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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010705
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】抗菌形状記憶ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20230113BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 15/64 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 24/04 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 24/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230113BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20230113BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230113BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230113BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
C08G18/32 015
A61L15/26
A61L15/42 300
A61L15/44
A61L15/46
A61L15/64
A61L24/04 200
A61L24/00 250
A61L24/00 210
A61L24/00 260
A61L29/06
A61L29/16
A61L31/06
A61L31/14 400
A61L31/16
A61L31/14 500
C08G18/00 F
C08G18/28 010
C08G18/32 021
C08G101:00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168036
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2019530119の分割
【原出願日】2017-12-06
(31)【優先権主張番号】62/430,620
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510162539
【氏名又は名称】ザ テキサス エーアンドエム ユニバーシティ システム
【氏名又は名称原語表記】THE TEXAS A&M UNIVERSITY SYSTEM
【住所又は居所原語表記】3369 TAMU College Station, Texas 77843-3369, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】モンロー,メアリー ベス
(72)【発明者】
【氏名】メイトランド,ダンカン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィームズ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ブランディス
(72)【発明者】
【氏名】フレッチャー,グレイス
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つの抗菌剤を包含する熱硬化性ポリウレタン形状記憶ポリマー(SMP)フォームを含むシステムを包含する。
【解決手段】前記抗菌剤は、前記SMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合したペンダント基である少なくとも1つのフェノール酸を包含し得る。他の実施形態が本明細書に記載されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの抗菌剤を含む第1の熱硬化性ポリウレタン形状記憶ポリマー(SMP)フォームを含む、システムであって
前記第1のSMPフォームは、前記少なくとも1つの抗菌剤に化学的に結合しており、
前記少なくとも1つの抗菌剤は、ケイ皮酸、安息香酸、ゲンチシン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、p-クマル酸、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸、没食子酸、フェルラ酸、シナプ酸、カフェイン酸、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、かつ、
前記第1のSMPフォームは、生体適合性である、システム。
【請求項2】
前記第1のSMPフォームは生分解性である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
止血デバイスを含み、前記止血デバイスは前記第1のSMPフォームを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
創傷被覆材を含み、前記創傷被覆材は前記第1のSMPフォームを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
さらに、前記第1のSMPフォームに結合されたプレジットを含み、前記プレジットは、布、ダクロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ガーゼを含み、前記ガーゼは前記第1のSMPフォームに結合している、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの第2の抗菌剤を含む熱硬化性ポリウレタンの第2のSMPフォームを含む請求項1~6のいずれか一項に記載のシステムであって、ここで、
前記第2のSMPフォームは、前記少なくとも1つの第2の抗菌剤に化学的に結合され、
前記少なくとも1つの第2の抗菌剤は、ケイ皮酸、安息香酸、ゲンチシン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、p-クマル酸、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸、没食子酸、フェルラ酸、シナプ酸、カフェイン酸、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、かつ、
前記第2のSMPフォームは、生体適合性である、システム。
【請求項8】
前記第1及び第2のSMPフォームはペレットである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1及び第2のSMPフォームは互いに結合していない、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
骨格を含み、前記第1及び第2のSMPフォームは各々前記骨格に結合している、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項11】
前記骨格は、金属、布、紐、縫合糸、ポリマー、フィラメント、ニチノール、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
カテーテルを含み、前記カテーテルは前記第1及び第2のSMPフォームを含む、請求項7~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のSMPフォームは、膨張している一次状態であり、かつ、
前記第1のSMPフォームは、圧縮された二次状態でありうる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1及び第2のSMPフォームは密閉されたキットに封入されている、請求項7~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
であって、ここで
前記第1のSMPフォームは、ポリウレタンポリマー鎖を含み、
前記少なくとも1つの抗菌剤は、エステルを介してポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合している、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの抗菌剤はカルボン酸基を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、2016年12月6日に出願され、「抗菌形状記憶ポリマー」と題される米国仮特許出願第62/430,620号に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明の実施形態は、形状記憶ポリマー医療機器の分野にある。
【背景技術】
【0003】
バックグラウンド
出血は、戦場での潜在的に予防可能な死亡の主な原因である。現在のフィールドケアの標準は、止血帯と組み合わせてガーゼを利用することである。しかしながら、これらの処置は創傷の80%までについては不十分である。さらに、止血帯は、約(~)4~6時間を超える止血帯の使用は四肢の損傷及び喪失と関連しているので、失血に対する一時的な対策としてのみ役立つ。改善された止血材料は、患者が固定施設で治療を受けることができる前に早期の止血帯除去を可能にし得る。
【0004】
戦場における現在の標準的なケアは、細菌及び真菌感染を防ぐための頻繁な包帯交換と組み合わせた広域スペクトル抗生物質レジメンの使用を含む。しかしながら、抗生物質耐性に対する懸念が高まっているため、代替の治療方法を使用する必要があり、また、包帯交換が戦闘中に常に実行可能とは限らない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲、以下の1つ以上の例示的実施形態の詳細な説明、及び対応する図面から明らかになろう。適切であると考えられる場合、対応する要素又は類似の要素を示すために参照符号が図の間で繰り返されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】形状記憶ポリマー(SMP)フォームへのケイ皮酸(CA)の組み込みの概略図を示す図である。ルートA: 一実施形態においては、プレポリマーを、CA、ヒドロキシプロピルエチレンジアミン(HPED)、トリエタノールアミン(TEA)、及び過剰のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いて調製した。プレポリマーを触媒、界面活性剤、及び発泡剤の存在下で加熱しながら残りのCA、HPED、及びTEAと反応させてCA含有SMPフォームを形成した。ルートB: 一実施形においては、CA上のカルボン酸基をHPED上のヒドロキシル基でエステル化してHCAを形成した。次いで、ルートAに利用したのと同じ方法で、CAの代わりにHCAを発泡性モノマーとして使用して、CA含有SMPフォームを形成した。
図2】HCA/CAフォームの合成のスペクトル確認を示す図であるである。図2(A)は、HPED及びCAと比較したHCAの透過フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルであり、図2(B)は、HCAの核磁気共鳴(NMR)スペクトルであり、図2(C)は、コントロール、CA、及びHCAフォームについての減衰全反射(ATR)-FTIRスペクトルである。
図3】フェノール酸含有フォーム組成を示す図である。
図4】CA及びCAOHモノマーで合成されたSMPフォームの細孔径と密度を示す図である。
図5】CA及びCAOH含有SMPフォームの熱特性及び形状記憶特性を示す図である。
図6】コントロールSMP、CA又はCAOHを含むSMP、及びペニシリン-ストレプトマイシン(抗生物質コントロール)に曝露した後の大腸菌(E.coli)コロニー形成単位を示す図である。CA及びCAOH含有SMPの両方が、コントロールSMPと比較してコロニーのサイズ及び数を減少させ、そして両方とも、抗生物質コントロールと比較してコロニーのサイズを減少させた。
図7】SMPフォームの構造特性を示す図である。図7(A)は密度であり、図7(B)は孔径(軸方向及び横断方向の発泡方向)及び等方性(軸方向及び横断方向発泡方向における孔径間の比)であり、ならびに図7(C)は軸方向及び横断方向の発泡方向における代表的走査電子顕微鏡写真である。スケールバーはすべての画像に適用される。
図8】HCA/CAフォームの熱及び形状記憶特性を示す図である。図8(A)は乾燥及び湿潤ガラス転移温度(Tg)であり、図8(B)は37℃の水中での体積回復プロファイルであり、図8(C)は37℃の水中で100%の体積回復までの時間(Time)である。
図9】SMPフィルムとの接触の2時間後及び72時間後のヒト皮膚線維芽細胞の代表的な明視野像を示す図である。スケールバーはすべての画像に適用される。
図10】未修飾コントロール、CA、HCA、及びペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)浸漬コントロールSMPフィルムへの曝露後の、大腸菌(E.coli 図10(A))及び表皮ブドウ球菌(Staph.Epi. 図10(B))のコロニー形成単位(CFU)密度を示す図である。コントロールに対して、*p<0.05。10%HCA及び20%HCAに対して、ダガーp<0.05。他のすべての試料に対して、・p<0.05。
図11】37℃で30日間までリン酸緩衝食塩水中に浸漬されたCA及びHCA SMPフィルムへの曝露後の(A)大腸菌(E.coli)及び(B)表皮ブドウ球菌(Staph.Epi.)のコロニー形成単位(CFU)密度を示す図である。赤い線 - コントロールCFU密度。対照に対して*p<0.05。製剤内の他のすべての時点に対して・p<0.05、製剤内の10日及び20日の試料に対して■p<0.05、製剤内の0日の試料に対してダブルダガーp<0.05。
図12】抗菌性SMP組成物を示す図である。NCO: イソシアネート、OH: ヒドロキシル。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「実施形態」、「様々な実施形態」などは、そのように説明された実施形態(複数可)が特定の特徴、構造、又は特性を包含することを示しているが、必ずしもすべての実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を包含するとは限らない。いくつかの実施形態は、他の実施形態について記載された特徴のいくつか、全部、又は全く無し、を有し得る。「第1」、「第2」、「第3」などは、共通のオブジェクトを説明し、類似のオブジェクトの異なるインスタンスが参照されていることを示す。そのような形容詞は、そのように記述されたオブジェクトが、時間的に、空間的に、ランキング中に、又は他の方法で、与えられた順序でなければならないことを意味しない。
【0008】
以下に様々な実施形態が対処される。実施形態は、「実施形態の概要」と題されたセクションにおいて最初に対処される。実施形態は、その後、「実施形態の高レベルの説明」及び「実施形態のより詳細な説明」と題されたセクションにおいてさらに対処される。
【0009】
一実施形態又は複数の実施形態の概要
治療が非常に困難な感染症をもたらす抗生物質耐性細菌に対する医学界における懸念が非常に高まっている。これらの懸念に対処するために、一実施形態は、形状記憶ポリマー(SMP)への抗菌剤の組み込みを包含する。SMPは、様々な医療機器又は他の機器に使用され得る非常に価値のある材料である。一実施形態は、非薬物ベースの抗菌剤(例えば、蜂蜜由来のフェノール酸、蛍光染料、銀、又は過酸化物生成化合物)をSMPに組み込む。これらの抗菌剤の存在は、SMPベースのデバイスの周囲に局所的感染防止を提供する。一実施形態は、抗菌特性がポリマーネットワークに化学的又は物理的に組み込まれるようにポリマー合成において小さな抗菌剤又は抗菌剤を包含させることによって導入されることを提供する。
【0010】
したがって、実施形態は、感染抵抗を有するSMPベースの医療機器を包含する。実施形態は、血管内医療機器、創傷被覆材、止血材料、肺穿刺シーラント、及び/又は骨移植片を包含するがこれらに限定されない広範囲の医療機器に利用される抗菌SMPを包含する。一実施形態では、組み込まれた抗菌剤を含むSMP医療機器は、損傷した組織における局所感染リスクを軽減するため、経口抗生物質と連携して機能する。
【0011】
そのような実施形態は様々な理由で重要である。例えば、これらの抗菌SMPベースの医療機器は、治療と感染予防における大きな臨床的ニーズを満たす。なぜなら、傷害の時点及び/又は病院環境で獲得された感染症は医療費の重要な源泉であり、患者の罹患率及び死亡率の一因となるからである。抗菌剤を創傷又は移植の供給源に直接送達することによって、これらの感染及びそれらの合併症は、特に薬物耐性細菌株に対して有効である広域スペクトル抗菌剤の使用によって減少する。SMP医療機器は、小さい及び/又は不規則な形状の欠陥部位に容易に送達することができる。したがって、抗菌SMPは感染リスクを低減した新しい治療法の選択肢を提供する。
【0012】
そのような実施形態は様々な理由で新規である。例えば、非薬物ベースの抗菌剤をSMPに直接組み込むこと、及びそれに続く複雑な構造を有するデバイスの製造は新規である。新規性のポイントは、医療機器における送達を可能にするために、非薬物の小さな抗菌分子(例えば、フェノール酸及び蛍光染料)をSMポリマーフォームシステムに組み込むことを包含する。
【0013】
さらに抗菌分子に関して、一実施形態はフェノール酸(PA)を包含する。ミツバチは、それらの蜂蜜中に植物由来のPAを産生し、微生物やウイルスから巣箱を守る。PAは広い抗菌特性を示し、そして多剤耐性生物(MDRO)に対して有効であることが示されている。例えば、病院から得られた抗生物質耐性菌(エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))は、PA桂皮酸に感受性があった。同様に、2つの他のPS(フェルラ酸及び没食子酸)は、4個のヒト病原性細菌(大腸菌、緑膿菌(Pseudomonoas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌、及びリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))について>70%のバイオフィルム活性を減少させた。
【0014】
PAの代替として、実施形態は、SMPへのそれらの組み込みを可能にする抗菌活性及び化学作用(chemistries)を有する多数の蛍光分子を使用する。さらなる一実施形態は、水の存在下で自然に過酸化物を生成するモノマーを組み込んでいる。
【0015】
さらなる利点として、モノマーとして抗菌剤を利用する技術は、疎水性及び架橋密度などの標準的な変数を使用してSMP特性の微調整を可能にする。それらははさまざまな種類の組織に合わせて処理及び調整できるため、この特性は、抗菌SMPの潜在的な用途を拡大する。
【0016】
別の実施形態は、銀ナノ粒子などの抗菌粒子の物理的組み込みを包含する抗菌SMPを使用する。ナノ粒子充填剤はSMPスキャフォールドの機械的性質を改善する。したがって、銀ナノ粒子の添加は、SMPの機械的完全性を高め、そして抗菌剤耐性を提供する。
【0017】
実施形態にはなおさらなる利点がある。以前の研究(Landsman, et al. Acta Biomaterialia (2016))は、ヨウ素含有ヒドロゲルと一体化したSMPフォームを包含した。これらのヨウ素「スポンジ」も抗菌SMPシステムの選択肢を提供するが、抗菌特性はヒドロゲル成分に完全に依存しており、ここで、抗菌剤はSMPに直接組み込まれていない。対照的に、一実施形態は、抗菌剤を組み込む様々な機構を有するSMPのみのスキャフォールドを利用する。
【0018】
抗菌性SMPフォームの様々な実施形態は、いくつかの経路によって製造される。
【0019】
ルート1: ポリウレタンへのそれらの組み込みを可能にするため、抗菌性又は過酸化物生成モノマーを反応性ヒドロキシル又はアミン基で官能化する。手短に言えば、フェノール酸のカルボン酸は、エステル化触媒(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びジメチルアミノピリジン(DMAP))を用いて適切な溶媒中で発泡ポリオール(例えば、N、N、N’、N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(HPED)又はトリエタノールアミン)でエステル化される。副生成物及び残留触媒を除去するため、反応物を濾過及び洗浄し、そして最終生成物を回転蒸発により単離する。この方法は、カルボン酸基を有するあらゆる抗菌剤と共に使用するのに適している。最終生成物は、他のポリオール(例えば、HPED及び/又はTEA)及びジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び/又はイソホロンジイソシアネート)によるSMP合成においてポリオールとして利用される。
【0020】
ルート2: SMPへの直接化学物質の取り込み。手短に言えば、ポリウレタンSMPを形成するため、反応性基(例えば、カルボン酸、ヒドロキシル、又は第一もしくは第二アミン)があるいかなる抗菌性又は過酸化物生成モノマーをポリオール(例えば、HPED及び/又はTEA)及びジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び/又はイソホロンジイソシアネート)と反応させる。
【0021】
ルート3: SMPへの直接の物理的組み込み。簡単に説明すると、物理的に組み込まれた抗菌剤とのSMPネットワークをもたらすため、架橋反応の前に、任意の抗菌又は過酸化物生成モノマー又は粒子(ナノスケール又はマイクロスケール)を、SMPモノマー(例えばポリオール(例えばHPED及び/又はTEA))及びジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び/又はイソホロンジイソシアネート)と混合する。したがって、SMPフォームは、抗菌剤又は過酸化物を生成するモノマーもしくは粒子の周囲に架橋されている。一実施形態では、ポリマー鎖のイソ又は「B」側及び「ポリ」又は「A」側は、抗菌剤又は過酸化物を生成するモノマーもしくは粒子の周囲に架橋されている。
【0022】
一般に、SMPネットワークは、スイッチユニット又はセグメント及びネットポイント又はドメインを包含する。ネットポイントはポリマーネットワークの恒久的形状を決定する。一実施形態では、抗菌剤は物理的に架橋されたネットポイントである。抗菌剤を用いると、SMPフォームはコンポジットを含み、及びしたがって抗菌剤を含めることに応答してより強くなる。
【0023】
上記の経路のいずれも、バルク又は多孔質SMPと共に利用される。合成後、材料は切断され、洗浄され、処理され、そして医療機器に組み込まれる。
【0024】
実施形態は、HPEDで首尾よく改質され、SMPフォーム及びバルクフィルム合成において利用されたPAを包含する。PA含有SMPは、コントロールと同様の熱転移温度を有し、形状記憶特性を実証する。PA含有SMPは、コントロールと比較して大腸菌増殖の効果的な減少を示す。
【0025】
種々のSMPフォームが論じられてきた。実施形態は、以下の(a)及び(b):
(a)ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブタンジオール、ブチンジオール、N、N、N’、N’-テトラキス(ヒドロキシルプロピレン)エチレンジアミン、及び
(b)フェノール酸(例えば、ケイ皮酸、安息香酸、ゲンチシン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、p-クマル酸、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸、没食子酸、フェルラ酸シナプ酸、カフェイン酸)、蛍光染料(例えば、フロキシンB、トルイジンブルーO、インドシアニングリーン)、又は金属粒子もしくは金属ナノ粒子(例:コロイド銀)、を包含し得るがこれらに限定されない抗菌剤
のいくつかの組み合わせによって合成されたポリウレタンSMPフォームを包含する。
【0026】
実施形態の高レベルの説明
抗菌剤は、ポリウレタン形状記憶ポリマー(SMP)に取り込まれる(図1)。いくつかの実施形態では、埋め込まれたSMPベースのデバイスにおける感染リスクを減らすため、取り込まれた抗菌剤は、経口用抗生物質と共に作用する。抗生物質耐性細菌株については多くの懸念がある。この問題に対処するために、抗菌フェノール酸(PA)が非薬物アプローチにおいて利用されている。ミツバチはそれらの蜂蜜中に植物由来のPAを産生し、微生物やウイルスから巣箱を守る。PAは広い抗菌特性を示し、そして多剤耐性生物(MDRO)に対して有効であることが示されている。例えば、病院から得られた抗生物質耐性菌(エンテロバクター・アエロゲネス、大腸菌、黄色ブドウ球菌)はケイ皮酸に感受性がある。最近のレビューは、カンジダ感染症(プランクトン及びバイオフィルム、薬剤感受性及び薬剤耐性)に対する、ケイ皮酸、ゲンチジン酸、及び安息香酸を包含する多数のPAの有効性を網羅している。さらに、フェルラ酸及び没食子酸は、4つのヒト病原菌(大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、及びリステリア・モノサイトゲネス)についてバイオフィルム活性を>70%減少させた。蜂蜜の単一成分(例えばPA)を取り、それを発泡性モノマーとして利用することにより、我々は、合成医療機器システムを維持しながら、PAの利点を制御する(harness)。
【0027】
研究1.1: PA含有SMPフォームを製造する。
MDROに対するPA(変性及び未変性)抗菌効力は、フォーム製造前に薬剤をダウンセレクトするために測定される。許容される抗菌特性を有するすべての薬剤について、SMPフォームは、(a)PA含有ポリオール(PAOH)を製造するための発泡ポリオールとの事前のエステル化、及び(b)直接配合により、さまざまなレベルの桂皮酸、ゲンチジン酸、及び安息香酸を用いて合成される。一実施形態では、ルート(a)は、フォーム組成物に対する変更がより少ないことを必要とする。事前のエステル化はPAの抗菌特性を高める。さらに、ルート(a)は、フォーム特性をよりよく制御するため、PA上のカルボン酸とフォーム中のイソシアネートとの間の反応からの泡発生を排除/減少させる。ルート(b)はより単純でより安価である。したがって、いくつかの実施形態では、すべての達成基準を満たし、且つ、一貫した信頼性のあるフォームを生成する、ルート(b)を介して合成されたフォームが有利である。
【0028】
方法: PAOH合成。
PAOHは、ヒドロキシプロピルエチレンジアミン(HPED)から合成される。室温で3時間、クロロホルム中でのエステル化を介して(ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びジメチルアミノピリジン(DMAP)で触媒される)、PA(ケイ皮酸、ゲンチジン酸、及び安息香酸)を選択する(図1)。副生成物及び残留触媒を除去するため、反応物を濾過しそして洗浄し、そして最終生成物を回転蒸発により単離する。PAOHの合成が成功したことは、フーリエ変換赤外(FTIR)及び核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて確認される。
【0029】
結果: HPEDと比較したヒドロキシル基の減少及びエステル結合の形成を示すFTIRスペクトルによって示されるように、ケイ皮酸-HPED(CAOH)は首尾よく合成された(図2)。
【0030】
フォームの合成:
PA及びPAOH誘導体は有効な抗菌剤であるので、前述のように、フォームは、HPED及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と組み合わせて様々な量のPAOHで合成される(図1)。簡単に言うと、ポリウレタンプレポリマーは、HDIの過剰量と、PAOH及びHPEDとを用いて合成される。いくつかの実施形態では、残りのPAOH及びHPEDを一緒に混合し、最終モル比1:1(イソシアネート(HDI):ヒドロキシル(PAOH及びHPED))でプレポリマーに添加する。ヒドロキシルミックスをプレポリマーに添加する際に、触媒、界面活性剤、水(化学的発泡剤)、及びEnovate(物理的発泡剤)を添加し、そして成分を均質になるまで混合する。一実施形態では、得られた発泡混合物を90℃で20分間硬化させる。並行して、PA含有フォームはポリウレタン主鎖(backbone)にフェノール酸を直接組み込むことにより合成される(PA上のカルボン酸とフォーム中のイソシアネートとの反応)(図3)。
【0031】
研究1.2: PA含有フォーム構造;機械的、熱的、及び形状記憶特性;及び細胞適合性;を特徴付ける。
PA含有フォームのライブラリーが合成された後、それらは、望ましいフォーム特性が確実に保持されるように特徴付けられる。特に、創傷充填及び凝固速度、ならびにそれらの安全性の初期指標としての高い細胞適合性を増強するため、PA含有フォームの実施形態は、ブリードの適用時の形状変化、急速な形状回復(<2分)を可能にするために、水性条件で体温で熱転移を有する。これらの特性は、本明細書に記載のいくつかの組成物によって達成される。
【0032】
方法: 構造:
フォームにPAOH及びPAを配合した後、フォームの孔径及び構造を定量する。薄い試料を各フォームから横方向及び縦方向に切断し、金でスパッタコーティングし、そして走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して画像化する。孔径及び支柱の(strut)厚さは、ImageJソフトウェアを使用してSEM画像から定量化される。
【0033】
結果: CA及びCAOHはSMPフォームにうまく配合され、約1000μmの保持された孔径を有する低密度フォームが得られた、図3
【0034】
熱的性質:
コントロール及び改質フォームのガラス転移温度(Tg)は、湿式及び乾式条件下で示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される。乾燥Tgについては、3~8mgの試料を室温でアルミニウム皿に入れ、DSCを用いて-40℃に冷却し、そして次に120℃に加熱する。試料を再び冷却しそして加熱し、そしてTgを熱転移曲線の変曲点として第2のサイクルから記録する。湿潤Tgについては、3~8mgのフォーム試料を50℃の逆浸透水中に5分間浸して完全に可塑化させ、次いで実験室用ワイプでプレス乾燥する。試料を秤量し、そして通気されたアルミニウム皿に入れる。試料を-40℃に冷却しそしてそれらを80℃に加熱するため、DSCを使用する。湿潤Tg(水可塑化後)は、熱転移の平均変曲点を用いて決定される。
【0035】
結果:
CA及びCAOH含有SMPフォームは、コントロールと比較して保持された乾燥熱特性を示した(図4)。湿潤ガラス転移温度は、コントロールと比較して低下したが、移植時の作動を可能にするため、体温より低く維持された。
【0036】
形状記憶特性:
円筒状フォーム試料(直径2mm×長さ1cm)を切断し、直径203.20μmのニッケルチタンワイヤを、安定剤として機能するように、試料の長さ方向に通す(threaded)。Tg超に加熱しながらステントクリンパを用いて試料をそれらの可能な限り小さい直径にクリンプする(crimped)。ImageJソフトウェアを用いて初期フォーム直径を測定し、フォームを37℃の水浴中に置く。画像を30分かけて撮影し、そしてImageJ(登録商標)を使用して各時点でフォーム直径を計算する。得られた測定値を使用して、元の試料の直径と体積膨張に対するパーセント回復(recovery)を計算する。
【0037】
結果:
CA及びCAOH含有SMPフォームは、高い体積回復及び体積膨張を伴う、保持された形状記憶特性を示した、図5
【0038】
研究1.3: 臨床的に入手可能な銀ベースの抗菌創傷被覆材と比較して、PA含有フォームの抗菌特性を評価する。
PA含有SMPフォームの抗菌効力の最初の指標として、一連のin vitro研究が細菌を用いて行われた。実施形態は、臨床的に入手可能な抗菌酸化再生セルロース止血剤の抗菌特性に匹敵する抗菌特性を有する製剤を包含する。
【0039】
方法: コントロールフォーム、PA及びPAOHフォーム、及びセルロース止血剤(Surgicel(登録商標、Ethicon)に暴露した後、大腸菌(E.coli)(グラム陰性)及び表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)(グラム陽性)コロニー形成単位(CFU)をカウントする。
【0040】
結果:
CA及びCAOH SMPは、コントロールSMPと比較して大腸菌(E.coli)の増殖(コロニーの数及びサイズ)を大きく阻害する(図6)。
【0041】
実施形態のより詳細な説明
本明細書に記載されるSMPフォームの実施形態は、止血包帯剤として使用するための多数の潜在的な利点を有する生体材料プラットフォームを提供する。ポリウレタンSMPは、一時的な二次形状に圧縮することができる膨張した開放多孔質フォームとして製造される。圧縮された形状は、フォームが水と熱にさらされるまで保持され、その際、フォームは元の膨張した形状に戻る。実施形態は、15~45℃の水性条件(乾燥条件では~40~70℃)で作動するように設計されており、作動時間は30秒~30分の間で調整さ
れる。SMPフォームは、ブタの動脈瘤モデルへの移植後90日及び180日にわたって優れた生体適合性を示した。重要なことに、これらのフォームは、それらの高い表面積及び血栓形成材料の化学的性質(chemistry)に起因して急速な凝固を誘発する。ブタ後肢血管において、SMPフォームはデバイスの配置から90秒以内に動脈止血を促進した。SMPフォームの実施形態は最小限の粒子生成を有し、且つ、以前の(prior)in vivo閉塞試験において望ましくない下流凝固は観察されていない。実施形態は、深部の不規則な形状の出血部位への圧縮されたデバイスの適用を可能にし、創傷容積を空間充填しそして止血を促進するため、それは受動的に体温に加熱されると急速に拡張する。
【0042】
本明細書に記載のSMPシステムの実施形態の利点のうちの1つは、調整可能な材料の化学的性質である。止血デバイスの性能を高めるために、抗菌剤がポリマーネットワークに導入されている。一実施形態では、組み入れられた抗菌剤は、経口の抗生物質と連携して感染のリスク及び頻繁な包帯交換の必要性を減らすために働く。抗生物質耐性細菌株に関する懸念に対処するために、非薬物アプローチを提供するため抗菌フェノール酸を利用した。ミツバチはそれらの蜂蜜中に植物由来のフェノール酸を産生し、微生物やウイルスから巣箱を守るす。フェノール酸は広い抗菌特性を示し、多剤耐性生物(MDRO)に対して効果的であることが示されている。例えば、病院から得られた抗生物質耐性菌(エンテロバクター・アエロゲネス、大腸菌、黄色ブドウ球菌)はケイ皮酸に感受性がある。最近のレビューは、カンジダ感染症(プランクトン及びバイオフィルム、薬剤感受性及び薬剤耐性)に対する、ケイ皮酸、ゲンチジン酸、及び安息香酸を包含する多数のフェノール酸の有効性を網羅している。
【0043】
実施形態は、ネイティブの及び修飾桂皮酸(CA)をSMPシステムに組み込んでいる(図1)。得られたスキャフォールドは、密度、孔径及び構造、熱特性、形状回復プロファイル及び細胞適合性を包含する望ましいSMP特性を確実に維持するように特徴付けられた。極限の戦場条件下で保存することができ、体温で血中の水分にさらされるとすぐに作動するという、SMPフォーム止血剤の設計に重点が置かれた。初期及び持続的な抗菌効果の理解を得るために、体温で生理食塩水中に30日間まで試料を浸漬した後に、大腸菌(E.coli)及び黄色ブドウ球菌(Staph.epi)に対する抗菌効果を特徴付けた。
【0044】
結果及び考察
CA及びHCA含有SMPの合成:
ポリウレタンネットワーク構造架橋密度を犠牲にすることなくその組み込みを可能にするために、CA含有トリオール(HCA)を形成するため、ケイ皮酸(CA)をN、N、N’、N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(HPED)でのエステル化によって修飾した。HCAの合成の成功は、フーリエ変換赤外(FTIR)及び核磁気共鳴(NMR)分光法によって確認された。FTIRスペクトルにおいて、水酸基の相対的な減少が約3350cm-1で観察され、エステル形成はカルボニルピークの約1680から約1710cm-1へのシフトを介して確認された(図2A)。NMRは、約90%の官能化を有する、エステル化されたCA及びHPEDの存在を示した(図2B)。
【0045】
HCAの合成が成功したら、10、20、及び30%のHCA(1モルのHCA当たり3個のヒドロキシル基を基にした(based off of)ヒドロキシル基のモル%)を用いてSMPフォームを製造した。
10、20及び30%(CAのモル当たり1個のヒドロキシル基(すなわち、カルボン酸)に基づいた(based off of)、ヒドロキシル基のモル%)CAを用いてフォームを作成した。10%CAフォームは上昇したが、20及び30%CA、安定したネットワークは形成できず、フォームは崩壊した。この結果は、HDIと単官能性CAとの間の反応によるポリウレタンネットワークの終結に起因していた。CAの直接的な組み込みはより速くそしてより単純であるが、その単一の官能基はこのSMPシステムにおけるその有効な使用に対する制限である。この結果はまた、それがより高濃度のCAのより効果的な組み込みを可能にするので、追加のHCA合成ステップを検証する。いくつかの実施形態では、HCAの比較的直接的な合成方法は、SMPシステムに新しい特性を付与するために、一連のフェノール酸又は他のカルボン酸含有官能性分子(例えば、薬物、生物活性因子)と共に利用され得る。
【0046】
CA及びHCA含有フォームについてのATR-FTIRスペクトルを得た、図2C。環構造中のC=C基に起因すると考えられるCA及びHCAフォームのすべてにおいて、~1615cm-1にさらなるピークがある。このピークの相対吸光度は、HCA濃度の増加に伴って(約1680cm-1のウレタンピークと比較して)わずかに増加する。10%CAスペクトルにおいて、1615cm-1のピークでの相対吸光度は20~30%HCAの吸光度の間にあり、これは未修飾のCAを用いるとより高い取り込み効率を示す。これらのスペクトルは、CA及びHCAがSMPネットワークにうまく組み込まれたことを裏付ける。両方のルートがフェノール酸含有フォームの効果的な合成に実行可能である。
【0047】
構造特性:
CA及びHCAを用いたフォームの良好な発泡の定性的観察を検証するために、フォームの密度及び孔径を評価した(図3)。一般に、CAとHCA含有フォームはこのSMPシステムの特徴である超低密度を保持する、図3A。10%HCAフォームはより高い密度を有し、且つ、HCA濃度の増加と共に密度が減少する傾向があった。これらの結果は、HCA濃度が増加するにつれて孔径が増大する、孔径測定と一致する(図3B)。定性的には、10%及び20%のHCAフォームは丸みの少ない孔を有し、これは密度測定とさらに相関する(図3C)。これらのわずかな違いにもかかわらず、全体として、CA及びHCAフォームの孔径は、コントロールフォームの孔径と同程度であった(図3B~C)。改善された等方性(軸方向及び横方向の発泡方向における孔径の間の比)がCA及びHCAフォームで観察され、これは新しいモノマーがより均一な孔を提供するための発泡上昇プロセスの収縮を助けたことを示す、図3B。全体として、これらの結果は、CA及びHCAを最小限のプロトコル変更でSMPフォームに組み込んで構造的に類似の材料を提供できることを示し、この方法が類似の反応基を有する他の官能モノマーと共に効果的に使用される可能性をさらに示唆する。
【0048】
熱及び形状記憶特性:
効果的な現場での使用のために、SMPフォームベースの止血剤は、乾いた保管条件下で、その後急速に砂漠の気候において達する高温(たとえば、イラクにおける最大約45°Cまで)でそれらの圧縮形状を保持する必要があり、及び次いで、体温の血液中の水にさらされると急速に膨張する。これらの能力の最初の指標として、SMPフォームガラス転移温度(Tg)が乾燥及び湿潤条件下で測定された(図8A)。10%CAフォーム乾燥Tgはコントロールのそれと類似しており、そして両方とも現場での使用に必要な45℃より低かった。CAはフォームの疎水性を高め、それは一般にTgを上げる。しかしながら、単官能基の組み込みは全体の架橋密度を低下させると予想され、それはより低いTgに対して反対の効果を有していた。CAフォームの乾燥Tgを有用なレベルまで増加させるために、より多くのHPEDを利用することによって全体の架橋密度を増加させることができ、又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのようなより疎水性のモノマーの導入によって疎水性をさらに増加させることができた。HCAの組み込みは、疎水性を増大させながら架橋密度を保持することを可能にし、その結果、HCA含有量の増大と共に乾燥Tgが増大した。全てのHCA含有フォームは45℃以上の乾燥Tgを有し、時期尚早の膨張なしに戦場で使用する可能性を示していた。さらに、HCAの組み込みはSMPフォームの熱特性を調整するための新しいツールを提供する。全てのCA及びHCAフォームは30℃未満の湿潤Tgを有した。これは、患者が失血による血液量減少性ショックを受けている及び/又は低体温症にさらされていても、体温血液への曝露後の膨張を可能にする。
【0049】
CA及びHCA SMPフォームの機能的能力をさらに探求するために、それらの体積膨張プロファイルを37℃の水中で特徴付けた(図8B~C)。CAフォームは、コントロールと比較してより急速な膨張を示した。これは、単官能モノマーの組み込みのためにそれらの理論的に減少した架橋密度に起因する。HCA含有量の増加は、Tg測定値の増加と相関してより遅い体積膨張をもたらし、そしてCAにおける環構造の導入に伴うフォーム疎水性及び骨格剛性の増加に起因する。コントロールと比較して10及び20%のHCAフォームの膨張率の増加は、おそらくネットワークの不一致によるものである。HCAの高い平均官能化が達成されたが、合成されたモノマーはHPEDと様々な数のつながれた(tethered)CA分子とのミックスである。結果として生じるネットワークの不均質性は、疎水性の増加にもかかわらず、より急速な体積膨張をもたらし得る。この効果は、30%HCAフォーム中のHCA含有量の増加よりも重要であり、ここで疎水性の増加は、ネットワークの不一致よりも膨張の減速に対してより大きな効果を有していた可能性が高い。深刻な出血に対処するために、SMPベースの止血剤はできるだけ早く完全な膨張を達成するべきである。それらの高い乾燥Tgと組み合わせて、10及び20%のHCAを2分未満で完全に膨張することは、戦場での止血剤としてのそれらの使用の可能性として非常に有望である。HCA含有量の増加に伴う体積膨張率の変動は、SMPフォーム特性を調整するためのツールとしてのHCA組み込みを使用する能力をさらに検証する。
【0050】
細胞適合性:
CA及びHCA含有SMP細胞適合性の初期指標として、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)をSMPフィルムに間接的に曝露し、それらの形態、初期付着、及び増殖を定性的に評価した、図9。SMPフィルムを含有するウェルと陽性コントロール、TCPSとの間の初期付着は同様であった。HDFはウェル表面を横切って均一に付着し、そしてよく広がっていた(well pread)。陰性コントロール、BSA被覆TCPは、付着が少なく丸みを帯びた細胞を有していた。72時間で、HDFは、全てのSMPフィルム含有ウェル及びTCPSコントロールにおいていくつかの集密領域を伴って伸長及び増殖した。BSAネガティブコントロールウェルは、72時間後も依然として低い結合数及び低い拡散を示した。これらの研究は、改変がベースSMP製剤の細胞適合性に悪影響を及ぼさなかったことを示し、これは、生体材料スキャフォールドとしてのそれらの使用のための利点である。
【0051】
抗菌特性:
SMPへの配合後のCA及びHCAの抗菌効果を測定するために、SMPフィルムへの曝露後に、大腸菌(E.coli)(グラム陰性)及び表皮ブドウ球菌(Staph.epi.)(グラム陽性)のコロニー形成単位(CFU)密度を測定した。未修飾のコントロールSMPフィルムと比較して、CA及びHCA含有フィルムへの曝露後に大腸菌(E.coli)CFUが大きく減少した。CFU密度は、薬物に基づく(ペニシリンストレプトマイシン、P/S)コントロールの密度以下であった(図10A)。未修飾コントロールSMPフィルムと比較したCFUの減少は、10%CA及び30%HCAフィルムについて有意であった。FTIRスペクトルにおける1615cm-1にC=Cのピークが増加していることからわかるように、低濃度でのCAの性能の向上は、より効果的な取り込みによるものと考えられる(図2C)。30%HCAの増大した有効性は、フィルム中のCA濃度の増大と共に抗菌特性がいかに増大するかを説明する。同様の結果がStaph.epi.でも観察された。これは、10%CA、20%HCA、及び30%HCAフィルムのCFU密度が薬物ベース(P/S)コントロール以下のレベルに有意に減少していることを示す(図10B)。HCA濃度の増加とともにCFU密度が減少する傾向があった。いくつかのフェノール酸はエステル化後に増加した抗菌効力を示した。この結果はCAでは観察されていない。実施形態は、エステル化から利益を得るフェノール酸の組み込みを包含する。全体として、これらの結果は、CAの抗菌特性が、SMPへの組み込み後に、事前の(prior)修飾の有無にかかわらず保持されることを実証する。P/Sに匹敵する有効性は、薬剤耐性生物に対するCA又はHCA含有SMPの潜在的な使用について非常に有望である。
【0052】
抗菌特性の保持を特徴付けるために、CA及びHCA含有フィルムを37℃で30日間まで食塩水に浸し、そしてE.coli及びStaph.epi. CFU密度を浸漬フィルムへの暴露後に測定した。すべての10%CAフィルムは、両方のバクテリアタイプについて、未修飾のコントロールSMPと比較して有意に低いCFU密度を保持していた、図11。SMPネットワークにおけるCAとHDIとの間のウレタン結合の形成は、加水分解の影響を受けにくい生体安定結合を提供する。一実施形態では、CAの大部分は浸漬期間を通してフィルム中に保持され、持続的な抗菌効果を提供した。10%HCAフィルムは、最大20日間までの浸漬に匹敵するCFU密度を有し、30日間の試料についての増加は、両方の細菌タイプについてコントロールフィルム値(赤い破線)に近づいた30日試料についての増加を伴う。HCAはエステル結合を介してSMPネットワークに組み込まれるので、加水分解はHCA濃度の低下を経時的に引き起こしたようである。20%HCA試料でも同様の傾向が観察され、20日及び30日の浸漬フィルムに暴露後のCFU密度の増加を伴う。大腸菌(E.coli)密度の増加は、30日目の20%HCAでは10%HCAの場合のそれよりも低かった。これは、増加した初期濃度と共により高い保持HCA濃度を示す。この傾向は30%HCAフィルムでさらに確認された。0日と10日の浸漬試料間でCFU密度の増加が観察されたが、これはHCAの初期損失を示しているが、CFU密度は浸漬の10日を過ぎると劇的には変化せず、コントロールフィルムのそれに近づかなかった。したがって、加水分解に対して不安定な結合であっても、HCAは、より高い濃度で組み込まれたときにSMPにおいて持続的な抗菌効果を提供する。HCA含有SMPの好ましい熱的及び形状記憶特性と組み合わされたこれらの結果は、抗菌性止血剤としての使用のためのそれらの可能性を示す。
【0053】
実験セクション
材料:
DC 198、DC 5943、BL-22、T-131、及びEnovate(登録商標)はEvonik(登録商標)(Essen、Germany)から購入し、受け取ったまま使用した。他の全ての化学物質はSigma-Aldrich Inc.(ミズーリ州セントルイス)から購入し、受け取ったまま使用した。
【0054】
フェノール酸モノマー合成及び特徴づけ:
N、N、N’、N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(HPED)-ケイ皮酸(HCA)を、エステル化手順を用いて合成した。ケイ皮酸(CA、1モル当量)を丸底フラスコに加え、クロロホルムに溶解した。次に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、0.1モル当量)をフラスコに加え、溶解させた。HPED(1モル当量)を別のバイアル中に秤量し、クロロホルム中に溶解し、そして反応フラスコに滴下した。フラスコを氷上に置き、約5分間冷却した。N、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.1モル当量)を別のバイアル中に秤量し、クロロホルム中に溶解し、冷却した反応容器に滴下した。反応を窒素下氷上で5分間撹拌し、次いで室温で3時間進行させた。反応が完了した後、フラスコを0℃に30分間置いてジシクロヘキシル尿素を沈殿させ、それを次に真空濾過により除去した。反応溶液を1モル当量の0.1M HClで2回洗浄した。次いで飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥しそして濾過した。次いで、回転蒸発を用いてクロロホルムを除
去し、続いて一晩真空乾燥した。フーリエ変換赤外(FTIR)及び核磁気共鳴(NMR)分光法を利用して、HCAの合成を確認した。
1H NMR (CdCl): 1.05 ppm (m, HOCHCH, 9H), 1.2 ppm (m, -OCHCH, 3H), 2.2-2.6 ppm (m, -CH-, 12H), 3.6 ppm (m, HOCHCH, 3H), 5.1 ppm (m, -OCHCH, 1H), 6.4 ppm (d, -CCH=, 1H), 7.3-7.6 ppm (m, -HC=CHC, 6H).
【0055】
形状記憶ポリマー(SMP)フォーム及びフィルム合成:
イソシアネート(NCO)プレポリマーが、42モル%ヒドロキシル(OH)含有量を有する、HPED、トリエタノールアミン(TEA)、HCA又はCA、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の適切なモル比で、合成された。HPED、TEA、及びHCA又はCAの残りのモル当量のを用いてOH混合物を調製した。フォーム発泡を誘導するため、発泡剤(触媒、界面活性剤、脱イオン水、及びEnovate)を、スピードミキサー(FlackTek、Inc.、Landrum、SC)を使用してNCO-プレポリマー及びOH混合物と混合した。
【0056】
次いで、フォームを50℃で5~10分間硬化させ、室温に冷却した後、イソプロピルアルコール(IPA)又は逆浸透(RO)水中で15分間サイクルで洗浄した。乾燥するまで、精製したフォームを凍結乾燥した。
【0057】
SMPフィルムは、フォームと同じモノマー組成を用いて、ただし界面活性剤、脱イオン水、又はEnovate(登録商標)を用いずに合成した。図12は、これらの研究において合成されそして特徴付けられたSMP組成物を示す。
【0058】
SMPフォーム密度:
SMPフォーム密度(n=3)は、ASTM規格D-3574に従って、フォームの最上部、中間部、及び底部から切り取ったフォームブロックについて定量した。フォームブロック質量は、重量分析計を使用して測定され、長さ、幅、及び高さの値は、デジタルノギスを使用して試料あたり3回測定された。密度は、質量を体積で割ったものとして計算された。
【0059】
SMPフォームの孔サイズ及び構造:
孔サイズを評価するために、各スライス組成物から軸方向(フォーム上昇に対して平行)及び横方向(フォーム上昇に対して垂直)の発泡方向において薄いスライス(約1mm、n=3)を切り取った。試料をカーボンブラックテープで試料ホルダーにマウントし、20mAで60秒間スパッタコートした(Cressington Sputter Coater(登録商標)、Ted Pella、Inc. Redding、CA)。試料を、Jeol NeoScope JCM-5000走査型電子顕微鏡(SEM)(登録商標)(Nikon Instruments、Inc.、Melviille、NY)を使用して画像化した。ラインは、各画像の中心を通って引かれた。ImageJソフトウェアを使用して、前記ライン上の5つの無作為に選択された細孔について細孔サイズを測定した。
【0060】
SMPフォームの熱転移:
ガラス転移温度(Tg)は、湿潤条件下及び乾燥条件下(n=5)で測定された。乾燥Tgを測定するために、フォーム試料(3~8mg)を切断しそして試験前に乾燥剤と共に貯蔵した。以下のプログラムを用いて、各組成物のサーモグラムを得るため、Q-200 DSC(登録商標)(TA Instruments、Inc.、New Ca
stle、DE)を用いた。:
(1)温度を10℃・分-1で-40℃に下げ、2分間等温的に保持した、
(2)10℃・分-1で温度を120℃に上昇させ、2分間等温的に保持した、
(3)10℃・分-で温度を-40℃に低下させ、2分間等温的に保持した、
(4)10℃・分-で温度を120℃に昇温させた。
熱転移曲線の変曲点を用いて第2の加熱サイクルから乾燥Tgを記録した。TA Instruments(登録商標)ソフトウェア(TA Instruments、Inc.、ニューキャッスル、DE)を利用して変曲点を決定した。
【0061】
湿潤Tg測定のために、フォーム試料(3~8mg)を50℃の逆浸透(RO)水中に5分間浸して完全に可塑化させた。試料を水から取り出し、実験室用ワイプでプレス乾燥し、秤量し、そして通気孔付きアルミニウム蓋を有するアルミニウム皿に入れた。試料を10℃・分-1で-40℃まで冷却し、それらを2分間等温的に保持するため、Q-200 DSCを使用した。次に試料を10℃・分-1で80℃に加熱した。サーモグラムを生成し、熱転移の平均変曲点を使用して湿潤Tgを決定するために、TAInstrumentsソフトウェアが使用された。
【0062】
本願の最後における様々な実施例はTg、例えば乾燥Tg及び湿潤Tg、を取り扱う。これらの用語は、直前の2段落に沿って解釈されるべきである(すなわち、本明細書で使用される場合、乾燥及び湿潤Tgは、直前の2段落に記載された方法を使用して決定されるべきである)。
【0063】
体積回復:
円筒状フォーム試料(n=3、直径=4mm、長さ=10mm)を調製し、安定化直径203.20μmのニッケル-チタンワイヤ(NDC、カリフォルニア州フレモント)をその長さに沿って各試料の中心に通した(threaded)。フォーム試料を、ST150-42ステントクリンパ(Machine Solutions、Flagstaff、AZ)を用いてそれらの可能な限り小さい直径まで半径方向にクリンプした。試料を100℃に加熱し、15分間等温的に保持し、そして室温に冷却することによって捲縮(crimped)形態にプログラムした。ImageJ(登録商標)ソフトウェア(NIH、ベセスダ、メリーランド州)を用いて各試料について初期フォーム直径を測定した。捲縮フォームを37℃の水浴中に入れ、30秒ごとに7分まで画像を撮影した。ImageJ(登録商標)を使用して、フォームの長さに沿って5つの等間隔の位置で各時点でフォーム直径を測定した。パーセント体積回復率は、等式1を用いて計算した。
【数1】
Eq. 1
【0064】
細胞相互作用:
細胞の付着及び拡散を評価するのに、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF、Invitrogen、Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した。低血清増殖サプリメント(Invitrogen)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S、Gibco)を補充した培地105(Invitrogen)を用いて37℃/5%COでin vitro培養を行った。継代3代目に細胞を使用した。
【0065】
SMPフィルムを直径6mmのシリンダーに切断し、70%エタノール中で一晩インキュベートし、続いて滅菌リン酸緩衝食塩水で洗浄すること(PBS、3回洗浄)により滅菌した。陰性細胞付着コントロールとして、96ウェル組織培養ポリスチレン(TCPS
)プレートにおけるウェルをPBS中の無菌5%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。未修飾TCPSウェルは陽性細胞付着コントロールとして働いた。HDFを、SMPフィルムを含むウェルに5,000細胞cm-1で播種した。播種した細胞を37℃/5%COで72時間まで培養した。培地は2及び36時間で交換された。2時間後及び72時間後に、細胞の付着及び増殖を定性的に評価するため、明視野画像を得た。代表的な画像は、ニコンのEclipse TE2000-S(登録商標)を使用して得られた。ここで、1試験片につき4視野、及び1試料タイプにつき3試験片であった。
【0066】
抗菌特性:
抗菌特性の初期測定値を得るために、SMPフィルムを直径6mmの円筒に切断した。抗菌特性を経時的に特徴付けるために、試料をPBS中、37℃で0、10、20、又は30日間インキュベートした。その後、細胞相互作用のセクションに記載されているようにフィルムを滅菌した。大腸菌(E. coli)及びStaphylococcus epidermidis(Staph.epi.)を5mlのLB培地溶原性ブロス(lysogeny broth)(LB)中で37℃で一晩増殖させた。その後、500μLを各一晩培養物から取り出し、10mLの新鮮なLB中で光学密度(O.D.)0.6まで増殖させた(すなわち、細菌が対数増殖期に入るまで)。Tecanプレートリーダーを用いてO.D.を測定した。試料を滅菌96ウェルプレートに入れ、100μLの細菌溶液を各試料の表面にピペットで移した。薬物ベースの抗菌性コントロールを提供するため、コントロールSMPフィルムをP/S中に一晩浸した。試料を細菌と共に37℃で1時間インキュベートし、次いでボルテックスして付着細菌を除去した。細菌溶液を新鮮なLB中で106倍希釈し、そして37℃で一晩LB寒天プレート上にプレーティングした。各試験片プレーティング領域の画像を得た。コロニー形成単位(CFU)密度は、コロニーの数をカウントすること、及びプレーティング面積で割ることによって測定した。
【0067】
統計:
データは平均±標準偏差として報告されている。p<0.05において受け入れられた統計的有意性を決定するため、スチューデントのt検定を使用した。
【0068】
実施形態は、2つのルートを介してSMPフォームへのCA、蜂蜜ベースのフェノール酸、の首尾よい組み込みを実証する。得られたフォームは、出血抑制のための止血剤におけるそれらの使用に理想的である調整可能な熱転移及び形状回復特性を提供しながら、コントロールSMPの望ましい多孔質構造を保持する。すなわち、CAベースのSMPは、極限の戦場条件下でのそれらの貯蔵を可能にするための高乾燥Tgで、及び体温で血液にさらされたときにそれらの迅速な形状回復を可能にするための低湿潤Tgで、設計されている。さらに、CAベースのSMPは、体温で生理食塩水中に30日間保存した後でも、ペニシリン/ストレプトマイシンベースの治療に匹敵するレベルまで細菌増殖を効果的に低減しながら、高い細胞適合性を有する。全体として、実施形態は、使いやすく、生体適合性があり、そして抗菌性である止血デバイスを提供する。フェノール酸のさらなる利点は、それらの抗酸化特性である。フェノール酸は、フリーラジカルを除去し(scavenge)、酸化を減らす水素供与基を含有する。これは、酸化分解を受けやすいSMPフォームにとって理想的である。言い換えれば、ペンダントフェノール酸を生物耐久性インプラントにおいて使用することができる。例えば、生体耐久性である閉塞性フォーム(例えば、閉塞性動脈瘤用フォーム)は、再開通ーヒドロゲル及びコイルベースの動脈瘤治療で経験された問題ーを防ぐのに役立つ。
【0069】
実施形態の例を以下に記載する。
【0070】
実施例1は、組み込まれた抗菌剤を有する形状記憶ポリマー組成物を包含する。
【0071】
[89]実施例2は、実施例1のデバイスを包含する。ここで、前記抗菌剤は、(a)及び(b)のうちの少なくとも一方を介してポリマー主鎖に化学的に組み込まれる。:
(a)前記抗菌剤上のヒドロキシル、カルボン酸、又はアミンと前記主鎖(backbone)との直接反応、及び
(b)ペンダント抗菌化学種(species)を生成するため、重合前にポリウレタンモノマー又はマクロマーを前記抗菌剤と反応させること。
【0072】
実施例3は、実施例1のデバイスを包含する。ここで、前記抗菌剤は前記ポリマー中に物理的に組み込まれている。
【0073】
実施例4は、実施例1のデバイスを包含する。ここで、前記抗菌剤は前記ポリマーを表面処理するために利用される。
【0074】
例えば、前記ポリマーのバルクを改質するのではなく、一実施形態は表面を抗菌剤で官能化する。これはポリマーのバルクな物理的/機械的特性を維持するが、フォームの表面に抗菌剤を配合することを可能にする。
【0075】
実施例5は、実施例1のポリマー組成物を包含する。ここで、SMPフォーム用のモノマーは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン、ブタンジオール、ブチンジオール、N、N、N’、N’テトラキス(ヒドロキシルプロピレン)エチレンジアミン(HPED)からなる群から選択され、及び前記抗菌剤は、フェノール酸、蛍光染料、及び銀からなる群から選択される。
【0076】
例示的なネットワークは、ペンダント抗菌基を有するトリオールを生成するための、HPEDと、カルボン酸基を有する抗菌剤との間の反応を包含する。バルク全体にわたってペンダント抗菌基を有するポリウレタンを製造するため、抗菌トリオールはHDI、TEA、及びHPEDを有するポリウレタンネットワークに組み込まれる。
【0077】
実施例6は、実施例1からのポリマーフォームを、凍結乾燥、相分離、エマルション発泡/テンプレート化、又は物理的発泡(blowing)を包含するがこれらに限定されないプロセスのうちの1つ又は組み合わせによって多孔質構造又はフォームにする方法を含包含する。
【0078】
実施例7は、皮下インプラント、動脈瘤充填デバイス、末梢充填デバイス、創傷被覆材、骨移植片等を包含するがこれらに限定されない、医療器具の製造において及び医療材料として使用できる、実施例1及び6のポリマーを包含する。
【0079】
実施例1aは、少なくとも1つの抗菌剤を包含する熱硬化性ポリウレタン形状記憶ポリマー(SMP)フォームを含むシステムを包含する。
【0080】
実施例2aは、SMPフォームが少なくとも1つの抗菌剤に化学的に結合している、請求項1aに記載のシステムを包含する。
【0081】
実施例3aは、少なくとも1つの抗菌剤がフェノール酸を含む、請求項2aに記載のシステムを包含する。
【0082】
実施例4aは、請求項3aに記載のシステムを包含する。ここで、少なくとも1つのフェノール酸は、少なくとも桂皮酸、安息香酸、ゲンチシン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、
p-クマル酸、バニリン酸、シリング酸、プロトカテク酸、没食子酸、フェルラ酸、シナプ酸、及びカフェイン酸のうちの少なくとも1つを包含する。
【0083】
実施例5aは、請求項4aに記載のシステムを包含する。ここで、少なくとも1つのフェノール酸は、SMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合しているペンダント基である。
【0084】
本明細書で使用されるペンダント(pendant)基(時々pendentと綴られる)又は側鎖基(side group)は、長鎖分子の骨格に付着した分子又は分子のグループである。通常、この「長鎖分子」はポリマーであろう。ペンダント基は、それらがオリゴマーでもポリマーでもないので、ペンダント鎖とは異なる。例えば、フェニル基はポリスチレン鎖上のペンダント基である。
【0085】
実施例5aの別のバージョンは、請求項4aのシステムを包含する。ここで、前記少なくとも1つのフェノール酸は、SMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合したペンダント構造である(鎖状になっていてもいなくてもよい1つ以上の分子)。
【0086】
実施例6aは、請求項5aに記載のシステムを包含する。ここで、前記ペンダント基は、エステルを介し前記ポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合している。
【0087】
例えば、図2(B)は、エステル結合を介してポリウレタン鎖に化学的に結合したペンダント基(CA)の一例を示す。
【0088】
実施例7aは、請求項6aに記載のシステムを包含する。ここで、SMPフォームは、40℃超の乾燥ガラス転移(Tg)、及び30℃未満の湿潤Tgを有する。
【0089】
他の実施形態は、35、37、39、42、45、47又は50℃超の乾燥Tg、及び34、32、28、又は26℃い満の湿潤Tgを有してよい。
【0090】
実施例8aは、請求項2aに記載のシステムを包含する。ここで、前記少なくとも1つの抗菌剤がカルボン酸基を包含する。
【0091】
実施例8aの別のバージョンは、請求項2aに記載のシステムを包含する。ここで、前記少なくとも1つの抗菌剤がアミン基を包含する。
【0092】
実施例8aの別のバージョンは、請求項2aに記載のシステムを包含する。ここで、前記少なくとも一つの抗菌剤が、:
(a)アミン基を包含する第1の抗菌剤、及び
(b)カルボン酸基を包含する第2の抗菌剤、
を包含する
【0093】
実施例9aは、請求項1aのシステムを包含する。ここで、SMPフォームは、前記少なくとも1つの抗菌剤の周りに物理的に架橋されている。
【0094】
例えば、前記薬剤(agent)は、化学的にポリウレタン鎖に結合されなくてもよいが、フォームに形状記憶特性を与えるように、そして鎖に化学的に結合していない薬剤を物理的に保持するように鎖を架橋してもよい。フォームがそのプログラムされた一次形状を(その圧縮された二次形状から)を回復するにつれて、薬剤は放出され得る。
【0095】
実施形態はまた、SMPは、両方とも、(a)いくつかの抗菌剤の周囲で物理的に架橋
し、(b)化学的に結合したペンダント抗菌性基を包含する。
【0096】
実施例10aは、
第2のSMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学結合したペンダント基であるフェノール酸を包含する熱硬化性ポリウレタンの第2のSMPフォームと、
第3のSMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学結合したペンダント基であるフェノール酸を包含する熱硬化性ポリウレタンの第3のSMPフォームと、
を含む、請求項1aに記載のシステムを包含し、ここで、
(a)前記SMPフォームは第1のフォームを含み、
(b)前記第1、第2、及び第3のSMPフォームはすべて密封キットに封入されている。
【0097】
実施形態は、多くの様々な形態ファクタで提供される。いくつかの実施形態は、出血部位に互いに独立して適用することができる1つ以上のSMPフォーム片を包含する。他の実施形態は、それらの除去を容易にするのを助けるために複数のフォーム片を一緒につなぎ合わせてもよい。例えば、一実施形態は、それぞれ単一の骨格に沿って配置された第1及び第2のSMPフォームを包含する。骨格は、金属、布、紐、縫合糸、又はポリマー、フィラメントであり得る。スポンジは、フォームを骨格に固定するのを助け、骨格に沿ってフォームのいずれのすべりを制御するのを助けるために、SMPフォームの両側に布、ダクロン、又はPTFEプレジット(pledgets)を有することができる。プレジットは、プレジットに隣接する骨格に結び目を単に結ぶことによって固定されてもよい。また、これは、開業医(例えば手術室の外科医)が外傷性/緊急状態で創傷内に迅速に配置された一連の泡を迅速に除去するのを助け得る(例えば現場の兵士を治療する衛生兵、又は地域における銃弾による創傷を治療する緊急医療技師)。フォームはガーゼと結合することがある。ガーゼは、フォームがそれに結合されるガーゼのストリップであり得る。しかしながら、ガーゼは、複数のフォームを包含するガーゼポーチであってもよく、ポーチ全体が創傷内に配置される(そして、その後、すべてのフォームが単一のパウチ内に保持されていることを考慮して後で容易に回収される)。フォーム片自体は、ペレットとして系背することができる(規則的又は不規則な形状、1つ又は複数、円筒形、円錐形、及び/又は平面のシート)。ペレットは創傷内に配置されてもよく、それらのペレットは互いに結合されてもされなくてもよい。他の実施形態は、1つ以上のフォームをニチノール(Nitinol)コイルのような骨格に結合してもよく、次いで、動脈瘤、閉塞されることが望まれる末梢血管、中隔壁の空隙などに展開され得る。他の実施形態は、遊離フォームをカテーテルから内部出血部位に単純に配置することを含む。他の実施形態は、任意の出血部位又はユーザが制御(例えば、除去)したい液体を含む任意の部位に独立して配置することができる単一の大きなフォームを包含する。
【0098】
実施例11aは 以下:
第1の反応生成物を形成するため、第1のポリオール部分を抗菌剤と反応させるステップと、
第2の反応生成物を形成するため、前記第1の反応生成物の第1の部分を第2のポリオール部分及びイソシアネートと反応させるステップと、
第3の反応生成物を形成するため、前記第2の反応生成物を前記第1の反応生成物の第2の部分及び第3のポリオール部分と反応させるステップと、
形状記憶ポリマー(SMP)フォームを形成するため、前記第3の反応生成物を発泡剤と混合するステップと、
を含む方法であって、
前記SMPは熱硬化性ポリウレタンSMPフォームである、方法を包含する。
【0099】
例えば、図1(ルートB)を参照。図1(ルートB)は、
第1の反応生成物(ルートBのラインからHCA)を形成するため、第1のポリオール部分(ルートBのライン1からHPED)を抗菌剤(CA)と反応させるステップと、
第2の反応生成物(ルートBのライン2からプレポリマー)を形成するため、前記第1の反応生成物(ルートBのライン2からHCA)の第1の部分を第2のポリオール部分(ルートBのライン2からHPED及び/又はTEA)及びイソシアネート(ルートBのライン2からHDI)と反応させるステップと、
第3の反応生成物を形成するため、前記第2の反応生成物(プレポリマー)を前記第1の反応生成物(ルートBのライン3からHCA)の第2の部分及び第3のポリオール部分(ルートBのライン3からHPED及び/又はTEA)と反応させるステップと、
形状記憶ポリマー(SMP)フォームを形成するため、前記第3の反応生成物を発泡剤と混合するステップと、
を包含し、ここで、前記SMPは熱硬化性ポリウレタンSMPフォームである。
【0100】
実施例11aの別のバージョンは、
前記第1の反応生成物として抗菌モノマーを形成するため、第1のポリオール部分(HPED又はいくつかの他のポリオール)と、抗菌剤(CA又はいくつかの他の薬剤)とを反応させるステップと、
第2の反応生成物(プレポリマー)を形成するため、前記第1の反応生成物の第1の部分と、第2のポリオール部分(HPED及び/又はTEA及び又はいくつかの他のポリオール)及びイソシアネート(HDI又はいくつかの他のイソシアネート)とを反応させるステップと、
前記第2の反応生成物(プレポリマー)と、前記第1の反応生成物の第2の部分及び第3のポリオール部分(HPED及び/又はTEA又はいくつかの他のポリオール)とを反応させるステップと、及び
それに応答して、形状記憶ポリマー(SMP)フォームを形成するステップと、
を包含し、ここで、前記SMPは熱硬化性ポリウレタンSMPフォームである。
【0101】
一実施形態において、反応の「A側」(side A)部分は、ヒドロキシル成分、例えばHPED、TEA、HCA、CA、及び水に加えてこれらの組み合わせ、を包含する。反応の「B側」(side B)部分は、上述したプレポリマー(プレポリマーを未反応イソシアネートを含有する)を包含する。A側及びB側は混合され、フォーム発泡反応が起こる。
【0102】
第1のポリオール部分及び第2のポリオール部分について上記で述べることにより、これらの部分は単一のポリオールの2つの部分であり得るか、又は互いに異なる2つ(又はそれ以上)のポリオールを包含し得る。
【0103】
実施例12aは請求項11aに記載の方法を包含し、ここで、前記少なくとも1つの抗菌剤がフェノール酸を包含する。
【0104】
実施例13aは請求項12aに記載の方法を包含し、ここで、前記フェノール酸が、ケイ皮酸、安息香酸、ゲンチジン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、p-クマル酸、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸、没食子酸、フェルラ酸、シナプ酸、及びカフェイン酸のうち少なくとも1つを包含する。
【0105】
実施例14aは、第1の反応生成物を形成するため、第1のポリオール部分を抗菌剤と反応させるステップが、前記抗菌剤のエステル化を含む。
【0106】
例えば、図1のルートBのライン1はエステル化の1実施例を描く。
【0107】
実施例15aは請求項11aに記載の方法を包含し、ここで、前記第1の反応生成物が
トリオールを含む。
【0108】
実施例16aは請求項16aに記載の方法を包含し、ここで、
前記第1、第2、及び第3のポリオール部分の少なくとも1つは、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン、ブタンジオール、ブチンジオール、及びN、N、N’、N’-テトラキス(ヒドロキシルプロピレン)エチレンジアミン(HPED)のうちの少なくとも1つを包含し、
前記イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のうちの少なくとも1つを包含する。
【0109】
実施例17aは請求項16aに記載の方法を包含し、ここで、前記抗菌剤が、フェノール酸、蛍光染料、及び銀のうちの少なくとも1つを包含する。
【0110】
実施例18aは請求項17aに記載の方法を包含し、ここで、抗菌剤がカルボン酸基を包含する。
【0111】
実施例19aは請求項18aに記載の方法を包含し、ここで、前記抗菌剤が、前記SMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合したペンダント基である少なくとも1つのフェノール酸を包含する。
【0112】
実施例20aは請求項19aに記載の方法を包含し、ここで、前記ペンダント基がエステルを介して前記ポリウレタンポリマー鎖に化学的に結合している。
【0113】
実施例21aは請求項11aに記載の方法を包含し、ここで、前記第2の反応生成物が、前記SMPフォームの重合前に形成されたプレポリマーである。
【0114】
本明細書中で使用される場合、用語「プレポリマー」とは、中間体分子量状態に反応したモノマー又はモノマーのシステムをいう。この材料は、反応性基によってさらに重合して完全に硬化した高分子量状態にすることができる。そのため、反応性ポリマーと未反応モノマーとの混合物もプレポリマーと呼ぶことができる。用語「プレポリマー」及び「ポリマー前駆体」は交換してもよい。
【0115】
一実施形態では、プレポリマーは未反応イソシアネートを包含する。
【0116】
実施例22は、以下:
第1の反応生成物を形成するため、第1のポリオール部分を第1の抗菌剤部分及びイソシアネートと反応させるステップと、
第2の反応生成物を形成するため、前記第1の反応生成物を第2のポリオール部分及び第2の抗菌剤部分と反応させるステップと、
形状記憶ポリマー(SMP)フォームを形成するため、前記第2の反応生成物を発泡剤と混合するステップと、
を含む方法であって、
前記SMPは熱硬化性ポリウレタンSMPフォームであり、
前記第1の反応生成物は、前記SMPフォームの重合前に形成されたプレポリマーである、方法を包含する。
【0117】
例えば、図1のルートAは、
第1の反応生成物(例えば、ルートAのライン1のプレポリマ)を形成するため、第1のポリオール部分(ルートAのライン1のHPED及び/又はTEA)を第1の抗菌剤部分(例えば、ルートAのライン1のCA)及びイソシアネート(例えば、ルートAのライン1のHDI)と反応させるステップと、
第2の反応生成物を形成するため、前記第1の反応生成物を第2のポリオール部分(ルートAのライン2のHPED及び/又はTEA)及び第2の抗菌剤部分(例えばルートAのライン2のCA)と反応させるステップと、
形状記憶ポリマー(SMP)フォームを形成するため、前記第2の反応生成物を発泡剤と混合するステップと、
を含む方法であって、
前記SMPは熱硬化性ポリウレタンSMPフォームであり、
前記第1の反応生成物は、前記SMPフォームの重合前に形成されたプレポリマーである、方法を包含する。
【0118】
実施例22の別のバージョンは、例えば、図1のルートAは、
第1の反応生成物(例えば、プレポリマー)を形成するため、第1のポリオール部分(HPED及び/又はTEA又はいくつかの他のポリオール)を第1の抗菌剤部分(例えば、CA又はいくつかの他の抗菌剤)及びイソシアネート(例えば、HDI又はいくつかの他のイソシアネート)と反応させるステップと、
第2の反応生成物を形成するため、前記第1の反応生成物を第2のポリオール部分(HPED及び/又はTEA又はいくつかの他のポリオール)及び第2の抗菌剤部分(例えばCA又はいくつかの他の抗菌剤)と反応させるステップと、
それに応答して、形状記憶ポリマー(SMP)フォームを形成するステップと、
を含む方法であって、
前記SMPは熱硬化性ポリウレタンSMPフォームであり、
前記第1の反応生成物は、前記SMPフォームの重合前に形成されたプレポリマーである、方法を包含する。
【0119】
実施例23は請求項22aに記載の方法を包含し、ここで、前記抗菌剤が前記SMPフォームのポリウレタンポリマー鎖に化学結合したペンダント基を形成する少なくとも1つのフェノール酸を包含する。
【0120】
したがって、臨床的に利用可能な多くの止血剤にもかかわらず、制御されていない出血が外傷に関連する死亡の主な原因である。形状記憶ポリマー(SMP)フォームは、止血剤として使用するための、出血部位への送達を可能にするための形状回復、生体適合性、及び迅速な血液凝固を包含する、いくつかの望ましい特性を有する。この材料システムについてさらに詳しく述べるために、現在の研究は、蜂蜜ベースの抗菌剤であるフェノール酸をSMPフォームに組み込むことを目的としている。出願人は、匹敵する孔構造及び保持された細胞適合性を有するフォームを提供するため、ケイ皮酸(CA)をSMP合成におけるモノマーとして利用できることを示した。CAの追加は、臨床的に関連のある範囲内で熱特性及び形状記憶特性を調整することを可能にした。さらに、改質フォームは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して初期及び持続的な抗菌作用を示した。これらの多機能スキャフォールドは、現在の出血治療を改善するための止血剤としての使用の可能性を実証し、そしてSMPフォームの生物学的及び材料特性を調整する際の新しいツールを提供する。
【0121】
本発明の実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。関連技術の当業者は多くの修正及び変形が上記の教示に照らして可能であることを理解することができる。当業者であれば、図に示されている様々な構成要素に対する様々な同等の組み合わせ及び置換えを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって限定されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】