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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107022
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】蒸煮装置の蓋開閉構造
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
A47J27/14 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008103
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大賀 直行
(72)【発明者】
【氏名】山根 久美子
【テーマコード(参考)】
4B054
【Fターム(参考)】
4B054AA02
4B054AA16
4B054AA23
4B054CA14
(57)【要約】
【課題】アームで蓋を吊り上げるための厳格な組立て調整を不要とした蒸煮装置の蓋開閉構造を提供する。
【解決手段】蒸煮缶2の蓋4を吊り上げるアーム5と、アーム5の先端側又は蓋4のいずれか一方に取り付けられた吊り上げ体11と、吊り上げ体11と係合する吊り上げブロック10とを備え、吊り上げ体11は、本体軸12と本体軸12から横方向に延出した吊り上げ軸13とを有しており、吊り上げブロック10は、吊り上げ軸13が進入する開口と、吊り上げ軸13が係合する係合部が形成されており、開口から吊り上げ軸13を吊り上げブロック10に進入させて本体軸12を軸回りに回転させ、吊り上げ軸13を係合部に係合させた状態で、アーム5により蓋4を吊り上げ可能にしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸煮缶の蓋を吊り上げるアームと、
前記アームの先端側又は前記蓋のいずれか一方に取り付けられた吊り上げ体と、
前記吊り上げ体が前記アームの先端側に取り付けられているときは、前記蓋に取り付けられ、前記吊り上げ体が前記蓋に取り付けられているときは、前記アームの先端側に取り付けられた、前記吊り上げ体と係合する吊り上げブロックとを備え、
前記吊り上げ体は、本体軸と前記本体軸から横方向に延出した吊り上げ軸とを有しており、
前記吊り上げブロックは、前記吊り上げ軸が進入する開口と、前記吊り上げ軸が係合する係合部が形成されており、
前記開口から前記吊り上げ軸を前記吊り上げブロックに進入させて前記本体軸を軸回りに回転させ、前記吊り上げ軸を前記係合部に係合させた状態で、前記アームにより前記蓋を吊り上げ可能にしたことを特徴とする蒸煮装置の蓋開閉構造。
【請求項2】
前記アームに、押圧体を有する蓋押さえダンパーを設けており、前記アームが前記蓋を吊り上げるときに、前記押圧体が前記蓋を押圧する請求項1に記載の蒸煮装置の蓋開閉構造。
【請求項3】
前記吊り上げブロックは、前記蓋に取り付けられており、前記アームに、前記アームの長手方向に伸縮する位置決め軸を設けており、前記吊り上げブロックに、前記位置決め軸が嵌る位置決め穴を設けており、前記位置決め穴に前記位置決め軸が嵌ることにより、前記蓋のセンタリングを可能にした請求項1又は2に記載の蒸煮装置の蓋開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームにより蓋を吊り上げ可能にした蒸煮装置の蓋開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食材の調理工程として、蒸煮缶の中に食材を入れ蓋を閉じた状態で加熱を行うことが行われている。このような蒸煮装置は、蒸煮缶内を加圧するため、蓋は缶内の圧力に耐えられるように肉厚を大きくし剛性を高めていた。このため、蓋は重量が大きく、蓋の開閉には、モータ等の駆動源で駆動されるアームが用いられていた。
【0003】
例えば、特許文献1記載の蓋付き調理釜は、内部に調理する食材を収容する釜本体と、釜本体の上部に被せる蓋体とを有し、釜本体の側部に蓋開閉用駆動装置を設置し、蓋体と蓋開閉用駆動装置との間を蓋開閉用アームで繋ぐことができるようにしている。この構成において、蓋体に蓋開閉用アームを接続し、蓋開閉用駆動装置で蓋開閉用アームを駆動することにより、蓋体を上下方向に移動させて蓋体の開閉が可能になる。
【0004】
特許文献1記載の蓋付き調理釜においては、蓋体側に設けた蓋体部接続穴と、蓋開閉用アーム側に設けたアーム部接続穴とが重なるようにした状態で、両接続穴に接続軸を貫通させることによって、蓋体と蓋開閉用アームとが接続される。この構成において、両接続穴の少なくとも一方を縦に長く開口した長穴としている。このことにとり、蓋体の下降停止位置にずれが生じ、蓋開閉用アームの停止位置が、本来の停止位置からさらに下降した場合でも、釜本体に対して過剰な力が加わることを防止して、釜回転軸などの損傷を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-74268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の蓋付き調理釜は、蓋開閉用アームで蓋体を吊り上げる際に、接続穴に接続軸を貫通させる構成であるので、厳格な組立て調整が必要であった。特許文献1記載の蓋付き調理釜は、接続穴を縦に長く開口した長穴としているが、この構成は前記のとおり、蓋開閉用アームにより釜本体に対して過剰な力が加わることを防止するに留まり、組立て調整を緩和するものではなかった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、アームで蓋を吊り上げるための厳格な組立て調整を不要とした蒸煮缶の蓋開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の蒸煮装置の蓋開閉構造は、蒸煮缶の蓋を吊り上げるアームと、前記アームの先端側又は前記蓋のいずれか一方に取り付けられた吊り上げ体と、前記吊り上げ体が前記アームの先端側に取り付けられているときは、前記蓋に取り付けられ、前記吊り上げ体が前記蓋に取り付けられているときは、前記アームの先端側に取り付けられた、前記吊り上げ体と係合する吊り上げブロックとを備え、前記吊り上げ体は、本体軸と前記本体軸から横方向に延出した吊り上げ軸とを有しており、前記吊り上げブロックは、前記吊り上げ軸が進入する開口と、前記吊り上げ軸が係合する係合部が形成されており、前記開口から前記吊り上げ軸を前記吊り上げブロックに進入させて前記本体軸を軸回りに回転させ、前記吊り上げ軸を前記係合部に係合させた状態で、前記アームにより前記蓋を吊り上げ可能にしたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、吊り上げ体の本体軸から延出した吊り上げ軸を吊り上げブロックの開口を経て吊り上げブロッ内に進入させて本体軸を軸回りに回転させ、吊り上げ軸を係合部に係合させた状態で、アームにより蓋を吊り上げる構成である。このため、吊り上げ体と吊り上げブロックの開口とを嵌合させる必要はなく、吊り上げ軸の全周において、係合部を係合させる必要もない。このため、吊り上げ体と吊り上げブロックの開口や吊り上げ軸と係合部の位置関係の許容範囲が広くなり、厳格な組立調整は不要になり、組立調整が容易になる。
【0010】
前記本発明の蒸煮装置の蓋開閉構造においては、前記アームに、押圧体を有する蓋押さえダンパーを設けており、前記アームが前記蓋を吊り上げるときに、前記押圧体が前記蓋を押圧することが好ましい。この構成によれば、蓋を吊り上げるときに蓋の揺れが抑えられて蓋の姿勢が安定する。また、蓋のロック機構として、蓋の外周を囲み蓋と一体に移動するクラッチリングと、缶体の外周に沿って設けた缶体クラッチとの係合構造を採用した場合には、蓋の吊り上げ開始時に蓋と一体に吊り上がるクラッチリングが缶体クラッチに干渉することを防止することができる。
【0011】
また、前記吊り上げブロックは、前記蓋に取り付けられており、前記アームに、前記アームの長手方向に伸縮する位置決め軸を設けており、前記吊り上げブロックに、前記位置決め軸が嵌る位置決め穴を設けており、前記位置決め穴に前記位置決め軸が嵌ることにより、前記蓋のセンタリングを可能にしたことが好ましい。この構成によれば、蒸煮缶が傾斜して停止し、水平方向において、蓋が正規位置から変位したときに、蓋を少し吊り上げて、蓋と一体の吊り上げブロックの位置決め穴に位置決め軸を嵌めることにより、蓋がセンタリングされて蓋の変位が是正されて、蓋が変位した状態のまま吊り上げられることを防止することができる。このことにより、原料の排出や洗浄のため、缶体が回転した後、再度缶体の開口が上側にある正規位置に戻ったときに、蓋が缶体に正確に重なり合わなくなることを防止することができる。あわせて、位置決め軸と吊り上げブロックとが機構的に結合されるので、蓋の落下防止が万全になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は前記のとおりであり、吊り上げ体と吊り上げブロックの開口とを嵌合させる必要はなく、吊り上げ軸の全周において、係合部を係合させる必要もないので、吊り上げ体と吊り上げブロックの開口や吊り上げ軸と係合部の位置関係の許容範囲が広くなり、厳格な組立調整は不要になり、組立調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る蒸煮装置の正面図。
図2】本発明の一実施形態において、閉じた蓋を吊り上げるときの前工程を示す正面図。
図3】本発明の一実施形態において、吊り上げ体が吊り上げブロック内に進入する直前の状態を示した斜視図。
図4図3に示した吊り上げブロックの縦断面を示した斜視図。
図5】本発明の一実施形態において、吊り上げブロック内に吊り上げ体が進入した状態を示す平面図。
図6図5の状態から本体軸が90度回転した状態を示す平面図。
図7】本発明の一実施形態において、吊り上げ軸が係合部に係合した状態を示す斜視図。
図8】本発明の一実施形態において、蓋を吊り上げる工程を示す正面図。
図9】本発明の一実施形態に係る蒸煮缶を缶体回転軸側から見た側面図。
図10】本発明の一実施形態において、蓋がセンタリングされる様子を示す断面図。
図11】本発明の一実施形態に係るクラッチリング近傍の要部を示す斜視図。
図12】本発明の一実施形態において、蓋を閉じた状態における蓋及びアームの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る蒸煮装置1の正面図である。蒸煮装置1は、例えば穀物原料の加圧蒸煮処理に用いられる。蒸煮装置1は、主に蒸煮缶2、アーム5及び支持フレーム7で構成されている。蒸煮缶2は缶体3が蓋4で開閉される構造であり、缶体3は支持フレーム7に缶体回転軸8を介して支持されている。
【0015】
本実施形態においては、蓋4の頂部には吊り上げブロック10が取り付けられており、アーム5の先端側には吊り上げ体11が取り付けられている。蒸煮装置1の蓋開閉構造では、吊り上げ体11の吊り上げ軸13と吊り上げブロック10の係合部15(図3参照)が係合した状態で、アーム5により蓋4を吊り上げ可能にしている。
【0016】
図1では、蓋4は閉じており、クラッチリング40と缶体クラッチ41及び蓋クラッチ42とが係合して蓋4は缶体3に対してロック状態になっている。クラッチリング40は、蓋4の外周を囲んでおり、一定間隔で係合体45が設けられている。蓋クラッチ42は、蓋4の全周に亘り蓋4に固定されている。缶体クラッチ41は、缶体3の外周を囲んで缶体3に固定されており、一定間隔で係合凸部43が設けられている。図1では、図示の便宜のため、これらの部材は蒸煮缶2の両端部のみに図示している。このことは、以下の各図においても同様である。
【0017】
詳細は後に図11を参照して説明するが、クラッチリング40は、蓋クラッチ42に沿って、蓋4の周方向に回転可能であり、図1のように、クラッチリング40の係合体45が缶体クラッチ41の係合凸部43と係合する位置で蓋4はロック状態になる。ロック状態からクラッチリング40を回転させれば、クラッチリング40の係合体45と缶体クラッチ41の係合凸部43との係合が外れ、ロック状態が解除される。
【0018】
図1において、蓋4を開くときは、先端が蓋4に近づく方向にアーム5をアーム回転軸6を中心に回転させる(矢印a方向)。続いて、アーム5に取り付けられた吊り上げ体11を蓋4に取り付けられた吊り上げブロック10に係合させて、蓋4を吊り上げる方向にアーム5をアーム回転軸6を中心に回転させる(矢印b方向)。以下、図2図8を参照しながら、蓋4の開閉について具体的に説明する。
【0019】
図2は、閉じた蓋4を吊り上げるときの前工程を示す正面図である。図2(a)はアーム5の上昇状態を示しており、図2(b)はアーム5の下降状態を示している。図2の各図は、蒸煮装置1の要部を示しており、図1で示した支持フレーム7及び缶体回転軸8の図示は省略している。図2(a)の状態では、蓋4は閉じている。缶体3内の原料の蒸煮完了状態がこの状態である。この状態から、まずクラッチリング40の回転により蓋4のロック状態を解除する。次に、蓋4に近づく方向にアーム5を回転させて(矢印a方向)、アーム5の先端を下降させる。
【0020】
図2(b)ではアーム5の先端が下降し、図2(a)に示した吊り上げ体11は、吊り上げブロック10内に進入している。図3は、吊り上げ体11が吊り上げブロック10内に進入する直前の状態を示している。図3において、吊り上げ体11は、本体軸12と本体軸12から横方向に延出した吊り上げ軸13とを有している。吊り上げブロック10は、吊り上げ軸13が進入する開口14が形成され、開口14を介して壁部16と壁部17とが対向している。壁部16には吊り上げ軸13が係合する係合部15が形成されている。図3では図示されていないが、壁部17にも係合部15が形成されている。
【0021】
図4は、内部構造を示すために、図3に示した吊り上げブロック10の縦断面を示した斜視図である。図4は、壁部16側を図示しているが、壁部17側についても同様の構成である。壁部16の内周面は、垂直面である内周面が外周面側に窪んだ垂直面凹部18が形成されている。係合部15は、壁部16の内部の水平面が上面側に窪んだ水平面凹部である。
【0022】
図5は、吊り上げブロック10内に吊り上げ体11が進入した状態を示す平面図である。便宜のため、吊り上げブロック10は図3のAA線における断面図を示しており、吊り上げ体11は、図3のBB線における断面図を示している。図5において、対向する一対の垂直面凹部18間の空間に、吊り上げ軸13が収容されている。
【0023】
図6は、図5の状態から本体軸12が90度回転した状態を示している。本体軸12は、図1においてアーム5が備えるシリンダ20に対して伸縮するロッド21の伸縮によりクランク機構(図示せず)が作動して回転可能である。図6の状態では、吊り上げ軸13が90度回転したことにより、吊り上げ軸13が係合部15(図4参照)の下側にある。
【0024】
この状態では、図2(b)において、アーム5をアーム回転軸6を中心に、先端が上昇する方向に回転させると(矢印b方向)、図6において、吊り上げ体11が上昇し、これと一体に吊り上げ軸13も上昇し、吊り上げ軸13は図7に示したように、係合部15に係合する。
【0025】
図7は、吊り上げ軸13が係合部15に係合した状態を示す斜視図である。本図に示したように、吊り上げ軸13は係合部15の下方にあり、吊り上げ軸13は係合部15に係合している。破線で示した他方の吊り上げ軸13についても同様である。図7の状態から吊り上げ体11を上昇させると(矢印c)、これと一体に吊り上げブロック10も上昇する。このことにより、図8(a)に示したように、吊り上げブロック10と一体の蓋4も上昇する。図8(b)は蓋4が上昇し切った状態を示している。
【0026】
以上、本実施形態における蓋4の吊り上げについて説明したが、本実施形態においては、図3の状態から吊り上げ体11が開口14を経て、図5のように吊り上げブロック10内に進入する。本実施形態は、吊り上げ体11と開口14とが嵌合する構成ではないので、開口14の幅Wを本体軸12の直径よりも十分大きくし、開口14の長さLを吊り上げ軸13の両端間の長さよりも十分長くすることができる。
【0027】
この構成は、十分広い開口14に吊り上げ体11が進入する構成であり、吊り上げ体11と吊り上げブロック10との位置関係の許容範囲が広くなり、厳格な組立調整は不要になる。また、本実施形態においては、図6に示したように吊り上げ軸13を、図5の状態から90度回転させ、続いて吊り上げ体11を上昇させれば、図7に示したように吊り上げ軸13は係合部15に係合する。この係合は、吊り上げ軸13の全周が囲まれる係合ではないので、係合開始時に、厳格な嵌め合いは求められない。最終的に図7に示したように吊り上げ軸13が係合部15に係合すればよい。したがって、吊り上げ軸13と係合部15との位置関係の許容範囲が広くなり、この点においても厳格な組立調整は不要になる。
【0028】
以上、本実施形態において、蓋4が閉じた状態から蓋4を開くことについて具体的に説明したが、逆の動作を実施することで、蓋4が開いた状態から蓋4を閉じることができる。また、本実施形態では、吊り上げ体11をアーム5の先端側に取付けて吊り上げブロック10を蓋4に取付けていたが、逆に、吊り上げ体11を蓋4に取付けて吊り上げブロック10をアーム5の先端側に取付けても、同様に蓋4の開閉を行うことができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、蒸煮装置1を上方から見ると、缶体回転軸8の軸心とアーム回転軸6の軸心が直交する位置関係であったが、この位置関係は、蒸煮装置1の設置環境や作業動線等に合わせて任意に変更することが可能であり、缶体回転軸8の軸心とアーム回転軸6の軸心が並行する位置関係であっても良い。
【0030】
以下、本実施形態における位置決め軸23による蓋4のセンタリングについて説明する。図1において、アーム5は、シリンダ22に対して伸縮する位置決め軸23を備えている。位置決め軸23は、吊り上げブロック10に設けた位置決め穴30(図3参照)に嵌ることにより、蒸煮缶2が傾斜して停止した際の蓋4のセンタリングを可能するものである。
【0031】
位置決め軸23による動作を説明する前に、図9を参照しながら、蒸煮缶2の傾斜について説明する。図9は蒸煮缶2を缶体回転軸8側から見た側面図である。原料の蒸煮中は、蒸煮缶2は缶体回転軸8を中心に回転し(矢印d方向)、蒸煮完了時には、蒸煮缶2はその中心軸31が垂直になった状態で停止する。しかし、蒸煮缶2の中心線31が若干傾斜した状態で蒸煮缶2が停止することも起こり得る。図9において、蒸煮缶2が傾斜して停止したことにより、中心線31が正規位置である垂直位置から傾斜して中心線32の位置になった場合は、吊り上げブロック10の位置決め穴30の中心は、正規位置から水平方向にΔxだけ変位する。
【0032】
吊り上げブロック10が正規位置からΔxだけ変位している場合は、アーム5の先端を上昇させると、蓋4はΔxだけ変位した状態のまま吊り上げられることになる。この後は、原料の排出や洗浄のため、缶体3が回転した後、再度缶体3の開口が上側にある位置に戻ることになる。このとき、缶体3の位置が正規位置(中心線31が垂直な位置)であれば、蓋4はΔxだけ変位した状態のまま吊り上げられているので、アーム5の先端を下降させると、蓋4が缶体3に正確に重なり合わないことになる。
【0033】
本実施形態では、位置決め軸23を含むセンタリング機構を有しているため、蒸煮缶2が傾斜して停止した場合に、蓋4がセンタリングされ、蓋4がΔxだけ変位した状態のまま吊り上げられることを防止している。この点について、図10を参照しながら説明する。
【0034】
図10は、蓋4がセンタリングされる様子を示す断面図である。センタリングは、蓋4を缶体3から少し浮かした状態で行う。図10の各図において、吊り上げブロック10は図3のAA線における断面図を示しており、吊り上げ体11は、図3のBB線における断面図を示している。図10(a)は、蒸煮缶2の傾斜により、蓋4と一体の吊り上げブロック10の中心線32の位置が、蒸煮缶2が垂直状態にあるときの中心線31の位置に対してΔxだけ変位した状態を示している。
【0035】
図10(a)において、位置決め軸23の中心線33の延長線は中心線31と交わっている。このため、図10(b)のように、位置決め穴30に位置決め軸23が嵌ると、吊り上げブロック10と一体に、缶体3から少し浮いた蓋4はセンタリングされるので、Δxの変位は是正されることになる。
【0036】
位置決め軸23は、前記のような蓋4のセンタリング効果を発揮するだけでなく、蓋4の落下防止を万全にする効果も発揮する。本実施形態においては、蓋4を吊り上げた状態で、吊り上げ体11が破損した場合、位置決め軸23が位置決め穴30に嵌っているので、蓋4は落下しない。
【0037】
以下、図11を参照しながら、蓋4のロック機構について説明する。図11はクラッチリング40近傍の要部を示す斜視図である。図11(a)はロック状態を示しており、図11(b)はロック解除状態を示している。クラッチリング40は、蓋4の外周を囲むリング状部材であり、クラッチリング40の周方向において、係合体45が一定間隔で設けられている。缶体クラッチ41は、缶体3の外周を囲んでおり、一定間隔で係合体45に係合する係合凸部43が設けられている。
【0038】
クラッチリング40は、蓋4の全周に設けた蓋クラッチ42に沿って、蓋4の周方向に回転可能である。この回転は、例えばシリンダ機構のロッドの伸縮により、正回転及び逆回転させるようにすればよい。
【0039】
図11(a)のロック状態では、クラッチリング40の係合体45の凹部に、蓋クラッチ42と缶体クラッチ41の係合凸部43が係合しており、蓋4が開く方向(矢印e方向)の移動は規制されている。図11(a)のロック状態からクラッチリング40を回転させると、図11(b)に示したように、係合体45と係合凸部43との係合が外れ、ロック状態が解除される。この状態では、蓋4が開く方向(矢印e方向)の移動の規制は解除されているので、蓋4を吊り上げることができる。また、図11(b)の状態から蓋4を吊り上げると、蓋4と一体にクラッチリング40も吊り上がることになる(図8(a)参照)。
【0040】
以下、図8及び図12を参照しながら、蓋押さえダンパー24について説明する。図8(a)に示したように、蓋4を吊り上げた状態では、蓋押さえダンパー24が備える押圧体25の先端が蓋4に固定された凸状の受部26を押圧している。このことにより、蓋4を吊り上げるときに蓋4の揺れが抑えられて蓋4の姿勢が安定する。
【0041】
また、蓋4のセンタリングは、蓋4を缶体3から少し浮かした状態で行うので、センタリングを示した図10のように、位置決め軸23を位置決め穴30に嵌合させる際に、位置決め軸23の安定挿入が可能になる。また、蓋押さえダンパー24は、ばね等の弾性部材により、押圧体25が蓋4から受ける荷重に応じて、押圧体25が伸縮する構造である。このため、蓋4を閉じた状態において、蓋4に過剰な荷重が加わることを防止でき、蓋4の損傷を防止することができる。
【0042】
蓋押さえダンパー24は、蓋4の吊り上げ時に蓋4を傾斜させることにより、蓋4を水平状態で吊り上げることによるクラッチリング40と缶体クラッチ41との干渉を防止することもできる。この点について、図12を参照しながら説明する。図12は、蓋4を閉じた状態における蓋4及びアーム5の拡大図を示しており、あわせてA部の拡大図も示している。本図におけるクラッチリング40近傍の図示は、図11(b)のように、係合体45と係合凸部43との係合が外れた状態を図示している。蓋押さえダンパー24による蓋4の押圧が作用していない場合は、蓋4の吊り上げ時には、蓋4が係合部15と吊り上げ軸13の接点を中心に自由に動く状態となる(図7参照)。
【0043】
この場合、蓋4及びこれと一体のクラッチリング40は、水平状態で上昇しつつ、アーム回転軸6側に移動する。このときのクラッチリング40の内側かつ下部の点46の軌跡を軌跡47で示している。軌跡47はクラッチリング40の点46が缶体クラッチ41に干渉する。
【0044】
これに対し、蓋押さえダンパー24による蓋4の押圧が作用する場合は、蓋4を吊り上げたときに、蓋4が傾斜した状態で安定状態を保つことができる。このため、蓋4の吊り上げ開始時から蓋4が傾斜した状態で蓋4を吊り上げることができる。このときのクラッチリング40の点46の軌跡を軌跡48で示している。この場合、クラッチリング40の缶体クラッチ41への干渉が回避されている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前記実施形態は一例であり、適宜変更したものであってもよい。例えば、図1において、位置決め軸23はシリンダ機構により伸縮する構成であるが、アーム5の長手方向に伸縮すればよく、伸縮させる機構はシリンダ機構に限るものではない。また、図1において、アーム5の本体を挟むように2つの蓋押さえダンパー24(一方は図示せず)を有しているが、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 蒸煮装置
2 蒸煮缶
3 缶体
4 蓋
5 アーム
10 吊り上げブロック
11 吊り上げ体
12 吊り上げ軸
14 開口
15 係合部
23 位置決め軸
24 蓋押さえダンパー
25 押圧体
30 位置決め穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12