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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106849
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】青果物包装袋用フィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230726BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20230726BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20230726BHJP
   A23B 7/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D65/02 E
B65D85/50 120
A23B7/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007820
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】所 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】衣川 綾
【テーマコード(参考)】
3E035
3E086
4B169
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA08
3E035BC02
3E035BD01
3E035BD10
3E035CA04
3E035DA02
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AC22
3E086AD01
3E086BA02
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB01
3E086BB22
3E086BB51
3E086BB55
3E086CA17
3E086CA18
3E086DA08
4B169AB04
4B169HA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】青果物の包装袋に適した材料を提供して、青果物鮮度保持袋用フィルム自体による青果物の鮮度低下を抑制し、さらなる青果物の鮮度保持を実現する。
【解決手段】単層または複層のプラスチックフィルムを基材としたヒートシール性を有する包装袋用フィルムであって、内面として配される面同士の40℃環境下における動摩擦係数μ’が0.15以上0.3以下である青果物鮮度保持袋用フィルムを用いる。また内面として配される面に、動摩擦係数を低減する薬剤が表出している量が、5.0×10-3g/m以上、0.5g/m以下である青果物鮮度保持袋用フィルムを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層または複層のプラスチックフィルムを基材としたヒートシール性を有する包装袋用フィルムであって、内面として配される面同士の40℃環境下における動摩擦係数μ’が0.15以上0.3以下である青果物鮮度保持袋用フィルム。
【請求項2】
前記の内面として配される面に、動摩擦係数を低減する薬剤が表出している量が、5.0×10-3g/m以上、0.5g/m以下である請求項1に記載の青果物鮮度保持袋用フィルム。
【請求項3】
ヘーズ値が、1%以上10%以下であり、かつ、
MD幅15mmの前記包装袋用フィルムを用い、前記内側として配される面同士が接触するように重ねて、150℃で1秒間、圧力2kgf/cmでヒートシールし、JIS Z 0238に準拠した条件で測定したシール強度が、2.0N/15mm以上である、
請求項1又は2に記載の青果物鮮度保持袋用フィルム。
【請求項4】
厚さ15μm以上60μm以下の合成樹脂フィルムで構成された請求項1~3のいずれかに記載された青果物鮮度保持袋用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、青果物を包装する鮮度保持袋用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
青果物を保管、輸送するための包装体として合成樹脂製のフィルム袋が一般に用いられている。このフィルム袋に様々な特性を与えて袋内の酸素濃度や二酸化炭素濃度を調整したりすることで、包装する青果物の呼吸などを制御するMA(Modified Atomosphere)包装により、青果物の鮮度を保持することが広く行われている。また、それに用いるフィルムの製袋適性や包装作業性の向上を目指した試みも行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、青果物の呼吸を制御して鮮度を保持するためにフィルムに孔を設けた青果物向け包装袋について、袋の外表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが80~550μmであるフィルムを用いるとフィルムのカールを抑制し、鮮度保持包装袋を製造しやすくなるという報告がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6536731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルムは直接に青果物と接触することもあるため、カールを抑制するなど製造時の取り回しを優先してフィルム表面の状態を決定すると、かえって青果物に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
また、温度の高い夏場には、出荷作業や積み替えの際に外気温に曝されることで、青果物の呼吸量が増えるためMA包装をしていても鮮度劣化が進みやすい。また、ほうれん草などの葉菜類では包装袋の内面と葉が密着しやすく、MA包装の効果が不十分になるおそれもあった。このため、さらに高い鮮度保持効果を発揮する鮮度保持袋用フィルムが求められていた。
【0007】
そこでこの発明は、青果物の包装袋に適した材料を提供して、青果物鮮度保持袋用フィルム自体による青果物の鮮度低下を抑制し、さらなる青果物の鮮度保持を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
単層または複層のプラスチックフィルムを基材としたヒートシール性を有する包装袋用フィルムであって、内面として配される面同士の40℃環境下における動摩擦係数μ’が0.15以上0.3以下である青果物鮮度保持袋用フィルムにより、上記の課題を解決したのである。
【0009】
夏場に想定される温度において、内面として配される面の動摩擦係数μ’が上記の範囲であると、包装時に内面と青果物との摩擦抵抗が軽減され、摩擦熱や擦過傷の発生による品質劣化が起こりにくくなる。また、葉菜類では袋との密着も起こりにくくなり、MA包装のために設けた微細孔などが塞がれにくくなり、期待通りの鮮度保持効果を発揮しやすくなる。
【0010】
この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムは、
前記の内面として配される面に、動摩擦係数を低減する薬剤が表出している量が、5.0×10-3g/m以上、0.5g/m以下である形態を採用することができる。ここで表出するとは表面に現れている量をいう。
【0011】
また、この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムは、
ヘーズ値が、1%以上10%以下であり、かつ、
MD幅15mmの前記包装袋用フィルムを用い、前記内側として配される面同士が接触するように重ねて、150℃で1秒間、圧力2kgf/cmでヒートシールし、JIS Z 0238に準拠した条件で測定したシール強度が、2.0N/15mm以上である、形態を採用することができる。
【0012】
さらに、この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムは、厚さ15μm以上60μm以下の合成樹脂フィルムで構成された形態を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明により、包装される青果物が袋との接触によって鮮度の劣化を起こすことを抑止することができる。また、青果物が袋の内面と密着しにくくなるので、密着により青果物が呼吸不全を起こすことを抑止し、かつ密着することでMA包装の効果が低減される事態も抑止できる。さらに、フィルムの搬送や巻き取りなどの製造適性に影響を及ぼすことなく取り扱うことができるので、上記のような動摩擦係数μ’になるように機能付与することも容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明について実施形態を挙げながら詳細に説明する。この発明は、青果物の包装に用いる青果物鮮度保持袋用フィルムである。
【0015】
この発明にかかる青果物鮮度保持袋用フィルムは、単層または複層のプラスチックフィルムを基材とする。プラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好適に使用でき、強度や製造適性の点からポリプロピレンが特に好適に使用できる。種類は限定されないものの、製袋に必要となるためヒートシール性を有することが必要である。単層でもよいし複層からなるものでもよい。複層からなる場合、各層間を接着剤や熱圧着で貼り合わせたものでもよいし、あらかじめ共押出等で積層して形成されたものでもよい。
【0016】
この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムは、40℃環境下において内面として配される面同士の動摩擦係数μ’が0.15以上0.3以下であることが必要である。0.3を超えると、包装袋として接触する青果物に対して生じる摩擦が大きすぎ、摩擦による擦過傷を生じたり、摩擦熱により青果物の鮮度を劣化させたりすることがある。特に表面の柔らかな果菜類、葉菜類でこのような鮮度劣化が起こりやすい。0.3以下にすることで、それらの事態の発生を抑止できる。また、動摩擦係数μ’が小さいと、ほうれん草などの葉菜類の葉が包装袋と密着しにくくなり、フィルムから離れた状態を維持しやすくなる。これにより、フィルム表面の微細孔が塞がれにくくなり、包装袋のガス交換性能は低下しにくく、青果物自体の呼吸も阻害されにくいという点でも青果物の鮮度を保持しやすくなる。一方、動摩擦係数μ’が0.15未満になると摩擦が小さくなりすぎ、フィルムの製造時にロールが形状を維持できずに斜めにずれる、いわゆる「タケノコ状」になってしまい、製造適性に問題を生じてしまう。
【0017】
なお、上記の内面として配される面とは、製袋時に内側に配され、青果物包装に用いる実用時には直接に青果物と接する面である。青果物鮮度保持袋用フィルムを単独で見たときには、少なくともいずれかの面が上記の動摩擦係数μ’の条件を満たすことが必要となる。
【0018】
上記の動摩擦係数μ’は、40℃環境下での線状接触における動摩擦係数である。JIS K7125に準じた動摩擦係数の測定方法は、23℃50%RH環境での面接触での測定であるが、この発明にかかる青果物鮮度保持袋用フィルムは、青果物の鮮度が特に劣化しやすい夏場において、鮮度保持効果を十分に発揮することを目的としたものである。また、青果物鮮度保持袋用フィルムとそれが包装した青果物との接触部は面接触ではなく点接触や線接触ともいうべき接触の仕方になる傾向にある。
【0019】
このため、この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムの動摩擦係数μ’は、夏場を想定した40℃環境下で、長さ10mm接触面積を2mmという線状態に近い接触(線状接触)とし、そこに100gの荷重を掛けたときの動摩擦係数として規定する。
【0020】
上記の動摩擦係数μ’を実現するために、この発明にかかる青果物鮮度保持袋用フィルムは、動摩擦係数を低減する薬剤が表出していると好ましい。プラスチックフィルムのみで摩擦を軽減する手法として、包装袋と内容品との接触面積を狭小化させるエンボス加工を行う手法が知られているが、エンボス加工を施したフィルムはフィルム表面にはっきりとした凹凸が形成されて透明性が損なわれ、青果物の状態の視認性が低下してしまうおそれが高くなる。これに対して、表面に微量の前記薬剤が表出しているだけであれば、透明性の低下を抑えつつ、動摩擦係数μ’を低減することができる。なお表出とは、表面に前記薬剤が少なくとも一部を覆うように現れて付着している状態をいう。表出させる手法としては特に限定されるものではなく、例えば、前記薬剤を噴霧、塗布などさせて表面に付着、塗工したり、プラスチックフィルム自体が含有していた前記薬剤を染み出させたりする手法などが挙げられる。
【0021】
前記薬剤としては、乳化剤や浸透剤、湿潤剤、濡れ剤、分散剤などとして用いられる薬剤が好適となりやすい。もちろん、前記プラスチックフィルムに対して動摩擦係数μ’を低下させる作用を持つものであることが必要である。具体例としては、乳化剤や浸透・湿潤剤として使用されるグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業(株)製「SYグリスター PO-3S」など)、ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル(株)製「リョートーシュガーエステル S-970」など)、濡れ剤や分散剤として使用される非イオン性アセチレングリコール(日新化学工業(株)製「サーフィノール465」など)、消泡剤や潤滑剤として使用されるシリコーンエマルジョン(サンノプコ(株)製「ダッポーH-205N」など)、分散剤として使用されるポリカルボン酸アンモニウム塩(サンノプコ(株)製「ノプコサントRFA」など)などが挙げられる。一方、増粘剤などとして用いられる薬剤や無機顔料系の分散剤は、表面の動摩擦係数μ’を上げるため好適ではない。好適ではない薬剤としては、例えば、レベリング剤や増粘剤として使用される変性ポリアクリル酸ナトリウム(サンノプコ(株)製「SNシックナー618」など)、ウレタン変性ポリエーテル(サンノプコ(株)製「SNシックナー621N」など)、無機顔料分散剤として使用される第4級カチオンポリマー(サンノプコ(株)製「ディスパーサント4215」など)が挙げられる。
【0022】
前記薬剤が前記内面として配される面に表出する量は、5.0×10-3g/m以上、0.5g/m以下であると好ましい。前記薬剤の種類にもよるが、5.0×10-3g/m未満では動摩擦係数μ’の低減効果が不十分になりやすい。一方で、0.5g/mを超えると、ヘーズ値が高くなりすぎて包装する青果物の視認性に問題を生じてしまったり、ヒートシールのシール強度を低下させてしまう影響が無視できなくなってしまう。
【0023】
この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムは、ヘーズ値が1%以上10%以下であると好ましい。前記薬剤が表出する量が増加すると分布が不均一となり、ヘーズ値は増加しやすくなる。10%を超えると包装した青果物の状態が見分けにくく、見栄えが悪くなるため好ましくない。一方、ヘーズ値は低い方が好ましいが、前記薬剤が表出するフィルムでヘーズ値が1%未満となることは実現しにくい。
【0024】
また、この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムは、MD幅15mmの前記包装袋用フィルムを用い、前記内側として配される面同士が接触するように重ねて、150℃で1秒間、圧力2kgf/cmでヒートシールし、JIS Z 0238に準拠した条件で測定したシール強度が、2.0N/15mm以上であると好ましい。ここでMD幅とはフィルムの製造時におけるMD(MachineDirection)すなわち流れ方向の長さをいう。製袋する際にこのシール強度を下回ると包装袋としての強度が不十分になりやすい。なお、シール強度が高い分には特段の問題はなく、好ましい上限は特にない。
【0025】
この発明に係る青果物鮮度保持袋用フィルムの厚さは15μm以上であると好ましい。15μm未満では薄すぎてフィルム製造時に破け易くなるなどの強度に問題が生じる可能性が無視できない。一方、厚さは60μm以下であると好ましい。60μmを超えると分厚すぎて青果物包装袋としての取り扱いがしにくくなるおそれがある。
【実施例0026】
次に、この発明を実施した実施例を挙げて、この発明をさらに具体的に示す。
まず、本実施例で測定する測定方法について説明する。
【0027】
<フィルム同士の動摩擦係数μ’>
協和界面科学(株)製の自動摩擦摩耗解析装置「TSf-502」を用いて、夏場の輸送環境を想定した40℃の環境下で、線接触用治具(協和界面科学(株)製:カタログNo.9209 線接触子)を使用し、フィルムの内面として配される面同士を長さ10mmで線状接触(接触面積2mm)させ、100gの荷重を掛けたときの動摩擦係数μ’を測定した。
【0028】
<振動試験>
JIS Z 0232「包装貨物-振動試験方法」に準じて振動試験を実施し、各青果物の外観変化を確認した。具体的な試験条件はランダム振動試験にて、振動区分=レベル3、加速度実効値:5.8m/s、振動数範囲:3~200Hz、振動時間15分とした。その結果を目視にて次のように分類した。
・○:良好、△:傷み少し、×:傷みあり
【0029】
段ボール箱の内寸はいずれも320mm×220mm×190mmのものを用いた。それぞれの青果物を用いた梱包仕様は以下の通りとした。
・ほうれん草での試験:各々のサンプルで製袋した395mm×210mmの袋にほうれん草200gを入れ、4袋×2列で段ボール箱に梱包
・ブロッコリーでの試験:各々のサンプルで製袋した320mm×240mmの袋(Φ0.4×0.3mmの貫通孔6個を有する仕様)にブロッコリー1株を入れ、3袋×2列で段ボール箱に梱包
・ピーマンでの試験:各々のサンプルで製袋した150mm×200mmの袋にピーマン150gを入れ、4袋×2列で段ボール箱に梱包
【0030】
<鮮度保持効果試験>
上記の振動試験後に、20~40℃の変動環境下で3日間保管した後、各青果物の品質(外観変化、開封時の異臭の有無)を目視にて次の様に評価した。
・○:良好、△:変色・傷み・異臭わずか、×:変色・傷み・異臭あり
【0031】
<ヘーズ値測定>
ヘーズメーターを用いて、JIS K 7136「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に準じて測定した。
【0032】
<シール強度測定>
MD幅15mmのフィルムを、製袋時に内面として配される面同士が接触するように重ねて、150℃で1秒間、圧力2kg/cmでシールした試験片を作製し、JIS Z 0238に準拠してシール強度を測定した。試験結果が2.0N/15mm以上となるものを「〇」、2.0N/15mm未満となるものを「×」と評価した。
【0033】
<サンプルの作製方法と結果>
(実施例1~3)
OPPフィルム(厚さ:20μm、フタムラ化学(株)製「FOR」)を基材として、塗工前の質量を測定した。塗工する薬剤としてグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業(株)製「SYグリスターPO-3S」)を用い、水で所定の濃度に調整した後、フィルムの一方の面にバーコーターで塗工して乾燥させ、サンプルとなるフィルムを得た。この塗工面が包装袋の内面となるが、塗工面に表出している薬剤の量は、塗工直後のフィルムの質量と塗工前のフィルムの質量差と塗工液濃度から算出した。
【0034】
(実施例4)
実施例1において、塗工する薬剤をショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル(株)製「リョートーシュガーエステルS-970」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。
【0035】
(実施例5)
実施例1において、塗工する薬剤を非イオン性アセチレングリコール(日新化学工業(株)製「サーフィノール465」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。
【0036】
(実施例6)
実施例1において、塗工する薬剤をシリコーンエマルジョン(サンノプコ(株)製「ダッポー H-205N」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。
【0037】
(実施例7)
実施例1において、塗工する薬剤をポリカルボン酸アンモニウム塩(サンノプコ(株)製「ノプコサントRFA」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。
【0038】
(実施例8)
基材として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製「FL203D」)にグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業(株)製「SYグリスターPO-3S」)を2重量%混合し、Tダイフィルム成形機を用いて溶融混合物を製膜し、厚さ20μmのOPPフィルムを得た。樹脂中にグリセリン脂肪酸エステルが薬剤として含まれ、表面に染み出すことで表出している。フィルムを10cm角に裁断し、10枚のフィルムの質量を測定した後、そのフィルムの一方の表面(内面として配される面)の表出薬剤をイソプロピルアルコールを使用して拭き取った後の質量を測定し、質量差より表出薬剤量を算出した。
【0039】
(実施例9)
実施例1において、基材とするフィルムを、OPPとLLDPEとを積層した厚さ50μmのフィルム(OPP:三井化学東セロ(株)製「U-1」、LLDPE:三井化学東セロ(株)製「MCS」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。
【0040】
(実施例・小括)
いずれの実施例でも、どの青果物に対しても外観の傷みは観測されず、鮮度保持効果が発揮されることが確認された。また、いずれもヘーズ値は許容範囲に収まっており青果物の中身を確認する際に支障はなかった。さらに、いずれもフィルムのシール強度は袋として用いるのに適した値であった。
【0041】
【表1】
【0042】
(比較例1)
実施例1~7で基材としたOPP20μmフィルム(フタムラ化学(株)製「FOR」)を、薬剤を塗工せずそのまま用いた。動摩擦係数μ’は0.45であり、いずれの青果物でも傷みが見られ、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。
【0043】
(比較例2)
汎用の防曇OPP20μmフィルム(フタムラ化学(株)製「AF642」)を、薬剤を塗工せずそのまま用いた。動摩擦係数μ’は0.37であり、いずれの青果物でも傷みが見られ、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。
【0044】
(比較例3,4)
実施例1において、薬剤の塗工量を変更し、内面として配される面に表出している薬剤の量が表2に記載の値と算出されるようにした以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。なお、比較例3は実施例1よりも塗工量を少なくして動摩擦係数μ’の低減を抑えたものであり、比較例4は実施例1よりも塗工量を多くしたものである。比較例3は動摩擦係数μ’が十分に低減できなかったことで、いずれの青果物でも傷みが見られ、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。比較例4は、動摩擦係数μ’が低減されたことで鮮度保持効果を十分に発揮できたものの、薬剤過多のためシール強度が不十分で包装袋として問題を生じてしまった。
【0045】
(比較例5)
実施例6において、薬剤の塗工量を増加し、内面として配される面に表出している薬剤の量が表2に記載の値と算出されるようにした以外は、実施例6と同様の手順でフィルムを得た。動摩擦係数μ’が低減されたことで鮮度保持効果を十分に発揮できたものの、薬剤表出量が多すぎてヘーズ値が著しく悪化して内容物が確認しにくくなり、シール強度も不十分になってしまった。
【0046】
(比較例6)
実施例7において、薬剤の塗工量を増加し、内面として配される面に表出している薬剤の量が表2に記載の値と算出されるようにした以外は、実施例7と同様の手順でフィルムを得た。動摩擦係数μ’が低減されたことで鮮度保持効果を十分に発揮できたものの、薬剤表出量が多すぎてヘーズ値が悪化して内容物が確認しにくくなり、シール強度も不十分になってしまった。
【0047】
(比較例7)
実施例1において、塗工する薬剤を変性ポリアクリル酸ナトリウム(サンノプコ(株)製「SNシックナー618」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。比較例1と比べて動摩擦係数μ’が低減する効果がほとんどなく、比較例1に比べてもいずれの青果物でも外観の傷みが増えてしまい、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。
【0048】
(比較例8)
実施例1において、塗工する薬剤をウレタン変性ポリエーテル(サンノプコ(株)製「SNシックナー621N」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。比較例1に比べて動摩擦係数μ’が高くなった影響でいずれの青果物でも外観の傷みが見られ、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。
【0049】
(比較例9)
実施例1において、塗工する薬剤を第4級カチオンポリマー(サンノプコ(株)製「ディスパーサント4215」)に変更し、それ以外は実施例1と同様の手順でフィルムを得た。比較例1に比べて動摩擦係数μ’が高くなった影響でいずれの青果物でも外観の傷みがはっきりと見られ、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。
【0050】
(比較例10)
厚さ20μmのOPPフィルム(フタムラ化学(株)製「FOR」)を基材として、エンボス加工にて2mm角、高低差100μmの格子状の起伏を形成した。薬剤は塗工しなかった。鮮度保持効果は発揮できたが、エンボス加工によりヘーズ値が悪化し、内容物が確認しにくくなってしまった。
【0051】
(比較例11)
実施例9で基材とした、OPPとLLDPEとを積層した厚さ50μmのフィルムを、薬剤を塗工せずにそのまま用いた。いずれの青果物でも傷みが見られ、鮮度保持効果も十分に発揮されなかった。
【0052】
【表2】
【0053】
<巻き取り試験>
OPPフィルム(厚さ:20μm、フタムラ化学(株)製「FOR」)を基材として、上記の実施例5と比較例4とで使用した薬剤を用い、(株)ヒラノテクシード製マルチコーター「TM-MC」により、実施例5と比較例4と同様の薬剤表出量となるように薬剤をコーティングし、かつコーティングしたものを巻き取って、巻きずれの発生の有無を検証した。なお条件は、巻出張力30N/300mm、巻取張力35N/300mm、速度40m/min、原反幅300mm、加工長1000mとした。その結果、動摩擦係数μ’が0.15である実施例5に対応するフィルムでは巻きずれが生じなかったが、動摩擦係数μ’が0.12である比較例4に対応するフィルムでは巻きずれが生じてしまった。この結果から、比較例4のフィルムではロール状にして扱う製造装置では巻きがずれて「タケノコ状」となってしまい製造上の問題が生じると考えられるが、実施例5のフィルムではロール状にして扱う製造装置でも巻きずれが生じることなく好適に製造できると考えられる。