(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106781
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】プラント計装装置およびそれを備えた設備劣化監視システムとプラント保全最適化システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230726BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20230726BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20230726BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 G
G21C17/00 100
F01D17/08 A
F01D25/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007714
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】田村 明紀
【テーマコード(参考)】
2G075
3C223
3G071
【Fターム(参考)】
2G075BA03
2G075CA22
2G075DA10
2G075GA21
3C223AA02
3C223AA03
3C223BA03
3C223BB17
3C223CC02
3C223DD03
3C223EA04
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB03
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF05
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3G071AA01
3G071AB01
3G071BA25
3G071EA02
3G071FA03
3G071FA05
3G071GA02
3G071JA02
3G071JA03
(57)【要約】
【課題】適用範囲の広い高精度のプラント計装装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の発電プラントで用いられるプラントの設備または計器の状態を計測するプラント計装装置1は、プラントに設置された計器の実測値を計測変数の計測値として入力する計測値入力部21と、プラントに仮想設置された仮想計器の計測情報を仮想変数として設定する仮想変数設定部22と、計測変数または仮想変数に関する保存則または収支則を制約条件として設定する制約条件設定部23と、計測変数11と仮想変数12と制約条件13とから、計測変数と仮想変数の推定真値を、計測変数と仮想変数との偏差が最小となるように計測変数の不確かさを重みとした最小二乗法によって算出する真値推定部10と、を備えるようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントで用いられるプラントの設備または計器の状態を求めるプラント計装装置であって、
前記プラントに設置された計器の実測値を計測変数の計測値として入力する計測値入力部と、
前記プラントに仮想設置された仮想計器の計測情報を仮想変数として設定する仮想変数設定部と、
前記計測変数または前記仮想変数に関する制約条件を設定する制約条件設定部と、
前記計測変数と前記仮想変数と前記制約条件とから、前記計測変数と前記仮想変数の推定真値を、前記計測変数と前記仮想変数の計測値との偏差が最小となるように前記計測変数の不確かさを重みとした最小二乗法によって算出する真値推定部と、
を備えたことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント計装装置において、
前記仮想変数設定部は、前記仮想変数にタービン抽気管の流量を設定し、
プラントの熱バランスを解析して前記仮想変数の計測値を求めるプラント熱バランス計算部
を備えたことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラント計装装置において、
前記計測変数に係るタービン内の圧力特性、配管・機器の圧損計算式、または加減弁の開度に伴う圧損計算式等の圧力モデルを制約条件に設定するか、または、前記計測変数に係るタービン内の圧力特性、配管・機器の圧損計算式、加減弁の開度に伴う圧損計算式等の圧力モデルを前記計測値入力部が入力した計器の計測値により解析して、その値を新たな前記計測変数の計測値として算出する圧力バランスモデル設定部
を備えたことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラント計装装置において、
プラントの正常運転データの計測値を基に求めた計器の計測変数の関係式により示される統計モデルを設定し、前記統計モデルの関係式を制約条件に設定するか、または、前記統計モデルにより計測変数に対応する値を算出し、これを新たな前記計測変数の計測値とする統計モデル設定部
を備えたことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラント計装装置において、
前記統計モデル設定部は、前記計測変数または仮想変数の推定真値を前記統計モデルに取り込む
ことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラント計装装置において、
プラント挙動を模擬する解析シミュレータを設定し、前記解析シミュレータの計算式を制約条件に設定するか、または、前記解析シミュレータにより前記計測値入力部が入力した計器の計測値に基づいてシミュレーションして、計測変数の値を求め、これを新たな前記計測変数の計測値とするシミュレータ設定部
を備えたことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプラント計装装置において、
前記シミュレータ設定部は、前記計測変数または仮想変数の推定真値を前記解析シミュレータに取り込む
ことを特徴とするプラント計装装置。
【請求項8】
前記仮想変数をプラント設備の想定された箇所の機器設備の劣化状態を示す想定劣化変数とする請求項1に記載のプラント計装装置と、
前記プラント計装装置が算出した想定劣化変数の推定真値が閾値以上であるか判定し、推定真値が閾値以上の場合に前記想定劣化変数に対応する機器設備に劣化が生じていると判断する機器劣化判断装置と、
を備えたことを特徴とする設備劣化監視システム。
【請求項9】
前記仮想変数をプラント設備の想定された箇所の機器設備の劣化状態を示す想定劣化変数とすると共に、前記計測変数の推定真値と前記計測値入力部が入力した計器の計測値との偏差をペナルティ値として算出するペナルティ値算出部をさらに備える請求項1に記載のプラント計装装置と、
前記プラント計装装置が算出した想定劣化変数の推定真値と前記ペナルティ値とから計器のドリフトを判断する機器劣化・計器ドリフト判断装置と、
を備えたことを特徴とする設備劣化監視システム。
【請求項10】
前記仮想変数をプラント設備の想定された箇所の機器設備の劣化状態を示す想定劣化変数とすると共に、前記計測変数の推定真値と前記計測値入力部が入力した計器の計測値との偏差をペナルティ値として算出するペナルティ値算出部をさらに備える請求項1に記載のプラント計装装置と、
前記プラント計装装置が算出した想定劣化変数の推定真値と前記ペナルティ値とから機器の劣化、計器のドリフトを判断する機器劣化・計器ドリフト判断装置と、
機器劣化・計器ドリフト判断装置の出力とペナルティ値とから保全物量の最適化を行う保全物量最適化装置と、
を備えたことを特徴とするプラント保全最適化システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データリコンシリエーション技術を用いたプラント計装装置およびそれを備えた設備劣化監視システムとプラント保全最適化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントで用いられるプラント設備・計器は、時間経過とともに劣化する。例えば、弁シートリークが発生したり、熱交換器の伝熱性能が伝熱管汚れによって低下したり、流量計のフローノズル表面への錆の付着によって流量計の指示値がドリフトする等の劣化が発生する。このようなプラント設備・機器の劣化は、火力・原子力発電の発電効率を低下させる要因となる。
【0003】
運転中に発電効率の低下が起こった際、その要因であるプラント設備・計器の劣化が蒸気リークなのか、機器の劣化なのか、計器ドリフトなのかを、プラント運転中のパラメータから特定する必要がある。これにより発電効率の低下の要因を特定し、適切な保全を行うことが、火力・原子力発電における発電効率を高く維持するために重要である。
【0004】
このため、従来から、プラント設備・計器の劣化要因を特定する技術が種々考案されている。例えば、特許文献1には、独自の真値推定モデルを用いて、プラントの各検出器信号の実測値に基づき真値を推定する。そして、各推定真値を精度に関するデータから総合評価する推定真値統合手段と、系として整合性の取れる推定真値を算出する整合性向上手段であるデータリコンシリエーション技術を用いて、最も確からしい推定真値を求めることにより、計器の推定ドリフト量を算出して、性能低下要因を特定することが可能となること、また、機器の経年変化・性能劣化の評価を行うことが示されている。
【0005】
データリコンシリエーション技術を用いることで、プラント運転中の計測データのみを用いてプラント設備・計器の劣化を推定する場合に比べ、より効率的で、信頼性の高い分析が可能となる。これにより、プラント設備・計器の適正な監視、メンテナンス等が可能となり、プラントの発電ロスを抑止することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術によれば、プラントの各検出器信号の実測値に基づいて、機器の経年変化・性能劣化の評価を行うことができる。しかし、検出器信号の実測値に基づいて発電ロスとなる弁シートリークを検知する方法が定まっていないこと、高精度データリコンシリエーション評価を行うためのベースライン手法が定まっていないこと、検出器に冗長性が無い場合にはデータリコンシリエーション評価が行えないこと、など、特許文献1の技術を適用できない問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、適用範囲の広い高精度のプラント計装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、発電プラントで用いられるプラントの設備または計器の状態を計測するプラント計装装置は、前記プラントに設置された計器の実測値を計測変数の計測値として入力する計測値入力部と、前記プラントに仮想設置された仮想計器の計測情報を仮想変数として設定する仮想変数設定部と、前記計測変数または前記仮想変数に関する保存則または収支則を制約条件として設定する制約条件設定部と、前記計測変数と前記仮想変数と前記制約条件とから、前記計測変数と前記仮想変数の推定真値を、前記計測変数と前記仮想変数との偏差が最小となるように前記計測変数の不確かさを重みとした最小二乗法によって算出する真値推定部と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適用範囲の広い高精度のプラント計装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】DR技術の適用前の具体的な例を示す図である。
【
図1B】DR技術の適用後の具体的な例を示す図である。
【
図2】プラント計装装置を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【
図3】原子炉プラントの2次冷却系の模式図である。
【
図4】プラント計装装置を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【
図5】プラント計装装置を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【
図6】プラント計装装置を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【
図7】プラント計装装置を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【
図8】プラント計装装置を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【
図9】プラント保全最適化システムの動作を説明する図である。
【
図10】プラント計装装置を備えたプラント保全最適化システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、実施形態のプラント計装装置で使用するデータリコンシリエーション技術(DR技術と記す)について説明する。
【0013】
DR技術は、冗長性がある、つまり同一のパラメータを検知するために複数設置されている既設センサの情報を用いて計器の不確かさを低減し、計器間で保存則を満足させることで、信頼性の高い真値を推定する真値推定手法である。
【0014】
詳しくは、DR技術は、プラント内の各計器をi、各計器の計測値(実測値)をxi、推定真値をyi、各計測値の不確かさをσi、目的関数をJ(yi)、制約条件をf(yi)としたときに、数式1の2式の連立方程式の解となる最良のプロセスの推定真値yiを、計測値xiと推定真値yiの偏差が最小になるように計測値の不確かさを重みとした最小二乗法によって算出する。
【0015】
【0016】
図1Aと
図1Bは、DR技術の適用前後の具体的な例を示す図である。なお、
図1Aと
図1Bの(t/h)は、質量流量(トン/時)を示す。
【0017】
図1Aに示すDR技術の適用前の計器A、B、Cの流量計測値は、容器の入口側、出口側で一致していない。これは、容器からリークが起こっていない場合、それぞれの計器が計測誤差を有しているため生じているものである。
【0018】
図1Aの計器A、B、Cの計器誤差と計測値xiに基づいて、DR技術を適用すると、計器A、B、Cの設置箇所の流量の推定真値yi、推定誤差範囲σi (不確かさ)を求めることができる。
図1Bに示すように、流量の推定真値yiは、容器の出入口側で流量が一致しており、また各計器A、B、Cの計測誤差も低減される。
【0019】
実施形態のプラント計装装置は、DR技術が計器の冗長性、つまり同一のパラメータを検知するために複数設置されている既設計器の情報を使用し、計器間の保存則を満足させることで、計器の推定真値yiを算出できる原理に着目し、蒸気リーク等の検出できない情報またはプラント想定劣化に係る計測値を仮想変数としてDR技術に取り込むと共に、仮想変数の保存則または収支則を拘束条件としてDR技術に取り込み、真値を推定する。
【0020】
また、実施形態のプラント計装装置は、DR技術の仮想変数の計測値にプラント熱バランス計算のアウトプットを用い、高精度評価のベースラインとする。
【0021】
さらに、実施形態のプラント計装装置は、プラントのタービン内圧力特性、配管・機器の圧損等の圧力バランス計算、過去の正常な運転データを基に求まった計器間の関係性を組込んだモデル等の統計モデル、プラント挙動を模擬するシミュレータの内部計算式を制約条件としてDR技術に適用、もしくは、これらのアウトプットを計測値xiとしてDR技術に適用することで冗長性を増加して、DR技術の適用範囲を向上する。
以後、実施形態のプラント計装装置の構成をより詳細に説明する。
【実施例0022】
図2は、実施形態のプラント計装装置1を備えた設備劣化監視システムの構成図である。
【0023】
図2の設備劣化監視システムは、火力・原子力発電プラントの運転管理に適用され、プラント内の各計器信号に基づく計測変数と、弁シートリーク量、熱交換チューブリーク量、熱交換器の伝熱性能低下量、熱交換器チューブリーク量、ポンプの性能低下量等を仮想変数(以下、想定劣化変数と呼ぶ)としてDR技術に適用し、DR技術で推定した想定劣化変数の値によりプラント機器の設備劣化を判定する。
【0024】
ここで、実施例1における想定劣化変数(仮想変数)についてより詳細に説明する。
想定劣化変数は、実際には計器が設営されていない、プラントの仮想計器で測定される計測値で、設備の劣化状態を想定したDR技術の仮想変数である。例えば、発電プラント内各箇所の弁シートリーク量、熱交換器の伝熱性能低下量、熱交換器チューブリーク量、ポンプ揚程の低下量等を、想定されるプラント機器の劣化の種類に応じた定量的な仮想変数とする。
【0025】
プラント計装装置1は、プラントの各計器の実測値に加えて、予めプラント内の劣化が起こりうると想定される箇所に仮想計器の計測値として想定劣化変数を設定し、DR技術を適用して、想定劣化変数の真値を推定する。そして、機器劣化判断装置31は、プラント計装装置1が推定した想定劣化変数の変動から機器設備の劣化を判断する。また、プラント計装装置1は、計器のドリフト量を想定劣化変数としてもよい。さらに、加熱器の伝熱性能であれば、非加熱側流体の出口側温度の低下分もしくは加熱側流体のドレン温度の上昇分等を、定量的な想定劣化変数としてもよい。
【0026】
具体例を、
図3の原子炉プラントの2次冷却系の模式図により説明する。
図3の2次冷却系では、原子炉からタービンまでの蒸気の流路における蒸気のリーク量を想定劣化変数X1 と定義し、復水器で凝縮された冷却水の給水ポンプの揚程低下分に相当する流量を想定劣化変数X2 と定義し、熱交換器の伝熱性能低下量に相当する流量を想定劣化変数X3 と定義する。
【0027】
想定劣化変数X1 、X2 、X3 は、健全状態であれば、全体の保存則計算にDR技術を適用した場合に、想定劣化変数X1 =0、X2 =0、X3 =0 (t/h)となる。発電量が低下した場合に、想定劣化変数X1 =20、X2 =0、X3 =0 (t/h)の結果であれば、想定劣化変数X1 を設定した原子炉からタービンまでの流路において20(t/h)の蒸気リークが発生し、発電量の低下が生じたと推定できる。
【0028】
図2に戻り、設備劣化監視システムの構成を説明する。
設備劣化監視システムは、プラント計器の情報に基づいて想定劣化変数を算出するプラント計装装置1と、想定劣化変数から機器の劣化を判断する機器劣化判断装置31と、から構成する。
【0029】
プラント計装装置1は、計測値入力部21と仮想変数設定部22と制約条件設定部23と真値推定部10とから構成する。
【0030】
計測値入力部21は、プラントの各計器の実測値を取得し、計測変数の計測値として真値推定部10に通知する。
【0031】
仮想変数設定部22は、真値推定部10に組み込む仮想変数(想定劣化変数)を設定する。
【0032】
制約条件設定部23は、真値推定部10で推定真値を算出する際の、変数(計測変数と仮想変数)の保存則または収支則をDR技術における制約条件として設定する。
【0033】
真値推定部10は、計測変数11と仮想変数12と制約条件13との情報の記憶部と、DR処理部14とから構成する。
【0034】
計測変数11は、計測値入力部21から通知されたプラントの各計器の実測値をDR処理部14における処理の計測値として記憶すると共に、DR処理部14で算出した推定真値を示す。
【0035】
仮想変数12は、仮想変数設定部22により設定され、DR処理部14における仮想変数の仮想の計測値を記憶すると共に、DR処理部14で算出した推定真値を示す。
【0036】
制約条件13は、制約条件設定部23により設定されたDR技術における制約条件を記憶する。
【0037】
DR処理部14は、上記の数式1に従って、計測変数11と仮想変数12の推定真値yiを算出する処理部である。なお、DR処理部14は、プラントの各計器の精度を不確かさσiとして設定する。
【0038】
具体的には、プラント計装装置1は、演算処理を行うCPUとメモリと通信部と操作部と表示部と不揮発性記憶媒体とから成るコンピュータが、不揮発性記憶媒体に記憶するプログラムをCPUが実行することにより、DR処理部14と計測値入力部21と仮想変数設定部22と制約条件設定部23として機能し、構成する。計測変数11と仮想変数12と制約条件13は、メモリに構成する。
【0039】
機器劣化判断装置31は、プラント計装装置1において仮想変数の推定真値として算出した想定劣化変数X1 、X2 、X3 が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。閾値以上の想定劣化変数X1 、X2 、X3 については、想定された箇所の機器設備に劣化が生じていると判断する。
【0040】
以上により、実施形態の設備劣化監視システムは、実際に計器が設営されていない箇所の劣化を、プラント計装装置1により推定した想定劣化変数により把握することができる。
ペナルティ値算出部15は、プラントの各計器毎に、計測値入力部21が取得した計器の計測値(実測値xi )と、DR処理部14で推定した当該計器の計測値の推定真値yi とから、数式2で定めるペナルティ値を算出する。ここで、不確かさσi は、計器精度もしくは実測値のばらつきから定める。
ペナルティ値 = {(yi -xi)/σi }^2 …数式2
ペナルティ値は、計器の測定値(実測値)と推定真値の偏差の程度を示す。そのため、発電量または対象計器周辺の機器が健全であるのにも関わらず、ペナルティ値が大きくなる、すなわち確からしい推定真値に対する対象計器の実測値の偏差が大きくなることは、計器ドリフトが発生している可能性が高いことを示す。
機器劣化・計器ドリフト判断装置32は、プラント計装装置1の想定劣化変数が変化した場合は機器の劣化を検知・判断し、ペナルティ値が変動した場合には計器のドリフトを検知・判断する。
これにより、設備劣化監視システムは、プラントの劣化状態を詳細に把握することができる。