IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GIANTの特許一覧

<>
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図1
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図2
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図3
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図4
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図5
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図6
  • 特開-改質されたコーヒーの製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010699
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】改質されたコーヒーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/00 20060101AFI20230113BHJP
   A23L 5/30 20160101ALN20230113BHJP
【FI】
A23F5/00
A23L5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115245
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2021113643の分割
【原出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】520287356
【氏名又は名称】株式会社GIANT
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュンソク
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英樹
【テーマコード(参考)】
4B027
4B035
【Fターム(参考)】
4B027FB21
4B027FC01
4B027FC02
4B027FQ01
4B027FQ03
4B027FR20
4B035LC01
4B035LG33
4B035LP49
4B035LT20
(57)【要約】
【課題】改質されたコーヒーを製造する新規技術の提供。
【解決手段】改質されたコーヒーを製造する方法であって、
原料コーヒーに交流電界を印加する印加工程を含む、改質されたコーヒーの製造方法。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質されたコーヒーを製造する方法であって、
原料コーヒーに交流電界を印加する印加工程を含む、改質されたコーヒーの製造方法。
【請求項2】
前記印加工程は、電圧100V以上300V以下、電流10mA以上100mA以下の条件で前記原料コーヒーに交流電界を印加することを含む、請求項1に記載の改質されたコーヒーの製造方法。
【請求項3】
前記印加工程は、交流電界の周波数20kHz以上100kHz以下、電界強度1000V/m以上10000V/m以下の条件で、前記原料コーヒーに交流電界を印加することを含む、請求項1又は2に記載の改質されたコーヒーの製造方法。
【請求項4】
前記印加工程は、コーヒー改質装置を用い、原料コーヒーに交流電界を印加する工程を含み、
前記のコーヒー改質装置は、
印加部材と、容器部材とを備え、
前記印加部材は、
前記容器部材を配置可能な容器配置部と、
前記容器配置部を通じ、原料コーヒーに交流電界を印加可能とする印加手段と、
を有し、
前記容器部材は、前記印加部材からの交流電界を容器部材内部のコーヒーに伝達可能に構成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の改質されたコーヒーの製造方法。
【請求項5】
原料コーヒーに交流電界を印加する印加工程を含む、コーヒーの改質方法。
【請求項6】
改質されたコーヒーを製造する装置であって、
印加部材と、容器部材とを備え、
前記印加部材は、
前記容器部材を配置可能な容器配置部と、
前記容器配置部を通じ、原料コーヒーに交流電界を印加可能とする印加手段と、
を有し、
前記容器部材は、前記印加部材からの交流電界を容器部材内部のコーヒーに伝達可能に構成されている、コーヒー改質装置。
【請求項7】
前記印加手段は、前記原料コーヒーに対し、電圧100V以上300V以下、電流10mA以上100mA以下、交流電界の周波数20kHz以上100kHz以下、電界強度1000V/m以上10000V/m以下の条件で印加可能な手段である、請求項6に記載のコーヒー改質装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改質されたコーヒーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、コーヒー豆を焙煎して挽いた粉末から湯または水で成分を抽出した飲料である。
ここで、近年、新しい嗜好性を持ったコーヒーの製品開発に注目が集まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、改質されたコーヒーの製造方法として、コーヒー生豆に特定量の特定のアミノ酸類と特定量の特定の糖類とを担持させた後、焙煎、粉砕、抽出する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、コーヒー生豆に高圧処理を施すことで、コーヒー豆の焙煎後に香りのよい、より高品質なコーヒー生豆を製造する技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-244812号公報
【特許文献2】特開2014-209905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術のあるところ、本発明は、改質されたコーヒーを製造する新規技術の提供を課題とする。
また、本発明の好ましい実施の形態では、苦みと甘味のバランスに優れた改質されたコーヒーを製造する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、改質されたコーヒーを製造する方法であって、
原料コーヒーに交流電界を印加することを含む、改質されたコーヒーの製造方法である。
【0008】
ここで、本明細書において、「原料コーヒー」は、本発明の改質されたコーヒーの製造方法に供する前の原材料としてのコーヒーを指す。
【0009】
本発明によれば、原料コーヒーに交流電界を印加することで、苦みと甘味のバランスに優れた、改質されたコーヒーを提供することができる。
また、原料コーヒーに交流電界を印加することで、苦みや雑味が少なく、バリスタが入れたコーヒーの味わいにより近いコーヒーを提供することができる。
そして、本発明によれば、苦みと甘味のバランスに優れ、かつ、苦みや雑味が少なく、旨味や甘みを引き出す事ができる。
【0010】
また、本発明の好ましい形態では、電圧100V以上300V以下の条件で、前記原料コーヒーに交流電界を印加することを含む。
【0011】
また、本発明の好ましい形態では、印加工程は、電流10mA以上100mA以下の条件で、20分以上、前記原料コーヒーに交流電界を印加することを含む。
【0012】
また、本発明の好ましい形態では、印加工程は、交流電界の周波数20kHz以上100kHz以下の条件で、前記原料コーヒーに交流電界を印加することを含む。
【0013】
また、本発明の好ましい形態では、印加工程は、電界強度1000V/m以上10000V/m以下の条件で、前記原料コーヒーに交流電界を印加することを含む。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記印加工程は、コーヒー改質装置を用い、原料コーヒーに交流電界を印加する工程を含み、
前記のコーヒー改質装置は、
印加部材と、容器部材とを備え、
前記印加部材は、
前記容器部材を配置可能な容器配置部と、
前記容器配置部を通じ、原料コーヒーに交流電界を印加可能とする印加手段と、
を有し、
前記容器部材は、前記印加部材からの交流電界を容器部材内部のコーヒーに伝達可能に構成されている。
本発明の好ましい実施の形態によれば、苦みと甘味のバランスに優れた、改質されたコーヒーを提供することができる。
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、苦みや雑味が少なく、バリスタが入れたコーヒーの味わいにより近いコーヒーを提供することができる。
そして、本発明の好ましい実施の形態によれば、苦みと甘味のバランスに優れ、かつ、苦みや雑味が少なく、旨味や甘みを引き出す事ができる。
【0015】
また、本発明は、コーヒーの改質方法でもある。
【0016】
また、本発明は、改質されたコーヒーを製造する装置であって、
印加部材と、容器部材とを備え、
前記印加部材は、
前記容器部材を配置可能な容器配置部と、
前記容器配置部を通じ、原料コーヒーに交流電界を印加可能とする印加手段と、
を有し、
前記容器部材は、前記印加部材からの交流電界を容器部材内部のコーヒーに伝達可能に構成されている、コーヒー改質装置でもある。
【0017】
また、本発明の好ましい形態では、前記印加手段は、電圧100V以上300V以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段である。
【0018】
また、本発明の好ましい形態では、前記印加手段は、電流10mA以上100mA以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段である。
【0019】
また、本発明の好ましい形態では、印加手段は、交流電界の周波数20kHz以上100kHz以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段である。
【0020】
また、本発明の好ましい形態では、印加手段は、電界強度1000V/m以上10000V/m以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段である。
【0021】
本発明の改質されたコーヒーを製造する装置によれば、使用者のコーヒー抽出の練度によらず、バリスタが入れたコーヒーの味わいにより近いコーヒーを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、改質されたコーヒーを製造する新規技術の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態にかかるコーヒー改質装置1の概要図であり、印加手段を示す内部透過図である。
図2】一実施形態にかかるコーヒー改質装置1の概要図であり、印加手段を示す内部透過図である。
図3】一実施形態にかかるコーヒー改質装置1のa)平面図、b)正面図、c)断面図である。
図4】一実施形態にかかるコーヒー改質装置1のa)平面、b)正面の内部透過図である。
図5】コーヒー改質装置1の使用形態を示す図である。
図6】コーヒー改質装置1の使用形態を示す断面模式図である。
図7】試験例1の結果を示すグラフである。なお、図7において、評点0(基準)を示す線が比較例(基準品)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0025】
以下、本発明の改質されたコーヒーに用いる原料コーヒーについて、好ましい形態を説明する。
ここで、本明細書において、「原料コーヒー」は、本発明の改質されたコーヒーの製造方法に供する前の原材料としてのコーヒーを指す。
また、本明細書において、「改質されたコーヒー」は、本発明の改質されたコーヒーの製造方法に供した後のコーヒーを指す。
【0026】
本発明に用いることのできる原料コーヒーに用いられるコーヒー豆の品種は特に制限されない、
コーヒー豆の品種としては、例えば、アラビカ種(コフィア・アラビカ)とロブスタ種(フィア・カネフェラ)を好ましく挙げることができる。
また、原料コーヒーに用いられるコーヒー豆は、複数種のコーヒー豆をブレンドしたものであってもよい。
【0027】
また、原料コーヒーの用意にあたり、そのコーヒーの抽出方法にも特に制限はない。
コーヒー豆の抽出方法としては、ペーパーフィルターを使いコーヒー豆にお湯をくぐらせて抽出する方法、サイフォン式(蒸気圧を利用してコーヒーの成分を抽出する方法)、高圧出方法、水出抽出法の何れであってもよい。
【0028】
また、原料コーヒーは、既製品のコーヒー飲料を用いることもできる。
【0029】
本発明の改質されたコーヒーの製造方法に供する原料コーヒーの量は、好ましくは100mL以上、150mL以上を目安とすることができる。
本発明の改質されたコーヒーの製造方法に供する原料コーヒーの量は、好ましくは2L以下、より好ましくは1.5L以下、より好ましくは1L以下、より好ましくは850mL以下、さらに好ましくは500mL以下、特に好ましくは350mL以下を目安とすることができる。
【0030】
原料コーヒーの量を上記範囲内とすることで、例えば、店頭でのコーヒーの提供に好適な方法とすることができる。
【0031】
また、工業生産する場合には、原料コーヒーの量に特に制限はない。
【0032】
なお、本発明においては、原料コーヒーに対し、ガムシロップ、ミルクなどが添加された物であってもよい。
ただし、本発明の製造方法に供する前に、原料コーヒーに対して別途調味する必要はない。
【0033】
以下、本発明の印加工程について説明する。
【0034】
[印加工程]
印加工程は、原料コーヒーに交流電界を印加する工程である。
以下、印加工程について、より好ましい形態を説明する。
【0035】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界にかかる電圧は、好ましくは50V以上、より好ましくは75V以上、さらに好ましくは150V以上である。
【0036】
また、印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界にかかる電圧は、好ましくは300V以下、より好ましくは275V以下である。
【0037】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界にかかる電流は、好ましくは10mA以上、より好ましくは20mA以上、さらに好ましくは40mA以上である。
【0038】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界にかかる電流は、好ましくは100mA以下、より好ましくは75mA以下、さらに好ましくは60mA以下である。
【0039】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界の周波数は、好ましくは20kHz以上、より好ましくは40kHz以上、さらに好ましくは60kHz以上である。
【0040】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界の周波数は、好ましくは100kHz以下、より好ましくは85kHz以下である。
【0041】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界の電界強度は、好ましくは1000V/m以上、より好ましくは1500V/m以上、より好ましくは2500V/m以上、より好ましくは4000V/m以上、さらに好ましくは4500V/m以上である。
【0042】
印加工程において、原料コーヒーに印加される交流電界の電界強度は、好ましくは10000V/m以下、より好ましくは7500V/m以下、より好ましくは6000V/m以下である。
【0043】
印加工程において、原料コーヒーへの印加時間は、好ましくは2分以上、より好ましくは3分以上、さらに好ましくは4分以上である。
また、印加工程における印加時間は、好ましくは25分以下、より好ましくは20分以下、さらに好ましくは15分以下である。
【0044】
ここで、原料コーヒーの量が150mL~250mLである場合、
原料コーヒーへの印加時間は、好ましくは2分以上である。
また、原料コーヒーの量が150mL~250mLである場合、
原料コーヒーへの印加時間は、5分以下を目安とすることができる。
【0045】
また、原料コーヒーの量が600mL~1000mLである場合、
原料コーヒーへの印加時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは7分以上、さらに好ましくは10分以上である。
また、原料コーヒーの量が600mL~1000mLである場合、
原料コーヒーへの印加時間は、好ましくは25分以下、より好ましくは20分以下を目安とすることができる。
【0046】
上記の条件で印加工程を行うことで、苦みと甘味のバランスに優れた改質されたコーヒーを提供することができる。
【0047】
ここで、本発明において、原料コーヒーへの印加は、コップ型容器に入れた原料コーヒーの底面より、交流電界を印加する形態とすることが好ましい。
【0048】
なお、本発明において、印加工程を行う手段に特に制限はない。
例えば、後述の図1図3に示すようなコーヒー改質装置1を用いることができる。
【0049】
<コーヒー改質装置1>
以下、図1~5を参照しつつ、本発明のコーヒー改質装置1の説明をする。
【0050】
図1に例示するコーヒー改質装置1は、
印加部材3と、容器部材2とを備える。
そして、印加部材3は、容器部材2を配置可能な容器配置部31と、容器配置部31を通じ、原料コーヒーに交流電界を印加可能とする印加手段311とを有する。
【0051】
そして、容器部材2は、前記印加部材3からの交流電界を容器部材2内部のコーヒーに伝達可能に構成されている。
【0052】
本実施例において、容器部材2は、コップ型である。
上記形態とすることで、例えば、店頭でのコーヒーの提供により好適である。
ただし、本発明において、容器部材2は、原料コーヒーを貯留可能な形状であれば、その形状に特に制限はない。
【0053】
また、本実施例に容器部材2の底面形状は、略円形状である。
上記形態とすることで、コーヒーに対して、より効率よく交流電界を印加することができる。
【0054】
また、容器部材2の容量は、好ましくは100mL以上、150mL以上を目安とすることができる。
容器部材2の容量は、好ましくは2L以下、より好ましくは1.5L以下、より好ましくは1L以下、より好ましくは850mL以下、さらに好ましくは500mL以下、特に好ましくは350mL以下を目安とすることができる。
容器部材2の容量を上記範囲内とすることで、例えば、店頭でのコーヒーの提供により好適である。
ただし、本発明において、容器部材2の容量に特に制限はない。
【0055】
また、本実施例において、容器部材2の底面部は、前記印加部材3からの交流電界を容器部材2内部のコーヒーに伝達可能に構成されている。
上記形態とすることで、より効率よく、原料コーヒーへの交流電解の印加が可能となる。
ここで、本発明においては、容器部材2の少なくとも一部を通じ、印加部材3からの交流電界を容器部材2内部のコーヒーに伝達可能に構成されていれば、足りる。
【0056】
ここで、容器部材2の材質は、印加部材3からの交流電界を容器部材2内部のコーヒーに伝達可能なものであれば、特に制限はない。容器部材2の材質としては、例えば、樹脂製、木製、金属製、紙製の容器部材2とすることができる。
【0057】
また、本実施例の印加部材3は、容器部材2を配置可能な容器配置部31を備える。
本実施例において、印加部材3の全体形状は、両端部に弧を有する扁平形状である。
印加部材3を扁平形状とすることで、コーヒー改質装置1の全体形状をコンパクトにすることができる。
ただし本発明においては、印加部材3の形状に特に制限はなく、例えば、略長方形の板形状とすることもできる。
【0058】
ここで、容器配置部31の形状は、容器部材2の底面形状に対応する形状であることが好ましい。
上記形態とすることで、コーヒーに対して、より効率よく交流電界を印加することができる。
【0059】
また、本実施例の印加部材3は、容器配置部31を通じ、原料コーヒーに交流電界を印加可能とする印加手段311を備える。
【0060】
本実施例において、印加手段311は、容器配置部31に設けられている。
上記形態とすることで、コーヒーに対して、より効率よく交流電界を印加することができる。
ただし、本発明において、印加手段311は、コーヒーに対して、交流電界を印加することができるものであれば、その位置、大きさ等に特に制限はない。
【0061】
ここで、印加手段311は、その印加条件を調整可能なものであることが好ましい。
【0062】
印加手段311がその印加条件を調整可能なものである場合の、より好ましい条件を説明する。
【0063】
印加手段311は、電圧100V以上300V以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段であることが好ましい。
【0064】
また、印加手段311は、電流10mA以上100mA以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段であることが好ましい。
【0065】
また、印加手段311は、交流電界の周波数20kHz以上100kHz以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段であることが好ましい。
【0066】
また、印加手段311は、電界強度1000V/m以上10000V/m以下の条件で原料コーヒーに印加可能な手段であることが好ましい。
【0067】
ここで、印加手段311のより好ましい印加条件は、前述の改質コーヒーの製造方法の数値範囲を援用することができる。
【0068】
本実施例において、印加部材3は、印加手段311の印加条件を調整可能な、タッチセンサー式の操作部312を備える。
前述の形態とすることで、コーヒーの種類、状況に合わせ、印加手段311の印加条件を調整することができる。
また、操作部312が印加部材3に設けられていることで、操作者は、より簡便に印加手段311の印加条件を調整することができる。
【0069】
ここで、本実施例において、タッチセンサー式の操作部312は、操作部312への使用者の接触回数に応じて、印加時間を調整可能とする。
具体的に、本実施例では、操作部312への接触回数に応じて以下の態様とすることが好ましい。
1回接触・・・設定1(2分通電):LED発光色変化
2回接触・・・設定2(3分通電):LED発光色変化
3回接触・・・設定3(5分通電):LED発光色変化
【0070】
ここで、タッチセンサー式の操作部312は、必ずしも印加条件を調整可能なものである必要はなく、例えば、印加手段311のオンオフのみを切り替えることのできるものであってもよい。
また、操作部312の位置、大きさ、機構にも、特に制限はない。
【0071】
また、本実施例において、操作部312と印加手段311とは、コード(図示せず)により電気的に接続されている。
【0072】
だたし、コードは、操作部312を用い、印加手段311の印加条件を調整とするものであれば、その機構に特に制限はない。
【0073】
また、本実施例において、印加部材3は、充電式のバッテリー部313を備える。
充電式のバッテリー部313を備える形態とすることで、持ち運び可能なコーヒー改質装置1を提供することができる。
【0074】
<コーヒーの改質方法>
また、本発明は、コーヒーの改質方法でもある。本発明のコーヒーの改質方法の奏するコーヒーの改質作用としては、苦みと酸味のバランス調整作用、苦み低減作用、酸味低減作用、旨味向上作用、コク味向上作用、甘味向上作用を挙げることができる。
ここで、本発明における改質作用は、前述の改質作用のうち、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは全ての改質作用を発揮する。
【0075】
ここで、本発明のコーヒーの改質方法によれば、印加により原料コーヒーに含まれる雑味、苦み成分が水和シェル構造となる。そして、雑味、苦み成分が水和シェル構造となることで、雑味や苦み成分のない、舌触りがまろやかな、コーヒーを提供することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施の条件は、上述の内容を援用することができる。
【実施例0077】
以下に実施例を用いて、より詳細に本発明について説明する。本実施例において、%(パーセント)による表記は、特に断らない限り質量を基準としたものである。
【0078】
[試験例1]
試験例1では、飲食品を専門とする評価者による官能評価を行った。
【0079】
(1)印加工程の条件について
・印加手段:電極(図4 印加手段311 参照)
・印加条件:
電圧 250V程度(100V~300Vの範囲内を維持するよう適宜調節)
電流 50mA程度(10mA~100mAの範囲内を維持するよう適宜調節)
交流電界の周波数 80kHz程度(20kHz~100kHzの範囲内を維持するよう適宜調節)
電界強度 5,000V/m 程度(1000V/m~10,000V/mの範囲内を維持するよう適宜調節)
【0080】
(2)試験及び評価
(2-1)試験の内容
まず、コーヒー改質装置1が備える容器部材2に800mLの原料コーヒーを投入した。
800mLの原料コーヒーに対し、図1図6に示すコーヒー改質装置1を用い、上記の条件での印加工程を、20分行った。
なお、比較例として、実施例と同ロットのコーヒーであって、印加工程に供さないものを実施例と同量用意した。
【0081】
(3)味覚分析
製造したコーヒーを、株式会社ハウス食品分析テクノサービスが実施する官能評価に供した。
株式会社ハウス食品分析テクノサービスでの味覚評価の専門家6名を評価者とした。
評価者は、比較例(印加工程に供していないコーヒー;表中 基準品)を0(基準)とし、基準からの変化を、下表に従い-3点~3点の範囲内で評価した。
【0082】
【表1】
【0083】
各評価者の評価結果の平均値を算出した。
結果を表2、図7に示す。
なお、図7において、全評価0(基準)の線が比較例(基準品)を示す。
【0084】
【表2】
【0085】
併せて、株式会社ハウス食品分析テクノサービスでの味覚評価の専門家6名による自由評価に供した。
自由評価の結果、以下のコメントを得た。
・基準品はとげとげしさ、苦味が立っている、後味がイガイガするのに対し、実施例は口当たりがよく滑らか。また、香りがやさしく華やかだった。
・実施例の方はまろやかで、旨味がいつまでも残る。基準品の方は苦味があり、パンチがある。基準品は後味が比較的残らない。
・基準品の方がややマイルドに感じた。
・基準品に比べ、実施例の方が、口から鼻に抜ける焦げ臭、焙煎臭が弱い。また、コーヒーそのものがとろっとしていて、口あたりがまろやかな印象だった。
・実施例は爽やかな酸味が感じられる。また、後味が強く残り、鼻から抜ける香りが良い。
・基準品の方は、トップに感じる味が明らかに強く感じた。実施例は基準品と比較して、まろやかで、コーヒーらしい味わいに感じた。
【0086】
(3)結果、及び考察
まず、表2に示すように、コーヒーに対し交流電界を印加することで、コーヒーの味の改質が生じることがわかった。
また、官能評価の結果、特に、コーヒーに対し交流電界を印加することで、顕著な苦みの低減が確認できた。
併せて、酸味の低減、コク及び甘味の増加が確認できた。
【0087】
上記結果は、改質されたコーヒーの苦みと酸味のバランスに優れることを示している。
すなわち、本試験の結果、原料コーヒーに交流電界を印加することにより、苦みと酸味のバランスに優れた改質されたコーヒーを製造できることがわかった。
【0088】
また、表2に示すように、コーヒーに対し交流電界を印加することで、まろやかさ、旨味に優れたコーヒーを製造できることがわかった。
【0089】
また、本試験例の結果、原料コーヒーに交流電界を印加することで、苦みや雑味が少なく、バリスタが入れたコーヒーの味わいにより近いコーヒーを提供することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は改質されたコーヒーの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 コーヒー改質装置
2 容器部材
3 印加部材
31 容器配置部
311 印加手段
312 操作部
313 バッテリー部
X コーヒー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7