(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106978
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20230726BHJP
B07C 5/16 20060101ALI20230726BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
B07C5/16
B03B5/28 Z
B03B5/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008046
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509229555
【氏名又は名称】JFEプラリソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】北出 伊吹
【テーマコード(参考)】
3F079
4D071
4F401
【Fターム(参考)】
3F079CA31
3F079CB33
3F079CC03
3F079DA11
4D071AA52
4D071AA62
4D071AB14
4D071BA02
4D071BA12
4D071BB08
4D071DA15
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA26
4F401CA27
4F401CA43
4F401CA46
4F401CA49
4F401EA46
4F401FA08Z
(57)【要約】
【課題】塩素分の多いプラスチックを分離して、塩素分が低減されたリサイクル可能なプラスチックの回収率を増加すること。
【解決手段】プラスチックを比重に応じて分離可能に構成された比重分離手段と、プラスチックの搬送方向に沿って比重分離手段の後段に設けられ、プラスチックをプラスチックの材質に応じて分離可能に構成された材質判定分離手段と、を備え、プラスチックを所定の分類で分離するプラスチック分離システムが、比重分離手段によってプラスチックを比重に応じて分離する比重分離工程を実行し、材質判定分離手段によって、比重分離工程によって分離されたプラスチックをプラスチックの材質に応じて分離する材質判定工程を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを所定の分類で分離可能に構成されたプラスチック分離システムであって、
前記プラスチックを比重に応じて分離可能に構成された比重分離手段と、
前記プラスチックの搬送方向に沿って前記比重分離手段の後段に設けられ、前記プラスチックを前記プラスチックの材質に応じて分離可能に構成された材質判定分離手段と、を備える
プラスチック分離システム。
【請求項2】
前記比重分離手段は、前記プラスチックを、比重が所定値未満の軽質物と、比重が前記所定値以上の重質物との2種類に分離し、
前記材質判定分離手段は、前記重質物の材質を判定して前記重質物を少なくとも2種類に分離する
請求項1に記載のプラスチック分離システム。
【請求項3】
前記材質判定分離手段より上流側に、前記プラスチックを破砕可能に構成された破砕処理手段が設けられている
請求項1または2に記載のプラスチック分離システム。
【請求項4】
前記破砕処理手段は、前記プラスチックを破砕後の破砕粒度が100mm以下に破砕可能に構成されている
請求項3に記載のプラスチック分離システム。
【請求項5】
前記比重分離手段は、媒体として水を用いた浮沈式の比重分離を実行可能に構成される
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラスチック分離システム。
【請求項6】
前記材質判定分離手段は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレン樹脂の少なくとも1つを選択して、分離可能に構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラスチック分離システム。
【請求項7】
前記材質判定分離手段は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、およびポリプロピレンの少なくとも1つを選択して、分離可能に構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラスチック分離システム。
【請求項8】
プラスチックを所定の分類で分離するプラスチック分離方法であって、
前記プラスチックを比重に応じて分離する比重分離工程と、
前記比重分離工程によって分離された前記プラスチックを前記プラスチックの材質に応じて分離する材質判定工程と、を含む
プラスチック分離方法。
【請求項9】
前記比重分離工程において、前記プラスチックが、比重が所定値未満の軽質物と、比重が前記所定値以上の重質物との2種類に分離され、
前記材質判定工程において、前記重質物に対して材質を判定することで前記重質物を少なくとも2種類に分離する
請求項8に記載のプラスチック分離方法。
【請求項10】
前記比重分離工程における前記所定値が1である
請求項9に記載のプラスチック分離方法。
【請求項11】
前記材質判定工程の前に、前記プラスチックを破砕する破砕処理工程をさらに含む
請求項8~10のいずれか1項に記載のプラスチック分離方法。
【請求項12】
前記材質判定工程において、前記プラスチックから、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレン樹脂の少なくとも1つを選択して分離する
請求項8~11のいずれか1項に記載のプラスチック分離方法。
【請求項13】
前記材質判定工程において、前記プラスチックから、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、およびポリプロピレンの少なくとも1つを選択して、分離する
請求項8~11のいずれか1項に記載のプラスチック分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低炭素社会および循環型社会を実現するために、廃棄物処理分野においても、様々な要求がなされている。このような要求に対して、具体的に、資源ごみとなるプラスチックを含む廃棄物から、リサイクル用の廃プラスチックを選別する廃プラスチックの選別技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数種のプラスチックで構成されたプラスチック廃材の組成を検出し、所望の組成のプラスチック廃材を選択的に回収する乾式分離工程と、再資源化される特定組成のプラスチックを選別回収する高純度分離回収工程とを含む選別方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、材質による波長の吸収度の相違に基づいて再利用プラスチックを選別する光学式選別装置と、材質による比重の相違に基づいて再利用プラスチックの純度を高める遠心分離機と、を備え、光学式選別装置および遠心分離機を用いて廃プラスチックを処理することにより、再利用プラスチックの少なくとも1種類を種類別の再利用プラスチックとして選別するプラスチック分離システムの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-208085号公報
【特許文献2】特開2017-170653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術においては、ポリエチレン(PolyEthylene:PE)やポリプロピレン(PolyPropylene:PP)などのプラスチックからなる製品の接着部や複合材として使用されている塩素系ポリオレフィンなどの塩素分を分離することが極めて困難であった。そのため、塩素分の多いプラスチックを分離して、塩素分が低減されたリサイクル可能なプラスチックの回収率を増加できる技術の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、塩素分の多いプラスチックを分離して、塩素分が低減されたリサイクル可能なプラスチックの回収率を増加できるプラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、プラスチックを所定の分類で分離可能に構成されたプラスチック分離システムであって、前記プラスチックを比重に応じて分離可能に構成された比重分離手段と、前記プラスチックの搬送方向に沿って前記比重分離手段の後段に設けられ、前記プラスチックを前記プラスチックの材質に応じて分離可能に構成された材質判定分離手段と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、上記の発明において、前記比重分離手段は、前記プラスチックを、比重が所定値未満の軽質物と、比重が前記所定値以上の重質物との2種類に分離し、前記材質判定分離手段は、前記重質物の材質を判定して前記重質物を少なくとも2種類に分離する。
【0010】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、上記の発明において、前記材質判定分離手段の上流側に、前記プラスチックを破砕可能に構成された破砕処理手段が設けられている。
【0011】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、この構成において、前記破砕処理手段は、前記プラスチックを破砕後の破砕粒度が100mm以下に破砕可能に構成されている。
【0012】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、上記の発明において、前記比重分離手段は、媒体として水を用いた浮沈式の比重分離を実行可能に構成される。
【0013】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、上記の発明において、前記材質判定分離手段は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレン樹脂の少なくとも1つを選択して、分離可能に構成されている。
【0014】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、上記の発明において、前記材質判定分離手段は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、およびポリプロピレンの少なくとも1つを選択して、分離可能に構成されている。
【0015】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、プラスチックを所定の分類で分離するプラスチック分離方法であって、前記プラスチックを比重に応じて分離する比重分離工程と、前記比重分離工程によって分離された前記プラスチックを前記プラスチックの材質に応じて分離する材質判定工程と、を含む。
【0016】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、上記の発明において、前記比重分離工程において、前記プラスチックが、比重が所定値未満の軽質物と、比重が前記所定値以上の重質物との2種類に分離され、前記材質判定工程において、前記重質物に対して材質を判定することで前記重質物を少なくとも2種類に分離する。
【0017】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、この構成において、前記比重分離工程における前記所定値が1である。
【0018】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、上記の発明において、前記材質判定工程の前に、前記プラスチックを破砕する破砕処理工程をさらに含む。
【0019】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、上記の発明において、前記材質判定工程において、前記プラスチックから、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレン樹脂の少なくとも1つを選択して分離する。
【0020】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、上記の発明において、前記材質判定工程において、前記プラスチックから、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、およびポリプロピレンの少なくとも1つを選択して、分離する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るプラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法は、塩素分の多いプラスチックを分離して、塩素分が低減されたリサイクル可能なプラスチックの回収率を増加させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるプラスチック分離システムを概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による材質判定分離装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0024】
まず、本発明の一実施形態を説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、本発明者が上記課題を解決するために行った鋭意検討について説明する。
【0025】
すなわち、本発明者の知見によれば、プラスチックから塩素分を分離する技術として、近赤外線を用いた吸収検出などによってポリ塩化ビニル(PolyVinyl Chloride:PVC)を検出して選別する技術が存在する。しかしながら、この従来技術においては、ポリエチレン(Polyethylene:PE)やポリプロピレン(PolyPropylene:PP)に含有されている塩素分の分離が極めて困難であり、実際には不可能であった。また、本発明者の知見によれば、廃プラスチックを比重によって選別して軽比重の軽質物のプラスチックと高比重の重質物のプラスチックとに選別する技術がある。ところが、この従来技術によれば、高比重の重質物のプラスチックとして選別された側に塩素分が濃縮される。そのため、重質物のプラスチックにおいては、リサイクルなどの利用方法が限定されることになる。具体的に、PEやPPなどからなるプラスチックをリサイクル利用する場合、PEやPPを用いたプラスチック製品の接着部や複合材として使用されている塩素系ポリオレフィンなどの塩素分の除去は極めて困難である。
【0026】
そこで、本発明者は、廃プラスチックを選別する工程において、まず従来と同様に、比重分離によって比重が所定値未満の軽質物のプラスチックと、所定値以上の重質物プラスチックとを分離する比重分離工程を行うことを前提に鋭意検討を行った。ここで、所定値は、比重分離に用いる液体の密度に応じて異なるが、比重分離に用いる液体が水である場合、所定値は1である。
【0027】
本発明者は鋭意検討を行い、比重分離工程によって得られた比重が所定値以上(例えば1以上)の重質物のプラスチックに対して、近赤外線などを使用した材質判定工程を行う方法を案出した。案出された材質判定工程においては、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate:PET)や、ポリスチレン樹脂(PolyStyrene:PS)を判定して分離回収する。これによって、塩素分が低減された廃プラスチックを得ることができる。また、材質判定工程において、PVC、PE、およびPPを分離することによって、塩素分の多いプラスチックを回収できることが確認された。
【0028】
本発明者は、PEやPPからなるプラスチックに含まれる塩素分を分離する方法についてさらに検討を行い、少なくとも材質判定工程の前段階、典型的には比重分離工程の前段階で、プラスチックを所定の破砕粒度以下、具体的に例えば100mm以下、好適には、50mm以下に粉砕する破砕処理工程を実行する方法を案出した。この粉砕処理工程において、プラスチックを細粒化することによって、PEやPPのプラスチックに用いられ偏在している塩素系オレフィンなどに含まれる塩素分と、塩素分を含まないPEやPPとに分離できることが判明した。本発明は、以上の鋭意検討に基づいて案出されたものである。
【0029】
(プラスチック分離システム)
まず、本発明の一実施形態によるプラスチック分離システムについて説明する。
図1は、本実施形態によるプラスチック分離システム1を示す概略図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態によるプラスチック分離システム1は、比重分離装置10、材質判定分離装置20、および破砕処理装置30を備えて構成される。材質判定分離装置20は、廃プラスチックの搬送方向に沿って比重分離装置10の後段、すなわち下流側に設けられている。破砕処理手段としての破砕処理装置30は、少なくとも材質判定分離装置20の前段、すなわち廃プラスチックの搬送方向に沿った上流側に設けられ、典型的には比重分離装置10の前段、すなわち上流側に設けられている。破砕処理装置30は、導入された廃プラスチックを、所定の破砕粒度以下、具体的に例えば100mm以下、好適には50mm以下に粉砕可能に構成される。なお、破砕処理装置30は設けないことも可能である。
【0031】
比重分離手段としての比重分離装置10は、従来公知の例えば乾式比重分離装置や湿式比重分離装置などの装置から構成される。比重分離装置10は、好適には、浮沈式の湿式比重分離装置や遠心式の湿式比重分離装置などが採用されるが限定されない。湿式比重分離装置において用いられる液体は、例えば水(比重1)であるが、その他の液体を用いることも可能である。すなわち、軽質物のプラスチックと重質物のプラスチックとを分離する所望の比重に応じて、用いる液体を選択可能である。
【0032】
廃プラスチックのリサイクルにおいて、比重分離装置10には、所定割合で塩素が含まれている廃プラスチックが導入される。プラスチック分離システム1が破砕処理装置30を備える場合には、廃プラスチックの塩素含有率は、本実施形態において例えば1%程度であるが、塩素含有率は廃プラスチックの性状に応じて変化するものであり、この数値に限定されるものではない。なお、廃プラスチックとしては、家電製品由来の廃プラスチックやペットボトル由来の廃プラスチックなどは通常含まれないが、必ずしも限定されるものではない。すなわち、廃プラスチックとして扱われるプラスチックは、適宜設定されるものである。
【0033】
廃プラスチックに含まれる、塩素系ポリオレフィンを含まないPEやPPにおいては、比重が所定値未満、例えば1未満である。そのため、比重分離装置10において、塩素系ポリオレフィンなどを含まないPEやPPなどを主として含む軽質物の廃プラスチックを分離回収できる。分離回収された軽質物としての廃プラスチックに対しては、マテリアルリサイクル(材料リサイクル、材料再生、再資源化、または再生利用ともいう)を行うことが可能である。この場合、塩素の含有率は、比重分離装置10に導入された廃プラスチックにおける塩素の含有率に比して低減される。本実施形態においては、塩素の含有率は、例えば1/5程度の0.2%程度に低減される。また、廃プラスチックの導入量に対して、軽質物として回収されるPEやPPなどを主として含む廃プラスチックの回収率は、本実施形態においては、例えば70%程度である。
【0034】
一方、比重分離装置10においては、比重が所定値以上、例えば1以上である、PVCやポリ塩化ビニリデン(PolyVinyliDene Chloride:PVDC)などの塩素含有プラスチックが選別されて搬出される。また、PETやPSなども比重が1以上であることから、比重分離装置10において重質物の廃プラスチックとして選別されて搬出される。さらに、容器包装プラスチック類に用いられるPEやPPにおいては、接着部や印刷部、または複合材として塩素系オレフィン類が使用されている。ここで、塩素系オレフィン類が用いられているPEやPPは、比重分離装置10において、比重が1以上の重質物の廃プラスチックとして搬出される。すなわち、比重分離装置10から搬出される重質物の廃プラスチックは、塩素が含まれるPEやPPと、PET、PS、PVC、およびPVDCとの混合物となる。ここで、搬出される重質物の廃プラスチックの搬出率は、(100-70=)30%程度である。また、搬出された重質物の廃プラスチックにおける塩素の含有率は、比重分離装置10に導入された廃プラスチックにおける塩素の含有率に比して増加する。本実施形態においては、塩素の含有率は、例えば2.5倍程度の2.5%程度まで増加する。なお、従来技術においては、この重質物の廃プラスチックが残渣として、サーマルリサイクルなどに供される。
【0035】
従来技術においては、比重分離装置10から搬出された重質物の廃プラスチックは残渣として処理されている。すなわち、従来技術においては、塩素を含有するPEやPPは、PET、PS、PVC、PVDCなどと併せて回収され、塩素分の分離は極めて困難であった。
【0036】
これに対し、本実施形態においては、比重分離装置10から搬出された重質物の廃プラスチックは、材質判定分離装置20に搬入される。なお、プラスチック分離システム1に破砕処理装置30が設けられている場合、廃プラスチックは、破砕処理装置30によって所定の大きさ以下に破砕された状態で、材質判定分離装置20に搬入される。
【0037】
図2は、本実施形態において用いられる材質判定分離装置20を示す概略図である。
図2に示すように、材質判定分離装置20は、制御部21、ローラ22aを有するコンベア22、近赤外線センサ23、気体供給部24、気体噴射部25、および分離回収トレイ26a,26bを有する回収部26を備えて構成される。
【0038】
材質判定分離手段としての材質判定分離装置20において制御部21は、材質判定分離装置20の各部の要素を制御する。すなわち、制御部21は、コンベア22、近赤外線センサ23、および気体供給部24を制御する。材質判定分離装置20には、比重分離装置10から搬出された重質物の廃プラスチックが搬入される。
【0039】
搬入された重質物の廃プラスチックは、ローラ22aの回転に伴って、コンベア22によって搬送される。近赤外線センサ23は、コンベア22上の廃プラスチックに近赤外線Lを照射して反射した近赤外光を受信することによって、廃プラスチックの材質を識別する。近赤外線センサ23によって検出された近赤外光のセンサ情報は、制御部21に出力される。
【0040】
制御部21は、入力されたセンサ情報に基づいて、気体供給部24を制御することにより、所定のタイミングで、コンベア22の搬出側において気体噴射部25から例えば空気などの気体Aを噴射するエアジェットを行う。これにより、異なる材質の廃プラスチックSa,Sbを分類する。具体的に、塩素の含有率が低いPETやPSなどの廃プラスチックSaと、塩素の含有率が高いPEやPP、およびPVCやPVCDなどの廃プラスチックSbとがそれぞれ、分離回収トレイ26a,26bに分離回収される。これにより、廃プラスチックSa,Sbは、塩素の含有率が低い低含有の廃プラスチックSaと、残渣となる塩素の含有率が高い高含有の廃プラスチックSbとに分類される。なお、PE、PP、PVCを材質判定によって分離回収するようにしても良い。
【0041】
ここで、低含有の廃プラスチックSaの回収率は、プラスチック分離システム1に導入された廃プラスチックの量に対して、例えば15%程度であり、塩素の含有率は例えば1%未満に低下する。
図1に示すように、低含有の廃プラスチックSaに対しては、化学反応により組成変換した後にリサイクルするケミカルリサイクルや、上述したマテリアルリサイクルを行うことができる。
【0042】
一方、残渣として回収される高含有の廃プラスチックSbの回収率は、(30-15=)15%程度であり、塩素の含有率は、当初の例えば4倍程度の4%に増加する。すなわち、プラスチック分離システム1においては、導入された廃プラスチックの量に対して15%程度が残渣となって、サーマルリサイクルなどに供されることになる。
【0043】
以上説明した一実施形態によれば、プラスチック分離システム1が、比重分離装置10の後段に材質判定分離装置20を備えて構成され、さらに、比重分離装置10および材質判定分離装置20の前段に、破砕処理装置30を設けていることにより、塩素の含有率が低減された廃プラスチックを回収することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良い。上述した各実施形態および各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0045】
例えば、上述した一実施形態において、プラスチック分離システム1に投入する廃プラスチックに含有される塩素の含有率や、比重分離装置10や材質判定分離装置20における分離の割合などはあくまでも例に過ぎず、廃プラスチックの性状によって種々の値を採り得る。
【0046】
また、上述した一実施形態においては、破砕処理装置30を比重分離装置10の前段に配置しているが、破砕処理装置30を比重分離装置10の後段で材質判定分離装置20の前段、すなわち、比重分離装置10と材質判定分離装置20との間に設けることも可能である。
【0047】
また、上述した一実施形態においては、比重分離装置10によって廃プラスチックを軽質物の廃プラスチックと重質物の廃プラスチックとの2種類に分離しているが、必ずしも2種類に限定されず、3種類以上に分離しても良い。その場合、後段の材質判定分離装置20に投入する廃プラスチックは、最も比重が大きい廃プラスチックとすることが可能である。
【0048】
また、上述した一実施形態においては、材質判定分離装置20によって、重質物の廃プラスチックを、塩素の含有率が低い低含有の廃プラスチックSaと、残渣となる塩素の含有率が高い高含有の廃プラスチックSbとの2種類に分離しているが、3種類以上に分離させることも可能である。3種類以上に分離された廃プラスチックのうち、塩素の含有率が最も大きい廃プラスチックを残渣としたり、塩素の含有率の最も小さい廃プラスチックをケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルに利用したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 プラスチック分離システム
10 比重分離装置
20 材質判定分離装置
21 制御部
22 コンベア
22a ローラ
23 近赤外線センサ
24 気体供給部
25 気体噴射部
26 回収部
26a,26b 分離回収トレイ
30 破砕処理装置
A 気体
L 近赤外線
Sa,Sb 廃プラスチック