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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107028
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】位置情報取得装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20230726BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20230726BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G07C5/00 Z
G08G1/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008110
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 正己
(72)【発明者】
【氏名】高橋 将長
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138AA07
3E138MA04
3E138MB02
3E138MB10
3E138MC12
3E138MD05
3E138MF08
5H181AA01
5H181BB04
5H181FF05
5H181MC03
5H181MC12
5H181MC27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通信量を低減可能な位置情報取得装置を提供する。
【解決手段】位置情報取得装置は、車両の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する第1取得部と、前記第1取得部によって取得された前記位置情報及び前記速度情報を記録する記録部と、前記車両の前記位置情報を管理する管理サーバと通信する通信部と、前記記録部に記録された前記位置情報を前記通信部から前記管理サーバに送信させる送信処理を行う制御部とを含み、前記制御部は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す前記速度の変化量が第1閾値以上の場合に、前記送信処理を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部によって取得された前記位置情報及び前記速度情報を記録する記録部と、
前記車両の前記位置情報を管理する管理サーバと通信する通信部と、
前記記録部に記録された前記位置情報を前記通信部から前記管理サーバに送信させる送信処理を行う制御部と
を含み、
前記制御部は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す前記速度の変化量が第1閾値以上の場合に、前記送信処理を行う、位置情報取得装置。
【請求項2】
前記制御部は、前回の前記送信処理を行ったときの前記速度情報が表す前記速度と、前記記録部に記録された前記速度情報が表す現在の速度との差が第2閾値以上の場合に、前記送信処理を行う、請求項1に記載の位置情報取得装置。
【請求項3】
車両の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部によって取得された前記位置情報及び前記速度情報を記録する記録部と、
前記車両の前記位置情報を管理する管理サーバと通信する通信部と、
前記記録部に記録された前記位置情報を前記通信部から前記管理サーバに送信させる送信処理を行う制御部と
を含み、
前記制御部は、前回の前記送信処理を行ったときの前記速度情報が表す前記速度と、前記記録部に記録された前記速度情報が表す現在の速度との差が第2閾値以上の場合に、前記送信処理を行う、位置情報取得装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す前記速度の変化量が第1閾値以上の場合に、前記送信処理を行う、請求項3に記載の位置情報取得装置。
【請求項5】
前記第2閾値は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す現在の速度に応じて複数の値があり、前記現在の速度が高いほど大きな値になる、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の位置情報取得装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す現在の速度がゼロの場合、又は、所定の第1低速度以下である場合に、前記送信処理を行う、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置情報取得装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す現在の速度が所定の第2低速度以下である状態が所定時間以上継続した場合に、前記送信処理を行う、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の位置情報取得装置。
【請求項8】
前記車両の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサによって検出される加速度に基づいて前記車両の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する第2取得部と
をさらに含み、
前記記録部は、前記第1取得部によって前記位置情報及び前記速度情報が取得されないときに、前記第2取得部によって取得された前記位置情報及び前記速度情報を記録する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の位置情報取得装置。
【請求項9】
前記第1取得部は、衛星測位システムから前記位置情報及び前記速度情報を取得する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位置情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の車速情報を含む車両情報を検出する車両検出手段と、前記車両検出手段からの前記車両情報を基に前記車両の走行履歴を生成し記録する記録手段と、前記記録手段に記録した前記走行履歴から前記走行履歴の送信区間の判定を行う送信区間判定手段と、前記判定された前記送信区間の前記走行履歴をセンタ手段に送信する走行履歴送信手段とを備え、前記送信区間判定手段は、前記走行履歴に含まれる前記車速情報が最初に閾値以下になった際の地点を送信区間判定の開始地点とし、前記車速情報が前記閾値以上になり、前記閾値以上の状態が予め定めた期間を超えて継続した場合に、前記車速情報が前記閾値以上になった地点を前記送信区間判定の終了地点として前記送信区間を判定することを特徴とする走行履歴収集システムがある。前記走行履歴送信手段は、前記送信区間判定手段が前記判定の終了地点を判定した際に、前記判定の開始地点から終了地点までの前記送信区間の前記走行履歴を前記センタ手段に送信する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-079504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の走行履歴収集システムは、車速と閾値を比較しているので、車速が閾値以上になって予め定めた期間を超える度に走行履歴を送信する。このため、走行履歴を送信する頻度が高くなり、通信量が多い。
【0005】
そこで、通信量を低減可能な位置情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の位置情報取得装置は、車両の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する第1取得部と、前記第1取得部によって取得された前記位置情報及び前記速度情報を記録する記録部と、前記車両の前記位置情報を管理する管理サーバと通信する通信部と、前記記録部に記録された前記位置情報を前記通信部から前記管理サーバに送信させる送信処理を行う制御部とを含み、前記制御部は、前記記録部に記録された前記速度情報が表す前記速度の変化量が第1閾値以上の場合に、前記送信処理を行う。
【発明の効果】
【0007】
通信量を低減可能な位置情報取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の位置情報取得装置を搭載した車両の一例を示す図である。
図2】位置情報取得装置の構成の一例を示す図である。
図3】MCUの制御部が実行する処理を表すフローチャートである。
図4】位置情報取得装置の動作例を示すタイミングチャートである。
図5】アップロード回数の削減率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の位置情報取得装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の位置情報取得装置100を搭載した車両10の一例を示す図である。位置情報取得装置100は、車両10に搭載されている。図1の右側には、位置情報取得装置100を拡大して示す。
【0011】
位置情報取得装置100は、公衆回線網20を介してクラウド30の管理サーバ30Aと通信可能であり、車両10の位置を表す位置情報を管理サーバ30Aにアップロードする。クラウド30は、1又は複数のコンピュータシステムによって実現されるコンピュータである。
【0012】
管理サーバ30Aは、複数の車両10にそれぞれ搭載された複数の位置情報取得装置100から送信される位置情報を集中的に管理するサーバ(コンピュータ)であり、クラウド30の中に仮想的に存在するサーバである。管理サーバ30Aと、複数の車両10にそれぞれ搭載された複数の位置情報取得装置100とは、車両位置情報取得システム1を構築する。ここでは、管理サーバ30Aがクラウド30の中に仮想的に存在するサーバである形態について説明するが、管理サーバ30Aは、物理的に存在するサーバであってもよい。
【0013】
位置情報には、位置情報取得装置100の識別情報や時刻データが関連付けられる。位置情報取得装置100は、通信を行うため、一例として車両10の天井付近に配置すればよい。
【0014】
位置情報取得装置100が管理サーバ30Aにアップロードする位置情報を利用すれば、車両10の走行履歴(運行履歴)を把握することができる。例えば、レンタカー、タクシー、又は社用車等に位置情報取得装置100を取り付けておき、クラウド30の管理サーバ30AにPC(Personal Computer)やスマートフォン等でアクセスすれば、PCやスマートフォンで車両10の走行履歴や在処を知ることができる。
【0015】
位置情報取得装置100は、所定の条件のもとで送信処理を行うことで、アップロードする回数を低減している。このようにすることで、位置情報取得装置100は、通信量(通信の回数又はデータ量)の低減を可能としている。通信量(通信の回数又はデータ量)を低減すれば、通信費用を低減できるとともに、通信可能なデータ量が少ない通信機で済むため、車両位置情報取得システム1の導入費用を大幅に抑えることができる。以下、通信量を低減可能な位置情報取得装置100の詳細について説明する。
【0016】
<位置情報取得装置100の構成>
図2は、位置情報取得装置100の構成の一例を示す図である。位置情報取得装置100は、RMC(Recommended Minimum Specific GNSS Data)取得部110、加速度センサ120、通信部130、MCU(Micro Controller Unit)140、及び電源150を含む。RMC取得部110は第1取得部の一例であり、MCU140は制御部の一例である。なお、ここでは位置情報取得装置100がRMC取得部110及び加速度センサ120を含む形態について説明するが、位置情報取得装置100は、RMC取得部110及び加速度センサ120のいずれか一方のみを含む構成であってもよい。
【0017】
RMC取得部110は、一例として、GNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)としてGPS(Global Positioning System)を利用し、GPSのRMCデータを取得する。RMCデータは、時刻、緯度、経度、移動速度等を含む。緯度と経度は車両10の位置を表し、移動速度は車両10の速度を表す。このため、RMCデータから車両10の現在の位置と速度を取得することができる。
【0018】
加速度センサ120は、車両10の加速度を検出するセンサであり、例えば6軸センサを用いることができる。加速度センサ120は、車両10に発生する3軸(前後・左右・上下)の加速度と、同3軸の角速度との計6軸の慣性力を検出することができる。加速度センサ120は、車両10がトンネル内、地下、屋内等のGPS信号を受信できないときに、MCU140の取得部140Aが自立航法で車両10の位置と速度を求める際に利用する加速度を検出する。
【0019】
通信部130は、一例として、公衆回線網20を通じてクラウド30と通信を行う。通信部130は、一例として、公衆回線網20を通じて位置情報をクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードする。通信部130は、一例として、3G(Third Generation)の通信が可能な通信機である。なお、通信部130は、3Gに限らず、2G(Second Generation)や4G(Fourth Generation)等であってもよい。通信部130は、MCU140の制御部141によって制御され、位置情報を管理サーバ30Aにアップロードする。
【0020】
MCU140は、取得部140A、制御部141、及びメモリ142を有する。取得部140Aは第2取得部の一例であり、メモリ142は記録部の一例である。MCU140は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0021】
取得部140Aと制御部141は、MCU140が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ142は、MCU140のメモリを機能的に表したものである。
【0022】
取得部140Aは、加速度センサ120によって検出される加速度に基づいて、自立航法で車両10の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する。加速度センサ120を利用するのは、車両10がGPS信号を受信できないときであるため、取得部140Aは、加速度を用いて位置情報及び速度情報を取得する際に、直前まで受信したGPS信号から得られたRMCデータに含まれる車両10の位置と速度を利用する。
【0023】
制御部141は、メモリ142に記録された位置情報を通信部130からクラウド30に送信させる送信処理を行う。制御部141が送信処理を行う条件等については、図3のフローチャートを用いて後述する。
【0024】
メモリ142は、取得部140A及び制御部141が処理を実行する際に利用するプログラムやデータの他に、処理に伴って生じるデータ等を保持する。メモリ142は、RMC取得部110によって取得された位置情報及び速度情報を記録する。また、メモリ142は、RMC取得部110によって位置情報及び速度情報が取得されないときに、取得部140Aによって取得された位置情報及び速度情報を記録する。
【0025】
電源150は、RMC取得部110、加速度センサ120、通信部130、MCU140に電力を供給する電源である。電源150は、車両10のバッテリ等に電源コード等で接続される電源端子であってよいし、一次電池又は二次電池等のバッテリであってもよいし、電源端子とバッテリの両方であってもよい。
【0026】
<フローチャート>
図3は、MCU140の制御部141が実行する処理を表すフローチャートである。一例として、制御部141は1秒ごとに図3に示す処理を繰り返し実行する。すなわち、制御周期は1秒である。
【0027】
位置情報取得装置100は、通信量(通信の回数又はデータ量)を低減するために、位置情報を管理サーバ30Aにアップロードする回数を低減している。例えば、車両10が一定の速度で走行しているときや、速度の変化があまり生じていないときには、位置情報をアップロードしなくても、その前後の位置情報から推定可能である。また、走行履歴を取得するには、例えば、交差点を曲がったこと、速度を低下させて道路沿いの施設等に進入したこと、停止したこと、又は、急加速や急ブレーキ等が生じたこと等を中心として位置情報を取得すれば、走行履歴を効率的に取得することができる。位置情報取得装置100は、このような考えに基づいて、位置情報をアップロードする条件を絞っている。以下、説明する。
【0028】
制御部141は、処理をスタートさせると、RMC取得部110にRMCデータを取得させ、RMCデータに含まれる位置情報及び速度情報をメモリ142に記録(保持)させる(ステップS1)。取得されたRMCデータに含まれる位置情報及び速度情報は、現在(RMC取得部110がRMCデータを取得した時点)の車両10の位置及び速度を表す。車両10の位置及び速度は、1秒ごとに取得される。
【0029】
制御部141は、メモリ142に保持された位置情報及び速度情報のうちの速度情報を抽出する(ステップS2)。
【0030】
制御部141は、位置情報取得装置100が起動して1回目の処理であるかどうかを判定する(ステップS3)。位置情報取得装置100が起動して1回目の処理であるとは、位置情報取得装置100の電源がオフであった状態から電源がオンにされて起動し、最初の制御周期の処理であることをいう。位置情報取得装置100の電源がオンになるのは、車両10のイグニッションスイッチがオンになったときや、電源がオンになったときである。
【0031】
制御部141は、位置情報取得装置100が起動して1回目の処理である(S3:YES)と判定すると、メモリ142に保持されている現在の速度情報をゼロに設定する(ステップS4)。未だ走行を開始していない状態であるため、現在の速度をゼロに設定する。
【0032】
制御部141は、送信処理を行い、メモリ142に保持されている現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。
【0033】
現在の位置情報を管理サーバ30Aにアップロードするため、アップロード時の車両10の位置を表す位置情報が管理サーバ30Aにアップロードされる。車両10が未だ走行を開始していない状態である場合には、車両10が駐車されていた位置を表す位置情報がアップロードされることになる。
【0034】
また、第2閾値TH2を更新する処理は、具体的には、アップロード時の速度に応じて制御部141が第2閾値TH2を複数の値のうちの1つの値に設定する処理である。また、現在の速度をアップロード時の速度として保持する処理は、位置情報を管理サーバ30Aにアップロードした際の速度をアップロード時の速度として保持する処理である。
【0035】
ここで、第2閾値TH2は、後述するステップS8において、アップロード時の速度を基準とした速度の変化分がある程度大きくなったかどうかを判定するために用いられる値である。速度の変化分を監視するには、車両10の速度が高いほど、大きな変化分が生じやすい傾向があることから、アップロード時の速度(現在の速度)が高いほど第2閾値TH2が大きくなるようにしている。
【0036】
ここでは一例として、前回のアップロード時の車速に応じて、車速の変化分に相当する第2閾値TH2が4つあり、4つの値の中から前回のアップロード時の車速に応じた1つの値を第2閾値TH2として選択して用いる。このため、ステップS5において、送信処理に加えて、第2閾値TH2を更新するとともに、アップロード時の車速を保持する処理を行う。
【0037】
アップロード時の車速が0km/h(0ノット/時)以上で、18.5km/h(10ノット/時)未満の場合には、第2閾値TH2は、5.6km/h(3ノット/時)に設定される。アップロード時の車速が18.5km/h(10ノット/時)以上で、37.0km/h(20ノット/時)未満の場合には、第2閾値TH2は、9.3km/h(5ノット/時)に設定される。アップロード時の車速が37.0km/h(20ノット/時)以上で、74.1km/h(40ノット/時)未満の場合には、第2閾値TH2は、13.0km/h(7ノット/時)に設定される。アップロード時の車速が74.1km/h(40ノット/時)以上の場合には、第2閾値TH2は、16.7km/h(9ノット/時)に設定される。
【0038】
なお、フローがステップS3からステップS4を経由してステップS5に進行した場合には、車速が0km/h(0ノット/時)であるため、第2閾値TH2は5.6km/h(3ノット/時)に設定される。
【0039】
RMCデータに含まれる速度(移動速度)の単位はノット/時である。ここでは、一例として第2閾値TH2をノット/時で規定し、km/hへの変換は、小数点第2位を四捨五入して得る小数点第1位までの値で示す。なお、第2閾値TH2は、km/hで与えられる速度で規定してもよく、その場合は、ノット/時への換算において小数点第2位を四捨五入する等の変換処理を行えばよい。これは第1閾値TH1、第1低速度V1、第2低速度V2をゼロよりも大きい値に設定する際も同様である。
【0040】
制御部141は、ステップS5の処理を終えると、一連の処理を終了(エンド)し、フローをステップS1から繰り返し実行する。
【0041】
制御部141は、ステップS3において、位置情報取得装置100が起動して1回目の処理ではない(S3:NO)と判定すると、メモリ142に保持されている現在の速度データをステップS2で抽出した速度情報で更新する(ステップS4)。この処理により、1制御周期前(1秒前)に取得された速度情報が、現在の速度情報によって上書きされる。
【0042】
制御部141は、1制御周期前の速度と、現在の速度との速度差が第1閾値TH1以上であるかどうかを判定する(ステップS6)。ステップS6で判定する速度差は、1秒前からの1秒間における車両10の速度の変化分に相当し、第1閾値TH1は、急加速又は急ブレーキを判定する閾値である。また、速度差は絶対値を取って第1閾値TH1と比較することとする。第1閾値TH1は、一例として11.1km/h(6ノット/時)であり、固定値である。
【0043】
制御部141は、ステップS6において、1制御周期前の速度と、現在の速度との速度差が第1閾値TH1以上である(S6:YES)と判定すると、フローをステップS5に進行させて、送信処理を行って現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。この結果、例えば、急ブレーキや急加速が発生したときの位置情報がアップロードされる。
【0044】
制御部141は、ステップS6において、1制御周期前の速度と、現在の速度との速度差が第1閾値TH1以上ではない(S6:NO)と判定すると、現在の速度情報が表す速度が第1低速度V1以下であるかどうかを判定する(ステップS7)。第1低速度V1は、一例として5.6km/h(3ノット/時)である。ステップS7は、車両10が歩行者の移動速度と同等以下の非常に低い速度で移動しているか、又は、停止している状態を判別するための処理である。なお、ステップS7では、第1低速度V1以下であるかどうかを判定する代わりに、速度がゼロであるかどうかを判定してもよい。この場合には、車両10が停止しているかどうかを判定することになる。
【0045】
制御部141は、現在の速度情報が表す速度が第1低速度V1以下である(S7:YES)と判定すると、フローをステップS5に進行させて、送信処理を行って現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。この結果、速度が第1低速度V1以下になったときの位置情報がアップロードされる。例えば、道路の施設等に進入したときの位置情報がアップロードされる。
【0046】
また、制御部141は、ステップS7において、現在の速度情報が表す速度が第1低速度V1以下ではない(S7:NO)と判定すると、前回の送信処理を行ったときの速度情報が表す速度(前回のアップロード時の速度)と、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度との速度差が第2閾値TH2以上であるかどうかを判定する(ステップS8)。速度差は絶対値を取って第2閾値TH2と比較することとする。
【0047】
ステップS8の処理は、前回の送信処理で位置情報をアップロードしたときの車速に対する車速の変化分が第2閾値TH2以上であるかどうかを判定する処理である。前回のアップロード時の車速に対する車速の変化分が第2閾値TH2未満であれば、位置情報をアップロードする必要が生じるほどの変化は車両10には発生していないという考え方である。
【0048】
制御部141は、前回の送信処理を行ったときの速度情報が表す速度と、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度との差が第2閾値TH2以上である(S8:YES)と判定すると、フローをステップS5に進行させて、送信処理を行って現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。この結果、前回のアップロード時の車速に対する車速の変化分が第2閾値TH2以上になったときの位置情報がアップロードされる。例えば、高速道路に進入したときの位置情報がアップロードされる。
【0049】
また、制御部141は、ステップS8において、前回の送信処理を行ったときの速度情報が表す速度と、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度との差が第2閾値TH2以上ではない(S8:NO)と判定すると、第2低速度V2以下での低速走行状態が3秒以上続いているかどうかを判定する(ステップS9)。ステップS9の判定における3秒は、所定時間の一例である。
【0050】
第2低速度V2は、一例として18.5km/h(10ノット/時)であり、固定値である。ステップS9は、車両10が非常に低い速度で移動しているか、又は、停止している状態を判別するための処理である。第2低速度V2は、一例として第1低速度V1よりも高い。第1低速度V1は、車両10が停止しているか、又は、停止する直前であるかを判定するために用いるのに対して、第2低速度V2は、例えば駐車場内を移動しているときのように低い速度で継続的に移動している状態における位置情報をアップロードするために用いられる。
【0051】
制御部141は、第2低速度V2以下での低速走行状態が3秒以上続いている(S9:YES)と判定すると、フローをステップS5に進行させて、送信処理を行って現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。この結果、例えば、駐車場内を移動しているときの位置情報がアップロードされる。
【0052】
また、制御部141は、第2低速度V2以下での低速走行状態が3秒以上続いていない(S9:NO)と判定すると、一連の処理を終える(エンド)。制御部141は、ステップS1から処理を繰り返し実行する。
【0053】
図3におけるステップS6~S9の判定内容は、位置情報をアップロードするためのアップロード条件である。
【0054】
<動作例>
図4は、位置情報取得装置100の動作例を示すタイミングチャートである。図4において、横軸は時間(s(秒))を表し、縦軸は車両10の速度を表す。
【0055】
時刻t=1(s)~3(s)では、車速は20km/hであるが、ステップS6~S9のいずれのアップロード条件も満たさないため、アップロードは行われない。
【0056】
時刻t=4(s)~6(s)まで速度が上昇するが、ステップS6~S9のいずれのアップロード条件も満たさないため、アップロードは行われない。時刻t=6(s)での速度は、50km/hである。
【0057】
時刻t=7(s)で速度が20km/hまで低下すると、制御部141は、ステップS6において、1制御周期前の速度(50km/h)と、現在の速度(20km/h)との速度差(30km/h)が第1閾値TH1(11.1km/h)以上である(S6:YES)と判定する。このため、制御部141は、フローをステップS5に進行させて、送信処理を行って現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度(20km/h)をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。このとき、現在の速度は20km/hであるため、第2閾値TH2は、9.3km/hに設定される。
【0058】
時刻t=8(s)~14(s)までは、前回のアップロード時(t=7(s))の速度(20km/h)に対する速度の変化分が第2閾値TH2(9.3km/h)を超えないため、アップロードは行われない。
【0059】
時刻t=15(s)において、速度が40km/hに上昇し、前回のアップロード時(t=7(s))の速度(20km/h)に対する速度の変化分が第2閾値TH2(9.3km/h)を超える。このため、制御部141は、ステップS8でYESと判定し、フローをステップS5に進行させる。制御部141は、ステップS5において、送信処理を行って現在の位置情報を通信部130からクラウド30の管理サーバ30Aにアップロードさせ、第2閾値TH2を更新し、現在の速度(40km/h)をアップロード時の速度として保持する(ステップS5)。この結果、前回のアップロード時(t=7(s))の車速(20km/h)に対する車速の変化分が第2閾値TH2以上になったとき(t=15(s))の位置情報がアップロードされる。また、第2閾値TH2は、現在の速度(40km/h)に応じた13.0km/hに更新される。
【0060】
<アップロード回数の削減率>
図5は、アップロード回数の削減率を説明する図である。図5(A)には、比較用に、1秒毎に位置情報を管理サーバ30Aにアップロードした場合に、アップロードを行った位置を地図上に示す。開始位置から時計回りにコースを一周した場合に、コースの全体で位置情報をアップロードしていることが分かる。
【0061】
一方、図5(B)には、位置情報取得装置100が管理サーバ30Aに位置情報をアップロードした場合に、アップロードを行った位置を地図上に示す。開始位置から時計回りにコースを一周した場合に、位置情報をアップロードした位置は低減されており、交差点や信号で停止した地点でのみアップロードされていることが分かる。図5(B)に示すアップロード回数は、図5(A)に示すアップロード回数の3.8%であり、96.2%削減することができた。
【0062】
<効果>
以上のように、制御部141は、メモリ142に記録された現在の速度情報が表す速度の変化量が第1閾値TH1以上の場合、又は、前回の送信処理を行ったときの速度情報が表す速度と、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度との差が第2閾値TH2以上の場合に、送信処理を行う。このため、送信回数を減らすことができ、通信量(通信の回数又はデータ量)の低減が可能である。
【0063】
したがって、通信量を低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。現在の速度の(1制御周期前の速度との)変化量がある程度の速度になることは、主に急ブレーキや急加速等の急な速度変化が生じたときに生じるため、急な速度変化が生じたときの位置情報を選択してアップロードできる。また、前回の送信処理を行ったとき速度と現在の速度との差は、緩やかな速度変化がある一定量に到達したときに生じるため、緩やかではあるが、ある程度の速度変化が生じたときの位置情報を選択してアップロードできる。
【0064】
また、制御部141は、メモリ142に記録された速度情報が表す速度の変化量が第1閾値TH1以上の場合、及び、前回の送信処理を行ったときの速度情報が表す速度と、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度との差が第2閾値TH2以上の場合に、送信処理を行う。このため、送信回数をより効果的に減らすことができ、2種類の状態に応じてより効果的に通信量(通信の回数又はデータ量)の低減が可能である。
【0065】
したがって、通信量をより効果的に低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。また、急な速度変化が生じたときの位置情報と、緩やかではあるが、ある程度の速度変化が生じたときの位置情報とを選択してアップロードできる。
【0066】
また、第2閾値TH2は、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度に応じて複数の値があり、現在の速度が高いほど大きな値になるので、前回の送信処理を行ったときの速度情報が表す速度と現在の速度との差が、現在の速度に応じた第2閾値TH2以上になったときに、位置情報をアップロードすることができる。緩やかではあるが、ある程度の速度変化が発生しているかどうかを判定する際には、速度の上昇に応じて速度の変化分を大きくして捉えた方が、捉えたい事象をより確実に見分けることができる。現在の速度が高いほど大きな値を有する第2閾値TH2を用いることで、速度に応じて通信量をより効果的に低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。
【0067】
また、制御部141は、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度がゼロの場合、又は、所定の第1低速度以下である場合に、送信処理を行うので、車両10が停止したときや、殆ど停止しているほど速度が低いような状況のときの位置情報をアップロードできる。車両10が停止したときや、殆ど停止しているほど速度が低いような状況には、車両10が道路沿いの施設等に立ち寄っているような場合や、赤信号で停止しているような場合が相当する。このような場合における車両10の位置情報は、走行履歴を取得する場合に有用なデータである可能性が高い。したがって、車両10が立ち寄った場所等の位置情報を選択することで通信量をより効果的に低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。
【0068】
また、制御部141は、メモリ142に記録された速度情報が表す現在の速度が所定の第2低速度以下である状態が所定時間以上継続した場合に、送信処理を行うので、車両10が施設等の駐車場内で駐車場所を探しているような状態のときの位置情報をアップロードできる。このような状態は、施設等に立ち寄る直前に生じる。このような場合における車両10の位置情報は、走行履歴を取得する場合に有用なデータである可能性が高い。したがって、車両10が立ち寄った場所等の位置情報を選択することで通信量をより効果的に低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。
【0069】
また、車両10の加速度を検出する加速度センサ120と、加速度センサ120によって検出される加速度に基づいて車両10の位置及び速度を表す位置情報及び速度情報を取得する取得部140Aとをさらに含み、メモリ142は、RMC取得部110によって位置情報及び速度情報が取得されないときに、取得部140Aによって取得された位置情報及び速度情報を記録する。このため、GPS信号を受信できないときでも、自立航法によって車両10の位置及び速度を推定することができる。したがって、GPS信号を受信できないときでも、位置情報のアップロードが可能であり、通信量を低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。
【0070】
また、RMC取得部110は、衛星測位システムから提供されるRMCデータから位置情報及び速度情報を取得するので、車両10の位置及び移動速度を容易かつ確実に取得することができる。したがって、GPS信号から位置及び移動速度を容易に取得でき、通信量を低減可能な位置情報取得装置100を提供することができる。
【0071】
以上、本開示の例示的な実施形態の位置情報取得装置について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 車両位置情報取得システム
10 車両
20 公衆回線網
30 クラウド
30A 管理サーバ
100 位置情報取得装置
110 RMC取得部 (第1取得部の一例)
120 加速度センサ
130 通信部
140 MCU (制御部の一例)
140A 取得部 (第2取得部の一例)
141 制御部
142 メモリ (記録部の一例)
150 電源
図1
図2
図3
図4
図5