(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107052
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】特殊健康診断支援装置、特殊健康診断支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20230726BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008142
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 義隆
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特殊健康診断の実施に関する作業を支援する特殊健康診断支援装置、特殊健康診断支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】特殊健康診断の実施に関する作業を支援する特殊健康診断支援装置10であって、従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録する業務登録部101と、業務登録部で登録された業務から、特殊健康診断の実施対象となる従業者を特定する対象特定部102と、対象特定部で特定された従業者に関して、従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務から、特殊健康診断の健診項目を特定する項目特定部103と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊健康診断の実施に関する作業を支援する特殊健康診断支援装置であって、
従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録する業務登録部と、
前記業務登録部で登録された業務から、前記特殊健康診断の実施対象となる従業者を特定する対象特定部と、
前記対象特定部で特定された従業者に関して、前記従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務から、前記特殊健康診断の健診項目を特定する項目特定部と、
を有する特殊健康診断支援装置。
【請求項2】
前記業務登録部は、
前記従業者毎に前記従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録することができる個別登録画面、又は、複数の前記従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録することができる一括登録画面のいずれか一方の画面を、表示装置、又は、前記特殊健康診断支援装置と通信ネットワークを介して接続される端末に表示させ、
前記個別登録画面又は前記一括登録画面における登録操作に応じて、前記業務を登録する、請求項1に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項3】
前記業務登録部は、
前記業務の詳細な作業内容を表す作業コードが存在する場合は、前記業務と前記作業コードとを登録する、請求項1又は2に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項4】
前記対象特定部は、
前記特殊健康診断の実施が必要な所定の業務に現在従事している従業者と、前記特殊健康診断の実施が必要な所定の業務に過去従事していた従業者とを、前記特殊健康診断の実施対象となる従業者として特定する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項5】
前記項目特定部は、
前記業務と前記健診項目とが対応付けられたテーブルを参照して、前記対象特定部で特定された従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務に対応付けられている診断項目を、前記特殊健康診断の健診項目として特定する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項6】
前記特殊健康診断の実施対象となる従業者毎に、前記項目特定部で特定された前記特殊健康診断の診断項目と、定期健康診断の診断項目とが含まれる健康診断票を作成及び出力する健診票出力部を更に有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項7】
前記特殊健康診断を実施した健診機関のシステムから健診結果データを受信すると、前記健診結果データが表す健診結果に含まれる所見又は診断結果を所定の基準により再判定する再判定部と、
前記特殊健康診断を受診した受診者毎に、前記再判定結果を前記所見又は診断結果とした健診結果が含まれる健診結果票を作成及び出力する健診結果票出力部と、を更に有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項8】
前記再判定結果を前記所見又は診断結果とした健診結果には、前記特殊健康診断の健診結果と、定期健康診断の健診結果とが含まれ、
前記健診結果票出力部は、
前記受診者毎に、前記特殊健康診断の健診結果が含まれる第1の健診結果票と、前記定期健康診断の健診結果が含まれる第2の健診結果票とを作成及び出力する、請求項7に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項9】
前記健診結果票出力部は、
前記受診者毎に、予め選択された複数の前記特殊健康診断の健診結果がそれぞれ含まれる複数の前記第1の健診結果票と、前記第2の健診結果票とを作成し
前記受診者毎に、複数の前記第1の健診結果票と、前記第2の健診結果票とをまとめて出力する、請求項8に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項10】
前記特殊健康診断の実施が必要な所定の業務毎に、前記再判定結果を前記所見又は診断結果とした健診結果を用いて、前記健診結果に含まれる各診断項目と前記診断項目に含まれる所見又は診断結果に対して所定の集計を行う集計部と、
前記所定の業務毎に、前記所定の業務に関する健康診断報告書に前記集計結果を転記し、前記所定の業務に関する健康診断報告書を作成及び出力する健診報告書出力部と、を更に有する、請求項7乃至9の何れか一項に記載の特殊健康診断支援装置。
【請求項11】
特殊健康診断の実施に関する作業を支援する特殊健康診断支援装置が、
従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録する業務登録手順と、
前記業務登録手順で登録された業務から、前記特殊健康診断の実施対象となる従業者を特定する対象特定手順と、
前記対象特定手順で特定された従業者に関して、前記従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務から、前記特殊健康診断の健診項目を特定する項目特定手順と、
を実行する特殊健康診断支援方法。
【請求項12】
特殊健康診断の実施に関する作業を支援する特殊健康診断支援装置に、
従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録する業務登録手順と、
前記業務登録手順で登録された業務から、前記特殊健康診断の実施対象となる従業者を特定する対象特定手順と、
前記対象特定手順で特定された従業者に関して、前記従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務から、前記特殊健康診断の健診項目を特定する項目特定手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊健康診断支援装置、特殊健康診断支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
労働安全衛生法では、労働衛生対策上で特に有害であると言われている業務に従事する従業者(それらの業務のうちの一部の業務については、その業務に従事しなくなった従業者も含む。)を対象として実施する健康診断が定められている。このような健康診断は特殊健康診断と呼ばれる。
【0003】
従来技術の1つとして、従業者の現在や過去の作業場所に応じて特殊健康診断の健診項目を抽出し、抽出した健診項目が実施されるように管理する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般に、特殊健康診断を行うためには、従業者の現在及び過去の業務内容を把握し、必要な健診項目を特定するといった「健診準備作業」を行う必要がある。また、特殊健康診断の実施後には、受診者に健診結果を提出したり、所轄の労働基準監督署に健診結果の集計を報告したりするといった「健診後作業」を行う必要がある。しかしながら、従来技術では、これら健診準備作業から健診後作業までの一連の作業を十分に支援できているとは言えず、健診準備作業や健診後作業を担当する担当者は多大な労力を要していた。
【0006】
本発明の一実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、特殊健康診断の実施に関する作業を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、一実施形態に係る特殊健康診断支援装置は、特殊健康診断の実施に関する作業を支援する特殊健康診断支援装置であって、従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務を登録する業務登録部と、前記業務登録部で登録された業務から、前記特殊健康診断の実施対象となる従業者を特定する対象特定部と、前記対象特定部で特定された従業者に関して、前記従業者の現在又は過去の少なくとも一方の業務から、前記特殊健康診断の健診項目を特定する項目特定部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
特殊健康診断の実施に関する作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る特殊健康診断支援装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る業務登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る健康診断票出力処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る健康診断結果票出力処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る健康診断結果報告書出力処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】健康診断結果報告書への転記の一例を示す図(その1)である。
【
図12】健康診断結果報告書への転記の一例を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下で説明する実施形態では、特殊健康診断の実施に関する作業を支援することができる特殊健康診断支援装置10について説明する。ここで、特殊健康診断の実施に関する作業とは、特殊健康診断を実施するために必要な作業である「健診準備作業」と特殊健康診断の実施後に必要な作業である「健診後作業」のことを言うものとする。健診準備作業には、特殊健康診断の対象となり得る従業者の現在及び過去の業務内容の把握、その業務内容から必要な健診項目の特定といった作業が含まれる。また、健診後作業には、特殊健康診断の受診者に健診結果を提出したり、所轄の労働基準監督署に健診結果の集計を報告したりするといった作業が含まれる。
【0011】
なお、特殊健康診断とは、労働衛生対策上で特に有害であると言われている業務に従事する従業者(それらの業務のうちの一部の業務については、その業務に従事しなくなった従業者も含む。)を対象として実施する健康診断のことである。労働安全衛生法で特殊健康診断を実施なければならないとされている業務としては、「高気圧業務」、「放射線業務」、「特定化学物質業務」、「石綿業務」、「鉛業務」、「四アルキル鉛業務」、「有機溶剤業務」が挙げられる。また、これらの業務のうち、一定の特定化学物質業務や石綿業務等に関しては、それらの業務に従事しなくなった場合でも特殊健康診断を実施する必要がある。
【0012】
また、常時、粉じん作業に従事する従業者に対してはじん肺健康診断を定期的に実施する必要があり、これも特殊健康診断と呼ばれることがある。この他、VDT作業や振動業務等においても特殊健康診断の実施が指導勧奨されるため、これらの業務に従事する従業者を対象として特殊健康診断が実施されることもある。
【0013】
一方で、一般健康診断と呼ばれる健康診断も存在し、定期健康診断等が一般健康診断に含まれる。特殊健康診断は定期健康診断と同時に実施されることが多いため、以下、定期健康診断と特殊健康診断を同時に実施する場合を想定する。
【0014】
なお、以下では、特殊健康診断の実施対象となり得る業務のことを「特殊業務」とも呼ぶことにする。
【0015】
<特殊健康診断を実施する際の流れ>
特殊健康診断を実施する際には、一般に、(1)健診準備作業、(2)健診の実施、(3)健診後作業、という流れで行われる。
【0016】
(1)健診準備作業
健診準備作業では、(1-a)特殊健康診断の対象となり得る従業者の現在及び過去の業務内容を把握(つまり、特殊健康診断の実施対象となる特殊業務に従事しているか否か及び従事していたか否かを把握)し、(1-b)その業務内容から特殊健康診断の健診項目を特定することを行う。
【0017】
上記の(1-a)に関して、一般的に、現在の業務内容は、従業者に対する問診や作業現場の安全担当者からの報告等によって把握される。これに対して、過去の業務内容を把握できていない事業者は多い。しかしながら、一部の特殊業務に関してはその特殊業務に従事しなくなった従業者に対しても特殊健康診断を実施する必要があり、過去の業務内容を把握することは極めて重要である。これに加えて、例えば、産業医による適切な診断を得るためには、過去の特殊業務に関してその特殊業務をどの程度の期間従事していたかといった情報も重要である。
【0018】
そこで、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10では、各従業者の現在及び過去の特殊業務とその特殊業務に従事していた期間を登録できる機能を提供すると共に、現在の特殊業務を登録する際には複数の従業者の特殊業務を簡便な方法で一括に登録できる機能も提供する。これにより、各従業者の現在及び過去の特殊業務とその特殊業務に従事していた期間が管理されると共に、例えば、従業者数が多い事業者であっても低コストで従業者の業務登録が可能となる。
【0019】
また、上記の(1-b)に関して、特殊健康診断で実施すべき健診項目は法令等に基づいており、法改正によって健診項目が変更された場合や特殊健康診断の実施対象となる特殊業務が増えた場合等には、どのような健診項目を実施すべきなのかの把握が困難である。
【0020】
そこで、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10では、各従業者の現在及び過去の特殊業務から特殊健康診断の健診項目を特定する機能を提供する。これにより、自動的に健診項目の特定が可能となり、また法改正によって健診項目が変更された場合や特殊健康診断の実施対象となる業務が増えた場合等にはその特定を行うためのデータテーブル(後述する健診項目テーブル)の更新により対応が可能となる。
【0021】
更に、上記に加えて、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10では、各従業者の現在及び過去の特殊業務から特定された健診項目が含まれる健康診断票を出力する機能も提供する。
【0022】
(2)健診の実施
上記の健康診断票に基づいて、各従業者は実際に健診機関等にて健康診断(定期健康診断及び特殊健康診断)を実施する。
【0023】
(3)健診後作業
健診後作業では、(3-a)健康診断(定期健康診断及び特殊健康診断)の健診結果を受診者に提出すると共に、(3-b)所轄の労働基準監督署に健診結果の集計を報告することを行う。
【0024】
上記の(3-a)に関して、健診機関から受け取った健診結果に対して事業者として何等かの判定(具体的には所見や診断結果の再判定等)を行う場合がある。これは、健診機関や産業医等によって健診項目の基準値等が異なる場合があるためである。
【0025】
そこで、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10では、健診機関から受け取った健診結果に対して事業者としての再判定を行った上で、その再判定後の健康診断結果票を出力する機能を提供する。
【0026】
上記の(3-b)に関して、健診結果を集計し、その集計結果を所定の健康診断報告書に転記する必要がある。また、この集計及び転記は特殊業務毎に行う必要があり、また健康診断報告書の様式(フォーマット)も特殊業務毎に異なるため、多大な労力を要する。
【0027】
そこで、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10では、健診結果を集計し、その集計結果を所定の健康診断報告書に転記して出力する機能を提供する。
【0028】
<特殊健康診断支援装置10の全体構成>
本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10の機能構成例を
図1に示す。
図1に示すように、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10は、業務登録部101と、健診対象特定部102と、健診項目特定部103と、健診内容作成部104と、健診票出力部105と、健診結果登録部106と、再判定部107と、健診結果票出力部108と、集計部109と、健診報告書出力部110とを有する。これら各部は、例えば、特殊健康診断支援装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサに実行させる処理により実現される。
【0029】
また、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10は、業務履歴テーブル記憶部111と、健診項目テーブル記憶部112と、健診結果テーブル記憶部113とを有する。これら各部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置により実現される。なお、これら各部のうちの少なくとも1つの記憶部が、例えば、特殊健康診断支援装置10と通信ネットワークを介して接続される記憶装置(データベースサーバ等)により実現されてもよい。
【0030】
業務登録部101は、各従業者の現在及び過去の特殊業務とその特殊業務に従事していた期間等を業務履歴テーブルに登録する。業務履歴テーブルとは、従業者の特殊業務とその特殊業務に従事してた期間又は従事している期間等とを表すレコードで構成されるデータテーブルである。業務履歴テーブルは、或る従業者の業務履歴とそれに付随する情報を表している。業務履歴テーブルは従業者毎に存在し、業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている。なお、業務履歴テーブルの詳細については後述する。
【0031】
また、業務登録部101は、各従業者の現在及び過去の特殊業務とその特殊業務に従事していた期間等を登録するための画面(以下、個別登録画面という。)と、複数の従業者の現在の特殊業務を一括して登録するための画面(以下、一括登録画面という。)とを登録者端末20に提供する。登録者端末20とは、従業者の現在及び過去の特殊業務等を登録する担当者(例えば、職場の衛生担当者等)が利用するPC(パーソナルコンピュータ)等の各種端末である。なお、個別登録画面及び一括登録画面の少なくとも一方が、特殊健康診断支援装置10が備えるディスプレイ等の表示装置に表示されてもよい。
【0032】
健診対象特定部102は、業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている業務履歴テーブルから特殊健康診断の対象となる従業者(以下、健診対象者ともいう。)を特定する。
【0033】
健診項目特定部103は、健診項目テーブル記憶部112に記憶されている健診項目テーブルと業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている業務履歴テーブルから健診対象者の健診項目を特定する。健診項目テーブルとは、特殊健康診断の実施対象となる特殊業務と、その特殊業務に従事している従業者及びその特殊業務に従事していた従業者が検査する必要がある健診項目とが対応付けられたデータテーブルである。なお、健診項目テーブルの詳細については後述する。
【0034】
健診内容作成部104は、健診項目特定部103によって特定された健診項目から健診対象者の健診内容を作成する。健診内容とは、例えば、定期健康診断の健診項目と、健診項目特定部103によって特定された健診項目(つまり、特殊健康診断の健診項目)とで構成される情報のことである。
【0035】
健診票出力部105は、健診内容作成部104によって作成された健診内容から健康診断票を出力する。健康診断票には、健診内容の他、例えば、健診機関に関する情報(健診機関名や住所、連絡先等)、健診対象者の氏名、年齢、生年月日、健診日等といった情報も含まれる。
【0036】
健診結果登録部106は、健康診断(定期健康診断及び特殊健康診断)を実施した健診機関のシステムである健診機関システム30から健診結果データを受信し、この健診結果データが表す健診結果を健診結果テーブルとして健診結果テーブル記憶部113に格納する。健診結果テーブルとは、健診対象者の健診結果を表すデータテーブルである。健診結果テーブルには、健診項目とその健診結果、所見・診断結果等が含まれている。健診結果テーブルは従業者及びその従業者が受診した健康診断毎に存在し、健診結果テーブル記憶部113に記憶されている。なお、健診結果テーブルの詳細については後述する。
【0037】
再判定部107は、健診結果テーブルに含まれる所見・診断結果に対して事業者としての再判定を行って、その再判定結果で所見・診断結果を更新(又は、所見・診断結果とは別に、再判定後の所見・診断結果を健診結果テーブルに追加)する。
【0038】
健診結果票出力部108は、健診結果テーブル記憶部113に記憶されている健診結果テーブルから健康診断結果票を出力する。健康診断結果票は個人票とも呼ばれ、定期健康診断に関する健康診断結果票と特殊健康診断に関する健康診断結果票とがある。定期健康診断に関する健康診断結果票には、定期健康診断の健診項目とその健診結果、再判定後の所見・診断結果の他、例えば、健診機関に関する情報(健診機関名や住所、連絡先等)、健診対象者の氏名、年齢、生年月日、健診日等といった情報も含まれる。一方で、特殊健康診断に関する健康診断結果票には、特殊業務名、その特殊業務に関する特殊健康診断の診断項目とその健診結果、再判定後の所見・診断結果の他、例えば、健診機関に関する情報(健診機関名や住所、連絡先等)、健診対象者の氏名、年齢、生年月日、健診日等といった情報も含まれる。
【0039】
集計部109は、業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている業務履歴テーブルと健診結果テーブル記憶部113に記憶されている健診結果テーブルとを用いて、特殊業務(及び、その特殊業務の業務内容の詳細を表す作業コード)毎に、その特殊業務に関する健康診断結果報告書の作成に必要な所定の集計(例えば、従事労働者数の集計、受診労働者数の集計、有所見者数の集計、疾病診断者数の集計等)を行う。健康診断結果報告書とは所轄の労働基準監督署への提出が義務付けられている報告書であり、例えば、特定化学物質健康診断結果報告書、有機溶剤等健康診断結果報告書、鉛健康診断結果報告書、四アルキル鉛健康診断結果報告書、高気圧業務健康診断結果報告書、電離放射線健康診断結果報告書、じん肺健康管理実施状況報告等がある。これらは特殊業務毎に様式(フォーマット)が異なり、また必要な集計も異なるため、集計部109は、特殊業務毎に、その特殊業務に関する健康診断結果報告書の作成に必要な集計を行う。
【0040】
健診報告書出力部110は、集計部109による集計結果を該当の特殊業務に関する健康診断結果報告書に転記し、その転記後の健康診断結果報告書を出力する。
【0041】
業務履歴テーブル記憶部111は、従業者毎に業務履歴テーブルを記憶する。健診項目テーブル記憶部112は、健診項目テーブルを記憶する。健診結果テーブル記憶部113は、従業者及びその従業者が受診した健康診断毎に健診結果テーブルを記憶する。
【0042】
≪業務履歴テーブル≫
業務履歴テーブルの一例を
図2に示す。
図2に示すように、業務履歴テーブルには、従業者名及び従業者IDと、その従業者の現在又は過去の特殊業務と、その特殊業務の内容と、その特殊業務の開始年月及び終了年月と、任意の文言を記入可能なコメントとが含まれる。
【0043】
図2に示す例は、従業者名「従業者A」及び従業者ID「0001」の業務履歴テーブルを表しており、1行目のレコードには、特殊業務「01237:(特)ニッケル化合物」、開始年月「2018/4」、終了年月「9999/12」、コメント「週10時間」が設定されている。ここで、終了年月が「9999/12」の場合、当該特殊業務に現在従事していることを表している。一方で、4行目のレコードには、特殊業務「02001:(有)アセトン」、作業「01:有機溶剤の製造」、開始年月「2018/4」、終了年月「2020/4」が設定されている。これは、特殊業務「02001:(有)アセトン」を2018年4月から2020年12月まで従事していたことを意味している。また、作業「01:有機溶剤の製造」は業務内容の詳細を表す作業コードのことである。この作業コードは健康診断結果報告書を作成する際に必要となる。
【0044】
なお、
図2中で「(特)」は「特定化学物質業務」、「(有)」は「有機溶剤業務」を表しており、特殊業務の先頭に記載されている5桁の数字は特殊業務の業務内容を示すコード(特殊業務コード)を表している。
【0045】
≪健診項目テーブル≫
健診項目テーブルの一例を
図3に示す。
図3に示すように、健診項目テーブルでは、特殊業務とその特殊業務に関する特殊健康診断で必要な健診項目とが対応付けられている。例えば、
図3に示す例では、特殊業務「01002:(特)ベンジジン及びその塩」と健診項目a、健診項目b、健診項目dとが「〇」で対応付けられている。これは、特殊業務「01002:(特)ベンジジン及びその塩」に関する特殊健康診断では、健診項目a、健診項目b、健診項目dが必要であることを表している。同様に、例えば、
図3に示す例では、特殊業務「01237:(特)ニッケル化合物」と健診項目c、健診項目dとが「〇」で対応付けられている。これは、特殊業務「01237:(特)ニッケル化合物」に関する特殊健康診断では、健診項目c、健診項目dが必要であることを表している。
【0046】
≪健診結果テーブル≫
健診結果テーブルの一例を
図4に示す。
図4に示すように、健診結果テーブルには、従業者名及び従業者IDと、健診日と、定期健康診断の健診項目並びにその健診結果及び所見・診断結果と、特殊健康診断の健診項目並びにその健診結果及び所見・診断結果とが含まれる。
【0047】
図4に示す例では、例えば、定期健康診断の診断項目「健診項目A」~「健診項目C」とそれらの健診結果と所見・診断結果とが示されている。同様に、
図4に示す例では、例えば、特殊業務Aに関する特殊健康診断の診断項目「健診項目a」、「健診項目b」とそれらの健診結果と所見・診断結果とが示されている。なお、「健診項目c」の健診結果及び所見・診断結果は空欄となっており、これは、特殊業務Aに関する特殊健康診断では健診項目cが健診対象ではないことを表している。一般的に、健康診断結果票の帳票(及びその帳票を表すデータ)フォーマットではすべての健診項目の健診結果及び所見・診断結果が印字可能となっており、実際に健診が行われた健診項目に対してのみその健診結果及び所見・診断結果が印字されるためである。
【0048】
なお、
図4に示すように、健診項目によっては所見・診断結果が空欄の場合もある。これは、所見・診断結果が不要な健診項目(典型的には、「身長」といった健診項目が挙げられる。)も存在するためである。
【0049】
<業務登録>
以下、健診準備作業の1つとして従業者の現在及び過去の特殊業務を登録する場合の処理について、
図5を参照しながら説明する。
【0050】
業務登録部101は、登録者端末20における登録開始操作に応じて、個別登録画面又は一括登録画面を当該登録者端末20に表示させる(ステップS101)。ここで、1人の従業者を選択して特殊業務の登録開始操作が行われた場合は個別登録画面が当該登録者端末20に表示される。一方で、複数の従業者を選択して特殊業務の登録開始操作が行われた場合は一括登録画面が当該登録者端末20に表示される。
【0051】
・個別登録画面
個別登録画面の一例を
図6に示す。
図6に示す個別登録画面G100は、従業者A(従業者ID:0001)の現在及び過去の特殊業務を登録するための個別登録画面である。
図6に示す個別登録画面G100には、特殊業務登録欄G110と、行追加ボタンG120と、キャンセルボタンG130と、登録ボタン140とが含まれる。
【0052】
例えば、従業者Aが現在は或る特殊業務に従事していない場合、登録者端末20のユーザは、特殊業務登録欄G110に表示されている特殊業務の終了年月「9999/12」を実際の終了年月に変更すればよい。一例として、従業者Aが現在は特殊業務「01237:(特)ニッケル化合物」に従事していない場合、登録者端末20のユーザは、特殊業務登録欄G110に表示されている特殊業務「01237:(特)ニッケル化合物」の終了年月「9999/12」を実際の終了年月に変更すればよい。
【0053】
また、例えば、従業者Aが従事している特殊業務が追加された場合、登録者端末20のユーザは、行追加ボタンG120を押下して特殊業務登録欄G110に新たな行を追加した上で、特殊業務と開始年月を入力すると共に、必要に応じて作業とコメントを入力すればよい。なお、特殊業務は予め決められた特殊業務一覧から選択可能であり、同様に作業は特殊業務毎に予め決められた作業コード一覧から選択可能である。
【0054】
登録者端末20のユーザは、登録ボタンG140を押下することで、特殊業務登録欄G110に表示されている内容を登録することができる。一方で、キャンセルボタンG130を押下することで、個別登録作業を中止することができる。
【0055】
なお、登録者端末20のユーザによって登録ボタンG140が押下された場合、登録者端末20によって登録要求が特殊健康診断支援装置10に送信される。ここで、当該登録要求には、登録者端末20のユーザによって追加又は変更された特殊業務に関する情報と、従業者IDとが含まれる。特殊業務が追加された場合、当該特殊業務に関する情報にはその特殊業務の特殊業務コード、作業コード、開始年月、コメント等が含まれる。一方で、特殊業務が変更された場合(例えば、終了年月が実際の終了年月に変更された場合等)、当該特殊業務に関する情報にはその特殊業務の特殊業務コード、終了年月等が含まれる。なお、行追加ボタンG120を押下して特殊業務登録欄G110に新たな行を追加した場合、開始年月には現在の年月、終了年月には「9999/12」がデフォルトで設定されていてもよい。また、登録ボタンG140が押下された場合に、開始年月又は終了年月を変更するための画面を表示させてもよい。
【0056】
・一括登録画面
一括登録画面の一例を
図7に示す。
図7に示す一括登録画面G200は、従業者A(従業者ID:0001)~従業者C(従業者ID:0003)の現在の特殊業務を登録するための一括登録画面である。
図7に示す一括登録画面G200には、特殊業務一括登録欄G210と、キャンセルボタンG220と、登録ボタンG230とが含まれる。
【0057】
特殊業務一括登録欄G210には、各従業者が現在従事している特殊業務が「〇」又は作業コードで表示されている。すなわち、各従業者が現在従事している特殊業務で作業コードが存在しないものは「〇」、作業コードが存在するものは作業コード(例えば、「01」等)で表示されている。例えば、
図7に示す例では、従業者Bは、現在、「(特)ベンゼン及びその塩」、「(特)エチルベンゼン」、「(有)アセトン」に従事しており、「(有)アセトン」の作業コードは「01」であることが表されている。
【0058】
例えば、或る従業者が或る特殊業務に現在従事していない場合、登録者端末20のユーザは、特殊業務一括登録欄G210に表示されている「〇」又は「作業コード」を「×」に変更すればよい。一例として、従業者Aが現在は特殊業務「(特)ニッケル化合物」に従事していない場合、登録者端末20のユーザは、特殊業務一括登録欄G210において、従業者Aの行、かつ、「(特)ニッケル化合物」の列に表示されている「〇」を「×」に変更すればよい。
【0059】
また、例えば、或る従業者が従事している特殊業務が追加された場合、登録者端末20のユーザは、特殊業務一括登録欄G210において、該当の従業者の該当の特殊業務に「〇」又は「作業コード」を設定すればよい。一例として、従業者Aが現在は「(特)塩化ビニル」にも従事している場合、登録者端末20のユーザは、特殊業務一括登録欄G210において、従業者Aの行、かつ、「(特)塩化ビニル」の列に「〇」又は「作業コード」を設定すればよい。
【0060】
登録者端末20のユーザは、登録ボタンG230を押下することで、特殊業務一括登録欄G210に表示されている内容を登録することができる。一方で、キャンセルボタンG220を押下することで、一括登録作業を中止することができる。
【0061】
なお、登録者端末20のユーザによって登録ボタンG230が押下された場合、登録者端末20によって登録要求が特殊健康診断支援装置10に送信される。ここで、当該登録要求には、登録者端末20のユーザによって「〇」、「作業コード」又は「×」に設定又は変更された特殊業務に関する情報と、その設定又は変更が行われた従業者の従業者IDと、開始年月又は終了年月とが含まれる。例えば、「〇」が設定された場合、特殊業務に関する情報には特殊業務コードと従業者IDと現在の年月を表す開始年月とが含まれる。また、「作業コード」が設定された場合、特殊業務に関する情報には特殊業務コードと作業コードと従業者IDと現在の年月を表す開始年月とが含まれる。「×」に変更された場合、特殊業務に関する情報には特殊業務コードと従業者IDと現在の年月を表す終了年月とが含まれる。なお、開始年月又は終了年月はデフォルトで現在の年月が設定されるが、これに限られず、任意の年月を設定可能としてもよい。このとき、例えば、特殊業務一括登録欄G210で任意の年月を開始年月又は終了年月として設定可能としてもよいし、登録ボタンG230が押下された場合に開始年月又は終了年月を設定するための画面を表示させてもよい。
【0062】
なお、上記では個別登録画面と一括登録画面により特殊業務の登録を行ったが、これは一例であって、これに限られるものではない。例えば、複数の従業者の特殊業務を登録する場合、特殊業務一括登録欄G210に表示されている内容と同様の内容をデータとして出力し、このデータを表計算ソフト等で編集した後、編集後のデータを特殊健康診断支援装置10に登録してもよい。このとき、例えば、データ出力及び登録は登録者端末20で行い、データ編集は登録者端末20とは異なる端末で行われてもよい。1人の従業者の特殊業務を登録する場合も同様に、特殊業務登録欄G110に表示されている内容と同様の内容をデータとして出力し、このデータを表計算ソフト等で編集した後、編集後のデータを特殊健康診断支援装置10に登録してもよい。
【0063】
図5の説明に戻る。上記のステップS101に続いて、業務登録部101は、登録者端末20からの登録要求を受信する(ステップS102)。
【0064】
そして業務登録部101は、上記のステップS102で受信した登録要求に含まれる特殊業務に関する情報と従業者IDを用いて、その従業者IDの業務履歴テーブルを当該特殊業務に関する情報で更新する(ステップS103)。
【0065】
以上で説明したように、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10は、従業者の現在及び過去の特殊業務とその特殊業務に従事していた期間とを業務履歴テーブルを管理することができる。また、現在の特殊業務の登録(特殊業務の追加だけなく、変更も含む。)を行う際には、複数の従業者の特殊業務を一括して簡便に登録(つまり、低コストに登録)することができる。このため、例えば、従業者数が多い事業者であっても各従業者の現在の特殊業務を容易に登録することが可能となり、その結果、各従業者の現在及び過去の特殊業務を簡便かつ確実に管理することができるようになる。
【0066】
<健康診断票の出力>
以下、健診準備作業の1つとして健診対象者とその健診項目とを特定し、健康診断票を出力する場合の処理について、
図8を参照しながら説明する。
【0067】
健診対象特定部102は、業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている業務履歴テーブルから特殊健康診断の対象となる従業者を健診対象者として特定する(ステップS201)。すなわち、健診対象特定部102は、業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている各業務履歴テーブルを参照して、現在特殊業務に従事している従業者と、過去に特定の特殊業務に従事していた従業者とを健診対象者として特定する。なお、特定の特殊業務とは、特殊業務のうち、過去に従事させたことのある従業者に対しても特殊健康診断を行う必要があると法令等(例えば、労働安全衛生法や労働安全衛生法施行令等)で定められている業務のことである。
【0068】
次に、健診項目特定部103は、健診項目テーブル記憶部112に記憶されている健診項目テーブルと業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている業務履歴テーブルから健診対象者の健診項目を特定する(ステップS202)。
【0069】
すなわち、健診項目特定部103は、上記のステップS201で特定された健診対象者の業務履歴テーブルから現在の特殊業務と過去の特定の特殊業務とを特定する。なお、健診対象者によっては現在の特殊業務と過去の特定の特殊業務のいずれか一方が存在しないこともあり得る。また、現在の特殊業務が複数存在したり、過去の特定の特殊業務が複数存在したりすることもあり得る。
【0070】
そして、健診項目特定部103は、健診項目テーブルを参照して、現在の特殊業務に対応付けられている健診項目を、当該健診対象者の当該現在の特殊業務に関する特殊健康診断の健診項目として特定する。同様に、健診項目特定部103は、健診項目テーブルを参照して、過去の特定の特殊業務に対応付けられている健診項目を、当該健診対象者の当該過去の特定の特殊業務に関する特殊健康診断の健診項目として特定する。
【0071】
次に、健診内容作成部104は、健診対象者毎に、上記のステップS202で特定された健診項目(つまり、特殊健康診断の健診項目)と、定期健康診断の健診項目とが含まれる健診内容を作成する(ステップS203)。なお、定期健康診断の健診項目はすべての健診対象者で同一であってもよいし、例えば、オプションの検査内容を申し込んでいる等により健診対象者によって異なっていてもよい。
【0072】
そして、健診票出力部105は、健診対象者毎に、上記のステップS203で作成された健診内容から健康診断票を作成して所定の出力先に出力する(ステップS204)。なお、例えば、健診機関名や健診日(健診予定日)等といった健診内容以外の情報は予め決められているものとする。健康診断票は、例えば、プリンタ等といった印刷装置から紙に印字されて出力されてもよいし、補助記憶装置等にデータとして出力(保存)されてもよいし、健診対象者が利用する端末等にデータとして出力(送信)されてもよい。これにより、健診対象者は、自身の健康診断票を用いて健診機関で健康診断を受診することができるようになる。なお、一般的に、健康診断票には健診対象者の氏名、健診機関名、健診予定日等といった内容が記載されるが、どのような内容が健康診断票に記載されるかは任意に設定することが可能である。例えば、健診項目特定部103により特定された健診項目を健康診断票に記載してもよいし、健診項目は記載せずに特殊業務の業務歴のみを記載してもよいし、健診項目と特殊業務の業務歴の両方を記載してもよい。又は、例えば、健診項目特定部103で特定された健診項目に限られず、任意に設定された健診項目を健康診断票に記載してもよい。
【0073】
以上で説明したように、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10は、従業者の現在及び過去の特殊業務から健診対象者を特定すると共に、その健診対象者の特殊健康診断に必要な健診項目を特定することができる。しかも、このとき、特殊業務とその特殊健康診断に必要な健診項目とが対応付けられた健診項目テーブルにより、健診対象者の特殊健康診断に必要な健診項目を特定する。このため、例えば、法改正によって健診項目が変更された場合や特殊健康診断の実施対象となる特殊業務が増えた場合等には、健診項目テーブルを更新すればよく、健診項目の変更等に低コストで対応することが可能となる。
【0074】
なお、上記では健康診断票のみを出力したが、例えば、上記のステップS201の後に健診対象者リスト等が出力されてもよい。この健診対象者リストを確認することで、例えば、職場の衛生担当者等は、健診対象者が現在及び過去にどのような特殊業務に従事していたのかを知ることができる。
【0075】
<健康診断結果票の出力>
以下、健診機関から受け取った健診結果に対して事業者としての再判定を行うと共に、健診後作業の1つとして健診結果を受診者に提出する場合の処理について、
図9を参照しながら説明する。
【0076】
健診結果登録部106は、健診機関システム30から健診結果データを受信する(ステップS301)。
【0077】
健診結果登録部106は、上記のステップS301で受信した健診結果データに含まれる各受診者(つまり、各健診対象者)の健診結果を健診結果テーブルとして健診結果テーブル記憶部113に格納する(ステップS302)。なお、健診結果データに含まれる各受診者の健診結果には従業者IDが含まれない場合もあり得るが、この場合、健診結果登録部106は、受診者を識別する何等かの識別情報(例えば、健診機関における受診者ID)と従業者IDとの関連付けを保持しており、この関連付けから従業者IDを特定できるものとする。
【0078】
次に、再判定部107は、健診結果テーブル記憶部113に記憶されている各健診結果テーブルに含まれる所見・診断結果に対して事業者としての再判定を行って、その再判定結果でその所見・診断結果を更新(又は、所見・診断結果とは別に、再判定後の所見・診断結果を健診結果テーブルに追加)する(ステップS303)。これは、上述したように、健診機関や産業医等によって健診項目の基準値等が異なる場合があるためである。例えば、或る健診項目に関して厳しい基準値を設けている健診機関では、他の健診機関では「異常なし」と判定される場合であっても「要注意」等と判定されてしまうことがある。同様に、例えば、或る健診項目に関して緩い基準値を設けている健診機関では、他の健診機関では「要注意」と判定される場合であっても「異常なし」等と判定されてしまうことがある。このため、健診項目毎に予め決められた基準で上記の再判定を行うことで、健診機関や産業医等が異なることによる判定結果の差異を無くすことができる。なお、この再判定は或る特定の健診項目に対してのみ行われてもよい。
【0079】
そして、健診結果票出力部108は、健診結果テーブル記憶部113に記憶されている健診結果テーブルから健康診断結果票を作成して所定の出力先に出力する(ステップS304)。ここで、健診結果票出力部108は、定期健康診断の健診結果からは定期健康診断に関する健康診断結果票のみを作成し、特殊健康診断の健診結果からは特殊健康診断に関する健康診断結果票のみを作成する。例えば、特殊健康診断に関する健康診断結果票には或る特定の健診項目が含まれている場合に、受診者がその特定の健診項目を特殊健康診断として検査する必要が無いときは、仮に定期健康診断でその特定の健診項目の検査を行っていたとしても、その健診結果を特殊健康診断に関する健康診断結果票には記載しない。具体例を挙げると、例えば、特殊健康診断に関する健康診断結果票に「血圧」の健診項目が含まれている場合に、受診者が特殊健康診断では「血圧」を検査する必要が無いときは、定期健康診断で「血圧」を検査していたとしても、「血圧」の健診結果を特殊健康診断に関する健康診断結果票には記載しない。これは、特殊健康診断に関する健康診断結果票に必要な健診項目の健診結果のみが記載されることで、例えば、特殊業務に従事する従業者の異動や配置転換等の必要性を正確に判断できるようにするためである。
【0080】
健康診断結果票は、例えば、プリンタ等といった印刷装置から紙に印字されて出力されてもよいし、補助記憶装置等にデータとして出力(保存)されてもよいし、受診者(健診対象者)が利用する端末等にデータとして出力(送信)されてもよい。これにより、受診者(健診対象者)は、自身の健康診断(定期健康診断及び特殊健康診断)の結果を知ることができるようになる。
【0081】
なお、上記のステップS104で定期健康診断に関する健康診断結果票と特殊健康診断に関する健康診断結果票を出力する際に、例えば、ユーザにより選択された複数の特殊健康診断に関する健康診断結果票を同一受診者にまとめて出力してもよい。具体例を挙げれば、特殊健康診断として「特定化学物質健康診断」と「有機溶剤等健康診断」が選択された場合、「特定化学物質健康診断」と「有機溶剤等健康診断」の両方を受診した受診者には、これら2つの特殊健康診断に関する健康診断結果票と定期健康診断に関する健康診断結果票とをまとめて出力する。これにより、例えば、健康診断結果票が紙で出力される場合において、複数の特殊健康診断を受診した者がいるときに、その受診者の複数の特殊健康健康診断に関する健康診断結果票をまとめて出力することが可能となり、特殊健康診断に関する健康診断結果票を各受診者に仕分ける作業が不要になる。
【0082】
以上で説明したように、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10は、健診機関システム30から受信した健診結果データに含まれる各受診者の健診結果を健診結果テーブルとして保存すると共に所見・診断結果に対して事業者としての再判定を行って、最終的に健康診断結果票を受診者に出力する。このため、例えば、職場の衛生担当者等が所見・診断結果の再判定を行ったり、健康診断結果票の出力を行ったりするのに要する労力を大幅に削減させることが可能となる。
【0083】
<健康診断結果報告書の出力>
以下、健診後作業の1つとして、健診結果を集計し、その集計結果を所定の健康診断報告書に転記する場合の処理について、
図10を参照しながら説明する。
【0084】
集計部109は、業務履歴テーブル記憶部111に記憶されている業務履歴テーブルと健診結果テーブル記憶部113に記憶されている健診結果テーブルとを用いて、特殊業務毎に、その特殊業務に関する健康診断結果報告書の作成に必要な所定の集計を行う(ステップS401)。
【0085】
例えば、「特定化学物質業務」では、作業コード(ただし、これは「特定化学物質業務コード」と呼ばれる。)毎に、従事労働者数、受診労働者数、第二次健康診断要受診者数、有所見者数、疾病診断者数等の項目を特定化学物質健康診断結果報告書に記載する必要がある。このため、集計部109は、特定化学物質業務の作業コード毎に、これらの項目を集計する。なお、第二次健康診断要受診者数は所見・診断結果に「要再検査」や「要精密検査」等と記載されている受診者数のことである。同様に、有所見者数は所見・診断結果に何等かの異常が認められる旨が記載されている受診者数、疾病診断者数は所見・診断結果に具体的な疾病が認められる旨が記載されている受診者数である。
【0086】
また、例えば、「有機溶剤業務」では、作業コード(ただし、これは「有機溶剤業務コード」と呼ばれる。)、他覚所見の実施者数と有所見者数、腎機能検査の実施者数と有所見者数、貧血検査の実施者数と有所見者数、肝機能検査の実施者数と有所見者数、眼底検査の実施者数と有所見者数、神経内科学的検査の実施者数と有所見者数、作業条件の調査人数、所見のあった者の人数、医師の指示人数、代謝物の検査の実施者数と分布等の項目を有機溶剤等健康診断結果報告書に記載する必要がある。このため、集計部109は、これらの項目を集計する。なお、代謝物の検査では有機溶剤コード及び検査内容コード毎に実施者数と分布を集計する必要がある。
【0087】
「特定化学物質業務」及び「有機溶剤業務」以外の特殊業務でも同様に、当該特殊業務に関する健康診断報告書の作成に必要な各項目の集計を行う
次に、健診報告書出力部110は、上記のステップS401での集計結果を用いて、該当の特殊業務毎にその特殊業務に関する健康診断結果報告書に集計結果を転記し、当該特殊業務に関する健康診断結果報告書を作成する(ステップS402)。
【0088】
ここで、一例として、特定化学物質健康診断結果報告書への集計結果の転記例を
図11に示す。
図11に示す例は、作業コード(特定化学物質業務コード)「002」の集計結果(従事労働者数、受診労働者数、第二次健康診断要受診者数、有所見者数、疾病診断者数)を特定化学物質健康診断結果報告書に転記している場合の例である。
【0089】
また、他の例として、有機溶剤等健康診断結果報告書への集計結果の転記例を
図12に示す。
図12に示す例は、有機溶剤業務の集計結果(作業コード、他覚所見の実施者数と有所見者数、腎機能検査の実施者数と有所見者数、貧血検査の実施者数と有所見者数、肝機能検査の実施者数と有所見者数、眼底検査の実施者数と有所見者数、神経内科学的検査の実施者数と有所見者数、作業条件の調査人数、所見のあった者の人数、医師の指示人数、代謝物の検査の実施者数と分布)を有機溶剤等健康診断結果報告書に転記している場合の例である。
【0090】
そして、健診報告書出力部110は、上記のステップS402で作成した健康診断結果報告書を所定の出力先に出力する(ステップS403)。健康診断結果報告書は、例えば、プリンタ等といった印刷装置から紙に印字されて出力されてもよいし、補助記憶装置等にデータとして出力(保存)されてもよいし、報告先の労働基準監督署のシステム等にデータとして出力(送信)されてもよい。
【0091】
以上で説明したように、本実施形態に係る特殊健康診断支援装置10は、特殊業務毎に、その特殊業務に関する健康診断報告書の作成に必要な項目の集計を行って、その集計結果から健康診断報告書を作成する。このため、例えば、職場の衛生担当者等が集計を行ったり、その集計結果を健康診断報告書に転記したりするのに要する労力を大幅に削減させることが可能となる。
【0092】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 特殊健康診断支援装置
20 登録者端末
30 健診機関システム
101 業務登録部
102 健診対象特定部
103 健診項目特定部
104 健診内容作成部
105 健診票出力部
106 健診結果登録部
107 再判定部
108 健診結果票出力部
109 集計部
110 健診報告書出力部
111 業務履歴テーブル記憶部
112 健診項目テーブル記憶部
113 健診結果テーブル記憶部