(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106939
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
H02K5/173 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007970
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】沈 慶春
(72)【発明者】
【氏名】香月 亮太
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605AA07
5H605BB05
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC05
5H605EA02
5H605EB02
5H605EB10
5H605EB16
5H605EC01
5H605GG03
5H605GG04
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】機能部品を収容するための十分な収容空間を、電動機全体としての大型化を招くことなく確保できるようにした構成を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る電動機は、固定子鉄心および回転子鉄心を収容するフレーム部材と、前記回転子鉄心の回転軸を回転可能に支持する軸受部材と、を備え、前記軸受部材は、前記フレーム部材の内部に配置されることにより、機能部品が収容される収容空間を前記フレーム部材の内部に形成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心および回転子鉄心を収容するフレーム部材と、
前記回転子鉄心の回転軸を回転可能に支持する軸受部材と、
を備え、
前記軸受部材は、前記フレーム部材の内部に配置されることにより、機能部品が収容される収容空間を前記フレーム部材の内部に形成している電動機。
【請求項2】
前記回転軸は、前記回転子鉄心が固定される径大部と、前記径大部よりも径寸法が小さい径小部と、を有し、
前記軸受部材は、前記径小部のうち前記径大部側となる端部を支持している請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記軸受部材は、焼き嵌めによって前記フレーム部材の内部に固定されている請求項1または2に記載の電動機。
【請求項4】
前記回転軸と前記軸受部材との間に隙間が形成されている請求項1から3の何れか1項に記載の電動機。
【請求項5】
前記軸受部材は、ケーブルを挿通可能な孔部を有している請求項1から4の何れか1項に記載の電動機。
【請求項6】
前記軸受部材は、放熱性を有している請求項1から5の何れか1項に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばモータなどといった電動機は、その外郭を構成する円筒状のフレーム部材の内部に固定子鉄心および回転子鉄心を収容している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電動機においては、例えばインバータなどといった機能部品を収容するための収容空間を確保する必要がある。そして、従来では、固定子鉄心および回転子鉄心を収容するフレーム部材に、さらに別のフレーム部材を追加して、この追加したフレーム部材の内部に、機能部品を収容するための収容空間を確保するようにしている。そのため、別のフレーム部材を追加することに伴い電動機全体が大型化してしまうという課題があり、現状では、固定子鉄心および回転子鉄心を収容するフレーム部材を薄型化することにより、このような電動機全体としての大型化を回避するようにしている。
【0005】
そこで、機能部品を収容するための十分な収容空間を、電動機全体としての大型化を招くことなく確保できるようにした構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る電動機は、固定子鉄心および回転子鉄心を収容するフレーム部材と、前記回転子鉄心の回転軸を回転可能に支持する軸受部材と、を備え、前記軸受部材は、前記フレーム部材の内部に配置されることにより、機能部品が収容される収容空間を前記フレーム部材の内部に形成している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る電動機の一部の構成例を概略的に示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、電動機に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に例示する電動機10は、その外郭を構成する円筒状のフレーム部材11を備えている。フレーム部材11の内部には、固定子鉄心12および回転子鉄心13が収容されている。固定子鉄心12は、フレーム部材11の内周面に固定されている。一方、回転子鉄心13は、フレーム部材11の内部において、回転軸14とともに回転可能に設けられている。
【0009】
回転軸14の一端側、この場合、
図1において右側の端部には、電動機10によって駆動される図示しない負荷が接続されている。以下、電動機10に対し図示しない負荷が接続される側を「負荷側」と称する場合がある。なお、図示しない負荷は、例えばポンプなど、電動機10によって駆動可能な種々の要素を適用することができる。
【0010】
回転軸14の他端側、この場合、
図1において左側の端部には、図示しない冷却ファンが接続される。また、フレーム部材11の他端側、この場合、
図1において左側の端部には、この冷却ファンを覆う図示しない冷却ファンカバーが設けられている。以下、電動機10に対し図示しない冷却ファンおよび冷却ファンカバーが設けられる側、換言すれば、図示しない負荷が接続される側とは反対側を「反負荷側」と称する場合がある。
【0011】
また、回転軸14は、回転子鉄心13が固定されている径大部14Aと、この径大部14Aよりも径寸法が小さい径小部14Bと、を一体的に有している。この場合、径小部14Bは、回転軸14のうち径大部14Aよりも反負荷側の部分を構成している。また、回転軸14は、径大部14Aと径小部14Bとの境界部分に段部14Cが形成された構成となっている。
【0012】
また、電動機10は、フレーム部材11の内部に軸受ブラケット15を備えている。軸受ブラケット15は、軸受部材の一例であり、回転子鉄心13の回転軸14を回転可能に支持している。即ち、軸受ブラケット15は、所定の厚さ寸法を有する概ね円板形状に形成されており、その中央部に、当該軸受ブラケット15を板厚方向に貫通する軸受孔部15Aを有している。また、軸受ブラケット15は、径大部14A側である負荷側にボールベアリング15Bを備えている。
【0013】
軸受ブラケット15は、フレーム部材11の内部に配置されることにより、図示しない機能部品が収容される収容空間Sを当該フレーム部材11の内部に形成している。この収容空間Sの内部に収容される図示しない機能部品は、例えば、インバータ、各種の制御素子、ブレーキ装置などである。なお、図示しない機能部品は、インバータ、各種の制御素子、ブレーキ装置などに限られるものではなく、電動機10に搭載可能な種々の機能部品を適用することができる。
【0014】
また、フレーム部材11の内周面には、当該フレーム部材11の軸心側に突出する段部11Aが設けられている。軸受ブラケット15は、フレーム部材11内を反負荷側から負荷側に向かって段部11Aに当接する位置まで押し込まれている。また、軸受ブラケット15は、回転軸14の一部、この場合、径小部14Bのうち径大部14A側つまり負荷側となる端部を、ボールベアリング15Bを介して支持している。
【0015】
また、軸受ブラケット15の側周面15Cは、周知の焼き嵌めによってフレーム部材11の内周面に固定されている。
【0016】
また、回転軸14と軸受ブラケット15との間には僅かな隙間Gが形成されている。より詳細に説明すると、回転軸14のうち径小部14Bの側周面と軸受ブラケット15の軸受孔部15Aの内周面との間には僅かな隙間Gが形成されている。なお、隙間Gの大きさは、例えば数mm程度の大きさであればよく、過剰に大きくする必要はない。
【0017】
また、軸受ブラケット15は、軸受孔部15Aとは異なる部位に、当該軸受ブラケット15を板厚方向に貫通する挿通孔部15Dを有している。挿通孔部15Dには、ケーブルCを挿通可能である。なお、挿通孔部15Dの開口形状は、例えば、円形状であってもよいし、矩形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、軸受ブラケット15において挿通孔部15Dを設ける位置は、軸受孔部15Aと軸受ブラケット15の側周面15Cとの間において適宜変更して実施することができる。また、挿通孔部15Dに挿通されるケーブルCは、例えば、電源供給用のケーブル、信号伝送用のケーブルなど種々のケーブルを適用することができる。
【0018】
また、軸受ブラケット15は、例えばアルミニウムなどといった放熱性を有する材料によって構成されている。この場合、軸受ブラケット15は、その全体が放熱性を有する材料によって構成されている。なお、電動機10は、フレーム部材11も、その全体が、例えばアルミニウムなどといった放熱性を有する材料によって構成されている。また、軸受ブラケット15は、その一部が放熱性を有する材料によって構成されていてもよいし、その表面が放熱性を有する材料によって構成されていてもよい。また、フレーム部材11は、その一部が放熱性を有する材料によって構成されていてもよいし、その表面が放熱性を有する材料によって構成されていてもよい。
【0019】
また、電動機10は、回転軸14の反負荷側部分を回転可能に支持する反負荷側の軸受ブラケット15だけでなく、回転軸14の負荷側部分を回転可能に支持する負荷側の軸受ブラケット16も備えている。この軸受ブラケット16も、所定の厚さ寸法を有する概ね円板形状に形成されており、その中央部に、当該軸受ブラケット16を板厚方向に貫通する軸受孔部16Aを有している。また、この軸受ブラケット16も、径大部14A側である反負荷側にボールベアリング16Bを備えている。また、回転軸14と軸受ブラケット16との間にも僅かな隙間Gが形成されている。また、軸受ブラケット16は、フレーム部材11の負荷側の端部に、例えば図示しないボルトなどによって固定されている。
【0020】
電動機10による図示しない負荷の駆動に伴い回転軸14に伝達する荷重は、主として負荷側の軸受ブラケット16によって吸収されるが、反負荷側の軸受ブラケット15においても一部の荷重を吸収することが可能である。なお、電動機10による図示しない負荷の駆動に伴い回転軸14に伝達する荷重は、回転軸14の軸心方向に沿う荷重、いわゆるスラスト荷重を含み、また、回転軸14の径方向に沿う荷重、いわゆるラジアル荷重を含む。
【0021】
以上に例示した本実施形態に係る電動機10の構成例によれば、軸受ブラケット15は、フレーム部材11の内部に配置されることにより、図示しない機能部品が収容される収容空間Sを当該フレーム部材11の内部に形成している。この構成例によれば、フレーム部材11に別のフレーム部材を追加しなくとも、十分な大きさの収容空間Sを確保することができる。これにより、図示しない機能部品を収容するための十分な収容空間Sを、電動機10全体としての大型化を招くことなく確保することができる。
【0022】
また、電動機10は、単独のフレーム部材11の内部に軸受ブラケット15を押し込むようにして配置することによって収容空間Sを確保するようにした構成例である。この点において、本実施形態に係る電動機10の構成例は、フレーム部材の追加が必要である従来の構成とは明らかな相違が認められる。
【0023】
また、電動機10によれば、軸受ブラケット15は、回転軸14の径小部14Bのうち径大部14A側つまり負荷側となる端部を、ボールベアリング15Bを介して支持している。即ち、本実施形態に係る電動機10の構成例によれば、径大部14Aよりも反負荷側に径小部14Bを有する回転軸14に対し、負荷側に最大限押し込み可能な部位まで軸受ブラケット15が押し込まれており、これにより、フレーム部材11内に形成される収容空間Sを最大限に大きくすることができる。なお、フレーム部材11内における段部11Aの位置は、適宜変更して実施することができるが、固定子鉄心12の反負荷側の端部よりも反負荷側に若干ずれた位置に設けるようにするとよい。これにより、フレーム部材11内に固定子鉄心12を収容するために必要な最小限のスペースを確保しつつ、より大きな収容空間Sを形成することができる。
【0024】
また、電動機10によれば、軸受ブラケット15は、いわゆる周知の焼き嵌めによってフレーム部材11の内部に固定されている。この構成例によれば、フレーム部材11の内部において軸受ブラケット15を強固に固定することができ、フレーム部材11内における軸受ブラケット15の位置ずれを抑制することができる。また、特に、フレーム部材11内における軸受ブラケット15の反負荷側への位置ずれを抑制することにより、収容空間Sが狭まってしまうことを抑制することができる。
【0025】
また、電動機10によれば、回転軸14と軸受ブラケット15との間に僅かな隙間Gが形成されている。この構成例によれば、回転軸14と軸受ブラケット15との摩擦によって回転軸14の回転に抵抗が作用してしまうことを回避することができ、回転軸14の円滑な回転を実現することができる。
【0026】
また、電動機10によれば、回転軸14と軸受ブラケット16との間にも僅かな隙間Gが形成されている。この構成例によれば、回転軸14と軸受ブラケット16との摩擦によって回転軸14の回転に抵抗が作用してしまうことも回避することができ、回転軸14の一層円滑な回転を実現することができる。
【0027】
また、電動機10によれば、軸受ブラケット15は、ケーブルCを挿通可能な挿通孔部15Dを有している。この構成例によれば、軸受ブラケット15をフレーム部材11の内部に押し込むようにした構成としながらも、フレーム部材11の内部におけるケーブルCの引き回しを十分に行うことができる。即ち、電動機10によれば、フレーム部材11の内部に配置された軸受ブラケット15が、フレーム部材11の内部におけるケーブルCの引き回しを阻害してしまうことを回避することができる。
【0028】
また、電動機10によれば、軸受ブラケット15は、放熱性を有している。この構成例によれば、収容空間S内に収容されている図示しない機能部品が発生する熱を、軸受ブラケット15を介して放熱することができる。また、電動機10によれば、フレーム部材11も放熱性を有しており、しかも、このフレーム部材11に軸受ブラケット15が接触した構成となっている。そのため、図示しない機能部品から軸受ブラケット15に伝達した熱を、フレーム部材11を介して電動機10の外部に放出することができる。これにより、電動機10、特に、フレーム部材11の内部や収容空間Sの内部が異常に高温となることを抑制することができる。
【0029】
なお、本実施形態は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、フレーム部材11の内部における軸受ブラケット15の配置位置、換言すれば、フレーム部材11の内部に形成する収容空間Sの大きさは、適宜変更して実施することができる。
【0030】
また、軸受ブラケット15は、放熱性を有さない材料によって構成してもよい。この場合、図示しない機能部品が発生する熱を外部に放出するための放熱部材を別途設けるようにするとよい。また、フレーム部材11は、放熱性を有さない材料によって構成してもよい。この場合、フレーム部材11に伝達した熱を外部に放出可能な放熱部材を別途設けるようにするとよい。
【0031】
また、軸受ブラケット15は、挿通孔部15Dとともに、或いは、挿通孔部15Dに代えて、例えば、ケーブルCを挿通可能なスリットや溝などを有する構成としてもよい。
【0032】
また、軸受ブラケット15は、いわゆる焼き嵌めではなく、例えば、ボルト、ねじ、かしめ、嵌め込みなどといった他の手法によってフレーム部材11内に固定された構成としてもよい。
【0033】
また、回転軸14は、その全体の径寸法が均一である構成、つまり、段部14Cを有さない構成としてもよい。この場合、回転軸14の側周面に突起などを設け、軸受ブラケット15は、この突起などに当接する位置まで押し込まれる構成とするとよい。また、段部11Aは、フレーム部材11内に設けられた突起などであってもよい。
【0034】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、これらの実施形態は、あくまでも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
図面において、10は電動機、11はフレーム部材、12は固定子鉄心、13は回転子鉄心、14は回転軸、14Aは径大部、14Bは径小部、15は軸受ブラケット(軸受部材)、15Dは挿通孔部(孔部)、を示す。