(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106827
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】レーザー溶着用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20230726BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20230726BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230726BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20230726BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B29C65/16
C08K3/38
C08K3/22
C08K5/521
C08L101/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007789
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】望田 諭嗣
【テーマコード(参考)】
4F211
4J002
【Fターム(参考)】
4F211AA28
4F211AB05A
4F211AB07
4F211AB12
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4J002CF061
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4J002FD078
4J002FD160
4J002FD206
4J002FD207
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】高度の透明性を有するにもかかわらず、耐熱(耐湿熱)変色性に優れ、強固なレーザー溶着が可能なレーザー溶着用部材を提供する樹脂組成物。
【解決手段】透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaからなる群より選択された少なくとも1種の金属ホウ化物微粒子(B1)、あるいは、酸化カリウムタングステン、酸化ルビジウムタングステン、酸化セシウムタングステン及び酸化タリウムタングステンより選択された少なくとも1種のタングステン系酸化物微粒子(B2)を0.00035~0.5質量部、及び、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)を0.00007~0.1質量部含有することを特徴とするレーザー溶着用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaからなる群より選択された少なくとも1種の金属ホウ化物微粒子(B1)、あるいは、酸化カリウムタングステン、酸化ルビジウムタングステン、酸化セシウムタングステン及び酸化タリウムタングステンより選択された少なくとも1種のタングステン系酸化物微粒子(B2)を0.00035~0.5質量部、及び、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)を0.00007~0.1質量部含有することを特徴とするレーザー溶着用樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、ホスファイト系酸化防止剤を、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.005~0.5質量部含有する請求項1に記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザー溶着用樹脂組成物からなるレーザー溶着用部材。
【請求項4】
2mm厚でのヘイズが80%以下である請求項3に記載のレーザー溶着用部材。
【請求項5】
請求項3または4に記載のレーザー溶着用部材を、他の透明樹脂部材とレーザー溶着したレーザー溶着体。
【請求項6】
他の透明樹脂部材の2mm厚でのヘイズが8%以下である請求項5に記載のレーザー溶着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶着用樹脂組成物、及びレーザー溶着用部材、レーザー溶着体に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー溶着は、レーザーを透過する部材とレーザーを吸収する部材を、両者の接着したい部分で当接させ、レーザーを透過する部材側からレーザー吸収部材に照射し、両部材を溶着させ接合させる。
【0003】
レーザー吸収部材には、レーザー吸収剤として、カーボンブラックを配合することが一般的である。その他、フタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物、アントラキノン系化合物等、各種の添加剤も提案されているが、カーボンブラックは黒色であり、また、その他の添加剤も、不透明あるいは何かしらの色が付いている。
そのため、透明なレーザー溶着体を得たい場合や接合部の黒化や着色が好ましくない部材には不都合である。
【0004】
特許文献1には、高分子分散剤とレーザー吸収剤として6ホウ化物の微粒子を含有する溶着用部材が、透明でありながらレーザー溶着が可能であるとの提案がされている。
しかしながら、医療用機器やウェラブル機器等の高度の透明性が要求される用途においては、その透明度は必ずしも十分とはいえず、使用が制限されやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的(課題)は、高度の透明性を有するにもかかわらず、耐熱(耐湿熱)変色性に優れ、強固なレーザー溶着を可能とするレーザー溶着用樹脂組成物、レーザー溶着用部材、レーザー溶着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、金属ホウ化物微粒子(B1)、あるいは、タングステン系酸化物微粒子(B2)と、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)を、それぞれ特定の量で含有するレーザー溶着用樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のレーザー溶着用樹脂組成物、レーザー溶着用部材、及びレーザー溶着体に関する。
【0008】
1.透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaからなる群より選択された少なくとも1種の金属ホウ化物微粒子(B1)、あるいは、酸化カリウムタングステン、酸化ルビジウムタングステン、酸化セシウムタングステン及び酸化タリウムタングステンより選択された少なくとも1種のタングステン系酸化物微粒子(B2)を0.00035~0.5質量部、及び、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)を0.00007~0.1質量部含有することを特徴とするレーザー溶着用樹脂組成物。
2.さらに、ホスファイト系酸化防止剤を、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.005~0.5質量部含有する上記1に記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
3.上記1に記載のレーザー溶着用樹脂組成物からなるレーザー溶着用部材。
4.2mm厚でのヘイズが80%以下である上記3に記載のレーザー溶着用部材。
5.上記3または4に記載のレーザー溶着用部材を、他の透明樹脂部材とレーザー溶着したレーザー溶着体。
6.他の透明樹脂部材の2mm厚でのヘイズが8%以下である上記5に記載のレーザー溶着体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、高度の透明性を有するにもかかわらず、耐熱 (耐湿熱)変色性に優れ、強固なレーザー溶着が可能なレーザー溶着用部材を提供し、レーザー溶着した溶着体は優れた透明性を示し、耐熱変色性と耐湿熱変色性に優れる。そして、レーザー溶着体は、高度の透明性が求められる医療用機器やウェラブル機器等に、特に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaからなる群より選択された少なくとも1種の金属ホウ化物微粒子(B1)、あるいは、酸化カリウムタングステン、酸化ルビジウムタングステン、酸化セシウムタングステン及び酸化タリウムタングステンより選択された少なくとも1種のタングステン系酸化物微粒子(B2)を0.00035~0.5質量部、及び、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)を0.00007~0.1質量部含有することを特徴とする。
【0012】
[透明熱可塑性樹脂(A)]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物に用いる透明熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の非晶性ポリエステル樹脂;ポリスチレン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、又は2種類以上のこれらの熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを挙げることができる。
中でも、透明性の点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂を使用することが好ましく、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0013】
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0014】
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0015】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ちレゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0016】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ちビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ちビスフェノールC)、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン(即ちビスフェノールAP)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0017】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0018】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0019】
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性、透明性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ちビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ちビスフェノールC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン(即ちビスフェノールAP)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0020】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0021】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0022】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0023】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは14000以上、より好ましくは16000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0025】
ポリカーボネート樹脂は、高分子量のポリカーボネート樹脂、例えば好ましくは粘度平均分子量[Mv]が、50000~95000のポリカーボネート樹脂を含有することも好ましい。高分子量ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、より好ましくは55000以上であり、さらに好ましくは60000以上、中でも61000以上、特には62000以上が好ましく、また、より好ましくは90000以下、さらに好ましくは85000以下、中でも80000以下、とりわけ75000以下、特には70000以下が好ましい。
【0026】
高分子量ポリカーボネート樹脂を含む場合は、ポリカーボネート樹脂中、5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0027】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、
η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。
また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【0028】
【0029】
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。これにより本発明の樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明の樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0030】
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0031】
ポリカーボネート樹脂は、バージン樹脂だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)、あるいは、ポリカーボネート樹脂を化学的に分解して原料にまで戻したものから製造したポリカーボネート樹脂(いわゆるケミカルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよく、バージン樹脂とリサイクル樹脂の両方を含有することも好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂からなることでもよい。リサイクルポリカーボネート樹脂を含む場合、ポリカーボネート樹脂中のリサイクルポリカーボネート樹脂の割合は40%以上、50%以上、60%以上、80%以上が好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂が100%であることも好ましい。
【0032】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂は、メチルメタクリレート系の樹脂が好ましく、メチルメタクリレートの構成単位のモノマー量が全構成単位の総モノマー量に対して80モル%以上、好ましくは90モル%以上であることが好ましい。アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと他のメチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレート等との共重合体であることも好ましい。
【0033】
また、アクリル樹脂は、質量平均分子量が20000~200000が好ましく、50000~150000であることが好ましい。
アクリル樹脂の質量平均分子量は、標準試料として標準ポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0034】
アクリル樹脂の製造方法は一般的に乳化重合法、懸濁重合法、連続重合法に大別されるが、本発明に使用されるアクリル樹脂は連続重合法により製造されたアクリル樹脂が好ましい。更に、連続製造法には連続塊状重合法と連続溶液重合法とに分けることができるが、本発明においてはいずれの製法で得られたアクリル樹脂も用いることができる。
アクリル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0035】
前記したように、透明熱可塑性樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂以外のその他の、前記した熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0036】
[金属ホウ化物微粒子(B1)、タングステン系酸化物微粒子(B2)]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaからなる群より選択された少なくとも1種の金属ホウ化物微粒子(B1)、あるいは、酸化カリウムタングステン、酸化ルビジウムタングステン、酸化セシウムタングステン及び酸化タリウムタングステンより選択された少なくとも1種のタングステン系酸化物微粒子(B2)を、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.00035~0.5質量部の量で含有する。
【0037】
金属ホウ化物微粒子(B1)は、レーザー光波長域の光を吸収する機能を有する無機微粒子であり、自由電子を大量に保有してプラズマ共鳴振動を生ずる微粒子である。レーザー光が金属ホウ化物微粒子(B1)に入射するとその光の振動数に応じて自由電子が励起されて電子の集合的振動が生じ、エネルギーが吸収・輻射される。このときの吸収波長は自由電子密度や微粒子のエネルギー構造に依存しており、Nd:YAGレーザーや半導体レーザー光の波長範囲800~1200nmの近傍にプラズマ吸収波長を持つ。
【0038】
金属ホウ化物微粒子(B1)は、一般式XB6(但し、Xは、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaから選択される1種以上の金属元素である。)で表され、XB4、XB12等で表される他のホウ化物を少ない量で含んでいてもよい。
【0039】
Xとしては、上記の中でもLa、Ceが好ましく、吸収性と透明性が顕著であることからLaB6、CeB6が好ましく、特にLaB6が好ましい。
【0040】
金属ホウ化物微粒子(B1)の平均分散粒子径は、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、85nm以下であることがさらに好ましい。その下限値は特に限定されないが、例えば、1nm以上であることが、工業的生産が容易であるので好ましい。
なお、平均分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置により測定することができ、レーザー回折散乱方式により測定された中央値(D50)である。
【0041】
タングステン系酸化物微粒子(B2)は、酸化カリウムタングステン、酸化ルビジウムタングステン、酸化セシウムタングステン及び酸化タリウムタングステンより選択され、タングステン酸化物WO3に、カリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム元素Mを加え、複合タングステン酸化物とすることで、WO3中に自由電子が生成され、特に近赤外線領域に自由電子由来の強い吸収特性が発現し、波長1000nm付近のレーザー光吸収微粒子として有効となる。
複合タングステン酸化物としては、MxWyOz(但し、Mは、カリウム、ルビジウム、セシウムまたはタリウム、Wはタングステン、Oは酸素)と示すとき、0.01≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3の関係を満たす複合タングステン酸化物がより好ましい。
【0042】
タングステン系酸化物微粒子(B2)の平均分散粒子径は、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、85nm以下であることがさらに好ましい。その下限値は特に限定されないが、例えば、1nm以上であることが、工業的生産が容易であるので好ましい。
なお、平均分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置により測定することができ、レーザー回折散乱方式により測定された中央値(D50)である。
【0043】
金属ホウ化物微粒子(B1)またはタングステン系酸化物微粒子(B2)の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.00035~0.5質量部である。このような含有量とすることで、透明性とレーザー溶着性が良好となる。含有量は好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上であり、中でも0.0015質量部以上、特には0.002質量部以上が好ましく、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下であり、中でも0.2質量部以下、0.1質量部以下、0.05質量部以下、0.03質量部以下、特には0.02質量部以下が好ましい。(B1)と(B2)を併せて含有する場合の好ましい量もこの量である。
【0044】
[アルキルアシッドホスフェート、その金属塩、有機ホスホン酸(C)]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)を含有する。
【0045】
アルキルアシッドホスフェートは、下記式(1)で表されるものが好ましい。
O=P(OH)n(OR)3-n …(1)
[式(1)中、Rは炭素数9~30のアルキル基であり、nは1又は2の整数を表す。nが1の場合、2つのRは同一であっても異なるものであってもよい。)
アルキルアシッドホスフェートは、上記式(1)で表され、アルキルアシッドホスフェート金属塩は上記式(1)で表されるアルキルアシッドホスフェートの亜鉛塩、アルミニウム塩等の金属塩であることが好ましい。
【0046】
上記式(1)中のRで示されるアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐を有していてもよい。Rのアルキル基としては、具体的には、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オ
クタデシル(則ちステアリル)、エイコシル、テトラコシル基等が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、13、18、24のいずれかであることがより好ましく、アルキルアシッドホスフェートとしては、特に、n=1のジステアリルアシッドホスフェートとn=2のモノステアリルアシッドホスフェートとの混合物であるものが好ましい。
【0047】
また、アルキルアシッドホスフェートの金属塩としては、n=1のジステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩と、n=1のモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩との混合物が特に好ましい。
【0048】
有機ホスホン酸としては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
R-P(=O)(OH)2 …(2)
[式(2)中、Rはアリール基、アラルキル基及びアルキル基からなる群から選択される基である。]
上記式(2)におけるアリール基としては、例えばフェノール、ヒドロキシフェニル、ナフチル等が挙げられ、またアラルキル基としては例えばベンジル、p-ヒドロキシベンジル、4-ヒドロキシ-2,5-ジ-t-ブチルベンジル等が挙げられ、またアルキル基としては例えばエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル等が挙げられる。
【0049】
有機ホスホン酸の好ましい具体例としてはフェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、p-ヒドロキシベンジルホスホン酸、4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジルホスホン酸、エチルホスホン酸等を例示することができる。これらのうち、フェニルホスホン酸等のアリールホスホン酸が好ましい。
【0050】
アルキルアシッドホスフェート、その金属塩、有機ホスホン酸(C)の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.00007~0.1質量部である。このような量で含有することにより、本発明の樹脂組成物、溶着用部材および溶着体を、高度の透明性と、耐熱(耐湿熱)変色性に優れ、強固なレーザー溶着が可能なレーザー溶着用部材を提供し、レーザー溶着した溶着体は優れた透明性を示し、耐熱変色性と耐湿熱変色性に優れたものとすることができる。含有量は、好ましくは0.0001質量部以上であり、中でも0.0005質量部以上、特に0.001質量部以上が好ましく、好ましくは0.08質量部以下、さらに好ましくは0.07質量部以下である。
【0051】
[ホスファイト系酸化防止剤]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、さらにホスファイト系酸化防止剤を含有することも好ましい。
ホスファイト化合物は、一般式:P(OR)3で表される3価のリン化合物であり、Rは、1価または2価の有機基を表す。
【0052】
このようなホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジホスファイト、6-[3-(3-tert-ブチル-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0053】
このようなホスファイト化合物の中でも、下記式(3)またはスピロ環骨格を有する下記式(4)で表される芳香族ホスファイト化合物がより好ましい。
【0054】
【化1】
[式(3)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。]
【0055】
【化2】
[式(4)中、R
4及びR
5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。]
【0056】
上記式(3)で表されるホスファイト系酸化防止剤としては、中でもトリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、中でもトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような、ホスファイト系酸化防止剤としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP-351」、ADEKA社製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP-650」等が挙げられる。
【0057】
上記式(4)で表されるホスファイト系酸化防止剤としては、中でもビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトのようなペンタエリスリトールジホスファイト構造を有するものが特に好ましい。このような、ホスファイト系酸化防止剤としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブPEP-36」、Doverchemical社製「Doverphos S-9228」等が好ましく挙げられる。
【0058】
なお、ホスファイト系酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0059】
ホスファイト系酸化防止剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.005~0.5質量部であり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上であり、また、好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、中でも0.2質量部以下、0.1質量部以下、特には0.05質量部以下が好ましい。このような量で、アルキルアシッドホスフェートまたはその金属塩、あるいは有機ホスホン酸(C)と組み合わせて含有することにより、優れた色調(ヘイズ)と耐熱変色性、耐湿熱変色性をより向上させることができ、さらに湿熱試験後のボイド発生を抑制することができる。
【0060】
[離型剤]
また、本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、離型剤(滑剤)を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0061】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0062】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
【0063】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0064】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0065】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0066】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
【0067】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
【0068】
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0069】
離型剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0070】
[紫外線吸収剤]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、さらに、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0071】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、中でも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0072】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM-40」、BASF社製「ユビヌルMS-40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」等が挙げられる。
【0073】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0074】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN-35」、「ユビヌルN-539」等が挙げられる。
【0075】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0076】
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR-25」、BASF社製「B-CAP」等が挙げられる。
【0077】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0078】
[その他の成分]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤、他の樹脂などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0079】
<樹脂添加剤>
樹脂添加剤としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、充填材、蛍光増白剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の樹脂や添加剤等を含有してもよい。
【0080】
<他の樹脂>
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
ただし、その他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0081】
[樹脂組成物の製造]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物を製造する方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、上記した必須成分(A)~(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。この際、各成分は必要によりサイドフィードすることも好ましい。
【0082】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、レーザー溶着用樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによってレーザー溶着用樹脂組成物を製造することもできる。
また、このマスターバッチを基材となる樹脂ペレットと混合して直接、成形機に投入して成形体を製造することも出来る。また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
【0083】
[成形体]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、成形してレーザー溶着用部材とされる。
成形する方法は、熱可塑性樹脂組成物に一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられ、また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
これらの中でも、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などの射出成形法、シート押出成形法、異形押出成形法等が好ましい。
【0084】
本発明の樹脂組成物より成形された成形体は、レーザー溶着用部材(レーザー光吸収材)としてレーザー溶着に供される。
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物を用いて成形されたレーザー溶着用部材のヘイズは、ISO13468-2に従って、厚さ2mmで測定した波長1070nmにおける透過率が好ましくは80%以下であり、中でも70%以下、60%以下、55%以下、特に50%以下であることが好ましく、また好ましくは20%以上、中でも30%以上、特には40%以上であることが好ましい。
【0085】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物を成形して用いる成形体の形状は限定されず、平板であってもよいし、曲面形状等の非平面形状であってもよく、例えばドーム状、半球状、円筒状、ピラミッド状、波板状等、あるいは平面や非平面を結合した複雑な形状のものであってもよい。
【0086】
レーザー溶着する方法は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。好ましくは、本発明のレーザー溶着用樹脂組成物から得られたレーザー溶着用部材を吸収側(レーザー吸収側部材)とし、相手材の他の透明樹脂部材(透過側部材)とを面接触または突合せ接触させ、透過側部材側からレーザー光を照射することにより両部材を溶着、一体化してレーザー溶着体とする。
【0087】
相手材の他の透明樹脂部材としては、透明熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の非晶性ポリエステル樹脂;ポリスチレン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、又は2種類以上のこれらの熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを挙げることができる。
中でも、透明性の点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂を使用することが好ましく、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。相溶性の点から、レーザー溶着用部材(レーザー光吸収材)と同種の透明熱可塑性樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0088】
レーザー溶着で照射するレーザー光の種類は、近赤外レーザー光であれば任意であり、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザー(波長1064nm)、LD(レーザーダイオード)レーザー(波長808nm、840nm、940nm)等を好ましく用いることができる。
【0089】
レーザー溶着により一体化された溶着体の形状、大きさ、厚み等は任意であり、溶着体としては、高度の透明性が求められる製品の部材として好適であり、例えば、ウェアラブル機器、医療用機器部品、光学部品、照明機器、レンズ、レンズカバー、各種ディスプレイ、電気・電子機器、ノートパソコン、パチンコ、パチスロ、ゲーム等のアミューズメント機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、車輌部品(ライト、内装部品、パネル)、透明パーティション、商品ディスプレイなどのパネル部材、自動販売機、券売機などの間仕切り板、看板、時計、アクセサリー等の部品が挙げられる。
【実施例0090】
以下、実施例を示して本発明について、更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例及び比較例に使用した各成分は、以下の表1の通りである。
【0091】
【0092】
(実施例1~11、比較例1~9)
[樹脂ペレットの製造]
表1に記載した各成分を、後記表2以下に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーミキサーにて20分混合した後、日本製鋼所社製二軸押出機「TEX25αIII」に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/hr、シリンダー温度280℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押し出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0093】
[1070nmにおける透過率(2mmt、単位:%)]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製「EC-50」)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、90mm×60mmの3段状プレート(1mmt、2mmt、3mmt厚)を製造した。
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製「UV-3600」)を用い、ISO13468-2に従って、波長1070nmにおける透過率(単位:%)を求めた。
【0094】
[ヘイズ(2mmt、単位:%)]
上記の方法で得られた平板状プレート(2mm厚)を、JIS K7136、JIS K7361に基づき、濁度計(日本電色工業社製「NDH-4000」)を用いて、D65光源、10°視野にて、ヘイズ(単位:%)を測定した。
【0095】
[湿熱処理前後ヘイズ差(Δヘイズ、単位:%)]
上記の方法で得られた平板状プレート(2mm厚)を、プレッシャークッカー試験機にて、85℃、95%RHで、264時間、湿熱処理した後、ヘイズを測定した。
湿熱処理前と処理後のヘイズ値との差をΔヘイズ(単位:%)として算出し、耐湿熱性の指標とした。
【0096】
[全光線透過率(2mmt、単位:%)]
上記の方法で得られた平板状プレート(2mm厚)を、濁度計(日本電色工業社製「NDH-4000」)を用いて、全光線透過率(単位:%)を測定した。
【0097】
[レーザー溶着性の評価]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、1.5mm厚のASTM4号ダンベル片#1(レーザー溶着用部材、=レーザー光吸収材)を製造した。
また、相手材として、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ユーピロンS-3000」、Mv=21000)を用い、上記と同様にして、1.5mm厚のASTM4号ダンベル片#2(=レーザー光透過材)を製造した。
得られたASTM4号ダンベル片#1及び#2を使用し、両者を重ね合わせ、重ね合わせ部にレーザー光を照射してレーザー溶着した。
【0098】
レーザー溶着は、ARGES社製「ガルバノスキャニング式レーザー加工機 FIBER ELEPHANT(3D)」を使用し、レーザー波長1070nm、レーザー出力100W、レーザースキャン速度150mm/秒、加圧0.4MPa、溶着部サイズ2×6mmの条件で行った。
【0099】
引張試験機(インストロン社製「5544」)を使用し、溶着されたダンベル片#1とダンベル片#2の溶着部の反対側をそれぞれ掴み、引張方向に引張速度5mm/分で荷重をかけ、剪断破壊する様子を観察し、以下の基準で評価した。
〇:母材破壊が発生し、溶着強度が極めて高い。
×;溶着面で破断が起きるか、そもそも溶着していない。
【0100】
[溶着後のレーザー溶着体の透過率(単位:%)]
レーザー溶着した後のダンベル片#1(1.5mmt)とダンベル片#2(1.5mmt)の合計透過率(3mmt、単位:%)を、前記と同様にして測定し、溶着後の溶着体の透明性を評価した。
【0101】
以上の評価結果を以下の表2以下に示す。
【0102】
【0103】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物をレーザー溶着した溶着体は、優れた透明性を示し、耐熱変色性と耐湿熱変色性に優れるので、透明性が求められる用途の部品等として、好適に利用できる。