(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106846
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、および、サーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/345 20060101AFI20230726BHJP
B41J 2/335 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B41J2/345 C
B41J2/335 101H
B41J2/335 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007817
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JE02
2C065JE07
2C065JE12
2C065JE18
2C065JH03
2C065JH07
2C065JH09
2C065KC04
2C065KC08
2C065KC11
(57)【要約】
【課題】電極同士の接触を回避しつつ、大型化を抑制できるサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッドA10において、z方向の一方を向く主面11を有する基板1と、主面11の上に形成された電極層3と、主面11の上に形成された抵抗体層4とを備えた。電極層3は、第1層電極32と、z方向において第1層電極から離間し、かつ、z方向に視て第1層電極に重なる第2層電極34とを有し、第1層電極と第2層電極とが導通している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方を向く基板主面を有する基板と、
前記基板主面の上に形成された電極層と、
前記基板主面の上に形成された抵抗体層と、
を備え、
前記電極層は、第1層電極と、前記厚さ方向において前記第1層電極から離間し、かつ、前記厚さ方向に視て前記第1層電極に重なる第2層電極と、を有し、
前記第1層電極と前記第2層電極とが導通している、
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記第1層電極と前記第2層電極との間に介在する絶縁層をさらに備えている、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記電極層は、前記厚さ方向において前記第1層電極および前記第2層電極につながる導通部をさらに備えている、
請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1層電極は、第3層電極と、前記第3層電極と前記第2層電極との間に介在する第4層電極と、を備えている、
請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記第4層電極は、前記厚さ方向に視て前記第3層電極に内包されている、
請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第3層電極はAuを含む、
請求項4または5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第2層電極および前記第4層電極はAgを含む、
請求項4ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記導通部はAgを含む、
請求項3ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記電極層は、副走査方向に延び、かつ、主走査方向に互いに離間して配置された複数の共通電極帯状部と、前記複数の共通電極帯状部に導通する連結部と、を有する共通電極を含み、
前記複数の共通電極帯状部が前記第1層電極であり、
前記連結部が前記第2層電極である、
請求項1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記電極層は、前記副走査方向に延びる複数の個別電極を含み、
前記各個別電極は、隣り合ういずれか2個の前記共通電極帯状部の間に配置される、
請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
厚さ方向の一方を向く基板主面を有する基板を準備する準備工程と、
前記基板主面上に、電極層を形成する電極層形成工程と、
前記基板主面上に、抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、
を備え、
前記電極層形成工程は、
第1層電極を形成する第1層形成工程と、
前記第1層電極を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層を貫通して、前記第1層電極につながる貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔に充填された導通部と、前記絶縁層の前記基板主面と同じ側を向く面に配置された第2層電極と、を形成する第2層形成工程と、
を含んでいる、
サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記第1層形成工程は、
第3層電極を形成する第3層形成工程と、
前記第3層電極の前記基板主面と同じ側を向く面に第4層電極を形成する第4層形成工程と、
を含んでいる、
請求項11に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記貫通孔は、前記第4層電極も貫通して、前記第3層電極につながっている、
請求項12に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記貫通孔形成工程では、レーザ照射により前記貫通孔を形成する、
請求項11ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッド、および、サーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。当該サーマルプリントヘッドは、第1基板、導電層、抵抗体層(発熱部)、および保護層を備えている。導電層は、第1基板に形成され、共通電極、複数の個別電極、および複数の中継電極を有する。複数の中継電極は発熱部の副走査方向下流側に配置され、共通電極および複数の個別電極は発熱部の副走査方向上流側に配置されている。共通電極は複数の直行部と連結部とを備えている。複数の直行部は、それぞれ、2個の個別電極に挟まれて配置されている。連結部は、主走査方向に延びて、複数の直行部につながっている。連結部は、複数の個別電極に接触しないように、複数の個別電極とドライバICとの間に配置されている。連結部は電気抵抗を少なくするために、ある程度の幅で形成される。複数の個別電極とドライバICとの間に連結部を配置するために、第1基板の主走査方向の寸法を大きくする必要があるので、その分、サーマルプリントヘッドの主走査方向の寸法が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、電極同士の接触を回避しつつ、大型化を抑制できるサーマルプリントヘッドを提供すること、また、そのサーマルプリントヘッドの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、厚さ方向の一方を向く基板主面を有する基板と、前記基板主面の上に形成された電極層と、前記基板主面の上に形成された抵抗体層とを備え、前記電極層は、第1層電極と、前記厚さ方向において前記第1層電極から離間し、かつ、前記厚さ方向に視て前記第1層電極に重なる第2層電極とを有し、前記第1層電極と前記第2層電極とが導通している。
【0006】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、厚さ方向の一方を向く基板主面を有する基板を準備する準備工程と、前記基板主面上に、電極層を形成する電極層形成工程と、前記基板主面上に、抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程とを備え、前記電極層形成工程は、第1層電極を形成する第1層形成工程と、前記第1層電極を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層を貫通して、前記第1層電極につながる貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に充填された導通部と、前記絶縁層の前記基板主面と同じ側を向く面に配置された第2層電極と、を形成する第2層形成工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、電極同士の接触を回避しつつ、大型化を抑制できる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1のサーマルプリントヘッドを示す拡大平面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図14】
図14は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態の第1変形例に係るサーマルプリントヘッドを示す断面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態の第2変形例に係るサーマルプリントヘッドを示す断面図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態の第3変形例に係るサーマルプリントヘッドを示す断面図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態の第4変形例に係るサーマルプリントヘッドを示す断面図である。
【
図19】
図19は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図20】
図20は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図6は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA10は、基板1、グレーズ層2、電極層3、抵抗体層4、保護層5、絶縁層6、駆動IC71、封止樹脂72、ワイヤ73、コネクタ74、および放熱部材75を備えている。サーマルプリントヘッドA10は、プラテンローラ81との間に挟まれて搬送される印刷媒体82に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである(
図2参照)。このような印刷媒体82としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0013】
図1は、サーマルプリントヘッドA10を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA10を示す拡大平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、
図3のV-V線に沿う断面図である。
図6は、
図3のVI-VI線に沿う断面図である。なお、理解の便宜上、
図1および
図3においては、保護層5を省略している。また、
図3においては、絶縁層6に点描を付している。これらの図において、サーマルプリントヘッドA10の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、
図1および
図3の下方(
図2の左方)を印刷媒体82が送られてくる上流側とし、
図1および
図3の上方(
図2の右方)を印刷媒体82が排出される下流側とする。以下の図においても同様である。
【0014】
基板1は、たとえばAlN、Al
2O
3、ジルコニアなどのセラミックからなり、
図1に示すように、z方向視においてx方向に長く延びる長矩形状の板状である。基板1の厚さは、特に限定されないが、たとえば0.6mm以上1.0mm以下である。基板1は、
図2、
図4、および
図5に示すように、主面11および裏面12を有している。主面11および裏面12は、z方向において互いに反対側を向く面である。主面11は、
図2、
図4、および
図5の上方を向いている。裏面12は、
図2、
図4、および
図5の下方を向いている。基板1の主面11には、グレーズ層2、電極層3、抵抗体層4、絶縁層6、および保護層5が形成されている。また、主面11には、駆動IC71が搭載されている。
図2に示すように、基板1の裏面12には、たとえばAlなどの金属からなる放熱部材75が設けられている。また、
図1および
図2に示すように、基板1には、コネクタ74が設けられている。コネクタ74は、サーマルプリントヘッドA10をたとえばプリンタに組み込む際に、このプリンタ側のコネクタと接続される。なお、基板1および放熱部材75の材料および寸法は限定されない。また、サーマルプリントヘッドA10は、基板1とは別に放熱部材75上に配線基板を備え、配線基板に駆動IC71およびコネクタ74が配置されてもよい。
【0015】
グレーズ層2は、基板1の主面11上に形成されており、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。グレーズ層2は、ガラスペーストを厚膜印刷(スクリーン印刷)したのちに、これを焼成することにより形成されている。本実施形態においては、基板1の主面11の図に示すほぼすべてがグレーズ層2によって覆われている。本実施形態においては、
図4および
図5に示すように、グレーズ層2は、ヒーターグレーズ22、平坦層23、およびダイボンディンググレーズ24を有する。
【0016】
ヒーターグレーズ22は、x方向に直交する断面(以下では、「yz断面」とする)の形状がz方向に膨出した形状であり、x方向に長く延びるz方向視帯状である。ヒーターグレーズ22は、抵抗体層4の発熱部41を印刷媒体82などに押し当てるために設けられている。ダイボンディンググレーズ24は、ヒーターグレーズ22に対してy方向の上流側に離間した位置で、ヒーターグレーズ22と平行に設けられた帯状とされている。ダイボンディンググレーズ24は、電極層3の一部や駆動IC71を支持している。ヒーターグレーズ22およびダイボンディンググレーズ24のガラス材料の軟化点は、たとえば800~850℃である。平坦層23は、ヒーターグレーズ22に隣接して形成されており、上面が平坦な形状である。平坦層23は、基板1の主面11の凹凸をなくして電極層3を積層しやすくするために設けられている。平坦層23のガラス材料の軟化点は、たとえば680℃程度である。なお、グレーズ層2の構成は特に限定されず、様々な構成とすることができる。また、グレーズ層2は、基板1の一部のみを覆う構成であってもよい。
【0017】
電極層3は、複数の発熱部41に通電するための経路を構成するためのものであり、導電性材料によって形成されている。本実施形態においては、電極層3は、グレーズ層2上に形成されている。
図3に示すように、本実施形態においては、電極層3は、共通電極31、複数の個別電極35、および複数の中継電極38を有している。
【0018】
中継電極38は、2個の帯状部381および連結部382を備えている。2個の帯状部381は、y方向に延びる帯状であり、互いに離間して配置されている。各帯状部381は、隣接する発熱部41にそれぞれ接続している。連結部382は、2個の帯状部381の発熱部41とは反対側の端部にそれぞれ接続し、x方向に延びる帯状である。中継電極38は、開口をy方向上流側に向けたコの字形状をなし、x方向に等ピッチで、発熱部41のy方向下流側に複数配列されている。
【0019】
複数の個別電極35は、各発熱部41に個別に通電するためのものであり、共通電極31に対して逆極性となる部位である。個別電極35は、x方向に離間して複数配列されており、各々が帯状部36およびボンディング部37を有している。帯状部36は、y方向に延びる帯状であり、発熱部41のy方向上流側に位置する。帯状部36は、先端側(y方向下流側)で発熱部41に接続している。ボンディング部37は、帯状部36のy方向上流側端部に設けられている。各ボンディング部37は、それぞれワイヤ73を介して、駆動IC71のパッド71aのいずれかに接続している。
【0020】
共通電極31は、基板1上の図示しない配線およびコネクタ74を介して、駆動電圧を印加される。共通電極31は、それぞれ複数の帯状部32、分岐部33、および導通部341と、連結部34と、を備えている。複数の帯状部32と連結部34とは、z方向において互いに離間しており、かつ、z方向に視て互いに重なっている。各帯状部32は、帯状部本体321および被覆部322を備えている。帯状部本体321は、y方向に延びる帯状であり、発熱部41のy方向上流側に位置する。被覆部322は、
図6に示すように、帯状部本体321のうち、z方向に視て連結部34に重なる位置を覆っている。帯状部32が、本開示の第1層電極の一例である。複数の帯状部32は、x方向に等ピッチで配列されている。隣り合ういずれか2個の帯状部32の間に、個別電極35の帯状部36が配置されている。
【0021】
各分岐部33は、各帯状部32(帯状部本体321)の先端側(y方向下流側)に、それぞれ接続されている。各分岐部33は、y方向下流側が2個に分岐しており、分岐した2個の先端が隣接する発熱部41にそれぞれ接続している。
【0022】
連結部34は、x方向に延びる帯状である。連結部34は、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36に対して、z方向において離間しており、かつ、z方向に視て重なっている。連結部34は、複数の帯状部32に導通しているが、複数の個別電極35の帯状部36とは電気的に絶縁されている。連結部34が、本開示の第2層電極の一例である。連結部34と、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36との間には、絶縁層6が介在している。絶縁層6は、x方向に延びる帯状である。絶縁層6は、絶縁材料からなり、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。絶縁層6は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。なお、絶縁層6は、
図3に例示する範囲より広い範囲に配置されてもよい。
【0023】
複数の導通部341は、それぞれ、z方向において連結部34およびいずれかの帯状部32につながり、連結部34と帯状部32とを導通させる。連結部34は、後述するように、レーザ照射によって絶縁層6を貫通させた貫通孔6aに充填された構成材料を固化させることで形成される。本実施形態では、
図6に示すように、レーザ照射によって、帯状部32の被覆部322の上面に凹部322aが形成されており、連結部34は凹部322aの内部まで形成されている。被覆部322は、レーザによって帯状部本体321を貫通してしまうことを抑制するために、配置されている。
【0024】
電極層3のうち、それぞれ複数の個別電極35および中継電極38と、共通電極31のそれぞれ複数の帯状部本体321および分岐部33とは、たとえばAuに添加元素としてロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されたレジネートAuからなる。電極層3のこれらの部位は、レジネートAuのペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。電極層3のこれらの部位の厚さは、たとえば0.3μm以上1.5μm以下である。なお、電極層3のこれらの部位の構成材料、形成方法、および厚さは限定されない。
【0025】
電極層3のうち、共通電極31の連結部34と、それぞれ複数の被覆部322および導通部341とは、たとえばAgからなる。電極層3のこれらの部位は、Agペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。なお、電極層3のこれらの部位の構成材料および形成方法は限定されない。
【0026】
本実施形態においては、共通電極31の各帯状部32が、2個の個別電極35の帯状部36に挟まれて配置されている。1個の中継電極38の一方の帯状部381が接続する発熱部41は共通電極31に接続しており、他方の帯状部381が接続する発熱部41はいずれかの個別電極35に接続している。したがって、個別電極35が通電することで、これに接続する発熱部41と、当該発熱部41に中継電極38を介して接続する発熱部41とに電流が流れて発熱する。つまり、2個の発熱部41が、同時に発熱する。なお、電極層3の各部の形状および配置は上記に限定されず、様々な構成とすることができる。また、電極層3の各部の材料も限定されない。
【0027】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が大であるたとえば酸化ルテニウムなどからなり、基板1の主面11上のヒーターグレーズ22上に形成されている。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有している。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱するものである。複数の発熱部41は、x方向に沿って配置されており、x方向において互いに離間している。各発熱部41は、いずれかの中継電極38の帯状部381と、共通電極31のいずれかの分岐部33またはいずれかの個別電極35の帯状部36とにつながっている。各発熱部41の形状は特に限定されず、本実施形態においては、z方向視においてy方向を長手方向とする長矩形状である。抵抗体層4は、酸化ルテニウムなどのペーストを厚膜印刷した後に焼成することにより形成されている。なお、互いに離間した複数の発熱部41の形状となるように厚膜印刷してもよいし、x方向に延びる帯状となるように厚膜印刷して、焼成後にたとえばレーザ等で分断加工してもよい。なお、抵抗体層4の材料および各寸法は限定されない。
【0028】
保護層5は、電極層3および抵抗体層4を保護するためのものであり、抵抗体層4および電極層3のほぼ全体を覆っている。ただし、保護層5は、複数の個別電極35のボンディング部37を含む領域を露出させている。保護層5は、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。保護層5は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することによって形成される。保護層5の厚さは、たとえば0.5μm以上10μm以下である。なお、保護層5の材料、形成方法、および厚さは限定されない。なお、サーマルプリントヘッドA10は、保護層5の一部を覆う第2保護層をさらに備えてよい。
【0029】
駆動IC71は、複数の個別電極35を選択的に通電させることにより、抵抗体層4を部分的に発熱させる機能を果たす。
図4および
図5に示すように、複数の駆動IC71が、ダイボンディンググレーズ24上に配置されている。駆動IC71には、複数のパッド71aが設けられている。駆動IC71のパッド71aと複数の個別電極35とは、それぞれにボンディングされた複数のワイヤ73を介して接続されている。ワイヤ73は、たとえばAuからなる。
図1および
図2に示すように、駆動IC71およびワイヤ73は、封止樹脂72によって覆われている。封止樹脂72は、たとえば黒色の絶縁性軟質樹脂からなる。また、駆動IC71とコネクタ74とは、ワイヤ73および基板1上の配線を介して接続されている。
【0030】
次に、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の一例について、
図7~
図14を参照しつつ、以下に説明する。
図7は、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8~
図14はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
図8、
図9、および
図14は、
図5に示す断面に対応する。
図10~
図13は、
図6に示す断面に対応する。なお、
図8~
図14に示すx方向、y方向、およびz方向は、
図1~
図6と同じ方向を示している。
【0031】
図7に示すように、サーマルプリントヘッドA10の製造方法は、基板準備工程S10、グレーズ層形成工程S20、電極層形成工程S30、抵抗体層形成工程S40、保護層形成工程S50、駆動IC実装封止工程S60、および取り付け工程S70を備えている。電極層形成工程S30は、第1層形成工程S31、絶縁層形成工程S32、貫通孔形成工程S33、および第2層形成工程S34を含んでいる。
【0032】
まず、たとえばAlN、Al
2O
3、またはジルコニアなどからなる基板1を準備する(基板準備工程S10)。基板1は、z方向において互いに反対側を向く主面11および裏面12を有している。次いで、基板1の主面11上にガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することを複数回繰り返す。これにより、
図8に示すように、基板1の主面11上に、ヒーターグレーズ22、平坦層23、およびダイボンディンググレーズ24を有するグレーズ層2が形成される(グレーズ層形成工程S20)。なお、本実施形態では、先に、ヒーターグレーズ22およびダイボンディンググレーズ24を形成し、その後、平坦層23を形成する。グレーズ層2を形成する順番は上記の逆でもよい。
【0033】
次いで、電極層3を形成する(電極層形成工程S30)。
【0034】
まず、レジネートAuのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成する。そして、Agペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成する。これにより、
図9および
図10に示すように、グレーズ層2上に、第1層電極9が形成される(第1層形成工程S31)。第1層電極9は、電極層3のうちの個別電極35および中継電極38と、共通電極31の帯状部32および分岐部33とである。Agペーストを焼成したものが、帯状部32の被覆部322になる。
【0035】
次いで、第1層電極9の個別電極35の帯状部36および共通電極31の帯状部32の一部に重ねて、x方向に延びる帯状に、ガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成する。これにより、
図11に示すように、絶縁層6が形成される(絶縁層形成工程S32)。
【0036】
次いで、
図12に示すように、絶縁層6に貫通孔6aを形成する(貫通孔形成工程S33)。貫通孔6aは、z方向に視て、共通電極31の各帯状部32の被覆部322に重なるように形成される。本実施形態では、当該工程は、レーザ照射によって行われる。絶縁層6の所定の位置にレーザが照射されることで、絶縁層6を貫通した貫通孔6aが形成される。このとき、レーザ照射によって、帯状部32の被覆部322の上面に凹部322aが形成される。レーザの出力は、絶縁層6を完全に貫通し、かつ、帯状部32を貫通しないように調整される。本実施形態では、照射されるレーザの波長は、たとえばSHG(Second Harmonic Generation)波長またはTHG(Third Harmonic Generation)波長である。また、ナノ秒単位以下の短いパルス幅のパルスレーザが照射される。なお、照射されるレーザの波長およびパルス幅は限定されない。絶縁層6と帯状部本体321との間に被覆部322が介在することで、レーザの出力の調整が容易になり、また、出力の微細な変動によって帯状部本体321を貫通してしまうことを抑制できる。なお、貫通孔6aの形成方法は、レーザ照射に限定されず、他の方法で行ってもよい。
【0037】
次いで、z方向に視て、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36に対して重なり、これらを横切るような帯状にAgペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成する。これにより、
図13に示すように、絶縁層6上に、連結部34が形成される(第2層形成工程S34)。Agペーストは、絶縁層6の貫通孔6aおよび被覆部322の凹部322aにも充填される。当該充填された部分が、導通部341になる。本実施形態では、連結部34、導通部341、および被覆部322は同じ構成材料からなり、一体化している(
図13においては、境界を破線で示している)。連結部34は、導通部341を介して、帯状部32に導通する。
【0038】
以上により、共通電極31、複数の個別電極35、および複数の中継電極38を有する電極層3が形成される。
【0039】
次いで、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペーストを厚膜印刷し、これを焼成することにより、抵抗体層4を形成する(抵抗体層形成工程S40)。次いで、
図14に示すように、たとえばガラスペーストを厚膜印刷し、これを焼成することにより、保護層5を形成する(保護層形成工程S50)。次いで、駆動IC71の実装、ワイヤ73のボンディング、および、封止樹脂72の形成を行う(駆動IC実装封止工程S60)。そして、基板1へのコネクタ74の取り付け、および、基板1の放熱部材75への取り付けなどを行う(取り付け工程S70)。以上により、
図1~
図6に示したサーマルプリントヘッドA10が製造される。上記した製造方法は一例であり、これに限定されない。
【0040】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作用について説明する。
【0041】
本実施形態によると、共通電極31の連結部34は、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36に対して、z方向において離間しており、かつ、z方向に視て重なっている。連結部34と、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36との間には、絶縁層6が介在している。連結部34と各帯状部32とは、それぞれ導通部341を介して導通している。一方、連結部34と複数の個別電極35の帯状部36とは、間に介在する絶縁層6によって、電気的に絶縁されている。このように、連結部34は、複数の個別電極35の帯状部36との接触を回避しつつ、複数の帯状部32とは導通するように配置されている。また、連結部34は、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36に対してz方向に視て重なるように配置されているので、基板1の主面11上に配置されるためのスペースを必要としない。したがって、基板1は、連結部34が主面11上に直接配置される場合と比較して、小型化が可能である。これにより、サーマルプリントヘッドA10の大型化を抑制できる。
【0042】
また、本実施形態によると、導通部341は、レーザ照射によって絶縁層6に貫通孔6aを形成し、厚膜印刷したAgペーストを焼成することで、連結部34と一体化して形成される。これにより、導通部341を介して帯状部32に導通する連結部34を、容易に形成できる。
【0043】
また、本実施形態によると、各帯状部32は、帯状部本体321および被覆部322を備えている。被覆部322は、帯状部本体321のうち、z方向に視て連結部34に重なる位置を覆っている。絶縁層6と帯状部本体321との間に被覆部322が介在することで、レーザの出力の調整が容易になり、また、出力の微細な変動によって帯状部本体321を貫通してしまうことを抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態においては、サーマルプリントヘッドA10がいわゆる厚膜タイプである場合について説明したが、これに限られない。サーマルプリントヘッドA10は、いわゆる薄膜タイプであってもよい。
【0045】
図15~
図18は、第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドA10の変形例を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0046】
<第1変形例>
図15は、第1実施形態の第1変形例に係るサーマルプリントヘッドA11を示す断面図であり、
図6に対応する図である。サーマルプリントヘッドA11は、導通部341の形状が異なっている。本変形例では、導通部341が帯状部本体321に接している。貫通孔形成工程S33においてレーザ照射で貫通孔6aを形成する際に、帯状部32の被覆部322も貫通して被覆部322に貫通孔が形成された場合に、導通部341は、本変形例のような形状になる。
【0047】
<第2変形例>
図16は、第1実施形態の第2変形例に係るサーマルプリントヘッドA12を示す断面図であり、
図6に対応する図である。サーマルプリントヘッドA12は、導通部341の形状が異なっている。本変形例では、導通部341が被覆部322も貫通して、帯状部本体321の内部まで突入している。貫通孔形成工程S33においてレーザ照射で貫通孔6aを形成する際に、帯状部32の被覆部322も貫通し、帯状部本体321の上面に凹部が形成された場合に、導通部341は、本変形例のような形状になる。
【0048】
第1変形例および第2変形例から理解されるように、導通部341は、絶縁層6を完全に貫通し、かつ、帯状部本体321を貫通しなければ、その形状は限定されない。つまり、貫通孔形成工程S33におけるレーザの出力は、絶縁層6を完全に貫通でき、かつ、帯状部本体321を貫通しない範囲での変動が許諾される。
【0049】
<第3変形例>
図17は、第1実施形態の第3変形例に係るサーマルプリントヘッドA13を示す断面図であり、
図6に対応する図である。サーマルプリントヘッドA13は、被覆部322の形状が異なっている。本変形例では、被覆部322は、帯状部本体321を覆っておらず、帯状部本体321の上面だけに形成されている。被覆部322は、z方向に視て、帯状部本体321に内包されている。第3変形例から理解されるように、被覆部322は、帯状部本体321を覆っている必要はなく、少なくとも、帯状部本体321の上面のレーザが照射されうる領域を覆っていればよい。
【0050】
<第4変形例>
図18は、第1実施形態の第4変形例に係るサーマルプリントヘッドA14を示す断面図であり、
図6に対応する図である。サーマルプリントヘッドA14は、被覆部322を備えていない。本変形例では、帯状部本体321と連結部34との間に被覆部322が介在せず、導通部341が帯状部本体321の内部まで突入している。上述したように、サーマルプリントヘッドA10~A13において、被覆部322は、レーザによって帯状部本体321を貫通してしまうことを抑制するために配置されていた。被覆部322がなくても、帯状部本体321を貫通しないように、レーザの出力の調整を精密にできるのであれば、帯状部32は、被覆部322を備える必要がない。また、レーザ照射以外の方法で貫通孔6aを形成する場合も、被覆部322を省略できる場合がある。また、帯状部本体321の厚さ(z方向の寸法)が十分大きい場合にも、被覆部322を省略できる。
【0051】
図19および
図20は、本開示の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0052】
<第2実施形態>
図19は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドA20を説明するための図である。
図19は、サーマルプリントヘッドA20を示す平面図であり、
図1に対応する図である。
図19においては、理解の便宜上、保護層5を省略している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA20は、連結部34の形状が、上述した実施形態と異なっている。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。なお、上記の第1実施形態および各変形例の各部が任意に組み合わせられてもよい。
【0053】
本実施形態に係る連結部34は、複数の駆動IC71にそれぞれ対応する各電極層3にまたがっている。連結部34は、各駆動IC71にそれぞれ対応するすべての帯状部32に導通している。
【0054】
本実施形態においても、連結部34は、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36に対して、z方向において離間しており、かつ、z方向に視て重なっている。連結部34と各帯状部32とはそれぞれ導通部341を介して導通し、連結部34と複数の個別電極35の帯状部36とは間に介在する絶縁層6によって電気的に絶縁されている。このように、連結部34は、複数の個別電極35の帯状部36との接触を回避しつつ、複数の帯状部32とは導通するように配置されている。また、連結部34は基板1の主面11上に配置されるためのスペースを必要としないので、基板1の小型化が可能であり、サーマルプリントヘッドA20の大型化を抑制できる。また、サーマルプリントヘッドA20は、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成により、サーマルプリントヘッドA10と同等の効果を奏する。さらに、サーマルプリントヘッドA20は、各駆動IC71の共通電極31の電位をそろえることができる。
【0055】
<第3実施形態>
図20は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドA30を説明するための図である。
図20は、サーマルプリントヘッドA30を示す平面図であり、
図1に対応する図である。
図20においては、理解の便宜上、保護層5を省略している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA30は、連結部342をさらに備えている点で、上述した実施形態と異なっている。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。なお、上記の第1~2実施形態および各変形例の各部が任意に組み合わせられてもよい。
【0056】
サーマルプリントヘッドA30は、連結部342をさらに備えている。連結部342は、連結部34と同様の構成であり、隣り合う駆動IC71にそれぞれ対応する一部の帯状部32に導通している。
【0057】
本実施形態においても、連結部34は、複数の帯状部32および複数の個別電極35の帯状部36に対して、z方向において離間しており、かつ、z方向に視て重なっている。連結部34と各帯状部32とはそれぞれ導通部341を介して導通し、連結部34と複数の個別電極35の帯状部36とは間に介在する絶縁層6によって電気的に絶縁されている。このように、連結部34は、複数の個別電極35の帯状部36との接触を回避しつつ、複数の帯状部32とは導通するように配置されている。また、連結部34は基板1の主面11上に配置されるためのスペースを必要としないので、基板1の小型化が可能であり、サーマルプリントヘッドA30の大型化を抑制できる。また、サーマルプリントヘッドA30は、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成により、サーマルプリントヘッドA10と同等の効果を奏する。さらに、サーマルプリントヘッドA30は、連結部342が隣り合う駆動IC71にそれぞれ対応する一部の帯状部32に導通しているので、隣り合う駆動IC71の共通電極31の電位をそろえることができる。本実施形態は、基板1の主面11上の、z方向に視て連結部342に重なる位置に他の配線(たとえば温度センサにつながる配線など)が配置されている場合に、特に有効である。
【0058】
なお、本実施形態では、サーマルプリントヘッドA30の電極層が第1実施形態にかかる電極層3と同様である場合について説明したが、これに限られない。サーマルプリントヘッドA30の電極層は、従来のサーマルプリントヘッドと同様に、連結部が複数の個別電極とドライバICとの間で主面11上に直接配置されてもよい。この場合でも、連結部342は、基板1の主面11上の、z方向に視て連結部342に重なる位置に配置された他の配線との接触を回避しつつ、基板1の主面11上に配置されるためのスペースを必要としない。したがって、基板1の小型化が可能であり、サーマルプリントヘッドA30の大型化を抑制できる。
【0059】
上記第1~3実施形態においては、共通電極31の連結部34を、複数の個別電極35の帯状部36との接触から回避させる場合について説明したが、これに限られない。電極層3の他の電極においても、別の電極との接触を回避するために、本開示の技術を適用してもよい。本開示の技術を適用することにより、基板1の小型化が可能であり、また、電極層3のレイアウトの自由度が増大する。
【0060】
本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成、および、本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の各工程の具体的な処理は、種々に設計変更自在である。
【0061】
〔付記1〕
厚さ方向(z方向)の一方を向く基板主面(11)を有する基板(1)と、
前記基板主面の上に形成された電極層(3)と、
前記基板主面の上に形成された抵抗体層(4)と、
を備え、
前記電極層は、第1層電極(32)と、前記厚さ方向において前記第1層電極から離間し、かつ、前記厚さ方向に視て前記第1層電極に重なる第2層電極(34)と、を有し、
前記第1層電極と前記第2層電極とが導通している、
サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記第1層電極と前記第2層電極との間に介在する絶縁層(6)をさらに備えている、
付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記電極層は、前記厚さ方向において前記第1層電極および前記第2層電極につながる導通部(341)をさらに備えている、
付記1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記第1層電極は、第3層電極(321)と、前記第3層電極と前記第2層電極との間に介在する第4層電極(322)と、を備えている、
付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5、第1実施形態第3変形例、
図17〕
前記第4層電極は、前記厚さ方向に視て前記第3層電極に内包されている、
付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記第3層電極はAuを含む、
付記4または5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記第2層電極および前記第4層電極はAgを含む、
付記4ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記導通部はAgを含む、
付記3ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記電極層は、副走査方向に延び、かつ、主走査方向に互いに離間して配置された複数の共通電極帯状部(32)と、前記複数の共通電極帯状部に導通する連結部(34)と、を有する共通電極(31)を含み、
前記複数の共通電極帯状部が前記第1層電極であり、
前記連結部が前記第2層電極である、
付記1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記電極層は、前記副走査方向に延びる複数の個別電極(35)を含み、
前記各個別電極は、隣り合ういずれか2個の前記共通電極帯状部の間に配置される、
付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11、
図7〕
厚さ方向の一方を向く基板主面を有する基板を準備する準備工程(S10)と、
前記基板主面上に、電極層を形成する電極層形成工程(S30)と、
前記基板主面上に、抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程(S40)と、
を備え、
前記電極層形成工程は、
第1層電極を形成する第1層形成工程(S31)と、
前記第1層電極を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程(S32)と、
前記絶縁層を貫通して、前記第1層電極につながる貫通孔(6a)を形成する貫通孔形成工程(S33)と、
前記貫通孔に充填された導通部と、前記絶縁層の前記基板主面と同じ側を向く面に配置された第2層電極と、を形成する第2層形成工程(S34)と、
を含んでいる、
サーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記12〕
前記第1層形成工程は、
第3層電極を形成する第3層形成工程と、
前記第3層電極の前記基板主面と同じ側を向く面に第4層電極を形成する第4層形成工程と、
を含んでいる、
付記11に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記13、第1実施形態第1,2変形例、
図15、
図16〕
前記貫通孔は、前記第4層電極も貫通して、前記第3層電極につながっている、
付記12に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記14〕
前記貫通孔形成工程では、レーザ照射により前記貫通孔を形成する、
付記11ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【符号の説明】
【0062】
A10,A11,A12,A13,A14,A20,A30:サーマルプリントヘッド
1 :基板
11 :主面
12 :裏面
2 :グレーズ層
22 :ヒーターグレーズ
23 :平坦層
24 :ダイボンディンググレーズ
3 :電極層
31 :共通電極
32 :帯状部
321 :帯状部本体
322 :被覆部
322a :凹部
33 :分岐部
34 :連結部
341 :導通部
35 :個別電極
36 :帯状部
37 :ボンディング部
38 :中継電極
381 :帯状部
382 :連結部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :保護層
6 :絶縁層
6a :貫通孔
71 :駆動IC
71a :パッド
72 :封止樹脂
73 :ワイヤ
74 :コネクタ
75 :放熱部材
81 :プラテンローラ
82 :印刷媒体
9 :第1層電極