(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106868
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電動推進器
(51)【国際特許分類】
B64D 27/24 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007844
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 淳二
(72)【発明者】
【氏名】北村 剛
(72)【発明者】
【氏名】今井 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰高
(72)【発明者】
【氏名】米本 聖
(72)【発明者】
【氏名】左海 将之
(57)【要約】
【課題】着氷が抑制されることでより安定的に運用することが可能な電動推進器を提供する。
【解決手段】電動推進器は、軸線方向に延びるシャフト流路が形成された中空シャフトと、内部に空間が形成されたボス部と、内部にボス部の空間と連通するブレード流路が形成された複数のブレードと、電動機と、シャフト流路に連通する収容空間が内部に形成されたケーシングと、を備え、ケーシングにおけるブレードと電動機との間の部分には、ケーシングの外部と収容空間とを連通する吸込口が形成され、ブレードの径方向外側の端部を含む領域には、ブレード流路と外部とを連通する吹出口が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びるとともに、内部に前記軸線方向に延びるシャフト流路が形成された中空シャフトと、
該中空シャフトの前記軸線方向一方側に取り付けられ、内部に空間が形成されるとともに前記軸線を中心とする円盤状のボス部と、
該ボス部の外周面から径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列され、内部に前記ボス部の前記空間と連通するブレード流路が形成された複数のブレードと、
前記中空シャフトの外周面に設けられたロータコア、及び該ロータコアを外周側から覆うステータコアを有する電動機と、
前記電動機を収容するとともに前記シャフト流路に連通する収容空間が内部に形成されたケーシングと、
を備え、
前記ケーシングにおける前記ブレードと前記電動機との間の部分には、前記ケーシングの外部と前記収容空間とを連通する吸込口が形成され、
前記ブレードの径方向外側の端部を含む領域には、前記ブレード流路と外部とを連通する吹出口が形成されている電動推進器。
【請求項2】
前記吸込口は、前記ブレードに対向するように前記軸線方向一方側に向かって開口している請求項1に記載の電動推進器。
【請求項3】
前記ケーシングに支持され、前記シャフト流路の内部に挿入された支持体と、
該支持体に設けられたヒータ部材と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の電動推進器。
【請求項4】
前記支持体は、前記軸線を中心とする円筒状をなし、前記ヒータ部材は前記支持体の内周面に取り付けられている請求項3に記載の電動推進器。
【請求項5】
前記支持体は、前記軸線を中心とする円筒状をなし、前記ヒータ部材は前記支持体の外周面に取り付けられている請求項3又は4に記載の電動推進器。
【請求項6】
前記支持体は、前記軸線を中心とする棒状をなし、前記ヒータ部材は前記支持体の外周面に取り付けられている請求項3に記載の電動推進器。
【請求項7】
前記支持体、及び前記ヒータ部材は、前記中空シャフトの前記軸線方向他方側の端部から、前記ボス部の前記空間まで延びている請求項3から6のいずれか一項に記載の電動推進器。
【請求項8】
前記ボス部の内部における前記軸線方向他方側を向く面に固定され、該ボス部とともに一体に回転する遠心ファンをさらに備える請求項1から7のいずれか一項に記載の電動推進器。
【請求項9】
前記シャフト流路の内面に設けられた軸流ファンをさらに備える請求項1から8のいずれか一項に記載の電動推進器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動推進器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動推進器を用いた航空機の実用化に向けて研究開発が進められている。電動推進器の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。この電動推進器は、モータと、モータによって回転駆動される複数のブレードと、これらブレードを外周側から覆うダクトと、を主に備えている。ブレードが回転することによって推進力が発生し、航空機の飛行が可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動推進器を航空機に用いる場合、高高度で運用されることから、各部へ着氷が生じることがある。特に、ブレードの表面に着氷した場合、必要とされる推進力を発生させることが難しくなってしまう。上記特許文献1に係る装置では、このようなブレードへの着氷に対する対策が講じられていない。このため、電動推進器の安定的な運用に影響を及ぼす虞がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、着氷が抑制されることでより安定的に運用することが可能な電動推進器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る電動推進器は、軸線に沿って延びるとともに、内部に前記軸線方向に延びるシャフト流路が形成された中空シャフトと、該中空シャフトの前記軸線方向一方側に取り付けられ、内部に空間が形成されるとともに前記軸線を中心とする円盤状のボス部と、該ボス部の外周面から径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列され、内部に前記ボス部の前記空間と連通するブレード流路が形成された複数のブレードと、前記中空シャフトの外周面に設けられたロータコア、及び該ロータコアを外周側から覆うステータコアを有する電動機と、前記電動機を収容するとともに前記シャフト流路に連通する収容空間が内部に形成されたケーシングと、を備え、前記ケーシングにおける前記ブレードと前記電動機との間の部分には、前記ケーシングの外部と前記収容空間とを連通する吸込口が形成され、前記ブレードの径方向外側の端部を含む領域には、前記ブレード流路と外部とを連通する吹出口が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、着氷が抑制されることでより安定的に運用することが可能な電動推進器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る電動推進器の構成を示す断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における断面図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係る電動推進器の構成を示す断面図である。
【
図5】本開示の第二実施形態に係る電動推進器の第一変形例を示す断面図である。
【
図7】本開示の第二実施形態に係る電動推進器の第二変形例を示す断面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線における断面図である。
【
図9】本開示の第三実施形態に係る電動推進器の構成を示す断面図である。
【
図10】本開示の第四実施形態に係る電動推進器の構成を示す断面図である。
【
図11】本開示の第五実施形態に係る電動推進器の構成を示す断面図である。
【
図12】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、吹出口の第一変形例を示す図である。
【
図13】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、吹出口の第二変形例を示す図である。
【
図14】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、吹出口の第三変形例を示す図である。
【
図15】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、吹出口の第四変形例を示す図である。
【
図16】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、ブレード流路の第一変形例を示す図である。
【
図17】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、ブレード流路の第二変形例を示す図である。
【
図18】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、ブレード流路の第三変形例を示す図である。
【
図19】本開示の各実施形態に共通する変形例であって、ブレード流路の第四変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(電動推進器の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る電動推進器1について、
図1から
図3を参照して説明する。電動推進器1は、例えば電動航空機の機体や翼に搭載されることで、推力源や動力源として用いられる。
【0010】
図1に示すように、電動推進器1は、中空シャフト10と、ボス部20と、スピナー30と、複数のブレード40と、電動機50と、ケーシング60と、フェアリング70と、軸受装置80と、を備えている。
【0011】
(中空シャフトの構成)
中空シャフト10は、軸線Oに沿って延びる円筒状をなし、その内部の空間はシャフト流路11を形成している。シャフト流路11は、軸線O方向に延びている。中空シャフト10は、後述する軸受装置80によって軸線O回りに回転可能に支持されている。
【0012】
(ボス部の構成)
ボス部20は、中空シャフト10の軸線O方向一方側に取り付けられている。ボス部20は、中空シャフト10と一体となって回転する。ボス部20は、軸線Oを中心とする円盤状をなしている。ボス部20の内部には空間(ボス部流路21)が形成されている。このボス部流路21は、上記のシャフト流路11と連通している。ボス部20の軸線O方向一方側にはスピナー30が取り付けられている。スピナー30は軸線O方向一方側に向かって延びる尖頭状をなしている。
【0013】
(ブレードの構成)
ボス部20の外周面には、複数のブレード40が取り付けられている。ブレード40は、軸線Oに対する径方向に延びるとともに、周方向に等間隔をあけて複数配列されている。ブレード40は、径方向から見て翼型の断面形状を有する。中空シャフト10、及びボス部20が回転すると、ブレード40によって軸線O方向一方側から他方側に向かって空気の流れが発生する。この空気の流れが電動推進器1の推進力として種々に利用される。
【0014】
ブレード40の内部には、ブレード流路41が形成されている。ブレード流路41は、ブレード40内部のスパーや桁によって適宜形成されている。ブレード流路41は、ブレード40の径方向内側の端部から、径方向外側の端部に設けられた吹出口42まで延びている。より具体的には、ブレード流路41は、ブレード40の内側で、軸線O方向一方側の端縁(前縁)に沿って延びている。なお、ブレード流路41の径方向内側の端部は、ボス部流路21と連通している。また、吹出口42は径方向外側に向かって開口している。吹出口42の開口形状は、円形や矩形、三角形等のうち、設計や仕様に応じて適宜選択された形状が用いられる。
【0015】
(電動機の構成)
電動機50は、ロータコア51と、ステータコア54と、を有している。ロータコア51は、中空シャフト10の外周面に取り付けられている。ロータコア51は、複数の永久磁石52と、これらを内周側から支持するスパイダー53と、を有する。ステータコア54は、ロータコア51を外周側から覆っている。ステータコア54は、複数のコイル55を有する。
【0016】
ステータコア54は、ケーシング60の内周面に取り付けられている。ステータコア54のコイル55に電流が供給されると、永久磁石52とコイル55との間で生じる電磁力によってロータコア51に軸線O回りの回転エネルギーが与えられる。これにより、中空シャフト10が軸線O回りに回転駆動される。
【0017】
(ケーシングの構成)
ケーシング60は、上述の電動機50を収容している。ケーシング60は、軸線O方向一方側に位置する前部ケーシング61と、他方側に位置する後部ケーシング62と、支柱65と、隔壁67と、前部内筒66と、ストラット68と、後部内筒69と、を有する。
【0018】
前部ケーシング61、及び後部ケーシング62はともに軸線Oを中心とする円筒状をなしている。前部ケーシング61、及び後部ケーシング62の内側の空間は、収容空間64とされている。
【0019】
前部ケーシング61の外径寸法は、後部ケーシング62の内径寸法よりも小さく設定されている。これにより、前部ケーシング61の外周面と、後部ケーシング62の内周面との間には、円環状の隙間が形成されている。この隙間は、外部の空気を収容空間64内に取り込むための吸込口63とされている。吸込口63は、軸線O方向において電動機50とブレード40との間に位置している。さらに、吸込口63は軸線O方向他方側からブレード40に対向している。つまり、ブレード40が圧送する空気の一部は、吸込口63に直接流入するようになっている。
【0020】
図2に示すように、吸込口63には、複数の支柱65が配置されている。支柱65は、前部ケーシング61の外周面と後部ケーシング62の内周面とにかけて径方向に延びている。支柱65は、周方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0021】
図1に示すように、前部ケーシング61の内周側には、円環状をなす隔壁67が設けられている。隔壁67の内周側の端縁には、前部内筒66が取り付けられている。前部内筒66は、軸線Oを中心とする円筒状をなしている。前部内筒66の内周側には、軸受装置80が取り付けられている。一例として、この軸受装置80は、軸線O方向に間隔をあけて配置された複数(2つ)のジャーナル軸受を含む。なお、軸受装置80としてスラスト軸受が含まれていてもよい。ジャーナル軸受は径方向の荷重を支持する。スラスト軸受は軸線O方向の荷重を支持する。
【0022】
さらに、後部ケーシング62の軸線O方向他方側の端部付近(つまり、電動機50よりも軸線O方向他方側の位置)には、複数のストラット68と、後部内筒69と、が設けられている。
図3に示すように、ストラット68は径方向に延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数配列されている。ストラット68の内周側の端部には後部内筒69が取り付けられている。後部内筒69は軸線Oを中心とする円筒状をなしている。
【0023】
図1に示すように、後部内筒69の内周面には、軸受装置80が取り付けられている。この軸受装置80は、一例として1つのジャーナル軸受である。上述した前部内筒66に取り付けられたジャーナル軸受と、後部内筒69に取り付けられたジャーナル軸受によって中空シャフト10が回転可能に支持されている。なお、後部内筒69には、中空シャフト10の回転数を計測するためのロータリエンコーダが取り付けられていてもよい。
【0024】
(フェアリングの構成)
ケーシング60の軸線O方向他方側の開口は、フェアリング70によって覆われている。フェアリング70は、軸線Oを中心とする円錐状をなしている。つまり、軸線O方向一方側から他方側に向かうに従って、フェアリング70の径寸法は次第に減少している。フェアリング70は、電動推進器1が空気の流れに曝されている際に、後流側に生じる淀みや渦を低減するために設けられている。
【0025】
(作用効果)
続いて、
図1を参照して、電動推進器1の動作について説明する。電動推進器1を運転するに当たっては、まず電動機50に電力を供給する。電動機50に電力が供給されると、ロータコア51とステータコア54との間で生じる電磁力によって、ロータコア51側に回転力が与えられる。これにより、ロータコア51と一体となって中空シャフト10が軸線O回りに回転する。
【0026】
中空シャフト10が回転することで、当該中空シャフト10に取り付けられたボス部20、及び複数のブレード40が回転する。ブレード40が回転することによって、軸線O方向一方側から他方側に向かう空気の流れが発生する。この空気の流れによる力が、電動推進器1の推進力として用いられる。
【0027】
ここで、電動推進器1を航空機に用いる場合、高高度で運用されることから、各部へ着氷が生じることがある。特に、ブレード40の表面に着氷した場合、付着した氷によって当該ブレード40の外形が変化してしまう。その結果、ブレード40に沿う空気の流れが阻害されて、必要とされる推進力を発生させることが難しくなってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態に係る電動推進器1は上述のような構成を採っている。ブレード40の回転に伴って、電動推進器1が軸線O方向一方側に進行すると、吸込口63からケーシング60内の収容空間64に向かって空気が取り込まれる。また、ブレード40によって圧送された空気の成分も動圧に伴って吸込口63に取り込まれる。
【0029】
さらに、ブレード40の高速回転に伴って、ブレード40の端部に設けられた吹出口42の周囲では静圧が低くなる。つまり、吹出口42の圧力が低くなることで、圧力が相対的に高い吸込口63から順に、収容空間64、フェアリング70の内部、シャフト流路11、ボス部流路21、ブレード流路41を経て吹出口42に向かう空気の流れが形成される(
図1中の矢印)。
【0030】
吹出口42から収容空間64内に進入した空気は、まず電動機50に接触する。電動機50は、回転駆動に伴う内部抵抗によって発熱している。電動機50に接触した空気と電動機50との間で熱交換が行われ、空気は加熱される。一方で、電動機50は空気によって冷却される。加熱された空気は、上述したストラット68同士の間の隙間を通じてフェアリング70内に流れ込む。
【0031】
フェアリング70に流れ込んだ空気は、次いでシャフト流路11を経てボス部流路21に流入する。ボス部流路21に流入した空気は、各ブレード40のブレード流路41に分配される。ブレード流路41は上述のように、ブレード40の内側で前縁に沿って延びている。これにより、上記のように電動機50から受熱して高温となって空気が前縁を内側から加熱することになる。その結果、前縁に付着していた氷の温度が上昇して溶融する。また、着氷が未然に防止される。
【0032】
このように、ブレード40の回転に伴って、吸込口63、収容空間64、シャフト流路11を通じて、ブレード流路41に空気が流れ込む。収容空間64で電動機50から受熱するため、ブレード流路41には高温の空気が流れ込む。これにより、ブレード40の防氷と、電動機50の冷却とを両立させることができる。
【0033】
さらに、上記構成によれば、吸込口63が軸線O方向他方側からブレード40に対向していることから、当該ブレード40によって圧送された空気の動圧によって吸込口63に空気が押し込まれる。これにより、吹出口42周囲の負圧のみに依存して空気の流れを形成する場合に比べて、より多くの空気を吸込口63から取り込むことができる。その結果、電動機50により多くの空気が触れることで冷却効果をさらに高めることができる。同時に、より多くの加熱された空気がブレード流路41に流れ込むことから、当該ブレード40の防氷効果をさらに高めることが可能となる。
【0034】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、前部ケーシング61の外径寸法が後部ケーシング62の内径寸法よりも小さく設定されることで軸線O方向一方側を向く吸込口63が形成されている例について説明した。しかしながら、吸込口63の態様は上記に限定されない。前部ケーシング61と後部ケーシング62とを同一の径で形成し、軸線O方向に隙間をあけることで、径方向に開口する吸込口63を形成することも可能である。
【0035】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態に係る電動推進器101は、ヒータ装置90をさらに備えている。
【0036】
ヒータ装置90は、支持体91と、ヒータ部材92と、を有している。支持体91は、後部内筒69に固定されている。支持体91は、中空シャフト10の内部に軸線O方向他方側から挿入されている。支持体91は軸線Oを中心とする円筒状をなしている。支持体91の外径寸法は、中空シャフト10の内径寸法よりも小さく設定されている。また、支持体91は、軸線O方向において電動機50の他方側の端部に対応する位置まで延びている。
【0037】
支持体91の内周面にはヒータ部材92が取り付けられている。ヒータ部材92は、外部からの電力供給により発熱する。ヒータ部材92として具体的にはセラミックヒータや電熱線等が好適に用いられる。
【0038】
(作用効果)
上記構成によれば、シャフト流路11を流通する空気を、ヒータ部材92によって加熱することができる。これにより、当該シャフト流路11からボス部流路21を経てブレード流路41に向かう空気の温度がさらに上昇する。その結果、さらに高いブレード40の防氷効果、除氷効果を得ることが可能となる。
【0039】
さらに、上記構成によれば、筒状をなす支持体91の内周面にヒータ部材92が取り付けられていることから、ヒータ部材92の表面積を大きく確保することができる。言い換えると、中空シャフト10の内周面に接触しない限りにおいて、支持体91の外径寸法を最大限に大きく確保することができる。したがって、ヒータ部材92の表面積を大きくすることができる。これにより、当該ヒータ部材92による空気の加熱をさらに促進することができる。その結果、ブレード流路41に供給される空気の温度がさらに高くなり、防氷効果、及び除氷効果をさらに向上させることが可能となる。
【0040】
また、上記構成によれば、ヒータ部材92が、軸線O方向において電動機50と重複していないことから、当該ヒータ部材92による電動機50への熱の移動を最小限に抑えることもできる。これにより、電動機50をさらに効率的に駆動することができる。その結果、電動推進器1全体としての効率をさらに向上させることが可能となる。
【0041】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0042】
例えば、上記第二実施形態では、筒状の支持体91の内周面にヒータ部材92が取り付けられている例について説明した。しかしながら、
図5と
図6に示すように、支持体91の外周面にヒータ部材92を取り付けることも可能である。この場合、
図6に示すように、後部内筒69から径方向内側に向かって延びる複数の支持部材165の内周側の端部に支持体91が取り付けられる。支持部材165は周方向に間隔をあけて配列されている。支持部材165同士の間の隙間を通じて、ヒータ部材92に空気が接触する。この構成によっても、ヒータ部材92の表面積を大きく確保することができる。
【0043】
さらに、支持体91は円筒状に限定されず、
図7と
図8に示すように軸線O方向に延びる棒状であってもよい。ヒータ部材92はこの支持体91の外周面に取り付けられている。この構成によれば、支持体91が棒状をなし、ヒータ部材92がその外周面に取り付けられていることから、シャフト流路11の流路断面積に対して、これら支持体91、及びヒータ部材92が占める断面積を小さく抑えることができる。これにより、シャフト流路11中の空気の圧力損失を低減することができる。その結果、ブレード流路41に向かう空気の流れが円滑化され、防氷効果、除氷効果をさらに高めることが可能となる。
【0044】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図9を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態に係る電動推進器201では、ヒータ装置290の構成が上記第二実施形態とは異なっている。ヒータ装置290は、支持体291と、ヒータ部材292と、を有する。支持体291は軸線Oを中心とする円筒状をなし、ヒータ部材292は支持体291の内周面に取り付けられている。さらに、支持体291、及びヒータ部材292は、中空シャフト10の軸線O方向他方側の端部から、ボス部20の内部(ボス部流路21)まで延びている。言い換えると、シャフト流路11の延在長さの全域にわたってヒータ装置290が設けられている。
【0045】
(作用効果)
上記構成によれば、ヒータ装置290がボス部20の内部の空間まで延びていることから、シャフト流路11中の空気がより長い時間にわたってヒータ装置290の熱に曝されることになる。っこれにより、当該空気をより高い温度まで加熱することが可能となる。その結果、ブレード流路41に向かう空気の温度をより高い状態で維持できるため、ブレード40におけるさらに高い防氷効果と除氷効果を得ることができる。
【0046】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、ヒータ装置290の外周面と、中空シャフト10の内周面との間に他の軸受を設けることも可能である。これにより、長尺のヒータ装置290を中空シャフト10の内部でより安定的に支持することが可能となる。
【0047】
<第四実施形態>
次いで、本開示の第四実施形態について、
図10を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態に係る電動推進器301は、第二実施形態で説明した構成に加えて、ボス部20の内部に設けられた遠心ファン322をさらに備えている。
【0048】
遠心ファン322は、ボス部20の内部における軸線O方向他方側を向く面に固定されている。つまり、遠心ファン322はボス部20とともに一体に回転する。詳しくは図示しないが、遠心ファン322は、軸線Oを中心とする円盤状のディスクと、このディスクの表面上で径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された翼とを有する。
【0049】
上記構成によれば、遠心ファン322が回転することで、シャフト流路11を流れてきた空気の流れを径方向外側に向かう流れに変化させつつ、その圧力を上げることができる。これにより、ブレード流路41に向かう空気の流速、流量が高まる。その結果、ブレード40における防氷効果と除氷効果をさらに向上させることができる。
【0050】
以上、本開示の第四実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第四実施形態では、ヒータ装置90と遠心ファン322が併設されている例について説明した。しかしながら、ヒータ装置90を備えずに遠心ファン322を設けることも可能である。また、ヒータ装置90を備える場合には、当該ヒータ装置90は、第二実施形態の各変形例や第三実施形態で説明した構成を採ることが可能である。
【0051】
<第五実施形態>
続いて、本開示の第五実施形態について、
図11を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態に係る電動推進器401は、第二実施形態で説明した構成に加えて、中空シャフト10の内周面に設けられた軸流ファン422をさらに備えている。
【0052】
軸流ファン422は、中空シャフト10の内周面から径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の翼を有している。中空シャフト10が回転すると、軸流ファン422によって軸線O方向他方側から一方側に向かって空気が圧送されるように構成されている。
【0053】
上記構成によれば、軸流ファン422が回転することで、シャフト流路11を流れる空気の圧力を上げることができる。これにより、当該シャフト流路11を経てブレード流路41に向かう空気の流速、流量を高めることができる。その結果、ブレード40における防氷効果と除氷効果をさらに向上させることができる。
【0054】
以上、本開示の第五実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第五実施形態では、ヒータ装置90と軸流ファン422が併設されている例について説明した。しかしながら、ヒータ装置90を備えずに軸流ファン422を設けることも可能である。また、ヒータ装置90を備える場合には、当該ヒータ装置90は、第二実施形態の各変形例や第三実施形態で説明した構成を採ることが可能である。
【0055】
<各実施形態に共通する変形例>
上記の各実施形態に共通する変形例として、以下のような各構成を採ることが可能である。例えば、上記各実施形態では、吹出口42が径方向に開口している例について説明した。しかしながら、変形例として
図12に示すように、ブレード40の端部から後縁側に向かって空気を吹きだすように吹出口42の開口方向が設定されていてもよい。この場合、
図12中の実線矢印で示すようにブレード40のコード方向に空気を吹きだしてもよいし、破線矢印で示すようにコード方向に対して斜めに空気を吹きだしてもよい。
【0056】
また、
図13に示すように、吹出口142はブレード40の翼面状に形成されていてもよい。さらに、
図14に示すように、吹出口242がブレード40の後縁側の端縁に形成されていてもよい。
【0057】
加えて、
図15の実線矢印で示すように、吹出口342はブレード40の翼端に沿って空気を吹き出すように開口していてもよいし、破線矢印で示すように、翼端からわずかに離れるように空気を吹き出すように開口していてもよい。
【0058】
さらに、ブレード流路41は、
図16から
図19に示す各構成を採ることが可能である。
図16の例では、ブレード40内部で2つの軸線O方向に間隔をあけて配列された一対の桁43のうち、前縁側の桁43に開口部44が形成されている。この開口部44を通じて、前縁側のブレード流路41に空気が流れ込むように構成されている。なお、
図17に示すように、複数の開口部44を形成してもよい。
【0059】
また、
図18に示すように、一対の桁43に加えて、翼端付近にスパー45を設けることも可能である。この場合、前縁側の桁43に形成された2つの開口部44のうち、内周側の開口部44を通じてブレード流路41に空気が流れ込む。翼端に達した空気は外周側の開口部44を通じて後縁側に吹き出される。なお、
図19に示すように、前縁側の桁43におけるスパー45よりも内周側に複数の開口部44を形成することも可能である。
【0060】
<付記>
各実施形態に記載の電動推進器1は、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)第1の態様に係る電動推進器1は、軸線Oに沿って延びるとともに、内部に前記軸線O方向に延びるシャフト流路11が形成された中空シャフト10と、該中空シャフト10の前記軸線O方向一方側に取り付けられ、内部に空間が形成されるとともに前記軸線Oを中心とする円盤状のボス部20と、該ボス部20の外周面から径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列され、内部に前記ボス部20の前記空間と連通するブレード流路41が形成された複数のブレード40と、前記中空シャフト10の外周面に設けられたロータコア51、及び該ロータコア51を外周側から覆うステータコア54を有する電動機50と、前記電動機50を収容するとともに前記シャフト流路11に連通する収容空間64が内部に形成されたケーシング60と、を備え、前記ケーシング60における前記ブレード40と前記電動機50との間の部分には、前記ケーシング60の外部と前記収容空間64とを連通する吸込口63が形成され、前記ブレード40の径方向外側の端部を含む領域には、前記ブレード流路41と外部とを連通する吹出口42が形成されている。
【0062】
上記構成によれば、ブレード40の回転に伴って、吸込口63、収容空間64、シャフト流路11を通じて、ブレード流路41に空気が流れ込む。収容空間64で電動機50から受熱するため、ブレード流路41には高温の空気が流れ込む。これにより、ブレード40の防氷と、電動機50の冷却とを実現することができる。
【0063】
(2)第2の態様に係る電動推進器1は、(1)の電動推進器1であって、前記吸込口63は、前記ブレード40に対向するように前記軸線O方向一方側に向かって開口している。
【0064】
上記構成によれば、吸込口63がブレード40に対向していることから、当該ブレード40によって圧送された空気の動圧によって吸込口63に空気が押し込まれる。これにより、より多くの空気を吸込口63から取り込むことができる。
【0065】
(3)第3の態様に係る電動推進器1は、(1)又は(2)の電動推進器1であって、前記ケーシング60に支持され、前記シャフト流路11の内部に挿入された支持体91と、該支持体91に設けられたヒータ部材92と、をさらに備える。
【0066】
上記構成によれば、シャフト流路11を流通する空気を、ヒータ部材92によって加熱することができる。これにより、さらに高い防氷効果を得ることが可能となる。
【0067】
(4)第4の態様に係る電動推進器1は、(3)の電動推進器1であって、前記支持体91は、前記軸線Oを中心とする円筒状をなし、前記ヒータ部材92は前記支持体91の内周面に取り付けられている。
【0068】
上記構成によれば、筒状をなす支持体91の内周面にヒータ部材92が取り付けられていることから、ヒータ部材92の表面積を大きく確保することができる。
【0069】
(5)第5の態様に係る電動推進器1は、(3)又は(4)の電動推進器1であって、前記支持体91は、前記軸線Oを中心とする円筒状をなし、前記ヒータ部材92は前記支持体91の外周面に取り付けられている。
【0070】
上記構成によれば、筒状をなす支持体91の外周面にヒータ部材92が取り付けられていることから、ヒータ部材92の表面積をさらに大きく確保することができる。
【0071】
(6)第6の態様に係る電動推進器1は、(3)の電動推進器1であって、前記支持体91は、前記軸線Oを中心とする棒状をなし、前記ヒータ部材92は前記支持体91の外周面に取り付けられている。
【0072】
上記構成によれば、支持体91が棒状をなし、ヒータ部材92がその外周面に取り付けられていることから、シャフト流路11中におけるこれら支持体91、及びヒータ部材92の断面積を小さく抑えることができる。これにより、シャフト流路11中の空気の圧力損失を低減することができる。
【0073】
(7)第7の態様に係る電動推進器1は、(3)から(6)のいずれか一態様に係る電動推進器1であって、前記支持体91、及び前記ヒータ部材92は、前記中空シャフト10の前記軸線O方向他方側の端部から、前記ボス部20の前記空間まで延びている。
【0074】
上記構成によれば、ヒータ部材92がボス部20の内部の空間まで延びていることから、シャフト流路11中の空気をより高い温度まで加熱することが可能となる。これにより、さらに高い防氷効果を得ることができる。
【0075】
(8)第8の態様に係る電動推進器1は、(1)から(7)のいずれか一態様に係る電動推進器1であって、前記ボス部20の内部における前記軸線O方向他方側を向く面に固定され、該ボス部20とともに一体に回転する遠心ファン322をさらに備える。
【0076】
上記構成によれば、遠心ファン322が回転することで、ブレード流路41に向かう空気の流速、流量を高めることができる。これにより、防氷効果をさらに向上させることができる。
【0077】
(9)第9の態様に係る電動推進器1は、(1)から(8)のいずれか一態様に係る電動推進器1であって、前記シャフト流路11の内面に設けられた軸流ファン422をさらに備える。
【0078】
上記構成によれば、軸流ファン422が回転することで、ブレード流路41に向かう空気の流速、流量を高めることができる。これにより、防氷効果をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0079】
1…電動推進器
10…中空シャフト
11…シャフト流路
20…ボス部
21…ボス部流路
30…スピナー
40…ブレード
41…ブレード流路
42…吹出口
43…桁
44…開口部
45…スパー
50…電動機
51…ロータコア
52…永久磁石
53…スパイダー
54…ステータコア
55…コイル
60…ケーシング
61…前部ケーシング
62…後部ケーシング
63…吸込口
64…収容空間
65…支柱
66…前部内筒
67…隔壁
68…ストラット
69…後部内筒
70…フェアリング
80…軸受装置
90…ヒータ装置
91…支持体
92…ヒータ部材
101…電動推進器
142…吹出口
165…支持部材
201…電動推進器
242…吹出口
290…ヒータ装置
291…支持体
292…ヒータ部材
301…電動推進器
322…遠心ファン
342…吹出口
401…電動推進器
422…軸流ファン
O…軸線