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特開2023-106918電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム
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  • 特開-電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106918
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20230726BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230726BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J1/00 306K
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007928
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 斗生
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165CA02
5G165CA05
5G165DA01
5G165DA07
5G165EA02
5G165EA03
5G165GA04
5G165JA09
5G165LA02
5G503AA04
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503EA05
5G503GB03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電源装置間の充放電による損失を抑えられるように電源装置を制御する。
【解決手段】制御装置6は、蓄電装置5の蓄電残量と比較するための第1基準値C1および第2基準値C2を設定する基準値設定部62と、電源装置1の充放電を制御する充放電制御部63と、を有する。充放電制御部63は、蓄電残量が第1基準値C1以上である場合、DCグリッド7に放電させる放電ステップを実行し、蓄電残量が第1基準値C1未満である場合に、DCグリッド7から蓄電装置5への充電を開始させる非放電ステップを実行するように構成される。非放電ステップでは、充電速度が所定値未満であり、かつ、蓄電残量が第2基準値C2以上第1基準値C1未満である場合に、充電を停止させ、充電速度が所定値未満であり、かつ、蓄電残量が第2基準値C2未満である場合、充電速度が所定値以上になるまで、第2基準値C2を減少させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置の制御方法であって、
前記蓄電装置の蓄電残量と比較するための第1基準値および第2基準値を設定する基準値設定ステップと、
前記電源装置の充放電を制御する充放電制御ステップと、
を有し、
前記充放電制御ステップは、
前記蓄電残量が前記第1基準値以上である場合、前記線路に放電させる放電ステップと、
前記蓄電残量が前記第1基準値未満である場合に、前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる非放電ステップと、
を有し、
前記非放電ステップでは、
前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値以上前記第1基準値未満である場合に、前記充電を停止させ、
前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値未満である場合、前記充電速度が所定値以上になるまで、前記第2基準値を減少させる、制御方法。
【請求項2】
前記非放電ステップは、
前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる開始ステップと、
前記充電の充電速度を所定値と比較する比較ステップと、
前記充電速度が前記所定値以上である場合、前記充電を継続させる継続ステップと、
前記充電速度が前記所定値未満である場合、前記第2基準値を減少させる減少ステップと、
前記蓄電残量が減少後の前記第2基準値以上である場合、前記充電を停止させる停止ステップと、
を有し、
前記蓄電残量が減少後の前記第2基準値未満である場合、前記比較ステップへ移行する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記停止ステップにおいて、前記充電を停止させる期間は、前記蓄電残量が多いほど長い、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記停止ステップの後に、前記第2基準値を前記基準値設定ステップにおける設定値にリセットして、前記開始ステップへ移行する、請求項2または3に記載の制御方法。
【請求項5】
蓄電装置を備え、線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御装置であって、
前記蓄電装置の蓄電残量と比較するための第1基準値および第2基準値を設定する基準値設定部と、
前記電源装置の充放電を制御する充放電制御部と、
を有し、
前記充放電制御部は、
前記蓄電残量が前記第1基準値以上である場合、前記線路に放電させる放電ステップを実行し、
前記蓄電残量が前記第1基準値未満である場合に、前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる非放電ステップを実行するように構成され、
前記非放電ステップでは、
前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値以上前記第1基準値未満である場合に、前記充電を停止させ、
前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値未満である場合、前記充電速度が所定値以上になるまで、前記第2基準値を減少させる、制御装置。
【請求項6】
蓄電装置と、
請求項5に記載の制御装置を備えた電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置を複数備え、
前記電源装置は前記線路を介して互いに接続されている、配電システム。
【請求項8】
蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御プログラムであって、
前記蓄電装置の蓄電残量と比較するための第1基準値および第2基準値を設定する基準値設定ステップと、
前記電源装置の充放電を制御する充放電制御ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記充放電制御ステップは、
前記蓄電残量が前記第1基準値以上である場合、前記線路に放電させる放電ステップと、
前記蓄電残量が前記第1基準値未満である場合に、前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる非放電ステップと、
を有し、
前記非放電ステップでは、
前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値以上前記第1基準値未満である場合に、前記充電を停止させ、
前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値未満である場合、前記充電速度が所定値以上になるまで、前記第2基準値を減少させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を備えた電源装置間の電力融通に関し、特に、オフグリッドでの電源装置間の電力融通に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自然エネルギーを活用しながら、一定の地域において電力負荷を分散型電源から供給する、マイクログリッドシステムと呼ばれる電力系統が導入されている。このようなシステムでは、蓄電装置およびDC/DCコンバータを備えた複数の電源装置が線路を介して接続されており、蓄電残量の多い装置から蓄電残量の少ない装置へ電力融通がなされる。
【0003】
蓄電残量の少ない装置への充電電力が小さい場合、充電電力に対するDC/DCコンバータの消費電力の比率が高くなり、電力融通の効率が低下する。これに対し、特許文献1には、線路の電圧が上昇して充電開始閾値以上になると充電動作を開始させ、線路の電圧が下降して充電停止閾値以下になると充電動作を停止させ、線路の電圧が下降して放電開始閾値以下になると放電動作を開始させ、線路の電圧が上昇して放電停止閾値以上になると放電動作を停止させるように装置を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-85892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来技術では、各装置が交流系統(グリッド)に接続されている。しかし、例えば未電化地域において、交流系統に接続されないオフグリッドで装置間の電力融通を行う場合、放電を行う装置の数および充電を行う装置の数が一定ではないため、特定の閾値電圧を設定するだけで損失の少ない充放電を実現することは難しい。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、電源装置間の充放電による損失を抑えられるように電源装置を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置の制御方法であって、前記蓄電装置の蓄電残量と比較するための第1基準値および第2基準値を設定する基準値設定ステップと、前記電源装置の充放電を制御する充放電制御ステップと、を有し、前記充放電制御ステップは、前記蓄電残量が前記第1基準値以上である場合、前記線路に放電させる放電ステップと、前記蓄電残量が前記第1基準値未満である場合に、前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる非放電ステップと、を有し、前記非放電ステップでは、前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値以上前記第1基準値未満である場合に、前記充電を停止させ、前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値未満である場合、前記充電速度が所定値以上になるまで、前記第2基準値を減少させる。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、蓄電装置を備え、線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御装置であって、前記蓄電装置の蓄電残量と比較するための第1基準値および第2基準値を設定する基準値設定部と、前記電源装置の充放電を制御する充放電制御部と、を有し、前記充放電制御部は、前記蓄電残量が前記第1基準値以上である場合、前記線路に放電させる放電ステップを実行し、前記蓄電残量が前記第1基準値未満である場合に、前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる非放電ステップを実行するように構成され、前記非放電ステップでは、前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値以上前記第1基準値未満である場合に、前記充電を停止させ、前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値未満である場合、前記充電速度が所定値以上になるまで、前記第2基準値を減少させる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御プログラムは、蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御プログラムであって、前記蓄電装置の蓄電残量と比較するための第1基準値および第2基準値を設定する基準値設定ステップと、前記電源装置の充放電を制御する充放電制御ステップと、をコンピュータに実行させ、前記充放電制御ステップは、前記蓄電残量が前記第1基準値以上である場合、前記線路に放電させる放電ステップと、前記蓄電残量が前記第1基準値未満である場合に、前記線路から前記蓄電装置への充電を開始させる非放電ステップと、を有し、前記非放電ステップでは、前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値以上前記第1基準値未満である場合に、前記充電を停止させ、前記充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、前記蓄電残量が前記第2基準値未満である場合、前記充電速度が所定値以上になるまで、前記第2基準値を減少させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源装置間の充放電による損失を抑えられるように電源装置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る直流配電システムの構成を示すブロック図である。
図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】制御装置による電源装置の制御方法のフローを示すフローチャートである。
図4】蓄電残量と制御装置による制御との対応関係の変遷を示すグラフである。
図5】各電源装置への充電電流を示すグラフである。
図6】電源装置間における電流の方向を示す概略図である。
図7】制御期間中における各電源装置の状態、待機領域、および充放電による損失を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(システム構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る直流配電システム100の構成を示すブロック図である。直流配電システム100は、複数の電源装置(以下、装置)1を備え、装置1はDCグリッド(線路)7を介して互いに接続されている。DCグリッド7は、交流電源系統に接続されないオフグリッドである。各装置1は、発電機能および蓄電機能を有しており、各装置1が充放電を行うことにより、装置1間の電力融通が行われる。
【0014】
本実施形態では、装置1として装置1-0~1-3の4つが設けられているが、その個数は特に限定されない。また、直流配電システム100は、電源装置以外の装置を含んでもよい。装置1-0~1-3の各々の構成は互いに異なってもよいが、本実施形態では互いに同一である。以下、装置1-0~1-3を互いに区別しない場合は、単に装置1と記載する。
【0015】
装置1は、双方向DC/DCコンバータ2と、負荷3と、発電装置4と、蓄電装置5と、制御装置6とを備えている。
【0016】
双方向DC/DCコンバータ2は、DCグリッド(線路)7に接続されており、本実施形態では、DCグリッド7からの電力を250Vに変換して負荷3および/または蓄電装置5に供給し、発電装置4および/または蓄電装置5からの電力を300Vに変換してDCグリッド7に供給する。
【0017】
発電装置4は、本実施形態では、ソーラーパネルなどの自然エネルギーを利用した発電装置である。なお、発電装置4は、燃料を用いて発電する発電機であってもよい。
【0018】
蓄電装置5としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
【0019】
制御装置6は、装置1を制御するコンピュータであり、特に、装置1と他の装置1との間の充放電を制御する機能を有している。
【0020】
図2は、制御装置6の構成を示すブロック図である。制御装置6は、残量検出部61と、基準値設定部62と、充放電制御部63と、充電速度検出部64と、負荷制御部65とを備えている。これらの各機能ブロックは、制御装置6のCPUなどのプロセッサ(不図示)が所定の制御プログラムを主記憶装置(不図示)に読み出して実行することによってソフトウェア的に実現される。制御プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介して制御装置6にダウンロードしてもよいし、CD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に制御プログラムを記録しておき、当該記録媒体を介して制御装置6にインストールしてもよい。
【0021】
(制御手順)
以下、制御装置6の動作を説明する。図3は、制御装置6による装置1の制御方法のフローを示すフローチャートである。
【0022】
ステップS1:残量検出部61が、蓄電装置5の蓄電残量(state of charge:SOC)を検出する。なお、本実施形態では、蓄電残量は百分率(%)で表される。
【0023】
ステップS2(基準値設定ステップ):基準値設定部62が、SOCと比較するための第1基準値C1、第2基準値C2および第3基準値C3を設定する。基準値C1~C3の値は、C1≧C2>C3であれば特に限定されず、本実施形態では、C1=60、C2=60、C3=30に設定される。
【0024】
第1基準値C1は、DCグリッド7への放電を行うか、蓄電装置5への充電を行うかを決定するための基準値であり、第3基準値C3は、装置1の動作を停止させるか否かを決定するための基準値である。第1基準値C1および第3基準値C3は、制御動作中において不変である。
【0025】
一方、第2基準値C2は、制御動作中において可変であり、蓄電装置5への充電を開始し、かつ所定の条件を満たす場合に、充電を停止するか否かを決定するための基準値である。初期設定時は、第2基準値C2は第1基準値C1と同じ、または第1基準値C1より若干小さい。
【0026】
なお、ステップS1とステップS2の順序は特に限定されない。また、基準値C1~C3は、装置1の制御開始前にあらかじめ設定されていてもよく、その場合、ステップS2は省略される。後述するように、第3基準値C3の設定は必須ではない。
【0027】
ステップS3:充放電制御部63がSOCを第1基準値C1と比較する。ステップS3以下の各ステップは、特許請求の範囲の充放電制御ステップに対応するものであり、主に、充放電制御部63によって実行される。充放電制御ステップは、SOCが第1基準値C1以上である場合(ステップS3においてYES)に実行される放電ステップと、SOCが第1基準値C1未満である場合(ステップS3においてNO)に実行される非放電ステップとを有する。
【0028】
ステップS4(放電ステップ):SOCが第1基準値C1以上である場合(ステップS3においてYES)、充放電制御部63が双方向DC/DCコンバータ2を制御して、装置1からDCグリッド7に放電させる。
【0029】
非放電ステップでは、概略的には、充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、SOCが第2基準値C2以上第1基準値C1未満である場合に、充電を停止させ、充電の充電速度が所定値未満であり、かつ、SOCが第2基準値C2未満である場合、充電速度が所定値以上になるまで、第2基準値C2を減少させる。具体的には、非放電ステップは、以下のステップS5~S17を有する。
【0030】
ステップS5:SOCが第1基準値C1未満である場合(ステップS3においてNO)、充放電制御部63がSOCを第3基準値C3と比較する。なお、第3基準値C3が設定されない場合、ステップS5は省略される。
【0031】
ステップS6(開始ステップ):SOCが第1基準値C1未満第3基準値C3以上である場合(ステップSにおいてYES)、充放電制御部63がDCグリッド7から蓄電装置5への充電を開始させる。
【0032】
ステップS7(比較ステップ):充電速度検出部64が充電速度を検出し、充放電制御部63が充電速度を所定値と比較する。本実施形態では、充電速度検出部64は充電速度として充電電流Iinを検出する。また、充電速度と比較される所定値として、閾値電流Ithが設定されている。
【0033】
閾値電流Ithは、効率の高い充電を行うために十分な電流の下限であり、双方向DC/DCコンバータ2の稼働電力等に応じて適宜設定される。本実施形態では、閾値電流Ithは、1つの装置1からの放電電流Ioutよりも小さく放電電流Ioutの1/2よりも大きい値に設定される。例えば、DCグリッド7の電圧が300Vで、双方向DC/DCコンバータ2の稼働電力が100Wであり、かつ、充電電力が当該稼働電力の3倍(300W)であれば効率が高いと判断される場合は、Ith=300W/300V=1.0Aに設定される。
【0034】
ステップS8(継続ステップ):充電速度が前記所定値以上である場合(ステップS7においてYES)、すなわち、充電効率が高いと判断される場合は、充放電制御部63は装置1への充電を継続させる。
【0035】
ステップS9:充電速度が前記所定値未満である場合(ステップS7においてNO)、すなわち、充電効率が低いと判断される場合は、充放電制御部63が第2基準値C2を第3基準値C3と比較する。制御開始後、初めてステップS9を実行する場合は、C2>C3であるため、必ずステップS10に移行する。
【0036】
ステップS10(減少ステップ):C2>C3である場合(ステップS9においてYES)、充放電制御部63が第2基準値C2を減少させる。減少幅は、特に限定されないが、本実施形態では、第2基準値C2を5だけ減少させる。制御開始後、初めてステップS10を実行する場合は、第2基準値C2は60から55に減少する。
【0037】
ステップS11:充放電制御部63がSOCを減少後の第2基準値C2と比較する。
【0038】
ステップS12(停止ステップ):SOCが第2基準値C2以上である場合(ステップS11においてYES)、充放電制御部63が装置1への充電を所定期間停止(待機)させる。充電を停止させる期間(待機期間)は特に限定されないが、SOCが多いほど長いことが好ましい。
【0039】
一方、SOCが減少後の第2基準値C2未満である場合(ステップS11においてNO)、ステップS7に移行して、SOCが第2基準値C2以上になるまで、ステップS7~S10を繰り返す。
【0040】
ステップS13:充放電制御部63が充電停止後、待機期間を経過したかを監視する。
【0041】
ステップS14:待機期間が経過した場合(ステップS13においてYES)、充放電制御部63は、第2基準値C2をステップS2における設定値(初期値)にリセットし、ステップS6に移行する。
【0042】
ステップS15:ステップS8において充電が継続された場合、および、ステップS9において第2基準値C2が第3基準値C3以下であった場合(ステップS9においてNO)、充放電制御部63は、第2基準値C2をステップS2における設定値にリセットし、ステップS3に移行する。
【0043】
ステップS16:ステップS5において、SOCが第3基準値C3未満である場合、装置1の動作を停止させる。具体的には、充放電制御部63が双方向DC/DCコンバータ2の動作を停止させるとともに、負荷制御部65が負荷3の動作を停止させる。これにより、装置1では、発電装置4から蓄電装置5への充電動作のみが行われる。
【0044】
ステップS17:引き続き、充放電制御部63がSOCを第3基準値C3と比較し、SOCが第3基準値C3以上になった場合、ステップS5に移行する。
【0045】
なお、第3基準値C3の値は、装置1を正しい手順で停止させる間の、装置1の稼働に必要な電力に相当する蓄電残量に設定される。SOCが第3基準値C3未満である場合に装置1の動作を停止させることにより、予期せぬシャットダウンを防ぐことができる。第3基準値C3の設定は必須ではなく、第3基準値C3が設定されない場合、ステップS16およびS17は省略される。
【0046】
(損失の抑制効果)
図1に示す各装置1の制御装置6は、それぞれ独立して上記の制御を行う。これにより、以下、図3図7を参照して説明するように、SOCの少ない装置1への充電が優先的に行われ、システム全体で充放電による損失を抑えることができる。
【0047】
以下の説明では、装置1-0におけるSOC(SOC0とする)が90%であり、装置1-1におけるSOC(SOC1とする)が35%であり、装置1-2におけるSOC(SOC2とする)が51%であり、装置1-3におけるSOC(SOC3とする)が57%であるとする。各装置1のSOCは時間とともに変化するが、動作説明の簡略化のため、各装置は同時に起動し、時間の経過とともにSOCは変動しないものとする。
【0048】
図4は、SOCと制御装置6による制御との対応関係の変遷を示すグラフであり、図5は、各装置1-1~1-3への充電電流を示すグラフであり、図6は、装置1-0~1-3間における電流の方向を示す概略図である。
【0049】
制御開始直後の初期状態では、C1=C2=60、C3=30に設定されるため、図4に示すように、各装置1は、SOC≧60であれば放電を行い、60>SOC≧30であれば充電を行い、SCO<30であれば動作を停止するように制御される。ここで、SOC0=90、SOC1=35、SOC2=51、SOC3=57であるため、図3におけるステップS3において、装置1-0では放電が開始され、装置1-1~1-3では、ステップS5を経てステップS6に移行し、充電が開始される。この時点を時間t0とする。
【0050】
装置1-1~1-3は装置1-0に対して並列接続されているため、図6(a)に示すように、装置1-0からの放電電流Ioutは、3つの充電電流Iin1、Iin2、Iin3に分岐して装置1-1、1-2、1-3にそれぞれ出力される。このとき、充電電流Iin1、Iin2、Iin3の各々は、放電電流Ioutの1/3であり、閾値電流Ithよりも小さい。
【0051】
そのため、装置1-1~1-3では、ステップS7からステップS9を経てステップS10に移行し、第2基準値C2が60から55に減少する。これにより、装置1-1~1-3では、図4の「1回目」に示すように、C2≦SOC<C1、すなわち55≦SOC<60であれば充電を停止(待機)するように制御される。ここで、SOC1=35、SOC2=51、SOC3=57であるため、装置1-3のみ、ステップS11において、SOC≧C2を満たし、ステップS12において、充電が停止される。この時点を時間t1とする。
【0052】
一方、装置1-1、1-2では、SOC<C2であるため、ステップS11からステップS7に移行する。装置1-3への充電が停止されたことにより、図6(b)に示すように、装置1-0からの放電電流Ioutは、2つの充電電流Iin1’、Iin2’に分岐して装置1-1、1-2にそれぞれ出力される。このとき、充電電流Iin1’、Iin2’の各々は、放電電流Ioutの1/2であり、充電電流Iin1、Iin2よりも大きいが、依然として閾値電流Ithよりも小さい。
【0053】
そのため、装置1-1、1-2では、再度、ステップS7からステップS9を経てステップS10に移行し、第2基準値C2が55から50に減少する。これにより、装置1-1、1-2では、図4の「2回目」に示すように、50≦SOC<60であれば待機するように制御される。ここで、SOC1=35、SOC2=51であるため、装置1-2のみ、ステップS11においてSOC≧C2を満たし、ステップS12において充電が停止される。この時点を時間t2とする。
【0054】
一方、装置1-1では、SOC<C2であるため、ステップS11からステップS7に移行する。装置1-3に加え装置1-2への充電が停止されたことにより、図6(c)に示すように、装置1-0からの放電電流Ioutは、そのまま充電電流Iin1”として装置1-1に出力される。このとき、充電電流Iin1”は放電電流Ioutと等しく、閾値電流Ithよりも大きい。
【0055】
そのため、装置1-1では、ステップS7からステップS8に移行し、充電が継続され、ステップS9において、第2基準値C2が60%にリセットされる。本実施形態では、各装置のSOCは変動しないと仮定しているため、装置1-2、1-3の少なくともいずれかが待機状態から復帰するまで(ステップS13においてYES)、装置1-0から装置1-1のみへ充電される状態が継続する。
【0056】
本実施形態では、充電を停止させる期間(待機期間)は、SOCが多いほど長いため、装置1-2が装置1-3よりも先に復帰する。この時点を時間t3とする。
【0057】
装置1-2では、ステップS14において、第2基準値C2が初期値である60にリセットされ、ステップS6に移行し、充電が再び開始される。これにより、図6(b)に示すように、再び、装置1-0から2つの装置1-1、1-2へ充電される状態となるため、装置1-1、1-2への充電電流Iin1’、Iin2’が閾値電流Ithよりも小さくなる。
【0058】
そのため、装置1-1、1-2では、再度、ステップS7からステップS9を経てステップS10に移行し、第2基準値C2が60から55に減少する。これにより、装置1-1、1-2では、図4の「1回目」に示すように、55≦SOC<60であれば待機するように制御される。ここで、SOC1=35、SOC2=51であるため、装置1-1、1-2のいずれにおいても、ステップS11において、SOC≧C2を満たさず、充電は停止されない。この時点を時間t4とする。
【0059】
その後、装置1-1、1-2では、ステップS11からステップS7に移行し、さらに、ステップS9を経てステップS10に移行し、第2基準値C2が55から50に減少する。これにより、装置1-1、1-2では、図4の「2回目」に示すように、50≦SOC<60であれば待機するように制御される。ここで、SOC1=35、SOC2=51であるため、装置1-2のみ、ステップS11においてSOC≧C2を満たし、ステップS12において充電が停止され、図6(c)に示すように、装置1-1のみに充電される。この時点を時間t5とする。
【0060】
その後、装置1-3が待機状態から復帰する。この時点を時間t6とする。
【0061】
装置1-3では、ステップS14において、第2基準値C2が初期値である60にリセットされ、ステップS6に移行し、充電が再び開始される。これにより、図6(d)に示すように、装置1-0から2つの装置1-1、1-3へ充電される状態となるため、装置1-1、1-3への充電電流Iin1’、Iin3’が閾値電流Ithよりも小さくなる。
【0062】
そのため、装置1-1、1-3では、再度、ステップS7からステップS9を経てステップS10に移行し、第2基準値C2が60から55に減少する。これにより、装置1-1、1-3では、図4の「1回目」に示すように、55≦SOC<60であれば待機するように制御される。ここで、SOC1=35、SOC3=57であるため、装置1-3のみ、ステップS11においてSOC≧C2を満たし、ステップS12において充電が停止され、図6(c)に示すように、装置1-1のみに充電される。この時点を時間t7とする。この状態は、時間t8において、装置1-2が待機状態から復帰するまで継続する。
【0063】
図7は、制御期間中における各装置1-1~1-3の状態、待機領域、および充放電による損失を示す表である。ここで、期間T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8はそれぞれ、図6における時間t0~t1、t1~t2、t2~t3、t3~t4、t4~t5、t5~t6、t6~t7、t7~t8の各期間である。また、待機領域とは、充電を停止させる条件を満たすSOCの範囲を意味する。
【0064】
期間T1では、装置1-1~1-3の全てに対して充電が行われるため、装置1-1~1-3の各双方向DC/DCコンバータ2が動作することになる。すなわち、充放電によって3つの双方向DC/DCコンバータの消費電力が発生するため、損失が大きくなる。
【0065】
一方、期間T2、T4、T5、T7では、装置1-1~1-3のうち2つに対して充電が行われるため、充放電による損失は、2つの双方向DC/DCコンバータの消費電力に抑えられる。さらに、期間T3、T6、T8では、装置1-1に対してのみ充電が行われるため、充放電による損失は、1つの双方向DC/DCコンバータの消費電力に抑えられる。
【0066】
このように、本実施形態では、充電電流(充電速度)が所定値以上になるまで第2基準値C2を減少させて、第1基準値C1および第2基準値C2によって画定される待機領域を拡大させる。これにより、SOCの多い装置ほど早いタイミングで待機状態になり、SOCの少ない装置への充電が優先的に行われる。その結果、充電が行われる装置の数を減らして、システム全体で充放電による損失を抑えることが可能となり、効率的な電力融通が実現される。さらに、装置1の待機期間をSOCが多いほど長くすることにより、SOCの少ない装置へより優先的に充電することできる。
【0067】
また、本実施形態では、各装置1の制御装置6は、他の制御装置6と連携せずに自律的に充放電制御を行うため、一部の装置1において制御装置6が機能しなくなった場合でも、システム全体では装置1間の充放電制御を継続させることができる。
【0068】
なお、第2基準値C2が不変であると仮定すると、SOCが第2基準値C2未満の装置が多く、各装置への充電速度が小さい場合であっても、待機領域が拡大せずにSOCが比較的大きい装置への充電が停止されず、損失が大きい状態が継続することとなる。
【0069】
(付記事項)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、1-0~1-3 装置(電源装置)
2 双方向DC/DCコンバータ
3 負荷
4 発電装置
5 蓄電装置
6 制御装置
61 残量検出部
62 基準値設定部
63 充放電制御部
64 充電速度検出部
65 負荷制御部
7 DCグリッド(線路)
100 直流配電システム(配電システム)
C1 第1基準値
C2 第2基準値
C3 第3基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7