(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010683
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】大脳動脈への中間カテーテルのアクセス支援
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3207 20060101AFI20230113BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61B17/3207
A61B17/22 528
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110282
(22)【出願日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】63/220,183
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・ケーシー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・コンロン
(72)【発明者】
【氏名】カール・キーティング
(72)【発明者】
【氏名】マームード・ミルザ
(72)【発明者】
【氏名】カーク・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ポサダ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エチャリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・ルイズ
(72)【発明者】
【氏名】デニス・フォンセカ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160EE28
4C160KL03
4C160MM36
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】脳血管アクセスデバイスを提供すること。
【解決手段】内側管腔を備えるベースチューブと、ベースチューブの片側に配設された成形可能な要素と、ベースチューブ及び成形可能な要素の一部を覆う外側ジャケットと、を有する、脳血管アクセスデバイス。成形可能な要素は、軸線から偏向し、成形可能な要素と共にベースチューブ及び外側ジャケットを偏向させるように構成され得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳血管アクセスデバイスであって、
内腔を備えるベースチューブと、
前記ベースチューブの片側に配設された成形可能な要素と、
前記ベースチューブ及び前記成形可能な要素の一部を覆う外側ジャケットと、を備え、
前記成形可能な要素は、軸線から偏向し、前記成形可能な要素と共に前記ベースチューブ及び前記外側ジャケットを偏向させるように構成されている、脳血管アクセスデバイス。
【請求項2】
前記成形可能な要素は、
前記ベースチューブの近くに位置し、前記外側ジャケットで覆われる平坦な端部と、
前記平坦な端部に接続された近位ワイヤであって、前記ワイヤの大部分は、前記外側ジャケットの外側に配設されている、近位ワイヤと、を備える、請求項1に記載の脳血管アクセスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月9日に出願された米国特許仮出願第63/220,183号の利益及び優先権を主張する。これらの内容全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、内頸動脈(Internal Carotid Artery、ICA)及び中大脳動脈へのアクセスを支援するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
患者が急性虚血性脳卒中(acute ischemic stroke、AIS)などの疾患に罹患している場合、急性閉塞は、血塊、誤配置されたデバイス、移動されたデバイス、大きな塞栓などを含み得る。血栓塞栓症は、血栓の一部又は全てが血管壁から剥離したときに発生する。この血塊(ここでは、塞栓と呼ぶ)は次に、血流の方向に運ばれる。虚血性脳卒中は、脳の血管系内に血塊が詰まった場合に結果として生じ得る。これらの閉塞物へのデバイスの送達を困難にする、アクセスに関する多くの課題が存在する。
【0004】
1つの課題は、脳へと近づく動脈の蛇行性である。例えば、装置が、180°の屈曲、90°の屈曲、及び360°の屈曲を有する血管部分を数センチメートルの血管にわたって間断なく進まなければならないことは、内頸動脈の遠位端では珍しくない。別の課題は、血塊が詰まっている可能性のある区域内の脈管構造が、傷つきやすく繊細であることが多いことである。例えば、神経血管は、身体の他の部分における同様のサイズの血管よりも脆弱であり、軟組織床にある。これらの血管に加えられる過剰な引張力は、穿孔及び出血をもたらす可能性がある。これらの困難な場所へのアクセスを支援するデバイス及び方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、オペレータによる脳血管の横断を支援する例を開示する。アクセスデバイスの例は、アクセスデバイスが中間カテーテルを通って方向付けられ、蛇行する脈管構造を通って誘導することを可能にする、成形可能なテーパ状拡張器を含む。
【0006】
他の例としては、ロック及びレールカテーテルが挙げられる。これらの例では、レールカテーテルの遠位端は、血管壁に係合することができ、カテーテルに張力が加えられると、遠位端を固定することができる。使用する際、オペレータは、眼動脈入口部(ophthalmic ostium)、又はベース及び吸引カテーテルが脈管構造で動けなくなる任意の位置まで、又はその前にベースカテーテル、吸引カテーテル、及びレールカテーテルを送り込む。次いで、オペレータは、レールカテーテル302を血塊まで延出させ、係合要素を血管壁に固定する。固定すると、オペレータは、レールカテーテルに張力を加え、カテーテル及び血管の両方を直線化することができる。この直線化により、レールカテーテル302が眼動脈入口部から離れるように引かれ、オペレータは、ベースカテーテル及び吸引カテーテルの一方又は両方をレールカテーテルに沿って、血塊まで更に配置することができる。
【0007】
上記の目的及び関連する目的の実現のために、特定の例示的な態様について、以下の説明及び添付の図面に関連して本明細書に説明する。しかし、これらの態様は、特許請求の範囲の主題の原理を用いることができる様々な方法のいくつかだけを示しており、特許請求の範囲の主題は、全てのそのような態様及びその均等物を包含することを意図したものである。他の利点及び新規な特徴は、図面に関連して考慮したとき、以下の詳細な説明から明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上記及び更なる態様は、添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例解として、本発明のデバイスの1つ又は2つ以上の実装形態を描写している。
【
図1】脳血管内に位置する血塊への大腿部からのアクセスを介してカテーテルが挿入された患者を示し、その送達には動脈系を使用している。
【
図2】脳につながる大動脈弓の上の大脳動脈の特定の解剖学的構造を示す。
【
図3】本発明のアクセスデバイスと共に、内頸動脈及び眼動脈入口部の拡大図を示す。
【
図4】本発明のアクセス支援の例の部分側面断面図である。
【
図5】
図4のアクセス支援の例の部分分解側面図(partially dissembled side view)である。
【
図6】
図4のアクセス支援の例の部分透過側面図である。
【
図11A】本発明の係合要素/レールカテーテルのよりスリムな形状の例を示す。
【
図11B】本発明の係合要素/レールカテーテルのよりスリムな形状の例を示す。
【
図13】レールカテーテルを使用する例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示された技術の例示的な実施形態が本明細書に詳述されるが、他の実施形態が企図されることを理解すべきである。したがって、以下の説明に記載される又は図面に示される構成要素の構造及び配置の詳細に開示された技術の範囲が限定されることを意図するものではない。開示した技術は、他の実施形態が可能であり、様々な方式で実施又は実行されることが可能である。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上そうではないと明白に指示していない限り、複数の指示対象も含むことにもまた留意されたい。「を備える(comprising)」又は「を含有する(containing)」又は「を含む(including)」は、少なくとも言及された化合物、要素、粒子、又は方法工程が、組成物若しくは物品又は方法において存在することを意味するが、他の化合物、材料、粒子、方法工程の存在を、他のかかる化合物、材料、粒子、方法工程が言及されたものと同じ機能を有する場合であっても、除外するものではない。
【0011】
例示的な実施形態について説明する際、分かりやすくするために、専門用語を利用する。各用語は、当業者によって理解されるその最も広義の意味を有することが企図されており、類似の目的を実現するために同様に作用する全ての技術的な均等物を含むことが意図される。方法の1つ又は2つ以上の工程への言及は、追加の方法工程又は明示的に識別されたそれらの工程間に介在する方法工程の存在を排除しないことも理解されたい。方法の工程は、開示した技術の範囲から逸脱することなく、本明細書で述べた順序と異なる順序で実行され得る。同様に、デバイス又はシステムにおける1つ以上の構成要素への言及は、追加の構成要素の存在又は明示的に識別されたそれらの構成要素間に介在する構成要素の存在を排除しないことも理解されたい。
【0012】
本明細書にて議論されるように、「被験者」又は「患者」の脈管構造は、ヒト又は任意の動物の脈管構造であってよい。動物は、限定されるものではないが、哺乳類、獣医学的動物、家畜動物、又はペット類の動物などを含む、種々の任意の該当する種類のものであり得ることを理解するべきである。一例として、動物は、ヒトに類似したある特定の性質を有するように特に選択された実験動物(例えば、ラット、イヌ、ブタ、サルなど)であってもよい。対象は、例えば、任意の該当するヒト患者であってもよいことを理解するべきである。
【0013】
本明細書で論じられる場合、「オペレータ」には、医者、外科医、又は被験者の脈管構造への血塊回収デバイスの送達に関連する任意の他の個人若しくは送達器具が含まれ得る。
【0014】
本明細書で論じられる場合、「血栓」は、血管内の流れを妨害するか、又はそうでなければ閉塞させる、脈管構造の部位に留まる循環系内の血塊として理解することができる。「血塊」、「血栓」、「閉塞物」、「血管閉塞」、「閉塞」などの用語は、本開示を通して互換的に使用することができ、しばしば互換的に使用される。
【0015】
一例として、
図1は、大腿動脈を介した患者へのカテーテルの挿入の概略図を示し、第1のカテーテル、すなわちベースカテーテル2は、脳血塊Cに至る。
図2は、特定の例示的な脳血管の概略図を示す。血管100は大動脈である。血管101は腕頭動脈である。血管102は鎖骨下動脈である。血管103は総頸動脈である。血管104は内部頸動脈である。血管105は外部頸動脈である。血管106は中大脳動脈である。血管107は前大脳動脈である。
図1からのカテーテル2は、その遠位端部が総頸動脈内にある状態で示されている。本発明のより詳細に示す図面では、アクセス部位の詳細は示されていないが、概してアクセス及び送達は
図1及び
図2による。
図3は、第1のカテーテル2を通って内頸動脈104内に送達され得る、中間カテーテル、すなわち吸引カテーテル4の遠位端を示す。1つの重要な分岐は眼動脈入口部108であり、オペレータは、典型的には、当該分岐により中大脳動脈106のM1セクションにカテーテルが配置されないようにする必要がある。
【0016】
本発明は、オペレータによる脳血管の横断を支援する例を開示する。アクセスデバイス200の一例は、
図4~
図6に示されるように、成形可能なテーパ状拡張器202である。拡張器202は、内腔206を有するベースチューブ204を含むことができる。成形可能な要素208は、ベースチューブ204の片側に配設され得、その両方が、外側ジャケット210によって覆われ得る。
図3は、アクセスデバイス202が中間カテーテル4を通って方向付けられ得、蛇行する脈管構造を通って誘導するように動作可能であることを示す。
【0017】
ベースチューブ204は、その内部を通る管腔206を有し得る。管腔206は、中間カテーテル4の内側及び外側の両方が管腔であるとき、ガイドワイヤ(図示せず)に沿って追跡するために使用され得る。ベースチューブの管腔206は、任意選択的に、0.014インチ、0.016インチ、0.018インチ、又はそれ以上の直径のガイドワイヤと共に使用され得る。ベースチューブ204は柔らかく、弾性率が低いため、この材料はゴム様であり得る。これにより、ベースチューブ204は迅速かつ容易に変形することができるが、その形状を同様に迅速に回復することができる。他の例では、ベースチューブ204は、管腔206を有さず、内頸動脈を通って中大脳動脈106のM1セクションまで移動して、ワイヤによって誘導されない血塊Cに到達する。
【0018】
成形可能な要素208は、ワイヤ211として近位に開始し、拡張器202の遠位端に到達すると、平坦な遠位端212を有する。成形可能な要素208は、ベースチューブ204の最遠位端まで延在せず、その代わりに最遠位端部の近位に位置付けられている。成形可能な要素208は、形状記憶材料又は変形可能な材料から作製され得る。これにより、オペレータは、要素208の形状を変更することができるため、血管内でアクセスデバイス200を「操縦する」ことができる。
【0019】
材料は、例えば、ステンレス鋼であり得るため、成形可能な要素208は、オペレータによって成形され得る。別の例では、成形可能な要素208が事前に成形される場合、要素はニチノールであり得る。超弾性材料記憶合金(ニチノール)、同様の特性の生体適合性合金、又はステンレス鋼は、ワイヤ、ストリップ、シート、チューブ、又はこれらの形状の組み合わせなど多くの形態であり得る。いくつかの例では、成形可能な要素208は、放射線不透過性ではなく、合金化元素(例えば、白金、タンタルなど)の添加によって、又は様々な他のコーティング若しくはマーカーバンドを用いて、蛍光透視法下で可視化され得る。加えて、熱又は電位のために形状を変化させる合金を使用することができる。
【0020】
外側ジャケット210は、ベースチューブ204及び成形可能な要素208を一緒に接合し、両方の上に積層し得る。これにより、ベースチューブ204及び成形可能な要素208は一体として作用することができ、成形可能な要素208が変形すると、ベースチューブ204が変形し、拡張器202の遠位端が偏向して、軸線Lから外れる。いくつかの例では、その偏向は、軸線Lからの角度α(
図6)によって測定され得る。外側ジャケット210とは別に、又は同様に、成形可能な要素208の近位端211は、任意選択的に、熱収縮性PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、別名テフロン(登録商標))でコーティングされ得るか、又は低摩擦材料で直接コーティングされ得るか、又はコーティングされ得ない。
【0021】
ベースチューブ204、成形可能な要素208、及び外側ジャケット210の任意の組み合わせを放射線不透過性にすることができるため、拡張器202は、透視装置下で認識可能であり得る。更に、拡張器202は、その長さに沿って様々な剛性を有し得る。例えば、変移点214は、拡張器202がより剛性の近位端から非常に柔らかい、可撓性の遠位端に変移する位置をマークし得る。剛性変移は、構成要素204、208、210のうちのいずれか又は3つ全ての要因であり得、徐々に導入され得るか、又は変移のための別個の「ヒンジ」点を有し得る。
【0022】
一例では、拡張器202の構成要素204、208、210の3つ全ては、全長である。すなわち、オペレータに近い最近位位置から、中間カテーテル4の前方に露出しているときの最遠位端まで延びている。別個の例では、成形可能な要素208の近位ワイヤ端211のみが、オペレータに対して近位方向に最後まで延在する。ベースチューブ204、平坦な端部212、及び外側ジャケット210は、拡張器202の長さの一部のみを構成する。この一部は、拡張器202の全長の5%~25%のいずれかであり得る。これにより、操縦可能な先端が可能になるが、送達時間及び難しさも低減する。第1のカテーテル2及び中間カテーテル4は、血栓Cに向かって移行することができ、脈管構造がより小さく及び/又はより蛇行するにつれて、拡張器202は容易に導入されて、内頸動脈内を又は内頸動脈を通って、中大脳動脈106のM1セクションへと中間又はマイクロカテーテルを誘導して、血塊Cに到達することができる。
【0023】
アクセスデバイス300の別の例は、
図7に示されるようなロック及びレールカテーテル302である。この例では、レールカテーテル302の遠位端304は、血管壁に係合することができ、カテーテル302に張力が加えられると、遠位端を固定することができる係合要素306である。使用する際、
図13に示されるように、オペレータは、3つのカテーテル2、4、302の全てを送り込み、カテーテルはサイズに基づいて制限されるため、次に小さいサイズを前進させ続ける。例では、ベースカテーテル2は、眼動脈入口部108よりもかなり前に頭蓋底を通過して前進する可能性は低く、次いで、中間カテーテル4は、典型的には、眼動脈入口部108よりも前に、又はベースカテーテル2及び吸引カテーテル4が脈管構造に付着する位置に停止する(工程1302)。次いで、オペレータは、レールカテーテル302を解剖学的構造の困難な部分に対して遠位の点まで延出させ(工程1304)、係合要素306を血管壁に固定する(固定1306)。固定すると、オペレータは、レールカテーテル302に張力を加え(工程1308)、カテーテル及び脈管構造の両方を直線化させることができる。この直線化により、レールカテーテル302が引かれ、眼動脈入口部108から離れる。ここで、オペレータは、ベースカテーテル2及び吸引カテーテル4の一方又は両方をレールカテーテル304に沿って前進させることができる(工程1310)。レールカテーテル302は、直線化張力を受けるため、残りのカテーテル2、4は、眼動脈入口部108で動けなくなることを回避することができる。
図7に示されるように、破線のレールカテーテル302aは、張力を受けることなく経路をたどる。示されるように、破線の経路曲線は、眼動脈入口部108に近い。張力を受けると、実線のレールカテーテル302は、血管内の曲線間の線を直線化し、分岐で動けなくなることを回避する。
【0024】
図8~
図12は、係合要素306の異なる例を示す。
図8A、
図8B、及び
図8Cは、送達中にレールカテーテル302と同一平面になる可撓性アンカー308を示す。プルワイヤ310は、アンカー308の遠位端(
図8A)又は遠位(
図8B)に固定されている。カテーテル302が所定の位置に置かれると、オペレータは、プルワイヤ310に両力を加え、アンカー308の遠位端又はカテーテル302を引き込む、すなわち縮めることができ、これにより、アンカー308をカテーテル302の側面から延出させ、血管壁Wに係合させることができる。係合は、プルワイヤ310が張力下にある限り維持され得る。解放されると、アンカー308/カテーテル302は、その正常形状に戻り、血管壁Wを解放し、回収され得る。ここで、アンカー308は、レールカテーテル302自体から切断され得る。
図8Cは、
図8Bに示される線に沿ったカテーテル302の断面図を示し、血管壁Wに対するアンカー308、プルワイヤ310、及び係合要素306の配置を示す。
【0025】
図9A、
図9B、
図9C、及び
図9Dは、係合要素306の二重アンカー308a、308bの例を示す。
図9Aは、アンカー308a、308bがカテーテル302の外壁312とほぼ同一平面になる送達位置を示す。ここでは、
図8A及び
図8Bの例のように、アンカー308a、308b、又はカテーテル302のいずれかを縮めてアンカー308a、308bを延出させて、血管壁Wに係合することができる。
図9B、
図9C、及び
図9Dは、ハブ314に接続されたアンカー308a、308b及びプルワイヤ310を示す。ハブ314は、カテーテル302にかぶさるリング314a、314b(
図9B、
図9C及び
図9D)の形態をとることができる。プルワイヤ310に張力が加えられると、リング314aはカテーテル302を滑り降り、アンカー308a、308bを拡張させる。プルワイヤ310は、外壁312(
図9B及び
図9D)の外部にある自身の管腔316、又は外壁312の内側にあるが、ガイドワイヤ管腔206とは別個の管腔316を有し得る。
図9Cは、
図9Bに示される線に沿ったカテーテル302の断面図を示し、二重アンカー308a及び308b、外側カテーテル壁312の外部に自身の管腔316を有するプルワイヤ310、及び血管壁Wに対する係合要素306の配置を示す。
【0026】
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、
図10E、及び
図10Fは係合要素306を示し、第2のカテーテル、すなわちメッシュ320がレールカテーテル302にかぶさっている。第2のカテーテル/メッシュ320がレールカテーテル302に対して縮められると、第2のカテーテル、すなわちメッシュ320が拡張して、アンカー面322を形成する。
図10Aは、レールカテーテル302にかぶさっている、第2のバネ切断管320を示す。プルワイヤ310に張力が加えられると、バネ320を圧縮し、拡張してアンカー面322を形成する。
図10Bは、メッシュ320を使用する変形例であり、この図では、メッシュを近位端から圧縮することができるか、又はプルワイヤ310に張力が加えられてメッシュ320を圧縮することができる。この図では、メッシュアンカー面322は拡張可能であり、その周囲の大部分にわたって血管壁Wのかなりの部分に接触することができる。
図10Cは、圧縮時にアンカー面を形成する、通気式切断外側カテーテル320である。外側カテーテルの近位圧縮力又は遠位部分のいずれかが、張力プルワイヤ310から引かれる。
図10Dは、外側カテーテル320の遠位端全体が「つぶされて」、アンカー面322を形成し得ることを示す。
図10E及び
図10Fは、カテーテルの遠位端全体が湾曲させられるか、又はねじられて、アンカー面322を形成し得ることを示す。
【0027】
図11A及び
図11Bは、異なる固定アプローチを示す。この図では、ステント様アンカー326又はバルーン328のいずれかが、ベースカテーテル2及び吸引カテーテル4の前に前進し、アンカー点及びレールを形成するために使用される。これらの例は管腔を有さないことがあり、更に小さい送達形状を有し得る。これらのレールのよりスリムな形状により、中大脳動脈106のM1セクションまで更にアクセスできるようになり得る。
【0028】
図12は、アクセスデバイス400の異なる例を示す。この例では、カテーテル402は、多孔性遠位端404を考慮して設計され得る。カテーテル402に真空を適用することができ、多孔性遠位端404は、吸引力を血管壁Wに伝達し、吸引により遠位端に壁を把持させる。
【0029】
アクセスデバイス200、300、400は、内頸動脈、中大脳動脈のM1及びM2セグメント、椎骨動脈、並びに脳底動脈など、血管内の前方及び後方の神経脈管構造内で使用されるように設計され得る。アクセスデバイス200、300、400は、他のカテーテルシステムのアクセスデバイスと同様に、蛍光透視鏡に誘導されて血管内に送達され得る。
【0030】
本開示は、構成及び詳細において変化し得る、記載された実施例に限定されない。「遠位」及び「近位」という用語は、前述の説明を通して使用され、治療している医師に対する位置及び方向を指すことを意図する。したがって、「遠位」又は「遠位に」は、医師に対して離れた位置又は医師から離れる方向を指す。同様に、「近位」又は「近位に」は、医師に対して近い位置又は医師に向かう方向を指す。
【0031】
実施例の説明では、明確性を期すために専門用語を用いる。各用語は、当業者によって理解されるその最も広義の意味を有することが企図されており、類似の目的を実現するために同様に作用する全ての技術的な均等物を含むことが意図される。方法の1つ又は2つ以上の工程への言及は、追加の方法工程又は明示的に識別されたそれらの工程間に介在する方法工程の存在を排除しないことも理解されたい。方法の各ステップは、開示される技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に述べられる順序とは異なる順序で行うことができる。同様に、デバイス又はシステムにおける1つ以上の構成要素への言及は、追加の構成要素の存在又は明示的に識別されたそれらの構成要素間に介在する構成要素の存在を排除しないことも理解されたい。
【0032】
本明細書で考察されるとき、「患者」又は「被験者」は、人間又は任意の動物であることができる。動物は、限定されるものではないが、哺乳類、獣医学的動物、家畜動物、又はペット類の動物などを含む、種々のあらゆる該当する種類のものであり得ることを理解するべきである。一例として、動物は、ヒトに類似したある特定の性質を有するように特に選択された実験動物(例えば、ラット、イヌ、ブタ、サルなど)であり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は数値の範囲に対する「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0034】
「備える(comprising)」、「含む(containing)」、「含む(including)」、又は「有する(having)」とは、少なくとも指定された化合物、要素、粒子、又は方法ステップが、組成、物品、又は方法内に存在するが、他の化合物、物質、粒子、方法ステップが、指定されたものと同じ機能を有する場合でも、他のそのような化合物、物質、粒子、方法ステップの存在を除外しないことを意味する。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別途明白に指示しない限り、複数の指示対象も含むことにも留意されたい。範囲は、本明細書では、「約」又は「およそ」の1つの特定の値から及び/又は「約」又は「およそ」の別の特定の値として表すことができる。そのような範囲を表すとき、他の例示的な実施形態も、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値を含む。
【0036】
本明細書に含まれる記載は本開示の実施例であって本開示の範囲をいかなる意味でも限定しようと意図するものではない。本開示の特定の実施例を説明しているが、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、デバイス及び方法に対する様々な修正を行うことができる。例えば、本明細書に記載する実施例は、特定の構成要素に言及するが、本開示は、記載する機能性を達成するために様々な構成要素の組み合わせを利用し、記載する機能性を達成するために代替の材料を利用し、様々な実施例からの構成要素を組み合わせ、様々な実施例からの構成要素を既知の構成要素と組み合わせるなどの、他の実施例を含む。本開示は、本明細書に例解された構成要素部分を他の周知の市販製品での置き換えを企図する。本開示に関わる当業者には、これらの修正は多くの場合に明らかであり、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) 脳血管アクセスデバイスであって、
内腔を備えるベースチューブと、
前記ベースチューブの片側に配設された成形可能な要素と、
前記ベースチューブ及び前記成形可能な要素の一部を覆う外側ジャケットと、を備え、
前記成形可能な要素は、軸線から偏向し、前記成形可能な要素と共に前記ベースチューブ及び前記外側ジャケットを偏向させるように構成されている、脳血管アクセスデバイス。
(2) 前記成形可能な要素は、
前記ベースチューブの近くに位置し、前記外側ジャケットで覆われる平坦な端部と、
前記平坦な端部に接続された近位ワイヤであって、前記ワイヤの大部分は、前記外側ジャケットの外側に配設されている、近位ワイヤと、を備える、実施態様1に記載の脳血管アクセスデバイス。
(3) 脳血管アクセスの方法であって、
少なくともベースカテーテル及びレールカテーテルを前記脳血管内に配置する工程(工程400)と、
前記レールカテーテルを前記脳血管内の閉塞物まで延出させる工程(工程402)と、
係合要素を前記脳血管の壁に固定する工程(工程404)と、
前記レールカテーテルに張力を加え、少なくとも前記レールカテーテルを部分的に直線化する工程(工程406)と、
前記張力を加えたレールカテーテルに沿って少なくとも前記ベースカテーテルを配置する工程(工程408)と、を含む、方法。
【外国語明細書】