(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106813
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】補強材
(51)【国際特許分類】
D04H 1/498 20120101AFI20230726BHJP
【FI】
D04H1/498
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007770
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】505311319
【氏名又は名称】株式会社ツジトミ
(71)【出願人】
【識別番号】593041136
【氏名又は名称】大塚産業マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠嚴
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA13
4L047AA19
4L047AA21
4L047AB02
4L047BA03
4L047BA09
4L047CA05
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB08
4L047CC13
(57)【要約】
【課題】加熱プレス成形時に高い伸張性を有する補強材を提供する。
【解決手段】補強材1Aは、表層10と、遮断層20と、を含む。表層10は、(A)加熱プレス成形時の温度よりも低い融点を有する低融点成分および加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する高融点成分を含む合成樹脂短繊維と、(B)加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する合成樹脂短繊維と、を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布を含む。遮断層20は、(A)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも一種類の合成樹脂短繊維が、サーマルボンド法によって部分的に融着されているサーマルボンド不織布を含む。表層10と遮断層20とは、ニードルパンチ法によって交絡されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱プレス成形によって所定の立体形状に成形可能であり、発泡成形体を補強するために使用可能な補強材であって、
表層と、遮断層と、を含み、
前記表層は、
(A)前記加熱プレス成形時の温度よりも低い融点を有する低融点成分および前記加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する高融点成分を含む合成樹脂短繊維と、
(B)前記加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する合成樹脂短繊維と、
を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布を含み、
前記遮断層は、前記(A)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも一種類の合成樹脂短繊維が、部分的に結合されているサーマルボンド不織布を含み、
前記表層と前記遮断層とは、ニードルパンチ法によって交絡されている、
補強材。
【請求項2】
前記遮断層は、前記サーマルボンド不織布の、前記表層とは反対側の面に、前記(A)の合成樹脂短繊維および前記(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布が結合されている、
請求項1に記載の補強材。
【請求項3】
前記遮断層の、前記表層とは反対側に、アンカー層をさらに含み、
前記アンカー層は、前記(A)の合成樹脂短繊維および前記(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布を含む、
請求項1に記載の補強材。
【請求項4】
前記アンカー層は、30質量%~70質量%の前記(A)の合成樹脂短繊維と、70質量%~30質量%の前記(B)の合成樹脂短繊維と、を含む、
請求項3に記載の補強材。
【請求項5】
前記遮断層は、前記(B)の合成樹脂短繊維をさらに含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の補強材。
【請求項6】
前記遮断層は、40質量%~100質量%の前記(A)の合成樹脂短繊維と、60質量%~0質量%の前記(B)の合成樹脂短繊維と、を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の補強材。
【請求項7】
前記遮断層の目付は、0.003~0.008g/cm2である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の補強材。
【請求項8】
前記表層は、30質量%~70質量%の前記(A)の合成樹脂短繊維と、70質量%~30質量%の前記(B)の合成樹脂短繊維と、を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の補強材。
【請求項9】
前記(A)の合成樹脂短繊維は、前記低融点成分を40~60質量%含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の補強材。
【請求項10】
130℃~160℃のいずれかの温度での伸び率が少なくとも40%である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の補強材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体用の補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート(座席)などのクッション材として、発泡ウレタンなどの発泡成形体が使用されている。このような発泡成形体の表面には、補強材が配置されることがある。例えば、車両用シートのクッション材には、クッション材の剛性の低下を防止すると共に、クッション材とバネとの摩擦により発生する摩擦音を防止する目的で、補強材が配置されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3207739号公報
【特許文献2】WO2015/034069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡成形体を作製する際には、まず、補強材を、発泡成形体用の金型の形状に合うように加熱プレス成形する。その後、成形後の補強材を金型に配置し、発泡成分を流し込み、加熱加圧下で発泡成分を発泡させる。こうして、発泡成形体が完成する。補強材は、加熱プレス成形時に、所定の立体形状に成形されるよう、高い伸張性を必要とする。
【0005】
各引用文献に記載された補強材はいずれも、長繊維不織布から成る層を含んでいる。長繊維不織布は、一般に、スパンボンド法またはメルトブローン法によって作製される。これらの方法はいずれも、原料樹脂を溶融および紡糸してウェブを形成し、このウェブを、加熱した一対のエンボスロール間または一対のフラットロール間に通し、長繊維どうしを結合させることで、長繊維不織布を作製する方法である。このような製造方法に起因して、長繊維不織布は、密度が高く、長繊維どうしの交点も多くなるため、伸張性に乏しい。また、長繊維自体に縮れがないことも、長繊維不織布が伸張性に乏しい理由の一つである。
【0006】
本発明は、加熱プレス成形時に高い伸張性を有する補強材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
加熱プレス成形によって所定の立体形状に成形可能であり、発泡成形体を補強するために使用可能な補強材であって、
表層と、遮断層と、を含み、
前記表層は、
(A)前記加熱プレス成形時の温度よりも低い融点を有する低融点成分および前記加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する高融点成分を含む合成樹脂短繊維と、
(B)前記加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する合成樹脂短繊維と、
を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布を含み、
前記遮断層は、前記(A)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも一種類の合成樹脂短繊維が、部分的に結合されているサーマルボンド不織布を含み、
前記表層と前記遮断層とは、ニードルパンチ法によって交絡されている、
補強材。
【0008】
(項目2)
前記遮断層は、前記サーマルボンド不織布の、前記表層とは反対側の面に、前記(A)の合成樹脂短繊維および前記(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布が結合されている、
項目1に記載の補強材。
【0009】
(項目3)
前記遮断層の、前記表層とは反対側に、アンカー層をさらに含み、
前記アンカー層は、前記(A)の合成樹脂短繊維および前記(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布を含む、
項目1に記載の補強材。
【0010】
(項目4)
前記アンカー層は、30質量%~70質量%の前記(A)の合成樹脂短繊維と、70質量%~30質量%の前記(B)の合成樹脂短繊維と、を含む、
項目3に記載の補強材。
【0011】
(項目5)
前記遮断層は、前記(B)の合成樹脂短繊維をさらに含む、
項目1から4のいずれか1項に記載の補強材。
【0012】
(項目6)
前記遮断層は、40質量%~100質量%の前記(A)の合成樹脂短繊維と、60質量%~0質量%の前記(B)の合成樹脂短繊維と、を含む、
項目1から5のいずれか1項に記載の補強材。
【0013】
(項目7)
前記遮断層の目付は、0.003~0.008g/cm2である、
項目1から6のいずれか1項に記載の補強材。
【0014】
(項目8)
前記表層は、30質量%~70質量%の前記(A)の合成樹脂短繊維と、70質量%~30質量%の前記(B)の合成樹脂短繊維と、を含む、
項目1から7のいずれか1項に記載の補強材。
【0015】
(項目9)
前記(A)の合成樹脂短繊維は、前記低融点成分を40~60質量%含む、
項目1から8のいずれか1項に記載の補強材。
【0016】
(項目10)
130℃~160℃のいずれかの温度での伸び率が少なくとも40%である、
項目1から9のいずれか1項に記載の補強材。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、加熱プレス成形時に高い伸張性を有する補強材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係る補強材の概略断面図である。
【
図2】(a)ニードルパンチ不織布の断面図、(b)サーマルボンド不織布の断面図である。
【
図3】第二実施形態に係る補強材の概略断面図である。
【
図5】140℃での引張試験の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の補強材1A,1Bについて説明する。
【0020】
補強材1A,1Bは、車両用シートなどの発泡成形体を補強するために使用できる。発泡成形体は、例えば、発泡ウレタン製である。補強材1A,1Bは、発泡成形体用の金型に設置される前に、あらかじめ加熱プレス成形によって所定の立体形状に成形される。これにより、金型に、補強材1A,1Bを隙間なく配置できる。加熱プレス成形の方法としては、例えば、乾熱プレス、蒸気プレス、コールドプレス、真空成形が挙げられる。加熱プレス成形の温度は、例えば、130℃~160℃である。
【0021】
[A.第一実施形態]
第一実施形態に係る補強材1Aについて説明する。
【0022】
<A-1.補強材の構成>
補強材1Aは、
図1に示すように、表層10と、遮断層20と、を含む。
【0023】
遮断層20は、発泡成分の染み出しを防止する層である。遮断層20は、合成樹脂短繊維製のサーマルボンド不織布を含む。
【0024】
表層10は、発泡成形体を作製する際に、金型に面する層であり、発泡成分が遮断層20から染み出した場合に、その染み出しが外部から見えないようにするための層である。表層10は、合成樹脂短繊維製のニードルパンチ不織布を含む。
【0025】
表層10のニードルパンチ不織布の合成樹脂短繊維と、遮断層20のサーマルボンド不織布の合成樹脂短繊維とは、ニードルパンチ法によって交絡されている。
【0026】
補強材1Aは、0.10~0.45cmの厚さ、0.010~0.022g/cm2の目付を有することが好ましい。補強材1Aの厚さおよび目付の組み合わせは、補強材1Aの密度が0.049~0.15g/cm3となるように、選択されることが好ましい。密度は、目付を厚さで割った値である。
【0027】
補強材1Aは、加熱プレス成形時の温度において、少なくとも40%の伸び率(すなわち、破断伸び)を有することが好ましく、少なくとも60%の伸び率を有することがより好ましい。
【0028】
以下、各層の詳細について説明する。
【0029】
<A-2.表層>
表層10は、以下に示す合成樹脂短繊維(A)および(B)を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維が、ニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布を含む。
(A)加熱プレス成形時の温度以下の融点を有する低融点成分と、加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する高融点成分と、を含む合成樹脂短繊維(以下、「(A)の合成樹脂短繊維」と表記することがある。)。
(B)加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有する合成樹脂短繊維(以下、「(B)の合成樹脂短繊維」と表記することがある。)。
【0030】
表層10は、30質量%~70質量%の(A)の合成樹脂短繊維と、70質量%~30質量%の(B)の合成樹脂短繊維と、を含むことが好ましい。一実施形態において、表層10中の合成樹脂短繊維は、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維のみから成る。
【0031】
表層10は、0.08~0.24cmの厚さ、0.003~0.01g/cm2の目付を有することが好ましい。表層10の厚さおよび目付の組み合わせは、表層10の密度が0.045~0.077g/cm3となるように、選択されることが好ましい。
【0032】
(A)の合成樹脂短繊維は、40質量%~60質量%の低融点成分と、60質量%~40質量%の高融点成分と、を含むことが好ましい。低融点成分の融点は、90℃~150℃であることが好ましい。(A)の合成樹脂短繊維の長さは、7.5cm以下であることが好ましい。(A)の合成樹脂短繊維の太さは、1.5~6dtexであることが好ましい。
【0033】
(A)の合成樹脂短繊維の低融点成分は、例えば、加熱プレス成形時の温度以下の融点を有するポリエステル繊維である。また、(A)の合成樹脂短繊維の高融点成分は、例えば、加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有するポリエステル繊維である。(A)の合成樹脂短繊維は、例えば、芯部が高融点成分、鞘部が低融点成分である、芯鞘構造を有する合成樹脂短繊維である。
【0034】
(B)の合成樹脂短繊維の長さは、7.5cm以下であることが好ましい。(B)の合成樹脂短繊維の太さは、1.2~6dtexであることが好ましい。(B)の合成樹脂短繊維は、例えば、加熱プレス成形時の温度よりも高い融点を有するポリエステル繊維である。
【0035】
<A-3.遮断層>
遮断層20は、(A)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも一種類の合成樹脂短繊維を部分的に融着させたサーマルボンド不織布を含む。すなわち、遮断層20は、(A)の合成樹脂短繊維の低融点成分をサーマルボンド法により溶融させることにより、少なくとも一種類の合成樹脂短繊維を部分的に結合させたサーマルボンド不織布を含む。
【0036】
遮断層20は、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維を含む、少なくとも二種類の合成樹脂短繊維が部分的に結合したサーマルボンド不織布であってもよい。
【0037】
遮断層20は、40質量%~100質量%の(A)の合成樹脂短繊維と、60質量%~0質量%の(B)の合成樹脂短繊維と、を含むことが好ましい。一実施形態において、遮断層20中の合成樹脂短繊維は、(A)の合成樹脂短繊維のみから成る。別の実施形態において、遮断層20中の合成樹脂短繊維は、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維のみから成る。
【0038】
遮断層20に使用可能な(A)の合成樹脂短繊維の材質および特性(例えば、低融点成分と高融点成分との質量割合、繊維長、繊維の太さ)としては、例えば、表層10に使用可能な(A)の合成樹脂短繊維に関して説明した材質および特性が挙げられる。遮断層20に使用される(A)の合成樹脂短繊維の材質および特性は、表層10に使用される(A)の合成樹脂短繊維の材質および特性と同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
遮断層20に使用可能な(B)の合成樹脂短繊維の材質および特性としては、例えば、表層10に使用可能な(B)の合成樹脂短繊維に関して説明した材質および特性が挙げられる。遮断層20に使用される(B)の合成樹脂短繊維の材質および特性は、表層10に使用される(B)の合成樹脂短繊維の材質および特性と同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
一実施形態において、遮断層20に使用される(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維は、遮断層20の密度を高くするために、表層10に使用される(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維よりも細くてもよい。
【0041】
遮断層20は、0.01~0.04cmの厚さ、0.003~0.008g/cm2の目付を有することが好ましい。遮断層20の厚さおよび目付の組み合わせは、遮断層20の密度が0.13~0.53g/cm3となるように、選択されることが好ましい。
【0042】
<A-4.補強材の特徴>
短繊維を使用したニードルパンチ不織布は、スパンボンド法またはメルトブローン法によって作製される長繊維不織布と比較して、短繊維どうしの交点が少なく、短繊維が動きやすい。そのため、表層10として短繊維を使用したニードルパンチ不織布を採用することにより、加熱プレス成形時の補強材1Aの伸張性を大きくすることができる。また、一般的に、短繊維には、伸張可能な縮れ(クリンプとも呼ばれる)が付与されているため、加熱プレス成形時に、表層10の合成樹脂短繊維の縮れが伸張することによって、補強材1Aが大きく伸張する。また、表層10が低融点成分を含むことにより、補強材1Aを加熱プレス成形して、補強材1Aが立体的に成形された際に、低融点成分が溶融して合成樹脂短繊維どうしが部分的に結合する。その結果、加熱プレス成形後の補強材1Aの立体形状を安定化させることができる。
【0043】
合成樹脂短繊維どうしをサーマルボンド法によって融着させることにより、高密度の不織布層を含む遮断層20が得られる。遮断層20が高密度であることにより、発泡成分の染み出しを防止できる。また、短繊維を使用したサーマルボンド不織布は、スパンボンド法またはメルトブローン法によって作製される長繊維不織布と比較して、短繊維どうしの交点が少なく、短繊維が動きやすい。そのため、遮断層20に、短繊維を使用したサーマルボンド不織布を採用することにより、加熱プレス成形時の補強材1Aの伸張性を大きくすることができる。また、既に述べたように、短繊維には、伸張可能な縮れが付与されているため、遮断層20の合成樹脂短繊維の縮れが伸張することによって、補強材1Aが大きく伸張する。また、加熱プレス成形時に、合成樹脂短繊維どうしの結合が溶融され、合成樹脂短繊維がバラバラに分散するため、遮断層20が変形しやすくなる。これにより、補強材1Aの伸張性が大きくなる。
【0044】
<A-5.補強材の製造方法>
次に、補強材1Aの製造方法について説明する。
【0045】
表層10を構成することになるニードルパンチ不織布Xを準備する(
図2(a)参照)。ニードルパンチ不織布Xは、以下で説明する製造方法にしたがって製造できる。まず、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維をカード機に通してウェブを作製する。ウェブをクロスレイヤーで積層し、積層ウェブを作製する。積層ウェブをニードルパンチすることにより、合成樹脂短繊維どうしを交絡させる。こうして、ニードルパンチ不織布Xが作製される。ニードルパンチ不織布Xは、0.08~0.35cmの厚さ、0.003~0.016g/cm
2の目付、0.012~0.100g/cm
3の密度を有することが好ましい。
【0046】
遮断層20を構成することになるサーマルボンド不織布Yを準備する(
図2(b)参照)。サーマルボンド不織布Yは、以下で説明する製造方法にしたがって製造できる。まず、(A)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも一種類の合成樹脂短繊維を用いて、上記と同様の方法により、積層ウェブを作製する。積層ウェブを、例えば130℃~190℃に加熱することにより、合成樹脂短繊維どうしを部分的に融着させる。こうして、サーマルボンド不織布Yが作製される。サーマルボンド法での加熱方法としては、フラットシールまたはポイントシールを利用できる。サーマルボンド不織布Yは、0.01~0.04cmの厚さ、0.003~0.008g/cm
2の目付、0.130~0.530g/cm
3の密度を有することが好ましい。
【0047】
ニードルパンチ不織布Xを、サーマルボンド不織布Yの一方の面上に重ね、積層体を形成する。積層体をニードルパンチし、それらの不織布に含まれる合成樹脂短繊維を交絡させる。こうして、補強材1Aを作製できる。なお、補強材1Aのハンドリング性を向上させると共に、補強材1Aの物性を安定化させるために、必要に応じて、補強材1Aを加熱処理してもよい。
【0048】
<A-6.補強材の変形例>
補強材1Aの変形例について説明する。遮断層20は、表層10とは反対側の面に、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維がニードルパンチ法によって交絡されているニードルパンチ不織布が、結合されていてもよい。このような変形例に示す補強材1Aは、例えば、以下の方法で製造できる。まず、ニードルパンチ不織布Xを、サーマルボンド不織布Yの一方の面上に重ね、積層体を形成する。積層体をニードルパンチし、ニードルパンチ不織布Xの一部を、サーマルボンド不織布Yの反対側に飛び出させる。積層体を、例えば130℃~190℃に加熱した一対のロール間に通すことにより、ニードルパンチ不織布Xおよびサーマルボンド不織布Yに含まれる(A)の合成樹脂短繊維の低融点成分を溶融させると共に、飛び出したニードルパンチ不織布Xの合成樹脂短繊維をサーマルボンド不織布Yに熱圧着する。こうして、遮断層20のサーマルボンド不織布Yの、表層10とは反対側の面に、ニードルパンチ不織布Xが融着された補強材1Aを作製できる。遮断層20が、ニードルパンチ不織布が融着されたサーマルボンド不織布から構成されていることにより、遮断層20がより高密度になるため、ウレタンの染み出し防止効果を向上させることができる。
【0049】
<A-7.補強材の製造方法の変形例>
補強材1Aの製造方法の変形例について説明する。まず、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維を用いて、上記と同様の方法により、積層ウェブを作製する。この積層ウェブは、表層10を構成することになる。積層ウェブは、2~15cmの厚さ、0.003~0.016g/cm2の目付を有することが好ましい。積層ウェブの厚さおよび目付の組み合わせは、積層ウェブの密度が0.0006~0.006g/cm3となるように、選択されることが好ましい。ニードルパンチしていない状態の積層ウェブを、サーマルボンド不織布Yの一方の面に重ね、積層体を形成する。積層体を、ニードルパンチすることにより、積層ウェブ内の合成樹脂短繊維を交絡させると共に、積層ウェブの合成樹脂短繊維とサーマルボンド不織布Yの合成樹脂短繊維とを交絡させる。このような方法によっても、補強材1Aを作製できる。
【0050】
[B.第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る補強材1Bについて説明する。以下では、第一実施形態に係る補強材1Aとの相違点を中心に説明し、補強材1Aと同一の構成については同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0051】
<B-1.補強材の構成>
図3に示すように、第二実施形態に係る補強材1Bは、アンカー層30をさらに含む。すなわち、補強材1Bは、表層10と、遮断層20と、アンカー層30と、をこの順で含む。
【0052】
アンカー層30は、発泡成分が染み込むことにより、アンカー作用によって、発泡成形体と一体化され、発泡成形体から補強材1Bが剥離することを防止する層である。アンカー層30は、合成樹脂短繊維製のニードルパンチ不織布を含む。
【0053】
表層10、遮断層20およびアンカー層30それぞれに含まれる合成樹脂短繊維は、互いにニードルパンチ法によって交絡されている。
【0054】
補強材1Bは、0.10~0.45cmの厚さ、0.010~0.022g/cm2の目付を有することが好ましい。補強材1Bの厚さおよび目付の組み合わせは、補強材1Bの密度が0.049~0.15g/cm3となるように、選択されることが好ましい。
【0055】
補強材1Bは、加熱プレス成形時の温度において、少なくとも40%の伸び率を有することが好ましく、少なくとも60%の伸び率を有することがより好ましい。
【0056】
アンカー層30は、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維をニードルパンチ法によって交絡させたニードルパンチ不織布を含む。
【0057】
アンカー層30に使用可能な(A)の合成樹脂短繊維の材質および特性としては、例えば、表層10に使用可能な(A)の合成樹脂短繊維に関して説明した材質および特性が挙げられる。アンカー層30に使用される(A)の合成樹脂短繊維の材質および特性は、表層10に使用される(A)の合成樹脂短繊維の材質および特性と同じであっても異なっていてもよい。
【0058】
アンカー層30に使用可能な(B)の合成樹脂短繊維の材質および特性としては、例えば、表層10に使用可能な(B)の合成樹脂短繊維に関して説明した材質および特性が挙げられる。アンカー層30に使用される(B)の合成樹脂短繊維の材質および特性は、表層10に使用される(B)の合成樹脂短繊維の材質および特性と同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
一実施形態では、遮断層20に使用される(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維は、遮断層20の密度を高くするために、表層10およびアンカー層30に使用される(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維よりも細くてもよい。
【0060】
<B-2.補強材の特徴>
補強材1Bは、補強材1Aの特徴に加え、以下の特徴を有する。
【0061】
ニードルパンチ不織布は、密度がサーマルボンド不織布ほど高くないため、発泡成分が染み込みやすい。そのため、ニードルパンチ不織布から構成されるアンカー層30を設けることにより、発泡成分がアンカー層30に染み込んで、アンカー層30が発泡成形体と強固に結合するため、補強材1Bが発泡成形体から剥離することを防止できる。短繊維を使用したニードルパンチ不織布は、スパンボンド法またはメルトブローン法によって作製される長繊維不織布と比較して、短繊維どうしの交点が少なく、短繊維が動きやすい。そのため、アンカー層30に、短繊維を使用したニードルパンチ不織布を採用することにより、加熱プレス成形時の補強材1Bの伸張性を大きくすることができる。また、既に述べたように、短繊維には、伸張可能な縮れが付与されているため、アンカー層30の合成樹脂短繊維の縮れが伸張することによって、補強材1Bが大きく伸張する。また、アンカー層30が低融点成分を含むことにより、補強材1Bを加熱プレス成形して、補強材1Bが立体的に成形された際に、低融点成分が溶融して合成樹脂短繊維どうしが部分的に結合する。これにより、加熱プレス成形後の補強材1Bの立体形状を安定化させることができる。
【0062】
<B-3.補強材の製造方法>
次に、補強材1Bの製造方法について説明する。
【0063】
表層10およびアンカー層30を構成することになるニードルパンチ不織布Xを準備する(
図2(a)参照)。ニードルパンチ不織布Xの製造方法は、既に述べた通りである。
【0064】
遮断層20を構成することになるサーマルボンド不織布Yを準備する(
図2(b)参照)。サーマルボンド不織布Yの製造方法は、既に述べた通りである。
【0065】
ニードルパンチ不織布Xを、サーマルボンド不織布Yの一方の面上に重ね、積層体を形成する。次に、積層体をニードルパンチし、それらの不織布に含まれる合成樹脂短繊維を交絡させると共に、サーマルボンド不織布Yの他方の面に、ニードルパンチ不織布Xの一部の合成樹脂短繊維を飛び出させる。これにより、サーマルボンド不織布Yの他方の面にも、ニードルパンチ不織布の層が形成される。このような手順により、遮断層20の一方の面に表層10が設けられ、遮断層20の他方の面にアンカー層30が設けられた補強材1Bを作製できる。なお、補強材1Bのハンドリング性を向上させると共に、補強材1Bの物性を安定化させるために、必要に応じて、補強材1Bを加熱処理してもよい。
【0066】
<B-4.補強材の製造方法の変形例>
以下では、補強材1Bの製造方法の変形例について説明する。
【0067】
(1)補強材1Bの別の製造方法としては、サーマルボンド不織布Yの一方の面に、表層10を構成することになるニードルパンチ不織布Xを積層し、サーマルボンド不織布Yの他方の面に、アンカー層30を構成することになるニードルパンチ不織布Xを積層し、こうして得られた積層体をニードルパンチする方法が挙げられる。
【0068】
(2)補強材1Bの別の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。まず、(A)の合成樹脂短繊維および(B)の合成樹脂短繊維を含む少なくとも二種類の合成樹脂短繊維を用いて、積層ウェブを作製する。後述するように、この積層ウェブは、アンカー層30および表層10を構成することになる。積層ウェブは、2~15cmの厚さ、0.003~0.016g/cm2の目付を有することが好ましい。積層ウェブの厚さおよび目付の組み合わせは、積層ウェブの密度が0.0006~0.006g/cm3となるように、選択されることが好ましい。ニードルパンチしていない状態の積層ウェブを、サーマルボンド不織布Yの一方の面に重ね、積層体を形成する。積層体を、ニードルパンチすることにより、積層ウェブ内の合成樹脂短繊維を交絡させると共に、積層ウェブの合成樹脂短繊維とサーマルボンド不織布Yの合成樹脂短繊維とを交絡させる。積層ウェブ中の交絡された合成樹脂短繊維の一部は、サーマルボンド不織布Yの他方の面に飛び出す。こうして、サーマルボンド不織布Yの両面にそれぞれ、積層ウェブの合成樹脂短繊維がニードルパンチによって交絡したニードルパンチ不織布の層(すなわち、表層10およびアンカー層30)が形成される。
【0069】
(3)補強材1Bの別の製造方法としては、サーマルボンド不織布Yの一方の面に、表層10を構成することになる積層ウェブを積層し、サーマルボンド不織布Yの他方の面に、アンカー層30を構成することになる積層ウェブを積層し、こうして得られた積層体をニードルパンチする方法が挙げられる。
【0070】
<C.実施例>
以下では、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0071】
<C-1.補強材の製造>
実施例の補強材は、以下の方法によって製造された。
【0072】
[ニードルパンチ不織布の作製]
以下の特性を有する(A)の合成樹脂短繊維と、以下の特性を有する(B)の合成樹脂短繊維を、カード機に通してウェブを作製した。ウェブをクロスレイヤーで積層し、積層ウェブを作製した。積層ウェブをニードルパンチし、合成樹脂短繊維を交絡させることにより、ニードルパンチ不織布を作製した。(A)の合成樹脂短繊維と(B)の合成樹脂短繊維の質量比は、40:60である。
[(A)の合成樹脂短繊維]
・低融点成分として低融点ポリエステル(融点:110℃)を50質量%、高融点成分として高融点ポリエステル(融点:260℃)を50質量%含む二成分ポリエステル繊維
・太さ:4.0dtex
・長さ:5.1cm
[(B)の合成樹脂短繊維]
・レギュラーポリエステル繊維(融点:260℃)
・太さ:2.0dtex
・長さ:5.1cm
【0073】
作製されたニードルパンチ不織布は、0.15cmの厚さ、目付0.005g/cm2の目付、0.033g/cm3の密度を有していた。
【0074】
[サーマルボンド不織布の作製]
以下の特性を有する(A)の合成樹脂短繊維と、以下の特性を有する(B)の合成樹脂短繊維を、カード機に通してウェブを作製した。ウェブをクロスレイヤーで積層し、積層ウェブを作製した。170℃に加熱した一対のロール間に積層ウェブを通して低融点成分を溶融し、合成樹脂短繊維どうしを部分的に融着させることにより、サーマルボンド不織布を作製した。(A)の合成樹脂短繊維と(B)の合成樹脂短繊維の質量比は、50:50である。
[(A)の合成樹脂短繊維]
・低融点成分として低融点ポリエステル(融点:110℃)を50質量%、高融点成分として高融点ポリエステル(融点:260℃)を50質量%含む二成分ポリエステル繊維
・太さ:2.0dtex
・長さ:5.1cm
[(B)の合成樹脂短繊維]
・レギュラーポリエステル繊維(融点:260℃)
・太さ:1.5dtex
・長さ:5.1cm
【0075】
作製されたサーマルボンド不織布は、0.012cmの厚さ、0.0038g/cm2の目付、0.317g/cm3の密度を有していた。
【0076】
[補強材の作製]
ニードルパンチ不織布をサーマルボンド不織布の一方の面に重ね、さらにニードルパンチ不織布をサーマルボンド不織布の他方の面に重ね、ニードルパンチ法により、ニードルパンチ不織布の合成樹脂短繊維とサーマルボンド不織布の合成樹脂短繊維とを交絡させた。こうして、サーマルボンド不織布から成る遮断層の一方の面に、ニードルパンチ不織布から成る表層が設けられ、遮断層の他方の面に、ニードルパンチ不織布から成るアンカー層が設けられた実施例の補強材が得られた。
【0077】
<C-2.比較例>
比較例の補強材は、遮断層がスパンボンド不織布から成ることを除いて、実施例の補強材と同じである。
【0078】
[ニードルパンチ不織布の作製]
表層およびアンカー層を構成することになるニードルパンチ不織布の製造方法、および、使用した合成樹脂短繊維は、実施例と同じである。
【0079】
[スパンボンド不織布の作製]
溶融したポリエステルペレット(融点:260℃)をノズルから吐出して紡糸し、ウェブを作製した。235℃に加熱した一対のロール間にウェブを通して合成樹脂長繊維どうしを結合させ、シート化した。こうして、合成樹脂長繊維からなるスパンボンド不織布を作製した。
【0080】
作製されたスパンボンド不織布は、0.019cmの厚さ、0.0041g/cm2の目付、0.216g/cm3の密度を有していた。
【0081】
[補強材の作製]
比較例の補強材の製造方法は、サーマルボンド不織布をスパンボンド不織布に変更した以外、実施例の補強材の製造方法と同じである。こうして、スパンボンド不織布から成る遮断層の一方の面に、ニードルパンチ不織布から成る表層が設けられ、遮断層の他方の面に、ニードルパンチ不織布から成るアンカー層が設けられた比較例の補強材が得られた。
【0082】
<C-3.評価方法>
[厚み・目付・密度]
実施例の補強材および比較例の補強材の厚みおよび目付を測定した。また、実施例の補強材および比較例の補強材の遮断層の目付を測定した。
【0083】
[引張試験]
引張試験機(島津製作所株式会社製AGS-500B)を使用して、25℃および140℃での補強材の機械的性質を調べた。
【0084】
補強材から、
図4に示すように、長さ200mm、幅50mmの長方形の試験片を切り取った。試験片として、製造工程の流れ方向(以下、「MD方向」と表記する。)が長手方向(引張方向)となるような試験片と、MD方向に直角な方向(以下、「CD方向」と表記する。)が長手方向となるような試験片をそれぞれ準備した。試験片の両端に、幅が20mmのチャックをそれぞれ取り付けて、標点距離が80mmとなるようにセットした。引張速度100mm/minで引張試験を行い、試験片が30%伸長したときの引張強度σ30(N/50mm)、試験片が50%伸長したときの引張強度σ50(N/50mm)、破断時の引張強度σmax(N/50mm)および破断伸び(mm)を測定した。MD方向の引張試験を5回、CD方向の引張試験を5回、合計10回の引張試験を行い、それら合計10回の測定値の算術平均値を各引張強度(最大荷重)および破断伸びとして採用した。伸び率φ(%)は、試験前の標点距離をL
0(=80mm)、破断後の標点距離(破断伸び)をLとしたとき、φ={(L-L
0)/L
0}×100で算出した。
【0085】
140℃での引張試験は、以下の手順にしたがい行った。
図5に、140℃での引張試験の様子を示す。一対の挟持部を有し、挟持部の幅が25mmのヘアアイロンを2台準備する。2台のヘアアイロンを隣接させると共に、互いに離れないように固定具で固定する。挟持部の幅は、合計で50mmになる。挟持部の内側にクッションシートを接着し、一対の挟持部を閉じた際に、一対の挟持部が接触せず、一対の挟持部の間に3mm~5mmの隙間が形成されるようにする。140℃に昇温した2台のヘアアイロンによって、引張試験機にセットした試験片の中央を挟み、10秒維持する。なお、前記の通り、挟持部の幅の合計は50mmであるため、試験片も50mmの幅にわたって加熱されることになる。また、一対の挟持部間には隙間があるため、ヘアアイロンの各挟持部は、試験片に接触しないようになっている。10秒経過後、ヘアアイロンで試験片を挟んだまま、引張試験を開始した。
【0086】
[染み出し率測定]
実施例および比較例の補強材のウレタンの染み出し率を測定した。色差計(コニカミノルタ株式会社製CR-410)を使用して、ウレタン(黄色)のx値,y値(Yxy表色系。以下、同じ。)、ウレタンを染み込ませていない補強材に発泡させたウレタンを重ねたもののx値,y値、および、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材のx値,y値をそれぞれ3回測定し、3回の測定値の算術平均値を、後述する染み出し率を求める際に使用した。なお、ウレタンを染み込ませていない補強材に発泡させたウレタンを重ねたもののx値,y値、および、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材のx値,y値は、表層側から測定した値である。x値,y値は、Yxy表色系における色相と彩度を表しており、x値,y値の両方が大きいほど濃い黄色であることを意味する。ウレタンのx値,y値は、(x,y)=(0.3507,0.3616)であった。ウレタンを染み込ませていない補強材に発泡させたウレタンを重ねたもののx値,y値を0%、ウレタンのx値,y値を100%として、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材のx値,y値が、ウレタンを染み込ませていない補強材に発泡させたウレタンを重ねたもののx値,y値と、どれだけ距離が離れているかを百分率で表し、これを染み出し率と定義した。つまり、例えば、ウレタンのx値,y値が(x,y)=(0.3507,0.3616)、ウレタンを染み込ませていない補強材に発泡させたウレタンを重ねたもののx値,y値が(x,y)=(0.3259,0.3311)、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材のx値,y値が(x,y)=(0.3343,0.3400)であった場合、ウレタンを染み込ませていない補強材に発泡させたウレタンを重ねたものと、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材とのx値,y値の距離L1は、
L1=√((0.3343-0.3259)2+(0.3400-0.3311)2)=0.01226、
ウレタンと、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材とのx値、y値の距離L2は、
L2=√((0.3507-0.3259)2+(0.3616-0.3311)2)=0.03928、
これより、ウレタンを染み込ませ発泡させた後の補強材の染み出し率は、
(L1/L2)×100=(0.01226/0.03928)×100=31.2%となる。
【0087】
[通気度測定]
JIS L1906 フラジール形法に基づいて、実施例および比較例の補強材の通気度を測定した。
【0088】
【0089】
<C-3.結果>
試験結果を表1に示す。実施例の補強材は、140℃での伸び率が94.1%であった。この結果から、実施例の補強材は、加熱プレス成形時に、高い伸張性を有することが分かった。
【符号の説明】
【0090】
1A,1B 補強材
10 表層
20 遮断層
30 アンカー層