(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106911
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】加熱収縮装置
(51)【国際特許分類】
B65B 53/02 20060101AFI20230726BHJP
B65B 53/00 20060101ALI20230726BHJP
B65B 53/04 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B65B53/02 D
B65B53/00 M
B65B53/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007916
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄治
(72)【発明者】
【氏名】河内 康行
(57)【要約】
【課題】加熱トンネルの安全性およびメンテナンス性を改善する。
【解決手段】本発明の一態様に係る熱収縮装置は、ラベルが被覆された容器を移送するロータリー移送部の移送路(2a)に覆設され、複数のゾーン(Z1~Z4)を有する加熱トンネル(3)を含み、加熱トンネル(3)がゾーン(Z1~Z4)ごとに昇降可能になっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムが被覆された物品を移送する移送部と、
前記移送部の移送路に覆設され、異なる温度に調整される複数のゾーンを有する加熱トンネルと、
前記ゾーンごとに前記加熱トンネルを昇降させる昇降部と、
を備える、加熱収縮装置。
【請求項2】
前記加熱トンネルは、前記フィルムを加熱する熱媒を噴射する噴射部を有する加熱炉を含み、該加熱炉が前記移送路に沿って複数連なって構成され、
前記ゾーンは、前記複数の加熱炉のうちの一部が連結されて構成される、請求項1に記載の加熱収縮装置。
【請求項3】
前記加熱トンネルは、
前記移送部により移送される前記物品を挟んで炉幅方向に対向する一対の炉壁と、
前記一対の炉壁の各々に配置され、前記フィルムを加熱する熱媒を噴射する噴射部と、をさらに備え、
前記噴射部は、前記炉幅方向における互いの間隔が変更可能に構成される、請求項1に記載の加熱収縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に被覆されたフィルム(シュリンクフィルム等)を加熱収縮させる加熱収縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PETボトル等の容器に被覆されたシュリンクフィルムから成るラベル(熱収縮性ラベル)を加熱収縮させて、該ラベルを容器に密着させる加熱収縮装置が知られている。この種の加熱収縮装置に関し、特許文献1および2には、コンベアに沿って覆設され、異なる温度に調整される複数のゾーンを有する加熱トンネルを備える加熱収縮装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-329933号公報
【特許文献2】特開2021-4064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術では、例えば加熱トンネル内で容器が詰まった場合、加熱トンネルの出入口または観察窓から作業者が手を差し入れて容器を取り出す必要性があり、安全性に課題があった。また、加熱トンネル内をメンテナンスする場合、加熱トンネル全体を取り外す必要性があり、メンテナンス性に課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、加熱トンネルの安全性およびメンテナンス性を改善した加熱収縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱収縮装置は、フィルムが被覆された物品を移送する移送部と、前記移送部の移送路に覆設され、異なる温度に調整される複数のゾーンを有する加熱トンネルと、前記ゾーンごとに前記加熱トンネルを昇降させる昇降部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
前記発明の一態様によれば、加熱トンネルの安全性およびメンテナンス性を改善した加熱収縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱収縮装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】前記加熱収縮装置の内部構成を説明するための上面図である。
【
図3】
図2示されるロータリー移送部が備える容器保持部を示す側面図である。
【
図4】
図2に示される加熱トンネルを示す斜視図である。
【
図5】
図4に示される複数のゾーンのうち本加熱ゾーンだけを上昇させた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示される枠囲み領域を示す断面図である。
【
図10】前記加熱収縮装置が備える飽和水蒸気配管を示す模式図である。
【
図11】前記加熱収縮装置が備える過熱水蒸気配管を示す模式図である。
【
図12】前記加熱収縮装置が備える排気機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る加熱収縮装置の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態では、シュリンクフィルム等の熱収縮性を有するフィルムから形成されるラベルを加熱収縮させて、PETボトル等の容器に密着させる加熱収縮装置の一例について説明する。なお、以下では、ラベルを加熱する熱媒として蒸気を用いるが、蒸気に代えて熱風等の他の熱媒を用いても良い。
【0011】
〔加熱収縮装置の概要〕
図1は、本発明の一実施形態に係る加熱収縮装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、加熱収縮装置1の内部構成を説明するための上面図である。なお、
図1では、
図2に示される一対のスターホイル11a・11bを省略している。
【0012】
加熱収縮装置1は、ロータリー式シュリンクトンネルである。加熱収縮装置1は、未収縮のラベルLが被覆された容器Bをロータリー移送部2に順次に供給し、容器Bが加熱トンネル3を通過する間にラベルLを加熱して容器Bに密着させる。
【0013】
加熱収縮装置1への容器Bの搬入および搬出は、一対のスターホイル11a・11bを介して行われる。一対のスターホイル11a・11bの各々は、その外周部に容器Bの周面を保持する凹部11cを有する。また、一対のスターホイル11a・11bの間には、容器Bの離脱を防ぎかつ容器Bの移送をガイドするように、スターホイル11a・11bに沿って湾曲した形状の一対のガイドパネル12a・12bが配置される。
【0014】
前工程で未収縮のラベルLが被覆された容器Bは、搬入側のスターホイル11aからロータリー移送部2へ引き渡され、加熱トンネル3を通過する間にラベルLが加熱収縮される。加熱トンネル3を通過した容器Bは、ロータリー移送部2から搬出側のスターホイル11bへ引き渡され、次工程へ移送される。
【0015】
本実施形態において、容器Bは、例えば、ブロー成形により形成されたポリエステル製のPETボトル等である。ただし、ラベルLが被覆される対象は容器Bに限定されず、ラベルLを巻き付けて使用される物品であれば良い。
【0016】
ラベルLは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC等から成るシュリンクフィルムにより形成される。ラベルLは、その両端を接合させることにより筒状に形成した後にロール状に巻き取り、このフィルムを繰り出しながら所定の長さに切断したものである。ラベルLは、前工程にて、図示しない開口装置により開口されて容器Bに被覆される。
【0017】
〔加熱収縮装置の構成〕
加熱収縮装置1は、ラベルLが被覆された容器Bを移送するロータリー移送部(移送部)2と、ロータリー移送部2の環状の移送路2aの一部を覆うように設けられる(覆設される)加熱トンネル3とを含む。加熱トンネル3は、複数の窓部41が設けられたカバー(トンネルカバー)4によって覆われており、カバー4はフレーム5の天板51に固定される。カバー4は、窓部41が設けられた外郭パネル42が上下方向へスライド可能に構成される。このため、外郭パネル42を下方へスライドさせることにより、カバー4の内部にアクセス可能になっている。
【0018】
また、加熱収縮装置1は、加熱トンネル3を上下方向へ昇降させる昇降部8を含む。加熱収縮装置1は、昇降部8として、第1昇降部8aと、第2昇降部8bと、第3昇降部8cと、第4昇降部8dとを含む。加熱収縮装置1は、これらの第1昇降部8a~第4昇降部8dを制御することにより、複数のゾーンZ1~Z4ごとに加熱トンネル3を個別に昇降させることができるようになっている(
図5参照)。
【0019】
(ロータリー移送部)
ロータリー移送部2は、容器Bを移送する回転式の移送装置である。ロータリー移送部2は、回動軸21と、回動軸21に軸設されたターンテーブル22と、ターンテーブル22の外縁部に沿って設けられた複数の容器保持部23とを含む。
【0020】
ロータリー移送部2は、回動軸21の回転に応じてターンテーブル22が回転することにより、複数の容器保持部23が回動軸21を中心に回動する。ロータリー移送部2では、容器保持部23が回動軸21を中心に回動するときの環状の円軌道が、容器Bの移送経路、つまりロータリー移送部2の移送路2aとなる。
【0021】
図3は、ロータリー移送部2が備える容器保持部23を示す側面図である。
図3に示すように、容器保持部23は、容器Bを上下から挟んで保持するようになっている。具体的には、容器保持部23は、容器Bを上方から保持する上部保持部材231と、容器Bを下方から保持する下部保持部材232とを備える。下部保持部材232には、モータ234と接続される回転シャフト233が連結される。モータ234によって回転シャフト233が回転することにより、下部保持部材232が上下方向へ昇降可能になっている。
【0022】
このように、下部保持部材232が昇降可能になっているため、上部保持部材231と下部保持部材232との間で容器Bを確実に挟持して、移送中の容器Bの脱落等を防止することができる。また、高さ方向の寸法が異なる容器Bを容器保持部23により保持することが可能となり、ロータリー移送部2の汎用性が向上する。
【0023】
(加熱トンネル)
加熱トンネル3は、ロータリー移送部2の移送路2aに覆設され、ラベルLを加熱するトンネル形状の加熱装置である。加熱トンネル3は、複数のゾーンZ1~Z4を有する。具体的には、加熱トンネル3は、容器Bに被覆されたラベルLを軟化させるために予備的に加熱する第1予備加熱ゾーンZ1および第2予備加熱ゾーンZ2と、ラベルLを熱収縮させてボトルBに密着させる本加熱ゾーンZ3と、ラベルLをボトルBに均一に密着させる仕上げゾーンZ4とを有する。第1予備加熱ゾーンZ1、第2予備加熱ゾーンZ2、本加熱ゾーンZ3および仕上げゾーンZ4の各ゾーンZ1~Z4は、容器Bの搬入側からこの順で配置される。
【0024】
第1および第2予備加熱ゾーンZ1・Z2と、本加熱ゾーンZ3と、仕上げゾーンZ4とは、互いに異なる温度に調整される。各ゾーンZ1~Z4は、例えば、第1および第2予備加熱ゾーンZ1・Z2、仕上げゾーンZ4、本加熱ゾーンZ3の順で、温度が高くなるように調整される。
【0025】
図4は、
図2に示される加熱トンネル3を示す斜視図である。
図4に示すように、加熱トンネル3は、12個のトンネル形状の加熱炉3a~3lを含み、これらの加熱炉3a~3lがロータリー移送部2の移送路2aに沿って円弧状に連なって構成される。つまり、隣り合う加熱炉3a~3l同士が互いに当接して隙間なく配置されることにより、移送路2aに沿った円弧状の加熱トンネル3が構成される。各ゾーンZ1~Z4は、12個の加熱炉3a~3lのうちの3個の加熱炉が連結されて構成される。具体的には、第1予備加熱ゾーンZ1は加熱炉3a~3cが連結されて構成され、第2予備加熱ゾーンZ2は加熱炉3d~3fが連結されて構成され、本加熱ゾーンZ3は加熱炉3g~3iが連結されて構成され、仕上げゾーンZ4は加熱炉3j~3lが連結されて構成される。
【0026】
図5は、
図4に示す複数のゾーンZ1~Z4のうち本加熱ゾーンZ3だけを上昇させた状態を示す斜視図である。加熱収縮装置1では、ゾーンZ1~Z4ごとに昇降部8が取り付けられている。このため、ゾーンZ1~Z4ごとに加熱トンネル3が個別に昇降可能になっている。従って、
図5に示すように、複数のゾーンZ1~Z4のうち、例えば本加熱ゾーンZ3だけを上昇させることが可能となる。
【0027】
図6は、
図4に示される加熱炉3hを示す斜視図である。なお、加熱炉3a~3lは、後述するノズル孔33の段数を除いて概ね同じ構成である。このため、以下では、加熱炉3hの構成を例に挙げて説明する。
【0028】
図6に示すように、加熱炉3hは、ロータリー移送部2の移送路2aに沿ったトンネル形状であり、一対の炉壁32の間に容器Bを通過させる本加熱ゾーンZ3が形成される。加熱炉3hには窓部31が設けられ、加熱炉3hの窓部31とカバー4の窓部41とを介して、加熱収縮装置1の外部から本加熱ゾーンZ3が視認可能である。これにより、ラベルLの収縮状態を目視で確認できるようになっている。
【0029】
加熱炉3hは、ロータリー移送部2の移送路2a、つまりロータリー移送部2により移送される容器Bを挟んで炉幅方向に対向する対向平面32a~32dを含む一対の炉壁32を含む。図示の例では、一対の炉壁32の各々は、移送路2aに沿って並ぶ4つの対向平面32a~32dを有する。一対の炉壁32が複数の対向平面32a~32dを含むことにより、環状の移送路2aに沿わせて一対の炉壁32を好適に配置することができる。
【0030】
また、加熱炉3hは、対向平面32a~32dの各々の平面に複数設けられ、ラベルLへ向けて蒸気を噴射するノズル孔(噴射部)33を含む。図示の例では、対向平面32a~32dの各々に、移送路2aに沿って並ぶ4つのノズル孔33の列が、上下方向(炉高方向)に4段ずつ設けられる。
【0031】
このように、加熱炉3hは、各対向平面32a~32dに複数のノズル孔33が設けられるため、容器Bの両側から蒸気を噴射することができる。従って、加熱炉3hによれば、容器Bの片側から蒸気を噴射する場合に比べて、ラベルLを効率的に加熱することができる。また、加熱炉3hは、一対の炉壁32が曲面ではなく平面で構成されるため、対向する2つの平面間で移送方向におけるノズル孔33の間隔を均等化し易くなる。従って、加熱炉3hによれば、ラベルLをより均一に加熱することができる。
【0032】
図7は、
図4に示される加熱炉3hの内部構造を示す断面図である。
図7に示すように、加熱炉3hの炉壁32の背面側、つまり炉壁32を挟んで本加熱ゾーンZ3とは反対側に、蒸気Sを流通させる蒸気流通室34と、ノズル孔33に連通する蒸気拡散室35とが設けられる。蒸気流通室34から蒸気拡散室35へ供給された蒸気Sは、蒸気拡散室35の底面35aに衝突して拡散した後、ノズル孔33から噴射される。これにより、各ノズル孔33からの蒸気Sの噴射量が概ね均等になり、ラベルLを均一に加熱することができる。
【0033】
なお、蒸気拡散室35の底面35aに、蒸気Sをより効率的に拡散するための拡散構造が設けられても良い。拡散構造としては、蒸気Sの拡散を促す構造物または底面35aの形状等が挙げられる。これにより、蒸気拡散室35においてより効率的に蒸気Sを拡散して、ラベルLをさらに均一に加熱することができる。
【0034】
表1は、各ゾーンZ1~Z4の熱媒の種類およびノズル段数を示す表である。
【表1】
表1に示すように、加熱収縮装置1では、第1予備加熱ゾーンZ1、第2予備加熱ゾーンZ2および仕上げゾーンZ4において、ラベルLに対して飽和水蒸気を噴射して、ラベルLを加熱収縮させる。一方、本加熱ゾーンZ3において、ラベルLに対して飽和水蒸気または過熱水蒸気を噴射して、ラベルLを加熱収縮させる。
【0035】
過熱水蒸気(100℃で蒸発した飽和水蒸気をさらに高温度に加熱した水蒸気)は、
(1)供給温度が100℃である飽和水蒸気とは異なり、供給温度を100℃以上に設定することができる。
【0036】
(2)加熱空気に比べて熱容量が大きいので、同一温度の加熱空気によって加熱する場合に比べて、被加熱物を急速に加熱することができる。
【0037】
(3)加熱空気の場合は対流によって熱伝達されるだけであるが、過熱水蒸気の場合は対流、放射および凝縮によって複合的に熱伝達される。しかも、対流による熱伝達も、加熱空気の10倍以上であるので、加熱空気に比べて、加熱効率が格段に優れているという特性を有している。
【0038】
このため、本加熱ゾーンZ3に供給する過熱水蒸気の供給温度を、各種ラベルLをそれぞれの限界収縮率まで熱収縮させるための熱収縮温度である100℃付近を大きく上回る温度、例えば、150℃以上200℃以下程度に設定しておくと、ラベルLが瞬時に限界収縮率まで熱収縮を起こす。これにより、同一温度の熱風によって加熱する場合または飽和水蒸気によって加熱する場合に比べて、効率的にラベルLを加熱することができる。従って、加熱収縮装置1の省スペース化を図ることが可能になると共に、飽和水蒸気によって加熱する場合に比べて蒸気供給量を少なくすることができる。
【0039】
また、表1に示すように、加熱収縮装置1では、第1予備加熱ゾーンZ1および第2予備加熱ゾーンZ2において、ノズル孔33の段数は1段であり、容器Bに被覆されたラベルLの下方側を加熱して、容器Bに対するラベルLの位置決めを行うようになっている。一方、本加熱ゾーンZ3および仕上げゾーンZ4において、ノズル孔33の段数は4段であり、容器Bに被覆されたラベルLの全体を加熱して、ラベルLを容器Bに密着させる。このように、各ゾーンZ1~Z4の作用・機能に応じて、熱媒の種類またはノズル孔33の段数等を適宜変更することが可能である。
【0040】
なお、加熱トンネル3は、炉幅方向におけるノズル孔33の間隔が変更可能になっていても良い。これにより、容器Bの寸法(径)等に合わせて炉幅方向におけるノズル孔33の間隔を所望の範囲に調整することが可能となり、ラベルLを効率的に加熱することができる。特に、過熱水蒸気を噴射してラベルLを熱収縮させる本加熱ゾーンZ3において炉幅方向におけるノズル孔33の間隔を所望の範囲に調整することにより、ラベルLの加熱効率を顕著に向上させることができる。
【0041】
炉幅方向におけるノズル孔33の間隔を変更する方法は特に限定されず、例えば、ノズル孔33が設けられた対向平面32a~32d単位で炉幅方向における間隔が変更可能になっていても良い。または、対向平面32a~32dを含む炉壁32単位で炉幅方向における間隔が変更可能になっていても良い。
【0042】
(昇降部)
昇降部8は、加熱トンネル3を昇降させる昇降機構である。昇降部8は、加熱トンネル3の上方に位置するフレーム5の天板51に固定されており、カバー4に形成される貫通孔を通って、その下端が加熱トンネル3の上壁に接続される。
【0043】
図8は、
図1に示される昇降部8を示す斜視図である。
図9は、
図8に示される枠囲み領域Rを示す断面図である。なお、
図8では、加熱トンネル3および昇降部8のみを図示している。
【0044】
図8に示すように、第1昇降部8aは、その下端が加熱炉3bの上壁に接続されており、第1予備加熱ゾーンZ1を構成する連結された加熱炉3a~3cを昇降させる。また、第2昇降部8bは、その下端が加熱炉3eの上壁に接続されており、第2予備加熱ゾーンZ2を構成する連結された加熱炉3d~3fを昇降させる。また、第3昇降部8cは、その下端が加熱炉3hの上壁に接続されており、本加熱ゾーンZ3を構成する連結された加熱炉3g~3iを昇降させる。さらに、第4昇降部8dは、その下端が加熱炉3kの上壁に接続されており、仕上げゾーンZ4を構成する連結された加熱炉3j~3lを昇降させる。
【0045】
このように、加熱収縮装置1では、第1昇降部8a~第4昇降部8dを制御することにより、複数のゾーンZ1~Z4ごとに加熱トンネル3を個別に昇降させることが可能になっている。
【0046】
これらの第1昇降部8a~第4昇降部8dは、概ね同じ構成である。このため、以下では、第1昇降部8aの構成を例に挙げて説明する。
【0047】
図8に示すように、第1昇降部8aは、加熱炉3bの上壁に接続される昇降ロッド81と、昇降ロッド81の周囲を覆うロッドカバー82と、昇降ロッド81を駆動させるモータ83とを備える。
【0048】
昇降ロッド81は、上下方向へ昇降する棒状部材である。本実施形態では、第1昇降部8aは、鉛直方向に互いに平行に配置された1対の昇降ロッド81を備える。これら一対の昇降ロッド81は、各々の下端が加熱炉3bの上壁に接続される。一対の昇降ロッド81がモータ83によって駆動されることにより、第1予備加熱ゾーンZ1が昇降可能になっている。
【0049】
ロッドカバー82は、昇降ロッド81の上端側を覆う筒状部材である。ロッドカバー82は、一対の昇降ロッド81の各々に設けられる。
図9に示すように、ロッドカバー82は、昇降ロッド81と同軸に設けられており、ロッドカバー82の内部を昇降ロッド81が軸方向へ移動(摺動)可能になっている。ロッドカバー82は、加熱トンネル3を覆うカバー4の上壁43に形成された貫通孔4aを通って配置されており、その周面82aには、該周面82aの周方向に延伸する環状のパッキン(シール部材)84が取り付けられている。このパッキン84が、カバー4の貫通孔4aとロッドカバー82の周面82aとの間に介在し、貫通孔4aと周面82aとに密着することにより、貫通孔4aからの蒸気の漏出を低減することができる。
【0050】
モータ83は、昇降ロッド81を駆動させる動力源である。モータ83は、フレーム5の天板51の上面に配置される。なお、本実施形態では、昇降部8として、モータ83を備える電動式の昇降機構を使用しているが、例えば油圧式の昇降機構等を使用しても良い。
【0051】
このように、加熱収縮装置1は、昇降部8として第1昇降部8a~第4昇降部8dを備え、複数のゾーンZ1~Z4ごとに個別に昇降可能になっている。このため、例えば高温の本加熱ゾーンZ3で容器Bが詰まった場合、本加熱ゾーンZ3だけを上昇させて、容器Bを取り出す、または容器Bを容器保持部23へ戻す等の作業を安全に行うことができる。
【0052】
また、加熱トンネル3内をメンテナンスする場合、従来のように加熱トンネル全体を取り外すことなく対象となるゾーンZ1~Z4だけを個別に上昇させることにより、加熱トンネル3のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0053】
さらに、例えば加熱トンネル3全体を上昇させる構成に比べて、上昇時の加熱トンネル3からの蒸気の漏出量が低減されるため、省電力化によりエネルギー効率を改善することができる。
【0054】
〔蒸気供給機構および排気機構〕
次に、加熱収縮装置1が備える蒸気供給機構および排気機構について説明する。
【0055】
(蒸気供給機構)
図10は、加熱収縮装置1が備える飽和水蒸気供給管61を示す模式図である。また、
図11は、加熱収縮装置1が備える過熱水蒸気供給管62を示す模式図である。
【0056】
加熱収縮装置1は、加熱トンネル3へ蒸気を供給する蒸気供給機構として、飽和水蒸気供給管61および過熱水蒸気供給管62を備える。飽和水蒸気供給管61および過熱水蒸気供給管62は、例えばフレーム5の天板51等に取り付けられ、加熱トンネル3に連結される。
【0057】
飽和水蒸気供給管61は、第1予備加熱ゾーンZ1、第2予備加熱ゾーンZ2および仕上げゾーンZ4へ飽和水蒸気を供給する配管である。過熱水蒸気供給管62は、本加熱ゾーンZ3へ過熱水蒸気を供給する配管である。
【0058】
図10に示すように、飽和水蒸気供給管61は、全開/全閉を切り替えるON/OFF弁63、蒸気の圧力を減少させる減圧弁64および蒸気の流量を調整する流量調整弁65を含む。飽和水蒸気供給管61へ供給された蒸気(飽和水蒸気)は、ON/OFF弁63および減圧弁64を経由し、流量調整弁65により流量が調整された後、第1予備加熱ゾーンZ1、第2予備加熱ゾーンZ2および仕上げゾーンZ4へ供給される。なお、加熱収縮装置1は、第1予備加熱ゾーンZ1、第2予備加熱ゾーンZ2および仕上げゾーンZ4ごとに、飽和水蒸気供給管61を備えていても良い。
【0059】
また、
図11に示すように、過熱水蒸気供給管62は、ON/OFF弁63、減圧弁64および蒸気を加熱するスーパーヒータ66を含む。過熱水蒸気供給管62へ供給された蒸気(飽和水蒸気)は、ON/OFF弁63および減圧弁64を経由し、スーパーヒータ66により加熱された後、本加熱ゾーンZ3へ過熱水蒸気として供給される。つまり、過熱水蒸気供給管62へ供給された蒸気は、スーパーヒータ66によって例えば150℃以上200℃以下程度に加熱され、過熱水蒸気となって本加熱ゾーンZ3へ供給される。これにより、本加熱ゾーンZ3において、ラベルLを効率的に加熱することができる。なお、過熱水蒸気供給管62に配置されるスーパーヒータ66は複数であっても良い。これにより、過熱水蒸気をより効率的に生成することができる。
【0060】
飽和水蒸気供給管61および過熱水蒸気供給管62の各々は、ON/OFF弁63を制御することにより、各ゾーンZ1~Z4への蒸気の供給/停止を切り替えることができる。従って、例えば移送中の容器Bが加熱トンネル3内で詰まった場合、加熱トンネル3への蒸気の供給を停止し、容器Bが詰まったゾーンを上昇させることで、詰まった容器Bを安全に取り出すことができる。
【0061】
なお、ON/OFF弁63、減圧弁64および流量調整弁65は、手動弁であっても良く、または自動弁であっても良い。また、本加熱ゾーンZ3および仕上げゾーンZ4において、ノズル孔33の段数に応じて流量が調整可能であっても良い。例えば本加熱ゾーンZ3において上下2段ずつで流量が調整可能であっても良く、または仕上げゾーンZ4において各段で流量が調整可能であっても良い。
【0062】
(排気機構)
図12は、加熱収縮装置1が備える排気機構7を示す斜視図である。
図12では、昇降部8を省略して図示している。
図12に示すように、排気機構7は、各ゾーンZ1~Z4の蒸気を排気する内排気管71と、カバー4内の空気を排気する外排気管72と、内排気管71および外排気管72が接続される集合管73と、集合管73からの排気を工場ダクトへ排出する中間ダクト74とを含む。集合管73と中間ダクト74との間には、ファン75が設けられる。排気機構7の各部は、例えばフレーム5の天板51等に取り付けられる。
【0063】
内排気管71は、加熱トンネル3の上部に連結され、各ゾーンZ1~Z4に連通する。内排気管71は、ノズル孔33から噴射された各ゾーンZ1~Z4の蒸気を吸引し、集合管73へ排出する。内排気管71は、各ゾーンZ1~Z4に対して1つずつ連結される。
【0064】
外排気管72は、カバー4の上部に連結され、カバー4内に連通する。外排気管72は、各ゾーンZ1~Z4からカバー4内へ漏れ出した蒸気、つまり加熱トンネル3とカバー4との間の空間に漏れ出した蒸気を吸引し、集合管73へ排出する。外排気管72は、カバー4に対して複数連結される。
【0065】
内排気管71および外排気管72の各々には、ダンパー76が設けられる。各ダンパー76を手動または自動で制御することにより、内排気管71および外排気管72の各々から排気量を調整することができる。
【0066】
集合管73には、内排気管71および外排気管72が連結される。加熱収縮装置1では2つの集合管73が設けられており、各々が内排気管71および外排気管72からの蒸気を中間ダクト74へ排出する。
【0067】
ファン75は、2つの集合管73と中間ダクト74との間に、各々設けられる。各ファン75を動作させることにより、内排気管71および外排気管72によって蒸気が吸引されると共に、中間ダクト74から工場ダクトへ蒸気が強制的に排出される。
【0068】
このように、排気機構7は独自のファン75を備えるため、従来のように工場ダクトに設けられたファンに依存することなく、蒸気を工場ダクトへ排出することができる。従って、加熱収縮装置1の安定した運転が可能となる。
【0069】
〔加熱収縮装置のまとめ〕
このように、本実施形態に係る加熱収縮装置1は、ラベルLが被覆された容器Bを移送するロータリー移送部2と、ロータリー移送部2の移送路2aに覆設され、異なる温度に調整される複数のゾーンZ1~Z4を有する加熱トンネル3と、ゾーンZ1~Z4ごとに加熱トンネル3を昇降させる昇降部8とを備える。
【0070】
加熱収縮装置1では、複数のゾーンZ1~Z4が個別に昇降可能になっているため、例えば高温の加熱トンネル3内で容器Bが詰まった際、該容器Bが詰まったゾーンだけを上昇させて容器Bを安全に取り出すことができる。また、加熱トンネル3内をメンテナンスする場合、従来のように加熱トンネル全体を取り外すことなくメンテナンスが必要なゾーンだけを上昇させて、加熱トンネル3のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0071】
従って、本実施形態によれば、加熱トンネル3の安全性およびメンテナンス性を改善した加熱収縮装置1を実現することができる。
【0072】
さらに、加熱収縮装置1では、例えば加熱トンネル3全体を上昇させる構成に比べて、上昇時の加熱トンネル3からの蒸気の漏出量が低減される。このため、省電力化によりエネルギー効率を改善することができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0073】
なお、加熱収縮装置1では、容器Bの両側から蒸気を噴射するため、容器Bを自転させながら移送しなくても良い。従って、ロータリー移送部2から容器Bの自転機構を省略することが可能であり、ロータリー移送部2の構造を簡略化することができる。ただし、ロータリー移送部2が、容器Bの自転機構を備えていても構わない。
【0074】
また、加熱収縮装置1では、容器Bを移送する移送部としてロータリー移送部2を使用しているが、容器Bを移送可能であれば、移送部の種類は特に限定されない。移送部として、例えばベルトコンベア、ローラコンベア等のライン状のコンベアを使用することも可能である。この場合、コンベアの移送路に覆設可能なように加熱トンネル3の形状を変更すれば良い。
【0075】
〔備考〕
本発明の態様1に係る加熱収縮装置は、フィルムが被覆された物品を移送する移送部と、前記移送部の移送路に覆設され、異なる温度に調整される複数のゾーンを有する加熱トンネルと、前記ゾーンごとに前記加熱トンネルを昇降させる昇降部と、を備える。
【0076】
前記構成では、複数のゾーンが個別に昇降可能になっているため、例えば高温の加熱トンネル内で物品が詰まった場合、該物品が詰まったゾーンだけを上昇させて物品を安全に取り出すことができる。また、加熱トンネル内をメンテナンスする場合、従来のように加熱トンネル全体を取り外すことなくメンテナンスが必要なゾーンだけを上昇させて、加熱トンネルのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0077】
従って、前記構成によれば、加熱トンネルの安全性およびメンテナンス性を改善することができる。
【0078】
本発明の態様2に係る加熱収縮装置では、前記態様1において、前記加熱トンネルは、前記フィルムを加熱する熱媒を噴射する噴射部を有する加熱炉を含み、該加熱炉が前記移送路に沿って複数連なって構成され、前記ゾーンは、前記複数の加熱炉のうちの一部が連結されて構成されていても良い。
【0079】
前記構成によれば、ゾーンを構成する連結された加熱炉単位で、加熱トンネルを昇降させることができる。
【0080】
本発明の態様3に係る加熱収縮装置では、前記態様1または2において、前記加熱トンネルは、前記移送部により移送される前記物品を挟んで炉幅方向に対向する一対の炉壁と、前記一対の炉壁の各々に配置され、前記フィルムを加熱する熱媒を噴射する噴射部と、をさらに備え、前記噴射部は、前記炉幅方向における互いの間隔が変更可能に構成されていても良い。
【0081】
前記構成によれば、物品の寸法(径)等に合わせて炉幅方向における噴射部の間隔を所望の範囲に調整することが可能となり、フィルムを効率的に加熱することができる。
【0082】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 加熱収縮装置
2 ロータリー移送部(移送部)
2a 移送路
3 加熱トンネル
3a~3l 加熱炉
8 昇降部
8a~8d 第1~第4昇降部(昇降部)
32 炉壁
33 ノズル孔(噴射部)
B 容器(物品)
L ラベル(フィルム)
S 蒸気(熱媒)
Z1 第1予備加熱ゾーン(ゾーン)
Z2 第2予備加熱ゾーン(ゾーン)
Z3 本加熱ゾーン(ゾーン)
Z4 仕上げゾーン(ゾーン)