IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

特開2023-106936点群処理装置、点群処理方法およびプログラム
<>
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図1
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図2
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図3
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図4
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図5
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図6
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図7
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図8
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図9
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図10
  • 特開-点群処理装置、点群処理方法およびプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106936
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】点群処理装置、点群処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20230726BHJP
【FI】
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007961
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】松井 美智代
(72)【発明者】
【氏名】岡本 駿志
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084CA31
5J084CA65
5J084CA70
(57)【要約】
【課題】背景点群への点の追加漏れを抑制する。
【解決手段】実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得する点群取得部と、移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶する背景点群記憶部と、前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新する背景点群更新部と、を備える、点群処理装置。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得する点群取得部と、
移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶する背景点群記憶部と、
前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新する背景点群更新部と、
を備える、点群処理装置。
【請求項2】
前記背景点群更新部は、前記背景点群から選択された対象点を前記背景点群から削除する、請求項1に記載の点群処理装置。
【請求項3】
前記背景点群更新部は、前記背景点群のうちで、前記入力点群に対応する点が存在しない点の集合から前記対象点を選択する、請求項2に記載の点群処理装置。
【請求項4】
前記背景点群更新部は、前記点の集合からランダムに前記対象点を選択する、請求項3に記載の点群処理装置。
【請求項5】
前記背景点群更新部は、前記背景点群に含まれる全ての点が前記入力点群に含まれるいずれかの点に対応する場合、前記背景点群からランダムに前記対象点を選択する、請求項3または4に記載の点群処理装置。
【請求項6】
前記背景点群更新部は、1の入力点群に基づき、設定数の点を前記背景点群に追加し、前記設定数の前記対象点を前記背景点群から削除する、請求項2に記載の点群処理装置。
【請求項7】
ユーザにより設定された前記設定数を示す情報を記憶する設定記憶部をさらに備える、請求項6に記載の点群処理装置。
【請求項8】
実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得することと、
移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶することと、
前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新することと、
を含む、コンピュータにより実行される点群処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得する点群取得部と、
移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶する背景点群記憶部と、
前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新する背景点群更新部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群処理装置、点群処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサによって実空間の3次元に計測して3次元点群を取得し、実空間の情報を分析する技術が研究されている。実空間の3次元点群を取得するセンサとしては、例えば、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれるレーザーセンサーが知られている。
【0003】
3次元点群の用途の一つに、移動物体の検出が挙げられる。例えば、背景領域に属する背景点群が得られている場合、3次元点群と当該背景点群との差分に基づいて移動物体を検出し得る。特許文献1には、このような背景点群の生成方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、LiDARで実空間を表す点群を取得し、床または壁などの背景領域に属する背景点群を抽出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-219248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に開示された技術は、背景の変化が小さいほど有効に機能する。しかし、当該技術では、背景の変化が大きくなるほど生成される背景点群の精度が劣化することが懸念される。例えば、上記技術では、新たに背景領域に加わった領域に対応する点が背景点群に追加され難い。結果、当該領域に移動物体が存在しなくても、当該領域に対応する点が移動物体に属する点であると扱われ、移動物体が誤検出されることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、背景点群への点の追加漏れを抑制することが可能な、新規かつ改良された点群処理装置、点群処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得する点群取得部と、移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶する背景点群記憶部と、前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新する背景点群更新部と、を備える、点群処理装置が提供される
【0008】
前記背景点群更新部は、前記背景点群から選択された対象点を前記背景点群から削除してもよい。
【0009】
前記背景点群更新部は、前記背景点群のうちで、前記入力点群に対応する点が存在しない点の集合から前記対象点を選択してもよい。
【0010】
前記背景点群更新部は、前記点の集合からランダムに前記対象点を選択してもよい。
【0011】
前記背景点群更新部は、前記背景点群に含まれる全ての点が前記入力点群に含まれるいずれかの点に対応する場合、前記背景点群からランダムに前記対象点を選択してもよい。
【0012】
前記背景点群更新部は、1の入力点群に基づき、設定数の点を前記背景点群に追加し、前記設定数の前記対象点を前記背景点群から削除してもよい。
【0013】
前記点群処理装置は、ユーザにより設定された前記設定数を示す情報を記憶する設定記憶部をさらに備えてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得することと、移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶することと、前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新することと、を含む、コンピュータにより実行される点群処理方法が提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、実空間をレーザーセンサーで測定することにより得られた3次元の点群である入力点群を取得する点群取得部と、移動物体の検出のために前記入力点群と比較される背景点群を記憶する背景点群記憶部と、前記入力点群からランダムに選択された点を前記背景点群に追加することで前記背景点群を更新する背景点群更新部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、背景点群への点の追加漏れを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による点群処理システムを示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態による点群処理装置200の構成を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態による点群処理装置200の動作を示すフローチャートである。
図4】差分処理の具体例を示す説明図である。
図5】背景点群の更新処理方法を示すフローチャートである。
図6】各フレームにおける入力点群と背景点群の具体例を示す説明図である。
図7】各フレームにおける入力点群と背景点群の具体例を示す説明図である。
図8】各フレームにおける入力点群と背景点群の具体例を示す説明図である。
図9】変形例による背景点群の更新処理方法を示すフローチャートである。
図10】候補点群の抽出の具体例を示す説明図である。
図11】点群処理装置200のハードウェア構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。
【0020】
<点群処理システムの概要>
本発明の実施形態は、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)による実空間の測定により得られた点群を処理することで実空間に存在する物体を検出する点群処理システムに関する。本発明の実施形態の詳細な説明に先立ち、本発明の実施形態による点群処理システムの概要を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による点群処理システムを示す説明図である。図1に示したように、本発明の一実施形態による点群処理システムは、LiDAR装置100および点群処理装置200を有する。LiDAR装置100と点群処理装置200は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよいし、ネットワークを介して接続されてもよい。
【0022】
(LiDAR)
LiDAR装置100は、実空間の3次元環境を測定する測定装置である。LiDAR装置100は、例えば図1に示したように三脚110により支持されることである地点に設置される。LiDAR装置100は、設置された同一地点から複数フレームに亘ってレーザーを用いた測定を繰り返し、各フレームの3次元の点群を得る。LiDAR装置100は、測定により得た点群を点群処理装置200に出力する。
【0023】
なお、LiDAR装置100に設けられるレーザー送受信センサの数、レーザーの走査方式および測定可能範囲は特に限定されない。例えば、レーザー送受信センサの数は、8個、16個、32個、64個または128個などであってもよい。また、レーザーの走査方式は、水平方向に沿ってレーザーの向きを変化させる方式であってもよいし、垂直方向に沿ってレーザーの向きを変化させる方式であってもよい。また、測定可能範囲は、水平視野において120°または全方位などであり、垂直視野角において20°、30°または40°などであってもよい。
【0024】
(点群処理装置)
点群処理装置200は、LiDAR装置100から入力される点群に基づき、移動物体を検出する。移動物体の検出は、LiDAR装置100から入力される点群である入力点群から、背景領域に属する点群である背景点群を分離(セグメンテーション)することにより実現され得る。なお、点群処理装置200が検出対象とする移動物体は特に限定されず、例えば、点群処理装置200は人または車両などの動物体を検出対象としてもよい。
【0025】
このような点群処理システムは、例えば、工事現場および建設現場などで作業者を移動物体として検出するために用いられる。作業者の検出結果は、作業者が危険な領域に位置しているか否かの判定に活用することが可能である。作業者が危険な領域に位置している場合には警告を発することにより、事故を未然に防止し得る。
【0026】
<点群処理装置の構成>
続いて、図2を参照し、本発明の一実施形態による点群処理装置200の構成を詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による点群処理装置200の構成を示す説明図である。図2に示したように、本発明の一実施形態による点群処理装置200は、点群取得部220、入力点群記憶部222、背景点群記憶部224、操作部226、設定記憶部228、背景点群更新部232、物体検出部236、表示制御部240および表示部244を備える。
【0027】
(点群取得部220)
点群取得部220は、LiDAR装置100から3次元の点群である入力点群を取得する。点群取得部220は、LiDAR装置100から有線により入力点群を取得してもよい、無線により入力点群を取得してもよい。
【0028】
(入力点群記憶部222)
入力点群記憶部222は、点群取得部220により取得された入力点群を記憶する。
【0029】
(背景点群記憶部224)
背景点群記憶部224は、背景領域に属する点群である背景点群を記憶する。背景領域は、変化する可能性はあるが一定時間に亘っては固定物とみなせる物体からなる。このような背景点群の生成方法および更新方法は図5を参照して詳細に後述する。
【0030】
(操作部226)
操作部226は、点群処理装置200を利用するユーザにより操作される構成である。ユーザは、当該操作部226を操作することにより、点群処理装置200に情報および指示などを入力することが可能である。特に、本発明の一実施形態においては、ユーザは、操作部226を操作することにより、後述する背景点群の更新速度に影響する設定数を入力する。
【0031】
(設定記憶部228)
設定記憶部228は、操作部226への操作により入力された設定数を示す設定情報を記憶する。
【0032】
(背景点群更新部232)
背景点群更新部232は、背景点群記憶部224に記憶されている背景点群を、点群取得部220により取得された入力点群を用いて更新する。例えば、背景点群更新部232は、背景点群から設定記憶部228に記憶されている設定情報が示す設定数の点を削除し、入力点群から設定数の点を選択し、選択した点を背景点群に追加する。
【0033】
(物体検出部236)
物体検出部236は、背景点群記憶部224に記憶されている背景点群と入力点群記憶部222に記憶されている入力点群を比較することにより、移動物体を検出する。
【0034】
(表示制御部240)
表示制御部240は、多様な表示画面を生成し、生成した表示画面を表示部244に表示させる。例えば、表示制御部240は、物体検出部236により検出された移動物体を示す表示画面を生成し、当該表示画面を表示部244に表示させる。
【0035】
(表示部244)
表示部244は、表示制御部240からの制御に従って表示画面を表示する。
【0036】
<点群処理装置の動作概要>
続いて、図3を参照し、上述した本発明の一実施形態による点群処理装置200の動作概要を説明する。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態による点群処理装置200の動作を示すフローチャートである。図3に示したように、まず、点群処理装置200は処理フレームをカウントするカウンター(t)を0にセットする(S304)。続いて、点群取得部220がLiDAR装置100から入力点群を取得し、入力点群記憶部222が当該入力点群を記憶する(S308)。
【0038】
そして、点群処理装置200は、処理フレームが初期フレームであるか否か、すなわち、カウンター(t)=0であるか否かを判定する(S312)。カウンター(t)=0である場合(S312/Yes)、背景点群記憶部224が入力点群を背景点群として記憶する(S316)。
【0039】
一方、カウンター(t)=0でない場合(S312/No)、S320以降の処理が行われる。具体的には、物体検出部236が、背景点群記憶部224に記憶されている背景点群と入力点群記憶部222に記憶されている入力点群の差分を抽出する差分処理を実行する(S320)。当該処理により抽出される差分は、背景点群に対して、入力点群において変化している部分を示す点の集合である。差分処理には多様な方法を用いることが可能である。
【0040】
具体的には、物体検出部236は、PCLライブラリoctreeクラスを用いて、入力点群のうちで、背景点群に対応する点が存在しない点の集合を抽出してもよい。入力点群のうちで背景点群に対応する点は、背景点群に含まれる点の近傍に位置する点であってもよい。例えば、図4において、入力点群に含まれる点c1の近傍に背景点群に含まれる点b1が位置しているので、入力点群に含まれる点c1には背景点群に含まれる点b1が対応している。一方、入力点群に含まれる点の集合42の近傍に位置する点が背景点群に存在しない。このため、物体検出部236は、図4に示した例では入力点群に含まれる点の集合42を差分として抽出する。
【0041】
続いて、物体検出部236は、抽出した差分に含まれる各点の空間的な位置関係に基づいて、抽出した差分を複数の部分点群に分割するクラスタリング処理を実行する(S324)。クラスタリング処理としては、例えば、PCLライブラリsearch::kdtreeクラスを用いて、閾値以内の距離にある点同士が同一の部分点群に属するように処理する方法が挙げられる。
【0042】
そして、物体検出部236は、各部分点群を移動物体として検出し、各移動物体の代表位置(例えば、部分点群の中心座標)を示す移動物体情報を表示制御部240に出力する(S328)。表示制御部240は、当該移動物体情報に基づいて移動物体を示す表示画面を生成し、当該表示画面を表示部244に表示させる。
【0043】
さらに、背景点群更新部232が入力点群記憶部222に記憶されている入力点群を用いて背景点群記憶部224に記憶されている背景点群を更新する(S332)。当該背景点群の更新処理については図5以降を参照して詳細に説明する。
【0044】
S316の後、またはS332の後、点群処理装置200は、カウンター(t)をインクリメントし(S336)、LiDAR装置100から入力点群が取得される度に、本動作の終了までS308~S336の処理を繰り返す(S340)。
【0045】
<背景点群の更新処理方法>
続いて、図5を参照して、背景点群の更新処理方法を説明する。
【0046】
図5は、背景点群の更新処理方法を示すフローチャートである。まず、背景点群更新部232は、設定記憶部228から設定情報を読み出すことにより、1フレーム分の処理で更新する点の数(設定数n)を取得する(S410)。設定数nが大きいほど更新速度が速くなる。設定数nは、各フレームで同一であってもよいし、フレームごとに異なってもよい。そして、背景点群更新部232は、更新済の点の数をカウントするカウンター(j)を0に設定する(S420)。
【0047】
続いて、背景点群更新部232は、カウンター(j)が設定数n未満であるか否かを判断する(S430)。カウンター(j)が設定数n未満でない場合(S430/No)、背景点群更新部232は背景点群の更新処理を終了する。一方、カウンター(j)が設定数n未満である場合(S430/Yes)、背景点群更新部232はS440以降の処理を実行する。
【0048】
具体的には、背景点群更新部232は、背景点群から1つの対象点をランダムに選択する(S440)。当該対象点bj(x,y,z)のランダム選択は、以下のように表現される。なお、以下においてMbは背景点群に属する点の数を示す。
j=(int)(Mb・(rand()+1.0)/RAND_MAX)
rand():0~RAND_MAXまでの乱数を発生する
【0049】
また、背景点群更新部232は、入力点群から更新点をランダムに選択する(S450)。当該更新点cj(x,y,z)のランダム選択は、以下のように表現される。なお、以下においてMcは入力点群に属する点の数を示す。
j=(int)(Mc・(rand()+1.0)/RAND_MAX)
【0050】
そして、背景点群更新部232は、背景点群から対象点bjを削除し(S460)、更新点cjを背景点群に追加する(S470)。その後、背景点群更新部232は、カウンター(j)をインクリメントしてS430からの処理を繰り返す(S480)。
【0051】
(具体例)
続いて、上述した背景点群の更新処理方法が適用された場合に得られる背景点群の具体例を説明する。より詳細には、工事現場などで掘削により地形が変化した場所を車両が通過したケースでの各フレームの入力点群と背景点群の具体例を説明する。
【0052】
図6図8は、各フレームにおける入力点群と背景点群の具体例を示す説明図である。まず、図6に示したカウンター(t)が0である初期フレームにおいては、背景点群更新部232は、図3に示したS316の処理の通り、入力点群を背景点群として背景点群記憶部224に記憶させる。
【0053】
カウンター(t)が1であるフレームにおいては、地形の変化により入力点群から一部の点が消失しており、移動物体に対応する点の集合42が現われている。当該フレームにおいて、背景点群からは、ランダムに選択された対象点b2が削除されている。また、入力点群から背景に対応する点の集合41内の更新点c3がランダムに選択され、背景点群に点b3として追加されている。
【0054】
さらに、図7に示したカウンター(t)が5であるフレームにおいては、入力点群から移動物体に対応する点の集合43内の更新点c4がランダムに選択され、背景点群に点b4として追加されている。入力点群からの更新点の選択はランダムに行われるので、カウンター(t)が1であるフレームのように背景に対応する点が更新点として選択されるフレームが存在し得るし、カウンター(t)が5であるフレームのように移動物体に対応する点が更新点として選択されるフレームも存在し得る。
【0055】
また、図7に示したカウンター(t)が6であるフレームにおいては、背景点群からは、ランダムに選択された対象点b5が削除されている。また、入力点群から更新点c6がランダムに選択され、背景点群に点b6として追加されている。
【0056】
その後、図8に示したカウンター(t)が11であるフレームにおいては、背景点群からランダムに対象点b4が削除されている。当該対象点b4は、カウンター(t)が5であるフレームにおいて追加されていた移動物体に対応する点である。
【0057】
<作用効果>
以上説明した本発明の一実施形態によれば、多様な作用効果が得られる。例えば、本発明の一実施形態によれば、入力点群からランダムに選択された点が背景点群に追加される。従って、新たに現れた長期的には固定物とみなせる物体に対応する点の背景点群への追加漏れを抑制することが可能となる。新たに現れた長期的には固定物とみなせる物体としては、例えば、駐車された車両、建築現場において新たに設置された壁などが挙げられる。このような物体を背景点群として取り込むことにより、このような物体が移動物体として誤検出してしまう場合を抑制し得る。特に、本発明の一実施形態は、移動物体がフレームに占める範囲、および移動物体がフレームに含まれている時間が短いほど、精度の高い背景点群を得ることが可能である。
【0058】
また、本発明の一実施形態によれば、背景点群更新部232が背景点群から対象点をランダムに選択し、選択した対象点をランダムに削除する。これにより、背景点群に含まれる点が増大し続けることが防止される。また、背景点群に移動物体に対応する点が追加されてしまった場合でも、図8を参照して説明したように、背景点群から移動物体に対応する点が確率的に削除され、長期的には固定物とみなせる物体に対応する点が背景点群に残り易い。また、堀削により変化した地形部分に対応する点も背景点群から経時的に削除されるので、当該地形部分を通過する人をより確実に移動物体として検出することが可能となる。同様に、停止していたが移動した車両に対応する点も背景点群から経時的に削除されるので、車両が停止していた場所を通過する人をより確実に移動物体として検出することが可能となる。すなわち、移動物体の未検出の発生を抑制することが可能である。
【0059】
また、本発明の一実施形態によれば、背景点群の更新速度に影響を与える設定数をユーザが設定可能である。ユーザは、当該設定数を点群処理装置200の適用先の環境に応じて適切に設定することにより、好適な結果を得ることが可能である。例えば、ユーザは、適用先の環境での背景の変化の頻度が高いほど、設定数を高い値に設定し得る。
【0060】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態を説明した。以下では、上述した実施形態の変形例を説明する。上記の実施形態では、背景点群から対象点をランダムに選択する例を説明した。本変形例は、対象点の他の選択方法に関する。
【0061】
図9は、変形例による背景点群の更新処理方法を示すフローチャートである。図9において、S410、S420、S450~S480の処理は図5を参照した通りであるので、以下ではS412、S414、S444~S448の処理を主に説明する。
【0062】
変形例において、背景点群更新部232は、背景点群から候補点群を抽出する(S412)。当該候補点群は、背景点群のうちで、入力点群に対応する点が存在しない点の集合である。そして、背景点群更新部232は、抽出された背景点群に基づいて必要十分な候補点群数Mを決定する(S414)。図10を参照して、候補点群の抽出の具体例を説明する。
【0063】
図10は、候補点群の抽出の具体例を示す説明図である。図10に示した例では、背景点群に、点群52、点群53、点群54、および点群55などが含まれている。点群52は、背景更新時に入力点群から追加された移動物体に対応する点からなる。点群53は、初期フレームで入力点群を背景点群とした際に取り込まれた重機に対応する点からなる。点群54は、地面に対応する点からなる。点群55は、積まれた土砂に対応する点からなる。
【0064】
また、図10に示した例では、入力点群に、点群63、点群64および点群65などが含まれている。点群63は、初期フレームの時点から移動した重機に対応する点からなる。点群64は、地面に対応する点からなる。点群65は、積まれた土砂に対応する点からなる。
【0065】
背景点群更新部232は、このような背景点群から入力点群を引く逆背景差分を行うことにより、候補点群を抽出する。図10に示した例では、点群52および点群53が候補点群として抽出されている。
【0066】
図9の説明に戻り、背景点群更新部232は、必要十分な候補点群が抽出された場合には(S444/Yes)、候補点群から対象点をランダムに選択する(S446)。一方、背景点群更新部232は、候補点群が必要十分な数に満たない場合には(S444/No)、背景点群から対象点をランダムに選択する(S448)。そして、背景点群更新部232は、選択した対象点を背景点群から削除する(S460)。
【0067】
(作用効果)
上述した変形例によれば、多様な作用効果が得られる。例えば、本変形例による背景点群更新部232は、背景点群から入力点群との逆背景差分により抽出された候補点群からランダムに対象点を選択し、当該対象点を背景点群から削除する。真の背景は入力点群にも含まれるので、逆背景差分では真の背景に対応する点は抽出され難い、すなわち、削除対象になり難い。したがって、本変形例によれば、背景点群から真の背景でない物体に対応する点が効果的に削除されるので、移動物体の未検出の発生を一層抑制することが可能である。
【0068】
また、本変形例による背景点群更新部232は、候補点群が抽出されなかった場合に、すなわち、背景点群に含まれる全ての点が入力点群に含まれるいずれかの点に対応する場合、背景点群からランダムに対象点を選択する。したがって、候補点群が無い場合にも背景点群から点の削除が行われるので、背景点群に含まれる点の数を維持することが可能である。
【0069】
<ハードウェア構成>
以上、本発明の一実施形態を説明した。上述した背景点群の更新および移動物体の検出などの情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明する点群処理装置200のハードウェアとの協働により実現される。
【0070】
図11は、点群処理装置200のハードウェア構成を示したブロック図である。点群処理装置200は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、を備える。また、点群処理装置200は、ブリッジ205と、外部バス206と、インターフェース207と、入力装置208と、表示装置209と、音声出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、ネットワークインターフェース215とを備える。
【0071】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って点群処理装置200内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。これらCPU201、ROM202およびRAM203とソフトウェアとの協働により、図2を参照して説明した点群取得部220、背景点群更新部232、物体検出部236および表示制御部240などの各機能が実現され得る。
【0072】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0073】
入力装置208は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、センサー、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。点群処理装置200のユーザは、該入力装置208を操作することにより、点群処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0074】
表示装置209は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、プロジェクター装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。また、音声出力装置210は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。
【0075】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる点群処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置211は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid Strage Drive)、あるいは同等の機能を有するメモリ等で構成される。このストレージ装置211は、ストレージを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0076】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、点群処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203またはストレージ装置211に出力する。また、ドライブ212は、リムーバブル記憶媒体24に情報を書き込むこともできる。
【0077】
ネットワークインターフェース215は、例えば、ネットワークに接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。また、ネットワークインターフェース215は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0078】
<補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、本明細書の点群処理装置200の処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、点群処理装置200の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0080】
また、点群処理装置200に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアに、上述した点群処理装置200の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた非一時的な記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0081】
100 LiDAR装置
200 点群処理装置
220 点群取得部
222 入力点群記憶部
224 背景点群記憶部
226 操作部
228 設定記憶部
232 背景点群更新部
236 物体検出部
240 表示制御部
244 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11