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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106905
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ボルト保持具
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20230726BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F16B41/00 K
F16B35/04 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007907
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高見 功
(57)【要約】
【課題】ボルトを用いて部材同士を接続する際に、ボルトが落下することを軽減できるボルト保持具を提供する。
【解決手段】ボルト保持具100は、ボルト8の頭部81の天面811に対向するように配置される支持板3と、支持板3に対し隙間を介して対向し、ボルト8の軸82が通される穴51が形成された対向板5と、支持板3と対向板5とをつなぐ接続体4と、を備える。対向板5は、穴51の内周面から対向板5の外周端面まで貫通する開放溝52を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの頭部の天面に対向するように配置される支持板と、
前記支持板に対し隙間を介して対向し、前記ボルトの軸が通される穴が形成された対向板と、
前記支持板と前記対向板とをつなぐ接続体と、
を備え、
前記対向板は、前記穴の内周面から前記対向板の外周端面まで貫通する開放溝を有する、
ボルト保持具。
【請求項2】
前記対向板には、前記穴が複数箇所に形成されている、
請求項1に記載のボルト保持具。
【請求項3】
前記開放溝を閉じる閉じ位置と、前記開放溝を開放する開放位置とに切替え可能な閉塞体を更に備える、
請求項1又は請求項2記載のボルト保持具。
【請求項4】
前記閉塞体は、前記閉じ位置において、前記支持板と前記対向板との間に位置しかつ前記ボルトの頭部の側面に対向する回り止め部を有する、
請求項3記載のボルト保持具。
【請求項5】
前記閉塞体は、前記支持板と前記対向板との少なくとも一方に対して、回転可能に取り付けられている、
請求項3又は請求項4のいずれか一項に記載のボルト保持具。
【請求項6】
前記閉塞体は、前記支持板及び前記対向板に対して、前記閉じ位置に保持するストッパを有する、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のボルト保持具。
【請求項7】
前記接続体は、
前記ボルトの頭部の側面に対向する位置決め部と、
前記位置決め部と前記対向板との間に形成され、前記ボルトの軸が通されたワッシャW1を収容する凹部と、
を有する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のボルト保持具。
【請求項8】
前記支持板、前記対向板及び前記接続体を前記ボルトの取付け対象に対して保持させる保持部を更に備える、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のボルト保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト保持具に関し、詳細には、隣り合う部材同士をボルトによって接続する際に用いられるボルト保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業者による作業中に、電気機器内にねじが落下することを防止する技術が開示されている。特許文献1に記載のねじ落下防止具は、ねじ回し工具によってねじを緩めた際に、ねじの落下を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-223865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ねじ回し工具によってねじを緩めた際のねじの落下を防止する技術は存在するものの、ねじやボルト(以下、まとめて「ボルト」とする)を用いて、部材同士を接続する際に、ボルトが落下することを防ぐような技術は見当たらない。
【0005】
本発明は、ボルトを用いて部材同士を接続する際に、ボルトが落下することを軽減できるボルト保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様のボルト保持具は、ボルトの頭部の天面に対向するように配置される支持板と、前記支持板に対し隙間を介して対向し、前記ボルトの軸が通される穴が形成された対向板と、前記支持板と前記対向板とをつなぐ接続体と、を備える。前記対向板は、前記穴の内周面から前記対向板の外周端面まで貫通する開放溝を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る上記態様のボルト保持具は、ボルトを用いて部材同士を接続する際に、ボルトが落下することを軽減できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るボルト保持具を、取付け対象に使用する際の斜視図である。
図2】実施形態に係るボルト保持具の斜視図である。
図3】(A)は実施形態に係るボルト保持具の平面図である。(B)は、図3(A)のA-A線断面図である。
図4】実施形態に係る閉塞体の動作を説明する断面図である。
図5】実施形態に係るボルト保持具にボルトの頭部を収容する方法を説明する斜視図である。
図6】実施形態に係るボルト保持具を用いて、取付け対象にボルトを入れる直前の状態を説明する斜視図である。
図7】実施形態に係るボルト保持具を取付け対象に保持させた状態の斜視図である。
図8】ナットをボルトにねじ込んで仮締めを行った斜視図である。
図9】本実施形態に係るボルト保持具を取り外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本実施形態に係るボルト保持具100は、隣り合う部材同士をボルト8によって接続する際に用いられる。隣り合う部材としては、例えば、装置フレーム、レール、桁や梁といった建築用の横架材、橋梁、ブスバー、電力機器の電線等が挙げられる。本実施形態では、使用態様の一例として、電力機器における主回路の母線の接続に使用される例を挙げて説明する。
【0010】
電力機器は、電気の供給を受けて動作する機器である。電力機器としては、特に制限はなく、例えば、発電機、変圧器、コントロールセンタ、配電盤、制御盤等が挙げられる。ここにおいて、図1に示すように、電力機器につながる導体を「接続導体11」とし、接続対象の導体を「接続対象導体12」とし、接続導体11と接続対象導体12とを連結する導体を「連結導体13」と称する。また、これら接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13をまとめて「取付け対象」という場合がある。接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13は、いずれも導体からなるプレートで構成されている。
【0011】
接続導体11と、接続対象導体12とは、互いに離れている。接続導体11の上面と、接続対象導体12の上面とは、同一平面上に位置している。接続導体11の端部には、図1に示すように、複数の貫通穴14が形成されている。また、接続対象導体12の端部にも、複数の貫通穴14が形成されている。連結導体13の両端部には、接続導体11の貫通穴14と、接続対象導体12の貫通穴14に適合する位置に、貫通穴14が形成されている。連結導体13は、接続導体11の端部と接続対象導体12の端部とに跨るようにして配置される。連結導体13の下面は、接続導体11の上面及び接続対象導体12の上面に対向する。
【0012】
ボルト保持具100は、図1に示すように、支持板3と、支持板3に対向する対向板5と、支持板3と対向板5とをつなぐ接続体4と、を備える。対向板5は、ボルト8の軸82が通される穴51と、穴51の内周面から外周端面まで貫通する開放溝52と、を有する。
【0013】
ボルト保持具100において、1又は複数のボルト8を、頭部81を下でかつ軸82を上にした状態で軸82が対向板5から突き出るように、支持板3の上に配置する。作業者は、ボルト保持具100を用いて、取付け対象の各貫通穴14に対して、ボルト8を下から上に向かって挿し入れた状態で、取付け対象に対してボルト保持具100を保持させる。そして、作業者は、連結導体13の上面から突き出たボルト8の軸82に対して、スプリングワッシャW2及びナットN1を取り付けることができる。これによって、接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13を接続する作業を行う際、作業者は、ボルト8を落下してしまうミスを軽減することができる。
【0014】
以下、本実施形態に係るボルト保持具100について、より詳細に説明する。以下では、説明の便宜上、ボルト保持具100において、支持板3から対向板5に向かう方向を「上方向」とし、その反対方向を「下方向」として定義する。また、接続導体11と接続対象導体12とが並ぶ方向を、「左右方向」とし、左右方向に直交しかつ水平面に沿う方向を「前後方向」として定義する。ただし、これら方向の定義は、説明の便宜上、定義したに過ぎず、ボルト保持具100の使用態様を特定する趣旨ではない。
【0015】
また、本明細書でいう「対向」は、向き合うことを意味する。「対向」には、対象となる部材同士が接触して向き合うこと、及び隙間を介して向き合うことのほか、対象となる部材同士が向き合いかつ間に他の部材が介在していることも含むこととする。また、本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。
【0016】
ボルト保持具100は、図2に示すように、支持板3、対向板5及び接続体4を有するケース2と、閉塞体6と、保持部7と、を備える。
【0017】
(ケース2)
ケース2は、図3に示すように、内部にボルト頭部収容空間22を有する箱体である。ケース2は、上述したように、支持板3と、対向板5と、接続体4と、を備える。本実施形態に係るケース2は、扁平な形状をしている。ケース2は、ケース2を上方から下方向に見て(以下、平面視という)、左右方向を長さ方向とし、前後方向を幅方向とした長方形状に形成されている。ケース2は、幅方向の一方の端面に開口面21を有している。ボルト頭部収容空間22は、ボルト8の頭部81が収まる空間であり、対向板5と支持板3と接続体4とで囲まれる。
【0018】
支持板3、対向板5及び接続板は、本実施形態では一体に形成されている。支持板3、対向板5及び接続板の材料としては、特に制限はないが、例えば、金属、樹脂、カーボン、パルプ、ガラス、ファブリック等が挙げられ、この中でも、軽量化、製造性及び強度等の観点から樹脂が用いられることが好ましい。
【0019】
支持板3は、ボルト8の下方に位置する板である。支持板3は、ボルト8の頭部81の天面811に対して対向する。支持板3は、左右方向を長さ方向とし、前後方向を幅方向とした長方形状に形成されている。本明細書でいう「板」又は「…板」は、その厚さが、幅及び長さのうちの短い方よりも薄い部材又は部位を意味する。本実施形態に係る支持板3の厚さは、支持板3の幅の10%以下である。
【0020】
支持板3には、ボルト8の頭部81の天面811が載る。すなわち、支持板3は、ボルト8の頭部81を下から支えることができる。ただし、本発明では、必ずしもボルト8の頭部81が支持板3に接触している必要はない。例えば、支持板3の上面に、弾性シートや滑り止めシート等のシート材を敷き、ボルト8の頭部81を、シート材を介して支持してもよい。
【0021】
接続体4は、支持板3と対向板5とをつなぐ。接続体4は、支持板3の長さ方向の両端及び幅方向の一方の端から立ち上がっている。接続体4の上下方向の寸法は、図3(B)に示すように、ボルト8の頭部81とワッシャW1とを足し合わせた寸法に設定されている。
【0022】
接続体4は、位置決め部41を有する。位置決め部41は、ボルト8の頭部81の側面に対向する。本実施形態に係るボルト8は、六角ボルトであり、頭部81に六つの側面を有する。位置決め部41は、本実施形態では、ケース2の長さ方向及び厚さ方向に平行な平面である位置決め面411を有している。ボルト8の頭部81の複数の側面のうちの1つの側面に対して、位置決め面411が対向する。これによって、ケース2内において、ボルト8が位置決めされる。
【0023】
接続体4は、ワッシャW1の一部を収容する凹部42を有する。凹部42は、図3(B)に示すように、位置決め部41と対向板5との間に形成されている。凹部42は、位置決め部41の平面から凹んでいる。凹部42は、本実施形態では、図3(A)に示すように、位置決め部41の長さ方向の全長にわたって形成されているが、ボルト8が配置される位置に対応して、部分的に形成されてもよい。
【0024】
対向板5は、支持板3に対して隙間を介して対向している。対向板5は、支持板3の上方に位置している。対向板5は、平面視で、支持板3と同形同大に形成されており、略長方形状に形成されている。
【0025】
対向板5は、複数(ここでは4つ)の穴51を有する。穴51は、ケース2内にボルト8の頭部81が収容された状態で、ボルト8の軸82が通される。穴51は、対向板5の下面から上面まで貫通している。各穴51は、左右方向に長手方向を有する長穴である。複数の穴51は、連結導体13の貫通穴14の位置に合わせて形成されている。複数の穴51が長穴であることで、接続導体11と接続対象導体12との製造時の許容差を吸収することができる。
【0026】
対向板5は、穴51の内周面から対向板5の外周端面まで貫通する開放溝52を有する。開放溝52は、穴51から対向板5の幅方向の一方側に向かって直線状に延びている。開放溝52の幅は、ボルト8の軸82の直径以上に形成されている。複数の開放溝52は、平行に形成されている。なお、複数の開放溝52は、互いに平行であれば、直線状でなくてもよい。
【0027】
(閉塞体6)
閉塞体6は、図4に示すように、開放溝52を閉じる閉じ位置と、開放溝52を開放する開放位置とに切替え可能に構成されている。閉塞体6は、長手方向の一端部が、支持板3と対向板5との少なくとも一方に回転可能に取り付けられている。ここでは、閉塞体6は、支持板3及び対向板5の両方に対して、回転可能に取り付けられている。閉塞体6の回転軸64は、支持板3の主面に対して直交しており、すなわち、ケース2の厚さ方向に平行である。
【0028】
閉塞体6は、閉じ位置において、支持板3と対向板5との間に位置する回り止め部61と、回り止め部61の幅方向の外側の端部に設けられた当たり部62と、を備える。当たり部62は、閉塞体6が閉じ位置にあると、支持板3の端面と対向板5の端面とに当たるように構成されている。
【0029】
回り止め部61は、閉塞体6が閉じ位置にあると、上述したように、支持板3と対向板5との間に挿し入れられる。図3(B)に示すように、回り止め部61の下面は、支持板3の上面に接触又は近接するが、回り止め部61の上面は、対向板5の下面との間に隙間を有する。回り止め部61の上面と対向板5の下面との間の隙間は、ワッシャW1の厚さよりも厚く形成されており、当該隙間にはワッシャW1が入り込むように構成されている。
【0030】
閉塞体6が閉じ位置にあると、回り止め部61の端面は、ボルト8の頭部81の側面に対向するが、好ましくは、ボルト8の頭部81の側面を押さえる。これによって、ボルト8収容空間に頭部81が収容されたボルト8は、対辺をなす一対の平面が回り止め部61と位置決め部41とで挟まれ、回転し難くなる。要するに、回り止め部61は、閉塞体6が閉じ位置にあると、ナットN1をねじ込む際の共回りを防ぐことができる。
【0031】
閉塞体6は、長手方向の回転軸64とは反対側の端部に、ストッパ63を有する。ストッパ63は、ケース2に対して、閉塞体6を閉じ位置に保持する。ケース2には、ケース2の長さ方向の端部に、ストッパ63を留める連結部が設けられている。ストッパ63は、連結部に対して連結されることで、ケース2に対して閉塞体6を閉じ位置に保持することができる。ストッパ63と連結部との連結は、例えば、スナップフィット構造、嵌め込み、磁着、面ファスナ、粘着等で実現されるが、ここでは、スナップフィット構造や嵌め込み等の機械的構造によって連結されることが好ましい。
【0032】
(保持部7)
保持部7は、ケース2及び閉塞体6を、取付け対象に対して保持させる。保持部7は、ケース2のボルト頭部収容空間22内にボルト8の頭部81を収容し、閉塞体6を閉じ位置に位置させた状態で、取付け対象に対して保持させることができれば、特に制限はなく、例えば、対向面に設けられた磁石であってもよいし、取付け対象に対して引っ掛けるハンガー等であってもよい。ここでは、保持部7の一例として、図2に示すように、複数のベルト71と、各ベルト71を任意の位置で保持するベルト保持部73とを備えた構造を挙げて説明する。
【0033】
ベルト71は、ケース2に対して固定されている。複数のベルト71の間の幅は、連結導体13の長さよりも短い。これによって、1つのベルト71によって、接続導体11と連結導体13とを巻くことができ、もう1つのベルト71によって、接続対象導体12と連結導体13とを巻くことができる。すなわち、少なくとも1つのベルト71を有することで、ケース2を取付け対象に対して保持するだけでなく、連結しようとする隣り合う部材同士を相互に位置決めできるため、作業性を向上することができる。
【0034】
ベルト71の端部(ここでは「基端部」とする)には、バックル72が設けられている。ベルト71は、バックル72に通されて折り返され、ベルト71の先端部がベルト保持部73に保持される。
【0035】
ベルト保持部73は、ベルト71の先端部を保持する。ベルト保持部73としては、例えば、ベルト71の一面に取り付けられた面ファスナ、ベルト71の先端部に形成された穴を保持する突起部、ボタン等が挙げられる。本実施形態では、ベルト71の先端部には、面ファスナが取り付けられており、ベルト保持部73は、ベルト71の一面に取り付けられた面ファスナによって構成されている。したがって、面ファスナ同士を接続することで、ベルト保持部73は、ベルト71の先端部を、ベルト71の長手方向の任意の位置で保持することができる。
【0036】
(方法)
次に、本実施形態に係るボルト保持具100を用いて、接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13を、ボルト8によって接続する方法の一例を説明する。
【0037】
図5に示すように、複数のボルト8の頭部81をケース2内に収容し、ボルト8の軸82を穴51に通して、対向板5から突き出す。このとき、支持板3がボルト8の頭部81の天面811に対向し、対向板5がボルト8の頭部81の座面812に対向する。この状態で、閉塞体6を閉じ位置に切り替える。
【0038】
次に、図6に示すように、接続導体11及び接続対象導体12に対して、連結導体13を載せる。そして、接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13の各貫通穴14に対して、下から上に向かって、ボルト8の軸82を挿し入れる。この後、図7に示すように、保持部7によって、ケース2を取付け対象に保持させる。このとき、ベルト71とベルト保持部73とを用いて、1つのベルト71で接続導体11と連結導体13とを位置決めし、他のベルト71で、接続対象導体12と連結導体13とを位置決めする。
【0039】
次に、図7に示すように、連結導体13の上面から突き出ている軸82に対して、スプリングワッシャW2を取り付け、ナットN1をねじ込む。このとき、図8に示すように、ナットN1については、固く締結することなく、緩くねじ込む(つまり、仮締め)。これによって、複数のボルト8が落下するのを防ぐことができる。
【0040】
次に、図9に示すように、保持部7による保持を解除すると共に閉塞体6を開放位置に切り替えた後、複数のボルト8を残したまま、ボルト保持具100を幅方向に移動させる。すると、穴51内に位置していた各ボルト8の軸82が、開放溝52を通ってケース2から外れる。これによって、ボルト保持具100を取り外すことができる。
【0041】
この後、各ボルト8に対してナットN1を締め込むことで、接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13の接続作業が完了する。
【0042】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係るボルト保持具100は、支持板3と、ボルト8の軸82が通される穴51が形成された対向板5と、支持板3と対向板5とをつなぐ接続体4と、を備え、対向板5は、穴51の内周面から対向板5の外周端面まで貫通する開放溝52を有する。このため、ボルト保持具100において、ボルト8を、頭部81を下でかつ軸82を上にした状態で、軸82が対向板5から突き出るように、支持板3の上に配置することができ、この状態で、取付け対象の貫通穴14に対して、ボルト8の軸82を通すことができる。本実施形態に係るボルト保持具100によれば、ボルト8の軸82を、支持板3と対向板5とで起立させることができるため、ボルト8を用いて、部材同士を接続する際に、ボルト8を落下するミスを軽減することができる。
【0043】
この結果、接続作業を行う箇所の下方に養生をすることを省略することも可能である。さらに、養生するための時間を削減できることで、作業時間を削減できる。
【0044】
また、ボルト保持具100では、穴51が複数箇所に形成されているため、複数のボルト8をまとめて取付け対象の貫通穴14に通すことができ、作業性がよい。
【0045】
また、ボルト保持具100では、開放溝52を閉じる閉じ位置と、開放溝52を開放する開放位置とに切替え可能な閉塞体6を備えるため、支持板3と対向板5との間にボルト8の頭部81を収容した後、取付け対象に取り付ける前に、ボルト8が不意に落下するのを抑制することができる。
【0046】
また、閉塞体6が回り止め部61を有するため、取付け対象の貫通穴14に軸82を通した後、ナットN1をねじ込む際に、共回りが生じにくく、作業性を向上させることができる。
【0047】
また、閉塞体6が支持板3と対向板5との少なくとも一方に対して回転可能に取り付けられているため、作業中に閉塞体6が落下することを防ぐことができる。
【0048】
また、閉塞体6はストッパ63を有するため、意図せず閉塞体6が開放位置に切り替えられるのを防ぐことができる。
【0049】
また、接続体4は、ワッシャW1を収容する凹部42を有するため、支持板3と対向板5との間に、ワッシャW1とボルト8の頭部81とを収容した状態にすることができ、取付け作業の際、軸82をワッシャW1に通す作業を省くことができ、作業性がよいし、ワッシャW1を落下するミスを軽減することができる。
【0050】
また、ボルト保持具100は保持部7を有するため、支持板3、対向板5及び接続体4を取付け対象に対して保持させることで、ナットN1をねじ込む際に、片手でボルト保持具100を支えながら、ナットN1を締め付けるという作業をする必要がなく、作業者は両手で作業を行うことができる。
【0051】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0052】
上記実施形態に係るボルト保持具100では、接続導体11、接続対象導体12及び連結導体13の3つを同時に接続する使用方法を説明したが、本発明に係るボルト保持具100では、接続導体11と接続対象導体12とを厚さ方向に重ね、この2つをボルト8で接続する際に用いられてもよい。
【0053】
上記実施形態では、穴51は長穴であったが、例えば、丸穴、角穴等であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、位置決め面411は平面であったが、例えば、六角ボルトの角に合わせた平面視略120°の入隅部で構成されてもよい。また、回り止め部61についても、六角ボルトの角に合わせた平面視略120°の入隅部を有してもよい。
【0055】
上記実施形態では、支持板3がケース2の下面を構成したが、例えば、支持板3はケース2の内部を仕切る板で構成されてもよい。
【0056】
上記実施形態では、接続体4は、支持板3と対向板5とを、長さ方向の両端と幅方向の一端とでつないだが、例えば、幅方向の一端のみでつないでもよい。また、幅方向に一端の全長のうちの一部のみでつないでもよい。
【0057】
上記実施形態では、対向板5は、長方形状に形成されたが、これに限らず、例えば、円形、正方形、三角形等の形状であってもよいし、穴51を囲むような略U字状の部分を複数有するような形状であってもよい。
【0058】
上記実施形態では、ケース2内にボルト8の頭部81とワッシャW1とを収容するように構成されたが、ワッシャW1を収容する凹部42はなくてもよい。この場合、ワッシャW1を対向板5の上面に配置してもよい。
【0059】
上記実施形態では、ボルト8にナットN1をねじ込んだ後、ケース2を幅方向に平行移動することで、ケース2を取り除いたが、例えば、ケース2の平面視における図心を中心として回転させることで、ケース2からボルト8を取り外してもよい。この場合、開放溝52は、ケース2の平面視における図心を中心とした円弧状に形成される。また、ケース2を幅方向に少し移動した後、長さ方向に平行移動して取り除くことができるように、幅方向に延びた複数の開放溝52と、長さ方向に延びた1つの開放溝52とを組み合わせてもよい。
【0060】
上記実施形態に係る開放溝52の幅は、穴51の長さよりも短いが、穴51の長さと同じ寸法であってもよい。すなわち、開放溝52と穴51とで、切欠き状に形成されてもよい。
【0061】
上記実施形態では、ボルト8として、六角ボルトを用いた例で説明したが、例えば、六角穴付ボルト等の他のボルト8に対しても適用可能である。また、ボルト8には、ねじも含まれることとする。
【0062】
上記実施形態に係る保持部7は、ベルト71の基端部にバックル72が設けられたが、バックル72は無くてもよい。
【0063】
上記実施形態では、複数の穴51のピッチは固定されていたが、例えば、対向板5において隣り合う穴51の間を伸縮可能な構造にして、複数の穴51のピッチを可変としてもよい。
【0064】
本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0065】
100 ボルト保持具
3 支持板
4 接続体
41 位置決め部
42 凹部
5 対向板
51 穴
52 開放溝
6 閉塞体
61 回り止め部
63 ストッパ
7 保持部
8 ボルト
81 頭部
811 天面
82 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9