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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107002
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】アタッチメント
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
B23K11/11 542
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008076
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】591146697
【氏名又は名称】愛知産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】井上 博貴
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165BA11
4E165CA02
4E165CA05
4E165CA06
4E165CA13
(57)【要約】
【課題】現実的な実装に耐えうる、スポット溶接用電極周囲に設置する、新たなシールドガス噴出用の装置を提供すること。
【解決手段】スポット溶接用電極用のアタッチメントであって、筒状体を構成する外周壁、内周壁、及び上部壁と、外周壁及び内周壁の間に設けられた整流部とを備え、外周壁には、整流部へのシールドガス供給部が設けられ、整流部は、シールドガス供給部から供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、少なくとも外周壁、内周壁、整流部が同一素材で構成され、整流部は少なくとも外周壁又は内周壁と連続した一体的構成部分を備えることからなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接用電極用のアタッチメントであって、
筒状体を構成する外周壁、内周壁、及び上部壁と、外周壁及び内周壁の間に設けられた整流部とを備え、
外周壁には、整流部へのシールドガス供給部が設けられ、
整流部は、シールドガス供給部から供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、
少なくとも外周壁、内周壁、整流部が同一素材で構成され、
整流部は少なくとも外周壁又は内周壁と連続した一体的構成部分を備える、シールドガス噴出用のアタッチメント。
【請求項2】
シールドガス供給部が、外周壁に対して複数設けられたノズルからなることを特徴とする請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項3】
スポット溶接用電極用のアタッチメントであって、
筒状体を構成する外周壁、内周壁、及び上部壁とを有し、
外周壁、内周壁、上部壁に囲まれた空間の間の上部には空間部が、下部には整流部が設けられ、
外周壁又は上部壁に、空間部へシールドガスを供給するシールドガス供給部が設けられ、
整流部は、シールドガス供給部から空間部を介して供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、
少なくとも外周壁、内周壁、整流部が同一素材で構成され、
整流部は少なくとも外周壁又は内周壁と連続した一体的構成を備える、シールドガス噴出用のアタッチメント。
【請求項4】
シールドガス供給部が、1つのみ設けられることを特徴とする請求項3に記載のアタッチメント。
【請求項5】
斜切円柱状であり、シールドガス供給部は最上部に設けられることを特徴とする請求項4に記載のアタッチメント。
【請求項6】
外周壁は、シールドガス供給部以外には外部へ向けた凸部を有さないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のアタッチメント。
【請求項7】
内周壁は、内側空間へむけた凸部を有さないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアタッチメント。
【請求項8】
抵抗溶接用の棒状電極周囲に設置されるアタッチメントであって、
筒状体を構成する外周壁及び内周壁と、外周壁及び内周壁の間に設けられた整流部を備え、
外周壁には、シールドガス供給部が設けられ、
内部壁は、内側空間へむけた凸部を有さず、
整流部は、シールドガス供給部から供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、
外周壁、内周壁、シールドガス供給部、整流部が同一素材で構成され、全体が一体形成されている、シールドガス噴出用のアタッチメント。
【請求項9】
外周壁は、シールドガス供給部以外には外部へ向けた凸部を有さないことを特徴とする、請求項8に記載のアタッチメント。
【請求項10】
外周径が30mm以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のアタッチメント。
【請求項11】
整流部の厚さが5mm以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のアタッチメント。
【請求項12】
外周壁及び内周壁の厚さが1mm以下であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のアタッチメント。
【請求項13】
外周壁から内周壁までを貫通する、固定部材挿入用の開口を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のアタッチメント。
【請求項14】
請求項1から12に記載のアタッチメントを備えた溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用電極周囲に設置する、シールドガス噴出用のアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接とは、典型的には2枚のワークを棒状電極で加圧しながら大電流を流し、抵抗熱によりワークを溶融して溶接する、抵抗溶接の一種である。溶融部はナゲットと呼ばれ、電極棒は通常冷却水で冷却されている。スポット溶接は、溶接部分が小さく、空間的に制限のある場所においても有利であり、自動車フレーム等、等も頻繁に使用されている。また、仕上がりが綺麗であるため、外観が重視される場合にも多く採用されている。
【0003】
スポット溶接に使用される電極は、チップやキャップチップなどと呼ばれることもあり、基本的には棒状・円柱状の胴体部分を有し、先端はフラット、ドーム、ラジアス、これらの組み合わせやオフセットなど、用途に応じて様々な形状のものが用いられる。
【0004】
スポット溶接には多くのメリットがある。しかしながら、課題のひとつとして、「焼け」などと呼ばれる変色部分が打痕周りに残る、ということがある。この「焼け」は、溶接時に生じる熱影響部の酸化により生じるものである。ワークが例えばステンレスである場合、当該「焼け」は耐腐食性に悪影響を与えることになるため、除去処理することが好ましい。また、美観が重要となる溶接物に関しては、このような焼け処理が要求されることが多い。したがって、これら「焼け」に対しては、手間・時間・費用をかけて除去作業を行っている。具体的処理方法としては、硝フッ酸、塩酸と硝酸の混合液などを使用した化学的処理方法、電解液を使用した電解法、切削を使用した機械的方法などが挙げられる。しかし、いずれも単なる除去処理だけでなく、用材の管理や後処理などにおいて、溶接装置とは別個の装置・手順が必要となるため、時間だけでなく人的資源、空間的資源、コストなど様々な負担が強いられる。
【0005】
このような状況に対して、焼け自体の発生を防ぐべく、スポット溶接用にシールドガス噴出装置を設けることが提案されてきた(特許文献1,特許文献2)。これらシールドガス噴出装置は、電極周囲にアルゴンガスなどのシールドガスを充填することにより、酸化を防ぎ、ひいては打点の変色を防ぐものである。
【0006】
しかしながら、これら技術の開示にもかかわらず、アーク溶接とは異なり、シールドガス噴出装置が一般に実装されている事実が殆ど見受けられず、未だに手間・時間・費用をかけて上記処理を行っているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-197977号公報
【特許文献2】特開2009-107000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、現実的な実装に耐えうる、スポット溶接用電極周囲に設置する、新たなシールドガス噴出用の装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明のスポット溶接用電極用のアタッチメントは、筒状体を構成する外周壁、内周壁、及び上部壁と、外周壁及び内周壁の間に設けられた整流部とを備え、外周壁には、整流部へのシールドガス供給部が設けられ、整流部は、シールドガス供給部から供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、少なくとも外周壁、内周壁、整流部が同一素材で構成され、整流部は少なくとも外周壁又は内周壁と連続した一体的構成部分を備えることからなる。
【0010】
さらに、本発明は、スポット溶接用電極用のアタッチメントであって、筒状体を構成する外周壁、内周壁、及び上部壁とを有し、外周壁、内周壁、上部壁に囲まれた空間の間の上部には空間部が、下部には整流部が設けられ、外周壁又は上部壁に、空間部へシールドガスを供給するシールドガス供給部が設けられ、整流部は、シールドガス供給部から空間部を介して供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、少なくとも外周壁、内周壁、整流部が同一素材で構成され、整流部は少なくとも外周壁又は内周壁と連続した一体的構成を備えることからなる。また、シールドガス供給部が、1つのみ設けられることが好適である。また、斜切円柱状であり、シールドガス供給部は最上部に設けられることが好適である。
【0011】
さらに、本発明は、抵抗溶接用の棒状電極周囲に設置されるアタッチメントであって、筒状体を構成する外周壁及び内周壁と、外周壁及び内周壁の間に設けられた整流部を備え、外周壁には、シールドガス供給部が設けられ、内部壁は、内側空間へむけた凸部を有さず、整流部は、シールドガス供給部から供給されたシールドガスを整流し下部へ流出させる整流構成を備え、外周壁、内周壁、シールドガス供給部、整流部が同一素材で構成され、全体が一体形成されていることからなる。
【0012】
また、外周壁は、シールドガス供給部以外には外部へ向けた凸部を有さないこと、内周壁は、内側空間へむけた凸部を有さないことが好適である。
また、外周壁から内周壁までを貫通する、固定部材挿入用の開口を備えていることが好適である。
【0013】
本発明者等は、検討の結果、従来の技術の実装における阻害要因として、スペース性・可動エリア性・焼け除去性・作業容易性・効率性・コスト性の要求を同時に満たす必要があるとの結論に至った。特に、スポット溶接におけるスペース性・可動エリア性は、スポット溶接が選択される理由そのものと密接に関係するため、非常に重要な要素である。同時に焼け除去性も重要であり、不十分な除去性であれば結局再処理が必要になってしまう。さらに、作業容易性・効率性・コスト性を満たさない限り、現場における実装は難しい。これらに鑑み、検討の末、本発明が完成された。
【0014】
本発明は、電極周囲に取り付けられるアタッチメントとして構成され、筒状体を構成する外周壁及び内周壁と、当該外周壁及び内周壁の間に設けられた整流部とを備えている。全体的に筒状・円柱状をしており、外周壁及び内周壁によって構成される内部空間がシールドガスの流路となる。したがって、上部からはシールドガス噴出用が流出しないよう上部壁等で塞がれ、外周壁又は上部壁には、シールドガス供給部が設けられる。典型的かつ好適には、シールドガス供給部は本体と一体に設けられるノズルであり、シールドガスを受け入れ、流入したガスを外周壁及び内周壁によって構成される内部空間に供給する。なお、当該シールドガス供給部はノズル形状に限られず、また外周壁に設けられた開口として構成され、当該開口に別途管等を挿入するなど、他の形態を排除するものではない。シールドガス供給部は、スポット溶接装置のスペース性・可動性への影響を減じるべく、好ましくはアタッチメントの上部、具体的には最上部又は外周壁の長手方向の中央位置より上部に設けられる。
【0015】
当該外周壁は、好適にはシールドガス供給部以外に外部へ向けた凸部を有さない。当該構成は、スペース性・可動性を担保しつつ、着脱容易性や汎用性を担保するのに重要である。また、内周壁にも内部空間への凸部を有さずに構成し、同様にスペース性・可動性を担保しつつ、着脱容易性、電極への接触の回避、品質等を担保する。
【0016】
さらに、外周壁から内周壁までを貫通する、固定部材挿入用の開口が設けられることで、アタッチメントを電極に固定することが可能になる。アタッチメントの固定は、特に限定されず公知の部材及び手段を使用可能であるが、好適には当該開口に挿入することで固定することができる部材、例えばネジを使用できる。当該開口に挿入するのみで固定できる本構成は、作業容易性・効率性・コスト性をより向上させると共に、スペース性・可動性への制限も最小限に抑えることができる。なお、ガスの流出を避けるべく、整流部の開口周囲は密壁にて構成されることが好ましい。
【0017】
整流部は、シールドガス供給部から供給されたガスを整流し、より長い層流を下部から提供する。このために用いられる整流構成は、公知の構成を利用できるが、外周壁及び/又は内周壁と一体化して製造することで、無駄もなくより高いシールド効果を得られる。具体的な整流構成としては、断面が規則的な立体的格子状である構成だけでなく、不規則な多孔性構成のいずれも良好な溶接結果となることが判明した。ただし、不規則な多孔性構成を採用する場合は、供給部からのガスが下部から排出可能な、連通性の確保を行った設計に留意が必要となる。
【0018】
本発明では、好適には外周壁、内周壁、整流部が同一素材でかつ一体構成されることが最適である。さらに、本発明において最も好適な整流構成を実現するためには、3Dプリンタによる製造が好適である。当該構成によって、最大限の小型化と、スペース性・可動性への制限を最小限に留める。また、整流部の形状の自由性を確保し、より好適な層流化が実現可能となる。
【0019】
本発明では、電極直径により好適な径が決まるため、特定の径に限定されるものではないが、外周径が30mm 以下、特に24mm以下になるように構成されれば、また、外周壁及び内周壁の厚さが1mm以下、特に0.5mm以下、整流部の厚さが5mm、特に3mm以下で構成されれば、殆どの電極に対応し、かつ溶接装置のスペース性・可動性への制限が最小限に抑えつつも、高いシールド効果を得ることができる。
【0020】
整流部へのシールドガス供給部は、複数設けることができる。好ましくはノズル状に形成され、好適には当該ノズルは外部へ向けた第1の管部と、より上部へ向けた第2の管部からなり、溶接装置の部位を避けつつスペース性・可動性を維持する。ガス供給を平均化すべく、供給部が2つの場合は互いに180度位置で対抗して、3つの場合は120度位置などとして、互いに同距離にて設けられることが好適である。
【0021】
また、別の実施形態として、シールドガス供給部が1つからなる構成も提供可能である。この場合、整流部への好適なガス供給の均質化のために、整流部の上部に空間部が設けられる。さらに、アタッチメントが斜切円柱状に形成され、その上部が空間部、下部が整流部とされ、最上部にシールドガス供給部が設けられる形状を採用できる。言い換えれば、アタッチメントの長手方向長さが、シールドガス供給部位置において最も大きくなるように構成される。空間内には案内用の流路を設けても良い。当該構成は流路の確保と整流部へのガス供給の均質化、小型化いずれの目的にも効果的である。なお、本発明は、ポータブルスポット溶接装置や、片側スポット溶接装置など、スポット溶接用電極を使用して抵抗溶接を行う様々な溶接機に採用可能であり、下側・上側・片側いずれの電極にも使用できる
【0022】
アタッチメントの素材は、3Dプリンタによる造形が可能な素材、限定されない例示として鉄・スレンレス等の鉄鋼系、チタン、銅等を使用することが可能であるが、シールドガス噴出の目的から、熱伝導性・耐熱性・耐食性・硬度が高いものが好ましい。このため、溶接電極に使用される素材と同様に、銅、又はクロム銅などの銅合金が好適である。
【0023】
使用態様としては、アタッチメントを電極に装着し、シールドガス供給部に、シールドガス管を繋ぐ。本発明では外周及び内周に余分な凸部がなく、固定用開口を介して簡単に電極に取り付け・取り外しを行うことができる。その後、シールドガス噴霧下において、スポット溶接を行う。当該工程にて、焼けを防ぎ良好な溶接が可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のアタッチメントは、スペース性・可動エリア性を維持しつつ、除去性・作業容易性・効率性・コスト性に優れ、現実的な実装に耐えうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のアタッチメントの一例を示す斜視図である。
図2図1のアタッチメントの正面図である。
図3図1のアタッチメントの平面図である。
図4図1のアタッチメントの底面図である。
図5図1のアタッチメントの断面図である。
図6】本発明のアタッチメントの他の例を示す斜視図である。
図7図6のアタッチメントの正面図である。
図8図6のアタッチメントの平面図である。
図9図6のアタッチメントの底面図である。
図10図6のアタッチメントの内部を示す透視図である。
図11図1のアタッチメントの整流部を示す斜視図である。
図12図6のアタッチメントの整流部を示す斜視図である。
図13図1のアタッチメントをスポット溶接装置に設置された状態を示す図である。
図14】溶接結果を示す比較図である。
図15】溶接結果を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例0027】
図1~5は、本発明のアタッチメントの一例を示す斜視図、正面図、平面図、底面図である。
【0028】
図1に記載のアタッチメント1は、全体が銅合金で一体形成されており、外周壁2、内周壁3、上部壁4と、外周壁2及び内周壁3の間に設けられた整流部5を備え、筒状かつ円柱状に構成されている。外周壁2にはノズル6,7が設けられている。アタッチメント1の外径は18mm、内壁の内径は12mmであり、外周壁2の厚さは0.5mm、内周壁3の厚さは0.5mmである。ノズル6,7を除く長さは21.5mmであり、外周壁2には外部へ向けた凸部は有しておらず、内周壁3は内側への凸部を有しない。
【0029】
ノズル6,7は、下端から14.5mmの位置に設けられており、各々、外側へ向けた第1の部分8と、アタッチメント1の軸10と平行な第2の部分9を備え、設置された際のスペース性と可動性を担保している。また、ノズル6,7はそれぞれ外周壁2の180度離隔位置に設けられ、可動性と整流部5への均質なガスの導入を担保している。
【0030】
整流部5は、全体として規則性のない多孔性構造(図11)を備えているが、空隙は最終的に下部へ連通している。また、整流部4は外周壁2、内周壁3、上部壁4と一体形成されていることにより、最小体積で非整流部分を生じることなく、かつ無駄なく下部へ層流を提供することが可能となっている。
【0031】
アタッチメント1の外周壁には、開口11が設けられている。当該開口11を介して、ネジにより電極に固定することで、取り付けが可能である。開口11は外周壁2から内周壁3を貫通しており、貫通した周囲は密壁で構成され、かつネジ受け溝を有し、着脱の容易さと、予定しないガス流出の防止を担保している。
【0032】
当該実施例に基づくアタッチメント1を、スポット溶接機に採用した状態を示す写真が図13である。スポット溶接機の上部電極の周囲に、アタッチメント1が設置されている。アタッチメント1は、開口11に設けられたネジ13により電極周囲に固定されている。アルゴンガスタンクから、ホース14を介してノズル6,7にシールドガスを供給可能に設置されている。取り外しも、ノズル6,7からホース14を外し、ネジ12を外せばよく、容易に行うことができる。
【実施例0033】
図6~10は、本発明のアタッチメントの他の例を示す斜視図、正面図、平面図、底面図、透視図である。主要な構成は実施例1と同様であるので、符号は同じものを使用しつつ「’」により区別し、相違点を主に説明する。
【0034】
アタッチメント1’は、外周壁2’、内周壁3’、上部壁4’を備えるが、全体として斜切円柱状に構成されている。外周壁2’及び内周壁3’、上部壁4’から構成された内部空間において、上部には空間部12,下部に整流部5’を備えて構成される、最上部にはノズル6’が設けられている。アタッチメント1’の外径は22mm、内径は16mmであり、外周壁2’の厚さは0.5mm、内周壁3’の厚さは0.5mmである。外周壁2’には外部へ向けた凸部は有しておらず、内周壁3’は内側への凸部を有しない。空間部12はノズル6のガス流入口から整流部5’へ向けて徐々に広がっており、整流部5’への均質なガス供給を担保している。さらに、ノズル6’が1つで構成されていることにより、固有のデザイン性を備えつつ、溶接機としてのスペース性・可動性に対してより有利な構成となっている。ノズル供給部におけるアタッチメントの長さは47.8mmであり、180度離隔位置の最短部における長さは20.8mmである。
【0035】
整流部5’は、その断面が規則的な格子構造を萎えており、位相を異ならせつつ全体として下部へ連通している。また、整流部5’は外周壁2’、内周壁3’、上部壁4’と一体形成されていることにより、最小体積で非整流ガス部分を生じることなく、かつ無駄なく下部へ層流を提供することが可能となっている。
【0036】
本発明のアタッチメントを装着していない通常の溶接(比較例)と、実施例1及び実施例2に記載のアタッチメントを装着して行った溶接の結果が各々図14及び図15に示される。本例では、SUS304をワークとして使用し、スポット溶接器としてはARO社製のスポット溶接器を使用した。溶接条件は電流:6000A(直流インバータ)、溶接時間:600sec(30Hz)、加圧力:200daNであり、いずれもアタッチメント及びアルゴンシールドガスの有無以外は同条件である。
【0037】
図14及び15のいずれの比較例においても、打痕周りに明らかな変色部分が見受けられる。これに対し、実施例1及び実施例2のアタッチメントを付けて溶接を行ったものは、いずれも変色がなく、事後処理の必要のない品質に達している。したがって、本発明によれば、スペース性・可動エリア性・焼け除去性・作業容易性・効率性・コスト性の要求を同時に満たす、効率的な焼け防止手段が提供される。
【符号の説明】
【0038】
1 アタッチメント
2 外周壁
3 内周壁
4 上部壁
5 整流部
6 ノズル
7 ノズル
8 第1の部分
9 第2の部分
10 軸
11 開口
12 空間部
13 ネジ
14 ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15