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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106929
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007944
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】長江 智毅
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】要藤 拓也
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA09
5F131CA17
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】ガスの流通を許容する多孔質プラグを備えた半導体製造装置用部材において、不純物がウエハに混入するのを抑制すると共にガスの流通抵抗が大きくなるのを抑制する。
【解決手段】半導体製造装置用部材10は、上面にウエハ載置面21を有するセラミックプレート20と、ガスの流通を許容する多孔質プラグ50とを備える。多孔質プラグ50は、セラミックプレート20を上下方向に貫通するプラグ挿入穴24に配置される。多孔質プラグ50は、ウエハ載置面21に露出する第1多孔質部51と、第1多孔質部51によって上面が覆われている第2多孔質部52とを有する。第1多孔質部51は、第2多孔質部52に比べて純度が高くて厚みが薄い。第2多孔質部52は、第1多孔質部51に比べて気孔率が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴に配置され、ガスの流通を許容する多孔質プラグと、
を備え、
前記多孔質プラグは、前記ウエハ載置面に露出する第1多孔質部と、前記第1多孔質部によって上面が覆われている第2多孔質部とを有し、
前記第1多孔質部は、前記第2多孔質部に比べて純度が高くて厚みが薄く、
前記第2多孔質部は、前記第1多孔質部に比べて気孔率が高い、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記第1多孔質部は、溶射膜である、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有し、
前記多孔質プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有する、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記第1多孔質部は、下底よりも上底が大きい逆円錐台状である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記第2多孔質部は、上から下に向かって拡径する拡径部を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材であって、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記多孔質プラグに連通する連通穴と、
を備え、
前記第2多孔質部の下面は、前記連通穴の内部に位置している、
半導体製造装置用部材。
【請求項7】
前記ウエハ載置面は、ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記多孔質プラグの前記第1多孔質部の上面は、前記小突起の上面よりも低い位置にある、
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項8】
前記多孔質プラグの前記第1多孔質部の上面は、前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面と同じ高さにあるか、前記基準面よりも0.5mm以下の範囲で低い位置にある、
請求項7に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、上面にウエハ載置面を有する静電チャックを備えたものが知られている。例えば、特許文献1の静電チャックは、ウエハを吸着保持するセラミックプレートと、セラミックプレートに形成された貫通孔と、貫通孔に配置された多孔質プラグと、セラミックプレートの下面に接着された導電性の冷却プレートとを備えたものが開示されている。多孔質プラグの下面は、セラミックプレートの下面と一致している。ウエハ載置面に載置されたウエハをプラズマで処理する場合、冷却プレートとウエハの上部に配置される平板電極との間に高周波電力を印加してウエハの上部にプラズマを発生させる。それと共に、ウエハとセラミックプレートとの熱伝導を向上させるため、熱伝導ガスであるヘリウムを多孔質プラグを介してウエハの裏面に供給する。多孔質プラグがないと、ヘリウムが電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することによりアーク放電が起きるが、多孔質プラグがあると、電子が別のヘリウムに衝突する前に多孔質プラグに当たるためアーク放電が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-29384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多孔質プラグはウエハ載置面に露出しているため、多孔質プラグの純度が低いと、ウエハをプラズマで処理する際に多孔質プラグの不純物がウエハに混入することがある。一方、多孔質プラグの純度を高くすると、焼結温度を高くする必要があるため、気孔率を十分高くすることが難しくなり、ヘリウムが流通しづらくなる。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ガスの流通を許容する多孔質プラグを備えた半導体製造装置用部材において、不純物がウエハに混入するのを抑制すると共にガスの流通抵抗が大きくなるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴に配置され、ガスの流通を許容する多孔質プラグと、
を備え、
前記多孔質プラグは、前記ウエハ載置面に露出する第1多孔質部と、前記第1多孔質部によって上面が覆われている第2多孔質部とを有し、
前記第1多孔質部は、前記第2多孔質部に比べて純度が高くて厚みが薄く、
前記第2多孔質部は、前記第1多孔質部に比べて気孔率が高い、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、ウエハ載置面に露出する第1多孔質部は、第2多孔質部に比べて純度が高い。そのため、ウエハに不純物が混入するのを抑制することができる。一方、第2多孔質部は、第1多孔質部に比べて気孔率が高い。また、第1多孔質部は、第2多孔質部よりも気孔率が低いが、第2多孔質部よりも薄い。そのため、多孔質プラグ全体をみたとき、ガスの流通抵抗が大きくなるのを抑制することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、半導体製造装置用部材の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記第1多孔質部は、溶射膜であってもよい。こうすれば、第1多孔質部を比較的容易に作製することができる。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有していてもよく、前記多孔質プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有していてもよい。こうすれば、接着剤を用いることなく多孔質プラグをプラグ挿入穴に配置することができる。また、雄ネジ部と雌ネジ部とが螺合している箇所は、ネジのない場合に比べて、上下方向に隙間が生じにくいし沿面距離が長くなるため、この箇所での放電を十分抑制することができる。なお、雄ネジ部は、第2多孔質部の外周面に設けられていてもよいし、第1多孔質部の外周面に設けられていてもよいし、第1及び第2多孔質部の外周面に設けられていてもよい。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記第1多孔質部は、下底よりも上底が大きい逆円錐台状であってもよい。こうすれば、第1多孔質部が円柱状の場合に比べて、第1多孔質部を形成する際にプラグ挿入穴に材料を充填しやすいし、第1多孔質部とプラグ挿入穴との接触面積が大きくなるため第1多孔質部とプラグ挿入穴との密着性が向上する。
【0012】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記第2多孔質部は、上から下に向かって拡径する拡径部を有していてもよい。こうすれば、多孔質プラグの下面から供給されるガスの圧力によって多孔質プラグが浮き上がるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の半導体製造装置用部材は、前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、前記導電性基材に設けられ、前記多孔質プラグに連通する連通穴と、を備えていてもよく、前記第2多孔質部の下面は、前記連通穴の内部に位置していてもよい。こうすれば、多孔質プラグの下面と導電性基材との間でアーク放電が発生するのを抑制することができる。
【0014】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ウエハ載置面は、ウエハを支持する多数の小突起を有していてもよく、前記多孔質プラグの前記第1多孔質部の上面は、前記小突起の上面よりも低い位置にあってもよい。こうすれば、第1多孔質部の上面でウエハを持ち上げてしまうことがない。この場合、前記多孔質プラグの前記第1多孔質部の上面は、前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面と同じ高さにあってもよいし、前記基準面よりも0.5mm以下の範囲で低い位置にあってもよい。こうすれば、ウエハの裏面と第1多孔質部の上面との間の空間の高さが低く抑えられるため、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。なお、基準面の高さは、小突起ごとに異なる高さであってもよい。また、基準面の高さは、プラグ挿入穴の直近に存在する小突起の底面と同じ高さであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3図1の部分拡大図。
図4】半導体製造装置用部材10の製造工程図。
図5】半導体製造装置用部材10の製造工程図。
図6】多孔質プラグ50の別例の縦断面図。
図7】多孔質プラグ50の別例の縦断面図。
図8】多孔質プラグ50の別例の縦断面図。
図9】多孔質プラグ50の別例の縦断面図。
図10】多孔質プラグ150~750の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2はセラミックプレート20の平面図、図3図1の部分拡大図である。
【0017】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40と、多孔質プラグ50と、絶縁管60とを備えている。
【0018】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0019】
プラグ挿入穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通する貫通穴である。図3に示すように、プラグ挿入穴24の上部は、雌ネジ部のない円筒部24aになっているが、下部は、雌ネジ部24bになっている。プラグ挿入穴24は、セラミックプレート20の複数箇所(例えば図2に示すように周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。プラグ挿入穴24には、後述する多孔質プラグ50が配置されている。
【0020】
冷却プレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32やガスを多孔質プラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。冷媒流路32は、平面視で冷却プレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ガス穴34は、円筒状の穴であり、プラグ挿入穴24に対向する位置に設けられている。冷却プレート30の材料は、例えば、金属材料や金属マトリックス複合材料(MMC)などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。冷却プレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。冷却プレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極と冷却プレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0021】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40は、ガス穴34に対向する位置に金属接合層40を上下方向に貫通する丸穴42を有する。本実施形態の金属接合層40及び冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当し、丸穴42及びガス穴34が連通穴に相当する。
【0022】
多孔質プラグ50は、ガスの流通を許容するプラグであり、プラグ挿入穴24に配置されている。多孔質プラグ50の外周面は、プラグ挿入穴24の内周面と一致(接触)している。多孔質プラグ50は、上部をなす第1多孔質部51と、下部をなす第2多孔質部52とを連結した構造になっている。第1多孔質部51は、上面がウエハ載置面21に露出しており、第2多孔質部52に比べて純度が高くて厚みが薄い。第2多孔質部52は、第1多孔質部51によって上面が覆われており、第1多孔質部51に比べて気孔率が高い。第1多孔質部51と第2多孔質部52は、同じ種類の材料で純度が異なるものを用いてもよいし、異なる種類の材料で純度が異なるものを用いてもよい。材料としてセラミックを用いる場合には、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどを用いることができる。アルミナを用いる場合には、第1多孔質部51は純度95%以上のアルミナを用いてもよく、第2多孔質部52は純度80%以上で第1多孔質部51の純度未満のアルミナを用いてもよい。第1多孔質部51の気孔率は15%以上で第2多孔質部52の気孔率未満が好ましく、平均気孔径は5μm以上が好ましい。第1多孔質部51の膜厚は1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。第2多孔質部52の気孔率は30%以上が好ましく、平均気孔径は20μm以上が好ましい。第1多孔質部51は、円板状であり、外周面には雄ネジ部を有していない。第2多孔質部52は、円柱状であり、外周面には雄ネジ部52aを有している。雄ネジ部52aは、プラグ挿入穴24の雌ネジ部24bに螺合している。多孔質プラグ50の高さは、セラミックプレート20の厚みと一致している。多孔質プラグ50の第2多孔質部52の下面は、セラミックプレート20の下面と一致している。本実施形態では、第1多孔質部51は、溶射膜であり、第2多孔質部52は、セラミック粉末を用いて焼結するとにより得られた多孔質バルク体である
【0023】
絶縁管60は、緻密質セラミック(例えば緻密質アルミナなど)で形成された平面視円形の管である。絶縁管60の外周面は、金属接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面と図示しない接着層を介して接着されている。接着層は、有機接着層(樹脂接着層)でもよいし無機接着層でもよい。なお、接着層は、更に絶縁管60の上面とセラミックプレート20の下面との間に設けられていてもよい。絶縁管60の内部は、多孔質プラグ50に連通している。そのため、絶縁管60の内部にガスが導入されると、そのガスは多孔質プラグ50を通過してウエハWの裏面に供給される。
【0024】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の冷却プレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。冷却プレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、絶縁管60及び多孔質プラグ50を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0025】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について図4及び図5に基づいて説明する。図4及び図5は半導体製造装置用部材10の製造工程図である。まず、セラミックプレート20、冷却プレート30及び金属接合材90を準備する(図4A)。セラミックプレート20は、電極22及びプラグ挿入穴24を備えている。この段階では、セラミックプレート20の上面はフラットな面であり、シールバンド21aや円形小突起21bは設けられていない。プラグ挿入穴24の上部は、雌ネジ部のない円筒部24aになっており、下部は、雌ネジ部24bになっている。冷却プレート30は、冷媒流路32を内蔵し、ガス穴34を備えている。金属接合材90は、最終的に丸穴42になる丸穴92を備えている。
【0026】
そして、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とをTCBによって接合して接合体94を得る(図4B)。TCBは、例えば以下のように行われる。まず、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面との間に金属接合材90を挟み込んで積層体とする。このとき、セラミックプレート20のプラグ挿入穴24と金属接合材90の丸穴92と冷却プレート30のガス穴34とが同軸になるように積層する。そして、金属接合材90の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材90は金属接合層40になり、丸穴92は丸穴42になり、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合した接合体94が得られる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材90は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0027】
続いて、絶縁管60を用意し、金属接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面に接着剤を塗布したあと、そこに絶縁管60を挿入し、絶縁管60を丸穴42及びガス穴34に接着固定する(図4C)。接着剤は、樹脂(有機)接着剤でもよいし、無機接着剤でもよい。その後、セラミックプレート20の上面(ウエハ載置面21)をブラスト加工することにより、シールバンド21a、円形小突起21b及び基準面21c(図3参照)を形成する。
【0028】
続いて、雄ネジ部52aを備えた第2多孔質部52(多孔質バルク体)を準備する(図5A)。第2多孔質部52としては、純度の低い(例えば純度85%とか90%)セラミック原料に造孔剤及び/又は焼結助剤(例えばSiO2)を添加して雄ネジ部を有する円柱体に成形し、その円柱体を比較的低温で焼結させて多孔質化したものを用いることができる。造孔剤を用いた場合、造孔剤は焼結時に燃焼して消失する。ここでは純度の低いセラミック原料を用いるため、焼結温度を比較的低温にすることができ、気孔率を高くすることができる。焼結助剤を用いた場合、焼結助剤の成分が不純物の原因になる。なお、第2多孔質部52は、多孔質の平板状の成形体を焼成し、そこから円柱体をくり抜き加工し、得られた円柱体の外周面にネジを切ることにより、作製してもよい。
【0029】
この第2多孔質部52の雄ネジ部52aをプラグ挿入穴24の雌ネジ部24bに螺合して第2多孔質部52の下面を絶縁管60の上面(セラミックプレート20の下面)と一致させる(図5B)。例えば、第2多孔質部52の上面にゴムなどの摩擦係数の大きい材料が先端に付いているツマミを密着させ、そのツマミを手で押し込みながら回転させて第2多孔質部52をプラグ挿入穴24の上部開口から差し込んで螺合する。螺合終了後、ツマミを取り外す。
【0030】
続いて、第2多孔質部52の上面に純度の高い(例えば純度95%以上)セラミック粉末を溶射することにより多孔質の溶射膜71を形成する(図5C)。これにより、プラグ挿入穴24の円筒部24aは溶射膜71で充填される。このとき、第2多孔質部52の雄ネジ部52aとプラグ挿入穴24の雌ネジ部24bとが螺合されており、上下方向の隙間が発生していないため、容易に溶射することができる。溶射膜71の上面は、セラミックプレート20の上面よりも高く盛り上がっている。なお、溶射の際、溶射膜71の気孔率が所望の値になるようにセラミック粉末に造孔剤を添加しておいてもよい。
【0031】
続いて、溶射膜71の上面とセラミックプレート20のウエハ載置面21に形成された基準面21c(図3参照)とが同一平面になるように研削加工(マシニング加工)を行う(図5D)。これにより、上部に溶射膜からなる第1多孔質部51を備え、下部に多孔質バルク体からなる第2多孔質部52を備えた多孔質プラグ50が形成される。以上のようにして、半導体製造装置用部材10が得られる。
【0032】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、ウエハ載置面21に露出する第1多孔質部51は、第2多孔質部52に比べて純度が高い。そのため、ウエハWに多孔質プラグ50由来の不純物が混入するのを抑制することができる。一方、第2多孔質部52は、第1多孔質部51に比べて気孔率が高い。また、第1多孔質部51は、第2多孔質部52よりも気孔率が低いが、第2多孔質部52よりも薄い。そのため、多孔質プラグ50全体をみたとき、熱伝導ガスの流通抵抗が大きくなるのを抑制することができる。
【0033】
また、第1多孔質部51は溶射膜であるため、第1多孔質部51を比較的容易に作製することができる。
【0034】
更に、プラグ挿入穴24は内周面に雌ネジ部24bを有し、第2多孔質部52は外周面に雄ネジ部52aを有し、雌ネジ部24bと雄ネジ部52aとが螺合されている。そのため、接着剤を用いることなく第2多孔質部52をプラグ挿入穴24に配置することができる。
【0035】
更にまた、雄ネジ部52aと雌ネジ部24bとが螺合している箇所は、ネジのない場合に比べて、上下方向に隙間が生じにくいし、ウエハWから雄ネジ部52aと雌ネジ部24bとの間を通って冷却プレート30に至る沿面距離が長くなる。そのため、この箇所での放電を十分抑制することができる。
【0036】
そして、多孔質プラグ50の第1多孔質部51の上面は、円形小突起21bの上面よりも低い位置にある。そのため、第1多孔質部51の上面でウエハWを持ち上げてしまうことがない。
【0037】
そしてまた、多孔質プラグ50の第1多孔質部51の上面51aは、ウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さである。そのため、ウエハWの下面と第1多孔質部51の上面51aとの間の空間の高さが低く抑えられる。したがって、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。
【0038】
そして更に、ガス穴34に絶縁管60を設けたため、ウエハWと冷却プレート30との間の沿面距離が長くなる。そのため、多孔質プラグ50内で沿面放電(火花放電)が起きるのを抑制することができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
上述した実施形態では、第1多孔質部51の形状を上底と下底とが同じ大きさで下底の大きさが第2多孔質部52の上面と同じ大きさの円板形状としたが、第1多孔質部51の形状を図6A~Cに示すようにしてもよい。図6Aの第1多孔質部51は、下底の大きさが第2多孔質部52の上面と同じ大きさで上底の方が下底よりも大きい逆円錐台状になっている。この場合、上述した実施形態に比べて第1多孔質部51の外周面の面積が広くなるため、第1多孔質部51の外周面とセラミックプレート20との接着性が良好になる。図6Bの第1多孔質部51は、上底と下底とが同じ大きさで下底の大きさが第2多孔質部52の上面よりも大きい円板形状になっている。この場合、上述した実施形態に比べて第1多孔質部51と第2多孔質部52との接着性や第1多孔質部51とセラミックプレート20との接着性が良好になる。図6Cの第1多孔質部51は、下底の大きさが第2多孔質部52の上面よりも大きく上底の方が下底よりも大きい逆円錐台状になっている。この場合、上述した実施形態に比べて第1多孔質部51と第2多孔質部52との接着性や第1多孔質部51とセラミックプレート20との接着性が良好になる。特に、第1多孔質部51を溶射で形成する場合、第1多孔質部51の形状は、上述した実施形態よりも図6Aの方が好ましく、図6Aよりも図6Bの方が好ましく、図6Bよりも図6Cの方が好ましい。更に、上述した実施形態と比べて、図6A~Cでは第1多孔質部51の上底の径が大きいため、ガスが流れやすくなる。
【0041】
上述した実施形態では、多孔質プラグ50の第1多孔質部51の上面51aは、ウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さとしたが、特にこれに限定されない。例えば、図7に示すように、ウエハ載置面21の基準面21cの高さから第1多孔質部51の上面51aの高さを引いた差Δhが0.5mm以下(好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下)の範囲になるようにしてもよい。換言すれば、第1多孔質部51の上面51aを、ウエハ載置面21の基準面21cよりも0.5mm以下(好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下)の範囲で低い位置に配置してもよい。このようにしても、ウエハWの下面と第1多孔質部51の上面51aとの間の空間の高さは比較的低く抑えられる。したがって、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。
【0042】
上述した実施形態では、第2多孔質部52の外周面に雄ネジ部52aを形成し、プラグ挿入穴24の内周面に雌ネジ部24bを形成し、雄ネジ部52aと雌ネジ部24bとを螺合したが、特にこれに限定されない。例えば、図8に示すように、第2多孔質部52の外周面に雄ネジ部52aを形成せず、プラグ挿入穴24の内周面に雌ネジ部24bを形成しなくてもよい。この場合、第1及び第2多孔質部51,52の外周面とプラグ挿入穴24の内周面とを接着剤(有機接着剤でも無機接着剤でもよい)で接着することになる。但し、第1及び第2多孔質部51,52の外周面とプラグ挿入穴24の内周面との間に接着剤を隙間なく充填することは難しい。隙間が生じると、その隙間で放電するおそれがある。そのため、図8の構造よりも上述した実施形態の構造の方が好ましい。
【0043】
上述した実施形態では、第2多孔質部52の下面がセラミックプレート20の下面と一致するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、図9に示すように、第2多孔質部52の下面52bが絶縁管60の内部に位置するようにしてもよい。つまり、第2多孔質部52の下面52bが導電性基材(金属接合層40及び冷却プレート30)の連通穴(丸穴42及びガス穴34)の内部に位置するようにしてもよい。こうすれば、第2多孔質部52の下面52bと導電性基材との間でアーク放電が発生するのを抑制することができる。第2多孔質部52の下面52bが導電性基材の上面(金属接合層40の上面)よりも上に位置するように構成した場合には、第2多孔質部52の下面52bと導電性基材との間にある電位差でアーク放電が生じるが、図9のように構成すれば、その放電がなくなるからである。
【0044】
上述した実施形態の多孔質プラグ50の代わりに、図10に示す多孔質プラグ150~750を用いてもよい。これらの多孔質プラグ150~750を用いる場合には、セラミックプレート20に設けるプラグ挿入穴24もそれぞれに合った形状に変更する。図10Aの多孔質プラグ150は、上底が下底よりも大きい逆円錐台形状の第2多孔質部152の上に、円板状の第1多孔質部151を設けたものである。図10Bの多孔質プラグ250は、下底が上底よりも大きい円錐台形状の第2多孔質部252の上に、円板状の第1多孔質部251を設けたものである。図10Cの多孔質プラグ350は、逆円錐台の下面に円柱を連結した形状の第2多孔質部352の上に、円板状の第1多孔質部351を設けたものである。図10Dの多孔質プラグ450は、円錐台の上面に円柱を連結した形状の第2多孔質部452の上に、円板状の第1多孔質部451を設けたものである。図10Eの多孔質プラグ550は、大径の円柱の下面に小径の円柱を連結した形状の第2多孔質部552の上に、円板状の第1多孔質部551を設けたものである。図10Eの多孔質プラグ650は、小径の円柱の下面に大径の円柱を連結した形状の第2多孔質部652の上に、円板状の第1多孔質部651を設けたものである。図10Gの多孔質プラグ750は、円柱状の第2多孔質部752の上面及び側面を覆うように、有底筒状(コップ状)の第1多孔質部751を設けたものである。このうち、多孔質プラグ250,450,650の第2多孔質部252,452,652は、上から下に向かって拡径する拡径部Eを有する。そのため、多孔質プラグ250,450,650の下から上へ流通するガスの圧力が多孔質プラグ250,450,650に加わったとしても、拡径部Eがプラグ挿入穴の内周面に突き当たるため、多孔質プラグ250,450,650が浮き上がるのを抑制することができる。なお、これらの多孔質プラグ150~750の外周面に雄ネジ部を設け、上述した実施形態と同様にプラグ挿入穴の雌ネジ部と螺合するようにしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、絶縁管60を設けたが、絶縁管60を省略してもよい。また、冷却プレート30にガス穴34を設ける代わりに、ガスチャネル構造を設けてもよい。ガスチャネル構造として、冷却プレート30の内部に設けられ平面視で冷却プレート30と同心円のリング部と、冷却プレート30の裏面からリング部へガスを導入する導入部と、リング部から各多孔質プラグ50へガスを分配する分配部(上述したガス穴34に相当)とを備える構造を採用してもよい。導入部の数は、分配部の数よりも少なく、例えば1本としてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、第1多孔質部51を溶射膜としたが、特に溶射膜に限定されない。例えば、第1多孔質部51を多孔質バルク体としてもよい。その場合、第1多孔質部51を構成する多孔質バルク体の外周面に雄ネジ部を設け、プラグ挿入穴24の内周面の上部に雌ネジ部を設け、両者を螺合してもよい。あるいは、第1多孔質部51をレーザ焼結で作製してもよい。
【0047】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0048】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。その場合、冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当する。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 電極、24 プラグ挿入穴、24a 円筒部、24b 雌ネジ部、30 冷却プレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 金属接合層、42 貫通孔、42 丸穴、50 多孔質プラグ、51 第1多孔質部、51a 上面、52 第2多孔質部、52a 雄ネジ部、52b 下面、60 絶縁管、71 溶射膜、90 金属接合材、92 丸穴、94 接合体、150,250,350,450,550,650,750 多孔質プラグ、151,251,351,451,551,651,751 第1多孔質部、152,252,352,452,552,652,752 第2多孔質部。
図1
図2
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図7
図8
図9
図10