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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106791
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20230726BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H02K3/04 Z
H02K3/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007729
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 康
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA04
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC04
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD22
5H603CE05
5H603CE13
5H603FA25
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DA21
5H604DB01
5H604PB01
(57)【要約】
【課題】芯線の幅及び厚さの増大を抑えつつ芯線の断面積の増大を図りやすくする。
【解決手段】ステータ40は、車両の交流電動機40に用いられる。ステータ40は、ステータコア41と、ステータコア41に巻き回されるコイル42と、を備える。コイル42は、平角線状の芯線81と、芯線81を覆う被覆部82と、を有する。芯線81の断面の角Rは、0.10mm以上且つ0.27mm未満である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の交流電動機に用いられるステータであって、
ステータコアと、前記ステータコアに巻き回されるコイルと、を備え、
前記コイルは、平角線状の芯線と、前記芯線を覆う被覆部と、を有し、
前記芯線の断面の角Rは、0.10mm以上且つ0.27mm未満であるステータ。
【請求項2】
前記被覆部の誘電率は、1.8以上で且つ3.0以下である請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記被覆部の厚さは、0.10mm以上で且つ0.25mm以下である請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記角Rが0.20mm以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータを含む電動機が開示されている。この電動機は、周方向に配列された複数のスロットを有するステータコアと、スロットに収容されてステータコアに巻装されるステータ巻線と、を備えている。ステータ巻線を構成する導体線(芯線)は、矩形断面の平角線である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-175852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のステータでは、電動機の最大トルクを大きくするためには、ステータ巻線を流れる最大電流を大きくする必要があり、ステータ巻線の芯線の断面積を大きくすることが有効である。しかし、芯線の幅及び厚さを大きくして芯線の断面積を大きくしようとすると、ステータが大型化しやすい。
【0005】
本開示は、芯線の幅及び厚さの増大を抑えつつ芯線の断面積の増大を図りやすくすることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のステータは、
車両用の交流電動機に用いられるステータであって、
ステータコアと、前記ステータコアに巻き回されるコイルと、を備え、
前記コイルは、平角線状の芯線と、前記芯線を覆う被覆部と、を有し、
前記芯線の断面の角Rは、0.10mm以上且つ0.27mm未満である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、芯線の幅及び厚さの増大を抑えつつ芯線の断面積の増大を図りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のステータコアの斜視図である。
図2図2は、スロット内に巻線が配置された状態を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態のステータを含む車載システムを概略的に例示する回路図である。
図4図4(A)は、比較例の巻線の断面図である。図4(B)は、第1実施形態の巻線の断面図である。図4(C)は、比較例のコイルが用いられる交流電動機の最大トルクと回転数の最大値との関係を示したグラフである。図4(D)は、第1実施形態のコイルが用いられる交流電動機の最大トルクと回転数の最大値との関係を示したグラフである。
図5図5(A)は、比較例の巻線の断面図である。図5(B)は、第2実施形態の巻線の断面図である。図5(C)は、比較例のコイルが用いられる交流電動機の最大トルクと回転数の最大値との関係を示したグラフである。図5(D)は、第2実施形態のコイルが用いられる交流電動機の最大トルクと回転数の最大値との関係を示したグラフである。
図6図6(A)は、比較例の巻線の断面図である。図6(B)は、第3実施形態の巻線の断面図である。図6(C)は、比較例のコイルが用いられる交流電動機の最大トルクと回転数の最大値との関係を示したグラフである。図6(D)は、第3実施形態のコイルが用いられる交流電動機の最大トルクと回転数の最大値との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕車両用の交流電動機に用いられるステータであって、
ステータコアと、前記ステータコアに巻き回されるコイルと、を備え、
前記コイルは、平角線状の芯線と、前記芯線を覆う被覆部と、を有し、
前記芯線の断面の角Rは、0.10mm以上且つ0.27mm未満であるステータ。
【0011】
このステータは、従来の構成(例えば角Rが0.50mmの構成)と比較して角Rが小さいため、芯線の幅及び厚さの増大を抑えつつ芯線の断面積を大きくすることができる。なお、芯線の断面とは、芯線の延び方向と直交する方向に芯線を切断した切断面のことである。また、芯線の断面の角Rとは、芯線の断面の角Rに沿う円の半径のことである。
【0012】
〔2〕前記被覆部の誘電率は、1.8以上で且つ3.0以下である〔1〕に記載のステータ。
【0013】
この構成によれば、必要な耐電圧を確保しやすく、高速回転する交流電動機に適用しやすい。また、角Rと被覆部の誘電率とを調整することで、必要なトルクと回転数に適したコイルを設計しやすい。
【0014】
〔3〕前記被覆部の厚さは、0.10mm以上で且つ0.25mm以下である〔1〕又は〔2〕に記載のステータ。
【0015】
この構成によれば、必要なトルク及び必要な耐電圧をバランスよく確保しやすい。また、被覆部の厚さを上記範囲内で0.25mmに近づけることで、耐電圧の上昇を重視することができる。また、被覆部の厚さを上記範囲内で0.10mmに近づけて芯線の幅及び厚さを大きくすることで、最大トルクの上昇を重視することができる。また、角Rと被覆部の厚さとを調整することで、必要なトルクと回転数に適したコイルを設計しやすい。なお、被覆部の厚さとは、被覆部の皮膜厚の厚さのことである。
【0016】
〔4〕前記角Rが0.20mm以下である〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載のステータ。
【0017】
この構成によれば、芯線の断面積の増大をより図りやすい。
【0018】
<第1実施形態>
1.ステータの概要
第1実施形態のステータ40は、車両用の交流電動機4(図3参照)の部品である。交流電動機4は、三相交流電動機である。交流電動機4は、例えば、車両に設けられた車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる駆動用三相モータである。
【0019】
ステータ40は、環状(具体的には円環状)をなしている。以下では、ステータ40の径方向を径方向と称し、ステータ40の軸方向を軸方向と称し、ステータ40の周方向を周方向と称する。ステータ40の内周面よりも径方向内側には、図示しないロータが配置される。ステータ40は、図2に示されるように、ステータコア41と、コイル42と、絶縁部材43と、を備える。
【0020】
ステータコア41は、図1に示されるように、ヨーク部51と、ティース部52と、を有している。ヨーク部51は、環状(具体的には円環状)をなしている。ティース部52は、複数設けられている。ティース部52は、ヨーク部51の内周面に沿って環状に並んで配置されている。各々のティース部52は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各々のティース部52は、ヨーク部51の内周面から径方向内側(径方向のロータが配置される側)に突出している。各々のティース部52は、径方向及び軸方向に沿った壁状をなしている。
【0021】
図1に示すように、隣り合う2つのティース部52によってスロット55が構成されている。スロット55は、ステータコア41を軸方向に貫通している。スロット55は、ステータコア41の軸方向の両面及び径方向の内周面に開口している。スロット55は、複数設けられている。スロット55は、環状に並んで配置されている。
【0022】
コイル42は、スロット55内を通り、ティース部52に巻き回される。
【0023】
絶縁部材43は、例えば絶縁紙である。絶縁部材43は、図2に示されるように、スロット55内に配置され、スロット55内を通るコイル42の外周を囲む。絶縁部材43は、コイル42をステータコア41から絶縁させる。
【0024】
コイル42は、図3に示すように、複数相(具体的には三相)の巻線71,72,73を有している。巻線71,72,73は、ティース部52(図1参照)に巻き回される。巻線71は、U相の巻線71とも称される。巻線72は、V相の巻線72とも称される。巻線73は、W相の巻線73とも称される。コイル42は、いわゆるY結線された三相コイルである。U相(第一相)の巻線71、V相(第二相)の巻線72及びW相(第三相)の巻線73は、中性点となり得る短絡部90にて結線される。
【0025】
2.車載システムの構成
ステータ40は、図3に示される車載システム1に適用される。車載システム1は、車両に搭載されるシステムである。車載システム1は、インバータ6と、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)と、を有する。
【0026】
インバータ6は、U相、V相、W相の三相交流電力を出力するインバータ回路である。インバータ6から出力される三相交流電力は、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)を介して交流電動機4に供給され、交流電動機4の回転駆動に用いられる。インバータ6は、上アーム素子として機能するスイッチング素子6A,6C,6Eと下アーム素子として機能するスイッチング素子6B,6D,6Fとを有する。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの各々は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)及び還流ダイオードにより構成されている。
【0027】
インバータ6では、例えば、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fがオンオフ信号(例えば、PWM(パルス幅変調)信号)を受けることによってオン動作及びオフ動作を繰り返し、三相交流電力を発生させる。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fのオンオフ制御は、例えば、図示されていない電子制御装置(例えば、車載ECU(Electronic Control Unit)等)によって行われる。電子制御装置がインバータ6を制御する方式は、例えば、PWM信号を用いた三相変調方式である。なお、上記電子制御装置がインバータ6を制御する方式は、交流電動機4を駆動可能な方式であればよく、例えば、公知のV/f制御や公知のベクトル制御などの様々な方式が採用され得る。
【0028】
インバータ6において、U相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Aと下アーム素子であるスイッチング素子6Bとによって構成される。V相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Cと下アーム素子であるスイッチング素子6Dとによって構成される。W相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Eと下アーム素子であるスイッチング素子6Fとによって構成される。
【0029】
U相の導電路61は、スイッチング素子6A,6BとU相の巻線71との間の導電路である。V相の導電路62は、スイッチング素子6C,6DとV相の巻線72との間の導電路である。W相の導電路63は、スイッチング素子6E,6FとW相の巻線73との間の導電路である。
【0030】
インバータ6には、一対の電力路64,65が接続されている。電力路64,65には、図示しないバッテリが接続されている。バッテリの満充電時の出力電圧は、例えば400V~1200Vである。電力路64,65に印加される電圧の上限値は、400V~1200Vである。インバータ6は、バッテリの出力電圧に基づいて三相交流電圧を発生させる。
【0031】
3.コイルの構成
コイル42は、上述したように、巻線71,72,73を有する。以下では、巻線71,72,73を区別せず、巻線80と称する。巻線80は、図2に示されるように、芯線81と、芯線81の外周を覆う被覆部82と、を有する。芯線81及び被覆部82は、スロット55内に挿し通され、スロット55内に少なくとも一部が配置される。
【0032】
芯線81は、平角線状をなしている。芯線81の断面は、矩形状をなしている。芯線81は、導電性を有する。芯線81は、例えば銅又は銅合金からなる。
【0033】
被覆部82は、絶縁性を有する。被覆部82は、例えば樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散する気泡と、を有する。樹脂マトリックスは、例えばポリイミド及びポリエーテルスルホンを含有する。
【0034】
4.効果の例
芯線81の断面の角Rは、0.10mm以上且つ0.27mmであり、従来の構成(例えば角Rが0.50mmの構成)よりも小さくなっている。この構成によれば、芯線81の幅及び厚さの増大を抑えつつ芯線81の断面積を大きくすることができる。この点について、図4(A)(B)(C)(D)を参照して説明する。幅は、周方向(径方向及び軸方向と直交する方向)の長さを意味し、厚さは、径方向の長さを意味する。
【0035】
図4(A)には、比較例のコイル42Zの巻線80Zの断面が示されており、図4(B)には、第1実施形態のコイル42の巻線80の断面が示されている。本明細書において、「巻線の断面」とは、巻線の延び方向と直交する方向に巻線を切断した切断面のことである。なお、図4(A)(B)の巻線80,80Zの形状は誇張されている。
【0036】
巻線80Zの幅は、例えば4.442mmである。巻線80Zの厚さは、例えば2.442mmである。巻線80Zは、芯線81Zと、被覆部82Zと、を有する。芯線81Zの幅は、例えば4.000mmである。芯線81Zの厚さは、例えば2.000mmである。芯線81Zの断面の角Rは、例えば0.50mmである。被覆部82Zの厚さは、例えば0.221mmである。
【0037】
巻線80の幅及び厚さは、巻線80Zの幅及び厚さと同じであり、芯線81の幅及び厚さも、芯線81Zの幅及び厚さと同じである。しかし、芯線81の断面の角R(具体的には芯線81の断面の角Rに沿う円の半径R1)は、芯線81Zの断面の角R(具体的には芯線81Zの断面の角Rに沿う円の半径RZ)よりも小さく、例えば0.15mmである。このため、芯線81の断面積は、芯線81Zの断面積よりも大きい。すなわち、ステータ40によれば、芯線81の幅及び厚さの増大を抑えつつ芯線81の断面積を大きくすることができる。芯線81の断面積が大きくなることで、芯線81の電気抵抗値が下がるため、芯線81に流すことが可能な最大電流が大きくなる。その結果、図4(C)及び図4(D)のグラフを比較すると分かるように、図4(D)に示される第1領域A1の分、ステータ40が用いられる交流電動機4の最大トルクが大きくなる。
【0038】
また、被覆部82の誘電率は、例えば1.8以上で且つ3.0以下である。この構成によれば、必要な耐電圧を確保しやすく、高速回転する交流電動機4に適用しやすい。また、芯線81の断面の角Rと被覆部82の誘電率を調整することで、必要なトルクと回転数に適したコイル42を設計しやすい。
【0039】
また、被覆部82の厚さは、0.10mm以上で且つ0.25mm以下である。この構成によれば、必要なトルク及び必要な耐電圧をバランスよく確保しやすい。更に、被覆部82の厚さを上記範囲内で0.25mmに近づけることで、耐電圧の上昇を重視することができる。また、被覆部82の厚さを上記範囲内で0.10mmに近づけて芯線81の幅及び厚さを大きくすることで、最大トルクの上昇を重視することができる。また、芯線81の断面の角Rと被覆部82の厚さとを調整することで、必要なトルクと回転数に適したコイル42を設計しやすい。
【0040】
<第2実施形態>
第1実施形態では、比較例に対して、芯線の幅及び厚さを変えることなく、芯線の断面積を大きくする構成について説明した。これに対し、第2実施形態では、比較例に対して、芯線の断面積を変えることなく、被覆部の厚さを大きくする構成について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0041】
図5(A)には、比較例となるコイル42Zの巻線80Zの断面が示されており、図5(B)には、第2実施形態のコイル242の巻線280の断面が示されている。巻線80Zは、第1実施形態で説明した巻線80Zと同じである。なお、図5(A)(B)の巻線280,80Zの形状は誇張されている。
【0042】
巻線280の幅及び厚さは、巻線80Zの幅及び厚さと同じである。芯線281の断面積は、芯線81Zの断面積と同じである。しかし、芯線281の断面の角R(具体的には、芯線281の断面の角Rに沿う円の半径R2)は、芯線81Zの断面の角R(具体的には、芯線81Zの断面の角Rに沿う円の半径RZ)よりも小さく、例えば0.15mmである。更に、芯線281の幅W2は、芯線81Zの幅WZよりも小さく、芯線281の厚さD2は、芯線81Zの厚さDZよりも小さい。芯線281の幅W2及び厚さD2が小さくなった分、被覆部282の厚さC2が、被覆部82の厚さCZよりも大きくなっている。この構成によれば、コイル242の耐電圧を高めることができる。その結果、図5(C)及び図5(D)のグラフを比較すると分かるように、図5(D)に示される第2領域A2の分、第2実施形態のステータが用いられる交流電動機4の回転数(回転速度)の上限を向上させることができる。
【0043】
<第3実施形態>
第3実施形態では、比較例に対して、巻線の幅及び厚さを変えることなく、芯線の断面積を大きくし、且つ被覆部の厚さを大きくする構成について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0044】
図6(A)には、比較例となるコイル42Zの巻線80Zの断面が示されており、図6(B)には、第3実施形態のコイル342の巻線380の断面が示されている。巻線80Zは、第1実施形態で説明した巻線80Zと同じである。なお、図6(A)(B)の巻線380,80Zの形状は誇張されている。
【0045】
巻線380の幅及び厚さは、巻線80Zの幅及び厚さと同じである。しかし、芯線381の断面の角R(具体的には、芯線381の断面の角Rに沿う円の半径R3)は、芯線81Zの断面の角R(具体的には、芯線81Zの断面の角Rに沿う円の半径RZ)よりも小さく、例えば0.15mmである。芯線381の断面積は、芯線81Zの断面積よりも大きいが、芯線381の幅W3は、芯線81Zの幅WZよりも小さく、芯線381の厚さD3は、芯線81Zの厚さDZよりも小さい。芯線381の幅W3及び厚さD3が小さくなった分、被覆部382の厚さC3が、被覆部82の厚さCZよりも大きくなっている。この構成によれば、芯線381の断面積を大きくし、且つコイル242の耐電圧を高めることができる。その結果、図6(C)及び図6(D)のグラフを比較すると分かるように、図6(D)に示される第3領域A3の分、第3実施形態のステータが用いられる交流電動機4の最大トルクを高め、且つ回転数(回転速度)の上限を向上させることができる。
【0046】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0047】
上述の各実施形態では、比較例に対して、巻線の幅及び厚さを変えない構成を説明したが、巻線の幅及び厚さを変えてもよい。例えば、第2実施形態の芯線のように断面積を変えることなく幅及び厚さを小さくした芯線に対して被覆部の厚さを比較例と同じにすることで、巻線の幅及び厚さを小さくしてもよい。この構成によれば、芯線をより高密度で配置させることができるため、例えば、ステータコアの積厚を小さくすることができる。ステータコアの積厚が小さくなることで、材料の使用量が減少し、材料コストが低減され得る。
【0048】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1…車載システム
4…交流電動機
6…インバータ
6A…スイッチング素子
6B…スイッチング素子
6C…スイッチング素子
6D…スイッチング素子
6E…スイッチング素子
6F…スイッチング素子
40…ステータ
41…ステータコア
42…コイル
42Z…コイル
43…絶縁部材
51…ヨーク部
52…ティース部
55…スロット
61…導電路
62…導電路
63…導電路
64…電力路
65…電力路
71…巻線
72…巻線
73…巻線
80…巻線
80Z…巻線
81…芯線
81Z…芯線
82…被覆部
82Z…被覆部
90…短絡部
242…コイル
280…巻線
281…芯線
282…被覆部
342…コイル
380…巻線
381…芯線
382…被覆部
A1…第1領域
A2…第2領域
A3…第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6