(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106928
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230726BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20230726BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007943
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信也
(72)【発明者】
【氏名】長江 智毅
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】要藤 拓也
【テーマコード(参考)】
2G084
5F131
【Fターム(参考)】
2G084BB21
2G084CC12
2G084CC34
2G084DD02
2G084DD15
2G084FF06
2G084FF38
2G084FF39
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA17
5F131EA03
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】ウエハ載置面と多孔質プラグの上面とを連通する細孔の加工性を良くする。
【解決手段】半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、多孔質プラグ50と、絶縁蓋56と、細孔58とを有する。セラミックプレート20は、上面にウエハ載置面21を有する。多孔質プラグ50は、セラミックプレート20を上下方向に貫通するプラグ挿入穴24に配置され、ガスの流通を許容する。絶縁蓋56は、多孔質プラグ50の上面に接するように設けられ、ウエハ載置面21に露出する。細孔58は、絶縁蓋56に複数設けられ、絶縁蓋56を上下方向に貫通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴に配置され、ガスの流通を許容する多孔質プラグと、
前記多孔質プラグの上面に接するように設けられ、前記ウエハ載置面に露出する絶縁蓋と、
前記絶縁蓋を上下方向に貫通する複数の細孔と、
を備えた半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記絶縁蓋は、溶射膜又はセラミックバルク体である、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記ウエハ載置面は、ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記絶縁蓋の上面は、前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面と同じ高さにあり、
前記細孔の上下方向の長さは、0.01mm以上0.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記絶縁蓋は、セラミックバルク体であり、裏面が前記セラミックプレートに接着層を介して接着されている、
請求項3に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記細孔は、直径が0.01mm以上0.5mm以下であり、前記絶縁蓋に5個以上設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有し、
前記多孔質プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
前記多孔質プラグは、上から下に向かって拡径する拡径部を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項8】
前記絶縁蓋及び前記多孔質プラグの外径は円であり、前記絶縁蓋の外径は前記多孔質プラグよりも大きい、
請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、ウエハ載置面を有する静電チャックが冷却装置上に設けられたものが知られている。例えば、特許文献1の半導体製造装置用部材は、冷却装置に設けられたガス供給孔と、ガス供給孔と連通するように静電チャックに設けられた凹部と、凹部の底面からウエハ載置面まで貫通する細孔と、凹部に充填された絶縁材料からなる多孔質プラグとを備えている。ヘリウム等のバックサイドガスがガス供給孔に導入されると、そのガスはガス供給孔、多孔質プラグおよび細孔を通ってウエハの裏面側の空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した半導体製造装置用部材では、静電チャックを構成するセラミックプレートの凹部の底部に細孔が設けられているため、加工上、細孔の上下方向の長さを小さくすることは困難であった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハ載置面と多孔質プラグの上面とを連通する細孔の加工性を良くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴に配置され、ガスの流通を許容する多孔質プラグと、
前記多孔質プラグの上面に接するように設けられ、前記ウエハ載置面に露出する絶縁蓋と、
前記絶縁蓋を上下方向に貫通する複数の細孔と、
を備えたものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、セラミックプレートとは別体である絶縁蓋に複数の細孔が設けられている。そのため、セラミックプレートに直に複数の細孔が設けられている場合に比べて、細孔の加工性が良好になる。
【0008】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記絶縁蓋は、溶射膜又はセラミックバルク体であってもよい。こうすれば、絶縁蓋を比較的容易に作製することができる。
【0009】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ウエハ載置面は、ウエハを支持する多数の小突起を有していてもよく、前記絶縁蓋の上面は、前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面と同じ高さにあってもよく、前記細孔の上下方向の長さは、0.01mm以上0.5mm以下であってもよい。こうすれば、ウエハの裏面と多孔質プラグの上面との間の空間の高さが低く抑えられるため、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。この場合、前記絶縁蓋は、セラミックバルク体であり、裏面が前記セラミックプレートに接着層を介して接着されていてもよい。こうすれば、接着層の劣化も防止される。ウエハの裏面と多孔質プラグの上面との間の空間におけるアーク放電が防止されるからである。なお、基準面の高さは、小突起ごとに異なる高さであってもよい。また、基準面の高さは、プラグ挿入穴の直近に存在する小突起の底面と同じ高さであってもよい。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記細孔は、直径が0.01mm以上0.5mm以下であってもよく、前記絶縁蓋に5個以上設けられていてもよい。こうすれば、多孔質プラグに供給されたガスはウエハの裏面に向かってスムーズに流出する。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有していてもよく、前記多孔質プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有していてもよい。こうすれば、接着剤を用いることなく多孔質プラグをプラグ挿入穴に配置することができる。また、雄ネジ部と雌ネジ部とが螺合している箇所は、ネジのない場合に比べて、上下方向に隙間が生じにくいし沿面距離が長くなるため、この箇所での放電を十分抑制することができる。
【0012】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記多孔質プラグは、上から下に向かって拡径する拡径部を有していてもよい。こうすれば、多孔質プラグの下面から供給されるガスの圧力によって多孔質プラグが浮き上がるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記絶縁蓋及び前記多孔質プラグの外径は円であってもよく、前記絶縁蓋の外径は前記多孔質プラグより大きくてもよい。こうすれば、絶縁蓋とセラミックプレートとの接着面積が大きくなるため、両者の接着性が良好になる。
【0014】
本発明の半導体製造装置用部材は、前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、前記導電性基材に設けられ、前記多孔質プラグに連通する連通穴と、を備えていてもよく、前記多孔質プラグの下面は、前記連通穴の内部に位置していてもよい。こうすれば、多孔質プラグの下面と導電性基材との間でアーク放電が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、
図2はセラミックプレート20の平面図、
図3は
図1の部分拡大図である。
【0017】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40と、多孔質プラグ50と、絶縁蓋56と、絶縁管60とを備えている。
【0018】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、
図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0019】
プラグ挿入穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通する貫通穴である。
図3に示すように、プラグ挿入穴24の上部は、雌ネジ部のない扁平な円筒部24aになっているが、下部は、雌ネジ部24bになっている。プラグ挿入穴24は、セラミックプレート20の複数箇所(例えば
図2に示すように周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。プラグ挿入穴24には、後述する多孔質プラグ50が配置されている。
【0020】
冷却プレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32やガスを多孔質プラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。冷媒流路32は、平面視で冷却プレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ガス穴34は、円筒状の穴であり、プラグ挿入穴24に対向する位置に設けられている。冷却プレート30の材料は、例えば、金属材料や金属マトリックス複合材料(MMC)などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。冷却プレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。冷却プレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極と冷却プレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0021】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40は、ガス穴34に対向する位置に金属接合層40を上下方向に貫通する丸穴42を有する。本実施形態の金属接合層40及び冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当し、丸穴42及びガス穴34が連通穴に相当する。
【0022】
多孔質プラグ50は、ガスの流通を許容するプラグであり、プラグ挿入穴24に配置されている。多孔質プラグ50の外周面は、プラグ挿入穴24の内周面と一致(接触)している。多孔質プラグ50は、円柱状であり、外周面には雄ネジ部52を有している。雄ネジ部52は、プラグ挿入穴24の雌ネジ部24bに螺合している。多孔質プラグ50の上面は、プラグ挿入穴24の円筒部24aの底面と一致している。多孔質プラグ50の下面50bは、セラミックプレート20の下面20bと一致している。本実施形態では、多孔質プラグ50は、セラミック粉末を用いて焼結することにより得られた多孔質バルク体である。セラミックとしては、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどを用いることができる。多孔質プラグ50の気孔率は30%以上が好ましく、平均気孔径は20μm以上が好ましい。
【0023】
絶縁蓋56は、セラミック(例えばアルミナなど)で形成された円板部材である。絶縁蓋56は、多孔質プラグ50の上面に接するようにプラグ挿入穴24の円筒部24aの内部に設けられ、ウエハ載置面21に露出している。絶縁蓋56の上面は、基準面21cと同じ高さである。絶縁蓋56は、複数の細孔58を有している。細孔58は、絶縁蓋56を上下方向に貫通するように設けられている。細孔58の上下方向の長さ(絶縁蓋56の厚さ)は、0.01mm以上0.5mm以下が好ましく、0.05mm以上0.2mm以下がより好ましく、また、高電圧を印加する装置においては0.05mm以上0.1mm以下が特に好ましい。細孔58の直径は、0.01mm以上0.5mm以下が好ましく、0.1mm以上0.5mm以下とするのがより好ましく、0.1mm以上0.2mm以下とするのが更に好ましい。細孔58は、絶縁蓋56に5個以上設けることが好ましく、10個以上設けることがより好ましい。絶縁蓋56は、緻密質でも多孔質でもよいが、緻密質であることが好ましい。
【0024】
絶縁管60は、緻密質セラミック(例えば緻密質アルミナなど)で形成された平面視円形の管である。絶縁管60の外周面は、金属接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面と図示しない接着層を介して接着されている。接着層は、有機接着層(樹脂接着層)でもよいし無機接着層でもよい。なお、接着層は、更に絶縁管60の上面とセラミックプレート20の下面との間に設けられていてもよい。絶縁管60の内部は、多孔質プラグ50に連通している。そのため、絶縁管60の内部にガスが導入されると、そのガスは多孔質プラグ50を通過してウエハWの裏面に供給される。
【0025】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の冷却プレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。冷却プレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、絶縁管60、多孔質プラグ50及び複数の細孔58を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0026】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について
図4及び
図5に基づいて説明する。
図4及び
図5は半導体製造装置用部材10の製造工程図である。まず、セラミックプレート20、冷却プレート30及び金属接合材90を準備する(
図4A)。セラミックプレート20は、電極22及びプラグ挿入穴24を備えている。この段階では、セラミックプレート20の上面はフラットな面であり、シールバンド21aや円形小突起21bは設けられていない。プラグ挿入穴24の上部は、雌ネジ部のない円筒部24aになっており、下部は、雌ネジ部24bになっている。冷却プレート30は、冷媒流路32を内蔵し、ガス穴34を備えている。金属接合材90は、最終的に丸穴42になる丸穴92を備えている。
【0027】
そして、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とをTCBによって接合して接合体94を得る(
図4B)。TCBは、例えば以下のように行われる。まず、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面との間に金属接合材90を挟み込んで積層体とする。このとき、セラミックプレート20のプラグ挿入穴24と金属接合材90の丸穴92と冷却プレート30のガス穴34とが同軸になるように積層する。そして、金属接合材90の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材90は金属接合層40になり、丸穴92は丸穴42になり、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合した接合体94が得られる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材90は、厚さが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0028】
続いて、絶縁管60を用意し、金属接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面に接着剤を塗布したあと、そこに絶縁管60を挿入し、絶縁管60を丸穴42及びガス穴34に接着固定する(
図4C)。接着剤は、樹脂(有機)接着剤でもよいし、無機接着剤でもよい。その後、セラミックプレート20の上面(ウエハ載置面21)をブラスト加工することにより、シールバンド21a、円形小突起21b及び基準面21c(
図3参照)を形成する。
【0029】
続いて、雄ネジ部52を備えた多孔質プラグ50(多孔質バルク体)を準備する(
図4C)。多孔質プラグ50としては、セラミック原料に造孔剤を添加して雄ネジ部を有する円柱体に成形し、その円柱体を焼結させると共に造孔剤を燃失させて多孔質化したものを用いることができる。
【0030】
この多孔質プラグ50の雄ネジ部52をプラグ挿入穴24の雌ネジ部24bに螺合して多孔質プラグ50の下面を絶縁管60の上面(セラミックプレート20の下面)と一致させる(
図5A)。例えば、多孔質プラグ50の上面にゴムなどの摩擦係数の大きい材料が先端に付いているツマミを密着させ、そのツマミを手で押し込みながら回転させて多孔質プラグ50をプラグ挿入穴24の上部開口から差し込んで螺合する。螺合終了後、ツマミを取り外す。多孔質プラグ50の螺合が終了すると、多孔質プラグの上面はプラグ挿入穴24の円筒部24aの底面と一致する。
【0031】
続いて、多孔質プラグ50の上面にセラミック粉末を溶射することにより溶射膜96を形成する(
図5B)。これにより、プラグ挿入穴24の円筒部24aは溶射膜96で充填される。このとき、多孔質プラグ50の雄ネジ部52とプラグ挿入穴24の雌ネジ部24bとが螺合されており、上下方向の隙間が発生していないため、容易に溶射することができる。溶射膜96の上面は、セラミックプレート20の上面よりも高く盛り上がっている。
【0032】
続いて、溶射膜96の上面とセラミックプレート20のウエハ載置面21に形成された基準面21c(
図3参照)とが同一平面になるように研削加工(マシニング加工)を行う(
図5C)。これにより、多孔質プラグ50の上部に溶射膜からなる絶縁蓋56が形成される。続いて、絶縁蓋56にレーザ加工を施すことにより絶縁蓋56に複数の細孔58を形成する(
図5D)。以上のようにして、半導体製造装置用部材10が得られる。
【0033】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、セラミックプレート20とは別体である絶縁蓋56に複数の細孔58が設けられている。そのため、セラミックプレート20に直に複数の細孔が設けられている場合に比べて、細孔の加工性が良好になる。
【0034】
また、絶縁蓋56は溶射膜である。そのため、絶縁蓋56を比較的容易に作製することができる。なお、溶射膜は多孔質でも緻密質でもよい。多孔質の場合、気孔率は10~15%が好ましい。
【0035】
更に、絶縁蓋56の上面は、ウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さであり、細孔58の上下方向の長さは、0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましい。0.01mm以上であれば、良好な加工性を確保しやすい。また、0.5mm以下であれば、ウエハWの裏面と多孔質プラグ50の上面との間の空間の高さが低く抑えられるため、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。ちなみに、この空間の高さが高いと、ヘリウム(バックサイドガス)が電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することによりアーク放電が起きるが、この空間の高さが低いと、そうしたアーク放電が抑制される。
【0036】
更にまた、細孔58の直径は0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましく、絶縁蓋56に設けられる細孔58の個数は5個以上であることが好ましい。こうすれば、多孔質プラグ50に供給されたバックサイドガスはウエハWの裏面に向かってスムーズに流出する。
【0037】
そして、プラグ挿入穴24は、内周面に雌ネジ部24bを有し、多孔質プラグ50は、雌ネジ部24bに螺合する雄ネジ部52を外周面に有している。そのため、接着剤を用いることなく多孔質プラグ50をプラグ挿入穴24に配置することができる。また、雄ネジ部52と雌ネジ部24bとが螺合している箇所は、ネジのない場合に比べて、上下方向に隙間が生じにくいし沿面距離が長くなる。そのため、この箇所での放電を十分抑制することができる。
【0038】
そしてまた、多孔質プラグ50の上面は細孔58が設けられた絶縁蓋56によって覆われているため、多孔質プラグ50からパーティクルが発生するのを抑制することができる。
【0039】
そして更に、ガス穴34に絶縁管60を設けたため、ウエハWと冷却プレート30との間の沿面距離が長くなる。そのため、多孔質プラグ50内で沿面放電(火花放電)が起きるのを抑制することができる。
【0040】
そして更にまた、絶縁蓋56及び多孔質プラグ50の外径は円であり、絶縁蓋56の外径は多孔質プラグ50より大きい。これにより、絶縁蓋56とセラミックプレート20との接着面積が大きくなるため、両者の接着性が良好になる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
上述した実施形態では、絶縁蓋56として溶射膜を用いたが、特に溶射膜に限定されない。例えば、
図6に示すように、緻密質のセラミックバルク体(セラミック焼結体)である絶縁蓋156を用いてもよい。
図6において上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。絶縁蓋156は、複数の細孔158を有し、接着層159を介してプラグ挿入穴24の扁平な円筒部24aの底面に接着固定される。接着層159は多孔質プラグ50の上面に付かないことが好ましい。接着層159は、樹脂(有機)接着層でもよいし、無機接着層でもよい。こうした絶縁蓋156の作製方法の一例を以下に説明する。まず、セラミック粉末を焼結させて緻密質バルク体を作製する。緻密質バルク体の大きさは、絶縁蓋56を複数個取り出すことが可能な大きさとする。その緻密質バルク体を、厚さが0.01mm以上0.5mm以下の所定の値となるように加工する。そして、厚さ加工後の緻密質バルク体にレーザ加工を施すことにより、緻密質バルク体から複数の絶縁蓋156をくり抜いて取り出すと共に各絶縁蓋156に複数の細孔158を形成する。絶縁蓋156のサイズや細孔158のサイズは、上述した実施形態と同様である。
図6においても、ウエハWの裏面と多孔質プラグ50の上面との間の空間の高さが低く抑えられるため、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。また、接着層159は絶縁蓋156によってウエハ側から隠れており、チャンバーのドライクリーニング時にも接着層159の劣化は抑制される。あるいは、絶縁蓋56をレーザ焼結で作製してもよい。
【0043】
上述した実施形態では、多孔質プラグ50の下面50bがセラミックプレート20の下面20bと一致するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、多孔質プラグ50の下面50bが絶縁管60の内部に位置するようにしてもよい。
図78において上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
図7では、多孔質プラグ50の下面50bは、導電性基材(金属接合層40及び冷却プレート30)の連通穴(丸穴42及びガス穴34)の内部に位置している。こうすれば、多孔質プラグ50の下面50bと導電性基材との間でアーク放電が発生するのを抑制することができる。多孔質プラグ50の下面50bが導電性基材の上面(金属接合層40の上面)よりも上に位置するように構成した場合には、多孔質プラグ50の下面50bと導電性基材との間にある電位差でアーク放電が生じるが、
図7のように構成すれば、その放電がなくなるからである。
【0044】
上述した実施形態では、絶縁管60を用いたが、絶縁管60の代わりに
図8に示すガス通路162を内蔵する絶縁プラグ160を用いてもよい。絶縁プラグ160は、緻密質セラミックからなる円柱体の内部に螺旋状のガス通路162を設けたものである。ガス通路162の上端は円柱体の上面に開口し、ガス通路162の下端は円柱体の下面に開口している。絶縁プラグ160を用いた場合には、絶縁管60に比べてウエハWと冷却プレート30との沿面距離がより長くなるため、多孔質プラグ50内での火花放電をより抑制することができる。
【0045】
上述した実施形態の多孔質プラグ50の代わりに、
図9に示す多孔質プラグ150~750を用いてもよい。これらの多孔質プラグ150~750を用いる場合には、セラミックプレート20に設けるプラグ挿入穴24もそれぞれに合った形状に変更する。
図9Aの多孔質プラグ150は、上底が下底よりも大きい逆円錐台形状である。
図9Bの多孔質プラグ250は、下底が上底よりも大きい円錐台形状である。
図9Cの多孔質プラグ350は、逆円錐台の下面に円柱を連結した形状である。
図9Dの多孔質プラグ450は、円錐台の上面に円柱を連結した形状である。
図9Eの多孔質プラグ550は、大径の円柱の下面に小径の円柱を連結した形状である。
図9Fの多孔質プラグ650は、小径の円柱の下面に大径の円柱を連結した形状である。このうち、多孔質プラグ250,450,650は、上から下に向かって拡径する拡径部Eを有する。そのため、多孔質プラグ250,450,650の下から上へ流通するガスの圧力が多孔質プラグ250,450,650に加わったとしても、拡径部Eがプラグ挿入穴の内周面に突き当たるため、多孔質プラグ250,450,650が浮き上がるのを抑制することができる。なお、これらの多孔質プラグ150~750の外周面に雄ネジ部を設け、上述した実施形態と同様にプラグ挿入穴の雌ネジ部と螺合するようにしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、絶縁蓋56の形状を上底と下底とが同じ大きさでそれらの大きさが多孔質プラグ50の上面よりも大きい円板形状としたが、絶縁蓋56の形状を
図10A~Cに示すようにしてもよい。
図10Aの絶縁蓋56は、上底と下底とが同じ大きさでそれらの大きさが多孔質プラグ50の上面と同じ大きさの円板形状になっている。但し、
図10Aに比べて上述した実施形態の方が絶縁蓋56と多孔質プラグ50との接着性や絶縁蓋56とセラミックプレート20との接着性が良好になる。
図10Bの絶縁蓋56は、下底の大きさが多孔質プラグ50の上面と同じ大きさで上底の方が下底よりも大きい逆円錐台状になっている。この場合、
図10Aに比べて絶縁蓋56の外周面の面積が広くなるため、絶縁蓋56の外周面とセラミックプレート20との接着性が良好になる。
図10Cの絶縁蓋56は、下底の大きさが多孔質プラグ50の上面よりも大きく上底の方が下底よりも大きい逆円錐台状になっている。この場合、上述した実施形態に比べて絶縁蓋56とセラミックプレート20との接着性が良好になる。特に、絶縁蓋56を溶射で形成する場合、絶縁蓋56の形状は、
図10Aよりも
図10Bの方が好ましく、
図10Bよりも上述した実施形態の方が好ましく、上述した実施形態よりも
図10Cの方が好ましい。
【0047】
上述した実施形態では、絶縁蓋56の形状を上底と下底とが同じ大きさの円板形状としたが、下底よりも上底が大きい逆円錐台としてもよい。この場合、プラグ挿入穴24の円筒部24aは逆円錐台状の空間になる。こうすれば、絶縁蓋56を溶射膜によって形成する際にプラグ挿入穴24の円筒部24aに溶射材料を充填しやすい。また、絶縁蓋56とプラグ挿入穴24の円筒部24aとの接触面積が大きくなるため絶縁蓋56とプラグ挿入穴24との密着性が向上する。
【0048】
上述した実施形態では、多孔質プラグ50の外周面に雄ネジ部52を形成し、プラグ挿入穴24の内周面に雌ネジ部24bを形成し、雄ネジ部52と雌ネジ部24bとを螺合したが、特にこれに限定されない。例えば、多孔質プラグ50の外周面に雄ネジ部52を形成せず、プラグ挿入穴24の内周面に雌ネジ部24bを形成しなくてもよい。この場合、多孔質プラグ50の外周面とプラグ挿入穴24の内周面とを接着剤(有機接着剤でも無機接着剤でもよい)で接着してもよい。但し、多孔質プラグ50の外周面とプラグ挿入穴24の内周面との間に接着剤を隙間なく充填することは難しい。隙間が生じるとその隙間で放電するおそれがある。そのため、上述した実施形態の構造(雄ネジ部52と雌ネジ部24bとを螺合する構造)の方が好ましい。
【0049】
上述した実施形態では、絶縁管60を設けたが、絶縁管60を省略してもよい。また、冷却プレート30にガス穴34を設ける代わりに、ガスチャネル構造を設けてもよい。ガスチャネル構造として、冷却プレート30の内部に設けられ平面視で冷却プレート30と同心円のリング部と、冷却プレート30の裏面からリング部へガスを導入する導入部と、リング部から各多孔質プラグ50へガスを分配する分配部(上述したガス穴34に相当)とを備える構造を採用してもよい。導入部の数は、分配部の数よりも少なく、例えば1本としてもよい。
【0050】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。その場合、冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当する。
【符号の説明】
【0052】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、20b 下面、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 電極、24 プラグ挿入穴、24a 円筒部、24b 雌ネジ部、30 冷却プレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 金属接合層、42 丸穴、50 多孔質プラグ、50b 下面、52 雄ネジ部、56 絶縁蓋、58 細孔、60 絶縁管、90 金属接合材、92 丸穴、94 接合体、96 溶射膜、150,250,350,450,550,650 多孔質プラグ、156 絶縁蓋、158 細孔、159 接着層、160 絶縁プラグ、162 ガス通路、E 拡径部。