(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106909
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】回転角度検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20230726BHJP
G01D 5/04 20060101ALI20230726BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
G01D5/04 C
G01D5/245 B
G01B7/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007913
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宏一
(72)【発明者】
【氏名】中川 俊一
(72)【発明者】
【氏名】村山 周
(72)【発明者】
【氏名】照井 球一朗
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA36
2F063BA08
2F063GA52
2F077AA28
2F077AA46
2F077CC08
2F077DD05
2F077JJ02
2F077JJ07
2F077JJ23
2F077VV02
2F077VV23
2F077VV31
(57)【要約】
【課題】誤った磁石収容部に磁石を取り付けるおそれが無く、確実に従動歯車の所定の位置に磁石を取り付けることができる回転角度検出センサの提供を目的とする。
【解決手段】主動歯車2と、主動歯車2の大径ギア部21及び小径ギア部22に噛合する従動歯車3A、3Bと、従動歯車3A、3Bに取り付けられる磁石4A、4Bと、磁石4A、4Bの磁気を検知する磁気センサ5A、5Bと、を備え、主動歯車2及び従動歯車3A、3Bは、回転軸2S、3SA、3SBが取付基準面6に対して直交しており、従動歯車3A、3Bは、第1平面P1上に配置され、磁気センサ5A、5Bは、第2平面P2上に配置された回転角度検出センサ100であり、従動歯車3A、3Bは同一形状であり、回転軸3SA、3SB方向において逆向きに取り付けられ、磁石4A、4Bの中心4CA、4CBが回転軸3SA、3SB方向における中点位置に配置されている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径ギア部及び小径ギア部を持つ主動歯車と、
前記大径ギア部及び前記小径ギア部に噛合する二つの従動歯車と、
各前記従動歯車に取り付けられる二つの磁石と、
各前記磁石の磁気を検知する二つの磁気センサと、を備え、
前記主動歯車及び前記従動歯車は、回転軸が取付基準面に対して直交しており、
二つの前記従動歯車は、前記取付基準面に平行な第1平面上に配置され、
二つの前記磁気センサは、前記取付基準面に平行でかつ前記第1平面とは異なる第2平面上に配置された回転角度検出センサであって、
二つの前記従動歯車は同一形状であり、回転軸方向において互いに逆向きに取り付けられ、
前記磁石は前記従動歯車の前記回転軸上でかつ前記従動歯車の前記回転軸方向における中点位置に配置されていることを特徴とする回転角度検出センサ。
【請求項2】
前記従動歯車は、前記回転軸を中心とする筒状に形成された軸部と、前記軸部から円盤状に広がり、外周端部にギア歯を備えるフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は前記回転軸方向における前記軸部の前記中点位置からずれた位置に設けられ、
前記磁石の中心は前記軸部の前記回転軸方向における前記中点位置に配置されている、
請求項1に記載の回転角度検出センサ。
【請求項3】
前記従動歯車の前記フランジ部は、
前記回転軸の一方側が対向するように前記取付基準面に取り付けたときに、前記大径ギア部と係合可能な位置にあり、
前記回転軸の他方側が対向するように前記取付基準面に取り付けたときに、前記小径ギア部と係合可能な位置にある
請求項2に記載の回転角度検出センサ。
【請求項4】
前記従動歯車は、前記回転軸方向における一方側にのみ磁石取付部を備えている、
請求項1に記載の回転角度検出センサ。
【請求項5】
前記磁石の形状は環であり、前記環の周方向に沿って異なる磁極が交互に並ぶように磁化され、
前記環の中心と前記従動歯車の前記回転軸とが一致するように、前記軸部の内側もしくは外側に前記磁石が配置されている、
請求項2に記載の回転角度検出センサ。
【請求項6】
前記回転軸方向から見たときに、前記磁石の外周形状もしくは内周形状が多角形状であり、
前記回転軸方向から見たときに、前記軸部の内周面が前記磁石の外周を係止可能な形状、もしくは前記軸部の外周面が前記磁石の内周を係止可能な形状である、
請求項5に記載の回転角度検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング軸等の回転角度を検出する回転角度検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両では、車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されている。そして、これらシステムでは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定な状態になるように制御するようにしている。このため、ステアリング軸には、軸の回転角度を検出するための回転角度検出センサが取り付けられている。
【0003】
このような回転角度検出装置として、特許文献1では、製造コストを低減するために、主動歯車が同一の軸を中心として回転する歯数の異なる二つの主動歯車部を備える一方、二つの従動歯車の歯数をそれぞれ同じとし、それら二つの従動歯車を主動歯車の二つの主動歯車部にそれぞれ噛合させるようにした回転角度検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された回転角度検出装置の二つの従動歯車には、軸部の両端部にそれぞれ磁石収容部が形成されており、従動歯車の取り付け方向に合わせて磁石収容部を選択して磁石を配置する。このため、所定の磁石収容部の反対側に磁石を取り付けるおそれがあり、磁石収容部を間違えた場合に磁石が所定の位置からずれて取り付けられるという問題があった。
そこで、本発明は、磁石が誤った磁石収容部に取り付けられるおそれが無く、磁石を確実に従動歯車の所定の位置に取り付けることができる回転角度検出センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述した課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
大径ギア部及び小径ギア部を持つ主動歯車と、前記大径ギア部及び前記小径ギア部に噛合する二つの従動歯車と、各前記従動歯車に取り付けられる二つの磁石と、各前記磁石の磁気を検知する二つの磁気センサと、を備え、前記主動歯車及び前記従動歯車は、回転軸が取付基準面に対して直交しており、二つの前記従動歯車は、前記取付基準面に平行な第1平面上に配置され、二つの前記磁気センサは、前記取付基準面に平行でかつ前記第1平面とは異なる第2平面上に配置された回転角度検出センサであって、二つの前記従動歯車は同一形状であり、回転軸方向において互いに逆向きに取り付けられ、前記磁石は前記従動歯車の前記回転軸上でかつ前記従動歯車の前記回転軸方向における中点位置に配置されていることを特徴とする回転角度検出センサ。
【0007】
上記の構成により、従動歯車を回転軸方向のどちら向きに取り付けても下ケースの取付基準面に対する磁石の位置関係が変わらないため、例えば、磁石が取り付けられた大径ギア部用の従動歯車を小径ギア部用の従動歯車として取り付けたとしても、取り付けられた大径ギア部用の従動歯車は小径ギア部用の従動歯車として機能できる。逆の場合も同様である。よって、磁石の取り付け位置の間違いによる不具合品の発生を無くすことができる。また、大径ギア部用の従動歯車及び小径ギア部用の従動歯車として、同一の歯車を兼用することができる。したがって、部品の種類削減により、製造コストや部品の管理費用を削減することができる。
【0008】
前記従動歯車は、前記回転軸を中心とする筒状に形成された軸部と、前記軸部から円盤状に広がり、外周端部にギア歯を備えるフランジ部と、を有し、前記フランジ部は前記回転軸方向における前記軸部の前記中点位置からずれた位置に設けられ、前記磁石は前記軸部の前記回転軸方向における前記中点位置に配置されていてもよい。
また、前記従動歯車の前記フランジ部は、前記回転軸の一方側が対向するように前記取付基準面に取り付けたときに、前記大径ギア部と係合可能な位置にあり、前記回転軸の他方側が対向するように前記取付基準面に取り付けたときに、前記小径ギア部と係合可能な位置にあってもよい。
この構成により、下ケースの取付基準面に対する従動歯車の取り付け方向を変えることにより、回転軸方向におけるフランジ部の位置が変化する。このため、従動歯車の取り付け方向によって、従動歯車を大径ギア部または小径ギア部のいずれに係合させるかを選択することができる。
【0009】
前記従動歯車は、前記回転軸方向における一方側にのみ、前記磁石取付部を備えていてもよい。磁石取付部を従動歯車の一方側にのみ設けることで、磁石を取り付ける際に磁石取付部を選択する必要がなくなる。したがって、磁石を誤った磁石取付部に取り付けることが確実に防止できる。
【0010】
前記磁石の形状は環であり、前記環の周方向に沿って異なる磁極が交互に並ぶように磁化され、前記環の中心と前記従動歯車の前記回転軸とが一致するように、前記軸部の内側もしくは外側に前記磁石が配置されてもよい。
磁石を環にすることにより、磁石の環の中心を軸部の中心に容易に配置することができる。また、従動歯車を軸支する支持軸を磁石の開口に挿通することができる。これにより支持軸を長くすることができるため、従動歯車を安定して軸支できる。
【0011】
前記回転軸方向から見たときに、前記磁石の外周形状もしくは内周形状が多角形状であり、前記回転軸方向から見たときに、前記軸部の内周面が前記磁石の外周を係止可能な形状、もしくは前記軸部の外周面が前記磁石の内周を係止可能な形状であってもよい。
この構成により、従動歯車に対する磁石の回転止め及び位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転角度検出センサは、磁石が回転軸上でかつ従動歯車の回転軸方向における中点位置に配置されているため、同一形状の二つの従動歯車をいずれの向きに取り付けた場合でも、取付基準面に対する磁石の位置が変わらない。したがって、磁石を取り付ける側を間違えるおそれが無く、磁石を従動歯車の所定位置に確実に取り付けることができる回転角度検出センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転角度検出センサの要部を示す平面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る回転角度検出センサの
図1におけるAA線の断面図である。
【
図2B】
図2Aにおける一部の部材を拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る回転角度検出センサの要部を示す斜視図である。
【
図4A】参考例に係る回転角度検出センサの
図2Aに相当する部分の断面図である。
【
図4B】
図4Aにおける一部の部材を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。各図面において同じ部材には同じ番号を付し、適宜、説明を省略する。各図には基準座標としてX-Y-Z座標を示す。
【0015】
図1は本実施形態に係る回転角度検出センサ1の要部を示す平面図である。同図は、回転角度検出センサ1のケース60のうち上側のケース(上ケース61)を取り外した状態を示している(
図2A参照)。
回転角度検出センサ1は、回転可能にケース60に保持された主動歯車2と、主動歯車2に伴って回転する従動歯車3A、3Bと、従動歯車3A、3Bと共に回転する磁石4A、4Bと、磁石4A、4Bの回転を検出する磁気センサ5A、5Bとを備えている。下側のケース(下ケース62)は主動歯車2及び従動歯車3A、3Bの取付基準面6を有し、主動歯車2の回転軸2S及び前記従動歯車3A、3Bの回転軸3SA、3SBは、この取付基準面6に対して直交している。
【0016】
主動歯車2は、合成樹脂により形成された円筒の周囲に大径ギア部21及び小径ギア部22を有している。主動歯車2は、図示しない被検出回転体の回転に伴って回転する。被検出回転体として、例えば車両のステアリング軸のような複数回転する回転軸が挙げられる。
【0017】
大径ギア部21と小径ギア部22とは歯数が異なる。また、後述するが従動歯車3A、3Bは取り付け向きが異なるだけで同一の部品である。そのため、主動歯車2の回転に伴って、大径ギア部21に噛合する従動歯車3Aに生じる回転と、小径ギア部22に噛合する従動歯車3Bに生じる回転とが異なる。したがって、従動歯車3A、3Bに取り付けられた磁石4A、4Bが、従動歯車3A、3Bの回転に伴って回転することにより、磁石4Aと磁石4Bとでは回転によって生じる磁界の変化が異なる。磁界を検出する磁気センサ5A、5Bにより、これらの磁界の大きさや方向の変化を検出することで、被検出回転体の回転角を精度よく検出できる。磁気センサ5A、5Bとしては、磁気検知部がGMR素子、MR素子、TMR素子、ホール素子等で構成されたセンサが用いられる。
【0018】
図2Aは、
図1に示す回転角度検出センサ1におけるAA線の断面図である。
図2Bは、
図2Aにおける各二つの従動歯車3A、3B、磁石4A、4B、及び磁気センサ5A、5Bを拡大して示す断面図である。同図に示すように、従動歯車3A、3Bは、ケースの取付基準面6に平行な第1平面P1上に配置されている。なお、本実施形態における回転角度検出センサ1では、取付基準面6と第1平面P1とは同一平面である。磁気センサ5A、5Bは、取付基準面6に平行でかつ第1平面P1とは異なる第2平面P2上に配置されている。
【0019】
回転角度検出センサ1では、従動歯車3A、3B、磁石4A、4B及び磁気センサ5A、5Bがそれぞれ同一のものが用いられている。このため、以下では、これらに共通する事項については、適宜、A、Bを付さず従動歯車3、磁石4、磁気センサ5と記す。同様に、従動歯車3の各部についても適宜A、Bを省略する。
【0020】
前述の通り、本実施形態における回転角度検出センサ1では、従動歯車3A、3Bは同一の部品が用いられている。それに対して、従動歯車が同じ部品(従動歯車3A、3B)ではなく、異なる部品(従動歯車3A、103)で構成されている回転角度検出センサ100を参考例としてあげ、以下に両者を比較しながら説明する。
【0021】
図4Aは、参考例に係る回転角度検出センサ100の
図2Aに相当する部分の断面図であり、
図4Bは
図4Aにおける従動歯車3A、103、各二つの磁石4A、4B、及び磁気センサ5A、5Bを拡大して示す断面図である。
【0022】
ここで従動歯車3A、103は、大きさ・形状・内部構造が同じ筒状の軸部33A、133と、軸部33A、133の外周面から取付基準面6(第1平面P1)に平行な方向へ突出し、主動歯車2と係合する歯車部となるフランジ部34A、134をそれぞれ備えている。フランジ部134は、軸部133から円盤状に広がる部分であり、その外周端部にギア歯1341を備えている。
【0023】
筒状の軸部33A、133はそれぞれ一端側に磁石4A、4Bを挿入可能な開口である磁石取付部35A、135を有し、開口から内部に磁石4A、4Bを挿入可能な構成である。また筒状の軸部33A、133は筒の周方向において数カ所に分割された構成であっても良い。軸部33A、133の内部に配置された磁石4A、4Bは軸部33A、133の一端である端部31A、131から所定の距離離れた同じ位置に配置される。また、軸部33A、133は、軸部33A、133の他端である端部32A、132が取付基準面6(第1平面P1)に対向するように配置されている。これにより、取付基準面6(第1平面P1)に対する磁石4A、4Bの離間距離は同じになる。
【0024】
また、
図2A及び
図4Aに示すように、主動歯車2における大径ギア部21と小径ギア部22とは、回転軸2Sの方向(回転軸方向、Z軸方向)における、下ケース62の取付基準面6からの距離が異なる。このため、
図4A、
図4Bに示す回転角度検出センサ100では、従動歯車3Aの軸部33Aに対するフランジ部34Aの位置と、従動歯車103の軸部133に対するフランジ部134の位置と、が異なる構造としている。すなわち、回転軸2Sの方向(回転軸方向、Z軸方向)における大径ギア部21および小径ギア部22の位置にあわせてフランジ部34A、134を異なる位置にする必要があった。ここで、取付基準面6からフランジ部34Aの距離とは、回転軸2S、3SA方向における、下ケース62の取付基準面6に接する側の端部32Aとフランジ部34Aとの距離をいう。取付基準面6からフランジ部134の距離とは、回転軸2S、103S方向における、下ケース62の取付基準面6に接する側の端部132とフランジ部134との距離をいう。下ケース62に設けられる取付基準面6に従動歯車3A、103が取り付けられ、従動歯車3A、103における取付基準面6に対向する側とは反対側に磁気センサ5A、5Bが位置する。
【0025】
回転角度検出センサ100では、異なる二種類の従動歯車3A、103が必要であり、このことが製造コスト増加の原因となっていた。そこで、本実施形態の回転角度検出センサ1では、同一形状の従動歯車3A、3Bを用いることにより、製造コスト、管理コストの抑制を実現している。
【0026】
図2Aおよび
図2Bに示すように、本実施形態における従動歯車3は、軸部33と、フランジ部34と、を有している。軸部33は、回転軸3Sを中心として筒状に形成された部分である。フランジ部34は、軸部33から円盤状に広がる部分であり、その外周端部にギア歯341を備えている。
【0027】
図2Bに示す従動歯車3A、3Bの断面図に基づいて従動歯車3の概略の構成を説明する。
従動歯車3A、3Bは、回転軸3SA、3SBに沿った方向における軸部33A、33Bの中点位置Cよりも、一方側の端部32A、32Bに近い側にフランジ部34A、34Bが設けられている。他方側の端部31A、31Bは開口しており、軸部33A、33Bの内部に磁石4A、4Bを保持可能な構成である。
【0028】
従動歯車3Aは軸部33Aの一方側の端部32Aが対向して接するように、下ケース62の取付基準面6に取り付けられており、フランジ部34Aのギア歯341Aが大径ギア部21と噛み合う。また、従動歯車3Bは軸部33Bの他方側の端部31Bが対向して接するように、下ケース62の取付基準面6に取り付けられており、フランジ部34Bのギア歯341Bが小径ギア部22と噛み合う。
【0029】
従動歯車3のフランジ部34は、軸部33の回転軸3S方向における中点位置Cから一端側もしくは他端側にずれた位置に設けられている。従動歯車3を取付基準面6に対して軸部33の端部32が対向して接するように配置したときに、取付基準面6からフランジ部34までの距離と取付基準面6から大径ギア部21までの距離とが同じである。また、従動歯車3を取付基準面6に対して軸部33の端部31が対向して接するように配置したときに、取付基準面6からフランジ部34までの距離と取付基準面6から小径ギア部22までの距離とが同じである。このように、フランジ部34は、軸部33の一方側の端部32が接するように取付基準面6に取り付けたときに大径ギア部21と係合可能であり、かつ、他方側の端部31が接するように取付基準面6に取り付けたときに、小径ギア部22と係合可能な位置に設けられている。
【0030】
そして、磁石4は、従動歯車3における軸部33の回転軸3S方向における中点位置Cに配置されている。回転軸3S方向における、軸部33の端部31から磁石4の中心4C(4CA、4CB)までの距離L1と、軸部33の端部32から磁石4の中心4Cまでの回転軸3S方向の距離L2とが等しい。
【0031】
以上の構成により、従動歯車3の取付基準面6への取り付け方向を変えることで、回転軸3S方向における、下ケース62の取付基準面6からのフランジ部34の位置を変えることができる。このため、同じ従動歯車3の取り付け方向により、回転軸3S方向における取付基準面6からの位置が異なる大径ギア部21及び小径ギア部22のいずれと係合させるかを決めることができる。
【0032】
回転角度検出センサ1では、磁石4が従動歯車3の回転軸3S上でかつ従動歯車3の回転軸3S方向における中点位置Cに配置されている。このため、回転軸3S方向において、従動歯車3A、3Bが互いに逆向きに取り付けられたとき、すなわち、従動歯車3を裏返して配置して取り付けたときでも、下ケース3Cの取付基準面6に対する磁石4の位置関係が変わらない。したがって、同一形状の従動歯車3の下ケース3Cの取付基準面6へ取り付ける向き、すなわち取付基準面6に対向して接する端部を変更することより、大径ギア部21用の従動歯車3(3A)と小径ギア部22用の従動歯車3(3B)として共用することができる。これにより、部品の種類を削減でき、製造や管理費用などのコストを削減できる。
【0033】
従動歯車3は、回転軸3S方向における一方側の端部32側にのみ、端部31側に向かって開口した磁石取付部35を備えている。くわしくは、軸部33は中空の筒状に形成され、軸部33の内壁面の、回転軸3S方向における中点位置Cから一方側の端部32側に近い位置から回転軸3S方向に突出した底部36を備えた磁石取付部35が形成されている。
【0034】
また、磁石取付部35(35A、35B)は回転軸3Sを中心とした貫通孔37(37A、37B)を備えており、貫通孔37の端部から回転軸3Sに沿って軸部33の他方側へ向かって筒状に突出した壁部38(38A、38B)が設けられている。この壁部38は完全な筒状ではなく、筒の外周方向において分割されていても良い。
【0035】
なお、軸部33の回転軸3S方向における中点位置Cから軸部33の他方側の端部31側の開口に臨む底部36の磁石4を収納する側の面までの距離L3は、回転軸3S方向における磁石4の一方側の面もしくは他方の面から磁石4の中心4Cまでの距離L4と略同じ寸法である。そのため、磁石4を軸部33の他方側の端部31側の開口から挿入し、かつ軸部33の他方側の端部31側の開口に臨む底部36の磁石4を収納する側の面に接して配置させることで、磁石4は軸部33の回転軸3S方向における中点位置Cに配置される。すなわち、磁石4の中心4Cと軸部33の回転軸3S方向における中点位置Cとが重なる位置に磁石4は配置される。
【0036】
このため、同一形状の従動歯車3を用いる場合において、大径ギア部21と小径ギア部22とのいずれに噛み合わせるかに応じて、複数の取付部から磁石取付部35を選択する必要がない。したがって、磁石4A、4Bの取り付けに誤りが生じることを確実に防止できる。
【0037】
端部32Aを下ケース3Cの取付基準面6に取り付けた従動歯車3Aでは、磁石取付部35Aの底部36Aが磁石4Aと取付基準面6との間に位置する。対して、端部31Bを下ケース3Cの取付基準面6に取り付けた従動歯車3Bでは、磁石取付部35Bの底部36Bが磁石4Bと磁気センサ5Aとの間に位置する。しかし、従動歯車3Bと磁石4Bとの間に位置する底部36Bは、磁気センサ5Aにより検知される磁石4Bの磁界には影響しない。
【0038】
また、底部36の端部32側の面において、貫通孔37の端部には角に面取りが施された切り欠き361(361A、361B)が設けられている。このため、取付基準面6に軸部33の他端側の端部31を接触させて配置し、底部36と磁気センサ5(5B)との距離が近づいた場合であっても従動歯車3と、磁気センサ5との干渉を防止することができる。また、切り欠き361と磁気センサ5とが接触しない範囲で、切り欠き361の内部に磁気センサ5の一部を挿入して配置することも可能であり、回転軸3S方向における製品の小型化に寄与することも可能である。また、後述する支持軸63が切り欠き361側から貫通孔に挿入される場合には、支持軸63のガイド部としても機能する。
【0039】
図3は、本の実施形態に係る回転角度検出センサ1の要部の構造を示す斜視図である。従動歯車3A、3B、磁石4A、4Bは同一であり、取り付け方向が違うのみであるため、同図では従動歯車3、磁石4と記す。同図に示すように、磁石4の形状は環である。そして、磁石4は、環の周方向に沿って異なる磁極が交互に並ぶように磁化されている。例えば、環の周方向に沿って、同じ大きさの二つの異なる磁極が並ぶ構成としてもよい。磁石4の環の中心4Cと従動歯車3の回転軸3Sとが一致するように、軸部33における磁石取付部35の内周面351もしくは外周面352に磁石4が配置される。
【0040】
磁石4を環状にすることで、従動歯車3における回転軸3Sに磁石4の中心4Cを配置することが容易になる。また、従動歯車3を軸支する、取付基準面6から突出する支持軸63(
図2A参照)を磁石4の中心開口に挿通させることができる。より詳細には、支持軸63が挿入された従動歯車3の壁部38(
図2B参照)を磁石4の中心開口に挿通させることができる。これにより仮に磁石4が平板状であった場合に比べて、支持軸63を中心開口に挿入する長さの分だけ支持軸63を長くすることができるから、従動歯車3を安定して軸支できる。磁石の中心4Cとは、回転軸3S方向から見たときの磁石4の外形の中心、かつ回転軸3S方向の中心をいう。
【0041】
また、磁石4は、回転軸3Sに沿った方向から見たときの外周形状もしくは内周形状が多角形状である。そして、回転軸3Sに沿った方向から見たときに、磁石取付部35の内周面351の形状は、磁石4の外周41を係止可能な形状である。したがって、従動歯車3に対する磁石4の位置決めが容易になる。また、従動歯車3に対する磁石4の回転止めもされるので、従動歯車3の回転に伴って磁石4を回転させることができる。
図3に示す磁石取付部35は、内周面351の内周形状が磁石4の外周41を係止可能な形状であるが、外周面352の外周形状が磁石4の内周42を係止可能な形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば車両のステアリング軸等のような複数回転可能な部品の回転角度の検出に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 :回転角度検出センサ
2 :主動歯車
2S :回転軸
3、3A、3B:従動歯車
3S、3SA、3SB:回転軸
4、4A、4B:磁石
4C、4CA、4CB:中心
5、5A、5B:磁気センサ
6 :取付基準面
60 :ケース
61 :上ケース
62 :下ケース
63 :支持軸
21 :大径ギア部
22 :小径ギア部
31、31A、31B:端部
32、32A、32B:端部
33、33A、33B:軸部
34、34A、34B:フランジ部
341、341A、341B:ギア歯
35、35A、35B:磁石取付部
351:内周面
352:外周面
36、36A、36B:底部
361、361A、361B:切り欠き
37、37A、37B:貫通孔
38、38A、38B:壁部
41 :外周
42 :内周
100 :回転角度検出センサ
103 :従動歯車
103S :回転軸
131 :端部
132 :端部
133 :軸部
134 :フランジ部
1341 :ギア歯
135 :磁石取付部
C :中点位置
L1、L2、L3、L4:距離
P1 :第1平面
P2 :第2平面