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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107029
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】インピーダンス測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
G01R27/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008111
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】羽田 一暁
(72)【発明者】
【氏名】横山 智大
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028CG08
2G028CG18
2G028DH05
2G028FK01
2G028GL03
2G028GL11
2G028HN11
2G028HN13
(57)【要約】
【課題】測定周波数近傍のノイズの影響を抑制し、高精度な測定が可能なインピーダンス測定装置を提供する。
【解決手段】上記課題は、第1の参照信号、および、第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生する信号発生部(30)と、第2の参照信号に基づいて測定信号を生成し、測定対象に供給する測定信号供給部(10)と、測定信号によって測定対象に生ずる信号を、第1の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成する測定部(20)と、第1の参照信号と第2の参照信号とが同相のときの濾波信号の大きさと、第1の参照信号と第2の参照信号とが逆相のときの濾波信号を符号反転した大きさとの加算平均に基づいて、測定対象のインピーダンスを求める演算部(40)とを備えるインピーダンス測定装置(1)等により解決することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の参照信号、および、前記第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生する信号発生部と、
前記第2の参照信号に基づいて測定信号を生成し、測定対象に供給する測定信号供給部と、
前記測定信号よって前記測定対象に生ずる信号を、前記第1の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成する測定部と、
前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが同相のときの前記濾波信号の大きさと、前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが逆相のときの前記濾波信号を符号反転した大きさとの加算平均に基づいて、前記測定対象のインピーダンスを求める演算部と、
を備える、インピーダンス測定装置。
【請求項2】
第1の参照信号、および、前記第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生する信号発生部と、
前記第2の参照信号に基づいて測定信号を生成し、測定対象に供給する測定信号供給部と、
前記測定信号よって前記測定対象に生ずる信号を、前記第2の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成する測定部と、
前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが同相のときの前記濾波信号の大きさと、前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが逆相のときの前記濾波信号の大きさとの加算平均に基づいて、前記測定対象のインピーダンスを求める演算部と、
を備える、インピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記反転周期は、前記測定信号の周期の整数倍であり、
前記演算部は、前記反転周期の整数倍の測定期間にわたる加算平均に基づいて、前記測定対象のインピーダンスを求める、
請求項1または2記載のインピーダンス測定装置。
【請求項4】
第1の参照信号、および、前記第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生するステップと、
前記第2の参照信号に基づいて測定信号を生成して、測定対象に供給するステップと、
前記測定信号によって前記測定対象に生ずる信号を、前記第1の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成するステップと、
前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが同相のときの前記濾波信号の大きさと、前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが逆相のときの前記濾波信号を符号反転した大きさとの加算平均に基づいて、前記測定対象のインピーダンスを求めるステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
第1の参照信号、および、前記第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生するステップと、
前記第2の参照信号に基づいて測定信号を生成して、測定対象に供給するステップと、
前記測定信号によって前記測定対象に生ずる信号を、前記第2の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成するステップと、
前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが同相のときの前記濾波信号の大きさと、前記第1の参照信号と前記第2の参照信号とが逆相のときの前記濾波信号の大きさとの加算平均に基づいて、前記測定対象のインピーダンスを求めるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定装置および方法に関し、同期検波を利用した4端子インピーダンス測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の内部インピーダンスを測定する装置として、4端子インピーダンス測定装置がある。4端子インピーダンス測定装置は、測定対象に電流源から交流の測定信号を供給し、測定信号によって測定対象に生ずる信号を検出し、測定対象に流れる電流と測定対象の両端子間電圧とから、測定対象の内部インピーダンスを求める。
【0003】
このとき、検出信号に含まれる測定周波数成分を精度よく抽出するために、特許文献1に記載されているような同期検波が利用されることがある。同期検波を利用した4端子インピーダンス測定は、まず、測定信号によって測定対象に生じる検出信号を、測定信号と同一の周波数で位相が90度異なる2つの変調信号で検波する。すると、検出信号に含まれる測定周波数成分は直流に変換されるため、同相の変調信号で検波した検波信号には、測定対象の抵抗成分に比例する直流成分が含まれる。また、検出信号を測定信号と直交する位相で検波した検波信号には、測定対象のリアクタンス成分に比例する直流成分が含まれる。それぞれの検波信号をローパスフィルタ(LFP)で濾波して直流成分を抽出してその大きさを測定し、数値処理を行うことにより、測定対象の内部インピーダンスを求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5940389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検波信号には、検出信号の周波数と測定信号の周波数との差の周波数成分が含まれるため、検出信号に含まれるノイズの周波数が測定周波数と近いほど低周波に変調されてしまい、LPFによる除去が困難になるという課題がある。例えば、複数のインピーダンス測定装置を用いて並行してインピーダンス測定を行う場合には、測定装置間で相互干渉が生じるが、自身の測定周波数と他の測定器の測定周波数に起因する外部ノイズ周波数との差に下限がない場合、LPFにより干渉の影響を除去することは実質的に不可能である。
【0006】
この干渉の影響を低減するために、複数の測定装置の測定信号を同期させることが考えられる。しかしながら、同期を行うためには測定装置間で正確な通信を行う必要があり、測定装置のハードウェア・ソフトウェアが煩雑になり、さらに測定装置が組み込まれる検査システムにとっても配線が増えるという問題がある。
【0007】
また、信号処理などで干渉の影響を補償する方法も考えられる。しかしながら、干渉の影響量は、測定ケーブルの作るループ形状や周囲の金属との位置関係による磁気結合の状態、干渉相手の測定信号の状態などで変動してしまい、常に一定の影響量を保つことは容易でないため、高精度な補償を行うことは非常に困難である。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、測定周波数近傍のノイズの影響を抑制し、高精度なインピーダンス測定を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、第1の参照信号、および、第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生する信号発生部と、第2の参照信号に基づいて測定信号を生成し、測定対象に供給する測定信号供給部と、測定信号によって測定対象に生ずる信号を、第1の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成する測定部と、第1の参照信号と第2の参照信号とが同相のときの濾波信号の大きさと、第1の参照信号と第2の参照信号とが逆相のときの濾波信号を符号反転した大きさとの加算平均に基づいて、測定対象のインピーダンスを求める演算部とを備える、インピーダンス測定装置によって、解決することができる。
【0010】
すなわち、反転周期で反転する測定信号を、反転のない変調信号で同期検波した場合には、測定信号によって測定対象に生ずる信号成分(本来の測定信号成分)が反転周期ごとに反転し、ノイズ成分は反転しない。この濾波信号の符号を反転させると、本来の測定信号成分は反転周期ごとに反転せず、ノイズ成分のみが反転する。よって、反転周期で反転する前後で加算平均をとることによって、ノイズ信号を相殺することができる。そして、ノイズ信号が相殺された濾波信号の大きさに基づいて、測定対象のインピーダンスを求めることにより、測定周波数近傍のノイズの影響を抑制した高精度なインピーダンス測定が可能となる。なお、本願における「加算平均」とは、信号の大きさを加算して平均をとること(大きさの平均)と、所定期間にわたる大きさの平均を加算して平均をとること(大きさ及び時間的平均)のいずれの意味も含む。また、「同期検波」とは、測定信号によって測定対象に生じる検出信号を、測定信号と同一周波数で位相が90度異なる2つの変調信号で検波することを意味する。
【0011】
また、上記課題は、第1の参照信号、および、第1の参照信号の位相を所定の反転周期ごとに反転させた第2の参照信号を発生する信号発生部と、第2の参照信号に基づいて測定信号を生成し、測定対象に供給する電流供給部と、測定信号によって測定対象に生ずる信号を、第2の参照信号に基づいて生成された変調信号で同期検波し、さらに低域通過濾波した濾波信号を生成する測定部と、第1の参照信号と第2の参照信号とが同相のときの濾波信号の大きさと、第1の参照信号と第2の参照信号とが逆相のときの濾波信号の大きさとの加算平均に基づいて、測定対象のインピーダンスを求める演算部とを備える、インピーダンス測定装置によっても、解決することができる。
【0012】
すなわち、反転周期で反転する測定信号を、反転周期ごとに反転する変調信号で同期検波した場合には、本来の測定信号成分は反転せず、ノイズ成分のみが反転周期ごとに反転する。よって、位相の反転前後で加算平均をとることによって、ノイズ信号を相殺することができる。そして、ノイズ信号が相殺された濾波信号の大きさに基づいて、測定対象のインピーダンスを求めることにより、測定周波数近傍のノイズの影響を抑制した高精度なインピーダンス測定が可能となる。
【0013】
ここで、反転周期は、測定対象に供給する測定信号の周期の整数倍であり、かつ、演算部は、反転周期の整数倍の測定期間にわたる加算平均に基づいて、測定対象のインピーダンスを求めることが望ましい。測定信号の周期単位の時間的な平均をとることにより、測定周波数に近い周波数を有するノイズ信号をさらに抑制することが可能となる。
【0014】
さらに、上記課題は、上述した信号発生部、電流供給部、測定部および演算部の各機能を実施する方法によっても解決することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るインピーダンス測定装置によれば、測定周波数近傍のノイズの影響を抑制し、高精度なインピーダンス測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るインピーダンス測定装置1を測定対象に接続した状態の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るインピーダンス測定装置1の動作フローチャートである。
図3】インピーダンス測定装置1に関して、測定対象に供給する測定信号、外部ノイズ、および参照信号の説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るインピーダンス測定装置1’を測定対象に接続した状態の概略構成図である。
図5】本発明の実施形態に係るインピーダンス測定装置1’の動作フローチャートである。
図6】インピーダンス測定装置1’に関して、測定対象に供給する測定信号、外部ノイズ、および参照信号の説明図である。
図7】複数のインピーダンス測定の概略構成図である。
図8】複数のインピーダンス測定の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の具体例について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態の一例であるインピーダンス測定装置1を、測定対象60に接続した状態の概略構成図である。このようなインピーダンス測定装置には、例えば、蓄電池を測定対象とするバッテリテスタ、コイル・コンデンサ・抵抗などの受動部品を測定対象とするLCRメータ、コンデンサ専用のCメータなどがある。
【0018】
インピーダンス測定装置1は、測定信号供給部10と、測定部20と、信号発生部30と、演算部40とを備える。インピーダンス測定装置1は、測定信号供給部10から測定用の測定信号Imを、測定対象60の両端子のそれぞれに接触する接触端子51、53を介して、測定対象60に供給し、測定部20で、測定信号Imによって測定対象60の両端子のそれぞれに接触する接触端子52、54間に生ずる信号Vmを検出し、演算部40で、測定対象60に供給された測定信号Imの大きさと検出信号Vmの大きさとに基づいて、測定対象60の内部インピーダンスZおよび位相角θを求める装置である。測定信号Imの基準となる参照信号Vr2と、検出信号Vmを検波するための変調信号Vmod1、Vmod2の基準となる参照信号Vr1とは、信号発生部30で発生される。
【0019】
測定信号供給部10は、信号発生部30および接触端子51、53に接続され、信号発生部30から入力された参照信号Vr2と同相の測定信号Imを生成する信号源を備える。生成された測定信号Imは、接触端子51、53を介して、接触端子51、53に接続された測定対象60に供給される。
【0020】
測定部20は、信号発生部30、演算部40および接触端子52、54に接続され、検出回路21と、90度移相器26と、2つのローパスフィルタ(LPF)24、25と、2つの乗算器22、23とを備える。
【0021】
検出回路21は、入力が接触端子52、54に、出力が乗算器22、23に接続されている。検出回路21は、測定信号Imによって測定対象60の両端子のそれぞれに接触する接触端子52、54間に生ずる信号を検出して、検出信号Vmを出力する。
【0022】
90度移相器26は、入力が信号発生部30に、出力が乗算器23に接続されている。90度移相器26は、信号発生部30から受信した参照信号Vr1の位相を90度移相して、変調信号Vmod2を生成する。
【0023】
乗算器22は、入力が検出回路21および信号発生部30に、出力がLPF24に接続されている。乗算器22は、信号発生部30から受信した参照信号Vr1と同相の変調信号Vmod1で、検出回路21から受信した検出信号Vmを検波し、検波信号Vd1を出力する。乗算器23は、入力が検出回路21および90度移相器26に、出力がLPF25に接続されている。乗算器23は、90度移相器26から受信した、参照信号Vr1と位相が直交する変調信号Vmod2で、検出回路21から受信した検出信号Vmを検波し、検波信号Vd2を出力する。
【0024】
LPF24、25は、入力がそれぞれ対応する乗算器22、23に接続され、出力が演算部40に接続されている。LPF24は、乗算器22から出力された検波信号Vd1を低域通過濾波して直流成分を抽出した濾波信号Viを生成する。LPF25は、乗算器23から出力された検波信号Vd2を低域通過濾波して直流成分を抽出した濾波信号Vqを生成する。
【0025】
信号発生部30は、入力が演算部40に、出力が測定信号供給部10および測定部20に接続され、参照信号発生器33と、位相反転器31と、スイッチ32とを備える。
【0026】
参照信号発生器33は、入力が演算部40に、出力が位相反転器31と、スイッチ32と、測定部20の乗算器22および90度移相器26とに接続されている。参照信号発生器33は、演算部40からの制御信号によって指示された周期および位相角の参照信号Vr1を発生する。
【0027】
位相反転器31は、入力が参照信号発生器33に、出力がスイッチ32に接続されている。位相反転器31は、参照信号発生器33から受信した参照信号Vr1の位相を180度移相(反転)した参照信号を生成する。
【0028】
スイッチ32は、入力の一端が参照信号発生器33に、他端が位相反転器31に、制御端子が演算部40に、出力が測定信号供給部10に接続されている。スイッチ32は、演算部40で生成された制御信号Vsに基づいて、参照信号Vr1と同相の信号(正相)と、位相反転器31が生成した参照信号Vr1と逆相の信号とを選択して、参照信号Vr2として出力する。
【0029】
演算部40は、測定部20から入力された濾波信号Vi、Vqの大きさをメモリに記録する。また、参照信号Vr1、Vr2が正相のときの濾波信号Vi、Vq(正相濾波信号)の大きさと、逆相のときの濾波信号Vi、Vq(逆相濾波信号)を符号反転した大きさとの加算平均とに基づいて、測定対象60の内部インピーダンスZおよび位相角θを求める。また、演算部40は、参照信号発生器33が発生する参照信号Vr1の周期および位相角を制御する信号や、スイッチ32を所定の反転周期Tごとに切り替える制御信号Vsを生成する。
【0030】
反転周期Tは、参照信号Vr1の周期(すなわち測定信号の周期)の整数倍となるように設定する。これにより、参照信号Vr1の各位相に対応する、正相濾波信号と逆相濾波信号の大きさを取得することが可能となる。また、測定期間は、反転周期Tの整数倍となるように設定する。さらに、測定期間を反転周期Tの偶数倍に設定すると、正相濾波信号の大きさを取得する測定期間と、逆相濾波信号の大きさを取得する測定期間とを等しくすることができる。
【0031】
なお、本実施例のインピーダンス測定装置1では、測定部20の乗算器22、23、LPF24、25および90度移相器26、ならびに演算部40は、プロセッサとメモリとを備えるコンピュータで構成されている。すなわち、プロセッサで実行すると上述した測定部20の各要素および演算部40の各機能を実現する命令が記載されたプログラムがメモリに格納され、各プログラムをプロセッサで実行することにより、上述した測定部20の各要素および演算部40の機能を実現している。ただし、上述した測定部20の各要素および演算部40の一部または全てを電子回路や装置などのハードウェアで実現してもよい。上述したインピーダンス測定装置1の各要素間の接続関係の説明は、ハードウェア構成に対しては電気的・機械的な接続を、ソフトウェア構成に対しては処理の流れを意味する。
【0032】
次に、本実施例のインピーダンス測定装置1の動作、すなわち本発明のインピーダンス測定方法の実施態様の一例について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0033】
はじめに、信号発生部30が同相の参照信号Vr1、Vr2を発生する(ステップ101)。より具体的には、演算部40からの制御信号に基づいて、参照信号発生器33が、周波数fの参照信号Vr1=sin2πft(tは時間)を発生し、スイッチ32は正相入力を選択的に出力する。この結果、スイッチ32からは参照信号Vr1と同相の参照信号Vr2=sin2πftが出力される。
【0034】
次に、測定信号供給部10が、信号発生部30から受信した参照信号Vr2と同相の測定信号Im=Isin2πftを生成して、測定対象60に供給する(ステップ102)。測定信号Imにより測定対象60の両端子間には、測定対象60のインピーダンスZと位相角θに応じた電圧が生じる。検出回路21により、測定対象60の両端子のそれぞれに接触する接触端子52、54間に生ずる検出信号Vm=ZIsin(2πft+θ)を検出する(ステップ103)。
【0035】
次に、乗算器22により、検出信号Vmを、参照信号Vr1と同相の変調信号Vmod1=sin2πftで変調すると、(1)式で示すように、測定対象60のインピーダンスZの抵抗成分R=Zcosθに対応する直流成分と、周波数2fの交流成分とが重畳された検波信号Vd1が得られる(ステップ104)。
【0036】
【数1】
【0037】
また、乗算器23により、検出信号Vmを、90度移相器26で生成された、参照信号Vr1と位相が90度異なる変調信号Vmod2=cos2πftで変調すると、(2)式で示すように、測定対象60のインピーダンスZのリアクタンス成分X=Zsinθに対応する直流成分と、周波数2fの交流成分とが重畳された検波信号Vd2が得られる(ステップ104)。
【0038】
【数2】
【0039】
次に、LPF24、25により、検波信号Vd1、Vd2を低域通過濾波して、(3)式に示されるような、直流成分を抽出した濾波信号Vi、Vqを生成する(ステップ105)。次に、演算部40が、生成された濾波信号Vi、Vqの大きさを、検出時刻とともにメモリに格納する(ステップ106)。
【0040】
【数3】
【0041】
インピーダンス測定装置1の外部からのノイズが無い場合には、濾波信号Vi、Vqの電圧の瞬時値から測定対象60のインピーダンスZ(RおよびX)および位相角θを求めることができる。なお、測定信号Imの値が既知でなくとも、同期検波による方法で測定信号の振幅・位相を測定すれば、電圧・電流それぞれの値に基づいて、インピーダンスZ(RおよびX)および位相角θを求めることができる。
【0042】
ここで、検出信号Vmに周波数fnの外部ノイズVnsin(2πfnt+φ)が含まれると、外部ノイズVnの検波信号には(4)式に示す成分信号が含まれる。
【0043】
【数4】
【0044】
(4)式の右辺第1項から明らかなとおり、検波信号には、外部ノイズの周波数fnと変調信号Vmod1の周波数fとの差の周波数成分が含まれる。複数のインピーダンス測定装置を用いて並行してインピーダンス測定を行う場合に生じ得る測定装置間の相互干渉のように、外部ノイズVnの周波数fnが変調信号Vmod1に近いと、LPF24、25によって外部ノイズVnを十分に除去することが困難になり、濾波信号に(4)式の右辺第1項の低域成分が含まれる。このような濾波信号Vi、Vqの測定値から測定対象60のインピーダンスZ(RおよびX)および位相角θを求めると、測定誤差が大きくなってしまう。このため、インピーダンス測定装置1では、(4)式の右辺第1項の低域成分と位相が逆の低域成分を生成して加算平均をとることにより、右辺第1項の低域成分を相殺して、外部ノイズVnによる影響を抑制する。
【0045】
具体的には、まず、前述したステップ102からステップ106までの動作を、所定のサンプリング周期ごとに、反転周期Tにわたって繰り返し実施する(ステップ107)。反転周期Tは、参照信号Vr1、Vr2の周期の整数倍に設定することが望ましい。これにより、参照信号Vr1の各位相に対応する、濾波信号Vi、Vqの電圧の時間的変化をメモリに記録することができる。本実施例のインピーダンス測定装置1では、反転周期Tを参照信号Vr1、Vr2の周期の2倍に設定している。反転周期Tは、参照信号Vr1、Vr2の10周期、100周期など適宜設定可能である。
【0046】
所定の反転周期Tが経過すると、演算部40は、スイッチ32を切り替える制御信号Vsを送信する。すると、スイッチ32は逆相入力を選択的に出力する。この結果、スイッチ32からは、参照信号Vr1とは逆相の参照信号Vr2=-sin2πftが出力される(ステップ108)。
【0047】
その後、所定の測定期間が終了したか否かが判定される(ステップ109)。測定期間は、反転周期Tの整数倍に設定することが望ましい。特に、参照信号Vr1、Vr2が同相のときの濾波信号Vi、Vqの大きさと、参照信号Vr1、Vr2が逆相のときの濾波信号Vi、Vqを符号反転した大きさとの時間的な加算平均をとるためには、測定期間が等しい同相および逆相の濾波信号Vi、Vqの大きさの記録があることが望ましいことから、測定期間は、反転周期Tの偶数倍に設定することが望ましい。本実施例のインピーダンス測定装置1では、測定期間を反転周期Tの2倍、したがって参照信号Vr1、Vr2の4周期分に相当する期間に設定している。
【0048】
ステップ102~108の1回目の処理を終えた時点では、反転周期1周期分の測定しか行っていないことから、ステップ102に戻って、ステップ102~108の動作を繰り返す。ただし、2回目の処理では、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相となっている。
【0049】
図3に測定対象60に供給する測定信号Imと、外部ノイズVnと、変調信号Vmod1の時間的な変化を示す。時間0~Tが1回目の処理に、時間T~2Tが2回目の処理に対応する。変調信号Vmod1は、参照信号Vr1に基づく信号であることから、1回目の処理と2回目の処理とで位相変化はないが、測定信号Imは、参照信号Vr2に基づく信号であることから、1回目の処理と2回目の処理とで逆相となっている。したがって濾波信号Vi、Vqに含まれる、測定対象60のインピーダンスZに比例する成分は、1回目の処理と2回目の処理とで逆相となる。これに対して、検波信号に含まれる外部ノイズVnに起因する成分は、測定信号Imの位相の影響を受けないため、1回目の処理と2回目の処理とで同相となる。
【0050】
【数5】
【0051】
ステップ102~108の2回目の処理が終わると、反転周期Tの2倍の測定時間が経過したことから、測定期間が終了する(ステップ109)。この結果、メモリ内には、2つの参照信号Vr1、Vr2が同相のときの参照信号2周期分の濾波信号Vi、Vqの電圧の時間的変化と、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相のときの参照信号2周期分の濾波信号Vi、Vqの電圧の時間的変化とが記録される。
【0052】
次に、演算部40のプロセッサは、メモリ内から濾波信号Vi、Vqの電圧を読み出して、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相のときの濾波信号Vi、Vqの電圧を符号反転させて、加算平均をとる(ステップ110)。2つの参照信号Vr1、Vr2が同相のときの濾波信号Vi、Vqの大きさと、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相のときの濾波信号Vi、Vqを符号反転した大きさとの加算平均をとることにより、(4)式および(4’)式の右辺第1項に相当する成分を相殺して、外部ノイズVnによる影響を抑制した濾波信号Vi、Vqの大きさを取得することができる。
【0053】
なお、本実施例のインピーダンス測定装置1では、メモリ内に格納された全測定期間にわたる濾波信号Vi、Vqの大きさの加算平均を算出しているが、測定期間のうち、参照信号Vr1が同一の位相にあるときの同相濾波信号と逆相濾波信号のセットを1つまたは複数取得して、各濾波信号Vi、Vqの加算平均を算出してもよい。例えば、ステップ102~108の1回目の処理における参照信号Vr1の位相がπ/4のときの濾波信号Vi、Vqの大きさ、およびステップ102~108の2回目の処理における参照信号Vr1の位相がπ/4のときの濾波信号Vi、Vqの大きさで構成される、合計4つの濾波信号の大きさをメモリから取得し、1回目の処理の濾波信号Viの大きさと2回目の処理の濾波信号Viを符号反転した大きさとを加算平均して、外部ノイズVnによる影響を抑制した濾波信号Viの大きさを求める。また、1回目の処理の濾波信号Vqの大きさと2回目の処理の濾波信号Vqを符号反転した大きさとを加算平均して、外部ノイズVnによる影響を抑制した濾波信号Vqの大きさを求める。
【0054】
別例として、1回目の処理における参照信号Vr1の位相がπ/4のときの濾波信号Vi、Vqの大きさ、および2回目の処理における参照信号Vr1の位相がπ/4のときの濾波信号Vi、Vqの大きさからなる第1のセットと、1回目の処理における参照信号Vr1の位相がπ/2のときの濾波信号Vi、Vqの大きさ、および2回目の処理における参照信号Vr1の位相がπ/2のときの濾波信号Vi、Vqの大きさからなる第2のセットとで構成される、合計8つの濾波信号の大きさをメモリから読み出す。取得した濾波信号の大きさに含まれる4つの濾波信号Viの大きさを、2回目の処理の濾波信号Vi、Vqのみ符号反転して加算平均(大きさ及び時間的平均)をとって外部ノイズVnによる影響を抑制した濾波信号Viの大きさを求める。また、4つの濾波信号Vqの大きさを、2回目の処理の濾波信号Vi、Vqのみ符号反転して加算平均(大きさ及び時間的平均)をとって外部ノイズVnによる影響を抑制した濾波信号Vqの大きさを求める。
【0055】
最後に、演算部40のプロセッサは、ステップ110で求められた加算平均、すなわち外部ノイズVnが相殺された濾波信号Vi、Vqの大きさから、測定対象60のインピーダンスZ(RおよびX)および位相角θを算出する(ステップ111)。
【0056】
図4および図5に、本発明の別の実施形態であるインピーダンス測定装置1’を、測定対象60に接続した状態の概略構成図と動作フローチャートを示す。インピーダンス測定装置1’は、信号発生部30’の位相反転器31とスイッチ32の位置と、演算部40’による図2のステップ110の動作が、インピーダンス測定装置1と異なるが、他の構成はインピーダンス測定装置1と同様である。このため、インピーダンス測定装置1と同一の機能や動作を示す構成や動作については、同一の参照符号を付して、説明を省く。
【0057】
信号発生部30’は、入力が演算部40’に、出力が測定信号供給部10および測定部20に接続され、参照信号発生器33と、位相反転器31と、スイッチ32とを備える。
【0058】
参照信号発生器33は、入力が演算部40’に、出力が位相反転器31と、スイッチ32とに接続されている。参照信号発生器33は、演算部40’からの制御信号によって指示された周期および位相角の参照信号Vr1を発生する。
【0059】
位相反転器31は、入力が参照信号発生器33に、出力がスイッチ32に接続されている。位相反転器31は、参照信号発生器33から受信した参照信号Vr1の位相を180度移相(反転)した参照信号を生成する。
【0060】
スイッチ32は、入力の一端が参照信号発生器33に、他端が位相反転器31に、制御端子が演算部40’に、出力が測定信号供給部10と測定部20の乗算器22および90度移相器26に接続されている。スイッチ32は、演算部40’で生成された制御信号Vsに基づいて、参照信号Vr1と同相の信号(正相)と、位相反転器31が生成した参照信号Vr1と逆相の信号とを選択して、参照信号Vr2として出力する。
【0061】
演算部40’は、測定部20から入力された濾波信号Vi、Vqの大きさを求めてメモリに記録する。また、参照信号Vr1、Vr2が正相のときの濾波信号Vi、Vq(正相濾波信号)の大きさと、逆相のときの濾波信号Vi、Vq(逆相濾波信号)の大きさとの加算平均とに基づいて、測定対象60の内部インピーダンスZおよび位相角θを求める。また、演算部40’は、参照信号発生器33が発生する参照信号Vr1の周期および位相角を制御する信号や、スイッチ32を所定の反転周期Tごとに切り替える制御信号Vsを生成する。
【0062】
なお、本実施例のインピーダンス測定装置1’では、測定部20の乗算器22、23、LPF24、25および90度移相器26、ならびに演算部40は、プロセッサとメモリを備えるコンピュータで構成されている。すなわち、プロセッサで実行すると上述した測定部20の各要素および演算部40’の各機能を実現する命令が記載されたプログラムがメモリに格納され、各プログラムをプロセッサで実行することにより、上述した測定部20の各要素および演算部40’の機能を実現している。ただし、上述した測定部20の各要素および演算部40’の一部及び全てを電子回路や装置などのハードウェアで実現してもよい。上述したインピーダンス測定装置1’の各要素間の接続関係の説明は、ハードウェア構成に対しては電気的・機械的な接続を、ソフトウェア構成に対しては処理の流れを意味する。
【0063】
次に、本実施例のインピーダンス測定装置1’の動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
はじめに、信号発生部30’が同相の参照信号Vr1、Vr2を発生する(ステップ101)。より具体的には、演算部40’からの制御信号に基づいて、参照信号発生器33が、周波数fの参照信号Vr1=sin2πft(tは時間)を発生し、スイッチ32は正相入力を選択的に出力する。この結果、スイッチ32からは参照信号Vr1と同相の参照信号Vr2=sin2πftが出力される。
【0065】
次に、測定信号供給部10が、信号発生部30’から受信した参照信号Vr2と同相の測定信号Im=Isin2πftを生成して、測定対象60に供給する(ステップ102)。測定信号Imにより測定対象60の両端子間には、測定対象60のインピーダンスZと位相角θに応じた電圧が生じる。検出回路21により、測定対象60の両端子のそれぞれに接触する接触端子52、54間に生ずる検出信号Vm=ZIsin(2πft+θ)を検出する(ステップ103)。
【0066】
次に、乗算器22により、検出信号Vmを、参照信号Vr2と同相の変調信号Vmod1=sin2πftで変調すると、測定対象60のインピーダンスZの抵抗成分R=Zcosθに対応する直流成分と、周波数2fの交流成分とが重畳された検波信号Vd1が得られる(ステップ104)。
【0067】
また、乗算器23により、検出信号Vmを、90度移相器26で生成された、参照信号Vr2と位相が90度異なる変調信号Vmod2=cos2πftで変調すると、測定対象60のインピーダンスZのリアクタンス成分X=Zsinθに対応する直流成分と、周波数2fの交流成分とが重畳された検波信号Vd2が得られる(ステップ104)。
【0068】
次に、LPF24、25により、検波信号Vd1、Vd2を低域通過濾波して、直流成分を抽出した濾波信号Vi、Vqを生成する(ステップ105)。次に、演算部40’が、生成された濾波信号Vi、Vqの大きさを、検出時刻とともにメモリに格納する(ステップ106)。
【0069】
前述したステップ102からステップ106までの動作を、所定のサンプリング周期ごとに、反転周期Tにわたって繰り返し実施する(ステップ107)。本実施例のインピーダンス測定装置1’でも、反転周期Tを参照信号Vr1、Vr2の周期の2倍に設定している。
【0070】
所定の反転周期Tが経過すると、演算部40’は、スイッチ32を切り替える制御信号Vsを送信する。すると、スイッチ32は逆相入力を選択的に出力する。この結果、スイッチ32からは、参照信号Vr1とは逆相の参照信号Vr2=-sin2πftが出力される(ステップ108)。
【0071】
その後、所定の測定期間が終了したか否かが判定される(ステップ109)。本実施例のインピーダンス測定装置1’でも、測定期間を反転周期Tの2倍、したがって参照信号Vr1、Vr2の4周期分に相当する期間に設定している。
【0072】
ステップ102~108の1回目の処理を終えた時点では、反転周期1周期分の測定しか行っていないことから、ステップ102に戻って、ステップ102~108の動作を繰り返す。ただし、2回目の処理では、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相となっている。
【0073】
図6に測定対象に供給する測定信号Imと、外部ノイズVnと、変調信号Vmod1の時間的な変化を示す。時間0~Tが1回目の処理に、時間T~2Tが2回目の処理に対応する。測定信号Im、変調信号Vmod1ともに、参照信号Vr2に基づく信号であることから、1回目の処理と2回目の処理とで逆相となっているが、測定信号Imと変調信号Vmod1との関係においては同相のまま維持される。よって、濾波信号Vi、Vqに含まれる、測定対象60のインピーダンスZに比例する成分は、1回目の処理と2回目の処理とで同相となる。これに対して、検波信号に含まれる外部ノイズVnに起因する成分は、変調信号Vmod1が1回目の処理と2回目の処理とで逆相となるため、逆相となる。
【0074】
ステップ102~108の2回目の処理が終わると、反転周期Tの2倍の測定時間が経過したことから、測定期間が終了する(ステップ109)。この結果、メモリ内には、2つの参照信号Vr1、Vr2が同相のとき(測定信号Imと変調信号Vmod1はともに正相)の参照信号2周期分の濾波信号Vi、Vqの電圧の時間的変化と、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相のとき(測定信号Imと変調信号Vmod1はともに逆相)の参照信号2周期分の濾波信号Vi、Vqの電圧の時間的変化とが記録される。
【0075】
次に、演算部40’のプロセッサは、メモリ内から濾波信号Vi、Vqの電圧を読み出して、濾波信号Vi、Vqの加算平均をとる(ステップ110’)。濾波信号に含まれる外部ノイズVnに起因する成分は、2つの参照信号Vr1、Vr2が同相のときと、2つの参照信号Vr1、Vr2が逆相のときとで逆相となるため、両者の加算平均をとることにより相殺されて、外部ノイズVnによる影響を抑制した濾波信号Vi、Vqの大きさを取得することができる。
【0076】
最後に、演算部40’のプロセッサは、ステップ110’で求められた加算平均、すなわち外部ノイズVnが相殺された濾波信号Vi、Vqの大きさから、測定対象60のインピーダンスZ(RおよびX)および位相角θを算出する(ステップ111)。
【0077】
図7に、上記実施態様で説明したインピーダンス測定装置を2台用いて、インピーダンス測定を同時並行的に実施するときの構成を、図8に濾波信号のシミュレーション結果を示す。インピーダンス測定装置2は、測定対象61のインピーダンスZおよび位相角θを、1kHzの測定周波数fで測定する。インピーダンス測定装置3は、測定対象62のインピーダンスZおよび位相角θを、999Hzの測定周波数fで測定する。2台のインピーダンス測定装置2、3は近接して配置されているため、それぞれの装置が相互干渉する。すなわち、インピーダンス測定装置2の検出回路21には、インピーダンス測定装置3の999Hzの測定信号Imに起因する外部ノイズが入力される。また、インピーダンス測定装置3の検出回路21には、インピーダンス測定装置2の1kHzの測定信号Imに起因する外部ノイズが入力される。
【0078】
図8は、インピーダンス測定装置2(測定周波数1kHz、外部ノイズ999Hz)の測定結果であり、図8(a)はステップ110による加算平均処理を施す前の濾波信号、図8(b)は加算平均処理後の濾波信号である。加算平均処理を施す前の濾波信号は、参照信号と外部ノイズとの周波数差1Hz=1000Hz-999Hzに相当する交流成分が、直流成分に重畳されている。これに対して、加算平均処理後の濾波信号は、交流成分が抑制されていることがわかる。このことから、2つの参照信号Vr1、Vr2が同相のときの濾波信号Vi、Vqと、逆相のときの濾波信号Vi、Vqとの加算平均をとることにより、外部ノイズVnによる影響を抑制できることがわかる。外部ノイズが抑制された濾波信号の大きさに基づいて、測定対象61のインピーダンスZおよび位相角θを求めることにより、測定周波数近傍のノイズの影響を抑制した高精度なインピーダンス測定が可能となる。
【0079】
以上、本願発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であるでことは言うまでもない。例えば、上述した実施態様で説明したインピーダンス測定装置1、1’では、演算部40、40’で規定した参照信号の周波数と位相角に基づいて、信号発生部30が参照信号を発生しているが、正相と逆相が切り替わる参照信号波形のデジタルデータを演算部40内部で生成し、信号発生部30で参照信号を発生するように構成してもよい。また、インピーダンス測定装置1、1’の測定信号Imは参照信号Vr2と同相であり、変調信号Vmod1は参照信号Vr1またはVr2と同相であるが、それぞれの参照信号を基準に同量の位相オフセットがあってもよい。ただし、位相オフセットがある場合でも、測定信号Imと変調信号Vmod1とが同相または逆相の関係を維持しなければならない。
【符号の説明】
【0080】
1、1’、2、3 インピーダンス測定装置
10 測定信号供給部
20 測定部
21 検出回路
22、23 乗算器
24、25 ローパスフィルタ(LPF)
26 90度移相器
30、30’ 信号発生部
31 位相反転器
32 スイッチ
33 参照信号発生器
40、40’ 演算部
51、52、53、54 接触端子
60、61、62 測定対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
以上、本願発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上述した実施態様で説明したインピーダンス測定装置1、1’では、演算部40、40’で規定した参照信号の周波数と位相角に基づいて、信号発生部30が参照信号を発生しているが、正相と逆相が切り替わる参照信号波形のデジタルデータを演算部40内部で生成し、信号発生部30で参照信号を発生するように構成してもよい。また、インピーダンス測定装置1、1’の測定信号Imは参照信号Vr2と同相であり、変調信号Vmod1は参照信号Vr1またはVr2と同相であるが、それぞれの参照信号を基準に同量の位相オフセットがあってもよい。ただし、位相オフセットがある場合でも、測定信号Imと変調信号Vmod1とが同相または逆相の関係を維持しなければならない。