(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106796
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ワンタッチ式ファスナー
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20230726BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F16B19/00 D
F16B5/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007737
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 志朗
【テーマコード(参考)】
3J001
3J036
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JC03
3J001KA19
3J036AA01
3J036BB06
3J036CA03
(57)【要約】
【課題】ワンタッチファスナーを2部材に取り付けた後の取り外しも簡単にする。
【解決手段】このファスナーは、ヘッド1にシャフト2の溝20内のフック3の一端部に対向して小孔状に開口されるフック解除口60と、フック機構М3の付属品で、フック解除口60に挿通可能でかつシャフト2内でフック3の一端部を押圧可能な細長いピンを有するフック解除キーとを備え、フック解除キーのピンをヘッド1のフック解除口60からシャフト2の溝20内に通し、ピン先でフック3の一端部を押すことにより、フック3の係止爪31と他方の取付孔の縁部との弾性係合を解除する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドと、前記ヘッドから延びるシャフトと、前記シャフトの周面に形成される溝にフックが一端部をシャフトの先端に向けて他端部をヘッドに向けて前記一端部側を軸を介して回動可能に支持されて、前記他端部側を係止爪として前記シャフトの前記溝から出没可能に組み込まれ、前記シャフトの前記溝内で前記フックが常態としてばね部材により回動付勢されて前記係止爪が前記シャフトの前記溝から弾性的に突出されるフック機構とを備え、少なくとも2部材の一方に形成した一方の取付孔と他方に形成した他方の取付孔を合わせて、前記シャフトを前記一方の取付孔から前記他方の取付孔に通し、前記フックの前記係止爪を前記他方の取付孔の縁部又は縁部周囲に弾性係合させて、少なくとも2部材の一方を他方に取り付けるワンタッチファスナーであって、
前記ヘッドに前記シャフトの前記溝内の前記フックの前記一端部に対向して小孔状に開口されるフック解除口と、
前記フック機構の付属品で、前記フック解除口に挿通可能でかつ前記シャフト内で前記フックの前記一端部を押圧可能な細長いピンを有するフック解除キーと。
を備え、
前記2部材からワンタッチファスナーを取り外す際に、前記フック解除キーの前記ピンを前記ヘッドの前記フック解除口から前記シャフトの前記溝内に通し、前記ピンで前記フックの前記一端部を押すことにより、前記フックの前記係止爪を前記シャフト内に没入させて、前記フックの前記係止爪と前記他方の取付孔の縁部又は縁部周囲との弾性係合を解除する、
ことを特徴とするワンタッチファスナー。
【請求項2】
シャフトは先端面からヘッドに向けて溝が当該溝の両側を前記シャフトの周面に開口して形成されて、前記シャフトは一対の分割シャフトからなり、前記溝が先端側をばね部材配置部とするフック組み込み部をなし、フック機構は、前記一対の分割シャフトの軸方向中間部間に一対の軸受を介して配設される軸と、一側部が前記シャフトの周面に開口される前記溝の一側に沿って配置されて前記フック組み込み部に嵌合可能に略プレート状又は略ブロック状に形成され、その一端部寄りに前記各分割シャフトの前記各軸受に対応して軸挿通部を有し、他端部が円の中心を前記軸挿通部よりも前記一端部に近くかつ前記一側部とは反対側の他側部寄りの位置におく円弧状に形成されて、前記一側部から前記他端部にかけてを係止爪とし、前記フック組み込み部に、前記軸を介して回動可能に支持されて、前記係止爪を前記溝の一側から出没可能に配置されるフックと、前記ばね部材配置部に配置されて前記フックに作動連結され、常態として前記フックの前記一端部を前記溝の他側に向けて回動付勢して前記係止爪を前記溝の一側から外部へ弾性的に突出させるばね部材とを備える請求項1に記載のワンタッチファスナー。
【請求項3】
ばね部材にコイルスプリングシャフトが採用され、ばね部材配置部は溝の先端部側に、シャフトの軸方向に対して直交方向に一対の軸受間に対して直交して、前記溝の他側側の他端を前記シャフトの周面に前記コイルスプリングを挿通可能に開口され、前記溝の一側側の一端を前記シャフトの周面の近傍で底部とし前記コイルスプリングのばね受け部として形成されて、略有底の筒形に形成され、フックの一端部で前記ばね部材配置部の他端側に前記ばね部材配置部の他端側に向けて突出して前記コイルスプリングのばね受け部が形成されて、前記ばね部材配置部の前記ばね受け部と前記フックの前記ばね受け部との間に前記コイルスプリングが介装され、前記ばね部材配置部の他端に前記フックのばね受け部が衝接可能にストッパーが設けられて、前記フックのばね受け部と前記ストッパーとの係合により前記フックの一端部の前記溝の他側方向への回動を規制され、前記各ばね受け部間で前記コイルスプリングが圧縮される請求項2に記載のワンタッチファスナー。
【請求項4】
ばね部材配置部の他端のストッパーは前記ばね部材配置部の他端がかしめられて形成される請求項3に記載のワンタッチファスナー。
【請求項5】
ばね部材にコイルスプリングシャフトが採用され、ばね部材配置部は溝の先端部側に、シャフトの軸方向に対して直交方向に一対の軸受間に対して直交して、前記溝の他側側の他端を前記シャフトの周面に前記コイルスプリングを挿通可能に開口され、前記溝の一側側の一端を前記シャフトの周面の近傍で底部として形成されて、略有底の筒形に形成され、前記ばね部材配置部の一端の前記底部に当該底部に嵌合されるばね受け部及び前記前記ばね受け部から前記溝の一側に沿ってフックの一端部に係合可能に延びるフック回動規制係合部を有するストッパーが配置され、前記フックの一端部で前記ばね部材配置部の他端側に前記ばね部材配置部の他端側に向けて突出して前記コイルスプリングのばね受け部が形成されるとともに、前記フックの一端部で前記ばね部材配置部の一端側に前記フック回動規制係合部に係合可能に回動規制被係合部が形成されて、前記ばね部材配置部の前記ストッパーの前記ばね受け部と前記フックの前記ばね受け部との間に前記コイルスプリングが介装され、前記ストッパーの前記回動規制係合部と前記フックの前記回動規制被係合部との係合により前記フックの一端部の前記溝の他側方向への回動を規制され、前記各ばね受け部間で前記コイルスプリングが圧縮される請求項2に記載のワンタッチファスナー。
【請求項6】
ばね部材にコイルスプリングシャフトが採用され、溝のばね部材配置部は前記溝の先端部側に、一端がシャフトの先端面に開口され、一対の分割シャフトの内面間に軸方向に向けて前記コイルスプリングを挿通可能に略有底の筒形に形成されて、他端を底部とし、前記フックの一端部は、前記フックの係止爪が前記フック組み込み部に没入された状態で、前記ばね部材配置部の前記他端から前記ばね部材配置部へ頂部側の一部を突出可能に断面V字形をなす2面形状に形成されるとともに、その頂部と前記フックの一側部との間の一方の面が、前記フックの係止爪が前記フック組み込み部から突出された状態で、前記ばね部材配置部の前記他端で平面をなしかつ前記一方の面の前記フックの一側部側の端部を前記ばね部材配置部へ少し突出可能に凸状に形成されて、前記ばね部材配置部の前記他端に、前記コイルスプリングのばね受け部をなしかつ前記フックの一端部の前記凸状に係合し前記フックの回動規制部をなす平板からなるストッパーが配置され、前記他端の前記ストッパーと前記ばね部材配置部の一端との間に前記コイルスプリングが装着され、前記ばね部材配置部の一端に前記コイルスプリングを押圧可能に保持するストッパーが設けられて、前記フックの一端部の前記凸状と前記ばね部材配置部の前記他端の前記ストッパーとの係合により前記フックの一端部の前記溝の他側方向への回動を規制されて、前記各ストッパー間で前記コイルスプリングが圧縮される請求項2に記載のワンタッチファスナー。
【請求項7】
ばね部材配置部の一端のストッパーは前記ばね部材配置部の一端がかしめられて形成される請求項6に記載のワンタッチファスナー。
【請求項8】
ヘッドは円板状に、シャフトは円柱状に形成される請求項1乃至7のいずれかに記載のワンタッチファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材間又は2部材以上の部材間の接合に使用するワンタッチ式ファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、従前、2部材間又は2部材以上の部材間の接合を手早くかつ簡単に行うのに有用なワンタッチ式ファスナーを特許文献1により提案している。
【0003】
この文献1のワンタッチ式ファスナー(ワンタッチファスナー)は、一方の部材の取付孔よりも大きい平面を有する取付プレートと、取付プレートの平面に当該平面の全周縁部をフランジとして残して各部材の各取付孔を挿通可能に平行に突出される一対の軸受プレートと、一端側の縁部側に回動中心を設けられ、他端側の縁部を円弧状に形成されて一方の側縁部から他端側の縁部にかけてを爪部とし、一対の軸受プレート間に、各軸受プレートの突出端側の両側に挿着される一対の軸を介して回動可能に支持され、爪部が各軸受プレートの両側縁部から出没可能に配置される一対の爪プレートと、一対の爪プレート間に又は各爪プレートと軸受プレートとの間に介装され、各爪プレートを常態として各軸受プレートの両側縁部から突出可能に回動付勢するばね部材とを備えて構成され、一対の軸受プレートを各爪プレートとともに2つの部材の各取付孔にワンプッシュで通し、各爪プレートを他方の部材の前記取付孔の縁部に係止するようになっている。
【0004】
このようにこのワンタッチ式ファスナーでは、一対の軸受プレートを2枚の部材の取付孔にワンプッシュで通すだけの、工具を用いない簡易な手作業で、2枚の部材を手早くかつ簡単に接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のワンタッチ式ファスナーでは、一対の軸受プレートを各爪プレートとともに2つの部材の各取付孔にワンプッシュで通し、各爪プレートを他方の部材の前記取付孔の縁部に係止するようになっているので、このワンタッチ式ファスナーを2枚の部材の取付孔に取り付けた後で取り外す必要が生じた場合に、他方の部材側で、各爪プレートを一対の軸受プレート内に押下しながら、ワンタッチ式ファスナーを一方の部材側から引き抜けばよいが、この取り外し作業は他方の部材側に手が入らないと実行できない、という問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、この種のワンタッチファスナーにおいて、2部材間又はそれ以上の部材間の接合を、工具を用いることなしに、各部材の取付孔にワンプッシュで通す簡単な取付作業で行えること、各部材の取付孔を単純な形状とし、孔明けに要するコストを低く抑えること、そして、このワンタッチファスナーを各部材間に取り付けた後の取り外しも簡単に行えることなど、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
ヘッドと、前記ヘッドから延びるシャフトと、前記シャフトの周面に形成される溝にフックが一端部をシャフトの先端に向けて他端部をヘッドに向けて前記一端部側を軸を介して回動可能に支持されて、前記他端部側を係止爪として前記シャフトの前記溝から出没可能に組み込まれ、前記シャフトの前記溝内で前記フックが常態としてばね部材により回動付勢されて前記係止爪が前記シャフトの前記溝から弾性的に突出されるフック機構とを備え、少なくとも2部材の一方に形成した一方の取付孔と他方に形成した他方の取付孔を合わせて、前記シャフトを前記一方の取付孔から前記他方の取付孔に通し、前記フックの前記係止爪を前記他方の取付孔の縁部又は縁部周囲に弾性係合させて、少なくとも2部材の一方を他方に取り付けるワンタッチファスナーであって、
前記ヘッドに前記シャフトの前記溝内の前記フックの前記一端部に対向して小孔状に開口されるフック解除口と、
前記フック機構の付属品で、前記フック解除口に挿通可能でかつ前記シャフト内で前記フックの前記一端部を押圧可能な細長いピンを有するフック解除キーと。
を備え、
前記2部材からワンタッチファスナーを取り外す際に、前記フック解除キーの前記ピンを前記ヘッドの前記フック解除口から前記シャフトの前記溝内に通し、前記ピンで前記フックの前記一端部を押すことにより、前記フックの前記係止爪を前記シャフト内に没入させて、前記フックの前記係止爪と前記他方の取付孔の縁部又は縁部周囲との弾性係合を解除する、
ことを要旨とする。
【0009】
また、このワンタッチファスナーにおいては、
シャフトは先端面からヘッドに向けて溝が当該溝の両側を前記シャフトの周面に開口して形成されて、前記シャフトは一対の分割シャフトからなり、前記溝が先端側をばね部材配置部とするフック組み込み部をなし、フック機構は、前記一対の分割シャフトの軸方向中間部間に一対の軸受を介して配設される軸と、一側部が前記シャフトの周面に開口される前記溝の一側に沿って配置されて前記フック組み込み部に嵌合可能に略プレート状又は略ブロック状に形成され、その一端部寄りに前記各分割シャフトの前記各軸受に対応して軸挿通部を有し、他端部が円の中心を前記軸挿通部よりも前記一端部に近くかつ前記一側部とは反対側の他側部寄りの位置におく円弧状に形成されて、前記一側部から前記他端部にかけてを係止爪とし、前記フック組み込み部に、前記軸を介して回動可能に支持されて、前記係止爪を前記溝の一側から出没可能に配置されるフックと、前記ばね部材配置部に配置されて前記フックに作動連結され、常態として前記フックの前記一端部を前記溝の他側に向けて回動付勢して前記係止爪を前記溝の一側から外部へ弾性的に突出させるばね部材とを備えることが好ましい。
【0010】
この場合、ばね部材にコイルスプリングシャフトが採用され、ばね部材配置部は溝の先端部側に、シャフトの軸方向に対して直交方向に一対の軸受間に対して直交して、前記溝の他側側の他端を前記シャフトの周面に前記コイルスプリングを挿通可能に開口され、前記溝の一側側の一端を前記シャフトの周面の近傍で底部とし前記コイルスプリングのばね受け部として形成されて、略有底の筒形に形成され、フックの一端部で前記ばね部材配置部の他端側に前記ばね部材配置部の他端側に向けて突出して前記コイルスプリングのばね受け部が形成されて、前記ばね部材配置部の前記ばね受け部と前記フックの前記ばね受け部との間に前記コイルスプリングが介装され、前記ばね部材配置部の他端に前記フックのばね受け部が衝接可能にストッパーが設けられて、前記フックのばね受け部と前記ストッパーとの係合により前記フックの一端部の前記溝の他側方向への回動を規制され、前記各ばね受け部間で前記コイルスプリングが圧縮されることが好ましい。
【0011】
この場合において、ばね部材配置部の他端のストッパーは前記ばね部材配置部の他端がかしめられて形成されることが望ましい。
【0012】
また、この場合、ばね部材にコイルスプリングシャフトが採用され、ばね部材配置部は溝の先端部側に、シャフトの軸方向に対して直交方向に一対の軸受間に対して直交して、前記溝の他側側の他端を前記シャフトの周面に前記コイルスプリングを挿通可能に開口され、前記溝の一側側の一端を前記シャフトの周面の近傍で底部として形成されて、略有底の筒形に形成され、前記ばね部材配置部の一端の前記底部に当該底部に嵌合されるばね受け部及び前記前記ばね受け部から前記溝の一側に沿ってフックの一端部に係合可能に延びるフック回動規制係合部を有するストッパーが配置され、前記フックの一端部で前記ばね部材配置部の他端側に前記ばね部材配置部の他端側に向けて突出して前記コイルスプリングのばね受け部が形成されるとともに、前記フックの一端部で前記ばね部材配置部の一端側に前記フック回動規制係合部に係合可能に回動規制被係合部が形成されて、前記ばね部材配置部の前記ストッパーの前記ばね受け部と前記フックの前記ばね受け部との間に前記コイルスプリングが介装され、前記ストッパーの前記回動規制係合部と前記フックの前記回動規制被係合部との係合により前記フックの一端部の前記溝の他側方向への回動を規制され、前記各ばね受け部間で前記コイルスプリングが圧縮されることが好ましい。
【0013】
さらに、この場合、ばね部材にコイルスプリングシャフトが採用され、溝のばね部材配置部は前記溝の先端部側に、一端がシャフトの先端面に開口され、一対の分割シャフトの内面間に軸方向に向けて前記コイルスプリングを挿通可能に略有底の筒形に形成されて、他端を底部とし、前記フックの一端部は、前記フックの係止爪が前記フック組み込み部に没入された状態で、前記ばね部材配置部の前記他端から前記ばね部材配置部へ頂部側の一部を突出可能に断面V字形をなす2面形状に形成されるとともに、その頂部と前記フックの一側部との間の一方の面が、前記フックの係止爪が前記フック組み込み部から突出された状態で、前記ばね部材配置部の前記他端で平面をなしかつ前記一方の面の前記フックの一側部側の端部を前記ばね部材配置部へ少し突出可能に凸状に形成されて、前記ばね部材配置部の前記他端に、前記コイルスプリングのばね受け部をなしかつ前記フックの一端部の前記凸状に係合し前記フックの回動規制部をなす平板からなるストッパーが配置され、前記他端の前記ストッパーと前記ばね部材配置部の一端との間に前記コイルスプリングが装着され、前記ばね部材配置部の一端に前記コイルスプリングを押圧可能に保持するストッパーが設けられて、前記フックの一端部の前記凸状と前記ばね部材配置部の前記他端の前記ストッパーとの係合により前記フックの一端部の前記溝の他側方向への回動を規制されて、前記各ストッパー間で前記コイルスプリングが圧縮されることが好ましい。
【0014】
この場合において、ばね部材配置部の一端のストッパーは前記ばね部材配置部の一端がかしめられて形成されることが望ましい。
【0015】
なお、このワンタッチファスナーは、ヘッドが円板状に、シャフトは円柱状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワンタッチファスナーによれば、上記の各構成により、次のような本発明独自の格別な効果を奏する。
(1)ワンタッチファスナーを工具を用いることなしに少なくとも2部材の取付孔にワンプッシュで通し係止させることができ、取付作業を簡単にし、2部材を従来にも増して手早くかつ簡単に接合することができる。
(2)ヘッドは2部材の一方の取付孔よりも少し大きくし、シャフトは2部材の各取付孔に嵌装可能な大きさ(径)で、各取付孔を通り抜け可能に所定の長さを有すればよく、シャフトは円柱形又は角柱形など単純な形状でよいので、2部材の各取付孔を単純な形状にすることができ、孔明けに要するコストを低く抑えることができる。
(3)このワンタッチファスナーを2部債から取り外す場合で、フックの係止爪と他方の部材の取付孔の縁部又は縁部周囲との係合位置に直接手が入る場合は、他方の部材の取付孔の縁部又は縁部周囲で、各フックを直接手指でシャフトに押し込むことで、フックと他方の部材の取付孔の縁部又は縁部周囲との係合を解除して、ワンタッチファスナーを各部材の各取付孔から引き抜けば、ワンタッチファスナーを2部材から簡単に取り外すことができる。
(4)このワンタッチファスナーを2部材から取り外す場合で、フックの係止爪と他方の部材の取付孔の縁部又は縁部周囲との係合位置に手が入らず、フックを他方の部材の取付孔の縁部又は縁部周囲で直接手で押し込むことができない場合は、フック解除キー用い、ピンをヘッドのフック解除口からシャフト内に通し、ピンでフックの一端部を押すことにより、フックの係止爪をシャフト内に没入させて、フックの係止爪と他方の部材の取付孔の縁部又は縁部周囲との弾性係合を解除し、ワンタッチファスナーを2部材の各取付孔から引き抜けば、ワンタッチファスナーを2部材から簡単に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るワンタッチファスナーの全体構成を示す図((a)は背面図(b)は側面図(c)は(b)とは異なる方向の側面図(d)は正面図)
【
図2】同ワンタッチファスナーのヘッド及びシャフトの構成を示す図((a)は側面図(b)は正面図(c)は背面断面図(d)は側面断面図(e)は(d)とは異なる方向の側面断面図)
【
図3】同ワンタッチファスナーのシャフトに設けられるストッパーの構成を示す図((a)は背面図(b)は側面図)
【
図4】同ワンタッチファスナーのシャフトに設けられる軸の構成を示す図((a)一端面図(b)は側面図(c)は他端面図)
【
図5】同ワンタッチファスナーのフックの構成を示す図((a)は側面図(b)は(a)とは異なる方向の側面図)
【
図6】同ワンタッチファスナーに用いるフック解除キーの構成を示す図(側面図)
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係るワンタッチファスナーの全体構成を示す図((a)は背面図(b)は側面図(c)は(b)とは異なる方向の側面図(d)は正面図)
【
図9】同ワンタッチファスナーのシャフトに設けられるストッパーの構成を示す図((a)は側面図(b)は(a)とは異なる方向の側面図)
【
図10】同ワンタッチファスナーのフックの構成を示す図((a)は側面図(b)は(a)とは異なる方向の側面図)
【
図12】本発明の第3の実施の形態に係るワンタッチファスナーの全体構成を示す図((a)は側面図(b)は側面断面図(c)は(b)とは異なる方向の側面断面図)
【
図13】同ワンタッチファスナーのシャフトに設けられるストッパーの構成を示す図((a)は側面図(b)は(a)とは異なる方向の側面図)
【
図14】同ワンタッチファスナーのフックの構成を示す図((a)は側面図(b)は(a)とは異なる方向の側面図)
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1乃至
図5に第1の実施の形態を示している。
図1にワンタッチファスナーの全体構成を示し、
図2、
図3、
図4及び
図5にワンタッチファスナーの各部の構成を示している。
図6は第1乃至第3の各実施の形態で共通に用いるフック解除キーの構成を示している。
なお、以下の各実施の形態の説明でいう「部材」は例えば組み立て式のラックやキャビネットなどを構成するパネルなどである。また、ここでいう部材は金属製のものであるか合成樹脂製のものであるかを問わない。
【0019】
図1に示すように、ワンタッチファスナーF1は、ヘッド1と、ヘッド1から延びるシャフト2と、シャフト2の周面の溝20にフック3が一端部301をシャフト2の先端に向けて他端部302をヘッド1に向けて一端部301側を軸4を介して回動可能に支持されて、他端部302側を係止爪31としてシャフト2の周面の溝20から出没可能に組み込まれ、シャフト2の溝20内でフック3が常態としてばね部材5により回動付勢されてフック3の係止爪31がシャフト2の周面の溝20から弾性的に突出されるフック機構М3とを備えて構成される。
【0020】
このワンタッチファスナーF1(以下、単にファスナーF1という場合がある。)では、シャフト2の先端面2Tからヘッド1に向けて溝20が溝20の両側(一側201、他側202)をシャフト2の周面に開口して形成されて、シャフト2は一対の分割シャフト21,21からなり、溝20が先端側をばね部材配置部20Tとするフック組み込み部をなす(以下、溝20、フック組み込み部20という場合がある。)。
【0021】
図1に示すように、このファスナーF1では、ヘッド1は円板状に形成される。シャフト2は円柱状に形成され、中間に溝20を介在して2分割され、一対の分割シャフト21からなる。
図2に示すように、この場合、ヘッド1のシャフト2の周囲はフランジになっている。シャフト2の溝20はシャフト2の円形の先端面2Tの直径上からフック3の厚さよりも少し大きい幅でヘッド1に向けて、側面視長い断面コ字形に形成され、溝20の長手方向の両側201、202がシャフト2の外周面に開口されて、各分割シャフト21は、円弧状の外周面と、平面状の内面と、平面視(先端面視)略D字形の先端面とからなる。各分割シャフト21間の溝20は、既述のとおりフック組み込み部で、先端開口面から後述する一対の軸受211よりも先端開口面寄りの所定の範囲がばね部材配置部20Tで、その後方で溝20の底部までがフック配置部20Rになっている。なお、この溝20の底部とヘッド1との間はワンタッチファスナーF1の使用時に2部材間に通され残置される部分で、ここの長さはワンタッチファスナーF1の使用時の2部材間の厚みに応じて寸法設定され、ここの長さを種々に変えた数種類のワンタッチファスナーF1が用意される。
【0022】
図1に示すように、フック機構М3は、軸4と、フック3と、ばね部材5とを備えて構成される。
【0023】
軸4は、一対の分割シャフト21の軸方向中間部間に一対の軸受211を介して配設される。この場合、一対の軸受211は、
図2に示すように、一対の分割シャフト21の長さ方向中間部、より具体的に言えば各分割シャフト21の長さ方向中央よりも少し先端寄りで分割シャフト21の幅方向中央に孔が穿たれて形成される。この軸受211では、各分割シャフト21の孔の径が異なり、一方が小径の円筒形で、他方が大径の円筒形になっている。軸4は、
図4に示すように、円柱状のピンからなり、一対の軸受211に対応して、一対の軸受211の小径の一方の孔に通される一端側が小径部で、大径の他方の孔に通される他端部側が大径部になっている。
【0024】
図1に示すように、フック3は、一側部303(
図5参照)がシャフト2の周面に開口される溝の一側201に沿って配置されてフック組み込み部20に嵌合可能に略プレート状に形成される。なお、このフックの具体的な形状は後述する。
図5に示すように、このフック3の両側面部305、306間で一端部301寄りに一対の分割シャフト21の各軸受211に対応して軸挿通部30を有する。この場合、軸挿通部30は、フック3の、フック組み込み部20である溝20の内面に対向する両側面部305、306に一端部301寄りでこの一端部301の幅方向略中央に、両側面部305、306間を一方の分割シャフト21の軸受211をなす一方の大径の孔と略同径の円筒形に貫通されて形成される。また、このフック3の他端部302は、円(仮想円)の中心を軸挿通部30よりもフック3の一端部301に近くかつフック3の一側部303とは反対側の他側部304寄りの所定の位置におく円弧状に形成される。かくしてこのフック3では、一側部303から他端部302にかけてを係止爪31としている。このようにしてフック3は、
図1に示すように、シャフト2のフック組み込み部20(のフック配置部20R)に、軸4を介して回動可能に支持されて、係止爪31をシャフト2の溝の一側201から出没可能に配置される。このフック3の組み込み後、一対の分割シャフト21の各軸受211に通された軸4は大径部の端部が他方の分割シャフト21の軸受211をなす大径の孔の外側開口面でかしめられて抜け止めされ、軸4が一対の軸受211間に取り付けられる。
【0025】
また、このフック3は、説明の一部が繰り返しになるが、次のような構成、形状を有する。
図5に示すように、一側部303はシャフト2の周面に開口される溝の一側201に嵌合可能に小幅で断面直線的に形成され、全面が両端部301、302方向に細長の四角形になっている。一端部301、つまり、一側部303の一端と他側部304の一端との間は基本形状を断面半円形とし、この場合、一側部303の一端から軸挿通部30の中心を円の中心とする断面略半円形に形成され、これに後述のとおり、ばね受け部32が形成される。一側部303とは反対側の他側部304は一端部301の他端から段差部307を介して一端部301の他端よりも内側に一側部303と略平行に形成され、全面が両端部301、302方向に細長の四角形になっている。また、一端部301の他端と他側部304との間の段差部307は他側部304に対して略直角に形成され、この段差部307は後述するフック解除キー6のピン61を受けるためのピン係合部(以下、ピン係合部307という場合がある。)になっている。他端部302、つまり、一側部303の他端と他側部304の他端との間は既述のとおり、断面円弧状で、細長の四角形になっている。また、フック3の一側部303と他側部304との間の両側面部305、306は一端が半円形を基本形状としばね受け部32を有する複合形状で、他端を円弧状とする、全面が両端方向長い略四角形になっている。
【0026】
このようにしてフック機構М3はフック3が一端部301をシャフト2の先端に向けて他端部302をヘッド1に向けてシャフト2のフック組み込み部20内に配置され、一端部301側の軸挿通部30をシャフト2の一対の軸受21間に合わせられ、これら軸受21、軸挿通部30間に軸4が通されて、回動可能に支持され、他端部302側の係止爪31がシャフト2のフック組み込み部20から出没可能に組み込まれる。
【0027】
図1に示すように、ばね部材5は、フック組み込み部20のばね部材配置部20Tに配置され、フック3に作動連結されて、常態としてフック3の一端部301を溝の他側202に向けて回動付勢して係止爪31(のみ)を溝の一側201から外部へ弾性的に突出させるようになっている(所定の突出状態)。
【0028】
この場合、ばね部材5にコイルスプリング(以下、コイルスプリング5という。)が採用される。
【0029】
ばね部材配置部20Tは、
図2に示すように、溝20の先端側に、シャフト2の軸方向に対して直交方向に一対の軸受211間に対して直交して、溝の他側202側の他端をシャフト2の周面にコイルスプリング5を挿通可能に開口され、溝の一側201側の一端をシャフト2の周面の近傍で底部としコイルスプリング5のばね受け部22として形成されて、略有底の円筒形に形成される。
【0030】
フック3のばね受け部32は、
図5に示すように、フック3の一端部301でばね部材配置部20Tの他端側にばね部材配置部20Tの他端側に向けて突出して形成される。この場合に、ばね受け部32は断面細長い台形状に延び、先端面、周面をなす各面が四角形の略平面で、ばね部材配置部20Tのばね受け部22に対向する平面がフック3の一側部303と平行又は平行よりも僅かにフック3の一端部301に向けて少し傾斜され、この場合は後者で、この面がコイルスプリング5のばね受けになっている。かくしてばね部材配置部20Tのばね受け部22とフック3のばね受け部32との間にコイルスプリング5が介装される。そして、ばね部材配置部20Tにコイルスプリング5に介装された後、
図3に示すように、ばね部材配置部20Tの他端にフック3のばね受け部32が衝接可能にストッパー23が設けられる。この場合、ストッパー23はばね部材配置部20Tの他端でシャフト2の先端面2T側がかしめられて形成される。このようにして、フック3のばね受け部32とストッパー23との係合によりフック3の一端部301の溝の他側202方向への回動を規制され、各ばね受け部22、32間でコイルスプリング5が圧縮されて、既述のとおり、常態として(つまり、所定の突出状態のフック3の係止爪31が溝の一側201に向けて加圧されない限り)フック3の係止爪31がシャフト2の溝の一側201から(所定の突出状態に)弾性的に突出される。
【0031】
このようにしてこのワンタッチファスナーF1では、一方の部材に形成した取付孔と他方の部材に形成した取付孔を合わせた状態から、シャフト2を一方の部材の取付孔から他方の部材の取付孔を通し、フック3の係止爪31を他方の取付孔の縁部に弾性係合させて、少なくとも2部材の一方を他方に取り付けるようになっている。
【0032】
また、
図1に示すように、このワンタッチファスナーF1にはさらに、2部材の他方の取付孔の縁部に係合されたフック3を解除するためのフック解除機能部6が併せて設けられる。このフック解除機能部6は、
図2に示すように、ヘッド1に穿孔されるフック解除口60と、このフック解除口60に通してフック3を回動操作するためのフック解除キー61(
図6参照)とからなる。
【0033】
図2に示すように、フック解除口60はヘッド1にシャフト2内のフック3の一端部301に対向して小孔状に開口される。この場合、フック解除口60は、ヘッド1の先端側でシャフト2内のフック3の一端部301に対向する位置(言い換えれば、シャフト2の溝20の底部の一端(溝の他側202側の端部))からヘッド1の後端面(底面)の一端(溝の他側202側の端部)まで、所定径の小径の円形に穿孔されて形成される。フック解除キー61は、
図6に示すように、フック機構М3に付属するものとして備え、フック解除口60に挿通可能でかつシャフト2内でフック3の一端部301を押圧可能な細長いピン611と、ピン611の基端に同心的に連結されるピン611よりも太いグリップ612とからなる。この場合、ピン611は、フック解除口60の内径と略同径又は僅かに小径の円柱形で、ヘッド1からシャフト2内のフック3の一端部301までの長さに、フック3の一端部301を押圧回動させてフック3の係止爪31をシャフト2の溝の一側201からフック組み込み部20へ押し込むのに必要なフック3の一端部301を押す距離分の長さ、さらにピン611をグリップ612内部に差し込み固定するためのピン611固定分の長さを加えた長さを有する。グリップ612は、手の中に握りやすい径と長さを有し、先端の中心から基端に向けてピン611固定用に所定の径、長さを有する連結口を有し、先端側にテーパーを付けた円筒状をなす。ピン611とグリップ612はピン611の基端がグリップ612の連結口に差し込み固定されて連結され、グリップ612の先端から所定の長さのピン611が突出される。
【0034】
このようにして、このワンタッチファスナーF1では、2部材からこのファスナーF1を取り外す際に、フック解除キー61のピン611をヘッド1のフック解除口60からシャフト2内に通し、ピン611先端でフック3の一端部301、この場合、一端部301の段差部307、つまり、ピン係合部307を押すことにより、フック3を回動させてフック3の係止爪31を溝の一側201からシャフト2内に没入させ、フック3の係止爪31と2部材の他方の取付孔の縁部との弾性係合を解除するようになっている。
【0035】
図7にワンタッチファスナーF1の使用例を示している。なお、この場合、ヘッド1を円板形に、シャフト2を円柱形にしているので、2部材P1、P2には、このファスナーF1に対応して、シャフト2と略同径又は少し大きい径の円形の取付孔Оを開けている。
【0036】
2部材P1、P2の一方を他方に取り付ける際は、まず、2枚の部材P1、P2を組み合わせ各部材P1、P2の各取付孔О、Оを合せる。続いて、ワンタッチファスナーF1のシャフト2を、一方の部材P1の取付孔Оに合せ、各部材P1、P2の取付孔О、Оに差し込み押し込む(ワンプッシュする)。
【0037】
このようにすると、
図7(1)に示すように、ワンタッチファスナーF1のシャフト2が先端から中間へ、中間から基端へ各部材P1、P2の各取付孔О、О縁部を摺動しつつ、各部材P1、P2の各取付孔О、Оを通過する。この間、シャフト2の溝の一側201から外側に突出されるフック3の係止爪31は各部材P1、P2の取付孔О、Оの縁部に接触して押圧され、ばね部材配置部20T内のコイルスプリング5を圧縮しながら、シャフト2の溝の一側201からシャフト2内部のフック組み込み部20に向けて回動され、溝の一側201に没入されていく。そして、係止爪31が完全にシャフト2の溝の一側201からフック組み込み部20に没入されて、シャフト2が各部材P1、P2の各取付孔О、Оを完全に通過すると、ヘッド1(フランジ)が一方の部材P1の取付孔Оの全周縁部の周辺に当接し、シャフト2の溝の一側201に没入されたフック3の係止爪31が、外部からの加圧が解かれることで、ばね部材配置部20T内のコイルスプリング5の付勢力(コイルスプリング5の弾性復帰)により、溝の一側201から外側へ所定の突出状態に突出されて、他方の部材P2の取付孔Оの縁部に弾性係合される。このワンタッチファスナーF1では、
図5に示したように、フック3の回動中心がフック3の一端部301側で一端部301の幅方向略中央に設けられ、フック3の他端部302が円の中心を各フック3の回動中心よりもフック3の一端部301に近く他側部304寄りの位置におく円弧状に形成されたことで、フック3は、係止爪31の外側への回動とともに係止爪31の円弧状の部分が取付孔62の縁部に向けて迫り出し、取付孔Оの縁部に食い込んで弾性的に係止される。これにより、シャフト2は一方の部材P1の取付孔Оから他方の部材P2の取付孔Оに向けて引き寄せられ、ヘッド1のフランジが一方の部材P1の取付孔Оの全周縁部の周辺に圧接し、2部材P1、P2はヘッド1とフック3との間で締め付けられて接合される。したがって、2枚の部材P1、P2の板厚に多少のバラつきがあっても、各部材P1、P2をガタツクことなく確実に接合することができる。なお、
図7(2-1)には、2部材P1、P2の厚みが大きい場合を例示し、
図7(3)には、2部材P1、P2の厚みが小さい場合を例示している。
図7(3)の場合、2部材P1、P2間の厚みが小さいので、これを補うため、ヘッド1と一方の部材P1との間にワッシャー(ナイロンワッシャー)7を介在している。
【0038】
また、ワンタッチファスナーF1で2部材P1、P2を接合した後、このワンタッチファスナーF1を2部材P1、P2から取り外す必要がある場合、次の要領でファスナーF1を取り外すことができる。
【0039】
ワンタッチファスナーF1を2部材P1、P2から取り外す場合、
図6に示すフック解除キー6を一方の手に持ち、他方の手でヘッド1を掴み、フック解除キー6のピン611をヘッド1のフック解除口60からシャフト2内に通し、ピン611の先端をフック3の一端部301と他側部304との間のピン係合部307に当接させて、ピン611の先端でフック3の一端部301を押す。このようにすると、フック3が溝の他側202から溝の一側201に向けて回動され、フック3の係止爪31がフック3の一端部301とは反対に溝の一側201の外側から溝の一側201に向けて回動されて溝の一側201からシャフト2内部のフック組み込み部20に没入され、フック3の係止爪31と他方の部材P2の取付孔Оの縁部との弾性係合が解除される。これにより、ワンタッチファスナーF1が各部材P1、P2の各取付孔О、Оから取り外し可能となる。すなわち、片側一方の手でヘッド1を引きワンタッチファスナーF1を引き抜けばよい。このようにフック解除キー61を使ってフック3の一端部301を押し込み、ヘッド1を摘まんでファスナーF1を引き抜くだけで、ファスナーF1を2部材P1、P2から簡単に取り外すことができる。
【0040】
なお、ワンタッチファスナーF1を2部材P1、P2から取り外すに当たり、フック3の係止爪31と他方の部材P2の取付孔Оの縁部との係合位置に手が入る場合は、一方の手で一方の部材P1の取付孔О側のヘッド1を掴み、他方の手で他方の部材P2の取付孔О側のフック3をシャフト2の溝の一側201に向けて押し込みながら、片側一方の手でヘッド1を引けば、ファスナーF1を引き抜くことができる。このようにしてもファスナーF1を簡単に取り外すことができる。
【0041】
以上説明したように、このワンタッチファスナーF1によれば、2部材の取付孔間にシャフト2をワンプッシュで通すだけで、2部材をヘッド1とフック3で固定することができ、工具を用いることなしに2部材を簡単に接合することができる。しかも、このファスナーF1は円形のヘッド1と円柱形のシャフト2とによりボルト型になっているので、一般のボルトと同様に、手に持ちやすく、2部材の取付作業を従来にも増して手早く、確実に行うことができる。
【0042】
他面で、ヘッド1は2部材の一方の取付孔よりも少し大きくし、シャフト2は2部材の各取付孔に嵌装可能な大きさ(径)で、各取付孔を通り抜け可能に所定の長さを有すればよく、その断面形状は円形など単純な形状でよいので、2部材の各取付孔を円形など単純な形状にすることができる。したがって、孔明け作業も容易にすることができ、孔明けに要するコストを低く抑えることができる。
【0043】
そして、このワンタッチファスナーF1では、2部材間に通し固定されたファスナーF1を取り外す必要がある場合に、フック3の係止爪31と他方の部材の取付孔の縁部との係合位置に手が入らず、フック3を他方の部材の取付孔の縁部で直接手で押し込むことができない場合でも、フック解除キー61を用い、ピン611をヘッド1のフック解除口60からシャフト2内に通して、ピン611先でフック3の一端部301を押すことにより、フック3の係止爪31をシャフト2内部に没入させて、フック3の係止爪31と他方の部材の取付孔の縁部との弾性係合を解除することができるので、フック解除キーで61でフック3の一端部301を押し込みながら、ヘッド1を摘まんでファスナーF1を2部材の各取付孔から引き抜けば、ファスナーF1を2部材から簡単に取り外すことができる。
【0044】
図8乃至
図10に第2の実施の形態を示している。この実施の形態(ワンタッチファスナーF2)では、ばね部材配置部20T及びフック3の構成が第1の実施の形態と異なる。この実施の形態の説明では、第1の実施の形態と共通の構成については第1の実施の形態と同じ符号を付してその重複する説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成については新たなに符号を付して説明を追加する。
【0045】
図8に示すように、ばね部材配置部20Tそれ自体は、第1の実施の形態と同様に、溝20の先端部側に、シャフト2の軸方向に対して直交方向に一対の軸受211間に対して直交して、溝の他側202側の他端をシャフト2の周面にコイルスプリング5を挿通可能に開口され、溝の一側201側の一端をシャフト2の周面の近傍(溝の他側202から見て溝の一側201の手前)に底部として形成されて、略有底の円筒形に形成される。そして、このばね部材配置部20Tの一端の底部に、第1の実施の形態と異なり、ストッパー24が配置される。
【0046】
ストッパー24は、
図9に示すように、ばね部材配置部20Tの底部に嵌合されるばね受け部241及びこのばね受け部241から溝の一側201に沿って延び、フック3の一端部301-2に係合可能に延びるフック回動規制係合部242を有する。この場合、ストッパー24は円形の平板部241とこの円形の平板部241の外周縁において直径上で相互に対向する2箇所の各部から直径の外側延長2方向に所定の長さに延びる2つの四角形の平板部242とからなる。この円形の平板部241がばね部材配置部20Tの底部に嵌合可能に形成されてばね受け部241になっており、これら2つの四角形の平板部242の一方が溝の一側201に沿って延び、フック3の一端部301に係合可能に所定の長さ、幅に形成されてフック回動規制係合部242になっている。このようなストッパー24が、ばね部材配置部20Tの底部にばね受け部241を配置し、フック回動規制係合部242を溝の一側201に沿って配置して、取り付けられる。
【0047】
フック3は、
図10に示すように、一端部301-2が基本形状を断面半円形とし、この場合、一側部303の一端より少し内側(の位置)から軸挿通部30の中心を円の中心とする断面略半円形に形成され、これに後述のとおり、回動規制被係合部33、ばね受け部34が形成される。なお、この場合、一端部301-2と他側部304との間の段差部307、すなわち、ピン係合部307は第1の実施の形態と略同様に形成される(つまり、ピン係合部307については第1の実施の形態と同様に形成され、この一端部301-2は第1の実施の形態の形状の一部を含む複合形状になっている。)。
【0048】
回動規制被係合部33は、フック3の一端部301-2でばね部材配置部20Tの一端側にストッパー24のフック回動規制係合部242に係合可能に形成される。この場合、回動規制被係合部33はフック3の一側部303の一端と一端部301-2の一端との間に平面視四角形の傾斜面状(一端部301-2の一端から一側部303の一端に向けて下り傾斜の傾斜面状)に、フック3の係止爪31がフック組み込み部20から所定の突出状態に突出された状態でストッパー24の回動規制係合部242が係合可能に(つまり、四角形の平板の突出端に衝接するように)、フック3の係止爪31がフック組み込み部20に向けて押圧回動されることでストッパー24の回動規制係合部242との係合を解除可能に(つまり、四角形の平板の突出端から離れるように)形成される。
【0049】
ばね受け部34は、フック3の一端部301-2でばね部材配置部20Tの他端側にばね部材配置部20Tの他端側に向けて突出して形成される。この場合、ばね受け部34はフック3の一端部301-2の他端側の略半部から断面細長い台形状に延び、先端面、周面をなす各面が四角形の略平面で、ばね部材配置部20Tのストッパー24のばね受け部241に対向する平面がフック3の一側部303と平行又は平行よりも僅かにフック3の一端部301-2に向けて少し傾斜され、この場合は後者で、この面がコイルスプリング5のばね受けになっている。
【0050】
かくして、
図11(a)に示すように、ばね部材配置部20Tのストッパー24のばね受け部241とフック3のばね受け部34との間にコイルスプリング5が介装される。このようにして、ストッパー24の回動規制係合部242とフック3の回動規制被係合部33との係合によりフック3の一端部301-2の溝の他側202方向への回動を規制され、各ばね受け部241、34間でコイルスプリング5が圧縮されて、既述のとおり、常態として(つまり、
図11(b)に示すように、フック3の係止爪31が溝の一側201に向けて加圧されない限り)フック3の係止爪31がシャフトの溝の一側201から溝の一側201の外部へ所定の突出状態に弾性的に突出される。なお、
図11(c-1)には、2部材P1、P2の厚みが大きい場合を例示し、
図11(c-2)には、2部材P1、P2の厚みが小さい場合を例示している。
【0051】
このようにしても、第1の実施の形態と同様に使用することができ、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
図12乃至
図15に第3の実施の形態を示している。この実施の形態(ワンタッチファスナーF3)では、ばね部材配置部20T-3及びフック3の構成が第1の実施の形態と異なる。この実施の形態の説明では、第1の実施の形態と共通の構成については第1の実施の形態と同じ符号を付してその重複する説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成については新たなに符号を付して説明を追加する。
【0053】
図12に示すように、ばね部材配置部20T-3は、溝20の先端部側に、一端がシャフト2の先端面に開口され、一対の分割シャフト21、21の内面間に軸方向に向けてコイルスプリング5を挿通可能に略有底の円筒形に形成され、他端が底部になっている。そして、このばね部材配置部20T-3の他端の底部にストッパー25が配置される。
【0054】
ストッパー25は、
図13に示すように、コイルスプリング5のばね受け部251をなし、かつ後述するフック3の一端部301-3の凸状354に係合しフック回動規制係合部253をなす平板からなる。この場合、ストッパー25は、円形の平板部251と、この円形の平板部251の外周縁の一部から直径の外側延長方向に所定の長さ、幅の円弧状に突出される円弧状の平板部252と、円形の平板部251の外周縁で円弧状の平板部252とは反対側の一部に円弧状の平板部252に向けて所定の長さ、幅のコ字形に切り欠かれる凹状の縁部253とからなる。この円形の平板部251がばね部材配置部20T-3の底部に嵌合載置可能に形成されてばね受け部251になっている。この円弧状の平板部252がシャフト2の溝の他側202に嵌挿可能に形成されて溝の他側202との係合部252になっている。そして、この凹状の縁部253がフック3の凸状354に係合可能に形成されてフック回動規制係合部253になっている。
【0055】
フック3は、
図14、
図15(b)に示すように、一端部301-3が、フック3の係止爪31がフック組み込み部20に没入された状態で、ばね部材配置部20T-3の他端(底部)からばね部材配置部20T-3へ、頂部351側の一部を所定の長さまで突出可能に断面V字形をなす2面形状35に形成される。併せて、この2面形状35の頂部351とフック3の一側部303との間の一方の面352は、
図14、
図15(a)に示すように、フック3の係止爪31がフック組み込み部20から所定の突出状態に突出された状態で、ばね部材配置部20T-3の他端(底部)で平面をなすように形成される。そして、この一方の面352のフック3の一側部303側の端部がばね部材配置部20T-3へ少し突出可能に凸状354に形成される。この場合、一端部301-3の2面形状35の2面352、353間は略直角をなし、頂部351が角丸になっている。このようにして一方の面352は、フック3の係止爪31がフック組み込み部20から所定の突出状態に突出された状態で、ばね部材配置部20T-3の他端でこの他端と平行の平面(言い換えれば、シャフト2の軸方向に対して直角の面)をなす。この場合、頂部351はばね部材配置部20T-3へ突出されない。また、この場合、他方の面353は溝の他側202において、シャフト2の外周面内でこの外周面に沿って平行の面をなす。また、フック3の一端部301-3の凸状354は一端部301-3の一側部303側の端部から小形の略台形に突出され、シャフト2の溝の他側202に向けられる面が、フック3がシャフト2の溝の一側201から所定の突出状態に突出された状態で、シャフト2の軸方向に対して平行をなし、ストッパー25のフック回動規制係合部253に係合可能なフック回動規制被係合部354になっている。
【0056】
かくして、
図12に示すように、ばね部材配置部20T-3の他端のストッパー25のばね受け部251とばね部材配置部20T-3の一端との間にコイルスプリング5が装着される。そして、ばね部材配置部20T-3にコイルスプリング5が介装された後、ばね部材配置部20T-3の一端にコイルスプリング5を押圧可能に保持するストッパー26が設けられる。この場合、ストッパー26はばね部材配置部20T-3の一端、すなわち、シャフト2の先端面2Tの開口縁部がかしめられて形成される。このようにして、
図15(a)に示すように、フック3の一端部301-3の凸状354、つまりフック回動規制被係合部354と、ばね部材配置部20T-3の他端のストッパー25の凹状の縁部253、つまり、フック回動規制係合部253と、の係合により、フック3の一端部301-3の溝の他側202方向への回動を規制され、ばね部材配置部20T-3の両端の各ストッパー25、26間でコイルスプリング5が圧縮されて、既述のとおり、常態として(つまり、
図15(b)に示すように、フック3の係止爪31が溝の一側201に向けて加圧されない限り)フック3の係止爪31がシャフト2の溝の一側201から溝の一側201の外部へ所定の突出状態に弾性的に突出される。なお、
図15(c-1)には、2部材P1、P2の厚みが大きい場合を例示し、
図15(c-2)には、2部材P1、P2の厚みが小さい場合を例示している。
【0057】
このようにしても第1の実施の形態と同様に使用することができ、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
なお、上記各実施の形態では、フック3はフック組み込み部20に嵌合可能に略プレート状に形成されるものとしたが、このファスナーF1が比較的大きく形成され、フック組み込み部が幅広に形成される場合、フックはこのフック組み込み部に嵌合可能に略ブロック状に形成されてもよい。ばね部材配置部20T、20T-3は溝20の先端側に略有底の円筒形に形成されるものとしたが、角形に形成されてもよい。フック3の係止爪31は2部材の他方の取付孔の縁部に弾性係合されるものとしたが、フック3の係止爪31は2部材の他方の取付孔の縁部周囲に弾性係合させるようにしてもよい。
このようにしても上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
また、上記各実施の形態では、ばね部材にコイルスプリング5が用いられているが、このばね部材にトーションスプリングや板ばねが採用されて、フックに作動連結されてもよい。
このようにしても上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
さらに、上記各実施の形態では、ワンタッチファスナーF1-F3は2枚の部材の接合に使用されるものとしているが、2枚の部材間に他の部材を介在する場合や3枚以上の部材を重ねて結合する場合にも、同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
F1 ワンタッチファスナー
1 ヘッド
2 シャフト
2T 先端面
20 溝(フック組み込み部)
201 (溝の)一側
202 (溝の)他側
20T ばね部材配置部
20R フック配置部
21 分割シャフト
211 軸受
22 ばね受け部
23 ストッパー
М3 フック機構
3 フック
301 一端部
302 他端部
303 一側部
304 他側部
305 側面部
306 側面部
307 段差部(ピン係合部)
30 軸挿通部
31 係止爪
32 ばね受け部
4 軸
5 ばね部材(コイルスプリング)
6 フック解除機能部
60 フック解除口
61 フック解除キー
611 ピン
612 グリップ
7 ワッシャー
F2 ワンタッチファスナー
24 ストッパー
241 ばね受け部
242 フック回動規制係合部
301-2 一端部
33 フック回動規制被係合部
34 ばね受け部
F3 ワンタッチファスナー
25 ストッパー
251 ばね受け部
252 係合部
253 フック回動規制係合部
26 ストッパー
301-3 一端部
35 2面形状
351 頂部
352 一方の面
353 他方の面
354 凸状(フック回動規制被係合部)
P1 (一方の)部材
P2 (他方の)部材
О 取り付け孔