(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106823
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】植物油脂と植物由来タンパク質を含有する乳成分含有飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20230726BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23C9/00
A23L2/38 J
A23L2/38 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007782
(22)【出願日】2022-01-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】目取真 采香
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周
(72)【発明者】
【氏名】須藤 丈博
(72)【発明者】
【氏名】三橋 守男
【テーマコード(参考)】
4B001
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC08
4B001AC15
4B001AC20
4B001AC43
4B001AC44
4B001AC99
4B001EC01
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG11
4B117LG13
4B117LG17
4B117LG24
4B117LK06
4B117LK10
4B117LK12
4B117LK18
4B117LL01
4B117LL06
4B117LP01
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】総タンパク質含有量が3.00質量%以下である乳成分含有飲料において、ミルク風味とミルクらしいコクとを増強する。
【解決手段】総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下である乳脂肪と乳タンパク質を含む乳成分含有飲料に、植物油脂と植物由来タンパク質とを含有させ、飲料中の植物油脂含有量を0.1質量%以上とし、飲料中の植物由来タンパク質含有量を総タンパク質含有量の1~90質量%とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下である乳成分含有飲料であって、
(a)乳成分が乳脂肪と乳タンパク質を含み、
(b)飲料が植物油脂と植物由来タンパク質とを含み、
(c)飲料中の植物油脂含有量が0.1質量%以上であり、
(d)飲料中の植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%である、飲料。
【請求項2】
植物由来タンパク質の植物が、大豆、アーモンド、オーツ麦のいずれか1以上である請求項1記載の飲料。
【請求項3】
植物油脂が、紅花油、ヤシ油、パーム油のいずれか1以上である、請求項1または2記載の飲料。
【請求項4】
乳固形分が3.0質量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
カフェインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
乳成分含有飲料の製造方法であって、
(1)(a)乳成分が乳脂肪と乳タンパク質を含み、
(b)飲料中の植物油脂含有量が0.1質量%以上であり、
(c)飲料中の総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下であり、
(d)飲料中の植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%である飲料となるように、乳成分と植物油脂と植物由来タンパク質とを混和し調整する工程、及び
(2)飲料を容器に充填する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳成分含有飲料とその製造方法に関する。より詳細には、植物油脂と植物由来タンパク質とを含有し、ミルクの風味とミルクのコクが増強された乳成分含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルクコーヒーやミルクティーなどの乳成分含有飲料は、嗜好性の高い飲料であり、家庭やカフェで飲まれる以外にも、容器詰め飲料として様々な商品が市場で売られている。市場で売られている容器詰め乳成分含有飲料には、フレッシュなミルクの味わいが楽しめるチルド流通の飲料と、長期にわたって保存可能な常温流通の乳成分含有飲料がある。常温流通の乳成分含有飲料は、保存性が良いことに加え、加温しての販売も可能であることから、様々なシーンにて飲用されている。
【0003】
しかしながら、常温流通の乳成分含有飲料は、容器包装の容器安全性の懸念から、乳成分を多く含有する乳飲料としては製造販売ができないため、乳成分を少なくせざる得ず、そのためミルクの味わいが薄くなってしまうことが従来の課題であった。この課題解決の方法としては、乳成分含有飲料に植物油脂を用いる技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、植物油脂と、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はレシチンを含む植物油脂組成物が開示され、この組成物を飲料に含有させることにより、飲料の風味を向上させ、さらには高温殺菌や長期保存に耐えうる飲料を提供することが開示されている。また、特許文献2には、常温流通及び加温販売が可能な容器詰め飲料において、植物油脂とホスファチジルコリン等のリン脂質を含有させることで、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感を付与する技術が開示されている。しかしながら、上述のような従来技術では、フレッシュなミルク風味は付与されるものの、ミルクらしいコクという点では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-341933号公報
【特許文献2】特開2021-108646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、総タンパク質含有量が低く、例えば常温流通が可能な容器詰め飲料とした場合においても、チルド流通で提供されるようなミルク風味に加えて、ミルクらしいコクも味わえる、乳成分含有飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決する手段】
【0007】
本発明者らは上記目的について鋭意検討した結果、乳成分含有飲料に植物油脂を含有させるのに加えて、植物由来タンパク質を含有させることにより、ミルク風味に加えて、ミルクらしいコクも増強できることを見出した。本発明は、以下を含む。
[1]総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下である乳成分含有飲料であって、
(a)乳成分が乳脂肪と乳タンパク質を含み、
(b)飲料が植物油脂と植物由来タンパク質とを含み、
(c)飲料中の植物油脂含有量が0.1質量%以上であり、
(d)飲料中の植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%である、飲料。
[2]植物由来タンパク質の植物が、大豆、アーモンド、オーツ麦のいずれか1以上である[1]記載の飲料。
[3]植物油脂が、紅花油、ヤシ油、パーム油のいずれか1以上である、[1]または[2]記載の飲料。
[4]乳固形分が3.0質量%未満である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の飲料。
[5]カフェインを含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の飲料。
[6]乳成分含有飲料の製造方法であって、
(1)(a)乳成分が乳脂肪と乳タンパク質を含み、
(b)飲料中の植物油脂含有量が0.1質量%以上であり、
(c)飲料中の総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下であり、
(d)飲料中の植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%である飲料となるように、乳成分と植物油脂と植物由来タンパク質とを混和し調整する工程、及び
(2)飲料を容器に充填する工程
を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ミルク風味とミルクらしいコクとが増強された植物油脂含有の乳成分含有飲料を提供することができる。ここで、ミルク風味とは、牛乳を口に含んだ瞬間に感じる香りと味のことであり、一方、ミルクらしいコクとは、牛乳を飲用した後、時間が経過しても口の中全体に残る濃厚感をいう。本発明の乳成分含有飲料は、例えば、乳成分の含有量が常温流通が可能な程度に少ない場合であっても、植物油脂と植物由来タンパク質とが適量含まれることにより、チルド流通で提供されるような乳成分の含有量が多めの飲料のようなミルク風味とミルクらしいコクとを味わうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の飲料は、総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下である乳成分含有飲料であり、(a)乳成分が乳脂肪と乳タンパク質とを含み、(b)飲料が植物油脂と植物由来タンパク質とを含み、(c)植物油脂含有量が0.1質量%以上であり、(d)植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%である飲料である。
【0010】
(乳成分)
本発明の飲料は乳成分を含む。飲料中に乳脂肪及び乳タンパク質を含有するように乳成分を含有させればよい。乳成分としては、例えば、牛乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、ホエー、チーズなどのうち1種または2種以上を選択して用いることができる。好ましい乳成分は、乳脂肪及び乳タンパク質の両方を含有する点から、牛乳、濃縮乳、全脂粉乳である。特に牛乳が好ましい。これらの乳成分は1種のみで用いることができる。一方、2種以上の乳原料を組み合わせる場合は、脱脂粉乳と生クリーム、あるいは脱脂粉乳とバターの組み合わせなど、乳脂肪と乳タンパク質の両方が含まれるように組み合わせて用いることができる。
【0011】
(植物油脂)
本発明の飲料は、植物油脂を含む。ここで、植物油脂とは、植物素材から採油された油脂や油をいう。採油の方法は特に限定されず、植物素材に応じて選択される。例えば、必要に応じて、粉砕、脱皮、乾燥、加熱などの前処理を施した植物素材を圧搾することで油を抽出する方法、また、溶剤を用いて油を抽出する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。抽出した油を、ろ過して用いてもよく、また、必要に応じて、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭、脱ロウなどから選択される精製処理を施してから用いてもよい。植物油脂の種類は限定されないが、例えば、紅花油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、菜種油、オリーブ油、コーン油、(植物油を加工した)加工油脂等が挙げられ、紅花油、ヤシ油、パーム油が好ましく、異味を感知しにくいという点では特に紅花油が特に好ましい。用いる植物油脂は1種でもよいし、複数種を併せて用いてもよい。なお、本発明で用いる植物由来のタンパク質中にも微量の脂質が含まれることがあるが、それらの脂質(採油により得られたものではないもの)は本発明における植物油脂に含まないものとする。
【0012】
本発明の飲料の植物油脂の含有量は、0.1質量%以上であり、好ましくは0.15~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.3~2.0質量%であり、最も好ましくは0.5~1.5%である。植物油脂の含有量が0.1質量%より少ないとミルク風味が弱くなり、本発明の効果が得られない。また、3.0質量%より多いと、飲料を飲用した際に植物油脂の苦味が感知される可能性がある。
【0013】
飲料中の植物油脂の含有量は、公知の手法により測定できる。使用する植物油脂の種類により脂肪酸組成比率が異なるため、例えば、脂肪酸分析を行うことにより植物油脂中に含まれる一種又は複数種の特徴的な脂肪酸成分の含有割合を測定し、かかる含有割合から植物油脂全体の脂質量を逆算することにより、植物油脂量として算出できる。
【0014】
(植物由来タンパク質)
本発明の飲料は、植物由来のタンパク質を含有する。植物由来のタンパク質における植物の種類は限定されず、タンパク質を豊富に含む植物を用いることが好ましい。そのような植物としては、例えば、豆類(大豆(豆乳も含む)、えんどう豆)、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ウォルナッツ、ピスタチオ、ココナッツ)、オーツ麦、ライス等が挙げられ、好ましくは、大豆(豆乳も含む)、アーモンド、オーツ麦であり、異味を感知しいくいという点において特に好ましくは大豆(豆乳も含む)である。用いる植物由来のタンパク質における植物は1種でもよいし、複数種を併せて用いてもよい。飲料中の植物由来のタンパク質としては、例えば、上記の植物をそのまままたは水に浸した後にすり潰して液状またはペースト状にしたもの、あるいはそれらを遠心分離などで精製したもの、乾燥工程により粉末化したものなどを植物由来タンパク質源としてそのまま飲料に含有させて用いることができる。なお、植物から水などの溶媒を用いて抽出して得られた抽出液及びその抽出液を濃縮または乾燥させたものに含まれる微量のタンパク質、具体的にはコーヒー抽出液と茶葉抽出液由来の微量のタンパク質は、本発明の植物由来タンパク質には含まないものとする。また、飲料に含有させる植物由来タンパク質と植物油脂とは、それぞれ異なる植物を原料として用いてもよいことは本発明の特徴の一つである。
【0015】
本発明の飲料中の植物由来タンパク質の含有量は、総タンパク質含有量の1~90質量%であり、好ましくは2~50質量%、より好ましくは10~50質量%である。ここで、総タンパク質含有量とは、乳タンパク質含有量と植物由来タンパク質含有量の合計である。植物由来タンパク質含有量が総タンパク質含有量の1質量%より低いと、本発明の効果が得られず、90質量%より高いと、乳風味が不足する。
【0016】
また、本発明が対象とする飲料は、総タンパク質含有量が3.00質量%以下の飲料である。総タンパク質含有量が3.00質量%を超える飲料は、植物由来タンパク質を含まない場合においても、コクが感じられるため、本発明の課題がそもそも生じていない。飲料中の総タンパク質含有量は、好ましくは0.10質量%以上3.00質量%以下であり、より好ましくは0.50質量%以上2.80質量%以下である。
【0017】
本発明の飲料の総タンパク質含有量は、ケルダール法により測定することができる。また、飲料中の植物由来タンパク質の含有量は、例えば飲料中の各種アミノ酸濃度とその組成ならびに製品に付された原料表示から植物由来タンパク質に該当するタンパク質の含有量を求めることにより得ることができる。
【0018】
(乳固形分)
本発明の飲料の乳固形分量は、好ましくは3.0質量%未満であり、より好ましくは1.0~2.5質量%であり、さらに好ましくは1.5~2.0質量%である。乳固形分の含有量が3.0質量%未満である場合、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」において「乳飲料」の規格に該当しないが、本発明により、ミルク風味とミルクのコクを付与することができ、乳飲料と同等のミルク感を得ることができる。乳固形分とは、乳脂肪分と無脂乳固形分の合計を指し、一般的な牛乳は乳固形分が12.6質量%(乳脂肪分3.8質量%、無脂乳固形分8.8質量%)である。乳固形分は、乳成分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固等)を用いて乾燥させて水分を除いた後の乾固物の重量を測定することで求めることができる。例えば、容器詰め飲料の容器上に表示された乳原料(乳成分)についてそれぞれ乳固形分を測定し、それを合計したものを飲料中の乳固形分とすることができる。
【0019】
(乳脂肪)
本発明の飲料は乳脂肪を含有するが、その含有量は特に限定されない。好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。乳脂肪の含有量が0.1質量%以上であるとミルクの風味を付与しやすくなるからである。また、上述のとおり乳固形分が3.0質量%未満が好ましいことから、乳脂肪分も3.0質量%未満であるのが好ましく、より好ましくは2.5質量%未満である。
【0020】
(乳成分含有飲料)
本発明の飲料は乳成分を含む(乳成分含有飲料と呼ぶ)。乳成分含有飲料の種類としては、例えば、ミルク風味飲料、コーヒーミルク、紅茶ミルク、抹茶ミルクなどの乳成分を含有する飲料を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
(カフェイン)
本発明の乳成分含有飲料には、カフェインを含有させてもよい。適量のカフェインを含有させることで、植物油脂由来の苦味をマスキングする効果が得られる。一方、カフェイン含有量が高すぎると、カフェインが苦味として知覚され、飲料の香味に影響を及ぼすことがある。本発明の飲料におけるカフェインの含有量は、特に限定されないが、飲料100mLあたり好ましくは1~100mgであり、より好ましくは3~50mgであり、さらに好ましくは5~40mgである。飲料中のカフェインの含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0022】
飲料に添加される際のカフェインの形態は特に限定されないが、例えばカフェインを含有するコーヒー抽出物、茶(緑茶、紅茶、烏龍茶)抽出物、あるいはカフェイン製剤を用いることができる。コーヒー抽出物や茶抽出物を用いる場合、液体と粉末のどちらを用いてもよい。
【0023】
(甘味成分)
本発明の飲料は、さらに甘味成分を含むことが好ましい。甘味成分は、乳のまろやかさを増強する効果があるからである。ここで甘味成分とは、甘味を有する成分であり、糖類、糖アルコール、甘味料をいう。具体的には、砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトースなどの甘味を有する糖類、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料が挙げられる。中でも砂糖を含むことが好ましい。
【0024】
(その他の成分)
上記の成分の他、本発明の飲料は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、香料、乳化剤、pH調整剤、酸化防止剤等を含有することができる。香料の種類は特に制限されないが、ミルク香料等の乳成分の香気を増強する香料を好ましく選択することができる。乳化剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を主成分とした、公知の乳化剤を挙げることができる。中でもショ糖脂肪酸エステルを好ましく選択することができる。
【0025】
(pH)
本発明の飲料のpHは、特に限定されないが、飲料の微生物学的安全保証の点から、5.0~8.0であることが好ましく、6.0~7.0であることがより好ましい。飲料のpH調整は、公知のpH調整剤を用いて適宜行うことができる。
【0026】
(容器詰め飲料)
本発明の飲料は、容器に詰められた状態の容器詰め飲料であることが好ましい。飲料を充填する容器は、特に限定されないが、例えば、PETボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶などを用いることができる。本発明は、常温流通の飲料に好適に用いられることから、PETボトル、アルミ缶、スチール缶が好ましく、軽量で持ち運びが容易であるPETボトルが特に好ましい。
【0027】
(加熱殺菌)
本発明の飲料が容器詰め飲料である場合、加熱殺菌処理済みであることが好ましいい。本発明における加熱殺菌処理の条件は、特に制限されないが、容器として耐熱性容器(金属缶、ガラス等)を使用する場合には、レトルト殺菌(110~140℃、1~数十分間)を行うことができ、また、容器として非耐熱性容器(PETボトル、紙容器等)を用いる場合は、例えば、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却した後、その非耐熱性容器に充填することができる。
【0028】
(製造方法)
本発明の乳成分含有飲料は、乳成分と植物油脂と植物由来タンパク質とを上記の特定の濃度範囲を満たすように混和することにより製造することができる。また、混和後に容器に充填してもよい。具体的には、以下の工程を含む方法により製造することができる:
(1)(a)乳成分が乳脂肪と乳タンパク質を含み、
(b)飲料中の植物油脂含有量が0.1質量%以上であり、
(c)飲料中の総タンパク質含有量が0.00質量%より多く3.00質量%以下であり、
(d)飲料中の植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%である飲料となるように、乳成分と植物油脂と植物由来タンパク質とを混和し調整する工程、及び
(2)飲料を容器に充填する工程。
【0029】
乳成分、植物油脂、植物由来タンパク質については上記した通りである。これらの他に、水と、上記した各種の添加物(カフェイン、甘味成分、香料、乳化剤、pH調整剤、酸化防止剤等)を混和してもよい。混和の方法は特に限定されず、通常の飲料の製造に用いる方法を用いればよい。また、混和の順序や混和時の温度も特に限定されず、材料に応じて適切な条件を選択すればよい。
【0030】
得られた飲料は上述したような容器に充填して、容器詰め飲料としてもよい。また、飲料の充填時あるいは充填の前又は後に、上述した加熱殺菌を行ってもよい。
【実施例0031】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
参考例
牛乳、紅花油、及び乳化剤を用いて、表1に従い、乳成分含有飲料を調製した。なお、用いた牛乳は、乳タンパク質3.3質量%、乳脂肪3.8質量%であった。また、紅花油は日清オイリオグループ(株)製を用い、乳化剤はサンソフト(登録商標)A-181EP(太陽化学(株)製)とポエム(登録商標)B-10(理研ビタミン(株)製)を併用した。
【0032】
得られた乳成分含有飲料について、専門パネル5名が官能評価した。ミルク風味については、各パネルが3段階(〇:ミルクの風味がある、△:ミルクの風味が少しある、×:ミルクの風味がほとんどない)で評価した後、最も人数の多い評価を評価点とした。ミルクらしいコクについては、以下の評価基準に基づいて各パネルが評価し、その平均点を採用した。平均点は2.0点以上が合格であり、3.0点以上が好ましい。
5点:コクを感じ、コクが60秒以上持続する(サンプル1-1相当)。
4点:コクを感じ、コクが30秒以上60秒未満持続する。
3点:コクを感じ、コクが10秒以上30秒未満持続する。
2点:コクを感じ、コクが5秒以上10秒未満持続する。
1点:コクを感じない。または若干感じても持続しない(サンプル1-2相当)。
【0033】
【0034】
評価結果は表1のとおりである。乳タンパク質が3.00質量%を超える乳成分含有飲料は、ミルク風味とミルクらしいコクを併せ持ち、本発明の課題がそもそも生じていないことがわかる。一方、乳タンパク質が0.73質量%の乳成分含有飲料においては、ミルクらしい風味はないが、植物油脂を0.1~1.0質量%添加することで、ミルクらしい風味を付与することができる。しかし、植物油脂を添加するだけでは、ミルクらしいコクは十分に感じられなかった。
【0035】
実験例1
牛乳、紅花油、大豆原料、及び乳化剤を用いて、表2に従い、乳成分含有飲料を調製した。なお、牛乳と紅花油は参考例1と同じものを、大豆原料は日清オイリオグループ(株)製「全脂大豆粉 アルファプラス(登録商標)HS-600」(大豆タンパク質含量42.7質量%)を用い、飲料にそのまま混入させた。
【0036】
得られた各種乳成分含有飲料について、専門パネル5名がミルク風味とミルクらしいコクについて、参考例と同様の方法にて官能評価を行った。
【0037】
【0038】
評価結果は表2のとおりである。総タンパク質含有量が0.00質量%
より大きく3.00質量%以下の飲料において、植物油脂を0.1質量%以上含有させ、さらに飲料中の植物由来タンパク質含有量が、総タンパク質含有量の1~90質量%となるように植物由来タンパク質源(大豆原料)を含有させることにより、ミルク風味とミルクらしいコクをともに付与できることがわかった。
【0039】
実験例2
植物油脂、植物由来タンパク質、乳成分の原料を各々表3のように変更し、実験例2のサンプル2-4と同等の植物油脂量、乳脂肪量、乳タンパク質量、及び植物由来タンパク質量を有する飲料を調製した。アーモンド原料は江崎グリコ(株)製「アーモンド効果」(アーモンドタンパク質含有量1質量%)を用い、オーツ麦原料は、ダノンジャパン(株)製「アルプロ(登録商標)オーツミルク」(オーツ麦タンパク質含有量0.2質量%)を用いた。また、ヤシ油は日清オイリオグループ社製、パーム油は不二製油社製を用いた。また、脱脂粉乳は、乳タンパク質34質量%、乳脂肪1質量%であり、生クリームは、乳タンパク質2質量%、乳脂肪47質量%であった。
【0040】
得られた各種乳成分含有飲料について、専門パネル5名がミルク風味とミルクらしいコクについて、参考例と同様の方法にて官能評価を行った。
【0041】
【0042】
評価結果は表3のとおりである。植物油脂や植物由来タンパク質、乳成分の原料を変更しても、同じ効果が得られることがわかった。
実験例3
牛乳と紅花油は参考例1と同じものを用い、大豆原料は実験例1と同じものを用いて以下の表4の配合に従って、コーヒーミルク飲料と抹茶ミルク飲料を調製し、殺菌を行い、無菌環境下で500mlペットボトルに充填した。得られた各飲料について、参考例と同様の方法にて官能評価を行った。
【0043】
【0044】
どちらの飲料においても、総タンパク質含有量1.12質量%にもかかわらず、1.0質量%の植物油脂と、飲料の総タンパク質含有量に対して38質量%の植物由来タンパク質を配合することで、ミルク風味とミルクらしいコクがともに付与されることがわかった。