(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106790
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】船舶管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20230726BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007725
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】中野 翔
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】船舶の貸出事業者の負担を軽減する。
【解決手段】船舶管理システム5は、船舶1と、サーバ8と、操船者が有するスマートフォン6と、を備え、船舶1の出港時及び帰港時の少なくともいずれかにおいて、スマートフォン6は、サーバ8を経由して船舶1の状態を示す出港時計測結果や帰港時計測結果を受け取り、さらに、受け取った出港時計測結果や帰港時計測結果に基づいて出港時チェックリスト27や帰港時チェックリスト38を表示する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶と、情報処理装置と、操船者が有する携帯端末と、を備える船舶管理システムであって、
前記船舶の出港時及び帰港時の少なくともいずれかにおいて、前記携帯端末は、前記情報処理装置を経由して前記船舶の状態に関する情報を受け取り、さらに、前記受け取った船舶の状態に関する情報を表示する、船舶管理システム。
【請求項2】
前記船舶の帰港時、前記携帯端末は、前記船舶の状態に関する情報を帰港時チェックリストとして表示する、請求項1に記載の船舶管理システム。
【請求項3】
前記携帯端末は前記帰港時チェックリストの確認欄を表示し、前記確認欄への入力に応じて、前記船舶の動力源、船室及びストレージ4cの少なくとも1つがロックされる、請求項2に記載の船舶管理システム。
【請求項4】
前記帰港時チェックリストは、前記船舶に対する接触の有無、前記船舶の船体に残存するビルジの量、及び前記船舶の動力源の異常の有無の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の船舶管理システム。
【請求項5】
前記船舶に対する接触は、前記船体に対する接触、前記船舶のプロペラに対する接触、及び前記船舶の舵に対する接触の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の船舶管理システム。
【請求項6】
前記船体に対する接触が有りの場合、前記携帯端末は前記船体の撮影を促す、請求項5に記載の船舶管理システム。
【請求項7】
前記船体に対する接触が有りの場合、前記船体の撮影が行われないと、前記携帯端末は、前記帰港時チェックリストの確認欄を表示しない、請求項6に記載の船舶管理システム。
【請求項8】
前記船体に対する接触の有無は、前記船体に作用した重力加速度の履歴に基づいて判定され、前記船舶のプロペラに対する接触の有無は、前記動力源であるエンジンの回転数の履歴及び前記エンジンの吸気量の履歴の少なくとも1つに基づいて判定される、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の船舶管理システム。
【請求項9】
前記船体に対する接触が有りの場合、前記携帯端末は、前記確認欄として操船者向けの確認欄及び前記船舶の貸出事業者向けの確認欄を表示する、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の船舶管理システム。
【請求項10】
前記情報処理装置は、前記船舶の帰港時の前記船舶の状態に関する情報を記憶する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の船舶管理システム。
【請求項11】
前記情報処理装置は、前記船舶の貸出時間及び前記船舶の帰港時の前記船舶の状態に基づいて貸出料を算出し、前記携帯端末は、前記算出された貸出料を表示する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の船舶管理システム。
【請求項12】
前記船舶の出港時、前記船舶の船室及びストレージ4cの少なくとも1つがアンロックされると、前記携帯端末は、前記船舶の状態に関する情報を出港時チェックリストとして表示する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の船舶管理システム。
【請求項13】
前記携帯端末は前記出港時チェックリストの確認欄を表示し、前記確認欄への入力に応じて、前記船舶の動力源がアンロックされる、請求項12に記載の船舶管理システム。
【請求項14】
前記船舶の船体に損傷がある場合、前記携帯端末は、前記出港時チェックリストとともに前記損傷に関する情報を表示する、請求項12又は13に記載の船舶管理システム。
【請求項15】
船舶と、操船者が有する携帯端末と、を備える船舶管理システムであって、
前記船舶の出港時及び帰港時の少なくともいずれかにおいて、前記携帯端末は、前記船舶から前記船舶の状態に関する情報を受け取り、さらに、前記受け取った船舶の状態に関する情報を表示する、船舶管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸出事業に用いられる船舶を管理する船舶管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マリンレジャーの普及促進を目的として、船舶、例えば、プレジャーボートの貸出事業が出願人によって展開されている(例えば、非特許文献1参照)。このような貸出事業では、原則として、船舶の使用時間に応じて貸出料が課金されるが、当該船舶の貸し出し中に発生した船体の損傷や動力源、例えば、エンジンの故障の修理代も貸出料に上乗せされる。したがって、船舶の貸出事業において、出港時や帰港時の船舶の状態確認は重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“マリンクラブ・シースタイル”、[online]、ヤマハ発動機株式会社、[令和4年1月12日検索]、インターネット<URL: https://sea-style.yamaha-motor.co.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出港時や帰港時の船舶の状態確認には、貸出事業者、例えば、マリーナのスタッフによる船舶の状態の目視確認が必要である。また、当該スタッフは、目視確認の結果を紙面上のチェックリストに落とし込み、さらに、船舶を借り出した操船者に対して船舶の状態を説明する必要がある。すなわち、出港時や帰港時の船舶の状態の確認には、貸出事業者のスタッフが直接関与する必要があるため、貸出事業者の負担の軽減については改善の余地がある。
【0005】
本発明は、船舶の貸出事業者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様による船舶管理システムは、船舶と、情報処理装置と、操船者が有する携帯端末と、を備える船舶管理システムであって、前記船舶の出港時及び帰港時の少なくともいずれかにおいて、前記携帯端末は、前記情報処理装置を経由して前記船舶の状態に関する情報を受け取り、さらに、前記受け取った船舶の状態に関する情報を表示する。
【0007】
また、この発明の一態様による船舶管理システムは、船舶と、操船者が有する携帯端末と、を備える船舶管理システムであって、前記船舶の出港時及び帰港時の少なくともいずれかにおいて、前記携帯端末は、前記船舶から前記船舶の状態に関する情報を受け取り、さらに、前記受け取った船舶の状態に関する情報を表示する。
【0008】
この構成によれば、船舶の出港時及び帰港時の少なくともいずれかにおいて、携帯端末が、船舶の状態に関する情報を受け取り、さらに、受け取った船舶の状態に関する情報を表示するため、操船者や当該スタッフは携帯端末を確認するだけで船舶の状態を把握することができる。これにより、船舶の貸出事業者のスタッフによる船舶の状態の目視確認を行う必要を無くすことができ、船舶の貸出事業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、船舶の貸出事業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る船舶管理システムによって管理される船舶の斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る船舶管理システムの構成を説明するための図である。
【
図3】
図1の船舶が備える各構成要素を概略的に説明するためのブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る船舶管理システムが実行する出港時処理を示すフローチャートである。
【
図5】出港時においてスマートフォンに表示される出港時チェックリストの一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態に係る船舶管理システムが実行する帰港時処理を示すフローチャートである。
【
図7】帰港時においてスマートフォンに表示される帰港時チェックリストの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る船舶管理システムによって管理される船舶の斜視図である。この船舶1は、船体2と、船体2に搭載される船舶推進装置としての複数、例えば、2基の船外機3とを備えている。なお、船舶1が備える船外機3の数は2基に限られず、1基又は3基以上であってもよい。また、2基の船外機3は、船体2の船尾に並べて取り付けられるが、各船外機3は動力源として内燃機関であるエンジン23を有し、対応するエンジン23の駆動力によって回転されるプロペラ(不図示)によって推力を得る。なお、各船外機3は、動力源として電気モータを有してもよく、若しくは、動力源としてエンジン及び電気モータの両方を有してもよい。また、船舶1において、船体2の前部である船首側には、操船席4aや船室(キャビン)4bが設けられ、船体2の中央部や後部である船尾側には、格納庫であるストレージ4cが設けられる。
【0012】
図2は、本実施の形態に係る船舶管理システムの構成を説明するための図である。
図2において、船舶管理システム5は、船舶1と、船舶1を借用する操船者が有する携帯端末、例えば、スマートフォン6と、公衆通信網、例えば、インターネット7と、サーバ8(情報処理装置)と、を備え、さらに、船舶1は通信端末であるセルラーデータ通信モジュール9(DCM:Data Communication Module)を有する。
【0013】
本発明の実施の形態では、サーバ8に船舶レンタルサービスの予約管理アプリケーションがインストールされ、スマートフォン6に船舶レンタルサービスの提供を受けるためのアプリケーション(以下、「レンタルアプリケーション」という。)がインストールされている。操船者は、事前に、予約管理アプリケーションにおいて、借り出す船舶1の種類や日時を入力する。また、操船者は、予約した船舶1を借り出す前に、予約管理アプリケーションにおいて出港手続を行うことができる。
【0014】
DCM9は、所定の通信規格に準拠した無線通信を行うことが可能なモジュールであり、例えば、国際電気通信連合(ITU)が定める「International Mobile Telecommunication(IMT)‐2000」規格(いわゆる、3G規格)に準拠した通信、LTE(Long Term Evolution)に関する規格に準拠した通信、または、「IMT-Advanced」規格(いわゆる、4G規格に準拠した通信を行うことができる。なお、DCM90は、上記した通信規格以外の通信規格に準拠する通信を行う通信モジュールであってもよい。また、スマートフォン6やサーバ8も、DCM9と同様に、3G規格に準拠した通信、LTEに関する規格に準拠した通信、4G規格に準拠した通信やその他の通信規格に準拠する通信を行う。本実施の形態では、スマートフォン6、サーバ8及びDCM9は、インターネット7を介し、上述した通信規格に準拠する無線通信によって互いにコマンドやデータの送受信を行う。
【0015】
なお、操船者が有する携帯端末はスマートフォン6に限られず、携帯可能であり、ディスプレイと入力を受け付ける入力部を有する情報端末であればよく、例えば、ノートPCやタブレットPCも該当する。
【0016】
図3は、船舶1が備える各構成要素を概略的に説明するためのブロック図である。
図3において、船舶1は、船体2において、BCU(Boat Control Unit)10、MFD(Multi Function Display)11、リモコン12、ハンドル13、ロック機構14、ビルジ水位センサ15、船速センサ16、Gセンサ17、GPS18、燃料残量センサ19、オイル残業センサ20及びバッテリ電圧センサ21を有し、船外機3において、ECU(Engine Control Unit)22、エンジン23、回転数センサ24及び吸気センサ25を有する。
【0017】
BCU10は、船舶1のメインコントローラであり、各種のプログラムに従って船舶1の各構成要素の動作を制御する。MFD11は、各種情報を表示するディスプレイであり、操船者の入力を受け付けるタッチパネルとしても機能する。リモコン12は、各船外機3に対応するレバー(不図示)を有し、操船者は、各レバーを操作することによって対応する船外機3が発生する推力の方向を前進方向と後進方向とに切り換えると共に、対応する船外機3の出力を調整して船速を調整することができる。ハンドル13は、操船者が船舶1の針路を定めるための装置であり、操船者は、ハンドル13を左右に回転操作することによって舵として機能する各船外機3の向きを変更させ、推力の作用方向を変更することにより、船舶1の進路を左方向又は右方向に変更することができる。
【0018】
ロック機構14は、船舶1のキャビン4bやストレージ4cを解錠(アンロック)し、又は施錠(ロック)する。ビルジ水位センサ15は船体2の船底に溜まった水(ビルジ)の量を計測する。船速センサ16は船舶1の船速を計測する。Gセンサ17は、船体2に作用する重力加速度を計測する。GPS18は船舶1の地球座標系における位置を計測する。燃料残量センサ19は船体2に備えられる燃料タンク(不図示)に残存する燃料の量を計測する。オイル残業センサ20は、船外機3に備えられるエンジンオイルタンク(不図示)に残っているエンジンオイルの量を計測する。バッテリ電圧センサ21は、船体2に備えられるバッテリ(不図示)の電圧を計測する。
【0019】
ECU22は、エンジン23のコントローラであり、BCU10が発する制御信号に従ってエンジン23を制御する。回転数センサ24はエンジン23の回転数を計測する。吸気センサ25はエンジン23の吸気量を計測する。
【0020】
船舶1において、上述した各構成要素9~25は、バスに複数のノードが個別に接続されるネットワークであるCAN(Control Area Network)26によって互いに接続される。CAN26では、構成要素15~21,24,25の計測結果がBCU10へ送信される。また、BCU10は送信された計測結果をDCM9によってインターネット7を経由してサーバ8へ送信する。なお、船舶1の各構成要素はCANではなく、各構成要素を互いに直接、若しくはネットワーク機器を介して接続するイーサネット(登録商標)等のLAN(Local Area Network)によって接続してもよい。
【0021】
図4は、本実施の形態に係る船舶管理システムが実行する出港時処理を示すフローチャートである。本処理は、船舶1の貸出事業者であるマリーナの運営者から操船者が船舶1を借り出す際に船舶管理システム5において実行される。また、本処理は、船舶1の借り出し予約時刻よりも所定の時間ほど前、例えば、借り出し予約時刻の1時間前に実行が開始される。
【0022】
まず、サーバ8は、マリーナの受付又は予約管理アプリケーションにおいて、操船者による出港手続が完了しているか否かを判定する(ステップS401)。出港手続が完了していない場合は、出港手続を促進するメッセージの表示や発音をスマートフォン6に行わせ(ステップS402)、ステップS401に戻る。出港手続が完了している場合、サーバ8はスマートキーとして機能させるためのコードをスマートフォン6へ送信し、さらに、スマートフォン6のレンタルアプリケーションにおいて、スマートキーを用いたキャビン4bやストレージ4cのアンロックの指示が行われたか否かを判定する(ステップS403)。
【0023】
なお、本処理では、出港手続が完了していれば、スマートキーがスマートフォン6へ送信されてアンロックの指示が可能な状態となるが、スマートキーをスマートフォン6へ送信するための条件として、出港手続の完了だけでなく、出港条件(風速や気候に関する条件)を満たしていることや操船者が船舶1から所定の距離、例えば、10m以内に近付いたことが加えられてもよい。
【0024】
ステップS403の判定の結果、アンロックの指示が行われていない場合はステップS403へ戻り、アンロックの指示の入力を待機し、アンロックの指示が行われている場合は、サーバ8からBCU10へキャビン4bやストレージ4cのアンロックを指示するコマンドが送信され、当該コマンドを受信したBCU10は、ロック機構14によってキャビン4bやストレージ4cのアンロックを行う(ステップS404)。
【0025】
次いで、キャビン4bやストレージ4cの少なくとも1つのアンロックを契機に、船舶1の状態が確認される(ステップS405)。具体的には、サーバ8からDCM9へ構成要素15~21の計測結果やECU22が記憶するエンジン23の異常履歴(以下、「出港時計測結果」という。)(船舶の状態に関する情報)の送信を指示するコマンドが送信され、当該コマンドを受信したDCM9は、出港時計測結果を収集してサーバ8へ送信する。なお、BCU10やECU22が出港時計測結果を収集し、DCM9を介して収集した出港時計測結果をサーバ8へ送信してもよい。さらに、サーバ8は、送信された出港時計測結果を記憶するとともにスマートフォン6へ送信する。また、このとき、サーバ8は、当該船舶1における損傷箇所を撮影した画像(以下、「損傷画像」という。)を記憶していれば、当該損傷画像もスマートフォン6へ送信する。
【0026】
次いで、スマートフォン6は、送信された出港時計測結果に基づき、レンタルアプリケーションにおいて、船舶1の状態を示す出港時チェックリスト27を表示する(ステップS406)。
【0027】
図5は、出港時においてスマートフォン6に表示される出港時チェックリスト27の一例を示す図である。
図5において、出港時チェックリスト27は、エンジンオイルの残量が十分か否かを示す項目28、燃料の残量が満量(FULL)か否かを示す項目29、バッテリの電圧が十分か否かを示す項目30、ビルジの水位が十分に低いか否かを示す項目31、キャビン4bやストレージ4cがアンロックされているか否かを示す項目32、エンジン23の異常履歴が無いか否かを示す項目33及び船体2に損傷箇所が無いか否かを示す項目34を有する。なお、出港時チェックリスト27はこれらの項目28~34の全てを含む必要は無く、最低、項目28~34の少なくとも1つを含めばよい。
【0028】
各項目28~34には、該当する項目を満たしているか否かを示すYES・NO欄が設けられる。該当する項目が満たされている場合はYES・NO欄の「NO」が網掛けで表示され、該当する項目が満たされていない場合はYES・NO欄の「YES」が網掛けで表示される。また、船体2に損傷箇所がある場合、項目34のYES・NO欄の「YES」が網掛けで表示されるだけでなく、損傷箇所表示枠35において、サーバ8から送信された損傷画像が表示される。さらに、出港時チェックリスト27は、スタイラス等で操船者のサインを入力可能な署名欄36(確認欄)を有する。
【0029】
出港時チェックリスト27では、各項目のうち1つでも満たされていない場合、署名欄36が入力不可能な状態とされ、全ての項目が満たされている場合(全ての項目のYES・NO欄の「NO」が網掛けで表示されている場合)、署名欄36が入力可能状態とされる。但し、船体2に損傷箇所が無いか否かを示す項目34だけが満たされていない場合、損傷箇所表示枠35に表示された損傷画像を確認し、当該損傷は船舶1の航行に支障を来さないと判断した操船者が、OKボタン37をタッチすると、署名欄36が入力可能状態とされる。
【0030】
次いで、
図4に戻り、サーバ8は、出港時チェックリスト27の署名欄36にサインが入力されたか否かを判定する(ステップS407)。署名欄36にサインが入力されていない場合、ステップS407に戻り、署名欄36にサインが入力されている場合、サーバ8からBCU10へエンジン23への電源の供給開始(エンジン23のアンロック)とレンタル時間(貸出時間)の計時開始を指示するコマンドが送信され、当該コマンドを受信したBCU10は、ECU22にエンジン23への電源の供給開始を指示するコマンドを送信し、ECU22はエンジン23への電源の供給を開始する。これにより、エンジン23の始動が可能となる。さらに、BCU10は、例えば、内蔵するクロックによってレンタル時間の計時を開始し、その後、本処理を終了する。
【0031】
図6は、本実施の形態に係る船舶管理システムが実行する帰港時処理を示すフローチャートである。本処理は、船舶1がマリーナへ戻り、操船者がマリーナの運営者へ船舶1を返却する際に船舶管理システム5において実行される。
【0032】
まず、サーバ8は、スマートフォン6のレンタルアプリケーションにおいて、船舶1の状態の確認を行うためのチェック指示が入力されたか否かを判定し(ステップS601)、チェック指示が入力されていない場合、ステップS601へ戻り、チェック指示が入力されている場合、サーバ8からDCM9へ構成要素15~21の計測結果やECU22が記憶するエンジン23のオーバーヒート等の異常履歴、エンジン23の吸気量の履歴やエンジン23の回転数の履歴(以下、「帰港時計測結果」という。)(船舶の状態に関する情報)の送信を指示するコマンドが送信され、当該コマンドを受信したDCM9は、帰港時計測結果を収集してサーバ8へ送信する。なお、BCU10やECU22が帰港時計測結果を収集し、DCM9を介して収集した帰港時計測結果をサーバ8へ送信してもよい。さらに、サーバ8は、送信された帰港時計測結果を記憶するとともにスマートフォン6へ送信する。これにより、船舶1の状態が確認され、且つ記憶される(ステップS602)。
【0033】
次いで、スマートフォン6は、送信された帰港時計測結果に基づいて、レンタルアプリケーションにおいて、船舶1の状態を示す帰港時チェックリスト38を表示する(ステップS603)。
【0034】
図7は、帰港時においてスマートフォン6に表示される帰港時チェックリスト38の一例を示す図である。
図7において、帰港時チェックリスト38は、エンジンオイルの残量が十分か否かを示す項目39、燃料の残量が満量か否かを示す項目40、バッテリの電圧が十分か否かを示す項目41、ビルジの水位が十分に低いか否かを示す項目42、エンジンの異常履歴が無いか否かを示す項目43及び船舶1への接触履歴が無いか否かを示す項目44を有する。なお、帰港時チェックリスト38はこれらの項目39~44の全てを含む必要は無く、最低、項目39~44の少なくとも1つを含めばよい。
【0035】
また、出港時チェックリスト27と同様に、各項目39~44には、該当する項目を満たしているか否かを示すYES・NO欄が設けられる。さらに、帰港時チェックリスト38は、スタイラス等でマリーナのスタッフのサインを入力可能な貸し主の署名欄45(確認欄)と、操船者のサインを入力可能な借り主の署名欄46(確認欄)とを有する。
【0036】
船舶管理システム5では、サーバ8が、帰港時計測結果に基づいて船舶1への接触履歴の有無を判定し、船舶1における異物の接触箇所を判定する。例えば、Gセンサ17によって計測された船体2に作用する重力加速度の履歴に急減や急増等の異常値が含まれる場合、船体2へ異物が接触して速度に急変が生じたと考えられるため、船体2へ異物が接触したと判定される。また、回転数センサ24や吸気センサ25によって計測されたエンジン23の回転数の履歴や吸気量の履歴の少なくとも1つに急減や急増等の異常値が含まれる場合、プロペラへ異物が接触してエンジンの回転異常が発生したと考えられるため、プロペラへ異物が接触したと判定される。さらに、GPS18によって計測された船舶1の航行軌跡に急激な進路変更が含まれる場合、船外機3へ異物が接触して船外機3の向きが変わり、急激な進路変更が発生したと考えられるため、船外機3へ異物が接触したと判定される。
【0037】
帰港時チェックリスト38の表示に続き、船体2への異物の接触履歴があるか無いかが判定され(ステップS604)、船体2への異物の接触履歴があると、スマートフォン6は帰港時チェックリスト38において、損傷箇所表示枠47を表示することにより、船体2の撮影によって船体2への異物の接触箇所の画像(以下、「接触箇所画像」という。)の取得を促進する(ステップS605)。なお、損傷箇所表示枠47の表示だけでなく、接触箇所画像の取得を促進するメッセージの表示や発音をスマートフォン6に行わせてもよい。
【0038】
次いで、サーバ8は接触箇所画像が記憶されたか否かを判定する(ステップS606)。サーバ8への接触箇所画像の記憶は、操船者やマリーナのスタッフがスマートフォン6のカメラ等によって接触箇所画像を取得した後、登録ボタン48がタッチされることによって行われる。なお、接触箇所画像が取得された後、キャンセルボタン49がタッチされると、当該接触箇所画像はサーバ8に記憶されない。
【0039】
ステップS606において、接触箇所画像が記憶されていないと判定された場合、ステップS605に戻り、接触箇所画像が記憶されていると判定された場合、ステップS607に進む。
【0040】
ステップS607では、船舶1への接触履歴が無いか否かを示す項目44以外の項目39~43において、満たされていない項目(以下、「エラー項目」という。)が存在するか否かが判定される。項目39~43においてエラー項目が少なくとも1つでも存在する場合(項目39~43の少なくとも1つのYES・NO欄の「YES」が網掛けで表示されている場合)、サーバ8は、通信手段、例えば、タブレットPCによってマリーナのスタッフへエラー項目が存在することを通知する(ステップS608)。ここで、通知を受けたスタッフは、船舶1においてエラー項目に該当する箇所を確認し、必要に応じて対処を施した後、対処を施した旨をタブレットPC等によってサーバ8へ通知する。
【0041】
ステップS608に続く、ステップS609において、サーバ8は、エラー項目に該当する箇所に対処が施された旨が通知されたか否かを判定する(ステップS609)。エラー項目に該当する箇所に対処が施された旨が通知されていない場合、ステップS609に戻り、エラー項目に該当する箇所に対処が施されるのを待機する。一方、エラー項目に該当する箇所に対処が施された旨が通知されている場合、ステップS607に戻る。
【0042】
ステップS607において、項目39~43においてエラー項目が存在しない場合、ステップS610へ進み、貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46のいずれもが入力可能状態とされる。なお、貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46がデフォルトで表示されず、項目39~43においてエラー項目が存在しない場合に、初めて貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46が表示されるように構成されてもよい。
【0043】
次いで、サーバ8は、帰港時チェックリスト38の貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46のいずれにもサインが入力されたか否かを判定する(ステップS611)。貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46の少なくとも一方にサインが入力されていない場合、ステップS611に戻る。一方、貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46の両方にサインが入力されている場合、サーバ8からBCU10へエンジン23への電源の供給終了(エンジン23のロック)、キャビン4bやストレージ4cのロック及びレンタル時間の計時終了を指示するコマンドが送信される。
【0044】
当該コマンドを受信したBCU10は、ECU22にエンジン23への電源の供給終了を指示するコマンドを送信し、ECU22はエンジン23への電源の供給を終了する(ステップS612)。さらに、BCU10は、ロック機構14によってキャビン4bやストレージ4cのロックを行い(ステップS613)、さらに、レンタル時間の計時を終了する(ステップS614)。なお、貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46の両方にサインが入力されていても、エンジン23への電源の供給の終了、キャビン4bのロックやストレージ4cのロックの全てを行う必要はなく、これらの行為の少なくとも1つが実行されればよい。
【0045】
次いで、サーバ8は、計時されたレンタル時間、燃料やエンジンオイルの消費量、さらに、船舶1への接触履歴が存在する場合は、当該接触による船体2等の損傷の修理費用の見積り等に基づいてレンタル費用(貸出料)を計算し、計算されたレンタル費用をスマートフォン6へ送信する。スマートフォン6は、レンタルアプリケーションにおいて、送信されたレンタル費用を表示する(ステップS615)。
【0046】
その後、サーバ8は、レンタルアプリケーションにおいて、操船者による決済指示の入力があったか否かを判定し(ステップS616)、決済指示の入力が無い場合、ステップS616へ戻り、決済指示の入力があった場合、予め定められた方法、例えば、クレジットカード決済でレンタル費用を決済し(ステップS617)、本処理を終了する。
【0047】
なお、
図6の処理では、船体2への異物の接触履歴がある場合、接触箇所画像が取得されないと処理が進まないが、船体2の接触箇所の確認を後日行うこととし、帰港時チェックリスト38において船舶1への接触履歴があることのみをマリーナのスタッフや操船者に喚起するに留め、接触箇所画像が取得されなくても処理を進めてもよい。具体的には、ステップS604~S606を
図6の処理から除去してもよい。
【0048】
また、
図6の処理では、項目39~43においてエラー項目が存在する場合、当該エラー項目に該当する箇所に対処が施されないと処理が進まないが、対処を後日行うこととし、帰港時チェックリスト38ではエラー項目を表示してマリーナのスタッフや操船者に注意を喚起するに留め、エラー項目に該当する箇所に対処が施されなくても処理を進めてもよい。具体的には、ステップS607~S609を
図6の処理から除去してもよい。さらに、レンタル費用の計算や決済を後日行うこととし、ステップS614においてレンタル時間の計時が終了されると、
図6の処理を終了してもよい。
【0049】
本実施の形態によれば、船舶1の出港時や帰港時において、スマートフォン6が、船舶1の状態に関する情報として出港時計測結果や帰港時計測結果を船舶1のBCU10から受け取り、さらに、受け取った出港時計測結果や帰港時計測結果に基づき、レンタルアプリケーションにおいて出港時チェックリスト27や帰港時チェックリスト38を表示する。したがって、操船者や当該スタッフはスマートフォン6を確認するだけで船舶1の状態を把握することができる。これにより、船舶1の貸出事業者のスタッフによる船舶1の状態の目視確認を行う必要を無くすことができ、貸出事業者の負担を軽減することができる。
【0050】
また、貸出事業者の負担を軽減することができるため、貸出事業者において省人化を推進することできるとともに、操船者も船舶1の状態を確認するために目視確認を行う必要が無くなるため、操船者の負担も軽減することができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、出港時計測結果や帰港時計測結果は構成要素15~21の計測によって得られるため、船舶1の状態を把握するために船舶1を陸揚げする必要を無くすことができる。この点においても、貸出事業者の負担を軽減することができる。また、サーバ8が出港時計測結果や帰港時計測結果を記憶するため、船舶1の状態の管理を簡素化することができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0053】
例えば、本実施の形態では、出港時と帰港時のいずれにおいても、スマートフォン6においてチェックリスト(27,38)が表示されたが、出港時は従来通りに紙面上のチェックリストを作成し、帰港時のみ、スマートフォン6へ帰港時チェックリスト38を表示させてもよく、若しくは、帰港時は従来通りに紙面上のチェックリストを作成し、出港時のみ、スマートフォン6へ出港時チェックリスト27を表示させてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、サーバ8が予約管理アプリケーションを実行するとともに、スマートキーとして機能させるためのコードをスマートフォン6へ送信するが、予約管理アプリケーションを実行するサーバと、スマートキーとして機能させるためのコードをスマートフォン6へ送信するサーバとを分けてもよい。これにより、セキュリティレベルを向上することができる。また、スマートフォン6はマリーナが操船者へ貸し出してもよい。
【0055】
出港時チェックリスト27や帰港時チェックリスト38は、出港時計測結果や帰港時計測結果のスマートフォン6への送信に応じて表示されるが、MFD11へ出港時計測結果や帰港時計測結果に対応するQRコード(登録商標)を表示し、操船者がスマートフォン6によってこれらのQRコードを読み取ったことに応じて、出港時チェックリスト27や帰港時チェックリスト38がスマートフォン6に表示されてもよい。
【0056】
また、船舶管理システム5では、サーバ8やインターネット7を介して、船舶1のDCM9とスマートフォン6が通信を行うが、DCM9とスマートフォン6が直接通信を行ってもよい。この場合、DCM9とスマートフォン6は、近距離無線通信、例えば、Wi-FiやBluetooth(登録商標)によって互いに通信を行い、スマートフォン6が
図4の出港時処理や
図6の帰港時処理を実行する。
【0057】
さらに、帰港時チェックリスト38は、貸し主の署名欄45と借り主の署名欄46を有するが、貸し主の署名欄45は、船体2への異物の接触履歴がある場合のみ表示されてスタッフの入力を必要とするように構成されてもよい。
【0058】
なお、本実施の形態では、帰港時チェックリスト38において、マリーナのスタッフと操船者の両者のサインの入力を必要としたが、操船者の入力のみを必要としてもよい。
【0059】
また、船舶管理システム5における船舶1は船外機3を備えるが、船舶管理システム5における船舶の形式に制限はなく、船内外機や船内機を備える船舶であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 船舶、2 船体、3 船外機、4b キャビン、4c ストレージ、6 スマートフォン、8 サーバ、9 DCM、10 BCU、22 ECU、23 エンジン、27 出港時チェックリスト、36,45,46 署名欄、38 帰港時チェックリスト