(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106809
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】シャックル取付治具
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230726BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20230726BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B7/00 G
B66B11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007757
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 茂和
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
3F306
【Fターム(参考)】
3F304BA06
3F304BA13
3F305DA07
3F305DA13
3F305DA21
3F306AA02
3F306BA00
(57)【要約】
【課題】巻上機の上部にシャックルを取り付けるためのシャックル取付治具を提供する。
【解決手段】シャックル取付治具10は、巻上機上部カバー3と一体に形成された巻上機1のブレーキコイルの収容器に固定される治具本体11と、治具本体11に締結されるロックボルト17を備える。治具本体11は、収容器のスリットを有する側面に対面させる治具基板12と、収容器のスリットに挿入可能な下受け板13と、下受け板13と対向するように設けられたネジ孔14aを有するロックボルト留板14と、シャックル取付孔16を有するシャックル止め板15とを有する。治具本体11は、治具基板12を収容器の側面に対面させ、下受け板13を収容器のスリットに挿入し、ロックボルト17をネジ孔14aに締結して、ロックボルト17と下受け板13で、収容器の上面とスリットの縁とを挟んで治具本体11が収容器に固定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機上部カバーと一体に形成された巻上機のブレーキコイルの収容器に固定される治具本体と、
前記治具本体に締結されるロックボルトと、
を備えるシャックル取付治具であって、
前記治具本体は、
前記収容器の冷却用スリットを有する側面に対面される治具基板と、
前記治具基板から延出し、前記収容器の冷却用スリットに挿入可能な下受け板と、
前記治具基板から延出し、前記下受け板と対向するように設けられたネジ孔を有するロックボルト留板と、
前記治具基板から延出し、シャックル取付孔を有するシャックル止め板と、
を有し、
前記治具基板を前記収容器の側面に対面させて、前記下受け板を前記収容器の冷却用スリットに挿入して、前記ロックボルトを前記ネジ孔に締結することで、前記ロックボルトと前記下受け板により、前記収容器の上面と前記スリットの縁とを挟んで前記治具本体を前記収容器に固定する、
シャックル取付治具。
【請求項2】
前記下受け板は、前記治具基板の延びる向きに先端を折り返した返し板を有する、
請求項1に記載のシャックル取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの巻上機カバーを吊り上げる際にシャックルを取り付けるためのシャックル取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの保守点検において、巻上機内部の調査や点検を行うには、巻上機の上部カバーを取り外す必要がある。巻上機の上部カバーは、百数十キロと重量があるために、巻上機上部にある点検口蓋の取り付けネジ孔にアイボルトを取り付け、吊り下げることが行われる。しかし、巻上機によっては、点検口蓋の取り付けネジ孔の径が小さいと、対応するアイボルトは荷重に耐えられない場合がある。
【0003】
特許文献1には、エレベータ用巻上機ユニットの吊り治具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエレベータ用巻上機ユニットの吊り治具は、巻上機に連結したマシンビームの上面に連結される取付ビームによって、巻上機ユニット全体を吊り上げて機械室に搬入する吊り治具であって、巻上機の上部カバーを吊り上げるためのものではない。
【0006】
巻上機の上部カバーを吊り上げるには、巻上機上部の横幅方向に2箇所アイボルトを取り付け、それぞれにシャックルを掛けて、チェーンで引上げる必要がある。アイボルトを取り付ける2箇所の内の1つに点検口蓋の取り付けネジ孔を利用するが、点検口蓋のネジ孔の口径が小さく、アイボルトを取り付けられない場合は、巻上機上部のブレーキコイル収容器の冷却用スリットに玉掛けロープを掛けて吊り上げる方法が行われていた。その際に、冷却用スリットに通すロープがブレーキコイルと干渉するため、ブレーキコイルを全て取り外す必要があり、時間と手間がかかっていた。
【0007】
本開示の目的は、巻上機の上部にシャックルを取り付けるためのシャックル取付治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るシャックル取付治具は、巻上機上部カバーと一体に形成された巻上機のブレーキコイルの収容器に固定される治具本体と、治具本体に締結されるロックボルトとを備える。治具本体は、収容器の冷却用スリットを有する側面に対面される治具基板と、治具基板から延出し、収容器の冷却用スリットに挿入可能な下受け板と、治具基板から延出し、下受け板と対向するように設けられたネジ孔を有するロックボルト留板と、治具基板から延出し、シャックル取付孔を有するシャックル止め板とを有する。治具本体は、治具基板を収容器の側面に対面させて、下受け板を収容器の冷却用スリットに挿入して、ロックボルトをネジ孔に締結することで、ロックボルトと下受け板により、収容器の上面とスリットの縁とを挟んで治具本体を収容器に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る巻上機のシャックル取付治具によれば、巻上機の上部にシャックルを取り付けることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】巻上機のブレーキコイルの収容器近傍の拡大図であり、スリットの位置を示す図である。
【
図4】本実施形態のシャックル取付治具を巻上機の上部カバーに取り付けた状態を示す図である。
【
図5】本実施形態のシャックル取付治具の正面図である。
【
図6】本実施形態のシャックル取付治具の上面図である。
【
図7】本実施形態のシャックル取付治具の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。また、以下で説明する実施形態および変形例の構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0012】
図1は、巻上機1の外観図である。巻上機1は、動力を発生させるモータ9と、モータ9からの回転を綱車2に伝えるための複数の減速ギア軸及びモータを制動するためのブレーキ5を備えている。綱車2には、ワイヤーロープが巻き付けられ、ワイヤーロープの両端には、エレベーターのかご室と重りが吊り下げられている。モータ9の回転に連動して、綱車2が回転してエレベーターのかご室を上下させる。
【0013】
巻上機1は、上部カバー3と底部枠体4から構成される枠体を有している。巻上機1の上部カバー3は、底部枠体4から取り外し可能に構成されている。巻上機1の内部の調査や点検は、上部カバー3を取り外して行なわれる。
【0014】
ブレーキ5は、ブレーキコイル5a、ブレーキアーム5b、ブレーキシュー5c、ブレーキホイル5d、ブレーキレバー5e、ブレーキスプリング5f等から構成されている。ブレーキコイル5aは、モータ軸9aの上方で、上部カバー3と一体に形成された収容器6の中に設置されている。ブレーキ5の動作については、後述する。
【0015】
巻上機1の上部カバー3の上面には、点検口蓋8が設けられている。本開示は、巻上機1の上部カバー3の吊り上げに際して、点検口蓋8の取り付けネジ孔に太いアイボルトを取り付けられない場合に、シャックルを取り付けるためのシャックル取付治具10を提供するものである。
【0016】
図2は、ブレーキコイル5aの収容器6を一方の側面6a側から見た図である。収容器6は、巻上機1の上部カバー3と一体に形成されている。収容器6は、横長の略直方体の箱形状をしており、その中にブレーキコイル5aを収容している。収容器6の一方の側面6a及び対向する側面6bには、上下方向にスリット6c~6fが設けられている。スリット6c~6fは、収容器6内のブレーキコイル5aの冷却のために設けられた通風孔である。
【0017】
収容器6の後方(
図2における右側)には、ブレーキ5を作動させるためのブレーキスプリング5fを固定する1対のスプリング取付板7と、ブレーキスプリング5fの伸縮によって動作するブレーキアーム5bが配置されている。収容器6とスプリング取付板7は、何れも巻上機1の上部カバー3と一体に形成されている。従って、巻上機1の上部カバー3を吊り上げる際には、ブレーキスプリング5fを取り外して、スプリング取付板7とブレーキアーム5bの接続を解除する必要がある。更に、従来の収容器6の冷却用スリット6c、6eに玉掛けロープを掛けて吊り上げる方法の場合は、ブレーキコイル5aも取り外す必要がある。
【0018】
図2、3を参照して、ブレーキ5の動作について説明する。
図3は、巻上機1を上方から見た図であり、収容器6とモータ9の近傍を図示している。説明の都合上、スプリング取付板7は図示を省略している。
【0019】
収容器6の内部には、破線で示すブレーキコイル5aが収容されている。ブレーキコイル5aの内部には、ブレーキプランジャー5gが挿入されている。ブレーキプランジャー5gは、ブレーキコイル5aに給電されて磁束が発生すると、図中矢印Aの方向に動くように構成されている。
【0020】
エレベーターの停止時には、モータ9及びブレーキコイル5aには、給電されていない。このときには、ブレーキスプリング5fの収縮によって、一対のブレーキアーム5bを閉じるように引き寄せている。これによって、ブレーキシュー5cでブレーキホイル5dを掴んで、ブレーキ5が掛かった状態となっている。
【0021】
エレベーターの運転が開始されると、モータ9への給電と同時にブレーキコイル5aに給電される。ブレーキコイル5aの給電による磁束によりブレーキプランジャー5gが図中矢印Aの方向に引かれて、ブレーキレバー5eがブレーキアーム5bを開き、これによりブレーキホイル5dを掴んでいたブレーキシュー5cが開いて、ブレーキ5が開放される。
【0022】
本実施形態のシャックル取付治具10は、ブレーキコイル5aの収容器6に設けられた冷却用のスリット6cを利用して、シャックル取付治具10を固定するものである。後述するように、スリット6cに、下受け板13を挿入し、ロックボルト20をネジ孔14aに締結することで、ロックボルト20と下受け板13とで収容器6の上面6gとスリット6cの縁を挟むことでシャックル取付治具10は、収容器6に固定される。
【0023】
図4は、本実施形態のシャックル取付治具10を巻上機1の上部カバー3に取り付けた状態を示す。シャックル取付治具10は、上部カバー3の収容器6の上面と側面のスリットの縁とを挟みこんで、収容器6に強固に固定されている。巻上機1の上面の左側方には、アイボルト30が取り付けられている。
図4に示す様に、シャックル取付治具10に設けられたシャックル取付孔16とアイボルト30には、シャックル40がそれぞれ取り付けられ、チェーン50によって、巻上機1の上部カバー3を吊上げることができる。
【0024】
図5~7を参照して、本実施形態のシャックル取付治具10の構成について説明する。
図5は、本実施形態のシャックル取付治具10の正面図であり、
図6は、上面図であり、
図7は、右側面図である。
【0025】
シャックル取付治具10は、治具本体11とロックボルト17を備えている。治具本体11は、巻上機1の上部カバー3の吊上げに使用されるため、荷重に耐えるようにステンレス等の金属で構成されることが好ましい。
【0026】
治具本体11は、収容器6の冷却用スリット6cを有する側面6aに対面させるための治具基板12と、治具基板12から延出する下受け板13と、ロックボルト留板14と、シャックル止め板15とを有している。
【0027】
下受け板13は、治具基板12から板厚方向に延出している。下受け板13は、収容器6の冷却用スリット6cに挿入可能に形成されている。下受け板13を冷却用スリット6cに挿入することで、治具基板12は、スリット6cが設けられた収容器6の側面6aに対面して配置される。
【0028】
ロックボルト留板14は、治具基板12において、下受け板13と間隔を空けて、下受け板13と同じ方向に延出し、下受け板13と対向するよう形成されている。ロックボルト留板14と下受け板13との間隔は、収容器6の上面6gとスリット6c上側の縁の間隔よりやや大きく形成されている。
【0029】
ロックボルト留板14は、下受け板13と対向するように設けられたネジ孔を有している。本実施形態におけるロックボルト留板14には、ネジ孔14aが3個設けられているが、ネジ孔14aの数については、特に限定しない。
【0030】
シャックル止め板15は、治具基板12から延出し、板厚方向に貫通するシャックル取付孔16を有している。
【0031】
下受け板13をスリット6cに挿入して、治具基板12を収容器6の側面に対面させたとき、シャックル止め板15が、収容器6の上面6gで
図2の右寄りに位置するように配置されるように、治具基板12の幅は、スリット6cの幅よりも大きく形成されている。この理由は、収容器6の後方(
図2の右方向)にスプリング取付板7があるため、吊り上げ時のバランスを取るためである。よって、治具基板12の幅をスリット6cの幅よりも大きく形成することが好ましい。
【0032】
下受け板13は、治具基板12の延びる向きに先端を折り返した返し板13aを有している。返し板13aは、必須の構成ではないが、後述するように、スリット6cから下受け板13を抜けにくくする役割を有している。
【0033】
次に本実施形態のシャックル取付治具10の収容器6への固定方法について説明する。
【0034】
まず初めに、ブレーキスプリング5fを取り外して、ブレーキアーム5bとスプリング取付板7の接続を解除する。
【0035】
次に、治具基板12を収容器6の側面6aに対面させて、下受け板13を冷却用スリット6cに挿入し、治具基板12を収容器6の側面6aに当てる。これによって、治具本体11のシャックル止め板15とロックボルト留板14は、収容器6の上面6gに配置される。
【0036】
次に、ロックボルト17をネジ孔14aに締結する。ロックボルト17の先端をブレーキコイル5aの収容器6の上面6gに当接させて更に締める。ロックボルト17を締結することで、ロックボルト17で収容器6の上面6gを押し、治具基板12の下受け板13がスリット6cの縁に当接するように動く。尚、ロックボルト17の先端で収容器6の上面6gを傷つけないように、布や薄いシートを挟むようにしてもよい。
【0037】
更にロックボルト17を締めることで、ロックボルト17と下受け板13とで、収容器6の上面6gとスリット6cの縁を挟んで、治具本体11が収容器6に固定される。
【0038】
本実施形態のシャックル取付治具10は、下受け板13の先端に治具基板12の延びる向きに折り返した返し板13aを設けている。ロックボルト17の締結力が弱い場合、或いは強すぎる場合の何れにおいても、返し板13aがスリット6cの縁に引っ掛かることで、下受け板13がスリット6cから抜けることを抑制するように作用する。
【0039】
本実施形態のシャックル取付治具10により、巻上機1の上面にアイボルトを取り付けるためのネジ孔が無い場合においても、巻上機1の上部にシャックルを取り付けることが可能になる。よって、巻上機1の上部カバー3を吊り上げることが可能になる。本実施形態のシャックル取付治具10によれば、上部カバー3を吊り上げる際に、ブレーキスプリング5fを取り外すだけで、ブレーキコイル5aを取り外す必要がない。従って、巻上機1の上部カバー3の吊り上げの作業が大幅に簡単になる。従来の方法であれば、ブレーキコイル5aの取り外しにおいて、ブレーキコイル5aを収容器6の枠体にぶつけて、ブレーキコイル5aを傷つける可能性があった。本実施形態のシャックル取付治具10によれば、そのようなおそれがない。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 巻上機、2 綱車、3 上部カバー、4 底部枠体、5 ブレーキ、5a ブレーキコイル、5b ブレーキアーム、5c ブレーキシュー、5d ブレーキホイル、5e ブレーキレバー、5f ブレーキスプリング、5g ブレーキプランジャー、6 収容器、7 スプリング取付板、7a スプリング孔、8 点検口蓋、9 モータ、9a モータ軸、10 シャックル取付治具、11 治具本体、12 治具基板、13 下受け板、13a 返し板、14 ロックボルト留板、14a ネジ孔、15 シャックル止め板、16 シャックル取付孔、17 ロックボルト、30 アイボルト、40 シャックル、50 チェーン