(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106800
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法および排気ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20230726BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20230726BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F01N3/023 K
F01N3/18 C
F01N11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007744
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長堂 嘉利
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA10
3G091AA18
3G091AA28
3G091AB02
3G091AB13
3G091BA07
3G091BA31
3G091CA18
3G091EA17
3G091EA32
3G091HA15
3G091HA36
3G091HA37
3G190AA02
3G190AA12
3G190AA16
3G190BA06
3G190BA33
3G190BA49
3G190CA01
3G190CB18
3G190CB23
3G190CB34
3G190CB35
3G190DA03
3G190DA04
3G190DA08
3G190DA39
3G190DB02
3G190DB12
3G190DB20
3G190DB22
3G190DB27
3G190DB33
3G190DD08
3G190EA09
3G190EA13
3G190EA14
3G190EA16
3G190EA23
3G190EA60
(57)【要約】
【課題】フィルタの清掃を行うべきタイミングを適切に判定することができる処理装置、処理方法および排気ガス処理システムを提供する。
【解決手段】処理装置は、エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタに堆積したアッシュの堆積量の推定値を示す情報と、大気圧を示す情報とを取得する取得部と、前記大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量に対応する許容アッシュ堆積量閾値を算出する算出部と、前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定する判定部と、前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知する報知部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタに堆積したアッシュの堆積量の推定値を示す情報と、大気圧を示す情報とを取得する取得部と、
前記大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量に対応する許容アッシュ堆積量閾値を算出する算出部と、
前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定する判定部と、
前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知する報知部と、
を備える処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記フィルタの再生間隔に係る情報である再生情報をさらに取得し、
前記判定部は、さらに、前記再生情報と前記推定値とに基づいて前記フィルタの清掃が 必要であるか否かを判定する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記再生情報は、前記再生間隔が所定の第2時間を超えることなく前記第2時間より短い第1時間以内である場合の回数である第1回数を含み、
前記判定部は、前記再生情報と前記推定値とに基づいて前記フィルタの清掃が必要であるか否かを判定する際に、前記推定値が所定の第1アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第1回数が所定の第1回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定する
請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記再生情報は、前記再生間隔が継続的に前記第2時間以内である場合の回数である第2回数をさらに含み、
前記判定部は、さらに、前記推定値が所定の第2アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第2回数が所定の第2回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃の準備が必要であると判定し、
前記報知部は、さらに、前記フィルタの清掃に準備が必要であると判定された場合、その旨を報知する
請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記フィルタの再生間隔に係る情報である再生情報をさらに取得し、
前記再生情報は、前記再生間隔が所定の第2時間を超えることなく前記第2時間より短い第1時間以内である場合の回数である第1回数と、前記再生間隔が継続的に前記第2時間以内である場合の回数である第2回数とを含み、
前記判定部は、前記推定値が所定の第1アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第1回数が所定の第1回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定し、前記推定値が所定の第2アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第2回数が所定の第2回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃の準備が必要であると判定し、前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定し、
前記報知部は、前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知するとともに、前記フィルタの清掃に準備が必要であると判定された場合、その旨を報知する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、さらに、前記推定値が、大気圧に応じて設定された第3アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定する
請求項1から5のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタに堆積したアッシュの堆積量の推定値を示す情報と、大気圧を示す情報とを取得するステップと、
前記大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量に対応する許容アッシュ堆積量閾値を算出するステップと、
前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定するステップと、
前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知するステップと、
を含む処理方法。
【請求項8】
前記フィルタに堆積したアッシュの堆積量の推定値を示す情報と、大気圧を示す情報とを取得するステップでは、前記フィルタの再生間隔に係る情報である再生情報をさらに取得し、
前記再生情報は、前記再生間隔が所定の第2時間を超えることなく前記第2時間より短い第1時間以内である場合の回数である第1回数と、前記再生間隔が継続的に前記第2時間以内である場合の回数である第2回数とを含み、
前記推定値が所定の第1アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第1回数が所定の第1回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定するステップと、
前記推定値が所定の第2アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第2回数が所定の第2回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃の準備が必要であると判定するステップと、
前記フィルタの清掃に準備が必要であると判定された場合、その旨を報知するステップと
をさらに含む請求項7に記載の処理方法。
【請求項9】
エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタに堆積したアッシュの堆積量の推定値を示す情報と、大気圧を示す情報とを取得する取得部と、
前記大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量に対応する許容アッシュ堆積量閾値を算出する算出部と、
前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定する判定部と、
前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知する報知部と、
を備える排気ガス処理システム。
【請求項10】
前記取得部は、前記フィルタの再生間隔に係る情報である再生情報をさらに取得し、
前記再生情報は、前記再生間隔が所定の第2時間を超えることなく前記第2時間より短い第1時間以内である場合の回数である第1回数と、前記再生間隔が継続的に前記第2時間以内である場合の回数である第2回数とを含み、
前記判定部は、前記推定値が所定の第1アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第1回数が所定の第1回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定し、前記推定値が所定の第2アッシュ堆積量閾値以上であり、かつ、前記第2回数が所定の第2回数閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃の準備が必要であると判定し、前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定し、
前記報知部は、前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知するとともに、前記フィルタの清掃に準備が必要であると判定された場合、その旨を報知する
請求項9に記載の排気ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、処理方法および排気ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気中に含まれる粒子状物質(Paticulate Matter(PM))を捕集するフィルタに規定量以上のアッシュが堆積しているか否かを判定する排気後処理装置が記載されている。粒子状物質は、スス(煤)、燃料の燃え残り、アッシュ(Ash、オイルアッシュ等とも言われる)等を含む。アッシュは、エンジンオイルに添加剤として含まれるカルシウムなどの金属成分の燃え滓である。特許文献1に記載されている装置では、フィルタに粒子状物質が堆積した場合、フィルタを加熱昇温し、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する再生運転が行われる。ただし、アッシュは、再生運転では除去することができない。特許文献1に記載されている装置では、この再生運転の実施間隔が短くなった場合に、フィルタに規定量以上のアッシュが堆積していると判定される。また、特許文献1に記載されている装置では、規定量以上のアッシュが堆積していると判定された場合、フィルタの清掃が必要である旨の警告が行われる。
【0003】
なお、特許文献1に記載されている装置では、再生運転が必要か否かが次のようにして判定される。すなわち、特許文献1に記載されている装置では、フィルタの上流側圧力値と下流側圧力値との差圧、排気流量および排気温度に基づく堆積量に対応する値が、所定値に達した場合に、再生運転が必要であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている装置では、再生運転の実施間隔が短くなった場合にフィルタの清掃が必要であると判定される。しかしながら、アッシュがフィルタに堆積する速度は車両の使われ方により差がある。また、再生運転の実施間隔も車両の使われ方により差が生じる。したがって、車両の使われ方によっては、フィルタの清掃を行うべきタイミングを適切に判定することができない場合あるという課題がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、フィルタの清掃を行うべきタイミングを適切に判定することができる処理装置、処理方法および排気ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の処理装置は、エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタに堆積したアッシュの堆積量の推定値を示す情報と、大気圧を示す情報とを取得する取得部と、前記大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量に対応する許容アッシュ堆積量閾値を算出する算出部と、前記推定値が、前記許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、前記フィルタの清掃が必要であると判定する判定部と、前記フィルタの清掃が必要であると判定された場合、その旨を報知する報知部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の処理装置、処理方法および排気ガス処理システムによれば、フィルタの清掃を行うべきタイミングを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るエンジン制御システムの構成例を示すシステム図である。
【
図2】
図1に示す制御装置100の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す算出部104を説明するための模式図である。
【
図4】
図2に示す算出部104を説明するための模式図である。
【
図5】
図2に示す算出部104を説明するための模式図である。
【
図6】
図2に示す算出部104を説明するための模式図である。
【
図7】
図2に示す算出部104を説明するための模式図である。
【
図8】
図2に示す制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0011】
(エンジン制御システム10)
図1は、本開示の実施形態に係る排気ガス処理システムの一構成例としてのエンジン制御システム10の構成例を示すシステム図である。
図1に示すエンジン制御システム10は、エンジン1と、ターボチャージャー2と、排気管3と、排気ガス後処理装置の一構成例としてのDPF装置5と、モニタ8と、HCドーザ7と、大気圧センサ98と、制御装置100とを備える。なお、
図1等では、本実施形態のエンジン制御システム10において(あるいは制御装置100について)、DPF装置5に係る構成を主に示し、燃料噴射制御等の他の機能に係る構成については図示を適宜省略している。また、HCは炭素と水素を含んだ有機化合物の総称である。
【0012】
エンジン1は、内燃機関の一構成例であり、本実施形態では例えば多気筒のディーゼルエンジンである。ターボチャージャー2は、エンジン1の排気を利用してエンジン1の吸気を圧縮する過給機である。排気管3は、エンジン1の排気を、DPF装置5を通して大気に排気する。
【0013】
DPF装置5は、エンジン1の排気中に含まれる粒子状物質を浄化する装置であり、エンジン1の排気管3内に設けられたDOC(Diesel Oxidation Catalyst;ディーゼル酸化触媒)51と、エンジン1の排気中のPMを捕集するフィルタであるDPF(Diesel Particulate Filter;ディーゼルパティキュレートフィルタ)52とを有する。DPF装置5は、DOC51の作用によってDPF52を再生する。DPF装置5は、DPF52の上流に設けられたDOC51で変換された二酸化窒素によって下流で捕集されたススを酸化して二酸化炭素とし、ススを除去する。
【0014】
また、DPF装置5は、DOC51の入口の排気温度を検知するDOC入口温度センサ94と、DOC51の出口の排気温度を検知するDOC出口温度センサ95と、DPF52の入口と出口の差圧を検知する1組の圧力センサ96および97とを有する。以下では、このDPF52の入口と出口の差圧をDPF差圧あるいはDPF圧損ともいう。DOC入口温度センサ94、DOC出口温度センサ95、ならびに、圧力センサ96および97の各検出値は、制御装置100へ出力される。
【0015】
HCドーザ7は、DOC51の上流で排気管3内に燃料(HC)を噴射(以下、HCドージング等という)する排気管燃料噴射装置である。HCドーザ7によるHCドージングは、制御装置100によって制御される。
【0016】
モニタ8は、例えば表示パネルと入力パネルとを有し、表示装置および入力装置として機能し、制御装置100の指示に応じて所定の文字や画像を表示したり、ユーザ(オペレータ)の入力操作に応じた信号を制御装置100へ出力したりする。
【0017】
大気圧センサ98は大気圧を検出し、検出値を制御装置100へ出力する。
【0018】
本実施形態のエンジン制御システム10では、DPF52に堆積したPMを燃焼させるために定期的に再生運転(DPF再生運転)が行われる。この再生運転では、排気の温度やDOC51の温度が強制的に上昇させられる。再生運転は、例えばエンジン1内で排気に燃料をわずかに混合するためのポスト噴射によって、あるいは、ポスト噴射とDPF装置5の上流の排気管3内部へのHCドーザ7によるHCドージングとの組み合わせや、HCドージングによって、DPF52上流に配置されたDOC51内部でHCを燃焼させ、DPF52の温度を上げることによって行われる。
【0019】
なお、本実施形態のエンジン制御システム10では、再生運転(DPF再生運転)には、ある条件が満たされたときに通常稼動状態(エンジン回転数を強制的に固定する等せずに、通常の運転や作業が行える状態)で自動的に再生を行う自動再生と、ユーザの操作で再生の必要がある際に任意のタイミングで再生を行う定置手動再生(手動再生)とがある。定置手動再生は、通常稼動状態では十分に排気温度が上がらず、DPF装置5の温度を安定的に目的の温度に制御できない場合に、ユーザの許可の下、通常稼動を停止させて、DPF装置5の性能を回復させる制御である。定置手動再生では、制御装置100が、まず、モニタ8を用いて、定置手動再生を行うことができる状態であること、また、行うようにとの要求をユーザへ出す。これに対し、ユーザがモニタ8を用いて、定置手動再生を実行するよう指示を出すと、制御装置100はエンジン回転数をある回転に固定させて、排気温度を上昇させて、再生運転を実行する。
【0020】
(制御装置100)
図2~
図8を参照して、
図1に示す制御装置100の構成例および動作例について説明する。
図2は、
図1に示す制御装置100の構成例を示すブロック図である。
図3~
図7は、
図2に示す算出部104を説明するための模式図である。
図8は、
図2に示す制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0021】
図2に示す制御装置100は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータと、そのコンピュータの周辺回路や周辺装置とを用いて構成することができ、そのコンピュータ等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、
図2に示す複数のブロックを備える。
図2に示す例では、制御装置100は、燃料噴射制御部101、フィルタ再生制御部102、アッシュ堆積量推定部103、算出部104、取得部105、判定部106、および、報知部107を備える。
【0022】
燃料噴射制御部101は、例えば、フィルタ再生制御部102の指示に従い、エンジン1の図示していない燃料噴射装置等を制御して再生運転時に例えばポスト噴射を行う。
【0023】
フィルタ再生制御部102は、圧力センサ96および97が検知したDPF52の差圧に基づき、例えば、差圧が所定の閾値を超えた場合、再生運転を開始する。フィルタ再生制御部102は、例えば次のようにして再生運転を実行する。フィルタ再生制御部102は、DOC出口温度が例えば所定の再生ターゲット温度に合うように、例えばエンジン1のポスト噴射の制御またはHCドーザ7によるHCドージング量の制御とによって、DOC出口温度をフィードバック制御する。ただし、HCがドーズ(噴射)されるのは、DOC入口温度がDOC51に含まれる触媒が活性化する温度(ライトオフ温度、例えば約250℃)に達してからとなる。
【0024】
また、フィルタ再生制御部102は、DPF52の再生間隔(再生運転の時間間隔)に係る情報である再生情報を取得部105等に対して出力する。本実施形態において、再生情報は、再生運転の時間間隔や頻度を表す情報である。あるいは、再生情報は、再生間隔が所定の時間(第2時間とする)を超えることなく第2時間より短い第1時間以内である場合の回数である第1回数を含んでいてもよい。あるいは、再生情報は、再生間隔が継続的に第2時間以内である場合の回数である第2回数をさらに含んでいてもよい。なお、以下の動作例の説明では、一例として、第1時間を10時間とし、第2時間を15時間とする。また、再生の間隔が15h(時間)以下の回数(第2回数)をXXと表し、再生の間隔が10h以下の回数(第1回数)をYYと表す。なお、XXとYYは例えば再生間隔が15hより大きいときあるいは15hより大きいときが複数回記録された場合にリセットされる。
【0025】
アッシュ堆積量推定部103は、DPF52に堆積しているアッシュ堆積量を推定し、推定値を示す情報をアッシュ情報として取得部105等に対して出力する。アッシュ堆積量推定部103は、例えば、通常より長いアッシュ堆積量推定のためのDPF再生を実施し、PM堆積量0g時のDPF差圧と、アッシュ堆積量0g時のDPF差圧(初期値、設定値)の差をとり、アッシュ堆積量を推定する。あるいは、アッシュ堆積量推定部103は、例えば、消費されるオイル量とDPF52によるアッシュ補足率からDPF52内部のアッシュ堆積量を推定する。本実施形態では、アッシュ堆積量を、DPF52の単位体積当たりの質量(g/L)で表す。ただし、これに限らず、例えば質量を単位としてもよい。
【0026】
算出部104は、大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量に対応する許容アッシュ堆積量閾値を算出する。ここで、
図3~
図7を参照して、大気圧に応じて変化する許容されるアッシュ堆積量について説明する。ここで、許容アッシュ堆積量閾値は、排気圧力をエンジン1が許容できる範囲に維持するために許容されるアッシュ堆積量の最大値に対応し、大気圧に応じて変化する値である。以下の動作例では、許容アッシュ堆積量閾値をアッシュ堆積量ZZと表す。なお、許容アッシュ堆積量閾値およびアッシュ堆積量ZZは、本開示における第3アッシュ堆積量閾値の一例である。
【0027】
図3は、横軸を背圧(排気圧力)、縦軸をターボチャージャー2のタービン入口温度とし、異なる2種類の高度H1と高度H2(H2>H1)における背圧とタービン入口温度との対応関係の例を示す。高度は、車両(エンジン1)の稼働高度である。上限温度は、タービン入口温度の最大許容温度である。
図3に示す関係では、高度が増加すると、タービン入口温度が増加する。また、背圧が増加すると、タービン入口温度が増加する。高度H2の場合、背圧が大きくなると、タービン入口温度が上限温度を超過する場合がある。一方、高度H1の場合、背圧が大きくなっても、タービン入口温度が上限温度を超過することはない。高度H2の場合、タービン入口温度が上限温度に達する背圧が、許容背圧(最大許容背圧)である。この背圧は、DPF差圧に対応する。
【0028】
図4は、横軸を高度、縦軸を大気密度とし、高度と大気密度との対応関係の例を示す。
図4は、エンジンの稼動高度が高くなると大気密度が低下することを示す。
【0029】
図5は、横軸を大気密度、縦軸を許容背圧とし、大気密度と許容背圧との対応関係を示す。
図5は、大気密度が低下するほど(高度が上昇するほど)、許容背圧が低下することを示す。
【0030】
図6は、横軸をアッシュ堆積量、縦軸をDPF圧損とし、DPF52に堆積したアッシュ堆積量とDPF圧損との対応関係を示す。
図6に示す丸印を境にして、アッシュが大量に堆積すると、DPF圧損は指数関数的に上昇し、アッシュ堆積量をDPF圧損で推定することが困難になる。このため、DPF内部に堆積したアッシュ量が過大となる前に、DPFの清掃を実施することが求められる。
【0031】
図3~
図6に示す関係から、ある大気密度のときにタービン入口温度が上限に達するときの排気圧力となるアッシュ堆積量が、許容される最大のアッシュ堆積量となる。例えば、
図3に示す高度:H2の大気密度の場合の許容排気圧力は、タービン入口温度が上限温度に達したところの背圧(排気圧力)であり、この背圧に対応するアッシュ堆積量に対応する。また、定格点でこの排気圧力となるアッシュ堆積量が、アッシュ堆積量ZZとなる。
【0032】
算出部104は、例えば
図7に示すような、大気密度と許容背圧となるアッシュ堆積量(アッシュ堆積量ZZ)との対応関係を示すテーブルを用いて、アッシュ堆積量ZZ(許容アッシュ堆積量閾値)を算出する。なお、テーブルの内容は、試験機における実験結果や試験機を模したモデルを用いたシミュレーション結果等に基づいて設定することができる。
【0033】
取得部105は、フィルタ再生制御部102から再生情報を、アッシュ堆積量推定部103からアッシュ情報を、また、例えば、大気圧センサ98から大気圧を示す情報を取得する。なお、大気圧を示す情報は、例えば、燃料噴射制御部101が大気圧センサ98から大気圧の検出結果を取得し、燃料噴射制御部101が温度に基づいて大気密度に変換した後、取得部105が大気密度の値を大気圧を示す情報として燃料噴射制御部101から取得してもよい。
【0034】
判定部106は、再生情報とアッシュ情報が示すアッシュ堆積量の推定値とに基づきDPF52の清掃が必要であるか否かを判定する。あるいは、判定部106は、アッシュ情報が示すアッシュ堆積量の推定値が、算出部104が算出した許容アッシュ堆積量閾値以上である場合に、DPF52の清掃が必要であると判定する。なお、判定部106は、例えば、エンジン1が運転中であるか否かを判定する機能を有していてもよい。
【0035】
判定部106は、例えば以下の条件1~条件4の判定結果に基づいて、清掃準備、清掃要求、または清掃不要との判定結果を決定することができる。清掃準備は、DPF52の清掃の準備が必要な状態であることを示す。清掃要求は、DPF52の清掃が必要な状態であることを示す。清掃不要は、DPF52の清掃の不要な状態であることを示す。なお、以下の例では、清掃準備をスキップして清掃要求が発報される場合もある。
【0036】
条件1:アッシュ堆積量の推定値≧1.5g/L。なお、この1.5g/Lが、本開示における第1アッシュ堆積量閾値と第2アッシュ堆積量閾値の一例である。この場合、第1アッシュ堆積量閾値と第2アッシュ堆積量閾値は同一であるが、異なっていてもよい。
【0037】
条件2:再生間隔≦15hの回数XXが2回以上。なお、この2回が、本開示における第2回数閾値の一例である。
【0038】
条件3:再生間隔≦10hの回数YYが2回以上。なお、この2回が、本開示における第1回数閾値の一例である。
【0039】
条件4:アッシュ堆積量の推定値≧アッシュ堆積量ZZ。
【0040】
清掃準備の条件:条件1:True かつ 条件2:True。
【0041】
清掃要求の条件:(条件1:True かつ 条件3:True) または 条件4:True。
【0042】
清掃不要の条件:上記以外。
【0043】
なお、
図7および
図8で用いたアッシュ堆積量についての数値は説明のための仮の値であり、実際の値とは異なる。
【0044】
報知部107は、判定部106によってDPF52の清掃が必要であると判定された場合、あるいは、判定部106によってDPF52の清掃の準備が必要であると判定された場合、その旨を例えばモニタ8からユーザに対して報知する。なお、報知部107は、例えば、モニタ8による報知に限らず、車両に取り付けられたブザーでの発音、警告灯の点灯や点滅、合成音声の発音、ユーザやその他の管理者等の携帯端末や遠隔地にあるコンピュータ等への通知によって、清掃や清掃の準備が必要であることを報知してもよい。
【0045】
次に、
図8を参照して、制御装置100の動作例について説明する。
図8に示す処理は、エンジン1の起動時に開始される。なお、
図8では「Y」がYesを意味し、「N」がNoを意味する。
図8に示す処理が開始されると、取得部105が、アッシュ堆積量の推定値、回数XX、回数YYおよび大気圧を取得する(ステップS1)。次に、算出部104が、大気圧を参照し、許容排気圧力となるアッシュ堆積量ZZを演算する(ステップS2)。次に、判定部106が、アッシュ堆積量の推定値がZZg/L以上であるか否かを判定する(ステップS3)。アッシュ堆積量の推定値がZZg/L以上である場合(ステップS3:Y)、判定部106がDPF52の清掃が必要であると判定するとともに、報知部107がその旨を報知し(ステップS4)、
図8に示す処理が終了する。
【0046】
アッシュ堆積量の推定値がZZg/L以上でない場合(ステップS3:N)、判定部106が、アッシュ堆積量の推定値が1.5g/L以上かつ回数YYが2以上であるか否かを判定する(ステップS5)。アッシュ堆積量の推定値が1.5g/L以上かつ回数YYが2以上である場合(ステップS5:Y)、判定部106がDPF52の清掃が必要であると判定するとともに、報知部107がその旨を報知し(ステップS4)、
図8に示す処理が終了する。
【0047】
アッシュ堆積量の推定値が1.5g/L以上かつ回数YYが2以上でない場合(ステップS5:N)、判定部106が、アッシュ堆積量の推定値が1.5g/L以上かつ回数XXが2以上であるか否かを判定する(ステップS6)。アッシュ堆積量の推定値が1.5g/L以上かつ回数XXが2以上である場合(ステップS6:Y)、判定部106がDPF52の清掃の準備が必要であると判定するとともに、報知部107がその旨を報知し(ステップS7)、
図8に示す処理が終了する。
【0048】
アッシュ堆積量の推定値が1.5g/L以上かつ回数XXが2以上でない場合(ステップS6:N)、例えば判定部106がエンジン1が運転中であるか否かを判定する(ステップS8)。エンジン1が運転中である場合(ステップS8:Y)、ステップS1の処理が実行され、エンジン1が運転中でない場合(ステップS8:N)、
図8に示す処理が終了する。
【0049】
(作用・効果)
以上のように、本実施形態によれば、アッシュ堆積量の推定値と再生運転の間隔とに基づいて、アッシュ堆積による影響で再生頻度が高くなっていることを検知することができるので、適切なDPF52の清掃タイミングを報知することができる。
【0050】
また、大気圧と温度許容範囲を元に、許容最大DPF圧損(=アッシュ堆積量)を演算し、これを超えるアッシュ堆積量の場合に、DPF52の清掃タイミングを報知する。この構成によれば、大気密度に応じて許容背圧を変えることで、上限タービン入口温度を守り、エンジンを保護しつつ、アッシュ堆積量上限までDPF52を使用することができる。また、本実施形態によれば、アッシュによりDPF52の圧損が過大になり、エンジンの排気温度が上昇し、エンジンが破損することを防止することができる。
【0051】
本実施形態によれば、DPF52(フィルタ)の清掃を行うべきタイミングを適切に判定することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、アッシュによる差圧上昇とPMによる差圧上昇を見分けることができるので、アッシュによる影響で再生頻度が高くなっている場合にこれを検知し、適切にDPF清掃タイミングを報知することができる。また、アッシュとPMを見分けることで、トラブルシューティングを効率よく実施でき、停車時間を短くできる。また、原因を特定することで不要なDPF清掃を避けることができる。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記実施形態は排気ガス後処理装置をDPF装置5で構成しているが、例えばさらに下流にSCR装置(Selective Catalytic Reduction装置(選択触媒還元装置))を設けてもよい。なお、大気密度、許容背圧となるアッシュ堆積量等の値は例示である。
【符号の説明】
【0054】
1…エンジン、2…ターボチャージャー、3…排気管、5…DPF装置、7…HCドーザ、51…DOC、52…DPF、94…DOC入口温度センサ、95…DOC出口温度センサ、96、97…圧力センサ、98…大気圧センサ、100…制御装置、101…燃料噴射制御部、102…フィルタ再生制御部、103…アッシュ堆積量推定部、104…算出部、105…取得部、106…判定部、107…報知部。