(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106999
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】丈調整具
(51)【国際特許分類】
A41D 11/00 20060101AFI20230726BHJP
A41D 1/04 20060101ALI20230726BHJP
A41D 3/02 20060101ALI20230726BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20230726BHJP
A41D 1/14 20060101ALI20230726BHJP
A41D 27/10 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A41D11/00 J
A41D1/04 L
A41D3/02 B
A41D1/06 501D
A41D1/14 E
A41D1/14 F
A41D1/14 501D
A41D1/06 B
A41D1/06 F
A41D27/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008071
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】522030079
【氏名又は名称】大矢 敏昭
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】大矢 敏昭
【テーマコード(参考)】
3B031
3B035
【Fターム(参考)】
3B031AA02
3B031AB14
3B031AC01
3B031AC05
3B031AC10
3B031AC12
3B035AA01
3B035AA07
3B035AA08
3B035AB12
3B035AB17
3B035AC06
3B035AC08
3B035AC09
(57)【要約】
【課題】 既成の衣服に容易に装着でき、且つ調整及び復元を容易になし得る構造を持った丈調整具の提供。
【解決手段】 偏平袋1と、前記偏平袋1の長手方向の両端又は内部に両端部が固定され当該偏平袋1の内部において当該偏平袋1の長手方向に伸縮する伸縮部材2を備え、前記偏平袋1の表に前記伸縮部材2を加工するための通用口5を備え、伸展した状態の前記偏平袋1の長手方向の寸法は、略寸詰め寸法伸長した状態の前記伸縮部材2の寸法に設定されていることを特徴とする丈調整具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平袋と、前記偏平袋に両端部が固定され当該偏平袋の内部において当該偏平袋の長手方向に伸縮する伸縮部材を備え、
前記偏平袋の表に前記伸縮部材を加工するための通用口を備え、
伸展した状態の偏平袋における前記伸縮部材の両端部の固定位置の間隔は、略寸詰め寸法伸長した状態の前記伸縮部材の寸法に設定されていることを特徴とする丈調整具。
【請求項2】
前記偏平袋に、寸詰め寸法が異なる複数の伸縮部材が上下に重ねて固定されていることを特徴とする請求項1記載の丈調整具。
【請求項3】
前記伸縮部材は、寸詰め寸法が等しい複数の伸縮紐が並列に配置されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の丈調整具。
【請求項4】
前記伸縮部材は、寸詰め寸法が異なる複数の伸縮紐が並列に配置されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の丈調整具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の股下、袖丈、着丈又はウエスト丈などを調整するために衣服に取り付ける丈調整具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、育ち盛りの子供の身体は短い期間で大きく成長し、衣服が次々と切れなくなることが多いため、大きめの衣服を購入しがちである。
普段着であれば、多少大きめの衣服を着ることも可能であるが、所謂体操着やスポーツウエアなど、激しく運動する際に着用すべき衣服は、特に、袖丈や裾丈が長すぎると負傷の原因ともなる。
この様な実態に鑑み、丈調整機能を備えた衣服(例えば、下記特許文献参照。)も提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-303338号公報
【特許文献2】特開2004-263352号公報
【特許文献3】特開2016-29225号公報
【特許文献4】特開2016-202494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、着用すべき衣服にその様な丈調整機能が備えられていることは、稀であり、例えば、学校やクラブで指定された体操着などは、依然として身長が伸びる度に体形にあったものを購入せねばならず、従来の問題を解決するには至っていない。
既成の衣服に丈調整を目的として加工することも可能であるが、身長が伸びる度に煩雑な調整が必要になる他、相応の熟練を要すると言う問題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、既成の衣服に容易に装着でき、且つ調整及び復元を容易になし得る構造を持った丈調整具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために為された本発明による丈調整具は、偏平袋と、前記偏平袋に両端部が固定され当該偏平袋の内部において当該偏平袋の長手方向に伸縮する伸縮部材を備え、前記偏平袋の表に前記伸縮部材を加工するための通用口を備え、伸展した状態の偏平袋における前記伸縮部材の両端部の固定位置の間隔は、略寸詰め寸法(袖丈詰め、肩巾詰め、身巾詰め又は着丈詰め等のために伸縮部材に予定された巾詰め量又は丈詰め量)伸長した状態の前記伸縮部材の寸法に設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明による丈調整具は、丈調整の便宜のために、前記偏平袋に、寸詰め寸法が異なる複数の伸縮部材が上下に重ねて固定されている構成を採ることができる。
また、前記伸縮部材は、寸詰め寸法が等しい複数の伸縮紐が並列に配置されてなる構成や、寸詰め寸法が異なる複数の伸縮紐が並列に配置されてなる構成を採ることができる。
【0008】
前記寸詰め寸法の相違は、調整段階の変更幅ができるだけ均等になるような段階的な相違であることが望ましい。
尚、前記寸詰め寸法は、伸縮量、引張強度又は寸法等の如何なる要素で相違させても良い。
ここで調整とは、伸縮部材又は伸縮紐の全部又は一部を切断し、又は結束する等して寸法を変える等の操作を行うことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による丈調整具を使用すれば、貼着又は縫着によって容易に衣服に定着し、股下、袖丈、着丈又はウエスト丈などを容易に調整することができ、成長に応じて通用口を通して容易に寸詰めを解くことが出来る。
しかも、前記伸縮部材は、衣服と一体化する偏平袋の内部において伸縮する構成を備えているため、両端部のみが偏平袋に固定されているにも関わらず着脱時の支障となることもない。
【0010】
また、丈調整の便宜のために、前記偏平袋の内部に、寸詰め寸法が異なる複数の伸縮部材が上下に重ねて固定されている構成を採ることによって、通用口から伸縮部材を適宜切断することで、寸詰め状態を段階的に解くことが容易となり、衣服を元通りに復元することも容易となる。
【0011】
更に、前記伸縮部材に、寸詰め寸法が等しい複数の伸縮紐が並列に配置されてなる構成や、寸詰め寸法が異なる複数の伸縮紐が並列に配置されてなる構成を採ることによって、伸縮紐を適宜切断し伸縮部材の引張強度(寸詰め強度)を調整することをもって、丈調整具としての寸詰め寸法の微調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による丈調整具の一例を示す、(A):伸展状態における表生地を外した状態の平面図、(B):定常状態における表生地を外した状態の平面図、及び(C):伸展状態における平面図である。
【
図2】本発明による丈調整具の一例を示す、(A):伸展状態における側面図、(B):伸展状態における偏平伸縮部材の配置を示す側方から見た説明図、及び(C):定常状態における側面図である。
【
図3】本発明による丈調整具の一例を示す分解図である。
【
図4】本発明による丈調整具の一例を示す分解図である。
【
図5】本発明による丈調整具の一例を示す分解図である。
【
図6】本発明による丈調整具の一例を示す分解図である。
【
図7】本発明による丈調整具の一例を示す分解図である。
【
図8】本発明による丈調整具の一例を示す分解図である。
【
図9】本発明による丈調整具の装着状態を例示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による丈調整具の実施例を図面に基づき説明する。
図1に示す丈調整具は、長方形状の偏平袋1と、前記偏平袋1の長手方向の両端部又は内部に両端部が固定され当該偏平袋1の内部において当該偏平袋1の長手方向に伸縮する偏平伸縮部材(以下、「伸縮部材」と記す。)2と、前記偏平袋1の裏面を衣服に定着するための固定手段3を備えたものである。
尚、ここで「伸縮」とは、両端を離隔させる負荷が掛かることで伸長し無負荷時において定常状態へ復帰することを言う。
【0014】
前記偏平袋1は、装着する衣服の生地と同程度以上の伸縮性を備えた生地、例えば、ジャージの生地の様な運動時に良好な四肢の動きを許容する伸縮性を備えた表生地1aと裏生地1bを備え、四辺が閉じられ、四辺の外縁部に衣服に縫着するための縫い代4が設けられたマチを具備しない袋である。
前記偏平袋1は、表生地1aの中央部に、その長手方向を横切るスリットを備える。
当該スリットは、前記伸縮部材2を引出し、又は当該偏平袋1の内部にハサミ等の道具を挿し入れ、調整目的で伸縮部材2の一部又は全部を加工(切断等)するための通用口5として機能する。
尚、前記通用口5は、前記スリットに限らず指先等が引っ掛かり難い形態や向きを選択し、衣服の損傷の原因や着脱時の支障とならない構成を採用することが望ましい。前記スリットは、所謂アイロンパッチやしつけ縫いで塞いでおくこともできる。
【0015】
前記伸縮部材2は、ゴム等の顕著な伸縮性を持つ素材からなり、その素材を偏平な帯状に成形した偏平伸縮帯(以下、「帯状部材2a」という。)、その素材を紐状に成形した偏平伸縮紐(以下、「紐状部材2b」という。)、又はそれらを組み合わせたユニット部材(以下「調整ユニット」と言う。)である。
前記調整ユニットは、前記帯状部材2a又は紐状部材2bを上下に重ね、左右に並べ又は上下左右に束ねることによって構成される。
前記帯状部材2a、紐状部材2b及び調整ユニットは、繊維等で被覆する構成を採ることができる。
ここで、偏平とは、衣服の内側へ装着されても違和感を感じ難い薄手の形態を指す。前記紐状部材2bにあっても出来る限り薄く偏平に成形されていることが望ましい。
前記伸縮部材2は、その長手方向(伸縮方向)が前記偏平袋1の長手方向に沿う様に前記表生地1aと裏生地1bの間に配置され、当該伸縮部材2の両端部を当該偏平袋1に縫着することで前記偏平袋1と一体化する。
【0016】
上記丈調整具の寸詰め寸法は、前記伸縮部材2の収縮力が衣服の寸詰め部分(衣服の丈調整具によって収縮させられた部分)の引張荷重に耐え得る限り、前記伸縮部材2の伸長寸法から当該伸縮部材2の定常寸法を減じた寸法と略等しくなる。
ここで、前記伸縮部材2の伸長寸法とは、当該伸縮部材2の両端部が偏平袋1に固定されることで規制された最伸長時の寸法であり、前記伸縮部材2の定常寸法とは、前記寸詰め部分の荷重が掛かった状態(丈調整具単独では荷重が掛からない状態)で前記偏平袋1を折り畳みつつ最収縮した時の寸法である。
前記偏平袋1の内部に複数の伸縮部材2が平行に配置されている場合には、機能している各伸縮部材2の寸詰め寸法のなかで最も長いものが、その時の寸詰め寸法となる。
前記伸縮部材2の寸詰め寸法が過度に長いと、股下や袖や胴部の内側で滞留する生地の量が嵩むため、前記偏平袋1及び伸縮部材2にあっては、出来る限り薄手であることが望ましい。一方、伸縮部材2にあっては、股下や袖や胴部の寸詰めを維持するに十分な引張強度を持ち、且つ求められる寸詰め寸法をできるだけ小さい寸法で達成できる伸縮性を持つことが求められる。
【0017】
この例の前記固定手段3は、アイロン等の熱で溶解し常温で固化する圧着素材、又は当該圧着素材が塗布された圧着シートである。
比較的激しい運動や四肢を大きく動かす作業を行う時に着用する衣服に定着する場合であって、高い定着強度が求められる場合には、前記縫い代4に沿って衣服に縫着することで補強することができる。
前記偏平袋1は、装着される衣服が寸詰められる事無く最伸展した時に当該偏平袋1が最伸展する様に寸詰め方向に沿って固定される。前記偏平袋1の最伸展時には、内部の伸縮部材2にあっても当該偏平袋1の伸展寸法に規制された最大寸法となる。
偏平袋1、伸縮部材2及び圧着シート3はいずれも通常の洗濯に耐える素材であることが求められる。
【実施例0018】
この例は、前記偏平袋1の両端部又は内部に、前記伸縮部材2が、単独で(単数)又は上下に重ねて(複数)固定されたものである(
図3又は
図4参照)。
この例の前記伸縮部材2は、前記偏平袋1の内部の幅より僅かに狭い略均等な幅に成形されたゴムシートを綿等の織布で包んだもの(帯状部材2a)である。
【0019】
例えば、単独の帯状部材2aをもって200mmの寸詰めを行いたい場合には、前記帯状部材2aには定常寸法より200mm以上伸縮する(伸長し復帰する。以下同じ。)ことができるものを採用し、且つ当該帯状部材2aの両端部の固定位置の間隔(固定位置に挟まれた裏生地1bの長さ。以下、同じ)を当該伸縮部材2の定常寸法より200mm長く設定する(
図3参照)。
例えば、200mmの寸詰めと、100mmの寸詰めを段階的に行いたい場合には、前記帯状部材2a,2aを上下に重ねて固定する(
図4参照)。上位の帯状部材2aは、定常寸法より200mm以上伸縮することができるものを採用し、且つ当該帯状部材2aの両端部の固定位置の間隔は当該伸縮部材2の定常寸法より200mm長く設定する。一方、下位の帯状部材2aは、定常寸法より100mm以上伸縮することができるものを採用し、且つ当該帯状部材2aの両端部の固定位置の間隔は当該伸縮部材2の定常寸法より100mm長く設定する。
【0020】
製造の際、単独の伸縮部材2は、先ず、一方の端部を裏生地1bの適当な位置に固定(縫着)し、他方の端部を同裏生地1bにおける当該固定位置から当該伸縮部材2の伸長寸法(定常寸法+200mm)離れた位置に固定(縫着)する。
一方、前記帯状部材2a,2aを上下に重ねて固定する場合には、下位の伸縮部材2は、先ず、一方の端部を裏生地1bの適当な位置に固定(縫着)し、他方の端部を同裏生地1bにおける当該固定位置から当該伸縮部材2の伸長寸法(定常寸法+100mm)離れた位置に固定(縫着)する。一方、上位の伸縮部材2は、先ず、下位の伸縮部材2の全体を覆う様に、一方の端部を裏生地1bの適当な位置に固定(縫着)し、他方の端部を同裏生地1bにおける当該固定位置から当該伸縮部材2の伸長寸法(定常寸法+200mm)離れた位置に固定(縫着)する。
この様に、この実施例における表生地1a及び裏生地1bは、伸縮部材2の伸長寸法以上に長い寸法でなければならない。丈調整具の長さをより短くする際には、寸詰め寸法が長い上位の伸縮部材2で、下位の伸縮部材2の全体を覆う態様で固定することができる。また、前記上位及び下位の伸縮部材2として同じ仕様の帯状部材2aを用いた場合には、下位の伸縮部材2の長さを短くすることができる。
製造の際、単独の調整ユニットは、先ず、調整ユニット(又は当該調整ユニットを構成する全ての紐状部材2b)の一方の端部を裏生地1bの適当な位置に固定(縫着)し、他方の端部を同裏生地1bにおける当該固定位置から当該調整ユニットの伸長寸法(定常寸法+200mm)離れた位置に固定(縫着)する。
一方、前記調整ユニットを上下に重ねて固定する場合には、下位の調整ユニットは、先ず、調整ユニット(又は当該調整ユニットを構成する全ての紐状部材2b)の一方の端部を裏生地1bの適当な位置に固定(縫着)し、他方の端部を同裏生地1bにおける当該固定位置から当該調整ユニットの伸長寸法(定常寸法+100mm)離れた位置に固定(縫着)する。一方、上位の調整ユニットは、先ず、下位の調整ユニットの全体を覆う様に、調整ユニット(又は当該調整ユニットを構成する全ての紐状部材2b)の一方の端部を裏生地1bの適当な位置に固定(縫着)し、他方の端部を同裏生地1bにおける当該固定位置から当該調整ユニットの伸長寸法(定常寸法+200mm)離れた位置に固定(縫着)する。
この様に、この実施例における表生地1a及び裏生地1bは、調整ユニットの伸長寸法以上に長い寸法でなければならない。丈調整具の長さをより短くする際には、寸詰め寸法の大きい上位の調整ユニットで、下位の調整ユニットの全体を覆う態様で固定することができる。また、前記上位及び下位の調整ユニットとして同じ仕様の紐状部材2bからなる調整ユニットを用いた場合には、下位の調整ユニットの長さを短くすることができる。