(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107036
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】建造物設備機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008122
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】堀部 房二
(72)【発明者】
【氏名】青山 航大
(72)【発明者】
【氏名】安尾 貴司
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA12
5J047AB01
5J047AB13
5J047EF01
(57)【要約】
【課題】筐体を金属にしても電波の送信および受信の少なくとも一方を行うことができる建造物設備機器を提供する。
【解決手段】建造物設備機器であって、電波の送信および受信の少なくとも一方を行うためのアンテナ140を備え、アンテナ140のアンテナ素子148は、本建造物設備機器の外面の少なくとも一部を構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物設備機器であって、
電波の送信および受信の少なくとも一方を行うためのアンテナを備え、
前記アンテナのアンテナ素子は、本建造物設備機器の外面の少なくとも一部を構成する、建造物設備機器。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、本建造物設備機器の筐体の少なくとも一部を構成する、請求項1に記載の建造物設備機器。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、面状であり、本建造物設備機器の筐体に貼り付けられる、請求項1に記載の建造物設備機器。
【請求項4】
本建造物設備機器の外面の少なくとも一部を構成する前記アンテナ素子の外表面は、曲面状である、請求項1に記載の建造物設備機器。
【請求項5】
本建造物設備機器は水栓装置である、請求項1から4のいずれかに記載の建造物設備機器。
【請求項6】
前記電波は電力供給用の電波である、請求項1から5のいずれかに記載の建造物設備機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建造物設備機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクロ波を受信して電力に変換する受電部を筐体の内部に備える水栓装置が開示されている。この水栓装置によれば、電力を供給する配線を減少させることができ、水栓装置における吐水部のサイズやデザインの制約を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、筐体を金属にすると、筐体にマイクロ波が遮断されてしまい、筐体の内部の受電部でマイクロ波を受信できない。
【0005】
本開示の目的の1つは、筐体を金属にしても電波の送信および受信の少なくとも一方を行うことができる建造物設備機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の、建造物設備機器は、建造物設備機器であって、電波の送信および受信の少なくとも一方を行うためのアンテナを備える。アンテナのアンテナ素子は、本建造物設備機器の外面の少なくとも一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る設備機器システムの構成を示す模式図である。
【
図4】
図1の吐水部の別の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図1の吐水部のさらに別の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素の一部を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造及び形状に、言及している内容に厳密に一致する構造及び形状のみでなく、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造及び形状も含む。各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1を参照する。第1の実施の形態に係る設備機器システム100は、例えば、ビルなどの大規模な施設、戸建て、集合住宅、工場などの建造物に設置される。設備機器システム100は、送電装置102と、建造物設備機器の一例である水栓装置104と、を備える。設備機器システム100は、複数の建造物設備機器を含んでもよい。設備機器システム100では、送電装置102が送信する電力供給用の電波を水栓装置104が受信して電力に変換し、水栓装置104はその電力を用いて動作する。
【0010】
送電装置102は、電力供給用の電波を送信可能であれば、設置場所は問わない。送電装置102は、例えば、天井裏や壁の中に設置されてもよい。送電装置102は、制御部114と、電波発生部116と、電力送信部118と、推定装置120と、情報通信部122と、アンテナ124と、を備える。
【0011】
電波発生部116は、図示しない外部電源から供給される電力から電力供給用の電波を発生させる。電力送信部118は、電波発生部116で発生させた電力供給用の電波を、アンテナ124を介して送信する。電力伝送可能であれば電力供給用の電波に限定はない。例えば2.4GHz帯の電波により15W程度の送信出力を実現でき、例えば5.7GHz帯の電波により32W程度の送信出力を実現できることが判明している。また、その他の周波数帯の電波によっても電力伝送が可能であることが報告されている。
【0012】
推定装置120は、水栓装置104が設置された空間に人が存在するか否かを推定する。推定装置120は、一例として、人感センサと、この人感センサの検知結果に基づいて人が存在するか否かを判定する判定部とで構成できる。電力送信部118は、空間に人が存在することを推定装置が推定したら、電波の送信を停止する。これにより、電波が人に遮られて無駄になること避けられる。電力送信部118は、空間に人が存在しないことを推定装置が推定したら、電波の送信を再開してもよい。
【0013】
情報通信部122は、アンテナ124を介して外部装置と情報を送受信する。情報通信部122は例えば、水栓装置104から、二次電池(後述)の電池残量に関する情報を受信してもよい。また例えば情報通信部122は、水栓装置104から、電力供給用の電波の送信要求を受信してもよい。
【0014】
制御部114は、送電装置102を統括的に制御する。例えば制御部114は、電波発生部116および電力送信部118を制御して、電力供給用の電波を水栓装置104に向けて送信する。制御部114は、電力供給用の電波を、所定の周期で送信してもよいし、水栓装置104から送信要求を受信した場合に送信してもよいし、水栓装置104の電池残量が所定の閾値を下回った場合に送信してもよいし、その他のタイミングで送信してもよい。
【0015】
水栓装置104は、吐水部130と、給水管132と、給水管132に設けられた電気駆動弁134と、水栓装置104の近くに差し出された手を非接触で検知するセンサ136と、センサ136による検知結果に基づいて電気駆動弁134を制御する制御部138と、アンテナ140と、受電部142と、二次電池144と、を備える。
【0016】
受電部142は、電力受信部150と、電力変換部152と、を含む。電力受信部150は、アンテナ140を介して電力供給用の電波を受信する。電力変換部152は、電力受信部150が受信した電波を整流して電力に変換する。電波から変換された電力は、二次電池144に充電される。二次電池144に充電された電力は、センサ136や制御部138に供給される。
【0017】
センサ136は、吐水部130内の流路146の出口である吐水口146aの近くに差し出された手を非接触で検知する。センサ136は、手を検知している間、制御部138に信号を送信する。
【0018】
制御部138は、情報通信部154と、電池残量検出部156と、弁制御部158と、を含む。弁制御部158は、センサ136から信号を受信すると、電気駆動弁134を開く。電気駆動弁134が開くと、給水管132から吐水部130内の流路146に水が供給され、吐水口146aから水が吐出される。弁制御部158は、センサ136から信号を受信しなくなると、電気駆動弁134を閉じる。電気駆動弁134が閉じると、給水管132から吐水部130内の流路146に水が供給されなくなり、吐水口146aからの水の吐出が止まる。
【0019】
電池残量検出部156は、二次電池144の電池残量に関する情報を検出する。電池残量検出部156は、電池残量に関する情報を、定期的に検出してもよいし、送電装置102から要求があった場合に検出してもよい。電池残量に関する情報は、二次電池に残存する容量であってもよいし、最大容量に対する残存する容量の比率であってもよい。
【0020】
情報通信部154は、アンテナ140を介して、外部装置と情報を送受信する。例えば情報通信部154は、電池残量検出部156が検出した電池残量に関する情報を送電装置102に送信する。例えば情報通信部154は、水栓装置104の使用状況に関する情報を外部装置に送信してもよい。水栓装置104の使用状況に関する情報は、例えば、時間帯別の水栓装置104の使用頻度であってもよいし、また例えば、時間帯別の水の使用量であってもよい。使用状況に関する情報は、例えば弁制御部158が特定してもよい。
【0021】
アンテナ140は、電力供給用の電波と受信と、情報通信用の電波の送受信とに共用される。アンテナ140は、1つまたは複数のアンテナ素子(放射素子)148を含む。1つまたは複数のアンテナ素子148は、水栓装置104の露出部分104aの外面の少なくとも一部を構成する。
【0022】
例えば、1つまたは複数のアンテナ素子148は、水栓装置104の露出部分104aの筐体の少なくとも一部を構成してもよい。言い換えると、水栓装置104の露出部分104aの筐体の少なくとも一部が、1つまたは複数のアンテナ素子148を構成してもよい。アンテナ素子148が露出部分104aの筐体の少なくとも一部を構成するとは、アンテナ素子148がなければ水栓装置104の内部構造が見えることを意味する。
【0023】
また例えば、1つまたは複数のアンテナ素子148は、露出部分104aの筐体に貼り付けられてもよい。この場合、アンテナ素子148は、透明電極であってもよい。
【0024】
アンテナ140がパッチアンテナである場合の具体例を説明する。
【0025】
(第1の例)
図2、3を参照する。
図3では、流路146の表示は省略している。吐水部130は、吐水部130をバックガードなどの固定体に固定するための台座160と、後端が台座160に接続された吐水ヘッド162と、を含む。吐水ヘッド162は、全体として見れば略円筒状の外観を呈し、水平方向であるD方向に延在する。
【0026】
グラウンド電極164は、中空構造の金属部材である。グラウンド電極164は、半円筒部166と、半円筒部166の直径方向に延びる平板部168と、を含む。半円筒部166は、吐水ヘッド162の筐体180の一部を構成し、半円筒部166の外周面166aは吐水ヘッド162の外面の一部を構成する。グラウンド電極164は、給電線182によってアンテナ素子148と電気的に接続される。
【0027】
アンテナ素子148は、D方向に延在する金属部材である。アンテナ素子は、平板部168から半円筒部166とは反対側に立設する樹脂スペーサ170によって支持される。アンテナ素子148の外表面148aは、吐水ヘッド162の外面の一部を構成する。外表面148aは、D方向に垂直な断面形状は円弧状である。つまり、外表面148aは曲面状である。アンテナ素子148の外表面148aは、グラウンド電極164の半円筒部166の外周面166aと同一の仮想円筒面を構成してもよい。
【0028】
(第2の例)
図4、5を参照する。
図4(a)は、アンテナ素子148およびグラウンド電極164を取り外した状態を示している。
図5では、流路146の表示は省略している。第1の例との相違点を中心に説明する。この例では、アンテナ素子148は、半円筒状であり、筐体180の一部を構成している。アンテナ素子148は、支持部材172を介して、筐体180の他の部分に支持されている。支持部材172は、平面視で矩形状の平板部174と、D方向における平板部174の両端からそれぞれ立設する2つの半円柱部176と、を含む。アンテナ素子148は、2つの半円柱部176の外周面176aによって支持されている。グラウンド電極164は、棒状に形成され、吐水ヘッド162の筐体180内に収容される。
【0029】
(第3の例)
図6を参照する。第1の例との相違点を中心に説明する。この例では、吐水ヘッド162の筐体180は円筒状に形成されている。グラウンド電極(
図6では不図示)は、筐体180内に収容されている。アンテナ140は、複数のアンテナ素子148を含む。複数のアンテナ素子148は、規則的に配列されている。複数のアンテナ素子148はそれぞれ、透明電極であり、吐水ヘッド162の筐体180の外周面180aに貼り付けられている。
【0030】
本実施の形態によれば、アンテナ素子148は、水栓装置104の吐水部130の露出部分104aの外面の一部を構成するため、水栓装置104の筐体が金属で構成された場合でも電波の送受信ができる。
【0031】
アンテナ素子148が水栓装置104の吐水部130の筐体の一部を構成する場合、筐体の中にアンテナ素子148は配置されないため、その分だけ吐水部130を小型化できるあるいは筐体内のスペースを有効利用できる。
【0032】
アンテナ素子148は曲面状に形成されるため、電波を広角に受電でき、したがって送電装置102の配置位置の自由度が高くなる。
【0033】
アンテナ素子148の寸法は、概ね1辺が、送受信する電波の半波長になるように構成される。したがって、高周波数の電波を送受信する場合、アンテナ素子148の寸法は比較的小さくなり、アンテナ素子148の面積は小さくなる。これに対し、第3の例のようにアンテナ140が複数のアンテナ素子148を含むことで、アンテナ素子148の総面積は大きくなり、例えば電力供給用の電波の受信能力が向上する。
【0034】
以上、本開示について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0035】
(変形例1)実施の形態では、アンテナ素子148は湾曲した板状の部材であり、その外表面148aが曲面状である例を説明した。しかしながら、アンテナ素子148が電波の送信および受信の少なくとも一方を行うことが可能であれば、アンテナ素子148の形状は特に限定されない。例えばアンテナ素子148は平板状であり、外表面は平面状であってもよい。また例えばアンテナ素子148は、外表面として、互いに交差する(言い換えると法線方向が互いに異なる)複数の平面を備えるように構成されてもよい。この場合、電波を広角に受電でき、したがって送電装置102の配置位置の自由度が高くなる。
【0036】
(変形例2)実施の形態では、吐水部130がストレート形状である例を示したが、これに限定されず、吐水部130はL字型、U字型、その他の形状であってもよい。実施の形態の形態とは異なるが、水栓装置104は吐水部が接続される基部や操作部を備え、吐水部に加えて基部や操作部が露出してもよい。この場合、アンテナ素子148は、基部や操作部の外面の少なくとも一部を構成してもよく、基部や操作部の筐体の少なくとも一部を構成してもよい。
【0037】
(変形例3)実施の形態および上述の変形例では、建造物設備機器が水栓装置である例を示したが、建造物の設備として取り付けられている機器であればよく、水栓装置に限定されない。
【0038】
建造物設備機器は、例えば、電子鍵で解錠されたり、ドアを軽く押すとドアが自動で開いたりするドア装置であってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、ドア本体、ドアノブ(ハンドル)およびサムターン錠のいずれかの少なくとも一部を構成してもよい。このアンテナ140を介して受信した電力供給用の電波を電力に変換して二次電池144に充電し、二次電池144に充電された電力で鍵を解錠したりドアを開いたりするモータを駆動すればよい。
【0039】
また例えば、建造物設備機器は、窓、例えば電動で開閉される窓であってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、窓のカムラッチ、クレセント錠、グレモン錠のハンドルのいずれかの少なくとも一部を構成してもよい。このアンテナを介して受信した電力供給用の電波に基づく電力で、窓を開閉させてもよい。
【0040】
また例えば、建造物設備機器は、サッシであってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、サッシのフレーム、框のいずれかの少なくとも一部を構成してもよい。
【0041】
また例えば、建造物設備機器は、キッチンや洗面所に設置されるキャビネットであってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、キャビネットの把手の少なくとも一部を構成してもよい。
【0042】
また例えば、建造物設備機器は、浴室用水栓金具であってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、シャワーヘッドの少なくとも一部を構成してもよい。
【0043】
また例えば、建造物設備機器は、壁面などに設置されるリモートコントローラ、例えば便器装置のリモートコントローラであってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、リモートコントローラのセンサのケースの少なくとも一部を構成してもよい。
【0044】
また例えば、建造物設備機器は、システムウォールであってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、システムウォールの少なくとも一部を構成してもよい。
【0045】
また例えば、建造物設備機器は、宅配ボックスであってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、宅配ボックスの筐体や扉の少なくとも一部を構成してもよい。
【0046】
また例えば、建造物設備機器は、カーポートであってもよい。この場合、アンテナ140のアンテナ素子が、例えば、カーポートの支柱や梁の少なくとも一部を構成してもよい。
【0047】
(変形例4)実施の形態および上述の変形例とは異なり、水栓装置104は、受電部142に代えてまたは受電部142に加えて、送電装置102の電波発生部116および電力送信部118の機能を備えてもよい。この場合、所定の外部電源から供給される電力から電力供給用の電波を発生させ、アンテナ140を介して周囲の機器に向けて送信してもよい。つまり、アンテナ140は、電力供給用の電波の送信に用いられてもよい。
【0048】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本開示を説明した。実施の形態は、本開示の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0049】
100 設備機器システム、 102 送電装置、 104 水栓装置、 140 アンテナ、 148 アンテナ素子。