B】
図3Bは、燃焼ガスと空気との混ざり具合(当量比)と、発光強度(発光情報)との関係を示す特性図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る火炎測定装置の発光情報生成部104,判定部105のハードウエア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る診断装置について
図1を参照して説明する。この診断装置は、火炎センサ101、印加電圧生成部102、放電数測定部103、発光情報生成部104、および判定部105を備える。
【0018】
火炎センサ101は、対象となる燃焼装置のバーナの火炎131から生じる紫外線を検出(測定)する。火炎センサ101は、例えば、所定の波長域の紫外線を検出する紫外線検出管から構成することができる。紫外線検出管は、ガラスより構成された管内に、アノード電極とカソード電極とが配置されている。
【0019】
印加電圧生成部102は、火炎センサ101の電極に駆動電圧を周期的に印加する。印加電圧生成部102は、例えば、電源106から供給される商用の交流電圧を所定の値まで昇圧して火炎センサ101の電極に印加する。
【0020】
放電数測定部103は、単位時間あたりの火炎センサ101の放電数を測定(計測)する。放電数測定部103は、例えば、0.1秒毎に火炎センサ101の放電数を計測し、この計数値を設定されている時間(単位時間、例えば10秒間)累積することで、単位時間あたりの火炎センサ101の放電数とする。
【0021】
火炎センサ101を構成する紫外線検出管のアノード電極とカソード電極との間に任意の電圧を印加すると、アノード電極とカソード電極の間で電界が発生する。この状態で、カソード電極に紫外線が衝突すると、カソード電極から2次電子が放出される。
【0022】
放出された2次電子は、電界により加速されてアノード電極の側に飛行するが、このとき、電極間の分子あるいはイオンに衝突し、数多くの電子を発生させる雪崩現象を起こす。雪崩現象により発生した多数の電子は、電界によりアノード電極の方向に進んでアノード電極に到達する。この現象が紫外線検出管における放電である。放電が発生すると、アノード電極とカソード電極間の電圧が低下するとともに電流が発生する。この電流の発生が、紫外線検出管より構成される火炎センサ101に接続された放電数測定部103で測定(計測)される。
【0023】
発光情報生成部104は、放電数測定部103が測定した単位時間毎の放電数の合計(累積)を総測定時間で除する式で示される1次関数を発光情報として生成する。1次関数で示されるグラフの傾きが、火炎131の発光強度を示すものとなる。発光情報生成部104は、例えば10秒毎に累積された火炎センサ101の放電数を、10秒(総測定時間)で除した値から得られる発光情報(1次関数)を、10秒毎に生成する。なお、ここでは、1次関数は、見かけ上1次の(退化している)場合であり、傾きが0の場合も含む。
【0024】
判定部105は、上述したように発光情報生成部104が生成した発光情報をもとに、燃焼装置の設定されている点火トライアルの期間の状態を判定する。判定部105は、正常時に、発光情報生成部104が生成する発光情報を基準とし、判定時に、発光情報生成部104が生成する発光情報を判定情報とし、基準と判定情報とを比較することで燃焼装置の状態を判定する。判定部105の判定結果は、表示部107に表示される。
【0025】
対象となる燃焼装置は、点火トランス、パイロットバーナ、およびメインバーナを備え、点火トライアルの期間に点火トランスを動作させてパイロットバーナの点火を実施し、パイロットバーナを点火した後、点火したパイロットバーナのパイロット炎によりメインバーナを点火している。このような構成の燃焼装置に対して、判定部105は、点火トライアルとして設定されている第1期間における基準と判定情報との比較により得られる第1比較結果、および第1期間の後の第2期間における基準と判定情報との比較により得られる第2比較結果に基づいて、燃焼装置の状態を判定することができる。
【0026】
また、判定部105は、第1比較結果が、基準における1次関数の傾きよりも判定情報の1次関数の傾きの方が大きく、かつ、第2比較結果が、基準における1次関数の傾きと判定情報の1次関数の傾きとが同じである場合に、火炎センサが点火トランスから生じるスパークを検知する不具合が生じていると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0027】
また、判定部105は、第2期間における判定情報の1次関数の傾きが0の場合に不着火状態であると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0028】
また、第2期間における判定情報の1次関数の傾きが0であるために不着火状態であると判定される場合、判定部105は、さらに、点火トランスが正常時の第2期間における判定情報の1次関数の値より、判定時の第2期間における判定情報の1次関数の値が小さい場合に、点火トランスが劣化していると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0029】
上述したように、点火トランスが劣化していると判定する中で、判定部105は、第1期間における判定情報の1次関数の値が0の状態の期間は、点火トランスが動作していないと燃焼装置の状態を判定する。
【0030】
また、判定部105は、第2比較結果が、基準における1次関数の傾きと判定情報の1次関数の傾きとが同じであり、基準における1次関数の値より判定情報の1次関数の値の方が小さい場合、着火遅れが発生していると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0031】
以下、診断例を用いてより詳細に説明する。以下では、パイロットバーナとメインバーナとを備える燃焼装置を対象とした診断について
図2A~
図2Eを参照して説明する。診断においては、0.1秒毎に計測した放電数を10秒間累積した累積値を、10秒(総測定時間)で除する式で示される1次関数を、10秒毎に求めていく。
図2A~
図2Hには、10秒毎に求められる1次関数によるグラフを示している。これらグラフは、判定結果とともに、表示部107に表示することができる。
【0032】
パイロットバーナとメインバーナとを備える燃焼装置では、例えば、
図2Aの実線で示すように、時間t1までの、点火トライアルの第1期間と、時間t1以降(時間t2まで)の第2期間とで、グラフの傾きが変化する。第2期間は、正常な状態であれば、パイロットバーナが着火している状態であり、実線は、燃焼装置の正常時に、発光情報生成部104が生成する基準となる1次関数(発光情報)を示している。
【0033】
[診断例1]
はじめに、診断例1について
図2Aを参照して説明する。この例では、判定時における発光情報生成部104が生成する1次関数(発光情報)が、
図2Aの破線で示すように変化している。一般に、火炎センサ101が点火トランスのスパークを検出(測定)しないように設置されていて、パイロットバーナが正常に点火する状態であれば、第1期間において、10秒毎に求めていく各々の1次関数のグラフの傾きは同一であり、また、第1期間においては、グラフは1つの直線で示されるものとなる。同様に、パイロットバーナが正常に点火する正常な状態であれば、第2期間において、10秒毎に求めていく各々の1次関数のグラフの傾き(傾き)は同一であり、グラフは1つの直線で示されるものとなる。また、実線で示す基準においては、直線の傾きが、パイロットバーナが正常に点火する正常な状態における火炎の発光強度を示すものとなる。
【0034】
ところが、火炎センサ101の設置の状態によっては、パイロットバーナやメインバーナの火炎131から生じる紫外線に加え、点火トランスのスパークも検出(測定)している場合がある。この状態は、一般には、火炎センサ101の設置不良とされている。これは、点火トランスがスパークを生成すると、火炎131が無くても、火炎センサ101の出力が発生し、誤った制御の原因となるからである。
【0035】
ここで、火炎センサ101が、点火トランスのスパークも検出している場合、パイロットバーナが正常に点火する状態であれば、火炎131から生じる紫外線に加えて点火トランスのスパークも検出するため、
図2Aの破線に示すように、基準(実線)における1次関数の傾きよりも判定情報(破線)の1次関数の傾きの方が大きく、かつ、第2比較結果が、基準における1次関数の傾きと判定情報の1次関数の傾きとが同じ状態となる。したがって、このような場合、火炎センサが点火トランスから生じるスパークを検知する不具合が生じていると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0036】
[診断例2]
次に、診断例2について
図2Bを参照して説明する。この例では、判定時における発光情報生成部104が生成する1次関数(発光情報)が、
図2Bの破線で示すように変化している。前述したことから明らかなように、火炎センサ101が、点火トランスのスパークも検出(測定)していない場合、パイロットバーナの不着火が発生すると、第1期間および第2期間において、判定情報の1次関数は、傾きが0であり、切片が0(1次関数の値が、全ての時間において0)となる。
【0037】
一方、火炎センサ101が、パイロットバーナやメインバーナの火炎131から生じる紫外線に加え、点火トランスのスパークも検出(測定)している場合、
図2Bの破線に示すように、発光情報の1次関数が変化する。この中で、特に第2期間においては、火炎センサ101の単位時間毎の放電数の合計が、一定な状態で推移し、判定情報の1次関数の傾きが0となる。したがって、
図2Bの破線で示すように、第2期間における判定情報の1次関数の傾きが0の場合に、不着火状態であると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0038】
[診断例3]
次に、診断例3について
図2Cを参照して説明する。この例では、火炎センサ101が点火トランスのスパークも検出している場合に、判定時における発光情報生成部104が生成する1次関数(発光情報)が、
図2Cの破線で示すように変化している。この例では、まず、第2期間における判定情報の1次関数の傾きが0であるために不着火状態であると判定される。
【0039】
ここで、
図2Cの実線は、点火トランスが正常時の発光情報生成部104が生成する1次関数(発光情報)の変化を示す。不着火状態の場合、火炎センサ101は、点火トランスのスパークのみを測定しているものとすることができる。このため、不着火状態であると判定され、さらに、判定時に破線で示すように、点火トランスが正常時の第2期間における判定情報の1次関数の値(実線)より、判定時の第2期間における判定情報の1次関数の値が小さい場合、点火トランスのスパークが、正常時より減少していることが測定されているものとなる。このため、このような場合、点火トランスが劣化していると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0040】
[診断例4]
次に、診断例4について
図2Dを参照して説明する。この例では、判定時における発光情報生成部104が生成する1次関数(発光情報)が、
図2Dの破線で示すように変化している。この例では、上述した診断例3と同様に、第2期間における判定情報の1次関数の傾きが0であるために不着火状態であると判定される。
【0041】
さらに、
図2Dの破線では、第1期間の途中まで1次関数の値が0の状態となっている。これは、火炎センサ101の放電数が計測されていないことを示し、点火トランスのスパークが発生していないことを示している。正常な状態であれば、第1期間(点火トライアル期間)は、点火トランスがスパークを発生させている。したがって、点火トランスが劣化していると判定する中で、第1期間における判定情報の1次関数の値が0の状態の期間は、点火トランスが動作していないと燃焼装置の状態を判定することができる。
【0042】
[診断例5]
次に、診断例5について
図2Eを参照して説明する。この例では、点火トランスのスパークの発光強度よりパイロットバーナの燃焼時の発光強度が強い場合において、判定時における発光情報生成部104が生成する1次関数(発光情報)が、
図2Eの破線で示すように変化している。
【0043】
点火トライアルの第1期間において、1次関数(発光情報)の傾きが、途中(t0)から大きくなっている場合、着火遅れが発生しているものと考えることができる。着火遅れが発生している場合、着火した後から、火炎センサ101が、パイロットランプの火炎131から生じる紫外線を測定する。この火炎センサ101の測定結果の変化が、1次関数(発光情報)の傾きの変化として現れる。
【0044】
上述したように、着火遅れが発生した場合、1次関数(発光情報)の傾きは、着火までは、実線で示される正常な着火状態を示す1次関数より傾きが小さく、着火した後は、実線で示される正常な着火状態を示す1次関数と同じ傾きとなる。この結果、破線で示される1次関数は、実線で示される1次関数に比較して、到達地点の高さ(放電数を示す縦軸の値)が異なる。これは、火炎センサ101が、点火トランスがスパークも測定している場合も同様である。したがって、第2比較結果が、基準における1次関数の傾きと判定情報の1次関数の傾きとが同じであり、基準における1次関数の値より判定情報の1次関数の値の方が小さい場合、着火遅れが発生していると燃焼装置の状態を判定することができる。
【0045】
ここで、バーナに供給される燃焼ガスの流速が一定の場合、燃焼ガスと空気との混ざり具合(当量比)と、発光強度(発光情報)とは、
図3Aに示すような関係があるとされている(岸本 健、木名瀬 春樹、「炭化水素火炎の紫外線域発光を利用した火炎診断センサの特性についての研究」、株式会社 山武 委託研究、2005年3月15日)。また、これらの関係は、燃焼ガスの流速が変化すると、
図3Bに示すように変わるとされている。
【0046】
このように、バーナに対する燃焼ガスの供給量が変化し、また、空気比が変化すると、発光強度(発光情報)が変化する。言い換えると、発光情報の変化は、燃焼ガスの供給量や空気比が変化していることを示すものとなる。例えば、燃焼ガスの供給量や空気比が、基準からずれている状態は、これらを制御する制御系や管理する機器に不調などがあることを示している。このような状態が、発光情報の変化に現れる。
【0047】
なお、上述した実施の形態に係る発光情報生成部104,判定部105は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)301と主記憶装置302と外部記憶装置303とネットワーク接続装置304となどを備えたコンピュータ機器とすることができる。ネットワーク接続装置304は、ネットワーク305に接続する。コンピュータ機器の主記憶装置302に展開されたプログラムによりCPU301が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した発光情報生成部104および判定部105の機能が実現される。
【0048】
以上に説明したように、本発明によれば、単位時間毎の放電数の合計を総測定時間で除する式で示される1次関数を発光情報とし、この発光情報をもとに診断対象の燃焼装置の設定されている点かトライアルの期間の状態を判定するので、バーナの火炎の状態から、点火トライアル期間に燃焼装置に発生している異常が特定できるなど、燃焼装置の状態を把握できるようになる。
【0049】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0050】
101…火炎センサ、102…印加電圧生成部、103…放電数測定部、104…発光情報生成部、105…判定部、106…電源、107…表示部、131…火炎。