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特開2023-107020固体材料の残量測定方法、昇華ガス供給方法および昇華ガス供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107020
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】固体材料の残量測定方法、昇華ガス供給方法および昇華ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20230726BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20230726BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20230726BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C23C16/448
B01J7/00 Z
B01J4/00 102
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008099
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 三樹夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 利幸
(72)【発明者】
【氏名】井田 健太郎
【テーマコード(参考)】
4G068
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB03
4G068AC05
4G068AC16
4G068AD40
4G068AF01
4G068AF12
4G068AF16
4G068AF25
4G068AF26
4G068AF31
4G068AF37
4G068DB06
4G068DC04
4G068DC10
4G068DD11
4G068DD13
4G068DD15
4K030EA01
4K030JA09
4K030KA39
4K030KA41
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045EE04
5F045EE05
(57)【要約】
【課題】固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給する際に、固体材料容器内の固体材料の残量損失を抑えることが可能な測定方法を提供する。
【解決手段】バッファータンクへ昇華ガスを補充する際に、前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算ステップと、固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算ステップと、および/または固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する切替判断ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華ガス供給方法は、
バッファータンクから後段のプロセスへ昇華ガスを供給する供給ステップと、
バッファータンクから後段のプロセスへ昇華ガスの供給を停止する供給停止ステップと、
前記供給停止ストップの際に、バッファータンクへ昇華ガスを補充する昇華ガス補充ステップと、を含み、
前記昇華ガス補充ステップは、
前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算ステップと、
固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算ステップと、および/または
固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する切替判断ステップと、を含む、
昇華ガス供給方法。
【請求項2】
前記第一残量演算ステップは、
バッファータンクに昇華ガスが貯留されている状態で、後段のプロセスへ送るための第三バルブを開く前のバッファータンク内の圧力(Popen)と、バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスに送った後に第三バルブを閉じた際のバッファータンク内の圧力(Pclose)との第一差圧ΔPと、バッファータンクの容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第一補正係数(C)から、バッファータンクから送られた昇華ガスの第一消費量(Consumption_1)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第一消費量(Consumption_1)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第一残量(Wr1)を演算する、
請求項1に記載の昇華ガス供給方法。
【請求項3】
前記第二残量演算ステップは、
後段のプロセスへ送るための第三バルブを閉じている状態で前記バッファータンク内の圧力(Pclose_1)と、いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクへ送り、バッファータンク内の圧力が設定圧力を達した際の圧力(P_full)との第二差圧ΔPと、バッファータンクの容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第二補正係数(C)から、バッファータンクから送られた昇華ガスの第二消費量(Consumption_2)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第二消費量(Consumption_2)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第二残量(Wr2)を演算する、
請求項1または2に記載の昇華ガス供給方法。
【請求項4】
前記切替判断ステップは、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクへ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブが開いた時の圧力値から低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、低下していないまたは第二閾値(Th)を超えている場合は、第一圧力測定手段よりも下流の昇華ガス配管上に異常があると判断し、低下しているまたは第二閾値(Th)を超えていない場合に、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さいか否かを判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さくない場合に、第一圧力測定手段よりも上流の昇華ガス配管またはいずれかの分岐管上に異常があると判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さい場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断する、または、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクへ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブが開いた時の圧力値から低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、低下していないまたは第二閾値(Th)を超えている場合は、前記固体材料容器よりも下流の分岐管あるいは昇華ガス配管上に異常があると判断し、低下しているまたは第二閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の昇華ガス供給方法。
【請求項5】
昇華ガス供給システムは、
少なくとも2つの固体材料が収容されている固体材料容器と、
前記固体材料容器のそれぞれから導出される分岐管が合流して形成されている昇華ガス配管と、
前記昇華ガス配管と連結される少なくとも1つのバッファータンクと、
前記少なくとも1つのバッファータンクのそれぞれから昇華ガスを後段の少なくとも1つのプロセスへ導入するための少なくとも1つの導入配管と、
前記昇華ガス配管あるいは各分岐管に設けられる第一圧力測定手段と、
前記固体材料容器と前記第一圧力測定手段との間に設けられる第一バルブ、あるいは各分岐管に設けられる各分岐バルブと、
前記第一圧力測定手段と前記少なくとも1つのバッファータンクとの間あるいは昇華ガス配管から各バッファータンクへ分岐される各分岐管に設けられる少なくとも1つの第二バルブと、
前記導入配管に設けられる少なくとも1つの第三バルブと、
前記第二バルブと前記第三バルブの間に設けられる第二圧力測定手段と、を備え、
前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算部と、
前記固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算部と、または/および、
前記固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第一切替判断部を、さらに備える、
昇華ガス供給システム。
【請求項6】
昇華ガス供給システムは、
少なくとも2つの固体材料が収容されている固体材料容器と、
前記固体材料容器のそれぞれから導出される分岐管が合流して形成されている昇華ガス配管と、
前記昇華ガス配管と連結される少なくとも1つのバッファータンクと、
前記少なくとも1つのバッファータンクのそれぞれから昇華ガスを後段の少なくとも1つのプロセスへ導入するための少なくとも1つの導入配管と、
前記固体材料容器のそれぞれに設けられる第一圧力測定手段と、
前記昇華ガス配管へ至る各分岐管に設けられる各分岐バルブと、
前記第一圧力測定手段と前記少なくとも1つのバッファータンクとの間あるいは昇華ガス配管から各バッファータンクへ分岐される各分岐管に設けられる少なくとも1つの第二バルブと、
前記導入配管に設けられる少なくとも1つの第三バルブと、
前記第二バルブと前記第三バルブの間に設けられる第二圧力測定手段と、を備え、
前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算部と、
前記固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算部と、または/および、
前記固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第二切替判断部を、さらに備える、
昇華ガス供給システム。
【請求項7】
前記第一残量演算部は、
バッファータンクに昇華ガスが貯留されている状態で、前記第三バルブを開く前のバッファータンク内の圧力(Popen)と、バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスに送った後に第三バルブを閉じた際のバッファータンク内の圧力(Pclose)との第一差圧ΔPと、バッファータンクの容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第一補正係数(C)から、バッファータンクから送られた昇華ガスの第一消費量(Consumption_1)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第一消費量(Consumption_1)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第一残量(Wr1)を演算する、
請求項6に記載の昇華ガス供給システム。
【請求項8】
前記第二残量演算部は、
前記第三バルブを閉じている状態で前記バッファータンク内の圧力(Pclose_1)と、いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクへ送り、バッファータンク内の圧力が設定圧力を達した際の圧力(P_full)との第二差圧ΔPと、バッファータンクの容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第二補正係数(C)から、バッファータンクから送られた昇華ガスの第二消費量(Consumption_2)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第二消費量(Consumption_2)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第二残量(Wr2)を演算する、
請求項6または7に記載の昇華ガス供給システム。
【請求項9】
前記前記第一切替判断部は、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクへ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブが開いた時の圧力値から低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、低下していないまたは第二閾値(Th)を超えている場合は、第一圧力測定手段よりも下流の昇華ガス配管上に異常があると判断し、低下しているまたは第二閾値(Th)を超えていない場合に、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さいか否かを判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さくない場合に、第一圧力測定手段よりも上流の昇華ガス配管またはいずれかの分岐管上に異常があると判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さい場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断する、
請求項6に記載の昇華ガス供給システム。
【請求項10】
前記第二切替判断部は、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクへ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブが開いた時の圧力値から低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、低下していないまたは第二閾値(Th)を超えている場合は、前記固体材料容器よりも下流の分岐管あるいは昇華ガス配管上に異常があると判断し、低下しているまたは第二閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断する、
請求項7に記載の昇華ガス供給システム。
【請求項11】
固体材料容器内の固体材料の残量を測定する残量測定方法は、
バッファータンクへ昇華ガスを補充する際に、
前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算ステップと、
固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算ステップと、および/または
固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する切替判断ステップと、を含む、
残量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給する際に、固体材料容器内の固体材料の残量測定方法、昇華ガス供給方法および昇華ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスは複数のプロセスから構成され、半導体集積デバイスを製造するためには成膜プロセスが必要である。成膜工程では、半導体素子を形成するための絶縁材料や導電材料などの複数の層が層状に形成され、機能が付与される。成膜プロセスは、材料の種類や構造によって異なる。例えば、ALD(原子層堆積)法は、数原子層を積層して非常に薄い膜を形成する方法である。
ALD(原子層堆積)法の特徴は、順番に適切に制御される単一の工程を繰り返すことである。第1のステップでは、ウェハーは前駆体で覆われる。第2のステップでは、反応室内の前駆体ガスを不活性ガス(例えば、アルゴンや窒素)でパージする。第3のステップでは、酸化剤または還元剤ガスを導入して前駆体と反応させ、ウェハー表面上に所望の材料を形成する。第4のステップでは、反応室内の酸化剤または還元剤ガスを不活性ガス(例えば、アルゴンや窒素)でパージする。以上の工程で原子層蒸着が構成されるため、各物質の消費は間欠的に進行するという特徴がある。このため、4つの工程のうち、工程1においてのみ前駆体ガスが消費される。これを利用することにより、前駆体の使用後の他のプロセスの進行中に、前駆体ガスをバッファ容器に補充することができる。また、ガスを使用する成膜プロセスとしてALD法以外に、CVD(化学的気相堆積)法もある。また、成膜プロセス以外にガスを使用するプロセスとして回路を形成する為のドライエッチング法がある。
【0003】
成膜用の前駆体としては、例えばアルミニウム、バリウム、ビスマス、クロム、コバルト、銅、金、ハフニウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、ニオブ、白金、ルテニウム、銀、ストロンチウム、タンタル、チタン、タングステン、イットリウム及びジルコニウムの無機化合物及び有機金属化合物などが挙げられる。これらの材料は蒸気圧が低いため、反応室への導入にあたり固体材料の場合には昇華させて供給する必要がある。従来の方法では、原料粉体を含む蒸気発生室において、原料粉体を加温し、飽和蒸気を発生させるとともに原料蒸気自身にキャリアガスを接触させることにより、原料粉体を含んだキャリアガスを成膜装置へ供給する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献2は、固体材料容器から昇華ガスをバッファータンクに送り込んで、一旦貯留させておき、後段のプロセスへ供給することを開示している。後段プロセスへの供給により消費されたガスを固体材料容器からバッファータンクへ補充する構成である。
【0005】
ALD法は、より小さく、より微細な半導体デバイスを製造するために必要な技術の一つである。しかし、半導体産業の進歩に伴い、成膜等に用いる蒸気圧の低い材料が増加している。蒸気圧が低いため、これらの固体材料を成膜室に導入する前に昇華させる必要がある。ガス導管(配管)の温度は、固体材料の昇華点より高く保つ必要がある。半導体製造プロセスは複雑であり、1つのプロセスにおける悪影響は、他のすべてのプロセスに影響を及ぼす。すなわち、プロセスの中断は、プロセス全体の遅延に直接関係する。従って、半導体製造装置への固体材料の連続供給は、スループットを確保するための重要な構成要素の一つである。また、固体材量を限界まで使用することによりコストを低減することが顧客から求められている。一方、固体材料の残量が供給限界を超えて低下して、半導体製造装置への原材料の供給が中断されると、ウェハーに大きなダメージを与える。
【0006】
半導体製造プロセスにおける固体材料の残量管理は、以下の課題がある。
1)固体材料の容器は、金属材料で構成されているため、容器内を直接見ることはできない。
2)ロードセル(重量計)による正確な重量測定は困難である。固体材料の容器はガス導管に接続され、ガス導管と容器の両方が加熱されるからである。
3)マスフローコントローラを使用した流量の累積計算方法は、積算による累積誤差が大きくなる可能性がある。また、機器のコスト、温度、スペースなどの理由から利用できない場合がある。
さらに、単に原料ガス圧力の低下を検出するだけでは、プロセスラインの異常を確実に判断することはできない。したがって、これらの問題を解決し、新しい残量測定方法を開発することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3-141192号公報
【特許文献2】国際公開第2021/067764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、固体材料の昇華ガスを後段のプロセスに供給する際に、固体材料容器内の固体材料の残量を高精度に測定できる測定方法、昇華ガス供給方法および昇華ガス供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一昇華ガス供給システムは、
固体材料が収容されている第一固体材料容器(1A)と、
固体材料が収容されている第二固体材料容器(1B)と、
前記第一、第二固体材料容器(1A,1B)のそれぞれから導出される第一、第二分岐管(3A、3B)が合流して形成されている昇華ガス配管(5)と、
前記昇華ガス配管(5)と連結されるバッファタンク(13)と、
前記バッファタンク(13)から昇華ガスを後段のプロセス(例えば、チャンバー)へ導入するための導入配管(14)と、
前記昇華ガス配管(5)(第一、第二分岐管(3A、3B)でもよい)に設けられる第一圧力測定手段(4)と、
前記第一固体材料容器(1A)と前記第一圧力測定手段(4)との間(あるいは第一分岐管(3A)に設けられる第一分岐バルブ(2A)と、
前記第二固体材料容器(1B)と前記第一圧力測定手段(4)との間(あるいは第二分岐管(3B)に設けられる第二分岐バルブ(2B)と、
前記第一圧力測定手段(4)と前記バッファタンク(13)との間に設けられる第二バルブ(10)と、
前記導入配管(14)に設けられる第三バルブ(15)と、
前記第二バルブ(10)と前記第三バルブ(15)の間(バッファタンク(13)に直接設けられてもよい)に設けられる第二圧力測定手段(11)と、
前記バッファタンク(13)から昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算部(121)と、
を備えていてもよい。
前記第一、第二固体材料容器から昇華ガスを前記バッファタンク(13)へ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算部(122)を、さらに備えていてもよい。
前記第一、第二固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第一切替判断部(131)を、さらに備えていてもよい。
【0010】
前記第一残量演算部(121)は、
バッファタンク(13)に昇華ガスが貯留されている状態で第三バルブ(15)を開く前のバッファータンク(13)内の圧力(Popen)と、バッファタンク(13)から昇華ガスを後段のプロセスに送った後に第三バルブ(15)を閉じた際のバッファータンク(13)内の圧力(Pclose)との第一差圧ΔPと、バッファタンク(13)の容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第一補正係数(C)から、バッファタンク(13)から送られた昇華ガスの消費量(Consumption_1)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第一消費量(Consumption_1)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第一残量(Wr1)を演算してもよい。
「第三バルブ(15)を開く前のバッファータンク(13)内の圧力(Popen)」において、「第三バルブ(15)を開く前」とは、例えば、第三バルブ(15)を開く直前のことである。なお、「直前」とは、昇華ガス供給システムが後段プロセス(例えば、成膜装置)から信号を受け取り、昇華ガス供給装置の第三バルブ(15)へ開信号を送る前のことである。
【0011】
前記第二残量演算部(122)は、
第三バルブ(15)を閉じている状態で前記バッファータンク(13)内の圧力(Pclose_1)と、いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファタンク(13)へ送り、バッファータンク(13)内の圧力が設定圧力(第一閾値(Th)に達した際の圧力(P_full)との第二差圧ΔPと、バッファタンク(13)の容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第二補正係数(C)から、バッファタンク(13)から送られた昇華ガスの消費量(Consumption_2)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第二消費量(Consumption_2)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第二残量(Wr2)を演算してもよい。
【0012】
前記第一切替判断部(131)は、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファタンク(13)へ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク(13)内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下していないまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えている場合は、第一圧力測定手段(4)よりも下流の昇華ガス配管(5)上に異常があると判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下しているまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えていない場合に、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さいか否かを判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さくない場合に、第一圧力測定手段(4)よりも上流の昇華ガス配管(5)またはいずれかの分岐管上に異常があると判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さい場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断してもよい。
「第二バルブ(10)が開いた時の圧力値」は、例えば、第一圧力測定手段(4)で測定した圧力である。
【0013】
第二昇華ガス供給システムは、
固体材料が収容されている第一固体材料容器(1A)と、
固体材料が収容されている第二固体材料容器(1B)と、
前記第一、第二固体材料容器(1A,1B)のそれぞれから導出される第一、第二分岐管(3A、3B)が合流して形成されている昇華ガス配管(5)と、
前記昇華ガス配管(5)と連結されるバッファタンク(13)と、
前記バッファタンク(13)から昇華ガスを後段のプロセス(例えば、チャンバー)へ導入するための導入配管(14)と、
前記第一、第二固体材料容器(1A、1B)のそれぞれに設けられる第三、第四圧力測定手段(4A,4B)と、
前記第一分岐管(3A)に設けられる第一分岐バルブ(2A)と、
前記第二分岐管(3B)に設けられる第二分岐バルブ(2B)と、
前記昇華ガス配管(5)に設けられる第二バルブ(10)と、
前記導入配管(14)に設けられる第三バルブ(15)と、
前記第二バルブ(10)と前記第三バルブ(15)の間(バッファタンク(13)に直接設けられてもよい)に設けられる第二圧力測定手段(11)と、
前記バッファタンク(13)から昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算部(121)と、
を備えていてもよい。
前記第一、第二固体材料容器から昇華ガスを前記バッファタンク(13)へ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算部(122)を、さらに備えていてもよい。
前記第一、第二固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第二切替判断部(132)を、さらに備えていてもよい。
前記第二切替判断部(132)は、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファタンク(13)へ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク(13)内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下していないまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えている場合は、前記固体材料容器よりも下流の分岐管あるいは昇華ガス配管(5)上に異常があると判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下しているまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断してもよい。
【0014】
第三昇華ガス供給システムは、
少なくとも2つの固体材料が収容されている固体材料容器(1A、1B、1C)と、
前記固体材料容器のそれぞれから導出される分岐管(3A、3B、3C)が合流して形成されている昇華ガス配管(5)と、
前記昇華ガス配管(5)と連結される少なくとも1つのバッファタンク(13A、13B)と、
前記少なくとも1つのバッファタンク(13A、13B)のそれぞれから昇華ガスを後段の少なくとも1つのプロセス(チャンバーRA、RB)へ導入するための少なくとも1つの導入配管(14A、14B)と、
前記昇華ガス配管(5)(あるいは各分岐管(3A、3B、3C)のそれぞれに設けられていてもよい)に設けられる第一圧力測定手段(4(4A、4B、4C))と、
前記固体材料容器(1A、1B、1C)と前記第一圧力測定手段(4)との間に設けられる第一バルブ(あるいは各分岐管に設けられる各分岐バルブ(2A、2B、2C))と、
前記第一圧力測定手段(4)と前記少なくとも1つのバッファタンク(13A、13B)との間(あるいは昇華ガス配管(5)から各バッファータンクへ分岐される各分岐管(15A、15B)に設けられる少なくとも1つの第二バルブ(10A、10B)と、
前記導入配管(14A、14B)に設けられる少なくとも1つの第三バルブ(15A、15B)と、
前記第二バルブ(10A、10B)と前記第三バルブ(15A,15B)の間(各バッファタンク(13A、13B)に直接設けられてもよい)に設けられる第二圧力測定手段(11A、11B)と、
前記バッファタンク(13A、13B)から昇華ガスを後段のプロセス(チャンバーRA、RB)へ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算部(121)と、
を備えていてもよい。
前記固体材料容器から昇華ガスを前記バッファタンク(13A、13B)へ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算部(122)を、さらに備えていてもよい。
前記固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第一切替判断部(131)を、さらに備えていてもよい。
また、前記固体材料容器(1A、1B、1C)のそれぞれに圧力測定手段(4A、4B、4C)を設け、前記分岐管(3A、3B、3C)に分岐バルブ(2A、2B、2C)を設けている場合に、前記固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第二切替判断部(132)を備えていてもよい。
【0015】
前記第一、第二、第三昇華ガス供給システムは、ALD装置、CVD装置及びエッチング装置などに組み込まれていてもよい。
【0016】
昇華ガス供給方法は、
バッファータンクから後段のプロセスへ昇華ガスを供給する供給ステップと、
バッファータンクから後段のプロセスへ昇華ガスの供給を停止する供給停止ステップと、
前記供給停止ストップの際に、バッファータンクへ昇華ガスを補充する昇華ガス補充ステップと、を含む。
前記昇華ガス補充ステップは、
前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算ステップと、
固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算ステップと、および/または
固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する切替判断ステップと、を含む。
前記第一残量演算ステップは、
バッファタンク(13)に昇華ガスが貯留されている状態で後段のプロセスへ送るための第三バルブ(15)を開く前のバッファータンク(13)内の圧力(Pclose)との第一差圧ΔPと、バッファタンク(13)の容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第一補正係数(C)から、バッファタンク(13)から送られた昇華ガスの第一消費量(Consumption_1)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第一消費量(Consumption_1)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第一残量(Wr1)を演算してもよい。
「第三バルブ(15)を開く前のバッファータンク(13)内の圧力(Pclose)」において、「第三バルブ(15)を開く前」とは、例えば、第三バルブ(15)を開く直前のことである。なお、「直前」とは、昇華ガス供給システムが後段プロセス(例えば、成膜装置)から信号を受け取り、昇華ガス供給装置の第三バルブ(15)へ開信号を送る前のことである。
前記第二残量演算ステップは、
後段のプロセスへ送るための第三バルブ(15)を閉じている状態で前記バッファータンク(13)内の圧力(Pclose_1)と、いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファタンク(13)へ送り、バッファータンク(13)内の圧力が設定圧力を達した際の圧力(P_full)との第二差圧ΔPと、バッファタンク(13)の容積(Vbuffer)、昇華ガスの密度(d)、第二補正係数(C)から、バッファタンク(13)から送られた昇華ガスの第二消費量(Consumption_2)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、前記演算された第二消費量(Consumption_2)の全量を差し引き、前記固体材料容器に収容されている固体材料の第二残量(Wr2)を演算してもよい。
前記切替判断ステップは、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスを後段のプロセスへ送るためのバッファタンク(13)へ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク(13)内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下していないまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えている場合は、第一圧力測定手段(4)よりも下流の昇華ガス配管(5)上に異常があると判断し、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下しているまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えていない場合に、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さいか否かを判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さくない場合に、第一圧力測定手段(4)よりも上流の昇華ガス配管(5)またはいずれかの分岐管上に異常があると判断し、最新の第一残量(Wr1)、最新の第二残量(Wr2)、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値(Th)より小さい場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断してもよい。
別の切替判断ステップは、
いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファタンク(13)へ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク(13)内の圧力が第一閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器内の圧力値が、第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断し、または、前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えるか否かを判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下していないまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えている場合は、前記固体材料容器よりも下流の分岐管あるいは昇華ガス配管(5)上に異常があると判断し、前記固体材料容器内の圧力値が第一圧力測定手段と第二圧力測定手段との間に配置される第二バルブ(10)が開いた時の圧力値から低下しているまたは前記固体材料容器内の圧力値が第二閾値(Th)を超えていない場合に、前記固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替ることを判断してもよい。
【0017】
固体材料容器内の固体材料の残量を測定する残量測定方法は、
バッファータンクへ昇華ガスを補充する昇華ガス補充する際に、
前記バッファータンクから昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算ステップと、
固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンクへ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算ステップと、および/または
固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する切替判断ステップと、を含む。
【0018】
情報処理装置は、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記固体材料容器内の固体材料の残量を測定する残量測定方法または前記昇華ガス供給方法を実行するためのコマンドを記憶しているメモリと、を有し、
前記プロセッサが、前記残量測定方法を実施してもよい。
【0019】
残量測定または昇華ガス供給プログラムは、
少なくとも一つのプロセッサにより、前記固体材料容器内の固体材料の残量を測定する残量測定方法または前記昇華ガス供給方法を実現するプログラムである。
コンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
前記固体材料容器内の固体材料の残量を測定する残量測定方法または前記昇華ガス供給方法を実行するためのコマンドを記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0020】
前記第一、第二残量演算部、第一、第二切替判断部は、メモリ、プロセッサ、ソフトウエアプログラムを有する情報処理装置(例えば、コンピュータ、サーバ)や、専用回路、ファームウエアなどで構成してもよい。情報処理装置は、オンプレミスまたはクラウドのいずれか一方、あるいは両方の組み合わせであってもよい。
第一、第二圧力測定手段などの各圧力測定手段は、例えば、プルドン菅式圧力計、ダイヤフラム式圧力計などが挙げられる。
【0021】
前記昇華ガス供給システムは、
各固定材料容器(1A、1B、1C)を加熱するための各加熱部と、
各バッファータンク(13、13A、13B)を加熱するための各加熱部と、
昇華ガス配管(5)、導入配管(14、14A、14B)、各分岐管(3A、3B、3C、14A、14B)を加熱あるいは保温するための手段と、
各分岐バルブ(2A、2B、2C、10A、10B、15A、15B)、第二、第三バルブ(10、15)を加熱あるいは保温するための手段と、
を備えていてもよい。
この構成によれば、昇華ガスの凝縮、固化を防ぐことができる。
【0022】
[効果]
マスフローメーター、マスフローコントローラ、ロードセルを用いずに固体材料の消費量を計算することで、固体材料容器内の残量を決定できる。固体材料容器内の固体材料の供給限界まで使用することができる。その結果、原料である固体材料の損失を低減できる。供給圧力が低下した場合には、固体材料の消費によるものか、配管上の異常によるものかを判定できる。正常消費あるいは異常の際には、固体材料容器を切り替えることで、連続的な昇華ガスの供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図2A】実施形態1に係る残量測定のフローチャートを示す。
図2B】別の残量測定のフローチャートを示す。
図3】実施形態1に係る昇華ガス供給システムを備えたALD装置の概略を示す。
図4】実施形態2に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図5】実施形態2に係る残量測定のフローチャートを示す。
図6】実施形態3に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図7】実施形態4に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図8】実施形態4に係る残量測定のフローチャートを示す。
図9】実施形態4に係る昇華ガス供給システムを備えたALD装置の概略を示す。
図10】実施形態5に係る昇華ガス供給システムの概略を示す。
図11】実施形態6に係る昇華ガス供給システム(CVD装置へ組み込み構成)の概略を示す。
図12】実施形態6に係る動作のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。本明細書において、「上流」及び「下流」とは、昇華ガス供給システムにおける昇華ガスの流れを基準とする。
【0025】
(実施形態1)
図1は、第一昇華ガス供給システムの概略を示す。
第一昇華ガス供給システム1は、所定量の固体材料が予め収容されている第一固体材料容器1Aと、所定量の固体材料(前述の固体材料と同じ固体材料)が予め収容されている第二固体材料容器1Bと、第一、第二固体材料容器1A、1Bのそれぞれから導出される第一、第二分岐管3A、3Bが合流して形成されている昇華ガス配管5と、昇華ガス配管5と連結されるバッファータンク13と、バッファータンク13から昇華ガスを後段のプロセス(例えば、チャンバー)へ導入するための導入配管14と、を備える。各固定材料容器1A、1Bを加熱するための各加熱部(電気ジャケット)と、バッファータンク13を加熱するための加熱部(例えば、電気ジャケット)と、昇華ガス配管5、導入配管14、各分岐管3A、3Bを加熱あるいは保温するための手段(例えば、温風ヒータ、電気ジャケット)が設けられている。
【0026】
第一昇華ガス供給システム1は、昇華ガス配管5に設けられる第一圧力測定手段4と、第一分岐管3Aに設けられる第一分岐バルブ2Aと、第二分岐管3Bに設けられる第二分岐バルブ2Bと、第一圧力測定手段4とバッファータンク13との間に設けられる第二バルブ10と、導入配管14に設けられる第三バルブ15と、第二バルブ10とバッファータンク13の間に設けられる第二圧力測定手段11と、を備える。
【0027】
第一昇華ガス供給システム1は、バッファータンク13から昇華ガスを後段のプロセスへ送る消費量から固体材料の残量を演算する第一残量演算部121と、第一、第二固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する第一切替判断部131を備える。
別実施形態として、第一、第二固体材料容器から昇華ガスを前記バッファータンク13へ送る移動量から固体材料の残量を演算する第二残量演算部122をさらに備える。
【0028】
第一残量演算部121は、バッファータンク13に昇華ガスが貯留されている状態で第三バルブ15を開く前(例えば、第三バルブ15を開く前とは、第三バルブ15を開く直前のことである。なお、直前とは、昇華ガス供給システムが後段プロセスから信号を受け取り、昇華ガス供給装置の第三バルブ15へ開信号を送る前のことである。)のバッファータンク13内の圧力Popenと、バッファータンク13から昇華ガスを後段のプロセスに送った後に第三バルブ15を閉じた際のバッファータンク13内の圧力Pcloseとの第一差圧ΔPと、バッファータンク13の容積Vbuffer、昇華ガスの密度d、第一補正係数Cから、バッファータンク13から送られた昇華ガスの消費量(Consumption_1)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、演算された第一消費量(Consumption_1)の全量を差し引き、その固体材料容器に収容されている固体材料の第一残量(Wr1)を演算する。
【0029】
第二残量演算部122は、第三バルブ15を閉じている状態でバッファータンク13内の圧力Pclose_1と、補充しているいずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンク13へ送り、バッファータンク13内の圧力が設定圧力(第一閾値(Th)を達した際の圧力P_fullとの第二差圧ΔPと、バッファータンク13の容積Vbuffer、昇華ガスの密度d、第二補正係数Cから、バッファータンク13から送られた昇華ガスの第一消費量(Consumption_2)を演算し、現に昇華ガスをバッファータンクに供給している固体材料容器に収容されている固体材料の初期重量(W)から、演算された第一消費量(Consumption_2)の全量を差し引き、固体材料容器に収容されている固体材料の第二残量(Wr2)を演算する。
【0030】
第一切替判断部131は、いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンク13へ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク13内の圧力が第一閾値Thを超えていない場合に、固体材料容器内の圧力値が、第二バルブ10が開いた時の圧力値から、例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上、低下しているか否かを判断し、または、固体材料容器内の圧力値が第二閾値Thを超えるか否かを判断する。固体材料容器内の圧力値が、第二バルブ10が開いた時の圧力値から低下していないまたは固体材料容器内の圧力値が第二閾値Thを超えている場合は、第一圧力測定手段4よりも下流の昇華ガス配管5上に異常があると判断される。第一切替判断部31は、固体材料容器内の圧力値が、第二バルブ10が開いた時の圧力値から低下しているまたは固体材料容器内の圧力値が第二閾値Thを超えていない場合に、最新の第一残量Wr1、最新の第二残量Wr2、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値Thより小さいか否かを判断する。最新の第一残量Wr1、最新の第二残量Wr2、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値Thより小さくない場合に、第一圧力測定手段4よりも上流の昇華ガス配管5またはいずれかの分岐管上に異常があると判断され、最新の第一残量Wr1、最新の第二残量Wr2、それら両方の平均値または加重平均値が第三閾値Thより小さい場合に、固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替る、と判断される。
【0031】
図2Aに第一昇華ガス供給システムの動作フローを示す。ここでは、バッファータンク13内の昇華ガスを消費する点に着目して残量を計算する。
【0032】
(S0)第一固体材料容器1Aからバッファータンク13へ予め昇華ガスが送られており、所定のガス圧(>第一閾値(Th))を維持している。第一分岐バルブ2Aは開けてあり、第二バルブ10は閉じられている。第二固体材料容器1Bは切替用の予備であり、第二分岐バルブ2Bは閉じられている。第三バルブ15は閉じられている。
【0033】
(S1)第三バルブ15を開く前(例えば、第三バルブ15を開く前とは、第三バルブ15を開く直前のことである。なお、直前とは、昇華ガス供給システムが後段プロセスから信号を受け取り、昇華ガス供給装置の第三バルブ15へ開信号を送る前のことである。)のバッファータンク13内の圧力(Popen)を測定する(バルブが開いた際の第二圧力測定手段11で測定する)。バッファータンク15から昇華ガスが後段のプロセスに送られる。圧力(Popen)は、メモリに記憶されてもよい。
(S2)第三バルブ15を開く。後段プロセスに昇華ガスを供給する。後段のプロセスの要求により第三バルブ15が開いている時間が設定される。昇華ガスが送られることで、バッファータンク15内の圧力は減少する(第二圧力測定手段11で測定する)。
【0034】
S3はS3-1からS3-5を含み、S4はS4-1からS4-3を含む。
(S3-1)第三バルブ15を閉じる。昇華ガスの供給を停止する。第三バルブ15が閉じている時間をダウンタイムと呼ぶ。昇華ガスが送られることで、バッファータンク15内の圧力は減少する(第二圧力測定手段11で測定する)。
(S3-1)第三バルブ15を閉じた際のバッファータンク13内の圧力(Pclose)を測定する(第二圧力測定手段11で測定する)。圧力(Pclose)は、メモリに記憶されてもよい。
(S3-2)第一差圧ΔPを演算する(ΔP=Popen-Pclose)。第一残量演算部21によって演算される。
(S3-4)バッファータンク13の容積Vbuffer、第一差圧ΔP、昇華ガスの密度d、第一補正係数Cから、バッファータンク13から送られた昇華ガスの第一消費量(Consumption_1)を演算する。第一残量演算部21によって演算される。
Consumption_1[kg]=Vbuffer[m]×ΔP[Pa]/0.1013[MPa]×d[kg/m]×C (1)
第一補正係数Cはなくてもよい。第一補正係数Cは、装置設置後の実証データから求められる係数であり、例えば、0.8~1.2の範囲から選択されてもよい。
(S3-5)第一固体材料容器1Aに収容されている固体材料の初期重量Wから、S6で演算された第一消費量(Consumption_1)を差し引く。これにより、バッファータンクの消費量から第一固体材料容器1Aに収容されている固体材料の第一残量Wr1を求めることができる。第一残量演算部21によって演算される。
第一残量Wr1[kg]=初期重量W-Consumption_1[kg] (2)
【0035】
(S4-1)第三バルブ15を閉じた後、第二バルブ10を開ける。これにより、第一固体材料容器1Aから昇華ガスをバッファータンク13へ送り込む。
(S4-2)予め設定された期間内(ダウンタイム内)で、バッファータンク13内の圧力が第一閾値Th(第二圧力測定手段11で測定した圧力>第一閾値Th)か否かが判断される。
(S4-3)バッファータンク13内の圧力が第一閾値Thを超えたら、第二バルブ10を閉じる。これにより、バッファータンク13に所定圧力の昇華ガスが貯留される。後段プロセスの要求により、いつでも昇華ガスを送ることが可能となる。
第一閾値Thは、例えば、後段のプロセスへ昇華ガスを供給できる圧力値となるように設定される。
ステップS1からS4-2までが繰り返される。
ただし、次の第一残量Wr1をS3-5で求める際に、初期重量Wに替わり直前に求められた第一残量Wr1を使用する。
第一残量Wr1[kg]=直前の第一残量Wr1-Consumption_1[kg]
残量計算は上記のように繰り返され、以下の計算式と等価である。
第一残量Wr1[kg]=初期重量W-ΣConsumption_1[kg] (3)
【0036】
以下のステップにおいて、固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する方法を示す。この方法では、後段プロセスへの昇華ガス供給停止中に、バッファータンクへの圧力補充(昇華ガス補充)が間に合わないあるいはできない場合に、固体材料容器に固体材料の補充限界(空)であると判断する。圧力補充が間に合わない場合は、固体材料容器からの昇華ガス量減少(供給限界レベル)、あるいは、バルブ等の配管ラインでの閉塞などの異常が挙げられる。本方法では、固体材料容器、配管を加熱し供給するため、バルブ等の配管ラインでの昇華ガスの凝縮(固化)が生じる危険があり、それを起因とした誤検知を防止することができる。
(S5-1)S4-2において、予め設定された期間内(ダウンタイム内)で、バッファータンク13内の圧力が第一閾値Thを超えていない場合(すなわち、第二圧力測定手段11で測定した圧力<第一閾値Th)に、第一固体材料容器1A内の圧力値(第一圧力測定手段4で測定される圧力)が、第二バルブ10が開いた時(S4-1の時)の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断する(すなわち、第二バルブ10の閉のときの第一圧力測定手段4で測定された圧力と、第二バルブ10の開のときの第一圧力測定手段4で測定された圧力とを比較し低下しているか否かを判断する)、または、第一固体材料容器1A内の圧力値(第一圧力測定手段4で測定される圧力)が第二閾値Thを超えるか否かを判断する。第二バルブ10は開いた状態で判断される。
第二閾値Thは、例えば、昇華ガスをバッファータンクに補充する際の固体材料容器の初期内圧(第一圧力測定手段4で測定される初期圧力値)から、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上低い値が挙げられる。
(S5-2)S5-1において、低下しているまたは第二閾値Thを超えている場合は、第一圧力測定手段4よりも下流の昇華ガス配管5上に異常があると判断する。例えば、第二バルブ10の閉塞などの異常があると判断する。
(S6-1)S5-1において、低下していないまたは第二閾値Thを超えていない場合に、S3およびS4で求められた最新の第一残量Wr1が第三閾値Thより小さいか否かを判断する。第三閾値Thは、例えば、初期重量Wの8%以上12%以下、8%以上11%以下、8%以上10%以下、8%以上9%以下、8%、7%などが挙げられる。
(S6-2)最新(直前に計算された)の第一残量Wr1が第三閾値Thより小さくない場合に、第一圧力測定手段4よりも上流の昇華ガス配管5または第一分岐管3A上に異常があると判断する。例えば、第一分岐バルブ2Aの閉塞などが異常であると判断される。
(S7)最新の第一残量Wr1が第三閾値Thより小さい場合に、補充限界レベルに達したと判断し、第一固体材料容器1Aから第二固体材料容器1Bへ切り替える。第一分岐バルブ2Aを閉じ、第二分岐バルブ2Bを開く。これにより、第二固体材料容器1Bから昇華ガスがバッファータンク13へ送られる。
第二固体材料容器1Bから昇華ガス補充をしている間に、第一固体材料容器1Aを新しい固体材料容器と交換する。上記ステップが繰り返されることで連続供給が可能となる。
また、S6-1において、最新の第一残量Wr1は、後述する最新の第二残量Wr2を用いてもよく、それら両方の平均値、加重平均値を用いてもよい。
【0037】
(別の残量測定方法)
別の残量測定方法は、固体材料容器から昇華ガスをバッファータンク13へ移す点に着目して残量を計算する方法である。図2Bに動作フローを示す。
(S100)第一分岐バルブ2Aは開けてあり、第二バルブ10は閉じられている。第二固体材料容器1Bは切替用の予備であり、第二分岐バルブ2Bは閉じられている。第三バルブ15は閉じられている。ここで、バッファータンク13内には昇華ガスが収容されていなくてもよく、収容されていてもよい。
(S101)第三バルブ15を閉じている状態で、バッファータンク13内の圧力(Pclose_1)を測定する。
(S102)第二バルブ10を開ける。第一固体材料容器1Aからバッファータンク13へ昇華ガスを補充する。
(S103)バッファータンク13内の圧力が第一閾値Thに達する(第二圧力測定手段11で測定する)。第二バルブ10を閉じ、補充を停止する。
(S104)第二圧力測定手段11で圧力P_fullを測定する。
(S105)第二差圧ΔPを演算する(ΔP=(P_full)-(Pclose_1))。
(S106)バッファータンク13の容積Vbuffer、第二差圧ΔP、昇華ガスの密度d、第二補正係数Cから、バッファータンク13に送られた昇華ガスの第二消費量(Consumption_2)を演算する。
Consumption_2[kg]=Vbuffer[m]×ΔP[Pa]/0.1013[MPa]×d[kg/m]×C (4)
第二補正係数Cはなくてもよい。第二補正係数Cは、装置設置後の実証データから求められる係数であり、例えば、0.8~1.2の範囲から選択されてもよい。
(S107)第一固体材料容器1Aに収容されている固体材料の初期重量Wから、S106で演算された第二消費量(Consumption_2)を差し引く。これにより、バッファータンク13への移送量から第一固体材料容器1Aに収容されている固体材料の第二残量Wr2を求めることができる。
第二残量Wr2[kg]=初期重量(W)-Consumption_2[kg] (5)
(S108)第二バルブ10を閉じた後、第三バルブ15を開ける。これにより、バッファータンク13から昇華ガスを後段のプロセスへ送り込む。後段プロセスへの供給が停止すると、ダウンタイムの間に、S101からS108が繰り返される。
(S109-1)後段プロセスへの供給が停止される否かが判断される。
(S109-2)供給停止の場合に、第三バルブ15を閉じる。
ダウンタイムの間に、S101からS108を繰り返す。
次の第二残量Wr2をS107で求める際に、初期重量Wに替わり直前に求められた第二残量Wr2を使用する。
第二残量(Wr2)[kg]=直前の第二残量(Wr2)-Consumption_2[kg]
残量計算は上記のように繰り返され、以下の計算式と等価である。
第二残量(Wr2)[kg]=初期重量(W)-ΣConsumption_2[kg] (6)
【0038】
次に、固体材料容器内の固体材料の残量から切替時期および異常を判断する方法を示す。
(S200)S102において、予め設定された期間内(ダウンタイム内)で、バッファータンク13内の圧力が第一閾値Th(第二圧力測定手段11で測定した圧力>第一閾値Th)を超えていない場合に、第一固体材料容器1A内の圧力値(第一圧力測定手段4で測定される)が、第二バルブ10が開いた時(S102の時)の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断する(すなわち、第二バルブ10の閉のときの第一圧力測定手段4で測定された圧力と、第二バルブ10の開のときの第一圧力測定手段4で測定された圧力とを比較し低下しているか否かを判断する)、または、第一固体材料容器1A内の圧力値(第一圧力測定手段4で測定される)が第二閾値Thを超えるか否かを判断する。第二バルブ10は開いた状態で判断される。
(S201)S200において、低下していないまたは第二閾値Thを超えている場合は、第一圧力測定手段4よりも下流の昇華ガス配管5上に異常があると判断する。例えば、第二バルブ10の閉塞などの異常であると判断する。
(S202)S200において、低下しているまたは第二閾値Thを超えていない場合に、S107で求められた最新の第二残量(Wr2)が第三閾値Thより小さいか否かを判断する。
(S203)最新(直前に計算された)の第二残量Wr2が第三閾値Thより小さくない場合に、第一圧力測定手段4よりも上流の昇華ガス配管5または第一分岐管3A上に異常があると判断する。例えば、第一分岐バルブ2Aの閉塞などの異常であると判断する。
(S204)最新の第二残量Wr2が第三閾値Thより小さい場合に、第一固体材料容器1Aから第二固体材料容器1Bへ切り替える。第一分岐バルブ2Aを閉じ、第二分岐バルブ2Bを開く。これにより、第二固体材料容器1Bから昇華ガスがバッファータンク13へ送られる。
第二固体材料容器1Bから昇華ガス補充をしている間に、第一固体材料容器1Aを新しい固体材料容器と交換する。上記ステップが繰り返されることで連続供給が可能となる。
また、S202において、最新の第二残量(Wr2)は、前述の最新の第一残量(Wr1)を用いてもよく、それら両方の平均値、加重平均値を用いてもよい。
【0039】
図3は、第一昇華ガス供給システムが組み込まれたALD装置の概略を示す。
ALD装置は、上記昇華ガス供給システムと、チャンバー(Chamber)と、チャンバーとバルブ22を介して接続される導入配管14とバルブ21を介して接続される昇華ガス(前駆体)のためのパージラインと、チャンバーとバルブ23および25を介して接続される酸化剤あるいは還元剤供給部と、チャンバーとバルブ24および25を介して接続される酸化剤あるいは還元剤のパージラインと、チャンバーとバルブ26を介して接続される他の材料供給システムと、を備えていてもよい。
【0040】
(実施形態2)
図4は、第2昇華ガス供給システムの概略を示す。実施形態2は実施形態1と異なり、第一圧力測定手段4の替わりに、第一固体材料容器1Aと第二固体材料容器1Bとのそれぞれに、第一サブ圧力測定手段4A、第二サブ圧力測定手段4Bが直接設けられている。また、第一切替判断部131に替わり、第二切替判断部132を備える。
第二切替判断部132は、いずれかの固体材料容器から昇華ガスをバッファータンク13へ送り込む場合において、予め設定された期間内で、バッファータンク13内の圧力が第一閾値Thを超えていない場合に、固体材料容器内の圧力値が、第二バルブ10が開いた時の圧力値から(例えば、所定値以上、所定範囲値以内あるいは10%以上20%以上圧力)低下しているか否かを判断し(すなわち、第二バルブ10の閉のときの第一圧力測定手段4で測定された圧力と、第二バルブ10の開のときの第一圧力測定手段4で測定された圧力とを比較し低下しているか否かを判断する)、または、固体材料容器内の圧力値が第二閾値Thを超えるか否かを判断する。固体材料容器内の圧力値が第二バルブ10が開いた時の圧力値から低下していないまたは固体材料容器内の圧力値が第二閾値Thを超えている場合は、固体材料容器よりも下流の昇華ガス配管5上に異常があると判断される。固体材料容器内の圧力値が第二バルブ10が開いた時の圧力値から低下しているまたは固体材料容器内の圧力値が第二閾値Thを超えていない場合に、固体材料容器と異なる固体材料容器へ切り替える、と判断される。
【0041】
図5は、動作フローを示す。図2Aと異なる点は、ステップS6-1およびS6-2がなく、S5-1で「No」の場合にS7へ移行する。また、図示しないが、図2Bに対応するフローとしては、ステップS202およびS203がなく、S200で「No」の場合にS204へ移行する。
【0042】
別実施形態として、実施形態1と同様に、第一圧力測定手段4が昇華ガス配管5に設けられていてもよい。かかる場合に、ステップS6-1およびS6-2の動作が可能となっていてもよい。
【0043】
(実施形態3)
図6は、第三昇華ガス供給システムの概略を示す。実施形態3は実施形態1において、第三固体材料容器1C、第三分岐バルブ2C、第三分岐管3Cも設けられる。なお、さらに第四、第五固体材料容器、第四、第五分岐バルブ、第四、第五分岐管が設けられていてもよい。
【0044】
(実施形態4)
図7は、第四昇華ガス供給システムの概略を示す。実施形態4は実施形態1において、バッファータンクが2つの構成を示しているが、それ以上設けてあってもよい。
昇華ガス配管5から分岐された第一昇華ガス分岐管12Aが第一バッファータンク13Aに接続される。第一バッファータンク13Aから導出される第一導入配管14Aは後段の第一プロセスへ接続される。第一昇華ガス分岐管12Aには第二バルブ10A、第二圧力測定手段11Aが設けられる。第一導入配管14Aには第三バルブ15Aが設けられる。
昇華ガス配管5から分岐された第二昇華ガス分岐管12Bが第二バッファータンク13Bに接続される。第二バッファータンク13Bから導出される第二導入配管14Bは後段の第二プロセスへ接続される。第二昇華ガス分岐管12Bには第二バルブ10B、第二圧力測定手段11Bが設けられる。第二導入配管14Bには第三バルブ15Bが設けられる。
【0045】
図8は実施形態4の動作フローを示す。図2Aと異なるのは、第一バッファータンク13Aと、第二バッファータンク13Bのそれぞれにおいて、後段のプロセスへ供給したときの昇華ガスの消費量を演算して求めている点である。実質的には同じ動作である。
【0046】
図9は、第四昇華ガス供給システムが組み込まれたALD装置A、ALD装置Bの概略を示す。
ALD装置Aは、上記第四昇華ガス供給システムと、第一チャンバー(Chamber-A)と、第一チャンバーとバルブ22を介して接続される導入配管14Aとバルブ21を介して接続される昇華ガス(前駆体)のためのパージラインと、第一チャンバーとバルブ23および25を介して接続される酸化剤あるいは還元剤供給部と、第一チャンバーとバルブ24および25を介して接続される酸化剤あるいは還元剤のパージラインと、第一チャンバーとバルブ26を介して接続される他の材料供給システムと、を備えていてもよい。
また、ALD装置Bは、第二チャンバー(Chamber-B)と、第二チャンバーとバルブ28を介して接続される導入配管14Bとバルブ27を介して接続される昇華ガス(前駆体)のためのパージラインと、第二チャンバーとバルブ29および31を介して接続される酸化剤あるいは還元剤供給部と、第二チャンバーとバルブ30および31を介して接続される酸化剤あるいは還元剤のパージラインと、第二チャンバーとバルブ32を介して接続される他の材料供給システムと、を備えていてもよい。
【0047】
(実施形態5)
図10は、第五昇華ガス供給システムの概略を示す。実施形態5は実施形態1と異なり、第一、第二バッファータンク13A、13Bの2つが設けられている。さらに、実施形態5は実施形態4と異なり、導入配管14A、14Bが統合されひとつの導入配管16が形成されている。導入配管16は、後段のプロセスの1つと接続される。
第一バッファータンク13Aと第二バッファータンク13Bは、いずれか一方が、後段のプロセスへ昇華ガスを供給できるように、バルブ15A、15Bが切り替えられる構成である。例えば、第一バッファータンク13Aの圧力が所定値以下に低下し、昇華ガスを供給できなくなると、バルブ15Aが閉じられ、代わりにバルブ15Bを開けて第二バッファータンク13Bから昇華ガスを供給する。
第一、第二バッファータンク13A、13Bへの第一、第二固体材料容器からの昇華ガスの補充は、実施形態4と同じである。そして、残量演算、配管やバルブの閉塞異常の判断、固体材料容器交換の判断は、実施形態4と同じである。
【0048】
(実施形態6)
図11は、第六昇華ガス供給システムの概略を示す。この昇華ガス供給システムは、CVD装置へ組み込むことができる構成の一例である。実施形態6は実施形態4(図7)と異なり、第一バッファータンク13Aと第二バッファ―タンク13Bが直列に配置される。
昇華ガス配管5が第一バッファータンク13Aに接続される。第一バッファータンク13Aから導出される第一導入配管14A(連結配管)は後段の第二バッファ―タンク13Bへ導入される。昇華ガス配管5には第二バルブ10、第一バッファ―タンク用の第二圧力測定手段11Aが設けられる。第一導入配管14A(連結配管)には第一バッファータンク13A用の第三バルブ15A、第二バッファ―タンク用の第二圧力測定手段11Bが設けられる。第二バッファータンク13Bから導出される第二導入配管14Bは後段のプロセスへ接続される。第二導入配管14Bに第二バッファ―タンク用の第三バルブ15Bが設けられる。
【0049】
図12は実施形態6の動作フローを示す。第二バルブ10および第一バッファータンク13A用の第三バルブ15Aは閉の状態である。
(S1201)第二バッファ―タンク用の第三バルブ15Bを閉じている状態から開く。後段のプロセスへ昇華ガスを供給する。
(S1202)第二バッファ―タンク用の第二圧力測定手段11Bで測定された圧力値が第一閾値Thを超えている否かを判断する。超えている間はこの判断を繰り返す。
(S1203)圧力値が第一閾値Thを超えない場合に、第一バッファータンク13A用の第三バルブ15Aを開ける。後段のプロセスへの供給は継続される。
(S1204)予め設定されている期間の間、第二バッファ―タンク用の第二圧力測定手段11Bで測定された圧力値が第一閾値Thを超えている否かを判断する。
(S1204-1)超えていない場合に、第二バッファ―タンク用の第三バルブ15Bを閉じる。後段へのプロセスへの供給を停止する。
(S1205)超えた場合に、第一バッファータンク13A用の第三バルブ15Aを閉じる。
(S1206)次いで、第二バルブ10を開ける。第一固体材料容器1Aから昇華ガスを第一バッファータンク13Aへ補充する
(S1207)第一バッファ―タンク用の第二圧力測定手段11Aで測定した圧力が、第一閾値Th1を超えるか否かが判断される。
(S1207-1)超えた場合は、第二バルブ10を閉じる。次いでS1202へ戻る。
(S1208)第一固体材料容器1A内の圧力が、第二バルブ10を開けた時の圧力よりも低下しなかったか否か、第一固体材料容器1A内の圧力値が第二閾値Thを超えるか否かが判断される。S5-1あるいはS200と同様の動作である。
(S1208-1)低下しない、または第二閾値を超えた場合に、第二バルブ10の異常であると判断する。S5-2あるいはS201と同様の動作である。
(S1209)最新の第一残量(Wr1)が第三閾値Th未満か否かを判断する。S6-1あるいはS202と同様の動作である。
(S1209-1)最新の第一残量(Wr1)が第三閾値Th3未満でない場合に、第一圧力測定手段4よりも上流の第一分岐バルブ2Aの閉塞などが異常であると判断される。S6-2あるいはS203と同様の動作である。
(S1210)最新の第一残量Wr1が第三閾値Thより小さい場合に、補充限界レベルに達したと判断し、第一固体材料容器1Aから第二固体材料容器1Bへ切り替える。S7あるいはS204と同様の動作である。
実施形態6においても実施形態1の第一消費量(Consumption_1)と第一残量Wr1の演算も同様に実行されている。
【0050】
(別実施形態)
(1)実施形態1から5において、各配管に設けられるバルブは、図に示した位置に限定されず、数量も限定されない。
(2)各バルブは、仕切弁、流量調整弁であってもよい。
(3)各配管上に、マスフローコントローラ、マスフローメーター、温度計などが設けられていてもよい。
(4)各実施形態1から5の昇華ガス供給システムは、ALD装置、CVD装置及びエッチング装置のいずれに組み込まれていてもよい。
【0051】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 昇華ガス供給システム
1A 第一固体材料容器
1B 第二固体材料容器
2A 第一分岐バルブ
2B 第二分岐バルブ
3A 第一分岐管
3B 第二分岐管
4 第一圧力測定手段
5 昇華ガス配管
10 第二バルブ
11 第二圧力測定手段
12 バッファータンク導入配管
14 導入配管
15 第三バルブ
121 第一残量演算部
122 第二残量演算部
131 第一切替判断部
132 第二切替判断部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12